【文献】
無類井建夫,植物油のトリアシルグリセリン組成の分析と油脂の配合推定への応用,日本油化学会誌,日本,1996年,45巻,1号,29〜36頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
全油脂中のトリグリセリド組成が、下記条件1)〜4)を全て満たし、液状油脂の含有量が全油脂中5質量%以下であり、且つ融点が50℃以上の油脂を、全油脂中0.1〜8質量%含有することを特徴とするロールイン用であるベーカリー食品用油脂組成物。
1)S3の含有量が0.1〜8質量%
2)s2Uの含有量が28質量%以上
3)s2Uを構成するPとStの質量比率であるP/Stが2より大きいこと
4)sD2の含有量とU3の含有量の合計量が20〜40質量%
上記1)〜4)中のS、s、U、P、St及びDは、それぞれ以下の脂肪酸残基を示す。
S :飽和脂肪酸残基
s :炭素数16〜18の飽和脂肪酸残基
U :炭素数16〜18の不飽和脂肪酸残基
P :パルミチン酸残基
St:ステアリン酸残基
D :炭素数16〜18の多価不飽和脂肪酸残基
【背景技術】
【0002】
従来、ロールイン用油脂はその使用特性から、融点が高く、口溶けの悪い油脂を主体に製造がなされてきた。そのようなロールイン用油脂を用いて焼成したクロワッサン、パイ、デニッシュ等のペストリー食品は口溶けが悪く、油脂本来のおいしさを味わうことができないという問題があった。
また、上記のような高融点油脂を使用すると、ペストリー食品に限らず、ベーカリー食品の甘味の発現性が低下、すなわちベーカリー食品の甘味が感じられにくいという問題もあった。この問題は、ロールイン用油脂が糖類や甘味料を含有する場合は特に問題となっていた。
一方、バターを使用したベーカリー食品、特にバターをロールインしたペストリー食品は濃厚なバター風味とともに、噛んだときに口中に広がるジューシー感を得ることができる。このジューシー感が油脂本来のおいしさとして注目されてきている。
上記のジューシー感とは、ベーカリー食品を口に入れた瞬間に油性感は無いが、歯で噛むことにより、ベーカリー食品より油脂がにじみ出てくる食感である。
ベーカリー食品、特にペストリー食品のジューシー感に関する先行技術としては、特定の油脂を用いてジューシー感を得る方法や、乳化剤を用いてジューシー感を得る方法があげられる。
【0003】
上記の特定の油脂を用いてジューシー感を得る方法を記載した先行技術文献としては特許文献1や特許文献3を挙げることができる。
特許文献1には、乳由来の脂肪、20℃で液状の油脂及びパーム硬化油をそれぞれ特定量含有するロールイン用油中水型乳化組成物が記載されている。しかし特許文献1のロールイン用油中水型乳化組成物では20℃で液状の油脂を多く配合する必要があるため、ペストリー食品は口に入れる前からべとついた状態にあり、さらにこれを食してもべとついた食感となってしまうという欠点があり、上記のジューシー感を得ることはできなかった。
特許文献3には、ラウリン系ハードバター、パーム油起源の非選択的エステル交換油脂及び乳脂肪をそれぞれ特定量含有し、SFCが特定値であるロールイン用可塑性油中水型乳化物が記載されている。特許文献3のロールイン用可塑性油中水型乳化物もSFCを特定の範囲とするために液状油を多く配合する必要があり、ペストリー食品は口に入れる前からべとついた状態にあり、さらにこれを食してもべとついた食感となってしまうという欠点があり、上記のジューシー感を得ることはできなかった。
【0004】
一方、上記の乳化剤を用いてジューシー感を得る方法を記載した先行技術文献としては、特許文献2をあげることができる。
特許文献2には、シュガーエステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル及びソルビタン脂肪酸エステルからなる群より選ばれた1種以上の結晶調整剤を用いたロールイン用油中水型乳化組成物によりジューシー感を有するペストリー食品を提供できることが記載されている。しかし、特許文献2のロールイン用油中水型乳化組成物は乳化剤を用いるため、ペストリー食品の風味が悪くなるという欠点があった。また特許文献2のロールイン用油中水型乳化組成物は、特定の範囲のSFCとするために液状油を多く配合する必要があり、ペストリー食品は口に入れる前からべとついた状態にあり、さらにこれを食してもべとついた食感となってしまうという欠点があり、上記のジューシー感を得ることはできなかった。
【0005】
このように今までのロールイン用油脂組成物は、ジューシー感を得るためには液状油を多く配合する必要があり、そのためペストリー食品は口に入れる前からべとついた状態にあり、これを食してもべとついた食感となってしまい、油脂本来のおいしさであるジューシー感(ペストリー食品を口に入れた瞬間に油性感は無いが、歯で噛むことにより、ペストリー食品より油脂がにじみ出てくる食感)を得ることができなかった。
一方、ペストリー食品の甘味の発現性に関する先行技術としては、特許文献4を挙げることができる。
特許文献4には糖アルコールと特定の乳化剤を含有する加糖ロールイン油脂組成物が記載されている。しかし特許文献4の加糖ロールイン油脂組成物は融点が高い油脂を用いており、この加糖ロールイン油脂組成物を用いたペストリー食品は口溶けが悪く、油脂本来のおいしさを味わうことができないという問題があった。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明のベーカリー食品用油脂組成物について詳細に説明する。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、全油脂中のトリグリセリド組成が上記の1)〜4)の条件を全て満たすことが必要である。
【0012】
