特許第6231185号(P6231185)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231185
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】ポリウレタン支持パッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/24 20120101AFI20171106BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   B24B37/24 C
   H01L21/304 622F
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2016-504252(P2016-504252)
(86)(22)【出願日】2014年3月19日
(65)【公表番号】特表2016-512795(P2016-512795A)
(43)【公表日】2016年5月9日
(86)【国際出願番号】KR2014002309
(87)【国際公開番号】WO2014148816
(87)【国際公開日】20140925
【審査請求日】2016年2月16日
(31)【優先権主張番号】10-2013-0029176
(32)【優先日】2013年3月19日
(33)【優先権主張国】KR
(31)【優先権主張番号】10-2014-0031975
(32)【優先日】2014年3月19日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】特許業務法人池内・佐藤アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】シン、トン−モク
(72)【発明者】
【氏名】キム、ナ−リ
(72)【発明者】
【氏名】アン、ピョン−イン
(72)【発明者】
【氏名】チェ、サン−スン
(72)【発明者】
【氏名】テ、ヨン−ジ
(72)【発明者】
【氏名】ユン、キョン−ヨン
(72)【発明者】
【氏名】シン、チャン−フン
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−023691(JP,A)
【文献】 特開2012−102182(JP,A)
【文献】 特開平02−220838(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/025082(WO,A2)
【文献】 特開2011−235385(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/24
H01L 21/304
C08G 18/00
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重量平均分子量が220,000〜1,000,000であるポリウレタン樹脂およびDMF溶媒を含む樹脂組成物を湿式凝固する段階と、
前記樹脂組成物の湿式凝固を水洗する段階と、
前記水洗した湿式凝固物を40〜90℃の浸漬溶液に浸漬する段階と、を含み、
前記浸漬段階以降にポリウレタン樹脂の重量平均分子量が10〜80%減少するポリウレタン支持パッドの製造方法。
【請求項2】
前記浸漬溶液は、水、グリセリン水溶液およびアルコール水溶液からなる群より選択された1種以上を含む、請求項1に記載のポリウレタン支持パッドの製造方法。
【請求項3】
前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、300,000〜500,000である、請求項1または2に記載のポリウレタン支持パッドの製造方法。
【請求項4】
前記湿式凝固物を浸漬する段階は、1時間〜4週間にかけて行われる、請求項1〜3のいずれか一項に記載のポリウレタン支持パッドの製造方法。
【請求項5】
前記浸漬段階以降にポリウレタン樹脂のガラス転移温度が5〜50℃減少する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のポリウレタン支持パッドの製造方法。
【請求項6】
前記湿式凝固物の表面を研磨する段階、または
前記湿式凝固物の表面に接着層を形成する段階をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載のポリウレタン支持パッドの製造方法。
【請求項7】
前記ポリウレタン樹脂は、常温の30%DMF溶液状態で10,000〜1,000,000cpsの粘度を有する、請求項1〜6のいずれか一項に記載のポリウレタン支持パッドの製造方法。
