(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1および第2コーティング層は、それぞれ独立して、同一若しくは互いに異なり、40〜90重量部の架橋共重合体および10〜60重量部の無機微粒子を含む請求項1に記載のプラスチックフィルム。
前記3〜6官能性アクリレート系単量体は、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシル化トリアクリレート(GPTA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)、およびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)からなる群より選択された1種以上を含む請求項1〜3のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム、
前記チオール基含有化合物は、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(pentaerythritol tetrakis thioglycolate)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)(pentaerythritol tetrakis(2−mercaptopropionate))、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトアセテート)(pentaerythritol tris(3−mercaptopropionate))、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(trimethylolpropane tris(3−mercaptopropionate))、トリメチロールプロパンテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(trimethylolpropane tetrakis(3−mercaptopropionate))、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)(trimethylolpropane tris(3−mercapto butylate)、メルカプトプロピルイソブチルシルセスキオキサン(mercaptopropyl isobutyl silsesquioxane)、およびメルカプトプロピルイソオクチルシルセスキオキサン(mercaptopropyl isooctyl silsesquioxane)からなる群より選択される1種以上を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム
50℃以上の温度および80%以上の湿度で70時間以上露出させた後、フィルムを平面に位置させた時、フィルムの各角または一辺が平面から離隔される距離の最大値が2.0mm以下である請求項1〜5のいずれか一項に記載のプラスチックフィルム。
前記チオール基含有化合物は、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(pentaerythritol tetrakis thioglycolate)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)(pentaerythritol tetrakis(2−mercaptopropionate))、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトアセテート)(pentaerythritol tris(3−mercaptopropionate))、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(trimethylolpropane tris(3−mercaptopropionate))、トリメチロールプロパンテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(trimethylolpropane tetrakis(3−mercaptopropionate))、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)(trimethylolpropane tris(3−mercaptobutylate)、メルカプトプロピルイソブチルシルセスキオキサン(mercaptopropyl isobutyl silsesquioxane)、およびメルカプトプロピルイソオクチルシルセスキオキサン(mercaptopropyl isooctyl silsesquioxane)からなる群より選択される1種以上を含む請求項7~12のいずれか一項に記載のプラスチックフィルムの製造方法。
前記3〜6官能性アクリレート系化合物は、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシル化トリアクリレート(GPTA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレートおよびジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)からなる群より選択された1種以上を含む請求項7~13のいずれか一項に記載のプラスチックフィルムの製造方法。
前記第1および第2無機微粒子は、同一若しくは互いに異なり、それぞれ独立して、シリカナノ微粒子、アルミニウムオキシド微粒子、チタニウムオキシド微粒子およびジンクオキシド微粒子からなる群より選択される1種以上を含む請求項7~15のいずれか一項に記載のプラスチックフィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明のプラスチックフィルムは、
支持基材;
前記支持基材の一面に形成される第1コーティング層;および
前記支持基材の他面に形成される第2コーティング層を含み、
前記第1および第2コーティング層は、それぞれ独立して、同一若しくは互いに異なり、3〜6官能性アクリレート系化合物およびチオール基含有化合物の架橋共重合体と、前記架橋共重合体内に分散している無機微粒子を含み、
1kgの荷重で7H以上の鉛筆硬度を示す。
【0016】
また、本発明のプラスチックフィルムの製造方法は、
第1バインダー、第1無機微粒子、および第1光開始剤を含む第1コーティング組成物を支持基材の一面に塗布する段階;
前記第1バインダーの一部が架橋されるまで、前記第1コーティング組成物が塗布された前記一面に第1波長を有する紫外線を照射して第1光硬化する段階;
第2バインダー、第2無機微粒子、および第2光開始剤を含む第2コーティング組成物を前記支持基材の他面に塗布する段階;および