本発明における条件1)について述べる。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、S3の含有量が0.1〜8質量%、好ましくは1〜7質量%、さらに好ましくは2〜6質量%、最も好ましくは3〜5質量%である。上記のSは飽和脂肪酸残基を示し、具体的には飽和脂肪酸残基の炭素数は8〜22であり、具体的にはカプリル酸残基、カプリン酸残基、ラウリン酸残基、ミリスチン酸残基、パルミチン酸残基、ステアリン酸残基、アラキジン酸残基及びベヘン酸残基の中から選ばれた1種又は2種以上である。上記のS3は、トリグリセリドを構成する3つの脂肪酸残基がいずれも上記のSであるトリグリセリドを示す。
上記のS3の含有量が0.1質量%よりも少ないと本発明のベーカリー用油脂組成物をロールイン用油脂組成物として用いたペストリー食品において、内層不良となるので好ましくなく、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を練り込み用油脂組成物として用いたベーカリー食品の内相において、気泡膜が厚くなったり、目が詰まるため好ましくない。上記のS3の含有量が8質量%よりも多いと口溶けが悪く、ジューシー感を有し、甘味の発現性が良好なベーカリー食品が得られないので好ましくない。
【0013】
本発明における条件2)について述べる。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、s2Uの含有量が28質量%以上、好ましくは31質量%以上、さらに好ましくは34質量%以上、最も好ましくは37〜60質量%である。上記のs2Uの含有量が28質量%よりも少ないとジューシー感を有し、甘味の発現性が良好なベーカリー食品が得られない。
上記sは炭素数が16〜18の飽和脂肪酸残基を示し、具体的にはパルミチン酸残基(P)及び/又はステアリン酸残基(St)である。
上記Uは炭素数16〜18の不飽和脂肪酸残基を示し、具体的にはオレイン酸残基、リノール酸残基及びリノレン酸残基の中から選ばれた1種又は2種以上である。上記のs2Uは、トリグリセリドを構成する3つの脂肪酸残基のうち、2つが上記のsであり1つが上記のUであるトリグリセリドを示す。
【0014】
本発明における条件3)について述べる。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、s2Uを構成するPとStの質量比率であるP/Stが2より大きく、好ましくは2〜6、さらに好ましくは2〜5、最も好ましくは2〜4である。
上記のs2Uを構成するPとStの質量比率であるP/St(質量基準)が2以下であるとs2Uの融点が高くなりやすいため、口溶けが悪く、ジューシー感を有し、甘味の発現性が良好なベーカリー食品が得られない。
【0015】
本発明における条件4)について述べる。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、sD2の含有量とU3の含有量の合計量が20〜40質量%、好ましくは20〜35質量%、さらに好ましくは20〜30質量%、最も好ましくは20〜25質量%である。
上記のsD2の含有量とU3の含有量の合計量が20質量%よりも少ないと、ベーカリー食品用油脂組成物をロールイン用油脂組成物として用いた場合は伸展性が不足し、練り込み用油脂組成物として用いた場合は分散性が不足するなど作業性が悪くなるので好ましくなく、40質量%よりも多いと口溶けが良く甘味の発現性は良いものの、ベとついた食感を有するベーカリー食品となるので好ましくない。上記のDは、炭素数16〜18の多価不飽和脂肪酸残基を示し、具体的にはリノール酸残基及び/又はリノレン酸残基である。上記のsD2は、トリグリセリドを構成する3つの脂肪酸残基のうち、1つが上記のsであり2つが上記のDであるトリグリセリドを示す。上記のU3は、トリグリセリドを構成する3つの脂肪酸残基がいずれも上記のUであるトリグリセリドを示す。
【0016】
本発明のベーカリー食品用油脂組成物を用いたベーカリー食品においてジューシー感が得られる理由としては、以下のような理由であると推定される。
本発明の全油脂中のトリグリセリド組成が特定範囲であるベーカリー食品用油脂組成物が焼成により一度溶解し、焼成後、冷却されることにより、ベーカリー食品用油脂組成物は液状成分である油脂のまわりを固体脂で取り囲んだ状態でベーカリー食品中に存在する。この状態のベーカリー食品を食すると、口に入れた瞬間は油性感がないが、口中の温度と歯で噛むことにより、固体脂部分から液状成分である油脂がにじみ出てくるために、ジューシー感が得られると考えられる。
【0017】
本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、全油脂中の脂肪酸組成が以下の条件5)を満たすことにより、より一層優れたジューシー感と甘味の発現性を有するベーカリー食品を得ることができる。
条件5)としては、ラウリン酸の含有量を、好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下、一層好ましくは6質量%以下、最も好ましくは2質量%以下とする。
上記のラウリン酸の含有量が8質量%よりも多いと口溶けは良好なものの、ジューシー感と甘味の発現性を有するベーカリー食品が得られにくい。上記のラウリン酸の含有量は、少なければ少ないほど、好ましい。
【0018】
本発明のベーカリー食品用油脂組成物の全油脂中のトリグリセリド組成が上記の1)〜4)の条件の全てを満たす具体的な配合油脂としては、以下の油脂Aと油脂Bと油脂Cとを用いて、上記1)〜4)の条件を全て満たすように配合することにより得られる。
【0019】
上記の油脂Aは豚脂系油脂及び/又は牛脂系油脂であり、具体的には豚脂、牛脂並びにこれらに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂を挙げることができる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では油脂Aとして特に豚脂を用いることが好ましい。
【0020】
