(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記副画素配列パターンの周期が異なるものは、前記表示ユニットの表示画面において、前記一方の方向が水平方向であり、この水平方向をx方向とし、前記x方向に対して垂直な方向をy方向としたとき、互いに異なる少なくとも2色について、前記副画素は、前記x方向及び前記y方向の少なくとも一方の方向で前記副画素の周期が一致しないものを含む請求項1又は2に記載の導電性フイルム。
前記少なくともいずれか一つの条件を満たすことは、前記複数色内のいずれかの2色について、前記一方の方向において、一方の色の副画素の重心の位置と他方の色の副画素の重心の位置との差が、前記画素配列パターンの画素ピッチをPとする時、3P/10より小さいか、11P/30より大きく3P/5より小さいか、11P/15より大きいかのいずれか1つを満足すること、もしくは、
前記複数色内のいずれかの1色について、前記一方の方向に垂直な方向において、当該1色の副画素の重心の位置と隣接する画素の当該1色の副画素の重心の位置との差が、9P/10より小さいか、11P/10より大きいかのいずれか1つを満足することである請求項1〜3のいずれか1項に記載の導電性フイルム。
前記複数色の各色の前記副画素配列パターンの明度画像データは、各色毎に前記表示ユニットの表示画面に表示された色の前記副画素配列パターンの画像を撮像して得られた撮像画像データを明度値に変換することによって得られた明度画像データを規格化した規格化明度データである請求項1〜4のいずれか1項に記載の導電性フイルム。
前記複数の第1スペクトルピークは、前記配線パターンの透過率画像データを、2次元フーリエ変換して得られた複数のスペクトルピークから選択された第1の閾値以上のピーク強度を有するものであり、
前記複数色のそれぞれについて、前記複数の第2スペクトルピークは、前記副画素配列パターンの前記明度画像データを、2次元フーリエ変換して得られた複数のスペクトルピークから選択された第2の閾値以上のピーク強度を有するものである請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電性フイルム。
互いに異なる少なくとも3色の複数色の光を射出する複数の副画素を備える画素が一方の方向及び前記一方の方向に垂直な方向に繰り返される画素配列パターンで配列されてなり、互いに異なる少なくとも2色について、前記副画素の形が異なるもの、及び各色の前記副画素の配列によって形成される副画素配列パターンの周期が異なるものの少なくとも一方である表示ユニットと、
この表示ユニットの上に設置される、請求項1〜14のいずれか1項に記載の導電性フイルムとを備えることを特徴とする表示装置。
表示装置の表示ユニット上に設置され、複数の金属細線がメッシュ状の配線パターンを形成することで、複数の開口部が配列された配線パターンを有する導電性フイルムの評価方法であって、
前記表示ユニットは、互いに異なる少なくとも3色の複数色の光を射出する複数の副画素を含む画素が一方の方向及び前記一方の方向に垂直な方向に繰り返される画素配列パターンで配列されてなり、前記複数色のうち互いに異なる少なくとも2色について前記副画素の形が異なるもの、若しくは、前記複数色の各色の前記副画素の配列によって形成される副画素配列パターンの周期が異なるもの、若しくは、前記画素の1画素内において前記複数の副画素の重心のうちの少なくとも1つが残りの副画素の重心の少なくとも2つを結んだ直線上とは異なる位置にあるもの、のうち少なくともいずれか一つの条件を満たすものであり、
前記配線パターンの透過率画像データ及び前記表示ユニットの前記複数色の各色の前記副画素配列パターンの明度画像データを取得し、
少なくとも1視点において、前記配線パターンの透過率画像データ及び前記副画素配列パターンの明度画像データに対して2次元フーリエ変換を行い、前記配線パターンの透過率画像データの2次元フーリエスペクトルの複数の第1スペクトルピークの第1ピーク周波数及び第1ピーク強度と、各色毎に、前記複数色の各色の前記副画素配列パターンの明度画像データの2次元フーリエスペクトルの複数の第2スペクトルピークの第2ピーク周波数及び第2ピーク強度とを算出し、
こうして算出された前記配線パターンの前記第1ピーク周波数及び前記第1ピーク強度と、前記複数色のそれぞれの前記副画素配列パターンの前記第2ピーク周波数及び前記第2ピーク強度とからそれぞれ前記複数色の各色のモアレの周波数及び強度を算出し、
こうして算出された各色の前記モアレの周波数及び強度の中から、前記表示ユニットの表示解像度に応じて規定される周波数閾値以下の周波数及び第1強度閾値以上の強度を持つモアレを選び出し、
こうして選び出されたそれぞれの各色のモアレの周波数における前記モアレの強度に人間の視覚応答特性を観察距離に応じて作用させてそれぞれ各色のモアレの評価値を得、
こうして得られた各色毎のモアレの評価値からモアレの評価指標を算出し、
こうして算出された前記モアレの評価指標が所定値以下である導電性フイルムを評価することを特徴とする導電性フイルムの評価方法。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下に、本発明に係る導電性フイルム及び導電性フイルムの評価方法を添付の図面に示す好適な実施形態を参照して詳細に説明する。