【請求項8】
前記樹脂組成物は、陰イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群より選択された1種以上の界面活性剤をさらに含む、請求項1〜7のいずれか一項に記載のポリウレタン支持パッドの製造方法。
【請求項9】
前記陰イオン性界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸誘導体、コハク酸、コハク酸誘導体、ドデシルスルフェートおよびドデシルスルフェート誘導体からなる群より選択された1種以上の化合物を含む、請求項8に記載のポリウレタン支持パッドの製造方法。
【請求項10】
前記陰イオン性界面活性剤は、ドデシルベンゼンスルホン酸またはその誘導体と、コハク酸またはその誘導体との混合物を含む、請求項8に記載のポリウレタン支持パッドの製造方法。
【請求項11】
前記非イオン性界面活性剤は、シリコン系高分子、シリコンオイル、グリセロール系高分子および炭化水素系高分子からなる群より選択された1種以上の化合物を含む、請求項8に記載のポリウレタン支持パッドの製造方法。
【請求項12】
前記樹脂組成物は、ポリウレタン樹脂1〜30wt%と、
前記DMF溶媒50〜90wt%と、
残量の陰イオン性界面活性剤および非イオン性界面活性剤からなる群より選択された1種以上の界面活性剤と、を含む、請求項8〜11のいずれか一項に記載のポリウレタン支持パッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリウレタン支持パッドの製造方法に関し、より詳細には、内部に長くて大きい気孔を均一に形成し、低い硬度、優れた圧縮率および高い弾性率を有し、より均一で高い効率の研磨を実現することができるポリウレタン支持パッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高集積度を要求する半導体装置またはディスプレイ装置に用いられる基板は、微細で精密な表面が要求されるため、多様な平坦化方法が適用されている。特に、半導体素子またはディスプレイ装置の高集積化および高性能化の傾向に伴い、研磨パッドと被研磨体との間に研磨粒子および多様な化学成分を含むスラリー組成物を供給しながら、研磨パッドと被研磨体を相対的に移動させて研磨する方法が一般に用いられている。このような研磨方法では、より精密な研磨のために、研磨または加工過程において一定の位置と姿勢を維持可能に前記被研磨体を一定の支持パッド上に固定させている。
【0003】
特に、ディスプレイ用ガラス基板として用いられるためには、ガラス基板表面の粗度(roughness)および厚みばらつき(TTV)が主要な管理因子であり、サブマイクロン(sub−micron)〜数十マイクロン範囲内で調節が可能でなければならない。また、うねり(waviness)を40nm水準に管理しなければならず、特にTFT用ガラス基板として適用するためには20nm内外のうねりの管理が必要である。
【0004】
このような細密な研磨が可能になるためには、研磨工程の条件および装置の調節だけでなく、用いられる支持パッドが高い圧縮率および圧縮回復率を有さなければならず、支持パッドの全領域にわたってより均一な厚さ、圧力分布および張力分布を有さなければならない。
【0005】
しかし、以前に知られている支持パッドは、内部に形成された起泡が不均一な大きさおよび分布を示し、圧縮率および圧縮回復率などの物性もよくないため、より均一で細密な研磨が要求される分野、例えばディスプレイ用ガラス基板の研磨に適用するには十分でなかった。
【0006】
したがって、均一で一定の形態の気孔を内部に含み、圧縮率および圧縮回復率などの物性が改善され、より均一で高い効率の研磨を実現することができるポリウレタン支持パッドの製造方法に対する開発が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、製造されるパッド内部に長くて大きい気孔を均一に形成し、低い硬度、優れた圧縮率などを示すようにし、より均一で高い効率の研磨を実現することができるポリウレタン支持パッドの製造方法を提供することに目的がある。
【0008】
また、本発明は、内部に楕円形の気孔を均一に含み、低い硬度、優れた圧縮率を示すポリウレタン支持パッドを提供することに目的がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、重量平均分子量が220,000〜1,000,000であるポリウレタン樹脂およびDMF溶媒を含む樹脂組成物を湿式凝固する段階と、前記湿式凝固物を40〜90℃の浸漬溶液に浸漬する段階と、を含むポリウレタン支持パッドの製造方法を提供する。
