(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ウエハレベル封止用樹脂組成物として、前記ガラス転移温度未満における線膨張係数が5.5ppm/℃以下である樹脂組成物を用いることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のウエハの封止方法。
前記ウエハレベル封止用樹脂組成物は、前記ガラス転移温度未満における線膨張係数が5.5ppm/℃以下のものであることを特徴とする請求項6又は請求項7に記載のウエハレベル封止用樹脂組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記封止用の熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ−シリコーン混成樹脂、フェノール樹脂、シアネート樹脂、あるいはこれら2種以上の樹脂組成物などが挙げられるが、中でもシアネートエステル樹脂より得られる樹脂組成物はガラス転移温度(Tg)が高く、また熱膨張係数も他の樹脂に比べて小さいといった理由で好適に用いられる。
また、特許文献1〜3に示されるように、シアネートエステル樹脂の硬化触媒としては金属塩、金属錯体などが一般に用いられている。しかしながら、このような金属塩、金属錯体として用いられるのは通常、遷移金属であり、遷移金属類は高温下、有機樹脂の酸化劣化や吸湿劣化を促進する恐れがあるという問題があった。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、封止後の反りが小さく、かつ封止後の研磨工程や個片化工程を容易に行うことができるウエハの封止方法を提供することを目的とする。
また本発明は、硬化時の反りを抑えられ、かつ研磨性及びダイシング性に優れたウエハレベル封止用樹脂組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明では、
シアネートエステル樹脂を含有するウエハレベル封止用樹脂組成物を用いてウエハを一括封止するウエハの封止方法であって、前記ウエハレベル封止用樹脂組成物の硬化促進剤として有機系硬化促進剤を用い、前記ウエハレベル封止用樹脂組成物としてガラス転移温度が170℃以上、かつガラス転移温度未満における線膨張係数が60ppm/℃以下である樹脂組成物を用い、120℃〜200℃の成型温度で前記ウエハの一括封止を行うウエハの封止方法を提供する。
【0007】
このような封止方法であれば、封止後の反りが小さく、かつ封止後の研磨工程や個片化工程を容易に行うことができる。
【0008】
またこのとき、前記ウエハレベル封止用樹脂組成物として、金属触媒を含有しないものを用いることが好ましい。
金属触媒を含有しないものを用いることで、樹脂の酸化劣化や吸湿劣化を抑制することができる。
【0009】
またこのとき、前記ウエハレベル封止用樹脂組成物として、
(A)1分子中に2個以上のシアナト基を有するシアネートエステル樹脂、
(B)無機充填剤、
(C)下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤、
【化1】
(式中、R
1はメチル基又はエチル基であり、R
2は炭素数1〜3のアルキル基であり、R
3は
【化2】
のいずれかであり、aは0〜3の整数である。)
(D)a)活性水素を持たない3級アミン又はその塩、b)活性水素を持つアミン化合物又はその塩、c)フェノール化合物、及びd)下記構造式(2)で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物からなる有機系硬化促進剤、
【化3】
を含有するものを用いることが好ましい。
【0010】
このようなウエハレベル封止用樹脂組成物は、流動性が良好であり、硬化後に高温での機械強度、絶縁性、長期保管性に優れ、低熱膨張性であるため、これを用いることで封止後の反りがより小さく、封止後の研磨工程や個片化工程をより容易に行うことができる。
【0011】
またこのとき、前記一括封止を、コンプレッション成型によって行うことが好ましい。コンプレッション成型であれば、成型不良の発生を抑制し、十分にウエハを封止することができる。
【0012】
また、本発明では、ウエハの一括封止に用いられるウエハレベル封止用樹脂組成物であって、シアネートエステル樹脂及び有機系硬化促進剤を含有するものであり、ガラス転移温度が170℃以上、かつガラス転移温度未満における線膨張係数が60ppm/℃以下のウエハレベル封止用樹脂組成物を提供する。