以下では、本発明に係る導電性フイルムについて、タッチパネル用の導電性フイルムを代表例として説明するが、本発明は、これに限定されず、液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display)やプラズマディスプレイ(PDP:Plasma Display Panel)や有機ELディスプレイ(OELD:Organic Electro-Luminescence Display)や無機ELディスプレイ等の表示装置の表示ユニット、詳細は後述するが、副画素(カラーフィルタ)の繰り返し周期及び強度、即ち副画素配列パターン(副画素の形、周期))がRGB等の複数色において全て同じでない、即ち、少なくとも2つの色について異なる副画素配列パターンを含む画素配列パターン(BMパターン)を持つ表示ユニット上に設置される導電性フイルムであれば、どのようなものでも良く、例えば、電磁波シールド用の導電性フイルム等であっても良いのはもちろんである。
【0026】
図1及び
図2は、それぞれ本発明の第1の実施形態に係る導電性フイルムの一例を模式的に示す平面図及びその模式的部分断面図である。
これらの図に示すように、本実施形態の導電性フイルム10は、表示装置の表示ユニット上に設置されるもので、表示ユニットのRGB等の複数色のカラーフィルタの繰り返しパターン、即ち副画素配列パターンからなる画素配列パターンに対してモアレの発生の抑止の点で優れた配線パターン、特に、画素配列パターンに重畳した際に画素配列パターンに含まれる個々の色において異なる形及び周期を持つ副画素配列パターンに対してモアレの視認性の点で最適化された配線パターンを持つ導電性フイルムであり、透明基体12と、透明基体10の一方の面(
図2中上側の面)に形成され、複数の金属製の細線(以下、金属細線という)14からなる導電部16と、導電部16の略全面に、金属細線14を被覆するように、接着層18を介して接着された保護層20とを有する。
【0027】
透明基体12は、絶縁性を有し、かつ透光性が高い材料からなり、例えば、樹脂、ガラス、シリコン等の材料を挙げることができる。樹脂としては、例えば、PET(Polyethylene Terephthalate)、PMMA(Polymethyl methacrylate)、PP(polypropylene)、PS(polystyrene)等が挙げられる。
導電部16は、金属細線14と、隣接する金属細線14間の開口部22とによるメッシュ形状の配線パターン24とを有する導電層28からなる。金属細線14は、導電性の高い金属製の細線であれば特に制限的ではなく、例えば、金(Au)、銀(Ag)又は銅(Cu)の線材等からなるものを挙げることができる。金属細線14の線幅は、視認性の点からは細い方が好ましいが、例えば、30μm以下であれば良い。なお、タッチパネル用途では、金属細線14の線幅は0.1μm以上15μm以下が好ましく、1μm以上9μm以下がより好ましく、2μm以上7μm以下がさらに好ましい。
【0028】
導電部16は、詳細には、複数の金属細線14をメッシュ状を配列した配線パターン24を有する。図示例においては、開口部22のメッシュ形状は菱形であるが、本発明はこれに限定されず、後述する所定の副画素配列パターンを含む画素配列パターンに対してモアレ視認性が最適化された配線パターン24を構成できれば、少なくとも3辺を有する多角形状であれば如何なるものでも良く、また、同一メッシュ形状であっても、異なるメッシュ形状であっても良く、例えば、正三角形、二等辺三角形等の三角形や、正方形(正方格子:後述する
図18(D)参照)、長方形、平行四辺形(後述する
図19参照)等の四角形(矩形)や、五角形や、六角形(正六角形:後述する
図18(B)及び
図18(C)参照)等の、同一又は異なる多角形等を挙げることができる。即ち、異なる副画素配列パターンからなる所定の画素配列パターンに対してモアレ視認性が最適化された配線パターンであれば、規則性のある開口部22の配列によって構成される配線パターンでも、異なる形状の開口部22の配列によってランダム化された配線パターンでも良い。
【0029】
また、配線パターン24の開口部22のメッシュ形状は、対称であっても、非対称であってもよい。なお、メッシュ形状の非対称性は、xy2次元座標上において、x軸及びy軸の一方を定義した際に、x軸又はy軸の少なくとも一方に対して非対称であることによって定義できる。
例えば、非対称パターンの平行四辺形のメッシュ形状では、
図19に示すように、平行四辺形の各辺のピッチをp1、p2、y軸に対する平行四辺形の各辺の傾斜角度をθ1、θ2とする時、p1≠p2であるか、θ1≠θ2であるかの少なくとも一方を満たせばよいが、両者を満足するのがより好ましい。図示例の非対称パターンの平行四辺形のメッシュ形状では、p1≠p2であり、θ1=θ2である。
非対称パターンの他の多角形のメッシュ形状の場合にも、ピッチ及び傾斜角度の少なくとも一方が異なる場合によって定義すれば良い。
また、配線パターン24には、後述する
図16に示すように、断線(ブレーク)が入っていてもよい。このようなブレークのあるメッシュ状配線パターンの形状としては、本出願人の出願に係る特願2012−276175号明細書に記載の導電性フイルムのメッシュ状配線パターンの形状を適用することができる。
【0030】
接着層18の材料として、ウェットラミネート接着剤、ドライラミネート接着剤、又はホットメルト接着剤等が挙げられる。
保護層20は、透明基体12と同様に、樹脂、ガラス、シリコンを含む透光性が高い材料からなる。保護層20の屈折率n1は、透明基体12の屈折率n0に等しいか、これに近い値であるのが好ましい。この場合、保護層20に対する透明基体12の相対屈折率nr1は1に近い値となる。
【0031】