【0010】
また、本発明は、50μm〜2mmの最長直径および3〜10の偏平比を有する気孔を内部に含有し、50,000〜150,000の重量平均分子量を有するポリウレタン支持パッドを提供する。
【0011】
以下、発明の具体的な実施形態に係るポリウレタン支持パッドの製造方法およびポリウレタン支持パッドについてより詳細に説明する。
【0012】
本明細書で、「支持パッド」とは、半導体またはディスプレイ装置に用いられる基板製造過程の中、研磨工程で研磨対象膜をキャリアに密着または固定させる役割を果たすパッドを意味する。
【0013】
本発明の一実施形態によれば、重量平均分子量が220,000〜1,000,000であるポリウレタン樹脂およびDMF溶媒を含む樹脂組成物を湿式凝固する段階と、前記湿式凝固物を40〜90℃の浸漬溶液に浸漬する段階と、を含むポリウレタン支持パッドの製造方法が提供され得る。
【0014】
従来、ポリウレタン支持パッドの内部に長い楕円形の気孔を容易に形成するために、支持パッドの製造過程で高い分子量を有するポリウレタン樹脂を用いることがあった。しかし、このように高い分子量を有するポリウレタン樹脂を用いて支持パッドを製造する場合、気孔の形状の側面では多少有利な点があったが、製造される支持パッドの硬度が大幅に高くなり、圧縮率または圧縮回復率が商業用製品に適用可能な程度に確保されない限界があった。
【0015】
また、支持パッドの硬度を低めて研磨工程の衝撃吸収性能を高めようとする試みがあったが、このような以前の方法は、ほとんど低い分子量のポリウレタン樹脂を用いたりその他添加剤を追加的に用いることに過ぎず、製造される支持パッドが十分な機械的物性を有さないか、または支持パッド内部に気孔が十分に形成されないという限界があった。
【0016】
そこで、本発明者らは、ポリウレタン支持パッドの製造に関する研究を重ねた結果、ポリウレタン樹脂組成物を湿式凝固すれば、内部に長い楕円形の気孔が均一に形成され、前記湿式凝固段階の結果物を特定温度の浸漬溶液に浸漬すれば、前記気孔の形状は維持しながらも、最終的に製造されるポリウレタン支持パッドの重量平均分子量および密度を低めることができるという点を実験を通じて確認し、発明を完成した。
【0017】
前記発明の一実施形態に係る製造方法により最終的に提供されるポリウレタン支持パッドは、一定水準以上の分子量を有するポリウレタン樹脂を湿式凝固した時に形成される気孔の形状や外部形態を維持することができると共に、より低い密度、硬度および重量平均分子量を有することができるため、支持パッドとして確保しなければならない物性をより容易に確保できる。
【0018】
つまり、前記ポリウレタン支持パッドは、これと同等水準の重量平均分子量を有するポリウレタン樹脂が含み難い形態の気孔、例えば大きい偏平比を有する長い楕円形の気孔を内部に均一に含むことができる。また、前記支持パッドは、以前に知られた通常の方法により得られるポリウレタン樹脂に比べて低い密度および硬度を有することができるため、 より高い圧縮率および圧縮回復率などを実現することができる。
【0019】
これによって、前記発明の一実施形態により提供されるポリウレタン支持パッドの内部には、長い楕円形の気孔が均一に複数分布されて支持パッドと研磨対象膜との間に閉じ込められている(trap)空気を容易に内部に伝達を受けることができ、研磨段階で加えられる力を支持パッド全体および被研磨体全体に均一に分配してより均一で細密な研磨を行うことができる。つまり、前記ポリウレタン支持パッドは、より高い圧縮率および圧縮回復率と優れた支持性能などを有することができる。
【0020】
前記ポリウレタン樹脂は、220,000〜1,000,000の重量平均分子量を有することができ、好ましくは300,000〜500,000範囲の重量平均分子量を有することができる。220,000未満の重量平均分子量のポリウレタン樹脂を用いて製造された支持パッドは、内部に形成された気孔が不均一に示されたり、長い楕円形の形状を示すことができず、圧縮率または圧縮回復率が低くなることがある。そして、1,000,000を超える重量平均分子量を有するポリウレタン樹脂は、粘度が高くて配合およびコーティング段階における加工性が良くなく、樹脂の分子量を浸漬工程により所望の範囲に低めるには長時間がかかるおそれがある。
【0021】