【0013】
このようなウエハレベル封止用樹脂組成物であれば、硬化時の反りを抑えられ、かつ研磨性及びダイシング性に優れたウエハレベル封止用樹脂組成物となる。
【0014】
またこのとき、前記ウエハレベル封止用樹脂組成物が、
(A)1分子中に2個以上のシアナト基を有するシアネートエステル樹脂、
(B)無機充填剤、
(C)下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤、
【化4】
(式中、R
1はメチル基又はエチル基であり、R
2は炭素数1〜3のアルキル基であり、R
3は
【化5】
のいずれかであり、aは0〜3の整数である。)
(D)a)活性水素を持たない3級アミン又はその塩、b)活性水素を持つアミン化合物又はその塩、c)フェノール化合物、及びd)下記構造式(2)で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物からなる有機系硬化促進剤、
【化6】
を含有するものであることが好ましい。
【0015】
このようなウエハレベル封止用樹脂組成物であれば、流動性が良好であり、硬化後には高温での機械強度、絶縁性、長期保管性に優れ、低熱膨張性であるため、硬化時の反りをより抑えられ、かつ研磨性及びダイシング性により優れたウエハレベル封止用樹脂組成物となる。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明のウエハレベル封止用樹脂組成物であれば、硬化時の反りを抑えられ、かつ弾性率が高いことで研磨性及びダイシング性に優れ、流動性が良好であり、硬化後には高温での機械強度、絶縁性、長期保管性に優れ、低熱膨張性のウエハレベル封止用樹脂組成物となるため、ウエハモールド用封止材として好適である。また、これを用いた本発明のウエハの封止方法であれば、フローマークや未充填といった成型不良を発生させずに封止でき、かつ封止後の反りが小さく、封止後の研磨工程や個片化工程を容易に行うことができる。更に、ウエハレベル封止用樹脂組成物として金属触媒を含有しないものを用いることで、樹脂の酸化劣化や吸湿劣化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
上述のように、ウエハを一括封止する際に、封止後の反りを低減できるウエハの封止方法と、これに用いられるウエハレベル封止用樹脂組成物の開発が求められていた。
【0019】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討を重ねた結果、本発明のウエハレベル封止用樹脂組成物を用いた封止方法であれば、封止後の反りを低減できることを見出し、本発明を完成させた。
【0020】
即ち、本発明は、シアネートエステル樹脂を含有するウエハレベル封止用樹脂組成物を用いてウエハを一括封止するウエハの封止方法であって、前記ウエハレベル封止用樹脂組成物の硬化促進剤として有機系硬化促進剤を用い、前記ウエハレベル封止用樹脂組成物としてガラス転移温度が170℃以上、かつガラス転移温度未満における線膨張係数が60ppm/℃以下である樹脂組成物を用い、120℃〜200℃の成型温度で前記ウエハの一括封止を行うウエハの封止方法である。
【0021】
以下、本発明について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0022】
本発明のウエハの封止方法では、シアネートエステル樹脂を含有するウエハレベル封止用樹脂組成物を用いる。
本発明のウエハの封止方法に用いるウエハレベル封止用樹脂組成物として、本発明では、シアネートエステル樹脂及び有機系硬化促進剤を含有するものであり、ガラス転移温度が170℃以上、かつガラス転移温度未満における線膨張係数が60ppm/℃以下のウエハレベル封止用樹脂組成物を提供する。
【0023】
またこのとき、前記ウエハレベル封止用樹脂組成物が、
(A)1分子中に2個以上のシアナト基を有するシアネートエステル樹脂、
(B)無機充填剤、
(C)下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤、
【化7】
(式中、R
1はメチル基又はエチル基であり、R
2は炭素数1〜3のアルキル基であり、R
3は
【化8】
のいずれかであり、aは0〜3の整数である。)