上記の油脂Bはパーム系油脂であり、具体的にはパーム油並びにこれに水素添加、分別及びエステル交換から選択される1又は2以上の処理を施した加工油脂を挙げることができる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では油脂Bとして、特にパーム中融点画分を用いることが好ましい。
【0021】
上記の油脂Cは融点が50℃以上の油脂であり、パーム油、パーム核油、ヤシ油、コーン油、綿実油、大豆油、ナタネ油、キャノーラ油、ハイオレイックキャノーラ油、米油、ヒマワリ油、サフラワー油、オリーブ油、落花生油、カポック油、胡麻油、月見草油、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂の極度硬化油やパームステアリンを挙げることができる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。本発明では油脂Cとして、口溶けへの影響の点でキャノーラ極度硬化油、ハイオレイックキャノーラ極度硬化油、大豆極度硬化油、パーム極度硬化油及びパームステアリンの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることが好ましい。
【0022】
上記油脂Aの含有量は、本発明のベーカリー食品用油脂組成物の全油脂中、好ましくは20〜90質量%、さらに好ましくは30〜85質量%、一層好ましくは40〜80質量%、最も好ましくは45〜75質量%である。本発明のベーカリー食品用油脂組成物の全油脂中、上記油脂Aの含有量が20質量%よりも少ないとsD2の含有量とU3の含有量の合計量が不足し、ロールイン用油脂組成物として用いた場合は伸展性が不足しやすく、練り込み用油脂組成物として用いた場合は分散性が不足しやすい。90質量%よりも多いとs2Uを構成するStが増えすぎ、口溶けが悪くなりやすく、優れたジューシー感と甘味の発現性が得られにくい。
【0023】
上記油脂Bの含有量は、本発明のベーカリー食品用油脂組成物の全油脂中、好ましくは5〜55質量%、さらに好ましくは10〜50質量%、一層好ましくは12.5〜47.5質量%、最も好ましくは15〜45質量%である。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物の全油脂中、上記油脂Bの含有量が5質量%よりも少ないとs2Uの含有量が少なくなるため優れたジューシー感と甘味の発現性を有するベーカリー食品を得難い場合が有り、55質量%よりも多いとsD2の含有量とU3の含有量の合計量が不足し、ロールイン用油脂組成物として用いた場合は伸展性が不足しやすく、練り込み用油脂組成物として用いた場合は分散性が不足しやすい。
【0024】
上記油脂Cの含有量は、本発明のベーカリー食品用油脂組成物の全油脂中、好ましくは0.1〜8質量%、さらに好ましくは0.2〜7質量%、一層好ましくは0.3〜5質量%、最も好ましくは0.5〜2質量%である。本発明のベーカリー食品用油脂組成物の全油脂中、上記油脂Cの含有量が0.1質量%よりも少ないと、本発明のベーカリー食品用油脂組成物をロールイン用油脂組成物として用いたベーカリー食品において内層不良となりやすく、本発明のベーカリー食品用油脂組成物を練り込み用油脂組成物として用いたベーカリー食品の内相において気泡膜が厚くなりやすかったり、目が詰まりやすい。8質量%よりも多いと口溶けが悪く、優れたジューシー感と甘味の発現性を有するベーカリー食品を得られにくい。
【0025】
本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、油脂Dとして液状油脂を用いて、上記1)〜4)の条件を全て満たすように配合してもよい。油脂Dを用いることにより可塑性を有する温度範囲を調整することができる。
上記の液状油脂とは常温(30℃)で液状の油脂を指し、好ましくは融点20℃未満である油脂、最も好ましくは融点10℃未満である油脂である。
上記の油脂Dとして、例えば大豆油、菜種油、米油、綿実油、とうもろこし油、サフラワー油、ひまわり油、落花生油、ゴマ油、キャノーラ油、ハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックサフラワー油、ハイオレイックひまわり油、オリーブ油等の常温で液状の油脂や、常温で固形である油脂、例えばパーム油、パーム核油、ヤシ油、落花生油、カポック油、胡麻油、月見草油、カカオ脂、シア脂、サル脂、牛脂、乳脂、豚脂、魚油、鯨油等の分別軟部油であってもよく、本発明ではこれらの液状油脂の中から選ばれた1種又は2種以上の油脂を用いることができる。特に本発明では、菜種油、米油、ゴマ油、キャノーラ油、ハイオレイックキャノーラ油、ハイオレイックサフラワー油及びハイオレイックひまわり油の中から選ばれた1種又は2種以上の油脂を用いることが好ましい。
【0026】
上記油脂Dの含有量は、本発明のベーカリー食品用油脂組成物の全油脂中、好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、一層好ましくは15質量%以下、最も好ましくは5質量%以下である。本発明のベーカリー食品用油脂組成物の全油脂中、上記油脂Dの含有量が40質量%よりも多いと口溶けは良いものの、べとついた食感を有するベーカリー食品となるので好ましくない。本発明のベーカリー食品用油脂組成物において、ベーカリー食品に、優れたジューシー感と甘味の発現性を付与するためには油脂Dの含有量は少なければ少ないほど好ましく、用いないことが最も好ましい。
【0027】
なお本発明のベーカリー食品用油脂組成物において、上記の油脂A、油脂B、油脂C及び油脂D以外のその他の油脂を、全油脂中のトリグリセリド組成が上記の1)〜4)の条件を全て満たす範囲内にて用いても良い。