前記重量平均分子量が220,000〜1,000,000であるポリウレタン樹脂およびDMF溶媒を含む樹脂組成物を湿式凝固する段階以降に、前記湿式凝固物を40〜90℃の浸漬溶液に浸漬する段階が行われ得る。
【0022】
前述のように、前記浸漬過程では、前記ポリウレタン樹脂組成物の湿式凝固物の内部に形成された気孔の形状が維持されながらも、前記ポリウレタン樹脂のウレタン結合またはエステル結合部分が前記浸漬段階の浸漬溶液内で加水分解(hydrolysis)またはエステル交換反応(trans−esterification)を行い、最終的に得られるポリウレタン支持パッドの重量平均分子量および密度を低めることができる。
【0023】
前記浸漬段階の浸漬溶液は、水、グリセリン水溶液、アルコール水溶液またはこれらの混合物を含むことができる。前記水は、一般的な水を制限なしに用いることができ、蒸溜水、超純水なども使用が可能である。また、前記グリセリン水溶液は、グリセリンを一部含む水溶液を意味し、グリセリンの濃度に制限なしに用いることができるが、好ましくは0.1〜50%のグリセリン水溶液を用いることができる。そして、前記アルコール水溶液の具体的な例としては、エタノールとIPA水溶液などが挙げられ、アルコールの濃度が高ければパッド表面でスウェリング(swelling)現象が発生することがあり、アルコールの濃度は10%以下であることが好ましい。
【0024】
特に、前記ポリウレタン樹脂は、水またはグリセリン水溶液で加水分解反応が容易に起こり得るため、前記一実施形態のポリウレタン支持パッドの製造方法で浸漬溶液としては水またはグリセリン水溶液を含むことがより好ましい。
【0025】
前記浸漬段階は、40〜90℃の温度、好ましくは50℃〜80℃の温度で行われ得る。前記浸漬段階が過度に低い温度で行われると、高い圧縮率を実現できる範囲まで十分に分子量を低めることができず、ポリウレタン支持パッドが均一な圧力分布または張力分布を有し難く、これにより製造されたポリウレタン支持パッドを用いると不均一な研磨または製品不良が発生するおそれがある。また、前記浸漬段階が過度に高い温度で行われると、ポリウレタン樹脂層が変成するおそれがあり、追加的に使用可能な接着層なども揮発または変性するおそれある。
【0026】
そして、前記浸漬段階は、1時間〜4週間、好ましくは1日〜3週間にかけて行われ得る。前記浸漬段階が1時間未満行われる場合、分子量が十分に減少せず、4週間を超えて行われる場合、支持パッドの物性が低下するおそれがある。
【0027】
前記浸漬段階以降に前記ポリウレタン樹脂の重量平均分子量が10〜80%減少することができる。ポリウレタン樹脂の重量平均分子量は、浸漬時間の経過に伴って減少量が増加し、3週間以上浸漬する場合、65〜80%減少することができる。前述のように、前記浸漬段階では気孔の形態および大きさは維持されながらも、ポリウレタン樹脂組成物が凝固した結果物の重量平均分子量は減少して最終的に得られる支持パッドの密度を低めることができ、このような支持パッドは、より高い圧縮率および圧縮回復率と優れた支持性能などを有することができる。
【0028】
また、前記浸漬段階以降に前記ポリウレタン樹脂のガラス転移温度が5〜50℃、好ましくは10〜40℃減少することができる。前記ポリウレタン樹脂は、浸漬段階を実施することによってそれぞれのガラス転移温度が低くなることができ、これにより、以前に知られた通常の方法で得られるポリウレタン樹脂に比べてより高い圧縮率および圧縮回復率などを実現することができる。
【0029】
一方、前記一実施形態の製造方法により製造されるポリウレタン支持パッドは、他の通常のポリウレタンシート、例えばポリウレタン研磨パッドまたはポリウレタン合成皮革などと区分され得る。具体的に、ポリウレタン研磨パッドは、高い耐摩耗性と高い硬度を有さなければならないため、架橋反応が行われたポリウレタン樹脂を用いなければならず、製造方法も湿式凝固過程でなく、プレポリマー(Prepolymer)と異なる単量体をインサイチュ(in situ)で混合し、モールド(mold)で反応および硬化して製造することが一般的である。
【0030】
そして、前記ポリウレタン支持パッドの製造方法は、重量平均分子量が220,000〜1,000,000であるポリウレタン樹脂およびDMF溶媒を含む樹脂組成物を湿式凝固する段階、および前記湿式凝固物を40〜90℃の浸漬溶液に浸漬する段階以外に、前記湿式凝固物を水洗および乾燥する段階、前記湿式凝固物の表面を研磨する段階、または前記湿式凝固物の表面に接着層を形成する段階をさらに含むことができる。
【0031】