(D)a)活性水素を持たない3級アミン又はその塩、b)活性水素を持つアミン化合物又はその塩、c)フェノール化合物、及びd)下記構造式(2)で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物からなる有機系硬化促進剤、
【化9】
を含有するものであることが好ましい。
以下、各成分について詳細に説明する。
【0024】
[(A)シアネートエステル樹脂]
本発明のウエハレベル封止用樹脂組成物の(A)成分は、1分子中に2個以上のシアナト基を有するシアネートエステル樹脂である。
このようなシアネートエステル樹脂としては、一般に公知のものが使用でき、特に限定されないが、例えばビス(4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−メチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3−エチル−4−シアナトフェニル)メタン、ビス(3,5−ジメチル−4−シアナトフェニル)メタン、1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)−1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロプロパン、ジ(4−シアナトフェニル)チオエーテル、1,3−又は1,4−ジシアナトベンゼン、2−tert−ゾチル−1,4−ジシアナトベンゼン、2,4−ジメチル−1,3−ジシアナトベンゼン、2,5−ジ−tert−ブチル−1,4−ジシアナトベンゼン、テトラメチル−1,4−ジシアナトベンゼン、1,3,5−トリシアナトベンゼン、2,2’−又は4,4’−ジシアナトビフェニル、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジシアナトビフェニル、1,3−、1,4−、1,5−、1,6−、1,8−、2,6−、又は2,7−ジシアナトナフタレン、1,3,6−トリシアナトナフタレン、ビス(4−シアナトフェニル)メタン;2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、1,1,1−1トリス(4−シアナトフェニル)エタン、ビス(4−シアナトフェニル)エーテル;4,4’−(1,3−フェニレンジイソピロピリデン)ジフェニルシアネート、ビス(4−シアナトフェニル)チオエーテル、ビス(4−シアナトフェニル)スルホン、トリス(4−シアナト−フェニル)ホスフィン、トリス(4−シアナトフェニル)ホスフィン、フェノールノボラック型シアネート、クレゾールノボラック型シアネート、ジシクロペンタジエンノボラック型シアネート等が挙げられる。また、これらのシアネートエステル樹脂は1種又は2種以上を混合して用いることができる。
【0025】
[(B)無機充填剤]
(B)成分の無機充填剤としては、溶融シリカ、結晶性シリカ、クリストバライト等のシリカ類、アルミナ、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、ボロンナイトライド、酸化チタン、ガラス繊維、酸化マグネシウム等が挙げられる。これら無機充填剤の平均粒径や形状は、用途に応じて選択される。中でもシリコンに近い熱膨張係数を得るためには溶融シリカであり、形状は球状のものが好適である。
【0026】
これらの無機充填材は、120℃、2.1気圧でサンプル5g/水50gの抽出条件で抽出される不純物としてクロールイオンが10ppm以下、ナトリウムイオンが10ppm以下であることが好適である。10ppm以下であれば、組成物で封止された半導体装置の耐湿特性の低下を抑制できる。
【0027】
無機充填材の配合量は、組成物全体の70〜95質量%が好ましく、より好ましくは80〜95質量%、更に好ましくは86〜94.5質量%である。
【0028】
[(C)シランカップリング剤]
(C)成分のシランカップリング剤としては、下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤がシアネートエステル樹脂との親和性に優れ、無機充填剤との結合を強めることができ、かつ組成物の流動性を著しく向上させることができるため好ましい。また、下記一般式(1)で表されるシランカップリング剤を使用することで、上記の無機充填剤の添加量を70〜95質量%とすることができる。
【化10】
(式中、R
1はメチル基又はエチル基であり、R
2は炭素数1〜3のアルキル基であり、R
3は
【化11】
のいずれかであり、aは0〜3の整数である。)
【0029】