上記のその他の油脂としては、パーム核油、ヤシ油、落花生油、カポック油、胡麻油、月見草油、カカオ脂、シア脂、マンゴー核油、サル脂、イリッペ脂、乳脂、魚油、鯨油等の各種植物油脂、動物油脂等が挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記その他の油脂の含有量は、本発明のベーカリー用油脂組成物の全油脂中、好ましくは30質量%以下、さらに好ましくは25質量%以下、最も好ましくは19質量%以下である。
【0028】
本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、硬化油を含有しないことが好ましい。
上記の硬化油を含有しないとは、硬化油には通常、構成脂肪酸中にトランス酸が10〜50質量%程度含まれているためであり、トランス酸に起因する健康阻害回避のため本発明では含有しないことが好ましい。
ただし、極度硬化油脂は完全に水素添加されており、トランス酸を含まないため、本発明では極度硬化油を含有することは構わない。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物の全油脂中の脂肪酸組成において、トランス酸を好ましくは10質量%未満、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは2質量%以下の含有量とすることが望ましい。
【0029】
本発明のベーカリー食品用油脂組成物中の全油脂の含有量は、好ましくは20〜95質量%、さらに好ましくは50〜95質量%、最も好ましくは70〜95質量%である。本発明のベーカリー食品用油脂組成物において、全油脂の含有量が、20質量%よりも少ないとベーカリー食品用油脂組成物の乳化が不安定となりやすく、95質量%よりも多いと可塑性が不足しやすい。なお、上記の全油脂として、本発明のベーカリー用油脂組成物で含有させる以下のその他の成分に由来する油分も含めるものとする。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、糖類及び/又は甘味料を含有させることにより、さらに甘味の発現性に優れたベーカリー食品を製造することができる。
上記の糖類としては、ブドウ糖、果糖、ショ糖、麦芽糖、酵素糖化水飴、乳糖、還元澱粉糖化物、異性化液糖、ショ糖結合水飴、はちみつ、オリゴ糖、フラクトオリゴ糖、大豆オリゴ糖、ガラクトオリゴ糖、乳果オリゴ糖、ラフィノース、ラクチュロース、パラチノースオリゴ糖、還元乳糖、ソルビトール、キシロース、キシリトール、マルチトール、エリスリトール、マンニトール、トレハロース等が挙げられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
上記の甘味料としては、スクラロース、ステビア、アスパルテーム、ソーマチン、サッカリン、ネオテーム、アセスルファムカリウム、甘草、羅漢果等があげられる。本発明ではこれらの中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物において、上記の糖類の含有量及び上記の甘味料の含有量の合計は、甘味度を考慮したショ糖換算で好ましくは1〜30質量%、より好ましくは5〜20質量%である。
なお、甘味度とは、甘味の強さを示す尺度のことであり、通常、基準にショ糖溶液を用い、ショ糖の甘味を1として、ショ糖以外の甘味料の甘さの強さをショ糖の甘さの強さに対する倍率で示したものである。
なお、下に述べるその他の成分が、上記糖類や甘味料を含有する場合は、その純含有量についても、上記の糖類の含有量及び上記の甘味料の含有量の合計に含めることとする。
【0030】
本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、必要に応じて、本発明の効果を妨げない範囲において、その他の成分を含有することができる。その他の成分としては、水、乳化剤、乳製品、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、アラビアガム、アルギン酸類、ペクチン、キサンタンガム、プルラン、タマリンドシードガム、サイリウムシードガム、結晶セルロース、CMC、メチルセルロース、寒天、グルコマンナン、ゼラチン、澱粉、化工澱粉等の増粘安定剤、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、アミラーゼ、プロテアーゼ、アミログルコシダーゼ、プルラナーゼ、ペントサナーゼ、セルラーゼ、リパーゼ、ホスフォリパーゼ、カタラーゼ、リポキシゲナーゼ、アスコルビン酸オキシダーゼ、スルフィドリルオキシダーゼ、ヘキソースオキシダーゼ、グルコースオキシダーゼ等の酵素、食塩や塩化カリウム等の塩味剤、β―カロチン、カラメル、紅麹色素等の着色料類、酢酸、乳酸、グルコン酸等の酸味料、卵類、調味料、アミノ酸、pH調整剤、原料アルコール、焼酎、ウイスキー、ウォッカ、ブランデー等の蒸留酒、ワイン、日本酒、ビール等の醸造酒、各種リキュール、食品保存料、日持ち向上剤、果実、果汁、ナッツペースト、香辛料、カカオマス、ココアパウダー、コーヒー、紅茶、緑茶、穀類、豆類、野菜類、肉類、魚介類等の食品素材、トコフェロール、茶抽出物等の酸化防止剤、着香料等を添加してもよい。
【0031】
上記の水としては水道水や天然水等の水や、本発明のベーカリー食品用油脂組成物で含有させるその他の成分に由来する水分も含めたものとする。本発明のベーカリー食品用油脂組成物において、上記の水の含有量は好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは20〜30質量%、最も好ましくは15〜20質量%である。
【0032】
