特許第6231043号(P6231043)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

<>
  • 特許6231043-リール及びリール構成部品 図000002
  • 特許6231043-リール及びリール構成部品 図000003
  • 特許6231043-リール及びリール構成部品 図000004
  • 特許6231043-リール及びリール構成部品 図000005
  • 特許6231043-リール及びリール構成部品 図000006
  • 特許6231043-リール及びリール構成部品 図000007
  • 特許6231043-リール及びリール構成部品 図000008
  • 特許6231043-リール及びリール構成部品 図000009
  • 特許6231043-リール及びリール構成部品 図000010
  • 特許6231043-リール及びリール構成部品 図000011
  • 特許6231043-リール及びリール構成部品 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231043
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】リール及びリール構成部品
(51)【国際特許分類】
   G11B 23/087 20060101AFI20171106BHJP
   G11B 23/107 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   G11B23/087 508F
   G11B23/107
【請求項の数】5
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2015-102943(P2015-102943)
(22)【出願日】2015年5月20日
(65)【公開番号】特開2016-15191(P2016-15191A)
(43)【公開日】2016年1月28日
【審査請求日】2015年12月7日
(31)【優先権主張番号】特願2014-120016(P2014-120016)
(32)【優先日】2014年6月10日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079049
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 淳
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】森 康裕
【審査官】 斎藤 眞
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−055739(JP,A)
【文献】 特開2001−135063(JP,A)
【文献】 特開2012−181885(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G11B 23/00−23/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上端部側が開口された有底円筒状に樹脂材で成形されるとともに、上下方向に延在する複数の規制リブが内周面に形成されたハブと、
前記ハブの下端部側に前記ハブと一体成形されて設けられた下フランジと、
前記下フランジと対向した環状の上フランジと、
前記上フランジの下面と前記ハブの上端面とを結合した溶着部と、
を有し、
前記溶着部は、平面視で、径方向に複数並んで形成されるとともに、径方向で隣り合う前記溶着部の一部が互いに周方向でオーバーラップするように、全周に亘って断続的に形成され、
前記規制リブは、前記溶着部の一重に配置されている部位の径方向内側のみに形成されているリール。
【請求項2】
前記溶着部は、その位置が、該溶着部に望む前記ハブ又は前記上フランジの材料の内部に溶着の影響が及んでいる溶着影響部で特定されるものである請求項1に記載のリール。
【請求項3】
上端部側が開口された有底円筒状に樹脂材で成形されるとともに、上下方向に延在する複数の規制リブが内周面に形成されたハブと、
前記ハブの下端部側に前記ハブと一体成形されて設けられた下フランジと、
前記下フランジと対向して前記ハブの上端部側に設けられるべき環状の上フランジと、
前記上フランジの下面と前記ハブの上端面とを溶着するために該ハブの上端面に形成された溶着リブと、
を有し、
前記溶着リブは平面視で、径方向に複数並んで形成されるとともに、径方向で隣り合う前記溶着リブの一部が互いに周方向でオーバーラップするように、全周に亘って断続的に形成され、
前記規制リブは、前記溶着リブの一重に配置されている部位の径方向内側のみに形成されているリール構成部品。
【請求項4】
前記溶着リブの径方向の列数が2列とされている請求項3に記載のリール構成部品。