ポリウレタン樹脂とDMF溶媒などの有機溶媒を含む組成物を有機溶媒と水が含まれている凝固槽で凝固させると、樹脂組成物成分の相分離現象、例えばポリウレタン樹脂、水および有機溶媒の相分離現象が起こるが、このような相分離現象により多数の気孔が内部に形成されたポリウレタン樹脂が得られる。
【0032】
このような前記ポリウレタン樹脂およびDMF溶媒を含む樹脂組成物を湿式凝固する段階は、前記ポリウレタン樹脂組成物を形成する段階と、前記ポリウレタン樹脂組成物を一定の基材や枠に塗布または投入してコーティング層を形成する段階と、前記コーティング層を凝固する段階と、を含むことができる。
【0033】
そして、このようなポリウレタン樹脂およびDMF溶媒を含む樹脂組成物を湿式凝固する段階以降に、前記組成物の凝固物を水洗、脱水および乾燥する段階が連続して行われ得る。前記凝固物の水洗段階では、DMF溶媒のような有機溶媒または添加剤などを除去することができ、支持パッドの製造方法で使用可能であると知られた方法および装置を大きな制限なしに用いることができる。前記のように樹脂組成物表面の凝固液などを水洗して有機溶媒および他の添加剤を除去し、40〜90℃の浸漬溶液に浸漬すれば既に形成された気孔の形状の変形なしに容易にポリウレタン樹脂の重量平均分子量を低めることができる。
【0034】
前記コーティング層を凝固する段階では、前記コーティング層が形成された基材や枠をジメチルホルムアミド水溶液または水が満たされている凝固槽に投入して行われ得る。前記凝固過程では、ポリウレタン樹脂内部のジメチルホルムアミドが水と交換されながらポリウレタン樹脂が徐々に凝固し、これにより、多数の気孔が形成され得る。前記凝固槽に満たされている水溶液の濃度および水溶液または水の量は大きく制限されず、反応条件および製造される支持パッドの物性に応じて適切に調節することができる。前記凝固過程後の研磨パッド内部には水とDMFが適切に残っている状態であり、このような凝固物を洗浄し、オーブンで乾燥することによって研磨パッド内部で水、DMF溶媒およびその他成分を除去することができる。
【0035】
一方、前記ポリウレタン支持パッドの製造方法は、前記湿式凝固物の表面を研磨(またはバッフィング(buffing))する段階を含むことができる。前記研磨段階は、高速に回転するサンドペーパーが巻かれているロール(Roll)を利用して硬度が低いポリウレタンフィルム(100%モジュラス1〜10)の表面を削る工程であって、高いエネルギーが加えられる工程である。
【0036】
このような研磨(またはバッフィング)工程では、被研磨膜を一回に数百um削ることもでき、数十umずつ数回にかけて削ることもできる。低い硬度のフィルムを一回に多く研磨する場合、MD(machine direction)方向に厚さ差または研磨(バッフィング)水準の差が発生するおそれがあり、支持パッドに不均一に積もったエネルギーは、研磨装備から被研磨膜、例えばディスプレイのガラス基板などに不均一に伝達されてTD(Transverse Direction)方向のラインまたは縞柄が発生するおそれがある。
【0037】
前記ポリウレタン支持パッドの製造方法は、前記バッフィングされた湿式凝固物の表面に接着層を形成する段階をさらに含むことができる。このような接着層は、支持パッドの最終製品を製造することに用いられると知られた方法および構成を特別な制限なしに用いて形成され得る。例えば、前記接着層は、前記湿式凝固物の表面または前記表面研磨された湿式凝固物の表面に一定の接着剤、例えば減圧性接着剤(PSA)などを塗布することによって形成されてもよく、前記湿式凝固物の表面または前記表面研磨された湿式凝固物の表面に減圧性両面接着フィルムをラミネートすることによって形成されてもよい。
【0038】
一方、前記浸漬段階は、工程順序に制限されずに行われ得る。例えば、ポリウレタン樹脂組成物を湿式凝固する段階、前記ポリウレタン樹脂組成物の湿式凝固物を水洗する段階、表面を研磨する段階、または接着層を形成する段階の後に行われてもよいが、既に形成された気孔形状の変形なしにポリウレタン樹脂の重量平均分子量を低めるために湿式凝固した樹脂組成物を水洗して浸漬することが好ましい。
【0039】
前記樹脂組成物は、前記ポリウレタン樹脂1〜30wt%、好ましくは5〜25wt%を含むことができる。前記樹脂組成物においてポリウレタン樹脂の含有量が過度に小さい場合、支持パッドの本体を適切に形成し難く、組成物の粘度が過度に低くなって支持パッドを製造するためのコーティング工程に適用することが容易でないおそれがある。また、前記樹脂組成物でポリウレタン樹脂の含有量が過度に大きい場合、得られるポリ雷版支持パッドの密度が必要以上に大きくなったり、組成物の粘度が過度に大きくなって支持パッドを製造するためのコーティング工程に適用することが容易でないおそれがある。