第1波長および前記第1波長より長い第2波長を有する紫外線を前記第2コーティング組成物が塗布された前記他面に照射して第2光硬化する段階を含み、前記第1および第2バインダーは同一若しくは互いに異なり、それぞれ独立して、3〜6官能性アクリレート系化合物およびチオール基含有化合物を含む。
【0017】
本発明において、第1、第2などの用語は多様な構成要素を説明するのに使用され、前記用語は一つの構成要素を他の構成要素から区別する目的のみで使用される。
【0018】
また、本明細書で使用される用語は単に例示的な実施例を説明するために使用されたものであって、本発明を限定しようとする意図ではない。単数の表現は文脈上明白に異なるものを意味しない限り、複数の表現を含む。本明細書で、“含む”、“備える”または“有する”などの用語は実施された特徴、段階、構成要素またはこれらを組み合わせたものが存在するのを指定しようとするものであって、一つまたはそれ以上の他の特徴や段階、構成要素、またはこれらを組み合わせたものの存在または付加可能性を予め排除しないものに理解されなければならない。
【0019】
また、本発明において、各構成要素が各構成要素の“上に”または“の上に”形成されると言及される場合には、各構成要素が直接各構成要素の上に形成されることを意味するか、他の構成要素が各層の間、対象体、基材上に追加的に形成され得るのを意味する。
【0020】
本発明は多様な変更を加えることができ様々な形態を有し得るところ、特定実施例を例示して下記で詳細に説明する。しかし、これは本発明を特定の開示形態に対して限定しようとするのではなく、本発明の思想および技術範囲に含まれる全ての変更、均等物乃至代替物を含むと理解されなければならない。
【0021】
以下、図面を参照して本発明のプラスチックフィルムおよびその製造方法をより詳しく説明する。
【0022】
本発明の一実施形態によれば、第1バインダー、第1無機微粒子、および第1光開始剤を含む第1コーティング組成物を支持基材の一面に塗布する段階;前記第1バインダーの一部が架橋されるまで、前記第1コーティング組成物が塗布された前記一面に第1波長を有する紫外線を照射して第1光硬化する段階;第2バインダー、第2無機微粒子、および第2光開始剤を含む第2コーティング組成物を前記支持基材の他面に塗布する段階;および第1波長および前記第1波長より長い第2波長を有する紫外線を前記第2コーティング組成物が塗布された前記他面に照射して第2光硬化する段階を含み、前記第1および第2バインダーは同一若しくは互いに異なり、それぞれ独立して、3〜6官能性アクリレート系化合物およびチオール基含有化合物を含む、プラスチックフィルムの製造方法を提供する。
【0023】
本発明のプラスチックフィルムの製造方法で、まず、第1バインダー、第1無機微粒子、および第1光開始剤を含む第1コーティング組成物を支持基材の一面に塗布する。
【0024】
本発明のプラスチックフィルムの製造方法において、前記第1コーティング組成物を塗布する支持基材は、通常使用される透明性プラスチック樹脂であれば延伸フィルムまたは非延伸フィルムなど支持基材の製造方法や材料に特別な制限なく使用することができる。より具体的に、本発明の一実施形態によれば、ポリエチレンテレフタレート(polyethyleneterephtalate、PET)のようなポリエステル(polyester)、エチレンビニルアセテート(ethylene vinyl acetate、EVA)のようなポリエチレン(polyethylene)、環状オレフィンポリマー(cyclic olefin polymer、COP)、環状オレフィンコポリマー(cyclic olefin copolymer、COC)、ポリアクリレート(polyacrylate、PAC)、ポリカーボネート(polycarbonate、PC)、ポリエチレン(polyethylene、PE)、ポリメチルメタクリレート(polymethylmethacrylate、PMMA)、ポリエーテルエーテルケトン(polyetheretherketon、PEEK)、ポリエチレンナフタレート(polyethylenenaphthalate、PEN)、ポリエーテルイミド(polyetherimide、PEI)、ポリイミド(polyimide、PI)、トリアセチルセルロース(triacetylcellulose、TAC)、MMA(methyl methacrylate)、またはフッ素系樹脂などを含むフィルムであり得る。前記支持基材は単層または必要によって互いに同一若しくは異なる物質からなる2つ以上の基材を含む多層構造であり得るが、特に制限されない。
【0025】
本発明の一実施形態によれば、前記支持基材は、ポリエチレンテレフタレート(PET)の多層構造の基材、ポリメチルメタクリレート(PMMA)/ポリカーボネート(PC)の共押出で形成した2層以上の構造の基材であり得る。
【0026】
また、本発明の一実施形態によれば、前記支持基材は、ポリメチルメタクリレート(PMMA)およびポリカーボネート(PC)の共重合体(copolymer)を含む基材であり得る。
【0027】
前記支持基材の厚さは、特に制限されないが、約30〜約1,200μm、または約50〜約800μmの厚さを有する支持基材を使用することができる。
【0028】
前記支持基材の一面に塗布する第1コーティング組成物は第1バインダー、第1無機微粒子、および第1光開始剤を含み、前記第1バインダーは3〜6官能性アクリレート系化合物およびチオール基含有化合物を含む。
【0029】
本明細書全体で、前記アクリレート系とは、アクリレートだけでなくメタクリレート、またはアクリレートやメタクリレートに置換基が導入された誘導体を全て意味する。
【0030】
前記3〜6官能性アクリレート系化合物は、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)、トリメチロールプロパンエトキシトリアクリレート(TMPEOTA)、グリセリンプロポキシル化トリアクリレート(GPTA)、ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)、ペンタエリスリトールテトラアクリレートまたはジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(DPHA)などが挙げられる。前記3〜6官能性アクリレート系化合物は、単独で、または互いに異なる種類を組み合わせて、使用することができる。
【0031】
本明細書全体で、前記チオール基含有化合物とは、化合物分子内に一つ以上のチオール基(S−H)、好ましくは2つ以上のチオール基を有する化合物を意味する。
【0032】
前記チオール基含有化合物は、光硬化度が高いながらも硬化収縮率が低くいため、前記3〜6官能性アクリレート系化合物と混合してコーティングおよび光硬化する場合、チオール−エン(thiol−ene)反応によって前記3〜6官能性アクリレート系化合物と共に架橋硬化されて架橋共重合体を形成する。これにより、前記架橋共重合体を含むコーティング層は、カールやクラック発生が少ないながらも高硬度を示すことができる。
【0033】