【請求項5】
前記溶着リブのうち、径方向最内側に形成された前記溶着リブの径方向内側端部から、径方向最外側に形成された前記溶着リブの径方向外側端部までの径方向に沿った長さが、前記ハブの厚みの50%以上の長さとされている請求項3又は請求項4に記載のリール構成部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リール及びリール構成部品に関する。
【背景技術】
【0002】
上端部側が開口された有底円筒状のハブと、ハブの下端部側に一体に成形されて設けられた下フランジと、ハブの上端面に、内周部側の下面が溶着されて設けられた環状の上フランジと、を備えた樹脂製のリールは、従来から知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1に開示されているリールでは、側断面視で、上フランジの下面がハブの上端面に1点で溶着されている。また、ハブとフランジとを溶着する構造としては、他の形態も知られている(例えば、特許文献2及び特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−55739号公報
【特許文献2】実開平01−140678号公報
【特許文献3】特開昭54−104318号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示されているようなリールに記録テープを巻回したときには、その記録テープの巻き締まり力により、ハブの上端部側が変形する。したがって、上フランジの外周部側も、その変形に追従して、下フランジ側へ接近するように傾くが、実際には、ハブの傾き以上に傾くことがあった。このように、記録テープの巻き締まり力によるハブの変形以上に上フランジが変形するのを抑制する構造には、未だ改善の余地がある。
【0006】
そこで、本発明は、記録テープの巻き締まり力によるハブの変形以上に上フランジが変形するのを抑制できるリール及びリール構成部品を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明に係る第1の態様のリールは、上端部側が開口された有底円筒状に樹脂材で成形されるとともに、上下方向に延在する複数の規制リブが内周面に形成されたハブと、ハブの下端部側にハブと一体成形されて設けられた下フランジと、下フランジと対向した環状の上フランジと、上フランジの下面とハブの上端面とを結合した溶着部と、を有し、溶着部は、平面視で、径方向に複数並んで形成されるとともに、径方向で隣り合う溶着部の一部が互いに周方向でオーバーラップするように、全周に亘って断続的に形成され、規制リブは、溶着部の一重に配置されている部位の径方向内側のみに形成されている。
【0008】
第1の態様の発明によれば、溶着部が、平面視で、径方向に複数並んで形成されるとともに、径方向で隣り合う溶着部の一部が互いに周方向でオーバーラップするように、全周に亘って断続的に形成されている。つまり、上フランジの下面とハブの上端面とが径方向の複数の点で溶着された部位が全周に亘って複数形成されている。したがって、溶着部が変形支点になって上フランジの外周部側が下フランジ側へ接近するように傾くのが抑制される
【0009】
また上フランジの下面とハブの上端面とを結合した溶着部において、周方向に隙間がなく、その溶着強度が向上されている。したがって、記録テープの巻き締まり力によるハブの変形以上に上フランジが変形するのが抑制される。また、上フランジの変形量に周方向のばらつきが生じるのが抑制される。
【0010】
また、溶着部の一重に配置されている部位の径方向内側のみに、規制リブが形成されている。ここで、規制リブが形成されている部位では、ハブの上端部側が径方向外側へ傾き難い。したがって、溶着部が一重とされている部位であっても、ハブの上端部側の径方向外側へ傾くような変形が抑制される。
【0011】
また、本発明に係る第の態様のリールは、第の態様のリールであって、溶着部は、その位置が、溶着部に望むハブ又は上フランジの材料の内部に溶着の影響が及んでいる溶着影響部で特定されるものである。
【0012】
また、本発明に係る第3の態様のリール構成部品は、上端部側が開口された有底円筒状に樹脂材で成形されるとともに、上下方向に延在する複数の規制リブが内周面に形成されたハブと、ハブの下端部側にハブと一体成形されて設けられた下フランジと、下フランジと対向してハブの上端部側に設けられるべき環状の上フランジと、上フランジの下面とハブの上端面とを溶着するためにハブの上端面に形成された溶着リブと、を有し、溶着リブは平面視で、径方向に複数並んで形成されるとともに、径方向で隣り合う溶着リブの一部が互いに周方向でオーバーラップするように、全周に亘って断続的に形成され、規制リブは、溶着リブの一重に配置されている部位の径方向内側のみに形成されている。