シランカップリング剤は(B)成分の無機充填剤の表面に予め処理しておくこともできる。ここで表面処理に用いるカップリング剤の表面処理方法については特に制限されるものではない
【0030】
シランカップリング剤の添加量としては、0.2〜0.5質量%が望ましい。添加量が0.2質量%以上であれば、シアネートエステル樹脂と無機充填剤との間に充分な結合が得られ、また充分な流動性が得られる。また、添加量が0.5質量%以下であれば、熱膨張係数が大きくなりすぎない。
【0031】
[(D)有機系硬化促進剤]
(D)成分の有機系硬化促進剤は、a)活性水素を持たない3級アミン又はその塩、b)活性水素を持つアミン化合物又はその塩、c)フェノール化合物、及びd)下記構造式(2)で表される化合物から選ばれる1種以上の化合物からなる有機系硬化促進剤である。
【0032】
(D)成分のa)活性水素を持たない3級アミン又はその塩の例としては、1,8−ジアザビシクロ(5.4.0)ウンデセン−7(DBU)、1,5−ジアザビシクロ(4.3.0)ノネン−5(DBN)、及びこれらの塩が挙げられる。DBUの塩の具体例としては、DBUのフェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、オルソフタル酸塩、無水トリメリット酸塩、フェノールノボラック樹脂塩、テトラフェニルボレート塩が挙げられる。一方、DBNの塩の具体例としては、DBNのフェノール塩、オクチル酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、ギ酸塩、オルソフタル酸塩、無水トリメリット酸塩、フェノールノボラック樹脂塩、テトラフェニルボレート塩が挙げられる。
【0033】
(D)成分のb)活性水素を持つアミン化合物又はその塩の例としては、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’,5,5’−テトラエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4−ジアミノトルエン、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、3,4−ジアミノジフェニルエーテル、3,3−ジアミノジフェニルメタン、3,4−ジアミノジフェニルメタン、4,4−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジアミノベンジディン、オルソトリジン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、3,3’−ジエチル−4,4’−ジアミノジフェニルメタン、2,4−ジアミノトルエン、2,6−ジアミノトルエン、1,4−フェニレンジアミン、1,3−フェニレンジアミン、1,8−ジアミノナフタレンなどの芳香族アミン系硬化促進剤、N,N’−ビス(3−アミノプロピル)エチレンジアミン、3,3−ジアミノジプロピルアミン、1,8−ジアミノオクタン、1,10−ジアミノデカン、3,3−ジアミノジプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等の鎖状脂肪族ポリアミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)ピペラジン、N−(2−アミノエチル)モルホリン、N−アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン、等の環状脂肪族ポリアミン、更にダイマー酸とポリアミンとの縮合により生成されるポリアミドアミンとしては、例えば、アジピン酸ジヒドラジド、7,11−オクタデカジエン−1,18−ジカルボヒドラジド、イミダゾール系硬化剤としては、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1,3−ビス(ヒドラジノカルボノエチル)−5−イソプロピルヒダントイン、グアニジン系硬化剤としては、1,3−ジフェニルグアニジン、1,3−o−トリグアニジンなどの脂肪族アミンが挙げられる。
【0034】
(D)成分のc)フェノール化合物の例としてはフェノール、アルキルフェノールが挙げられ、例えばノニルフェノール、ジノニルフェノール、オクチルフェノール、3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、3−(2−ヒドロキシフェニル)プロパノール、2−メトキシ−4−アリルフェノール、2−アリルフェノール、ビスフェノールF型樹脂、ビスフェノールA型樹脂、フェノールノボラック樹脂、フェノールアラルキル型樹脂、ビフェニルアラルキル型樹脂、ナフタレンアラルキル型樹脂など公知のフェノール樹脂が挙げられる。