ここで、本明細書における屈折率は、波長589.3nm(ナトリウムのD線)の光における屈折率を意味し、例えば樹脂では、国際標準規格であるISO 14782:1999(JIS K 7105に対応)で定義される。また、保護層20に対する透明基体12の相対屈折率nr1は、nr1=(n1/n0)で定義される。ここで、相対屈折率nr1は、0.86以上1.15以下の範囲にあればよく、より好ましくは、0.91以上1.08以下である。
相対屈折率nr1の範囲をこの範囲に限定して、透明基体12と保護層20との部材間の光の透過率を制御することにより、モアレの視認性をより向上させ、改善することができる。
【0032】
上述した第1の実施形態の導電性フイルム10は、透明基体12の一方の面のみに導電部16を有するものであるが、本発明は、これに限定されず、透明基体12の両面に導電部を有するものであっても良い。
図3は、本発明の第2の実施形態に係る導電性フイルムの一例を示す模式的部分断面図である。なお、
図3に示す本第2の実施形態の導電性フイルムの平面図は、
図1に示す本第1の実施形態の導電性フイルムの平面図と同様であるのでここでは省略する。
【0033】
同図に示すように、本第2の実施形態の導電性フイルム11は、透明基体12の一方(
図3の上側)の面に形成された第1導電部16a及びダミー電極部26と、透明基体12の他方(
図3の下側)の面に形成された第2導電部16bと、第1導電部16a及び第1ダミー電極部26aの略全面に第1接着層18aを介して接着された第1保護層20aと、第2導電部16bの略全面に第2接着層18bを介して接着された第2保護層20bとを有する。
【0034】
導電性フイルム11においては、第1導電部16a及びダミー電極部26は、それぞれ複数の金属細線14からなり、共に、透明基体12の一方(
図3の上側)の面に導電層28aとして形成され、第2導電部16bは、複数の金属細線14からなり、透明基体12の他方(
図3の下側)の面に導電層28bとして形成されている。ここで、ダミー電極部26は、第1導電部16aと同様に、透明基体12の一方(
図3の上側)の面に形成されるが、図示例のように、他方(
図3の下側)の面に形成された第2導電部16bの複数の金属細線14に対応する位置に同様に配列された複数の金属細線14からなる。
【0035】
ダミー電極部26は、第1導電部16aと所定間隔だけ離間して配置されており、第1導電部16aと電気的に絶縁された状態下にある。
本実施形態の導電性フイルム11においては、透明基体12の一方(
図3の上側)の面にも、透明基体12の他方(
図3の下側)の面に形成されている第2導電部16bの複数の金属細線14に対応する複数の金属細線14からなるダミー電極部26を形成しているので、透明基体12の一方(
図3の上側)の面での金属細線による散乱を制御することができ、電極視認性を改善することができる。
【0036】
ここで、導電層28aの第1導電部16a及びダミー電極部26は、金属細線14と開口部22によるメッシュ状の配線パターン24とを有する。また、導電層28bの第2導電部16bは、第1導電部16aと同様に、金属細線14と開口部22によるメッシュ状の配線パターン24を有する。上述したように、透明基体12は絶縁性材料からなり、第2導電部16bは、第1導電部16a及びダミー電極部26と電気的に絶縁された状態下にある。
なお、第1、第2導電部16a、16b及びダミー電極部26は、それぞれ
図2に示す導電性フイルム10の導電部16と同様の材料で同様に形成することができる。
【0037】
第1保護層20aは、第1導電部16a及びダミー電極部26のそれぞれの金属細線14を被覆するように、第1接着層18aによって第1導電部16a及びダミー電極部26からなる導電層28aの略全面に接着されている。
また、第2保護層20bは、第2導電部16bの金属細線14を被覆するように、第2接着層18bによって第2導電部16bからなる導電層28bの略全面に接着されている。
ここで、第1接着層18a及び第2接着層18bは、それぞれ
図2に示す導電性フイルム10の接着層18と同様の材料で同様に形成することができるが、第1接着層18aの材質と第2接着層18bの材質とは、同一であってもよいし、異なってもよい。
また、第1保護層20a及び第2保護層20bは、それぞれ
図2に示す導電性フイルム10の保護層20と同様の材料で同様に形成することができるが、第1保護層20aの材質と第2保護層20bの材質とは、同一であってもよいし、異なってもよい。
【0038】
第1保護層20aの屈折率n2及び第2保護層20bの屈折率n3は、いずれも、上記第1の実施形態の導電フイルム10の保護層20と同様に、透明基体12の屈折率n0に等しいか、これに近い値である。この場合、第1保護層20aに対する透明基体12の相対屈折率nr2及び第2保護層20bに対する透明基体12の相対屈折率nr3は、共に1に近い値である。ここで、屈折率及び相対屈折率の定義は、上記第1の実施形態における定義通りである。したがって、第1保護層20aに対する透明基体12の相対屈折率nr2は、nr2=(n2/n0)で定義され、第1保護層20bに対する透明基体12の相対屈折率nr3は、nr2=(n3/n0)で定義される。
ここで、相対屈折率nr2及び相対屈折率nr3は、上述した相対屈折率nr1と同様に、0.86以上1.15以下の範囲にあればよく、より好ましくは、0.91以上1.08以下である。
なお、相対屈折率nr2、及び相対屈折率nr3の範囲をこの範囲に限定することにより、相対屈折率nr1の範囲の限定と同様に、モアレの視認性をより向上させることができる。
【0039】
上述した本発明の第1の実施形態の導電性フイルム10及び第2の実施形態の導電性フイルム11は、例えば、
図4(A)に模式的に示す表示ユニット30(表示部)のタッチパネルに適用されるが、少なくとも1視点において、表示ユニット30の画素配列パターン、詳しくは、各色の副画素配列パターン(