【0040】
前記樹脂組成物は、ジメチルホルムアミド(DMF)溶媒を含むことができるが、前記ジメチルホルムアミド(DMF)は、N,N’−ジメチルホルムアミド(N,N’−dimethylmethanamide)を意味する。前記ポリウレタン樹脂組成物を凝固させると、樹脂組成物成分、例えばポリウレタン樹脂、水およびDMF溶媒の相分離現象によって、内部に気孔が形成されたポリウレタン支持パッドが形成され得る。つまり、前記樹脂組成物の凝固過程では、ポリウレタン樹脂内に存在するDMF溶媒が凝固槽内部の水と交換され、凝固過程が完了されると内部に気孔が形成されて支持パッド用ポリウレタン樹脂が形成される。
【0041】
前記樹脂組成物は、前記DMF溶媒50〜90wt%、好ましくは50〜85wt%を含むことができる。前記樹脂組成物上でDMF溶媒の含有量が過度に小さい場合、凝固過程で樹脂内部に気孔の形成が円滑でないおそれがあり、前記含有量が過度に大きい場合、ポリウレタン樹脂の比率が大幅に減少して適切な物性を有するポリウレタン支持パッドを製造し難くなるおそれがある。
【0042】
前記樹脂組成物は、陰イオン性界面活性剤をさらに含むことができる。前記陰イオン性界面活性剤は、凝固する組成物の全領域にわたって水が均一に侵入可能にし、ポリウレタン樹脂組成物のそれぞれの成分の相分離が一定の部分に集中しないようにするため、支持パッド内部に気孔が非常に均一に形成され得る。このような陰イオン性界面活性剤は、製造される支持パッドの物性や工程上の条件などを考慮して含有量を適切に調節して用いることができ、例えば前記支持パッド用ポリウレタン樹脂組成物中の0.01〜5wt%で含まれ得る。前記陰イオン性界面活性剤としては、ドデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸誘導体、コハク酸、コハク酸誘導体、ドデシルスルフェート、ドデシルスルフェート誘導体またはこれらの1以上の混合物が挙げられる。そして、陰イオン性界面活性剤としてドデシルベンゼンスルホン酸またはその誘導体と、コハク酸またはその誘導体とを混合して用いることが、支持パッド内部に形成される気孔の形態や大きさを適切に調節して製造される支持パッドの物性を向上させるために好ましい。
【0043】
前記樹脂組成物は、支持パッドの吸着力を高めたりパッドの表面を平坦化するために非イオン性界面活性剤をさらに含むことができる。このような非イオン性界面活性剤の例としては、シリコン系高分子、シリコンオイル、グリセロール系高分子または炭化水素系高分子などが挙げられる。このような非イオン性界面活性剤は、製造される支持パッドの物性や工程上の条件などを考慮して含有量を適切に調節して用いることができ、例えば前記支持パッド用ポリウレタン樹脂組成物中の0.01〜5wt%で含まれ得る。
【0044】
また、前記樹脂組成物は、着色剤、撥水剤、充填剤、気孔の大きさ調節剤および顔料からなる群より選択された1種以上の添加剤をさらに含むことができる。このような添加剤は、製造される支持パッドの物性や工程上の条件などを考慮して含有量を適切に調節して用いることができ、例えば前記樹脂組成物にそれぞれの添加剤が0.01〜10wt%で含まれ得る。
【0045】
一方、本発明のまた他の実施形態によれば、50μm〜2mmの最長直径および3〜10の偏平比を有する気孔を内部に含有し、50,000〜200,000の重量平均分子量を有するポリウレタン支持パッドが提供され得る。好ましくは300μm〜2mmの最長直径および4〜9の偏平比を有し、重量平均分子量も50,000〜150,000であってもよい。
【0046】
そして、前記ポリウレタン支持パッドは、JIS L1021−16による圧縮率が40%以上であってもよく、または50〜70%であってもよい。
【0047】
また、前記ポリウレタン支持パッドは、−50〜−10℃および10〜50℃でガラス転移温度を有することができる。
【0048】
一方、このようなポリウレタン支持パッドは、重量平均分子量が220,000〜1,000,000であるポリウレタン樹脂およびDMF溶媒を含むポリウレタン樹脂組成物の湿式凝固物を40〜90℃の浸漬溶液に浸漬して得られる。前記浸漬過程を通じてポリウレタン樹脂組成物の重量平均分子量は、220,000〜1,000,000で10〜80%減少することができる。
【0049】