【0035】
(D)成分のd)は、下記構造式(2)で表される化合物である。
【化12】
【0036】
また、本発明のウエハレベル封止用樹脂組成物は、金属触媒を含有しないものであることが好ましい。
上述のように、金属触媒となる金属塩、金属錯体として用いられるのは通常、遷移金属であり、遷移金属類は高温下、樹脂の酸化劣化や吸湿劣化を促進する懸念がある。従って、金属触媒を含有しないことで樹脂の酸化劣化や吸湿劣化を抑制することができる。
【0037】
[その他の添加剤]
本発明のウエハレベル封止用樹脂組成物には、更に必要に応じて離型剤、難燃剤、イオントラップ剤、酸化防止剤、接着付与剤、低応力剤、着色剤など各種の添加剤を配合することができる。
【0038】
離型剤としては、例えばカルナバワックス、ライスワックス、キャンデリラワックス、ポリエチレン、酸化ポリエチレン、ポリプロピレン、モンタン酸、モンタン酸と飽和アルコール、2−(2−ヒドロキシエチルアミノ)エタノール、エチレングリコール、グリセリン等とのエステル化合物であるモンタンワックス;ステアリン酸、ステアリン酸エステル、ステアリン酸アミド、等公知のものを使用することができる。
【0039】
難燃剤としては、特に制限されず公知のものを使用することができる。例えばホスファゼン化合物、シリコーン化合物、モリブデン酸亜鉛担持タルク、モリブデン酸亜鉛担持酸化亜鉛、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、酸化モリブデンを使用してもよい。
【0040】
イオントラップ剤としては、特に制限されず公知のものを使用することができる。ハイドロタルサイト類、水酸化ビスマス化合物、希土類酸化物等を使用してもよい。
【0041】
また、酸化防止剤、接着付与剤、低応力剤、着色剤としては、特に制限されず公知のものを使用することができる。
【0042】
本発明のウエハレベル封止用樹脂組成物は、上述のような成分を含有するものであり、またガラス転移温度(Tg)が170℃以上であり、かつガラス転移温度未満における線膨張係数が60ppm/℃以下のものである。
このような線膨張係数であれば、線膨張係数が小さいため、直径8インチ、12インチ等のシリコンウエハ上に成型した場合の反りを小さくすることができる。また、このようなガラス転移温度であれば、200℃以上の高温に長期保管した場合の熱分解(重量減少)が少なく、高温での機械強度、絶縁性に優れ、その硬化物で封止された半導体装置は長期高温信頼性に優れる。
【0043】
本発明のウエハレベル封止用樹脂組成物は、以下に示されるような方法で製造することができる。例えば上述のシアネートエステル樹脂と有機硬化促進剤を同時に又は別々に必要により加熱処理を加えながら撹拌、溶解、混合、分散させたり、場合によってはこれらの混合物に上記の無機充填材やシランカップリング剤を加えて混合、撹拌、分散させることにより得ることができる。この場合、混合、撹拌、分散等の装置は特に限定されないが、具体的には撹拌、加熱装置を備えたライカイ機、2本ロール、3本ロール、ボールミル、連続押し出し機、プラネタリーミキサー、マスコロイダー等を用いることができ、これらの装置を適宜組み合わせて使用してもよい。
【0044】
以上のように、本発明のウエハレベル封止用樹脂組成物であれば、硬化時の反りを抑えられ、かつ弾性率が高いことで研磨性(バックグラインド性)及びダイシング性に優れ、流動性が良好であり、硬化後には高温での機械強度、絶縁性、長期保管性に優れ、低熱膨張性のウエハレベル封止用樹脂組成物となる。
【0045】
また、本発明では、シアネートエステル樹脂を含有するウエハレベル封止用樹脂組成物を用いてウエハを一括封止するウエハの封止方法であって、前記ウエハレベル封止用樹脂組成物の硬化促進剤として有機系硬化促進剤を用い、前記ウエハレベル封止用樹脂組成物としてガラス転移温度が170℃以上、かつガラス転移温度未満における線膨張係数が60ppm/℃以下である樹脂組成物を用い、120℃〜200℃の成型温度で前記ウエハの一括封止を行うウエハの封止方法を提供する。
【0046】
本発明のウエハの封止方法では、ウエハレベル封止用樹脂組成物の硬化促進剤として有機系硬化促進剤を用い、ウエハレベル封止用樹脂組成物としてガラス転移温度が170℃以上、かつガラス転移温度未満における線膨張係数が60ppm/℃以下である樹脂組成物を用いる。即ち、上述の本発明のウエハレベル封止用樹脂組成物を用いることができる。