上記の乳化剤として、例えばグリセリン脂肪酸エステル、グリセリン酢酸脂肪酸エステル、グリセリン乳酸脂肪酸エステル、グリセリンコハク酸脂肪酸エステル、グリセリン酒石酸脂肪酸エステル、グリセリンクエン酸脂肪酸エステル、グリセリンジアセチル酒石酸脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン縮合リシノレイン酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ステアロイル乳酸カルシウム、ステアロイル乳酸ナトリウム及びポリオキシエチレンソルビタンモノグリセリド等の合成乳化剤や、例えば大豆レシチン、卵黄レシチン、大豆リゾレシチン、卵黄リゾレシチン、酵素処理卵黄、サポニン、植物ステロール類、乳脂肪球皮膜等の天然乳化剤が挙げられる。本発明のベーカリー食品用油脂組成物では、これらの中から選ばれた1種又は2種以上を使用することができる。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物において、上記の乳化剤の含有量は好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは3質量%以下である。
【0033】
上記乳製品としては、生乳、牛乳、特別牛乳、生山羊乳、殺菌山羊乳、生めん羊乳、部分脱脂乳、脱脂乳、加工乳、クリームチーズ、ナチュラルチーズ、プロセスチーズ、アイスクリーム類、濃縮乳、脱脂濃縮乳、無糖れん乳、無糖脱脂れん乳、加糖れん乳、加糖脱脂れん乳、全粉乳、脱脂粉乳、クリーム、クリームパウダー、サワークリーム、乳清蛋白質、ホエイ、ホエイパウダー、脱乳糖ホエイ、脱乳糖ホエイパウダー、ホエイ蛋白質濃縮物(WPC及び/又はWPI)、ミルクプロテインコンセントレート(MPC)、バターミルク、バターミルクパウダー、加糖粉乳、調製粉乳、はっ酵乳、ヨーグルト、乳酸菌飲料、乳飲料、カゼインカルシウム、カゼインナトリウム、カゼインカリウム、カゼインマグネシウム、ホエイプロテインコンセートレート、トータルミルクプロテイン及び乳清ミネラル等が挙げられる。本発明ではこれらの乳製品の中から選ばれた1種又は2種以上を用いることができる。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物において、上記の乳製品の含有量は固形物換算で好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは5質量%以下、最も好ましくは3質量%以下である。
【0034】
上述の記載から明らかなように、本発明のベーカリー食品用油脂組成物の好ましい組成は、上記油脂Aを20〜90質量%、上記油脂Bを5〜55質量%及び上記油脂Cを0.1〜8質量%それぞれ含有する油相からなっており、該油相中のトリグリセリド組成が、上記条件1)〜4)を全て満たすものである。更に好ましくは、本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、上記油相と、水相とを乳化混合してなる油中水型乳化油脂組成物である。
なお、本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、ベーカリー生地にロールインする際や練り込む際の作業性の点から可塑性油脂組成物であることが好ましい。
【0035】
本発明のベーカリー食品用油脂組成物の好ましい製造方法について以下に説明する。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、その製造方法が特に制限されるものではなく、上記1)〜4)の条件を満たす油相を溶解し、冷却することにより得ることができる。
具体的には、まず上記油相を溶解し、必要により水相を混合乳化する。
上記の水相を用いる場合、油相と水相との質量比率(前者:後者)は、好ましくは20〜95:5〜80、さらに好ましくは50〜90:10〜50、最も好ましくは70〜90:10〜30である。本発明において油相が20質量%よりも少なく水相が80質量%よりも多いと乳化が不安定となりやすい。また、油相が95質量%よりも多く、水相が5質量%よりも少ないと、良好な可塑性が得られにくい。
【0036】
そして次に殺菌処理をすることが望ましい。殺菌方式は、タンクでのバッチ式でも、プレート型熱交換機や掻き取り式熱交換機を用いた連続方式でも構わない。また殺菌温度は好ましくは80〜100℃、更に好ましくは80〜95℃、最も好ましくは80〜90℃とする。その後、必要により油脂結晶が析出しない程度に予備冷却を行なう。予備冷却の温度は好ましくは40〜60℃、更に好ましくは40〜55℃、最も好ましくは40〜50℃とする。
【0037】
次に、冷却、好ましくは急冷可塑化を行なう。
この急冷可塑化は、コンビネーター、ボテーター、パーフェクター、ケムテーターなどの密閉型連続式掻き取りチューブチラー冷却機(Aユニット)、プレート型熱交換機等が挙げられ、また開放型冷却機のダイヤクーラーとコンプレクターの組み合わせが挙げられる。この急冷可塑化を行なうことにより、可塑性を有する油脂組成物となる。
急冷可塑化の際に、ピンマシン等の捏和装置(Bユニット)やレスティングチューブ、ホールディングチューブを使用してもよい。
上記のベーカリー食品用油脂組成物の製造工程において、窒素、空気等を含気させても、含気させなくても構わない。
このようにして得られた本発明のベーカリー食品用油脂組成物は、ベーカリー食品のロールイン用、練り込み用、サンド・フィリング用、スプレッド用、スプレー・コーティング用、フライ用として使用することができるが、本発明のベーカリー食品用油脂組成物は一度溶解し、冷却され、固化する工程を経ることにより効果を発揮するため、ロールイン用や練り込み用で用いることが好ましく、ベーカリー生地への使用量が多く、焼成前のベーカリー生地中に局在化して存在するため本発明の高い効果が得られる点で、ロールイン用であることが特に好ましい。
【0038】
本発明のベーカリー食品用油脂組成物をロールイン用油脂組成物として用いる場合は、急冷可塑化後にシート状、ブロック状、円柱状、直方体等の形状とする。各々の形状についての好ましいサイズは、シート状:縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚さ1〜50mm、ブロック状:縦50〜1000mm、横50〜1000mm、厚さ50〜500mm、円柱状:直径1〜25mm、長さ5〜100mm、直方体:縦5〜50mm、横5〜50mm、高さ5〜100mmである。