【0013】
第3の態様の発明によれば溶着リブは、平面視で、径方向に複数並んで形成されるとともに、径方向で隣り合う溶着リブの一部が互いに周方向でオーバーラップするように、全周に亘って断続的に形成されている。つまり、上フランジの下面とハブの上端面とが径方向の複数の点で溶着される部位が全周に亘って複数形成される。したがって、溶着リブが上フランジの変形支点になって上フランジの外周部側が下フランジ側へ接近するように傾くのが抑制される
【0014】
また上フランジの下面とハブの上端面とを溶着する溶着リブにおいて、周方向に隙間がなく、その溶着リブによる溶着強度が向上される。したがって、記録テープの巻き締まり力によるハブの変形以上に上フランジが変形するのが抑制される。また、上フランジの変形量に周方向のばらつきが生じるのが抑制される。
【0015】
また、溶着リブの一重に配置されている部位の径方向内側のみに、規制リブが形成されている。ここで、規制リブが形成されている部位では、ハブの上端部側が径方向外側へ傾き難い。したがって、溶着リブが一重とされている部位であっても、ハブの上端部側の径方向外側へ傾くような変形が抑制される。
【0018】
また、本発明に係る第の態様のリール構成部品は、第の態様のリール構成部品であって溶着リブの径方向の列数2列とされている。
【0019】
の態様の発明によれば溶着リブの径方向の列数2列とされている。したがって溶着リブの径方向の列数3列以上とされている構成に比べて、溶着リブを溶融させるための超音波振動エネルギーが少なくて済み、リールの生産性が向上される。
【0020】
また、本発明に係る第の態様のリール構成部品は、第3又はの態様のリール構成部品であって溶着リブのうち、径方向最内側に形成された溶着リブの径方向内側端部から、径方向最外側に形成された溶着リブの径方向外側端部までの径方向に沿った長さが、ハブの厚みの50%以上の長さとされている。
【0021】
の態様の発明によれば溶着リブのうち、径方向最内側に形成された溶着リブの径方向内側端部から、径方向最外側に形成された溶着リブの径方向外側端部までの径方向に沿った長さが、ハブの厚みの50%以上の長さとされている。したがって、溶着リブが上フランジの変形支点になって上フランジの外周部側が下フランジ側へ接近するように傾くのが抑制又は防止され、かつ溶着リブによる溶着強度が向上される。よって、記録テープの巻き締まり力によるハブの変形以上に上フランジが変形するのが抑制される。
【発明の効果】
【0022】
以上のように、本発明によれば、記録テープの巻き締まり力によるハブの変形以上に上フランジが変形するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本実施形態に係るリールを備えた記録テープカートリッジの斜視図である。
図2】本実施形態に係るリールを備えた記録テープカートリッジを上から見た場合の分解斜視図である。
図3】本実施形態に係るリールを備えた記録テープカートリッジを下から見た場合の分解斜視図である。
図4】本実施形態に係るリールの溶着構造を一部拡大断面で示す斜視図である。
図5】本実施形態に係るリールの上フランジに形成された溶着リブを示す底面図である。
図6】本実施形態に係るリールの上フランジに形成された溶着リブを示す斜視図である。
図7】(A)本実施形態に係るリールの記録テープを巻回する前の溶着構造を示す断面図である。(B)図7(A)の一部を拡大して示す断面図である。
図8】(A)本実施形態に係るリールの記録テープを巻回した後の溶着構造を示す断面図である。(B)図8(A)の一部を拡大して示す断面図である。
図9】本実施形態に係るリールの上フランジに形成された溶着リブの変形例を示す底面図である。
図10】(A)本実施形態に係るリールと比較例に係るリール(溶着リブが1列)の上フランジの変形量を示すグラフである。(B)本実施形態に係るリールと比較例に係るリール(溶着リブの幅が小)の上フランジの変形量を示すグラフである。
図11】(A)比較例に係るリールの記録テープを巻回した後の溶着構造を示す断面図である。(B)図11(A)の一部を拡大して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明に係る実施の形態について、図面を基に詳細に説明する。本実施形態に係るリール20は、ケース12内に1つだけ収容される記録テープカートリッジ10に適用される。したがって、図1に示されるように、説明の便宜上、記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填方向を矢印Aで示し、それを記録テープカートリッジ10の前方向(前側)とする。
【0025】
そして、矢印Aと直交する矢印Bで示す方向を記録テープカートリッジ10の右方向(右側)とし、矢印A及び矢印Bと直交する矢印Cで示す方向を記録テープカートリッジ10及びリール20の上方向(上側)とする。また、以下において、リール20の径方向及び周方向を、単に「径方向」及び「周方向」という場合がある。