前記チオール基含有化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールテトラキスチオグリコレート(pentaerythritol tetrakis thioglycolate)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)(pentaerythritol tetrakis(2−mercaptopropionate))、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトアセテート)(pentaerythritol tris(3−mercaptopropionate))、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトプロピオネート)(trimethylolpropane tris(3−mercaptopropionate))、トリメチロールプロパンテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)(trimethylolpropane tetrakis(3−mercaptopropionate))、トリメチロールプロパントリス(3−メルカプトブチレート)(trimethylolpropane tris(3−mercapto butylrate)、メルカプトプロピルイソブチルシルセスキオキサン(mercaptopropyl isobutyl silsesquioxane)、メルカプトプロピルイソオクチルシルセスキオキサン(mercaptopropyl isooctyl silsesquioxane)、などが挙げられるが、これに制限されるわけではない。前記チオール基含有化合物は、単独で、または互いに異なる種類を組み合わせて、使用することができる。
【0034】
本発明の一実施形態によれば、前記3〜6官能性アクリレート系化合物および前記チオール基含有化合物の含量比は特に制限されないが、本発明の一実施形態によれば、前記3〜6官能性アクリレート系化合物および前記チオール基含有化合物が約99:1〜約60:40、または約90:10〜約70:30の重量比で含まれ得る。前記重量比で前記3〜6官能性アクリレート系化合物および前記チオール基含有化合物を含む時、カール特性や耐光性などの他の物性の低下なく高硬度および柔軟性を付与することができる。
【0035】
本発明の一実施形態によれば、前記第1バインダーは、1〜2官能性アクリレート系化合物をさらに含むことができる。
【0036】
前記1〜2官能性アクリレート系化合物は、例えば、ヒドロキシエチルアクリレート(HEA)、ヒドロキシエチルメタクリレート(HEMA)、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)、またはトリプロピレングリコールジアクリレート(TPGDA)、エチレングリコールジアクリレート(EGDA)などが挙げられる。前記1〜2官能性アクリレート系化合物も、単独で、または互いに異なる種類を組み合わせて、使用することができる。
【0037】
本発明の一実施形態によれば、前記第1バインダーは、前記第1コーティング組成物100重量部に対して約35〜約85重量部、または約45〜約80重量部で含まれ得る。前記第1バインダーが前記範囲である時、高硬度を示し、優れた加工性でカールまたはクラックの発生が少ないプラスチックフィルムを形成することができる。
【0038】
本発明のプラスチックフィルムの製造方法において、前記第1コーティング組成物は第1無機微粒子を含む。
【0039】
本発明の一実施形態によれば、前記第1無機微粒子として、粒径がナノスケールである無機微粒子、例えば粒径が約100nm以下、または約10〜約100nm、または約10〜約50nmのナノ微粒子を使用することができる。また、前記第1無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、アルミニウムオキシド粒子、チタニウムオキシド粒子、またはジンクオキシド粒子などを使用することができる。
【0040】
前記第1無機微粒子を含むことによって、プラスチックフィルムの硬度をさらに向上させることができる。
【0041】
本発明の一実施形態によれば、前記第1無機微粒子は、前記第1コーティング組成物100重量部に対して約10〜約60重量部、または約20〜約50重量部で含まれ得る。前記第1無機微粒子を前記範囲で含むことによって、第1コーティング組成物の物性を低下させない範囲内で無機微粒子添加によるプラスチックフィルムの硬度向上効果を達成することができる。
【0042】
本発明のプラスチックフィルムの製造方法において、前記第1コーティング組成物は第1光開始剤を含む。
【0043】
前記第1光開始剤は、吸収しようとする波長領域によって選択して使用することができる。本発明の一実施形態によれば、前記第1光開始剤は、後述する第1光硬化段階で使用される第1波長領域の紫外線および第2光硬化段階で使用される第2波長領域が紫外線を吸収して光重合を開始することができる物質を全て含む混合物の形態で使用することができる。また、本発明の一実施形態によれば、前記第1光開始剤は、第1波長領域および第2波長領域の紫外線に対して全て吸収できる光開始剤を使用することができる。
【0044】
より具体的に、第1波長領域の紫外線を吸収する光開始剤としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、メチルベンゾイルホルメート、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、2−ベンゾイル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、または2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノンなどが挙げられる。また、現在市販されている商品としては、Irgacure 184、Irgacure 500、Irgacure 651、Irgacure 369、Irgacure 907、Darocur 1173、Darocur MBFなどが挙げられる。
【0045】
第2波長領域の紫外線を吸収する光開始剤としては、ジフェニル(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−ホスフィンオキシド、またはビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルホスフィンオキシドなどが挙げられる。現在市販されている商品としては、Irgacure 819、Irgacure 907、Esacure KIP 100Fなどが挙げられる。
【0046】
前記第1波長領域の紫外線を吸収する光開始剤および第2波長領域の紫外線を吸収する光開始剤の混合比率は、特に限定せず、必要によって適切な組成比で混合して使用することができる。
【0047】