図4(B)参照)に対してモアレ視認性の点で最適化された配線パターンを持つものである。なお、本発明では、各色の異なる副画素配列パターンを含む画素配列パターン(BMパターン)に対してモアレ視認性の点で最適化された配線パターンとは、少なくとも1視点において、所定の画素配列パターンに対してモアレが人間の視覚に知覚されない1又は2以上の1群の配線パターンを言う。なお、本発明では、最適化された2以上の1群の配線パターンにおいても、最も知覚されない配線パターンから知覚されにくい配線パターンまで序列を付けることができ、最もモアレが知覚されない1つの配線パターンを決定することもできる。
なお、各色の異なる副画素配列パターンを含む所定の画素配列パターンに対する配線パターンのモアレ視認性の最適化については、後述する。
本発明の導電性フイルムは、基本的に以上のように構成される。
【0040】
図4(A)及び(B)は、それぞれ本発明の導電性フイルムが適用される表示ユニットの画素配列パターンの一例を模式的に表す概略説明図及びその一部の部分拡大図である。
図4(A)に示すように、表示ユニット30には、複数の画素32がマトリクス状に配列されて所定の画素配列パターンが構成されている。
図4(A)に示すように、1つの画素32は、3つの副画素(赤色副画素32r、緑色副画素32g及び青色副画素32b)が水平方向に配列されて構成されている。
本発明においては、表示ユニットの画素配列パターンが、1画素内の複数、図示例では3つの副画素の内の少なくとも2つの副画素が異なる形状を有しているか、1画素内の複数(3つ)の副画素の内の少なくとも2つについて各副画素の配列によって形成される副画素配列パターンの周期が異なるか、1画素内の複数(3つ)の副画素が1つの方向に一列に並んでいないか、3つの条件のいずれかを満たす必要がある。なお、本発明においては、副画素配列パターンの周期、すなわち、副画素(カラーフィルタ)の周期には、一画素内の副画素の周期も含まれる。
【0041】
図4(B)示す例においては、副画素32rは、図中y(垂直)方向に縦長とされた菱形形状とされて、正方形の画素32の図中左側に配置されており、副画素32gは、円形状とされて、画素32の図中右下側に配置されており、副画素32bは、矩形状(正方形状)とされて、画素32の図中右上側に配置されている。
図4(A)及び(B)に示す表示時ユニット30は、その画素配列パターン38が1画素内の3つの副画素32r、32g及び32bの形が異なり、強度が異なる場合に相当し、かつ1画素内の複数(3つ)の副画素が1つの方向に一列をなさない場合に相当する。
図示例では、画素32の水平方向の配列ピッチ(水平画素ピッチPh)と画素32の垂直方向の配列ピッチ(垂直画素ピッチPv)は略同じとされており、画素ピッチPdで表すことができる。即ち、1つの画素32の3つの副画素32r、32g及び32bからなる領域と、これらの副画素32r、32g及び32bを囲むブラックマトリクス(BM)34(パターン材)にて構成される画素域領域36は正方形となっている。なお、画素域領域36は、1つの画素32に対応するものであるので、以下では、画素域領域36を画素ともいう。
なお、画素ピッチPd(水平及び垂直画素ピッチPh、Pv)は、表示ユニット30の解像度に応じたピッチであれば、如何なるピッチでも良く、例えば、84μm〜264μmの範囲内のピッチを挙げることができる。
【0042】
なお、図示例では、1つの画素内の副画素32r、32g、32bの形状は、それぞれ菱形、円形、正方形であるが、本発明はこれに限定されず、
図5(A)に示すような同じ形の3つの副画素が図中水平方向に一列に並んだ1つの画素32が図中水平方向及び垂直方向に繰り返され、副画素(カラーフィルタ)の周期及び強度がRGBの3つの副画素で全て同じなる画素配列パターン38aを持つものでなければ、即ち、上述した3つの条件の少なくとも1つを満足するものであれば、どのような形状であっても良い。
例えば、
図5(B)〜(D)に示すピンタイル構造と呼ばれる開口形状の副画素(カラーフィルタ)32r、32g、32bであっても良いし、後述する
図8(A)に示す開口形状の副画素(カラーフィルタ)32r、32g、32bであっても良く、これらの副画素32r、32g、32bからなる副画素配列パターンを持つものであっても良い。
【0043】
図5(B)に示すように、画素32の3つの副画素32r、32g、32bの形が異なって(形状は長方形であるが、大きさが異なって)いても良い。この場合は、強度が異なる場合に相当する。なお、この場合には、副画素の周期は同一であると言える。
即ち、
図5(B)に示す例では、このような形が異なる3つの副画素32r、32g、32bを1画素として画素配列パターン38bが形成され、3つの副画素32r、32g、32bのそれぞれの副画素配列パターンの周期は、いずれも画素配列パターン38bの周期と同じになる。
なお、本発明においては、副画素の形が異なるとは、副画素の形状が異なる場合のみならず、副画素の大きさが異なる場合も含まれるものと定義される。
【0044】
また、
図5(C)に示すように、3つの副画素32r、32g、32bの形が同じであっても、副画素32gと、副画素32r、32bとの繰り返し周期(副画素配列パターンの周期)は異なっていても良い。この例では、副画素32gの周期は、副画素32r、32bの周期の半分である。なお、この場合には、副画素の強度は同一であると言える。
即ち、
図5(C)に示す例では、2つの副画素32gと、副画素32r、32bとの4つの副画素を1画素32として画素配列パターン38cが形成され、副画素32r、32bのそれぞれの副画素配列パターンの周期は、いずれも画素配列パターン38bの周期と同じになるが、副画素32gの副画素配列パターンの周期は、画素配列パターン38bの周期の半分となる。