【0026】
図1図3に示されるように、記録テープカートリッジ10は、略矩形箱状のケース12を有している。このケース12は、ポリカーボネート(PC)等の樹脂製の上ケース14と下ケース16とが、それぞれ天板14Aの周縁に立設された周壁14Bと、底板16Aの周縁に立設された周壁16Bとを互いに当接させた状態で、超音波溶着やビス止め等によって接合されて構成されている。
【0027】
すなわち、例えば上ケース14及び下ケース16には、ビスボス15がそれぞれ各コーナー部近傍に形成されており、下ケース16の下面側から、そのビスボス15に図示しないビスが螺合されることにより、ケース12が組み立てられるようになっている。そして、ケース12の内部には、樹脂製のリール20が1つだけ回転可能に収容されている。
【0028】
このリール20は、上端部側が開口された有底円筒状のハブ22と、その下端部側に設けられる下フランジ26とが一体に成形され、環状の上フランジ24がハブ22の上端部側に超音波溶着されて設けられることで構成されている。そして、軸心部を構成するハブ22の外周面に、情報記録再生媒体としての磁気テープ等の記録テープTが巻回され、互いに対向する上フランジ24と下フランジ26とによって、その巻回された記録テープTの幅方向両端部が保持(位置規制)されている。
【0029】
なお、図4に示されるように、ここで言う、有底円筒状のハブ22とは、円筒状をなす壁部が一重とされたハブのことである。そして、環状の上フランジ24とは、ハブ22の円筒状の空洞に対応した後述する孔部25A(短円筒部25)を有する上フランジのことである。また、ハブ22と上フランジ24との溶着構造100については、後で詳述する。
【0030】
ハブ22の底壁(底部)28の下面(外面)には、リールギア44が環状に形成されており、下ケース16の略中央部には、そのリールギア44を外部に露出させるためのギア開口部40が穿設されている。このギア開口部40から露出されるリールギア44が、ドライブ装置の回転シャフト(図示省略)に形成された駆動ギア(図示省略)に噛合されて回転駆動されることにより、ケース12内において、リール20がケース12に対して相対回転可能とされている。
【0031】
また、底壁28の下面におけるリールギア44の径方向内側には、磁性材料でできた環状金属板であるリールプレート46が、インサート成形により、同軸的かつ一体的に固着されている。そして、そのリールプレート46が、ドライブ装置の回転シャフトに設けられた環状のマグネット(図示省略)の磁力によって吸着・保持されるようになっている。更に、上ケース14及び下ケース16の内面にそれぞれ部分的に突設されて、ギア開口部40と同軸の円形の軌跡上にある内壁としての遊動規制壁42によって、リール20がガタつかないように保持されている。
【0032】
また、ケース12の右壁には、リール20に巻装された記録テープTを引き出すための開口18が形成されており、この開口18から引き出される記録テープTの自由端部には、ドライブ装置の引出部材(図示省略)によって係止されつつ引き出し操作されるリーダー部材としてのリーダーピン30が固着されている。リーダーピン30の記録テープTの幅方向端部より突出した両端部には、環状溝32が形成されており、この環状溝32が引出部材のフック等に係止されるようになっている。
【0033】
また、ケース12の開口18の内側、即ち上ケース14の天板14Aの内面及び下ケース16の底板16Aの内面には、ケース12内において、リーダーピン30を位置決めして保持する上下一対のピン保持部36が設けられている。このピン保持部36は、記録テープTを引き出す側が開放された略半円形状をしており、直立状態のリーダーピン30の両端部34は、その開放側からピン保持部36内に出入可能とされている。
【0034】
また、ピン保持部36の近傍には、板バネ38が固定配置されており、この板バネ38の二股状の先端部がリーダーピン30の上下両端部34にそれぞれ係合してリーダーピン30をピン保持部36に保持するようになっている。なお、リーダーピン30がピン保持部36に出入する際には、板バネ38の先端部は適宜弾性変形してリーダーピン30の移動を許容する構成である。
【0035】
また、その開口18は、ドア50によって開閉されるようになっている。このドア50は、開口18を閉塞可能な大きさの略矩形板状に形成され、ケース12の右壁に沿って移動できるように、開口18内側の天板14A及び底板16Aには、ドア50の上下端部を摺動可能に嵌入させる溝部64が形成されている。
【0036】