前記光開始剤のうち、Darocur TPO、Irgacure 500、Irgacure 907、Esacure KIP 100Fは第1波長領域の紫外線および第2波長領域の紫外線に対して全て吸収することができるので、これら光開始剤は単独で使用することができる。
【0048】
本発明の一実施形態によれば、前記第1光開始剤は、前記第1コーティング組成物100重量部に対して約0.5〜約10重量部、または約1〜約5重量部で含まれ得る。前記第1光開始剤が前記範囲にある時、プラスチックフィルムの物性を低下させないながら十分な架橋光重合を達成することができる。
【0049】
一方、本発明のプラスチックフィルムの製造方法において、前記第1コーティング組成物は、前述の成分以外にも、界面活性剤、黄変防止剤、レベリング剤、防汚剤など本発明の属する技術分野において通常使用される添加剤を追加的に含むことができる。また、その含量は、本発明による第1コーティング組成物の物性を低下させない範囲内で多様に調節することができるので、特に制限しない。
【0050】
本発明の一実施形態によれば、例えば、前記第1コーティング組成物は添加剤として界面活性剤を含むことができ、前記界面活性剤は1〜2官能性のフッ素系アクリレート、フッ素系界面活性剤またはシリコン系界面活性剤であり得る。また、前記添加剤として黄変防止剤を含むことができ、前記黄変防止剤としてはベンゾフェノン系化合物またはベンゾトリアゾール系化合物などが挙げられる。
【0051】
また、本発明のプラスチックフィルムの製造方法において、前記第1コーティング組成物は無溶剤(solvent−free)で使用可能であるが、コーティング時に組成物の粘度および流動性を調節して支持基材に対する組成物の塗布性を高めるために選択的に有機溶媒をさらに含むことができる。
【0052】
前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールのようなアルコール系溶媒、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコキシアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテル、ジエチルグリコールモノプロピルエーテル、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテルのようなエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族溶媒などを単独でまたは混合して使用することができる。
【0053】
本発明のプラスチックフィルムの製造方法で、第1コーティング組成物に対して有機溶媒を追加的に含む時、前記有機溶媒の含量は第1コーティング組成物:有機溶媒の重量比が約70:30〜約99:1になるように含まれ得る。前記のように本発明の第1コーティング組成物が固形分を高い含量で含むことによって、高粘度組成物が得られ、これにより厚膜コーティング(thick coating)を可能にして高い厚さ、例えば50μm以上のコーティング層を形成することができる。
【0054】
本発明の一実施形態によれば、前記第1コーティング組成物の粘度は適切な流動性および塗布性を有する範囲であれば特に制限されないが、相対的に固形分含量が高いため高粘度を示すことができる。例えば、本発明の第1コーティング組成物は、25℃の温度で約50〜約1,200cpsの粘度、または約100〜約1,200cps、または約150〜約1,200cpsの粘度を有し得る。
【0055】
前述の成分を含む第1コーティング組成物を前記支持基材の一面上に塗布する。この時、前記第1コーティング組成物を塗布する方法は、本技術の属する技術分野で使用されるものであれば特に制限されず、例えば、バーコーティング方式、ナイフコーティング方式、ロールコーティング方式、ブレードコーティング方式、ダイコーティング方式、マイクログラビアコーティング方式、コンマコーティング方式、スロットダイコーティング方式、リップコーティング方式、またはソリューションキャスティング(solution casting)方式などを用いることができる。
【0056】
また、前記第1コーティング組成物は、完全に硬化された後、厚さが約50〜約150μm、または約70〜約100μmの厚さになるように塗布することができる。前記第1コーティング組成物を前記範囲で塗布する時、カールやクラックの発生なく高硬度のプラスチックフィルムを製造することができる。
【0057】
前記第1コーティング組成物を塗布した後、選択的に前記第1コーティング組成物の塗布面を安定化する段階を遂行することができる。前記安定化段階は、例えば、前記第1コーティング組成物が塗布された支持基材を一定の温度で処理することによって遂行することができる。これによって塗布面を平坦化し前記第1コーティング組成物に含まれている揮発性成分を揮発させることによって塗布面をより安定化させることができる。
【0058】
前記のように、前記第1コーティング組成物が塗布された前記支持基材の一面に対して第1波長を有する紫外線を照射して前記第1コーティング組成物を第1光硬化する。
【0059】
前記第1波長は、短波長領域の紫外線、例えば、約280〜約320nm未満であり得る。
【0060】
前記第1光硬化段階は、前記第1コーティング組成物に含まれている前記第1バインダーの一部が架橋されるまで遂行することができる。“一部が架橋”されるというのは、前記第1バインダーが実質的に完全に架橋されることを100%とする時、100%未満で部分的にのみ架橋されることを意味する。例えば、本発明の一実施形態によれば、前記第1光硬化段階は、前記第1バインダーに含まれている光硬化性官能基の約30〜約80モル%、または約30〜約60モル%、または約40〜約50モル%が架橋されるまで遂行することができる。
【0061】
前記第1バインダーの架橋程度は、光硬化を行った後、前記第1バインダー中の残っている官能基、即ち、二重結合(C=C)のモルをIRで測定して光硬化を行う前の官能基の量と比較することによって評価することができる。
【0062】
本発明のプラスチックフィルムの製造方法によれば、支持基材の一面に塗布された前記第1コーティング組成物の第1バインダーを一度に完全に硬化させなく、前記第1バインダーの光硬化性官能基のうちの一部分、例えば約30〜約80モル%、または約30〜約60モル%、または約40〜約50モル%を部分硬化させる。
【0063】
一般に、アクリレート系バインダーは、光硬化段階で硬化による収縮によって、コーティング層と共に支持基材が巻き上がる硬化収縮、またはカール(curl)現象が発生することがある。カール現象は、平面構造のフィルムを扁平な面に広げた時、角などが曲線状に撓むか巻かれる現象を意味し、これはアクリレートが紫外線によって光硬化する過程で収縮しながら発生する現象である。
【0064】