【0045】
さらに、
図5(D)に示すように、副画素32gと、副画素32r、32bとは、繰り返し周期(副画素パターンの周期)も、形(形状も大きさも)も異なっていても良い。この場合は、副画素の周期も、強度も異なる場合に相当する。
即ち、
図5(D)に示す例では、
図5(C)に示す例と同様に、2つの副画素32gと、副画素32r、32bとの4つの副画素を1画素32として画素配列パターン38dが形成され、副画素32r、32bのそれぞれの副画素配列パターンの周期は、いずれも画素配列パターン38bの周期と同じになるが、副画素32gの副画素配列パターンの周期は、画素配列パターン38bの周期の半分となる。
【0046】
以上の説明から
図5(A)〜(D)に示す画素32の副画素32r、32g、32bの副画素配列パターンは、以下のように定義することができる。
なお、副画素32r、32g、32bの開口形状は、様々な形状が存在するので、本発明では、
図4(B)の副画素32rにおいて示すように、副画素の開口の最外郭を長方形で囲み、開口を内包する長方形の重心を開口の重心と定義する。
【0047】
図4(B)に示すように、3つの副画素32g、32r、32bの長方形状の開口の重心位置をそれぞれxy座標上で(Ggx、Ggy)、(Grx、Gry)、(Gbx、Gby)で表し、画素ピッチをPdとすると、
図5(A)に示す例では、副画素32g、32r、32bの各画素について、x方向に隣接するn−1番目、n番目の画素、及びy方向に隣接するm−1番目、m番目の画素において、下記式(4)を満足する。
Ggx(n)=Ggx(n−1)+Pd (x方向)
Ggy(m)=Ggy(m−1)+Pd (y方向)
Grx(n)=Ggx(n)+Pd/3=Grx(n−1)+Pd (x方向)
Gry(m)=Gry(m−1)+Pd (y方向)
Gbx(n)=Grx(n)+Pd/3=Ggx(n)+2Pd/3
=Gbx(n−1)+Pd (x方向)
Gby(m)=Gry(m−1)+Pd (y方向) ……(4)
【0048】
なお、本発明においては、誤差として、画素ピッチPdの10%を許容し、10%外れてもよいものとする。
例えば、副画素32gに対して、副画素32r及び32bの位置は、下記式(5)で表すことができる。
Grx(n)=Ggx(n)+Pd/3(1−1/10)〜Ggx(n)
+Pd/3(1+1/10)
=Ggx(n)+3Pd/10〜Ggx(n)+11Pd/30
Gry(m)=Gry(m−1)+Pd(1−1/10)〜Gry(m−1)
+Pd(1+1/10)
=Gry(m−1)+9Pd/10〜Gry(m−1)+11Pd/10
Gbx(n)=Ggx(n)+2Pd/3(1−1/10)〜Ggx(n)
+2Pd/3(1+1/10)
=Ggx(n)+3Pd/5〜Ggx(n)+11Pd/15
Gby(m)=Gby(m−1)+Pd(1−1/10)〜Gby(m−1)
+Pd(1+1/10)
=Gby(m−1)+9Pd/10〜Gby(m−1)+11Pd/10
……(5)
【0049】
以上の式が、
図5(A)に示す従来の場合であるので、本発明の副画素配列パターンは、副画素32g、副画素32r及び32bがこの順でx方向に並んでいる時、上記式(5)を満足しない範囲ということができ、下記式(6)で示される不等式を満足する範囲ということができる。
Ggx(n)+3Pd/10<Grx(n)<Ggx(n)+11Pd/30
Gry(m−1)+9Pd/10<Gry(m)<Gry(m−1)+11Pd/10
Ggx(n)+3Pd/5<Gbx(n)<Ggx(n)+11Pd/15
Gby(m−1)+9Pd/10<Gby(m)<Gby(m−1)+11Pd/10
……(6)
【0050】
以上から、本発明の副画素配列パターンに関して、RGB等の複数色内の互いに異なる少なくとも2色について、副画素の形が異なるもの、及び各色の副画素の配列によって形成される副画素配列パターンの周期が異なるものの少なくとも一方であることは、RGB等の複数色内のいずれかの2色について、一方の方向、例えばx方向において、一方の色の副画素の重心の位置と他方の色の副画素の重心の位置との差が、画素配列パターンの画素ピッチをPdとする時、3Pd/10より小さいか、11Pd/30より大きく3Pd/5より小さいか、11Pd/15より大きいかのいずれか1つを満足するか、もしくは、複数色内のいずれかの1色について、一方の方向に垂直な方向、例えばy方向において、当該1色の副画素の重心の位置と隣接する画素の当該1色の副画素の重心の位置との差が、9Pd/10より小さいか、11Pd/10より大きくかのいずれか1つを満足するのが好ましい。
【0051】
図4(B)から明らかなように、複数の画素32の各々の副画素32r、32g及び32bによって構成される画素配列パターン38は、これらの副画素32r、32g及び32bをそれぞれ囲むBM34のBMパターンによって規定することもできる。表示ユニット30と導電性フイルム10又は11とを重畳した時に発生するモアレは、表示ユニット30のBM34のBMパターンと導電性フイルム10又は11の配線パターン24との干渉によって発生するので、厳密には、BMパターンは、画素配列パターン38の反転パターンであるが、ここでは、同様のパターンを表すものとして扱う。
【0052】