また、ドア50の後端部中央には、シャフト52が突設されており、そのシャフト52には、コイルバネ58が挿嵌されている。そして、シャフト52の後端には、そのコイルバネ58を脱落防止とする拡開部54が形成されている。また、下ケース16には、そのシャフト52に挿嵌されたコイルバネ58の後端を係止する係止部62を有する支持台60が突設されている。
【0037】
したがって、ドア50は、シャフト52が支持台60上に摺動自在に支持されるとともに、コイルバネ58の後端が係止部62に係止されることにより、そのコイルバネ58の付勢力によって、開口18の閉塞方向へ常に付勢される構成である。なお、開口18の開放時にシャフト52を支持する支持台66を、支持台60の後方側に更に突設しておくことが好ましい。
【0038】
また、ドア50の前端部には、開閉操作用の凸部56が外方に向かって突設されている。この凸部56が、記録テープカートリッジ10のドライブ装置への装填に伴い、そのドライブ装置側の開閉部材(図示省略)と係合するようになっている。これにより、ドア50がコイルバネ58の付勢力に抗して開放される構成である。
【0039】
また、図2図3に示されるように、ケース12の左後部には、記録テープTへの記録可・不可が設定されるライトプロテクト70が左右方向にスライド可能に設けられており、ケース12の後壁には、ライトプロテクト70を人手で操作するための操作突起72を突出させる開孔68が形成されている。この開孔68は、上ケース14と下ケース16とを接合したときに、上ケース14の周壁14Bに形成された切欠部68Aと、下ケース16の周壁16Bに形成された切欠部68Bとによって形成される構成である。
【0040】
また更に、下ケース16には、ライトプロテクト70の突部74が露出される長孔69が左右方向に長く穿設されており、記録テープカートリッジ10がドライブ装置に装填されたときに、そのドライブ装置側でライトプロテクト70の位置を検知して、記録テープTへの記録可・不可が自動的に判断されるようになっている。なお、この突部74は下ケース16の下面から突出することはない。
【0041】
また、ハブ22の底壁28の上面周縁には、係合ギア48が所定の間隙を隔てて(等間隔に、例えば120度間隔で)複数(例えば3個)立設されており、その係合ギア48の間で、リールギア44上となる所定位置には、貫通孔29が複数(この場合は120度間隔で3個)穿設されている。
【0042】
そして、そのハブ22の内部には、樹脂材で成形された略円板状の制動部材80が挿設されている。つまり、ハブ22の円筒状の空洞は、制動部材80を含む制動機構を収容可能な空間である。また、上フランジ24の孔部25Aは、制動機構が通過乃至動作可能な孔である。
【0043】
制動部材80の下面80Aの周縁には、係合ギア48と噛合可能な制動ギア84が環状に形成されている。そして、制動部材80の上面には、上ケース14の天板14Aの内面から下方へ向かって突設された平面視略十字状の回転規制リブ76が内部に挿入される平面視略十字状の係合突起86が、その回転規制リブ76の高さよりも若干高くなるように立設されている。これにより、制動部材80は、ケース12(上ケース14)に対して回転不能とされるとともに、ハブ22内において、上下方向に移動可能とされる構成である。
【0044】
また、上ケース14と制動部材80との間には、圧縮コイルスプリング98が配設されている。すなわち、この圧縮コイルスプリング98は、その一端が上ケース14の回転規制リブ76の外側に突設された環状突起78の内側(回転規制リブ76と環状突起78の間)に当接し、他端が制動部材80の上面に設けられた環状溝88内に当接した状態で配設されている。そして、この圧縮コイルスプリング98の付勢力により、制動部材80は、常時下方に向かって付勢されるようになっている。
【0045】
したがって、記録テープカートリッジ10は、不使用時(ドライブ装置に装填されないとき)において、常時制動ギア84が係合ギア48と噛合する状態とされて、リール20のケース12に対する相対回転が阻止された回転ロック状態とされる構成である。そして、リール20は、この付勢力によって下ケース16側に押し付けられ、リールギア44をギア開口部40から露出させるようになっている。
【0046】
また、ハブ22の内部で、かつ制動部材80の下側(底壁28と制動部材80との間)には、樹脂材で成形された平面視略正三角形状の解除部材90が挿設されている。解除部材90には、適宜位置に所定の形状とされた貫通孔92が複数(例えば3つ)穿設されており、解除部材90の軽量化が図られている。そして、解除部材90の下面で、かつ各頂点部分には、貫通孔29に挿通されて底壁28の下面からリールギア44上に所定高さで突出する脚部94が突設されている。
【0047】