特に、スマートフォンのような移動通信端末器やタブレットPCなどのカバーとして使用されるためのプラスチックフィルムにおいては、プラスチックフィルムの硬度をガラスを代替できる水準に向上させることが重要であり、プラスチックフィルムの硬度を向上させるためには基本的に一定の厚さ以上、例えば、50μm、または70μm、または100μm以上にコーティング層の厚さを増加させなければならない。しかし、コーティング層の厚さが増加することによって硬化収縮によるカール現象も増加して付置力が減少しプラスチックフィルムが巻かれる現象が発生しやすい。よって、支持基材を平坦化させる工程を追加的に行うことができるが、このような平坦化過程でコーティング層に亀裂が起こるので好ましくない。したがって、フィルム物性の低下なくガラスを代替できる程度に高硬度のプラスチックフィルムを製造することは容易でない。
【0065】
本発明のプラスチックフィルムの製造方法によれば、前記第1コーティング組成物が塗布された前記一面に第1波長を有する紫外線を照射して第1光硬化する段階で、前記第1コーティング組成物を完全に硬化する代わりに、前記第1バインダーの光硬化性官能基のうちの一部分のみ、例えば、約30〜約80モル%が架橋されるまで部分硬化させることによって前記第1コーティング組成物の硬化収縮を減少させることができる。したがって、高硬度を示しながらもカールやクラックの発生なく優れた物理的、光学的特性を示すプラスチックフィルムを製造することができる。
【0066】
本発明の一実施形態によれば、例えば、第1光硬化段階によって前記第1コーティング組成物を塗布および第1光硬化させた後、10cm×10cmに切断した前記支持基材の角部分または一辺が平面から離隔される距離の最大値は、約25mm、または約20mm、または約15mmであり得る。
【0067】
また、後述する第2光硬化段階で部分硬化された前記第1コーティング組成物を後面、即ち、第1コーティング組成物が塗布されない他面で2次に硬化させることによって、第1光硬化段階で発生したカールを反対方向に相殺して平坦なプラスチックフィルムを得ることができる。
【0068】
前記第1波長を有する紫外線の照射量は、例えば、約20〜約600mJ/cm
2、または約50〜約500mJ/cm
2であり得る。紫外線照射の光源としては本技術の属する技術分野で使用されるものであれば特に制限されず、例えば、高圧水銀ランプ、メタルハライドランプ、ブラックライト(black light)蛍光ランプなどを使用することができる。前記のような照射量で約30秒〜約15分間、または約1分〜約10分間照射して第1光硬化段階を遂行することができる。
【0069】
その次に、前記第1コーティング組成物の塗布および第1光硬化段階を遂行した後、前記支持基材の他面に第2コーティング組成物を塗布する。前記第2コーティング組成物は、第2バインダー、第2無機微粒子、および第2光開始剤を含む。
【0070】
本発明の一実施形態によれば、前記第2バインダーは、前記第2コーティング組成物100重量部に対して約35〜約85重量部、または約45〜約80重量部で含まれ得る。前記第2バインダーが前記範囲である時、高硬度を示し優れた加工性でカールまたはクラックの発生が少ないプラスチックフィルムを形成することができる。
【0071】
本発明の一実施形態によれば、前記第2バインダーは、前記3〜6官能性アクリレート系化合物およびチオール基含有化合物を含み、第1バインダーと同一若しくは異なってもよい。
【0072】
前記3〜6官能性アクリレート系化合物、および前記チオール基含有化合物に関するより具体的な説明および例示的な化合物は、前記第1バインダーで説明したとおりであり、それぞれ独立して、前記第1バインダーに含まれるものと同一若しくは異なってもよい。
【0073】
本発明のプラスチックフィルムの製造方法において、前記第2コーティング組成物は第2無機微粒子を含む。
【0074】
本発明の一実施形態によれば、前記第2無機微粒子として、粒径がナノスケールである無機微粒子、例えば、粒径が約100nm以下、または約10〜約100nm、または約10〜約50nmのナノ微粒子を使用することができる。また、前記第2無機微粒子としては、例えば、シリカ微粒子、アルミニウムオキシド粒子、チタニウムオキシド粒子、またはジンクオキシド粒子などを使用することができる。
【0075】
前記第2無機微粒子を含むことによって、プラスチックフィルムの硬度をさらに向上させることができる。
【0076】
本発明の一実施形態によれば、前記第2無機微粒子は、前記第2コーティング組成物100重量部に対して約10〜約60重量部、または約20〜約50重量部で含まれ得る。前記第2無機微粒子を前記範囲で含むことによって第2コーティング組成物の物性を低下させない範囲内で無機微粒子添加によるプラスチックフィルムの硬度向上効果を達成することができる。
【0077】
本発明のプラスチックフィルムの製造方法において、前記第2コーティング組成物は、第2光開始剤を含む。
【0078】
前記第2光開始剤は、後述する第2光硬化段階で使用される第1波長領域の紫外線を吸収して光重合を開始できる物質であれば制限なく使用することができる。より具体的に、第1波長領域の紫外線を吸収する光開始剤としては、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−プロパノン、2−ヒドロキシ−1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−メチル−1−プロパノン、メチルベンゾイルホルメート、α,α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、2−ベンゾイル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、または2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルホリニル)−1−プロパノンなどが挙げられる。また、現在市販されている商品としては、Irgacure 184、Irgacure 500、Irgacure 651、Irgacure 369、Irgacure 907、Darocur 1173、Darocur MBFなどが挙げられる。
【0079】
または、第1波長領域の紫外線および第2波長領域の紫外線に対して全て吸収できるDarocur TPO、Irgacure 500、Irgacure 907、またはEsacure KIP 100Fのような物質を第2光開始剤として使用することができる。
【0080】
本発明の一実施形態によれば、前記第2光開始剤は、前記第2コーティング組成物100重量部に対して約0.5〜約10重量部、または約1〜約5重量部で含まれ得る。前記第2光開始剤が前記範囲にある時、プラスチックフィルムの物性を低下させないながら十分な架橋光重合を達成することができる。
【0081】
一方、本発明のプラスチックフィルムの製造方法において、前記第2コーティング組成物は、前述の成分以外にも、界面活性剤、黄変防止剤、レベリング剤、防汚剤など本発明の属する技術分野で通常使用される添加剤を追加的に含むことができる。また、その含量は、本発明による第2コーティング組成物の物性を低下させない範囲内で多様に調節することができるので、特に制限しない。