上述したRGBの副画素配列パターンを定義するBM34によって構成されるBMパターン38を有する表示ユニット30の表示パネル上に、例えば、導電性フイルム10又は11を配置する場合、導電性フイルム11の配線パターン24は、RGBの副画素配列パターンを含むBM(画素配列)パターン38に対してモアレ視認性の点で最適化されているので、画素32の配列周期と、導電性フイルム10又は11の金属細線14の配線配列との間における空間周波数の干渉が殆どなく、モアレの発生が抑制されることになる。
なお、
図4に示す表示ユニット30は、液晶パネル、プラズマパネル、有機ELパネル、無機ELパネル等の表示パネルで構成されてもよい。
【0053】
次に、本発明の導電性フイルムを組み込んだ表示装置について、
図6を参照しながら説明する。
図6では、表示装置40として、本発明の第2の実施の形態に係る導電性フイルム11を組み込んだ投影型静電容量方式のタッチパネルを代表例に挙げて説明するが、本発明はこれに限定されないことは言うまでもない。
図6に示すように、表示装置40は、カラー画像及び/又はモノクロ画像を表示可能な表示ユニット30(
図4(A)参照)と、入力面42(矢印Z1方向側)からの接触位置を検出するタッチパネル44と、表示ユニット30及びタッチパネル44を収容する筐体46とを有する。筐体46の一面(矢印Z1方向側)に設けられた大きな開口部を介して、ユーザは、タッチパネル44にアクセス可能である。
【0054】
タッチパネル44は、上記した導電性フイルム11(
図1及び
図3参照)の他、導電性フイルム11の一面(矢印Z1方向側)に積層されたカバー部材48と、ケーブル50を介して導電性フイルム11に電気的に接続されたフレキシブル基板52と、フレキシブル基板52上に配置された検出制御部54とを備える。
表示ユニット30の一面(矢印Z1方向側)には、接着層56を介して、導電性フイルム11が接着されている。導電性フイルム11は、他方の主面側(第2導電部16b側)を表示ユニット30に対向させて、表示画面上に配置されている。
【0055】
カバー部材48は、導電性フイルム11の一面を被覆することで、入力面42としての機能を発揮する。また、接触体58(例えば、指やスタイラスペン)による直接的な接触を防止することで、擦り傷の発生や、塵埃の付着等を抑止可能であり、導電性フイルム11の導電性を安定させることができる。
カバー部材48の材質は、例えば、ガラス、樹脂フイルムであってもよい。カバー部材48の一面(矢印Z2方向側)を酸化珪素等でコートした状態で、導電性フイルム11の一面(矢印Z1方向側)に密着させてもよい。また、擦れ等による損傷を防止するため、導電性フイルム11及びカバー部材48を貼り合わせて構成してもよい。
【0056】
フレキシブル基板52は、可撓性を備える電子基板である。本図示例では、筐体46の側面内壁に固定されているが、配設位置は種々変更してもよい。検出制御部54は、導体である接触体58を入力面42に接触する(又は近づける)際、接触体58と導電性フイルム11との間での静電容量の変化を捉えて、その接触位置(又は近接位置)を検出する電子回路を構成する。
本発明の導電性フイルムが適用される表示装置は、基本的に以上のように構成される。
【0057】
次に、本発明において、表示装置の所定の画素配列(BM)パターンに対する導電性フイルムの配線パターンのモアレ視認性の及び最適化の手順について説明する。即ち、本発明の導電性フイルムにおいて、少なくとも1視点において、表示装置の所定の画素配列(BM)パターンに対してモアレが人間の視覚に知覚されないように最適化された配線パターンを評価して決定する手順について説明する。
図7は、本発明の導電性フイルムの評価方法の一例を示すフローチャートである。
【0058】
本発明の導電性フイルムの配線パターンの評価方法は、表示装置の表示ユニットのBM(画素配列)パターンの複数色(例えばRGB)の各色の副画素配列パターンと導電性フイルムの配線パターンとの高速フーリエ変換(FFT)を用いた周波数解析により得られるモアレの周波数・強度から、表示ユニットの表示解像度に応じて規定されるモアレの最高周波数以下の周波数及び所定の強度を持つ各色についてのモアレ(周波数・強度)を選び出し、選び出された各色についてのそれぞれのモアレの周波数におけるモアレの強度に人間の視覚応答特性を観察距離に応じて作用させてそれぞれ各色のモアレの評価値を得、得られた複数のモアレの評価値からモアレの評価指標を算出し、算出されたモアレの評価指標が予め設定された条件を満たす配線パターンを、モアレが視認されないように最適化された配線パターンとして評価し、決定するものである。この本発明法では、モアレの周波数/強度については一般的にFFTが利用されるが、利用方法によっては、対象物の周波数/強度が大きく変化するため、以下の手順を規定している。
【0059】
本発明では、まずは、1つの視点として、表示装置の表示ユニットの表示画面を正面から観察する場合を考慮すればよいが、本発明はこれに限定されず、少なくとも1つの視点から観察した場合のモアレの視認性を向上させることができるものであれば、いずれの視点から観察したものであっても良い。
もちろん、本発明においては、表示画面を正面から観察する場合と、表示画面を斜めから観察する場合とを顧慮するのが好ましい。
以下では、
図7に示すように、正面観察時と斜め観察時とを考慮するものとし、撮像は、RGB3色を副画素とするBM(画素配列)パターンを各色毎に行うものとして説明する。
【0060】
本発明法においては、まず、最初に、手順1として、撮像画像からRGB明度画素情報(規格化明度画像データ)を取得する。
即ち、
図7に示すように、まず、ステップS10において、RGBの各色毎に、表示装置の表示ユニットの表示画面(各色の副画素配列パターンの画像)を撮像する。
このステップS10では、まず、表示装置40の表示ユニット30をRGBの各色毎に点灯させる。この際、発光側(表示装置40)の設定変更で行える範囲で明るさを最大にするのが好ましい。