本発明のベーカリー食品用油脂組成物を練り込み用油脂組成物として用いる場合は、急冷可塑化後にケースやカップなどの容器に流し込む。
【0039】
次に本発明のベーカリー食品用油脂組成物を用いたベーカリー生地について説明する。
本発明のベーカリー生地は、上述した本発明のベーカリー食品用油脂組成物をロールインしたベーカリー生地である。また本発明のベーカリー生地は、上述した本発明のベーカリー食品用油脂組成物を練り込んだベーカリー生地である。なお、本発明のベーカリー食品用油脂組成物をロールイン用と練り込み用の両方に用いたベーカリー生地でも構わない。
上記のベーカリー生地としては、食パン生地、菓子パン生地、フランスパン生地、クロワッサン生地、デニッシュ・ペストリー生地(ペストリー生地)、スイートロール生地、イーストドーナツ生地、ピザ生地、クッキー生地、パイ生地、シュー生地、サブレ生地、ワッフル生地、スコーン生地、クラッカー生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地及びケーキドーナツ生地等が挙げられる。
なかでも、甘味の発現性の効果が高いことから、菓子パン生地、デニッシュ・ペストリー生地(ペストリー生地)、スイートロール生地、イーストドーナツ生地、クッキー生地、サブレ生地、ワッフル生地、スコーン生地、スポンジケーキ生地、バターケーキ生地及びケーキドーナツ生地であることが好ましく、ロールイン油脂を使用する生地である、デニッシュ・ペストリー生地(ペストリー生地)であることが特に好ましい。
また、デニッシュ・ペストリー生地の層数は、目的とする製品により異なるものであり、特に限定されるものではないが、好ましくは9〜144層、より好ましくは16〜64層である。
上記のベーカリー生地を、適宜、成形し、必要に応じホイロ、リタード、レストをとった後、加熱してベーカリー食品とする。
上記成形においては、どのような形状に成形してもよく、型詰めを行っても構わない。これらの成形は、手作業で行っても、連続ラインを用いて全自動で行っても構わない。
上記加熱としては、例えば、焼成、フライ、蒸し、蒸し焼きが挙げられ、これらの中から選ばれた1種又は2種以上の処理を行うことができる。
【実施例】
【0040】
以下に実施例、比較例を挙げて、本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに何ら限定されるものではない。
以下の実施例1〜10のうち、実施例3、4及び10は、参考例である。
【0041】
(実施例1〜5)
油脂Aとして豚脂(S3:3.7質量%、s2U:30.9質量%、s2U中のP/St:1.8、sD2+U3:26.6質量%)、油脂Bとしてパームの分別中部油(S3:1.5質量%、s2U:64.5質量%、s2U中のP/St:11.1、sD2+U3:10.4質量%)、油脂Cとしてパームの極度硬化油(S3:100質量%)、油脂Dとして菜種油(S3:0質量%、s2U:0.8質量%、s2U中のP/St:3.7、sD2+U3:83質量%)を選定し、これらのうち、油脂Aと油脂Bと油脂Cとを用い、必要により油脂Dを用いて、表1に示す組成の配合油を調製した。
本配合油82質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合し、油相を調製した。この油相83質量部に、水相として水17質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し5℃2週間保管し、本発明の実施例1〜5のロールイン用油脂組成物を得た。
【0042】
(比較例1〜4)
油脂Aとして豚脂(S3:3.7質量%、s2U:30.9質量%、s2U中のP/St:1.8、sD2+U3:26.6質量%)、油脂Bとしてパームの分別中部油(S3:1.5質量%、s2U:64.5質量%、s2U中のP/St:11.1、sD2+U3:10.4質量%)、油脂Cとしてパームの極度硬化油(S3:100質量%)、油脂Dとして菜種油(S3:0質量%、s2U:0.8質量%、s2U中のP/St:3.7、sD2+U3:83質量%)を選定し、これらのうち、1種又は2種以上の油脂を用いて、表1に示す組成の配合油を調製した。
本配合油82質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合し、油相を調製した。この油相83質量部に、水相として水17質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し5℃2週間保管し、比較例1〜4のロールイン用油脂組成物を得た。
【0043】
(比較例5)
油脂Bとしてシアステアリン(S3:1.4質量%、s2U:80.3質量%、S2U中のP/St=0.1、sD2+U3:2.1質量%)を使用したほかは比較例1〜4と同様の方法でロールイン用油脂組成物を作成した。
【0044】
<評価>
実施例1〜5及び比較例1〜5で得られたロールイン用油脂組成物を用いて、下記配合と製法によりデニッシュ・ペストリーをそれぞれ製造し、焼成1日後のデニッシュ・ペストリーを食したときのジューシー感とべとつき、焼成1日後の内層及び浮きを下記評価基準により評価し、ロールイン時のロールイン用油脂組成物の伸展性を下記評価基準により評価した。その結果を下記の表1に示す。
【0045】
<デニッシュ・ペストリーの配合>
強力粉 80質量部
薄力粉 20質量部
イースト 4質量部
イーストフード 0.2質量部
上白糖 15質量部
全卵 10質量部
練り込み用マーガリン 5質量部
水 45質量部
ロールイン用油脂組成物 45質量部
【0046】
<デニッシュ・ペストリーの製法>