【0047】
また、本発明のウエハの封止方法におけるウエハレベル封止用樹脂組成物の成型温度は120〜200℃であり、好ましくは150℃〜180℃である。120℃未満では十分に硬化できず、200℃を超えるとフローマークや未充填といった成型不良が発生しやすい。また、加熱時間は45〜600秒間が好ましい。さらに、成型後ポストキュアーを行うことが好ましく、ポストキュアーは160〜250℃で1〜16時間行うことが好ましい。
【0048】
このようなウエハの封止方法であれば、封止後の反りが小さく、かつ封止後の研磨工程や個片化工程を容易に行うことができる。
【0049】
またこのとき、ウエハレベル封止用樹脂組成物として、金属触媒を含有しないものを用いることが好ましい。
上述のように、金属触媒となる金属塩、金属錯体として用いられるのは通常、遷移金属であり、遷移金属類は高温下、樹脂の酸化劣化や吸湿劣化を促進する懸念がある。従って、金属触媒金属触媒を含有しないものを用いることで、樹脂の酸化劣化や吸湿劣化を抑制することができる。
【0050】
本発明のウエハの封止方法では、従来採用されている成型法、例えばトランスファー成型、コンプレッション成型、インジェクション成型、注型法等を利用してウエハの一括封止を行うことができるが、特にコンプレッション成型であれば、成型不良の発生を抑制し、十分にウエハを封止することができるため、好ましい。
【0051】
また、従来トランスファー成型、コンプレッション成型材料として一般的に使用されているエポキシ樹脂組成物と同様の装置、成型条件を用いてもフローマークや未充填といった成型不良が発生しないため、生産性にも優れている。
【0052】
なお、フローマークとは、成型物の中心から外側に向かって放射状に残る白い流動痕のことである。フローマークが発生すると外観不良や、シリカ不均一分散による硬化物の物性のバラつきや、それに伴う信頼性の低下等が懸念される。また、未充填とは、ウエハ外周部に発生する樹脂の欠けのことを言う。未充填が発生すると後工程でウエハを搬送するときに、センサーが未充填部をノッチと誤認識して、位置合わせ特性の低下が懸念される。
【0053】
以上のように、本発明のウエハの封止方法であれば、フローマークや未充填といった成型不良を発生させずに封止でき、かつ封止後の反りが小さく、封止後の研磨工程や個片化工程を容易に行うことができる。更に、ウエハレベル封止用樹脂組成物として金属触媒を含有しないものを用いることで、樹脂の酸化劣化や吸湿劣化を抑制することができる。
【実施例】
【0054】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0055】
以下に、実施例1〜6及び比較例1〜5のウエハレベル封止用樹脂組成物に配合した各成分を示す。
[(A)成分]
シアネート化合物(イ);1,1−ビス(4−シアナトフェニル)エタン
【化13】
シアネート化合物(ロ);フェノールノボラック型シアネートエステル(式中、nは0〜10である。)
【化14】
[(B)成分]
無機充填剤;平均粒径14μmの溶融球状シリカ(龍森製)
[(C)成分]
シランカップリング剤;KBM−573(信越化学製)
【化15】
[(D)成分]
有機系硬化促進剤(ハ);DBUとフェノールノボラックの塩 U CAT−SA831(サンアプロ製)
有機系硬化促進剤(ニ);DBNとフェノールノボラックの塩 U CAT‐SA881(サンアプロ製)
有機系硬化促進剤(ホ);2−エチル−4−メチルイミダゾール
[エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂用硬化剤]
エポキシ樹脂(ヘ);ビスフェノールA型ジグリシジルエーテル
エポキシ樹脂(ト);3’,4’エポキシシクロヘキシルメチル3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート
エポキシ樹脂用硬化剤;4−メチルヘキサヒドロ無水フタル酸
[その他の成分]
カーボンブラック;三菱カーボン3230MJ(三菱化学製)
【0056】
下記の表1及び表2に示す配合組成で上記の各成分を混合し、実施例1〜6及び比較例1〜5のウエハレベル封止用樹脂組成物を得た。得られた樹脂組成物のうち、固体状のものは26.4g計量し58mm径の円筒状金型にいれ高圧プレスによって50トンで5秒程プレスしペレット状に加工した。以下の評価に用いる実施例1〜6及び比較例1〜5のウエハレベル封止用樹脂組成物は液状又は直径58mmのペレット状のものである。