最終的に製造される支持パッドの分子量を低めるために、50,000〜200,000の重量平均分子量を有するポリウレタン樹脂を用いる場合、内部に長い楕円形の気孔を均一に形成し難いため、前記50μm〜2mmの最長直径および3〜10の偏平比を有する気孔を内部に含有し難く、JIS L1021−16による圧縮率も40%以上示し難い。ただし、前述のように、220,000〜1,000,000であるポリウレタン樹脂およびDMF溶媒を含むポリウレタン樹脂組成物を湿式凝固し、前記湿式凝固物を一定の温度範囲の水溶液に浸漬する場合、分子量が低くなって前記特性を有する支持パッドを製造することができる。
【0050】
前記ポリウレタン支持パッドは、内部に長くて大きい気孔が均一に含まれ、重量平均分子量が低いため、高い圧縮率、圧縮回復率、および弾性率を示すことができ、研磨時に加えられる不均一な衝撃を十分に吸収して均一で細密な研磨を実現することができる。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、製造工程で発生する製品不良を最小化し、製造されるパッド領域全体にわたってより均一な厚さ、圧力分布または張力分布などを示し、より均一で高い効率の研磨を実現することができるポリウレタン支持パッドの製造方法およびこれから得られるポリウレタン支持パッドが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】実施例1で製造してパッドの断面SEM写真を示したものである。
図2】比較例2で製造してパッドの断面SEM写真を示したものである。
図3】比較例3で製造してパッドの断面SEM写真を示したものである。
図4】比較例3で製造してパッドの断面SEM写真を示したものである。
図5】比較例3で製造してパッドのDMA測定グラフである。
図6】実施例1で製造してパッドのDMA測定グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0053】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は、本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容は下記の実施例により限定されない。
【0054】
<実施例および比較例:ポリウレタン支持パッドの合成およびその圧縮率の測定>
<実施例1>
下記表1の成分を含む樹脂組成物をPETフィルム上にコーティングした後、このようなコーティング層を湿式凝固、水洗、脱水および乾燥することによって、内部に気孔が形成されたポリウレタン樹脂フィルム層を得た。得られたポリウレタン樹脂フィルム層がより均一な厚さおよび高い均一度を有するように、高速に回転するサンドペーパーが巻かれているロール(Roll)を用いてバッフィング(buffing)処理し、前記バッフィングされたポリウレタン樹脂フィルム層の一面に減圧性両面接着テープをラミネーションしてポリウレタン支持パッドを得た。
【0055】
そして、前記支持パッドを50℃の水で下記表2の時間のとおり浸漬し、オーブンで乾燥して最終完成品のポリウレタン支持パッドを製造した。
【0056】
[ポリウレタン層:1200μm、粘着層:250μm]
製造したポリウレタン支持パッドの浸漬時間による圧縮率と最終重量平均分子量を表2に共に示し、支持パッドの断面SEM写真を図1に示した。
【0057】
【表1】
【0058】
<実施例2>
50℃の水の代わりに50℃の5%グリセリン水溶液で浸漬したことを除いては、実施例1と同様な方法でポリウレタン支持パッドを得た。
【0059】
[ポリウレタン層:1200μm、粘着層:250μm]
製造したポリウレタン支持パッドの浸漬時間による圧縮率と最終重量平均分子量を表2に共に示した。
【0060】
<比較例1>
浸漬工程の代わりに50℃オーブンで表2の時間のとおりエージング(aging)したことを除いては、実施例1と同様な方法でポリウレタン支持パッドを得た。
【0061】
[ポリウレタン層:1200μm、粘着層:250μm]
製造したポリウレタン支持パッドの浸漬時間による圧縮率と最終重量平均分子量を表2に共に示した。
【0062】
<比較例2>
浸漬せず、210,000分子量のポリウレタン樹脂を用いたことを除いては、実施例1と同様な方法でポリウレタン支持パッドを得た。
【0063】
[ポリウレタン層:600μm、粘着層:250μm]
製造したポリウレタン支持パッドの浸漬時間による圧縮率と最終重量平均分子量を表2に共に示し、支持パッドの断面SEM写真を図2に示した。