【0082】
本発明の一実施形態によれば、例えば、前記第2コーティング組成物は添加剤として界面活性剤を含むことができ、前記界面活性剤は1〜2官能性のフッ素系アクリレート、フッ素系界面活性剤またはシリコン系界面活性剤であり得る。また、前記添加剤として黄変防止剤を含むことができ、前記黄変防止剤としてはベンゾフェノン系化合物またはベンゾトリアゾール系化合物などが挙げられる。
【0083】
前記第2コーティング組成物は、コーティング時に組成物の粘度および流動性を調節し支持基材に対する塗布性を高めるために、選択的に有機溶媒をさらに含むことができる。
【0084】
本発明のプラスチックフィルムの製造方法において、前記第2コーティング組成物は無溶剤(solvent−free)で使用可能であるが、コーティング時に組成物の粘度および流動性を調節し支持基材に対する組成物の塗布性を高めるために選択的に有機溶媒をさらに含むことができる。
【0085】
前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールのようなアルコール系溶媒、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、1−メトキシ−2−プロパノールのようなアルコキシアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテル、ジエチルグリコールモノプロピルエーテル、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール−2−エチルヘキシルエーテルのようなエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族溶媒などを単独でまたは混合して使用することができる。
【0086】
本発明のプラスチックフィルムの製造方法で、第2コーティング組成物に対して有機溶媒を追加的に含む時、前記有機溶媒の含量比は、第2コーティング組成物:有機溶媒の重量比が約70:30〜約99:1になるように含まれ得る。前記のように本発明の第2コーティング組成物が固形分を高い含量で含むことによって、高粘度組成物が得られ、これにより厚膜コーティング(thick coating)を可能にして高い厚さ、例えば50μm以上のコーティング層を形成することができる。
【0087】
本発明の一実施形態によれば、前記第2コーティング組成物の粘度は、前記第1コーティング組成物と同様に、25℃の温度で約50〜約1,200cpsの粘度、または約100〜約1,200cps、または約150〜約1,200cpsの粘度を有し得る。
【0088】
前述の成分を含む第2コーティング組成物は、前記支持基材の他面、即ち、前記第1コーティング組成物が塗布された面の反対面に塗布する。この時、前記第2コーティング組成物を塗布する方法は、本技術の属する技術分野で使用されるものであれば特に制限されず、例えば、バーコーティング方式、ナイフコーティング方式、ロールコーティング方式、ブレードコーティング方式、ダイコーティング方式、マイクログラビアコーティング方式、コンマコーティング方式、スロットダイコーティング方式、リップコーティング方式、またはソリューションキャスティング(solution casting)方式などを用いることができる。
【0089】
また、前記第2コーティング組成物は、完全に硬化された後、厚さが約50〜約150μm、または約70〜約100μmの厚さになるように塗布することができる。前記第2コーティング組成物を前記範囲で塗布する時、カールやクラックの発生なく高硬度のプラスチックフィルムを製造することができる。
【0090】
前記第2コーティング組成物を塗布した後、選択的に前記第2コーティング組成物の塗布面を安定化する段階を遂行することができる。前記安定化段階は、例えば、前記第2コーティング組成物が塗布された支持基材を一定の温度で処理することによって遂行することができる。これにより塗布面を平坦化し前記第2コーティング組成物に含まれている揮発性成分を揮発させることによって塗布面をより安定化させることができる。
【0091】
前記のように、前記第2コーティング組成物が塗布された前記支持基材の他面に対して第1波長および前記第1波長より長い第2波長を全て有する紫外線を照射する第2光硬化段階を遂行する。本発明の一実施形態によれば、前記第1波長は約280〜約320nm未満であり、前記第2波長は約320〜約400nmであり得る。
【0092】
前記第1波長の紫外線は第2コーティング組成物を光硬化させるのと同時に、前記第1波長より長い第2波長の紫外線は第2コーティング組成物が塗布された面および支持基材を通過して反対面の第1コーティング組成物まで到達して前記第1コーティング組成物を光硬化させる。前記第2光硬化によって、前述の第1光硬化段階で部分的にのみ硬化された第1コーティング組成物の残りが硬化され得る。また、第2光硬化段階では紫外線照射が第1コーティング組成物が塗布された反対側で行われるので、第1光硬化段階で硬化収縮によって発生したカールを反対方向に相殺して平坦なプラスチックフィルムを得ることができる。したがって、追加的な平坦化過程が不要である。
【0093】
前記のように本発明のプラスチックフィルムの製造方法によれば、支持基材の一面に塗布された第1コーティング組成物の第1バインダーを部分的に硬化させる第1光硬化段階、および支持基材の他面に塗布された第2コーティング組成物の第1バインダーおよび残り第1バインダーを硬化させる第2光硬化段階からなる2段階の光硬化を行うことにより、コーティング組成物を厚く塗布することによって発生するカールやクラックを防止することができる。これにより、高硬度を示しながらもカールやクラックの発生なく優れた物理的、光学的特性を示すプラスチックフィルムを製造することができる。
【0094】
前記のように2段階の光硬化工程により、前記支持基材の一面には第1コーティング層が、前記支持基材の他面に第2コーティング層が形成される。前記第1および第2コーティング層の厚さは、それぞれ独立して、同一若しくは互いに異なり、約50〜約150μm、または約70〜約100μmであり得る。
【0095】
本発明のプラスチックフィルムの製造方法によって得られたプラスチックフィルムは、50℃以上の温度および80%以上の湿度で70時間以上露出させた後、平面に位置させた時、前記プラスチックフィルムの各角または一辺が平面から離隔される距離の最大値が約2.0mm以下、または約1.0mm以下、または約0.5mm以下であり得る。より具体的には、50〜90℃の温度および80〜90%の湿度で70〜100時間露出させた後、平面に位置させた時、前記プラスチックフィルムの各角または一辺が平面から離隔される距離の最大値が約2.0mm以下、または約1.0mm以下、または約0.5mm以下であり得る。
【0096】
図1乃至4は、本発明の一実施形態によってプラスチックフィルムを製造する過程を簡略に示す図である。
【0097】