【0057】
得られた実施例1〜6及び比較例1〜5のウエハレベル封止用樹脂組成物において、以下のように評価を行った結果を下記の表1及び表2に併せて示す。
(ガラス転移温度、線膨張係数)
実施例1〜6及び比較例1〜5のウエハレベル封止用樹脂組成物を用いて5x5x15mmの試験片を作製し、これを熱膨張計(Rigaku TMA8140C)にセットし、昇温5℃/分、荷重19.6mNで25℃から300℃までの寸法変化を測定した。測定した寸法変化と温度のグラフを作成したものを
図1に示す。変曲点の温度以下で寸法変化―温度曲線の接線が得られる任意の温度2点A1,A2、変曲点の温度以上で接線が得られる任意の2点B1,B2を選択し、A1,A2を結ぶ直線とB1,B2を結ぶ直線の交点をガラス転移温度(Tg)とした。A1〜A2の傾きをTg以下の線膨張係数、B1〜B2の傾きをTg以上の線膨張係数とした。
【0058】
(反り測定)
直径8インチ/200μm厚のウエハ上に、アピックヤマダ社製ウエハモールド(MZ407−1)にて樹脂厚みを400μmに設定し、実施例1〜6及び比較例1〜5のウエハレベル封止用樹脂組成物を、表1及び表2に記載の成型温度/600秒間にてコンプレッション成型後、175℃/1時間にて完全硬化(ポストキュアー)させて、反りを測定した。
【0059】
(フローマーク・未充填の有無)
実施例1〜6及び比較例1〜5のウエハレベル封止用樹脂組成物を、表1及び表2に記載の成型温度/600秒間、樹脂厚み400μmとなるようにコンプレッション成型後、175℃/1時間にて完全硬化(ポストキュアー)させた後、外観目視によるフローマーク、未充填の有無を評価した。
【0060】
(研磨性)
実施例1〜6及び比較例1〜5のウエハレベル封止用樹脂組成物を、表1及び表2に記載の成型温度/600秒間、樹脂厚み400μmとなるようにコンプレッション成型後、175℃/1時間にて完全硬化(ポストキュアー)させた後、DISCO AUTOMATIC GRINDER DAG810を用いて以下の条件で研磨を行い、研磨性を評価した。
研磨条件
Grinding:1.0μm/s
Spindle speed:4,800rpm
Stage speed:300rpm
なお、600メッシュ研磨が可能であり、かつ研磨時の負荷電流値が8.0A以下で安定しているものを「良好」、安定的に600メッシュ研磨ができないものを「NG」とした。
【0061】
(ダイシング性)
実施例1〜6及び比較例1〜5のウエハレベル封止用樹脂組成物を、表1及び表2に記載の成型温度/600秒間、樹脂厚み400μmとなるようにコンプレッション成型後、175℃/1時間にて完全硬化(ポストキュアー)させた後、DISCO A540を用いてダイシングを行い、ダイシング性を評価した。
なお、断面を観察し、シリコンがチッピングしたり、樹脂とシリコン界面に剥離が発生しないものを「良好」、断面を観察し、シリコンがチッピングしたり、樹脂とシリコン界面に剥離が発生したものを「NG」とした。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
表1に示されるように、(A)〜(D)成分を含有し、ガラス転移温度が170℃以上であるウエハレベル封止用樹脂組成物を用い、成型温度が120℃〜200℃である実施例1〜6は、硬化後の反りが小さく、フローマーク及び未充填がなく、研磨性及びダイシング性も良好であった。
一方、表2に示されるように、(A)成分の代わりにエポキシ樹脂を用いた比較例1は、液状であり、ガラス転移温度が低く、反りが大きく、研磨性及びダイシング性が良好ではなかった。また(C)成分を含有しない比較例2は、製造することができなかった。更に(D)成分を含有しない比較例3及び成型温度が100℃である比較例4は、硬化不良であった。また、成型温度が220℃である比較例5は、フローマーク及び未充填が発生した。
【0065】
以上のように、本発明のウエハレベル封止用樹脂組成物であれば、硬化時の反りを抑えられ、かつ研磨性及びダイシング性に優れるため、これを用いた本発明のウエハの封止方法であれば、フローマークや未充填といった成型不良を発生させずに封止でき、かつ封止後の反りが小さく、封止後の研磨工程や個片化工程を容易に行うことができることが明らかとなった。
【0066】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。