【0064】
<比較例3>
浸漬工程を経ないことを除いては、実施例1と同様な方法でポリウレタン支持パッドを得た。
【0065】
製造したポリウレタン支持パッドの浸漬時間による圧縮率と最終重量平均分子量を表2に共に示し、支持パッドの断面SEM写真を図3に示した。
【0066】
<比較例4>
40℃未満の低い温度で浸漬したことを除いては、実施例1と同様な方法でポリウレタン支持パッドを得た。
【0067】
製造したポリウレタン支持パッドの浸漬時間による圧縮率と最終重量平均分子量を表2に共に示し、支持パッドの断面SEM写真を図4に示した。
【0068】
【表2】
【0069】
前記実施例および比較例で得られたポリウレタン支持パッドの圧縮率は、JIS L1021−16により測定した。具体的に、前記実施例および比較例で得られたポリウレタン支持パッドを切断して25mm×30mmの大きさの試片を準備した。このような試片に初期荷重100g/cm2を30秒間加え、初期厚さをダイヤルゲージを用いて測定した(TO)。前記試片に荷重1120g/cm2を5分間加えて加圧状態で厚さを測定した(T1)。測定されたそれぞれの厚さを下記計算式を適用して圧縮率を算出した。
【0070】
圧縮率(%)=(TO−T1)×100/T0
<実施例および比較例の比較>
前記表2の比較例1、3の0day結果に示されているように、実施例1、2および比較例1、3共に浸漬工程前のポリウレタン樹脂組成物を湿式凝固、水洗、脱水、乾燥、バッフィング処理および接着層を形成して製造したポリウレタン支持パッドは、318,000の分子量を示した。
【0071】
そして、前記実施例1および2は、前記318,000の分子量を有するポリウレタン支持パッドを浸漬する段階を経てポリウレタン支持パッドを最終的に生成し、比較例1は、浸漬工程の代わりに浸漬段階と同一の温度のオーブンでエージングさせて最終的に生成し、比較例3は、浸漬工程を省略し、比較例4は、40℃未満の低い温度で浸漬してポリウレタン支持パッドを製造した。
【0072】
前記のそれぞれの工程を通じて、実施例1および2の支持パッドの重量平均分子量は119,000と、92,000で示され、浸漬工程を通じて分子量を十分に低めることができることが確認され、また圧縮率も56%、および57%に高く示されて、実際の研磨時に被研磨膜であるガラス基板を均一で高い効率に精密に研磨できると見られる。
【0073】
これに反し、比較例1と比較例3の支持パッドは、分子量の変化も微々であり、50%未満の圧縮率を示したが、前記比較例の結果から、浸漬段階の圧縮率の改善効果および分子量の減少効果を確認できる。つまり、浸漬工程を省略したり、浸漬なしに実施例のような温度で時間を経過させた場合(aging)、分子量と圧縮率は大きい変化を示さないことから、 分子量が小さくなり、圧縮率が高まる現象は高い温度や時間の経過による現象でない浸漬段階による効果であることを確認した。
【0074】
一方、210,000の低い分子量のポリウレタン樹脂を出発物質として使って支持パッドを製造した比較例2は、浸漬工程を含まず、分子量がさらに減少しなかったが、出発物質の分子量と実施例の最終ポリウレタン樹脂の分子量が同等な水準であるため、同等水準の密度および硬度を示すことができる。それにも拘わらず、実施例の支持パッドが比較例2に比べて顕著に高い圧縮率および圧縮回復率を示して、実施例の製造方法が支持パッド内部に気孔をよく形成しながら、その気孔の形態と分布も均一に示して上述した効果を示すことを確認できる。
【0075】
また、低い温度で浸漬した比較例4の分子量の変化と圧縮率の結果から、過度に低い温度で浸漬する場合、高い圧縮率を実現できる範囲まで十分に分子量を低めることができないことを確認できる。
【0076】
これに加えて、図1および図2に示されているように、高い分子量のポリウレタンを用いた実施例1のポリウレタン支持パッドは、長くて均一に分布した気孔を含む断面形状を示して、低い分子量のポリウレタンを用いた比較例2の断面形状に比べて顕著に向上し、改善された気孔の形態を形成することを確認できる。
【0077】
そして、図5および図6のDMA測定グラフから、浸漬工程を実施していない比較例3の支持パッドは、ほぼ0℃と60℃近傍でガラス転移温度が観察されるが、浸漬工程を実施して製造した実施例1の支持パッドは、ほぼ−20℃および30℃でガラス転移温度が観察されて、浸漬工程を行うことによってガラス転移温度が低くなる現象を示すことを確認できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6