また、解除部材90の上面中央には平面状の支持凸部96が形成されており、制動部材80の下面80A中央に突設された略半球状の解除突起82が当接するようになっている(図2図3参照)。これにより、制動部材80と解除部材90との接触面積が低減され、使用時(リール20の回転時)における摺動抵抗が軽減される構成である。なお、制動部材80の材質としては、例えばポリアセタール(POM)が用いられ、解除部材90の材質としては、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)が用いられる。
【0048】
以上のような構成の記録テープカートリッジ10において、次に本実施形態に係るリール20の溶着構造100について詳細に説明する。なお、下フランジ26が一体成形されたハブ22と、ハブ22に溶着される前の上フランジ24とで、本実施形態に係るリール構成部品が構成されている。
【0049】
図4図7(A)に示されるように、上フランジ24の内周部側(内周縁部)には、ハブ22の内部に、その内周面に沿うように挿入される短円筒部25が立設されている。すなわち、短円筒部25の外径は、ハブ22の内径とほぼ同一とされている。そして、短円筒部25の外周面には、底面視略半円弧形状の複数(例えば6個)の凹部25Bが周方向に等間隔に形成されている(図5参照)。
【0050】
また、図4に示されるように、ハブ22の内周面には、上下方向に延在する複数の規制リブ22Cが周方向に等間隔に形成されている。この規制リブ22Cにより、制動部材80がハブ22内を上下方向に移動するときに、その制動部材80の径方向の位置が外側から規制されるようになっている。また、ハブ22の内周面には、各規制リブ22Cとは別に、上下方向に延在する複数(例えば6個)の凸部22Dが周方向に等間隔に形成されている。この凸部22Dは、凹部25Bとほぼ同じ大きさの断面略半円弧形状に形成されている。
【0051】
したがって、上フランジ24の短円筒部25は、各凹部25Bを各凸部22Dに嵌合させつつ、ハブ22の内部に挿入されるようになっている。これにより、ハブ22に対して上フランジ24が回り止めされる(周方向の位置が位置決めされる)構成になっており、後述する溶着リブ102が径方向に一重とされている部位の少なくとも一部に、規制リブ22Cが対応して配置される構成になっている。
【0052】
更に、図4図7(A)に示されるように、短円筒部25の径方向外側における上フランジ24の下面24Aには、ハブ22の上端面22Aに溶着(結合)するための溶着リブ102が一体に形成されている。本実施形態に係る溶着リブ102は、図5に示されるように、底面視(平面視)で、ハブ22(短円筒部25)の仮想中心角θが90度となる任意の範囲内で(どの範囲を取っても)、その溶着リブ102が径方向に複数(例えば2列)並んだ領域Eが少なくとも1つ存在する配置とされている。
【0053】
より具体的に説明すると、溶着リブ102は、内側リブ104と外側リブ106とで構成されており、内側リブ104及び外側リブ106は、それぞれ全周に亘って断続的に複数形成されている。そして、内側リブ104と外側リブ106とは、周方向のどの位置においても少なくとも一重に配置されるようになっている。つまり、径方向で隣り合う内側リブ104及び外側リブ106の少なくとも一部(各両端部)は、周方向にオーバーラップする部分を有しており、そのオーバーラップする部分が領域Eとされている。
【0054】
また、図4に示されるように、上フランジ24の下面24Aに形成された溶着リブ102(内側リブ104及び外側リブ106)が超音波振動エネルギーによって溶融されることにより、溶着部108(溶融部位)が形成され、更に、その溶着部108におけるハブ22の上端面22A(溶着リブ102が形成されていない面側)には、溶着影響部110が形成される。
【0055】
溶着影響部110は、ハブ22から上フランジ24を剥がして、ハブ22の上端面22Aに残った溶融樹脂を削り取ったときに視認できる筋状の溶着跡のことであり、この溶着影響部110も、当然ながら、平面視で、溶着前の溶着リブ102(内側リブ104及び外側リブ106)と同じ配置となっている。
【0056】
なお、溶着影響部110は、溶着部108に望むハブ22又は上フランジ24の材料の内部(元々溶着リブ102が無かった部分の内部)に溶着の影響が及んでいる部位と捉えることもできる。また、溶着影響部110は、主に、溶着リブ102の先端が当たる部分に形成されるため、溶着時に溶着リブ102と対峙していた部位と捉えることもできる。
【0057】
また、図4に示されるように、ハブ22の上端面22Aの径方向外側には、溶融した溶着リブ102(特に外側リブ106)がハブ22の外周面に流出するのを抑制又は防止するための環状の突条部22Bが形成されている。したがって、溶着影響部110が形成されるハブ22の上端面22Aとは、ハブ22の上端部側であればよく、必ずしも先端面である必要はない。
【0058】
つまり、本実施形態に係るリール20の場合、突条部22Bの上端面(先端面)に溶着リブ102が形成されることはないので、その突条部22Bの上端面(先端面)は、ハブ22の上端面22Aには含まれない。なお、本実施形態に係るリール構成部品には、上端面22Aに突条部22Bが形成されていないハブ22も含まれる。