【0061】
次いで、RGBの各色それぞれの副画素点灯状態の下で副画素の画像の撮像を行う。即ち、
図8(A)に示すような表示ユニット30の画素配列パターン38の副画素(RGBカラーフィルタ)32r、32g、32bのそれぞれの透過光をマイクロスコープを使って撮影する。撮像においては、マイクロスコープのホワイトバランスをマクベスチャートの白に合わせるのが好ましい。
図8(A)に示す画素配列パターン38において、G副画素32gは、細長い長方形であり、R副画素32rは、G副画素32gよりは幅広で長さの短い長方形であり、B副画素32bは、R副画素32rと同じ幅で、G副画素32gと同じ長さを持ち、図中右下に小さい正方形の切り欠きを持つ矩形である。G副画素32gは、R副画素32rとB副画素32bとの間に必ず介在するように配置され、R副画素32r及びB副画素32bの繰り返し周期の1/2の繰り返し周期を持つ。この画素配列パターン38においては、1画素32は、点線で囲まれた正方形の領域である。
撮像に用いるマイクロスコープ、レンズ、カメラは、特に制限的ではないが、例えば、マイクロスコープは、STM6(OLYMPUS社製)、レンズは、UMPlanFIx10(OLYMPUS社製)、カメラは、QIC−F−CLR−12−C(Linkam Scientific Instruments社製)を用いることができる。この際、撮像条件は、例えば、ゲイン1.0、ホワイトバランス(G、R、B)は(1.00、2.17、1.12)とすることができる。なお、撮像画像は、シェーディング補正が行われているのが望ましい。
【0062】
続いて、ステップS12において、撮像された各色の副画素配列パターンの画像の撮像画像データから、各色(RGB)の明度値に変換し、G=1.0を基準にしてRGBの明度データ(合計3種)を作成する。
撮像画像から明度値への変換は、赤の画像データをR、緑の画像データをG、青の画像データをBとし、明度値をYとする時、下記の変換式(1)を用いてY(明度値)を算出し、R、G、Bカラーフィルタ画像(明度比画像)を作成する。
Y=0.300R+0.590G+0.110B ……(1)
こうして得られたG副画素(カラーフィルタ)画像(明度比画像)の最大値を1.0(=0.25*255)、即ち基準として、R、G、B副画素の明度画像を規格化することで、RGB副画素のそれぞれの規格化明度画像(画像データ)を作成する。
こうして得られたG,R,B規格化明度画像38g、38r、38bをそれぞれ
図8(B)、(C)及び(D)に示す。
【0063】
表示ユニット30のRGB副画素配列パターンを撮像してRGB明度画素情報(規格化明度画像データ)を取得する方法は、これに限定されず、スペクトロメータを用いて、各副画素画像の分光スペクトルの計測し、計測された分光スペクトルデータを用いて明度変換しても良い。
例えば、以下のように、スペクトロメータを利用して、RGB副画素(BM)インプットデータを作成しても良い。
1.表示ユニット30のRGB副画素をそれぞれ単色で点灯させ、スペクトロメータで計測すると、RGBについて、例えば、
図9に示すような分光スペクトルデータを得ることができる。
2.続いて、RGB単色点灯時のBMマイクロスコープにて撮影し、それぞれ得られた撮像画像の画像データからマスク画像を作成する。マスク画像の作成方法は、Gチャネルの場合には、撮像画像データのGチャネルに対し、点灯BMの画素サイズでの平均値を算出し、その値を閾値として、マスクデータを求め、マスク画像を作成する。
【0064】
3.続いて、上記2.で得られたマスク画像の(0、1)マスクデータの1の箇所を、上記1.で得られたスペクトルデータに、
図10に示すXYZ等色関数をかけたものの積分値で置き換える。例えば、G副画素のインプットデータを作成する際には、
図9に示すGの分光スペクトルデータGと
図10に示すXYZ等色関数の明度Yの分光スペクトルデータYとの積(G×Y)を求め、B副画素のインプットデータを作成する際には、
図9に示すBの分光スペクトルデータBと
図10に示すXYZ等色関数の明度Yの分光スペクトルデータYとの積(B×Y)を求めればよい。同様にして、R副画素のインプットデータも作成すればよい。この際、算出された明度Yは、スペクトロメータのセンサ内に含まれる画素数と副画素の開口面積に比例するので、画素数と開口面積で規格化して与える。これは、マクロな明度は、副画素を無限小の光源の集合と考えた場合、副画素の開口面積×センサに含まれる画素数と考えることができるからである。
4.続いて、得られたRGB副画素のインプットデータを、G副画素のインプットデータの最大値が1.0となるように、RとBのインプットデータを規格化する。
こうして、RGB明度画素情報(規格化明度画像データ)を取得することができる。
【0065】
次に、手順2として、手順1(ステップ10及び12)で作成した副画素の規格化明度画像データに対して、2次元高速フーリエ変換(2DFFT(基底2))を行い、ピーク周波数・強度を算出する。
即ち、
図7に示すように、ステップS14において、RGBの各色毎にBMパターン38の各色の副画素配列パターン(BMパターン)の画像データに対して2DFFTを行い、フーリエスペクトルを算出する。
このステップS14では、まず、手順1(ステップ10及び12)で得られた各色の規格化明度画像を、各色毎にバイリニア補間で、高解像度である解像度12700dpiとし、規格化明度画像の画像サイズを109pix(画素)×109pix(画素)にバイキュービックで変換する。なお、撮像光学系の解像度が既知であれば、それに応じてこれらは算出可能である。