練り込み用マーガリンとロールイン用油脂組成物以外の原料をミキサーボールに入れ、フックを用い、縦型ミキサーにてL3、M3にてミキシングを行い、練り込み用マーガリンを入れ、さらにL3、M3にてミキシングを行い、生地を調製する。この生地をフロアタイム20分、−5℃の冷凍庫で24時間リタードさせた。この生地にロールイン用油脂組成物をのせ、常法により、ロールイン(3つ折り3回)し、成型(縦10センチ、横10センチ、厚さ3ミリ)した。そしてホイロ(32℃ 50分)をとり、200℃15分にて焼成した。
【0047】
<ジューシー感の評価基準>
○○○:ジューシー感を十分に感じ、極めて良好
○○:ジューシー感を感じることができ、良好
○:ややジューシー感を感じるものの、十分ではない
×:全くジューシー感が感じられない
【0048】
<べとつきの評価基準>
○○○:ベとつきがなく極めて良好。
○○:口に入れた際に、口中でややベとつく
○:口に入れた際に、唇に油脂が付着しベとつく
×:デニッシュを持った時点で、手がベとつく
【0049】
<内層及び浮きの評価基準>
○○○:きれいな層状で且つ膜がとても薄く、浮きが良好
○○:きれいな層状で且つ膜が薄いが、やや浮きが不十分
○:きれいな層状であるがやや膜が厚く、浮きが不十分
×:層状の部分とパン目の部分があり、浮きも不十分
【0050】
<伸展性の評価基準>
○○○:良好な伸展性を有し、生地の端から端まで均一にロールイン用油脂組成物が折り込まれている
○○:伸展性を有するが、生地の端までロールイン用油脂組成物が折り込まれていない
○:やや伸展性が乏しく、生地中のロールイン用油脂組成物に若干の割れがみられる
×:伸展性が乏しく、生地中のロールイン用油脂組成物に割れがみられる
【0051】
【表1】
【0052】
(実施例6)
実施例1の配合油78質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合し、油相を調製した。この油相79質量部に、水相として砂糖混合ブドウ糖果糖液糖(甘味度0.75、固形分:75質量%、果糖:19質量%、ブドウ糖:23.3質量%、ショ糖:30質量%、オリゴ糖:2.7質量%)7.5質量部、及び、水13.5質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し5℃2週間保管し、本発明の実施例6のロールイン用油脂組成物を得た。
【0053】
(実施例7)
実施例1の配合油78質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合し、油相を調製した。この油相79質量部に、水相として砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(甘味度0.90、固形分:75質量%、果糖:71.3質量%、その他糖類:3.7質量%)7.5質量部、及び水13.5質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し5℃2週間保管し、本発明の実施例7のロールイン用油脂組成物を得た。
【0054】
(実施例8)
実施例1の配合油78質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合し、油相を調製した。この油相79質量部に、水相としてスクラロース(甘味度600)0.015質量部、アセスルファムカリウム(甘味度200)0.0098質量部、及び水20.9752質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し5℃2週間保管し、本発明の実施例8のロールイン用油脂組成物を得た。
【0055】
(実施例9)
実施例1の配合油78質量部にグリセリン脂肪酸エステル0.5質量部、及びレシチン0.5質量部を配合し、油相を調製した。この油相79質量部に、水相として砂糖混合ブドウ糖果糖液糖(甘味度0.75)3.75質量部、砂糖混合果糖ブドウ糖液糖(甘味度0.90、固形分:75質量%、果糖:71.3質量%、その他糖類:3.7質量%)3.75質量部、スクラロース(甘味度600)0.0098質量部、アセスルファムカリウム(甘味度200)0.0062質量部、及び、水13.484質量部を加えて、油中水型に乳化し、85℃で殺菌した。そして50℃まで予備冷却した。次に予備冷却した油脂組成物を6本のAユニット、レスティングチューブを通過させ、急冷可塑化した。その後、サイズが縦420mm、横285mm、厚さ9mmのシート状に成形し5℃2週間保管し、本発明の実施例9のロールイン用油脂組成物を得た。
【0056】
(比較例6)
比較例1の配合油を使用した以外は、実施例6に記載の配合・製法により、比較例6のロールイン用油脂組成物を得た。
【0057】
(比較例7)
比較例2の配合油を使用した以外は、実施例6に記載の配合・製法により、比較例7のロールイン用油脂組成物を得た。
【0058】
(比較例8)
比較例3の配合油を使用した以外は、実施例6に記載の配合・製法により、比較例8のロールイン用油脂組成物を得た。
【0059】
(比較例9)
比較例4の配合油を使用した以外は、実施例6に記載の配合・製法により、比較例9のロールイン用油脂組成物を得た。
【0060】
(比較例10)
比較例5の配合油を使用した以外は、実施例6に記載の配合・製法により、比較例10のロールイン用油脂組成物を得た。
【0061】
<評価>
実施例6〜9及び比較例6〜10で得られたロールイン用油脂組成物を用いて、下記配合と製法によりデニッシュ・ペストリーをそれぞれ製造し、焼成1日後のデニッシュ・ペストリーを食したときのジューシー感、べとつき及び甘味の発現性、焼成1日後の内層及び浮きを下記評価基準により評価し、ロールイン時のロールイン用油脂組成物の伸展性を下記評価基準により評価した。その結果を下記の表2に示す。
【0062】
<デニッシュ・ペストリーの配合>
強力粉 80質量部
薄力粉 20質量部
イースト 4質量部
イーストフード 0.2質量部
上白糖 15質量部
全卵 10質量部
練り込み用マーガリン 5質量部