【0059】
また、図7(B)に示されるように、領域Eに配置された溶着後の溶着リブ102(溶着部108)において、内側リブ104の径方向内側端部(上端面22A側の端面)から、外側リブ106の径方向外側端部(上端面22A側の端面)までの径方向に沿った長さ(幅)Wが、ハブ22の厚みL1の50%以上の長さとされている。なお、長さ(幅)Wは、溶着前の内側リブ104と外側リブ106の根元における径方向の位置から求めてもよい。
【0060】
なお、その長さWは、内側リブ104と外側リブ106との間の隙間Sの径方向に沿った長さL2を含んだ長さとなっており、隙間Sの長さL2は、例えば溶着後の内側リブ104や外側リブ106の径方向に沿った長さ(幅)とほぼ同じ長さとされている。また、ハブ22の厚みL1が軸線方向に不均一な場合は、ハブ22の上端部側において支配的な厚み寸法を厚みL1としてもよい。
【0061】
以上のような構成とされたリール20(リール構成部品)の溶着構造100において、次にその作用について説明する。
【0062】
まず、上フランジ124の下面124Aに溶着リブ128が全周に亘って連続的に一重で形成された比較例に係るリール120について説明する。図11に示されるように、比較例に係るリール120のハブ122に記録テープTを巻回したときには、その記録テープTの巻き締まり力により、ハブ122の上端部側が径方向外側へ傾くように変形する。
【0063】
すると、溶着リブ128(溶着部)を変形支点として、上フランジ124の外周部側が下フランジ126側へ接近するように、ハブ122の変形以上に変形する。すなわち、ハブ122の変形に追従しただけでは、図11(A)に一点鎖線で示される位置までしか上フランジ124が変形しないが、実際には、その変形以上に変形する。
【0064】
ここで、その上フランジ124の外周部側における具体的な変形量が、図10のグラフにて示されている。図10(A)の左側には、比較例に係るリール120をサンプルとして3個用意し、各上フランジ124の外周部側の変形量をプロットした範囲が示されている。そして、図10(B)には、比較例に係るリール120における溶着リブ128の幅(径方向に沿った長さ)Wが0.5mmの場合と1.0mmの場合とが、それぞれ黒丸でプロットされて示されている。
【0065】
なお、図10(A)で示される変形量の測定には、ミツトヨ製のコンピューター数値制御の三次元測定器である「Crysta」を使用した。また、図10(B)で示される変形量は、解析ソフト「ABAQUS」を用いたシミュレーション結果であり、比較例に係るリール120のハブ122に記録テープTを巻回したモデルを作成し、巻回後の上フランジ124の最外周におけるノード移動量を上フランジ124の変形量とした。
【0066】
一方、本実施形態に係るリール20は、上記構成とされている。つまり、上フランジ24の下面24Aとハブ22の上端面22Aとが径方向の複数の点(例えば2点)で溶着される部位(溶着部108)が周方向に形成されている(全周に亘って複数形成されている)。これにより、溶着リブ102(溶着部108)が上フランジ24の変形支点になって上フランジ24の外周部側が下フランジ26側へ接近するように傾くのが抑制又は防止される。
【0067】
したがって、図8に示されるように、本実施形態に係るリール20のハブ22に記録テープTを巻回し、その記録テープTの巻き締まり力によってハブ22の上端部側が径方向外側へ傾いても、そのハブ22の変形以上に上フランジ24が変形するのを抑制することができる。
【0068】
すなわち、ハブ22の変形に追従しただけでは、図8(A)に一点鎖線で示される位置までしか上フランジ24が変形しないが、実際には、その変形以上に変形する。しかしながら、その変形量は、図11に示される比較例に係るリール120よりも低減されている。
【0069】
ここで、その上フランジ24の外周部側における具体的な変形量が、比較例と共に図10のグラフにて示されている。図10(A)の右側には、本実施形態に係るリール20をサンプルとして3個用意し、各上フランジ24の外周部側の変形量をプロットした範囲が示されている。そして、図10(B)には、本実施形態に係るリール20における溶着リブ102の幅(径方向に沿った長さ)Wが1.5mmの場合が、白四角でプロットされて示されている。
【0070】
なお、図10(B)で示される変形量は、上記の通り、解析ソフト「ABAQUS」を用いたシミュレーション結果であり、本実施形態に係るリール20のハブ22に記録テープTを巻回したモデルを作成し、巻回後の上フランジ24の最外周におけるノード移動量を上フランジ24の変形量とした。
【0071】