図1を参照すれば、まず、支持基材100の一面に第1コーティング組成物200を塗布する。
【0098】
第1コーティング組成物200の成分に関する具体的な説明は前述のとおりである。第1コーティング組成物200を塗布する方法は本技術の属する技術分野で使用されるものであれば特に制限されず、例えば、バーコーティング方式、ナイフコーティング方式、ロールコーティング方式、ブレードコーティング方式、ダイコーティング方式、マイクログラビアコーティング方式、コンマコーティング方式、スロットダイコーティング方式、リップコーティング方式、またはソリューションキャスティング(solution casting)方式などを用いることができる。また、第1コーティング組成物200は、完全に硬化された後、厚さが約50〜約150μm、または約70〜約100μmの厚さになるように塗布することができる。
【0099】
図2は、第1コーティング組成物200が塗布された前記一面に第1波長を有する紫外線を照射して第1光硬化する段階を示す図である。
【0100】
図2を参照すれば、第1コーティング組成物200が塗布された面に対して第1波長を有する紫外線を照射して第1光硬化段階を遂行する。前記第1波長は、短波長領域の紫外線、例えば約280〜約320nm未満であり得る。本発明のプラスチックフィルムの製造方法によれば、支持基材100の一面に塗布された第1コーティング組成物200の第1バインダーは一度に完全に硬化させず、前記第1バインダーのうちの一部分、例えば約30〜約80モル%、または約30〜約60モル%、または約40〜約50モル%のみを部分硬化させる。
【0101】
図3は、第1光硬化を行った後、第1コーティング組成物200が部分的に硬化した状態を示す図である。
【0102】
図3を参照すれば、第1コーティング組成物200に含まれている第1バインダーは、第1光硬化段階で、硬化による収縮によって支持基材100が巻き上がる硬化収縮、またはカール(curl)現象が発生する。
【0103】
本発明の一実施形態によれば、例えば、第1光硬化遂行後、10cm×10cmに切断した支持基材100の角部分または一辺が平面から離隔される距離の最大値は約30mm、または約25mm、または約20mmであり得る。
【0104】
図4は、第2コーティング組成物300を支持基材100の他面に塗布する段階と、第1波長および第2波長を有する紫外線を第2コーティング組成物300が塗布された前記他面に照射して第2光硬化する段階を示す図である。
【0105】
第2コーティング組成物300の成分および塗布する方法に関する具体的な説明は前述のとおりである。また、第2コーティング組成物300は、完全に硬化された後、厚さが約50〜約150μm、または約70〜約100μmの厚さになるように塗布することができる。
【0106】
本発明の一実施形態によれば、前記第1波長は約280〜約320nm未満であり、前記第2波長は約320〜約400nmであり得る。
【0107】
前記第1波長の紫外線は第2コーティング組成物300を光硬化させるのと同時に、前記第1波長より長い第2波長の紫外線は第2コーティング組成物300が塗布された面および支持基材100を通過して反対面の第1コーティング組成物200まで到達して第1コーティング組成物200を光硬化させる。前記第2光硬化によって、前述の第1光硬化段階で部分的にのみ硬化された第1コーティング組成物200が完全に硬化される。また、第2光硬化段階では、紫外線照射が第1コーティング組成物200が塗布された反対側で行われるので、第1光硬化段階で硬化収縮によって発生したカールを反対方向に相殺して平坦なプラスチックフィルムを得ることができる。
【0108】
本発明の製造方法によって得られたプラスチックフィルムは、優れた高硬度、耐衝撃性、高透明度、耐久性、耐光性、光透過率などを示すので、ガラスを代替して多様な分野に有用に用いることができる。
【0109】
本発明の他の一実施形態によれば、支持基材;前記支持基材の一面に形成される第1コーティング層;および前記支持基材の他面に形成される第2コーティング層を含み、前記第1および第2コーティング層はそれぞれ独立して、同一若しくは互いに異なり、3〜6官能性アクリレート系化合物およびチオール基含有化合物の架橋共重合体と、前記架橋共重合体内に分散されている無機微粒子を含み、1kgの荷重で7H以上の鉛筆硬度を示すプラスチックフィルムを提供する。
【0110】
本発明の一実施形態例よれば、前記第1および第2コーティング層はそれぞれ独立して、同一若しくは互いに異なり、約40〜約90重量部の架橋共重合体および約10〜約60重量部の無機微粒子、または約50〜約80重量部の架橋共重合体および約20〜約50重量部の無機微粒子を含むことができる。前記第1および第2コーティング層が架橋共重合体と無機微粒子を前記範囲で含むことによって高硬度を示し、優れた加工性でカールまたはクラック発生の少ないプラスチックフィルムを形成することができる。
【0111】
また、本発明の一実施形態によれば、前記第1および第2コーティング層の厚さは、それぞれ独立して、同一若しくは互いに異なり、約50〜約150μm、または約70〜約100μmであり得る。前記製造方法で前述のように、本発明のプラスチックフィルムは、支持基材の一面に塗布された第1コーティング組成物の第1バインダーを部分的に硬化させる第1光硬化段階、および支持基材の他面に塗布された第2コーティング組成物の第1バインダーおよび残り第1バインダーを硬化させる第2光硬化段階からなる2段階の光硬化を行うことにより、コーティング組成物を厚く塗布することによって発生するカールやクラックを防止することができる。これにより、50μm以上の高い厚さのコーティング層を形成することによって高硬度を示しながらもカールやクラックの発生なく優れた物理的、光学的特性を示すことができる。
【0112】
前記第1コーティング層は、第1バインダー、第1無機微粒子、および第1光開始剤を含む第1コーティング組成物を支持基材の一面に塗布して光硬化することによって形成される。また、前記第2コーティング層は、第2バインダー、第2無機微粒子、および第2光開始剤を含む第2コーティング組成物を支持基材の他面に塗布して光硬化することによって形成される。
【0113】
その他に、前記支持基材、前記第1および第2コーティング層を成すバインダー、無機微粒子、光開始剤などに関するより具体的な説明および例示的な化合物は、前記製造方法で詳述したとおりである。
【0114】
前記本発明のプラスチックフィルムは、1kg荷重での鉛筆硬度が7H以上、または8H以上、または9H以上であって、多様なディスプレイ用ウィンドウまたは前面板に使用されるガラスまたは強化ガラスを代替できる程度の高硬度を示す。
【0115】
また、本発明のプラスチックフィルムは、光透過率が91.0%以上、または92.0%以上であり、ヘイズが1.0%以下、または0.5%以下、または0.4%以下であり得る。
【0116】