水 45質量部
ロールイン用油脂組成物 45質量部
【0063】
<デニッシュ・ペストリーの製法>
練り込み用マーガリンとロールイン用油脂組成物以外の原料をミキサーボールに入れ、フックを用い、縦型ミキサーにてL3、M3にてミキシングを行い、練り込み用マーガリンを入れ、さらにL3、M3にてミキシングを行い、生地を調製する。この生地をフロアタイム20分、−5℃の冷凍庫で24時間リタードさせた。この生地にロールイン用油脂組成物をのせ、常法により、ロールイン(3つ折り3回)し、成型(縦10センチ、横10センチ、厚さ3ミリ)した。そしてホイロ(32℃ 50分)をとり、200℃15分にて焼成した。
【0064】
<ジューシー感の評価基準>
○○○:ジューシー感を十分に感じ、極めて良好
○○:ジューシー感を感じることができ、良好
○:ややジューシー感を感じるものの、十分ではない
×:全くジューシー感が感じられない
【0065】
<べとつきの評価基準>
○○○:ベとつきがなく極めて良好。
○○:口に入れた際に、口中でややベとつく
○:口に入れた際に、唇に油脂が付着しベとつく
×:デニッシュを持った時点で、手がベとつく
【0066】
<甘味の発現性の評価基準>
○○○:甘味の発現性が極めて良好で、良好な甘味を感じる
○○:甘味の発現性が良好で、良好な甘味を感じる
○:甘味を感じるが甘味の発現性がやや劣る
×:甘味を感じるが甘味の発現性が悪い
【0067】
<内層及び浮きの評価基準>
○○○:きれいな層状で且つ膜がとても薄く、浮きが良好
○○:きれいな層状で且つ膜が薄いが、やや浮きが不十分
○:きれいな層状であるがやや膜が厚く、浮きが不十分
×:層状の部分とパン目の部分があり、浮きも不十分
【0068】
<伸展性の評価基準>
○○○:良好な伸展性を有し、生地の端から端まで均一にロールイン用油脂組成物が折り込まれている
○○:伸展性を有するが、生地の端までロールイン用油脂組成物が折り込まれていない
○:やや伸展性が乏しく、生地中のロールイン用油脂組成物に若干の割れがみられる
×:伸展性が乏しく、生地中のロールイン用油脂組成物に割れがみられる
【0069】
【表2】
【0070】
(実施例10)
実施例6と同じ配合を用い、製造方法は急冷可塑化までは実施例6と同様の方法にて製造した。その後、ケースに流し込み、5℃で2週間保管し、本発明の実施例10の練り込み用油脂組成物を得た。
【0071】
(比較例11)
比較例6と同じ配合を用い、製造方法は急冷可塑化までは比較例6と同様の方法にて製造した。その後、ケースに流し込み、5℃で2週間保管し、比較例11の練り込み用油脂組成物を得た。
【0072】
(比較例12)
比較例7と同じ配合を用い、製造方法は急冷可塑化までは比較例7と同様の方法にて製造した。その後、ケースに流し込み、5℃で2週間保管し、比較例12の練り込み用油脂組成物を得た。
【0073】
<評価>
実施例10、比較例11及び12で得られた練り込み用油脂組成物を用いて、下記配合と製法により食パンをそれぞれ製造し、焼成1日後の食パンを食したときのジューシー感及び甘味の発現性を下記評価基準により評価した。その結果を下記の表3に示す。
【0074】
<食パンの配合>
中種配合
強力粉 70質量部
イースト 2.3質量部
イーストフード 0.1質量部
水 40質量部
本捏配合
強力粉 30質量部
上白糖 6質量部
練り込み用油脂組成物 6質量部
脱脂粉乳 2質量部
食塩 2質量部
水 25質量部
【0075】
<食パンの製法>
上記の中種配合の全原料を、縦型ミキサーに入れ、低速2分、中速2分ミキシングし、中種生地(捏ね上げ温度=24℃)を得た。この中種生地を28℃、相対湿度80%にて4時間発酵させた。
上記の本捏配合に記載の練り込み用油脂組成物以外の材料と上記の発酵を行った中種生地を、縦型ミキサーに入れ、低速3分、中速3分ミキシングした後、本捏配合の練り込み用油脂組成物を添加して、低速3分、中速4分ミキシングし、本捏生地(捏ね上げ温度=28℃)を得た。得られた本捏生地は、20分フロアタイムをとり、分割(380g)、丸めし、25分ベンチタイムを取った後、モルダーを使用してワンローフ成形し、ワンローフ型にいれ、38℃、相対湿度80%、60分のホイロを取った後、210℃のオーブンで30分焼成してワンローフ型食パンを得た。
【0076】
<ジューシー感の評価基準>
○:ジューシー感を感じることができ、良好
×:全くジューシー感が感じられない
【0077】
<甘味の発現性の評価基準>
○:甘味の発現性が良好で、良好な甘味を感じる
×:甘味を感じるが甘味の発現性が悪い
【0078】
【表3】
【0079】
<評価>
実施例10及び比較例11で得られた練り込み用油脂組成物を用いて、下記配合と製法によりクッキー(ガレット)をそれぞれ製造し、焼成1日後のクッキーを食したときのジューシー感及び甘味の発現性を下記評価基準により評価した。その結果を下記の表4に示す。
【0080】
<クッキーの配合>
薄力粉 100質量部
食塩 1質量部
粉糖 60質量部
卵黄 10質量部
ベーキングパウダー 1質量部
練り込み用油脂組成物 100質量部
【0081】
<クッキーの製法>
練り込み用油脂組成物と粉糖を縦型ミキサーに入れ、低速2分、中速3分、高速3分ミキシングした後、卵黄と食塩を添加して更に低速2分、中速2分ミキシングした。ここに予め混合して篩っておいた薄力粉とベーキングパウダーを添加し、低速2分、中速2分ミキシングし、クッキー生地を得た。このクッキー生地を5℃の冷蔵庫内で一晩リタードした。このクッキー生地を厚さ10mmに圧延後、打ちぬき成型(直径40mm×厚さ10mm)し、フォークで表面に筋をつけた後、180℃のオーブンで15分焼成してクッキーを得た。
【0082】
<ジューシー感の評価基準>
○:ジューシー感を感じることができ、良好
×:全くジューシー感が感じられない
<甘味の発現性の評価基準>
○:甘味の発現性が良好で、良好な甘味を感じる
×:甘味を感じるが甘味の発現性が悪い
【0083】
【表4】