各グラフから判るように、本実施形態に係るリール20の方が、比較例に係るリール120よりも、上フランジ24の外周部側における変形量が低減されている。このように、本実施形態に係るリール20(リール構成部品)によれば、記録テープTの巻き締まり力によるハブ22の変形以上に変形する上フランジ24の変形量を低減させることができる。
【0072】
また、溶着リブ102は、周方向のどの位置においても少なくとも一重に配置されている。つまり、溶着リブ102は、内側リブ104及び外側リブ106によって周方向に隙間がない構成とされている。したがって、周方向に隙間がある構成に比べて、上フランジ24の下面24Aとハブ22の上端面22Aとを溶着(結合)したときの溶着リブ102による(溶着部108の)溶着強度を向上させることができる。よって、記録テープTの巻き締まり力によるハブ22の変形以上に変形する上フランジ24の変形量をより一層低減させることができる。
【0073】
また、領域Eに配置された溶着リブ102の列数は、径方向に2列とされている。すなわち、溶着リブ102は、内側リブ104と外側リブ106とでのみ構成されている。したがって、領域Eに配置された溶着リブ102の列数が、径方向に3列以上とされている構成に比べて、溶着リブ102(内側リブ104及び外側リブ106)を溶融させるための超音波振動エネルギーが少なくて済む。よって、リール20の生産性を向上させることができる。
【0074】
更に、凸部22D及び凹部25Bにより、ハブ22に対する上フランジ24の周方向の位置が位置決めされ、溶着リブ102が径方向に一重とされている部位の少なくとも一部に、規制リブ22Cが対応して配置されている。ここで、規制リブ22Cが形成されている部位では、ハブ22の上端部側が径方向外側へ傾き難い。したがって、溶着リブ102が径方向に一重とされている部位であっても、ハブ22の上端部側の径方向外側へ傾くような変形を抑制することができる。
【0075】
なお、本実施形態に係る溶着リブ102の形状は、図5図6に示される形状に限定されるものではない。例えば図9(A)に示されるように、各溶着リブ102が、底面視(平面視)で、周方向に対して傾斜した形状に形成されていてもよい。また、内側リブ104及び外側リブ106が、例えば図9(B)に示されるように、底面視(平面視)で、それぞれ周方向に対して異なる角度で傾斜した形状に形成されていてもよい。更に、内側リブ104及び外側リブ106が、例えば図9(C)に示されるように、底面視(平面視)で、それぞれ曲面(凸面)を径方向内側及び径方向外側へ向けた円弧形状に形成されていてもよい。
【0076】
以上、本実施形態に係るリール20(リール構成部品)について、図面を基に説明したが、本実施形態に係るリール20(リール構成部品)は、図示のものに限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、適宜設計変更可能なものである。
【0077】
例えば、溶着リブ102は、上フランジ24の下面24Aではなく、ハブ22の上端面22Aに一体に形成されていてもよく、上フランジ24の下面24A及びハブ22の上端面22Aの両方に形成されていてもよい。すなわち、例えば上フランジ24の下面24Aに内側リブ104が形成され、ハブ22の上端面22Aに外側リブ106が形成される構成とされていてもよい。
【0078】
また、溶着リブ102は、内側リブ104と外側リブ106の径方向に2列で形成される構成に限定されるものではなく、径方向に3列以上で形成されていてもよい。また、領域Eに配置された溶着リブ102のうち、径方向最内側に形成された内側リブ104の径方向内側端部から、径方向最外側に形成された外側リブ106の径方向外側端部までの径方向に沿った長さ(幅)Wが、ハブ22の厚みの50%以上の長さとされることが望ましいが、50%未満であってもよい。
【0079】
また、溶着リブ102(内側リブ104及び外側リブ106)は、周方向のどの位置においても少なくとも一重に配置される構成に限定されるものではない。したがって、径方向で隣り合う溶着リブ102(内側リブ104及び外側リブ106)の少なくとも一部が、周方向にオーバーラップする部分を有しない構成とされていてもよい。
【0080】
また、溶着リブ102(内側リブ104及び外側リブ106)は、それぞれ全周に亘って断続的に形成される構成に限定されるものではなく、例えば全周に亘って連続的に(環状に)形成される構成とされていてもよい。更に、溶着リブ102が径方向に一重とされている部位と規制リブ22Cとが対応して配置される構成になっていなくてもよい。
【符号の説明】
【0081】
20 リール
22 ハブ(リール構成部品)
24 上フランジ(リール構成部品)
26 下フランジ(リール構成部品)
102 溶着リブ
108 溶着部
110 溶着影響部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11