また、本発明のプラスチックフィルムは、50℃以上の温度および80%以上の湿度で70時間以上露出させた後、平面に位置させた時、前記プラスチックフィルムの各角または一辺が平面から離隔される距離の最大値が約2.0mm以下、または約1.0mm以下、または約0.5mmであり得る。より具体的には、50〜90℃の温度および80〜90%の湿度で70〜100時間露出させた後、平面に位置させた時、前記プラスチックフィルムの各角または一辺が平面から離隔される距離の最大値が約2.0mm以下、または約1.0mm以下、または約0.5mmであり得る。
【0117】
また、本発明のプラスチックフィルムは、初期カラー(color)b値が1.0以下であり得る。また、初期color b値と、UVB波長領域の紫外線ランプに72時間以上露出後のcolor b値との差が0.5以下、または0.4以下であり得る。
【0118】
本発明のプラスチックフィルムは、ガラスを代替できる程度に優れた耐衝撃性を有し得る。例えば、本発明のプラスチックフィルムは、22gの金玉を40cmの高さから自由落下させた時、亀裂が生じない。
【0119】
このような本発明のプラスチックフィルムは、多様な分野で活用が可能であり、例えば移動通信端末器、スマートフォンまたはタブレットPCのタッチパネル、および各種ディスプレイのカバーガラスを代替する用途に使用することができる。
【0120】
以下、発明の具体的な実施例を通じて、発明の作用および効果をより詳述することにする。但し、このような実施例は発明の例示として提示されたものに過ぎず、これによって発明の権利範囲が決められるのではない。
【実施例】
【0121】
<実施例>
実施例1
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)20g、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)40g、ペンタエリスリトールトリス3−メルカプトプロピオネート10g、粒径が20−30nmであるナノシリカ40g、光開始剤(商品名:Darocur TPO)2g、ベンゾトリアゾール系黄変防止剤(商品名:Tinuvin 400)1g、フッ素系界面活性剤(商品名:FC4430)0.5gを固形分が85%になるようにメチルエチルケトン(MEK)に溶解して第1コーティング組成物を製造した。同様な方法で第2コーティング組成物も製造した。
【0122】
前記第1コーティング組成物を15cm×20cm、厚さ188μmのPET支持基材上に塗布した。その次に、メタルハライドランプを用いて290−320nmの波長の紫外線を照射して前記第1コーティング組成物のバインダー成分の中の40モル%が硬化される時まで第1光硬化を行った。
【0123】
支持基材の背面に前記第2コーティング組成物を塗布した。その次に、ブラックライト蛍光ランプを用いて280−350nmの波長の紫外線を照射して第2光硬化を行ってプラスチックフィルムを製造した。硬化が完了した後、支持基材の両面に形成された第1および第2コーティング層の厚さはそれぞれ70μmであった。
【0124】
実施例2
ペンタエリスリトールトリス3−メルカプトプロピオネートを5gで混合したことを除いては、実施例1と同様な方法でプラスチックフィルムを製造した。
【0125】
実施例3
ペンタエリスリトールトリス3−メルカプトプロピオネートを5gで混合し、支持基材の両面に形成された第1および第2コーティング層の厚さがそれぞれ90μmになるようにしたことを除いては、実施例1と同様な方法でプラスチックフィルムを製造した。
【0126】
実施例4
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を40g、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)20gで混合したことを除いては、実施例1と同様な方法でプラスチックフィルムを製造した。
【0127】
比較例1
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)20g、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)40g、粒径が20−30nmであるナノシリカ40g、光開始剤(商品名:Darocur TPO)2g、ベンゾトリアゾール系黄変防止剤(商品名:Tinuvin 400)1g、フッ素系界面活性剤(商品名:FC4430)0.5gを固形分が85%になるようにメチルエチルケトン(MEK)に溶解して第1コーティング組成物を製造した。同様な方法で第2コーティング組成物も製造した。
【0128】
以後の工程は実施例1と同様な方法でプラスチックフィルムを製造した。
【0129】
比較例2
実施例1と同様な方法で第1および第2コーティング組成物を製造した。
【0130】
前記第1コーティング組成物を15cm×20cm、厚さ188μmのPET支持基材上に塗布した。その次に、メタルハライドランプを用いて290−320nmの波長の紫外線を照射して前記第1コーティング組成物のバインダー成分が実質的に全て硬化されるまで第1光硬化を行った。
【0131】
以後の工程は実施例1と同様な方法でプラスチックフィルムを製造した。
【0132】
比較例3
ペンタエリスリトールトリアクリレート(PETA)を40gにし、トリメチロールプロパントリアクリレート(TMPTA)を20gにして混合したことを除いては、比較例1と同様な方法でプラスチックフィルムを製造した。
【0133】
前記実施例1〜4、および比較例1〜3で、第1および第2コーティング組成物の各成分および含量は下記表1に整理した。
【0134】
【表1】
【0135】
<実験例>
<測定方法>
1)鉛筆硬度
鉛筆硬度測定器を用いて測定標準JIS K5400により1kgの荷重で3回往復した後にキズがない硬度を確認した。
【0136】
2)カール特性
第1コーティング組成物を塗布し第1光硬化後、支持基材を10cm×10cmに切断して平面に位置させた時、各角または一辺が平面から離隔される距離の最大値を測定した。
【0137】
3)耐光性
UVB波長領域の紫外線ランプに72時間以上露出前後のカラー(color)b値の差を測定した。
【0138】
4)透過率およびヘイズ
分光光度計(機器名:COH−400)を用いて透過率およびヘイズを測定した。
【0139】
5)耐湿熱カール特性
各プラスチックフィルムを10cm×10cmに切断して温度85℃および湿度85%のチャンバーに72時間保管した後、平面に位置させた時、各角の一辺が平面から離隔される距離の最大値を測定した。
【0140】
6)耐衝撃性
22gの鉄球を40cm高さから各プラスチックフィルム上に落とした時、クラック発生有無で耐衝撃性を判断して、クラックが発生しない場合をOK、クラックが発生した場合をNGに評価した。
【0141】
前記物性測定結果を下記表2に示した。
【0142】
【表2】
【0143】
上記表2のように、本発明の実施例1〜4の製造方法によって得られたプラスチックフィルムは、各物性で全て良好な特性を示した。しかし、比較例1〜3のフィルムは、十分な耐衝撃性およびカール特性を示さないことが分かる。