【0066】
続いて、RGB各色毎に、画像サイズが109pix×109pix、解像度12700dpiの規格化明度画像を、画像サイズ20000pix×20000pixに近くなる整数倍(183回)繰り返しコピーし、モアレ評価用明度画像データを作成する。
こうして得られたモアレ評価用明度画像データに対して2DFFTを行い、ピーク周波数、及びそのピーク強度を得る。ここでは、ピーク強度は、フーリエスペクトルの絶対値として取り扱う。
これをRGB各色について繰り返し行う。この際、モアレに寄与しない強度が小さいものも全て用いると、計算が煩雑になるばかりか、精度向上の効果も飽和してしまうので、強度で閾値を設けるのが好ましい。例えば、常用対数で−2.2より大きい(log
10(強度)>−2.2)ものだけを採用するのが好ましい。
こうして得られたG色の(副画素配列パターン)の明度画像データの2次元フーリエスペクトルの強度特性の一例を
図11(A)に示す。
【0067】
次に、手順3として、メッシュ状配線パターンの透過率画像データに対して、2DFFTを行い、ピーク周波数・強度を算出する。
即ち、
図7に示すように、ステップS16において、導電性フイルム11のメッシュ状配線パターン(メッシュパターン)24の透過率画像データに対して2DFFTを行い、フーリエスペクトルを算出する。
このステップS16では、まず、メッシュパターン24の画像(透過率画像データ)の作成を行う。即ち、導電性フイルム11のメッシュ状配線パターン24(金属細線14)(
図1参照)の透過率画像データを作成して取得する。なお、予め、メッシュパターン24の透過率画像データが準備されている、若しくは蓄えられている場合には、準備された、若しくは蓄えられた中から取得するようにしても良い。
【0068】
メッシュパターン24は、例えば、
図1に示すように、配線となる金属細線14が水平線に対して所定角度、例えば、45°[deg]未満の角度傾いた菱形パターンとすることができるが、上述したように、配線パターンの開口の形状は、どのようなものであっても良く、例えば、後述する
図18(B)〜
図18(D)に示すような正六角形や正方格子であっても良く、正方格子も、45°[deg]傾いた正方格子であっても良いのはもちろんである。
また、メッシュパターン24の透過率画像データを作成する際に、その解像度を、例えば、画素配列(BM)パターン38の解像度と同じ12700dpiとし、透過率画像データのサイズを規定し、例えば、BMパターン38と同様に、画素サイズを20000pix×20000pixに近いメッシュパターン24のサイズ(例えば、109pix×109pix)の整数倍とする。
【0069】
続いて、こうして作成されたメッシュパターン24の各透過率画像データに対して2DFFT(基底2)処理を行い、メッシュパターン24の各透過率画像データの2次元フーリエスペクトルの複数のスペクトルピークのピーク周波数及びピーク強度を算出する。ここでは、ピーク強度は、絶対値として取り扱う。計算簡略化の為、例えば強度の閾値は、常用対数で−2.0より大きいものだけを取り扱うのが好ましい。
こうして得られたメッシュパターン24の各透過率画像データの2次元フーリエスペクトルの強度特性の一例を
図11(B)に示す。
【0070】
上述したように、
図11(A)及び(B)は、それぞれBMパターン38のG色の(副画素配列パターン)の明度画像データ及びメッシュパターン24の各透過率画像データの2次元フーリエスペクトルの強度特性を示す図である。
なお、
図11(A)及び(B)において、白い部分は強度が高く、スペクトルピークを示しているので、
図11(A)及び(B)に示す結果から、BMパターン38のRGB3色の副画素配列パターン及びメッシュパターン24のそれぞれについて、各スペクトルピークのピーク周波数及びピーク強度を算出する。即ち、
図11(A)及び(B)にそれぞれ示すBMパターン38の各副画素配列パターン及びメッシュパターン24の2次元フーリエスペクトルの強度特性におけるスペクトルピークの周波数座標上の位置、即ちピーク位置がピーク周波数を表し、そのピーク位置における2次元フーリエスペクトルの強度がピーク強度となる。
【0071】
ここでは、BMパターン38の各副画素配列パターン及びメッシュパターン24の各スペクトルピークのピークの周波数及び強度は、以下のようにして同様に算出されて取得される。以下では、纏めて説明する。
まず、ピーク周波数の取得において、ピークの算出には、BMパターン38の各副画素配列パターン及びメッシュパターン24の基本周波数から周波数ピークを求める。これは、2DFFT処理を行う明度画像データ及び透過率画像データは離散値であるため、ピーク周波数が、画像サイズの逆数に依存してしまうからである。周波数ピーク位置は、
図12に示すように、独立した2次元基本周波数ベクトル成分aバー及びbバーを元に組み合わせて表すことができる。したがって、当然ながら、得られるピーク位置は格子状となる。
即ち、
図13(A)に示すように、BMパターン38の各副画素配列パターン及びメッシュパターン24のスペクトルピークの周波数座標fxfy上の位置、即ちピーク位置は、パターンピッチの逆数(1/p(pitch)を格子間隔とする周波数座標fxfy上の格子状点の位置として与えられる。
なお、
図12は、BMパターン38のG色の副画素配列パターンの場合の周波数ピーク位置を示すグラフであるが、メッシュパターン24も、同様にして求めることができる。
【0072】
一方、ピーク強度の取得においては、上記のピーク周波数の取得においてピーク位置が求まるため、ピーク位置が持つ2次元フーリエスペクトルの強度(絶対値)を取得する。その際、デジタルデータをFFT処理しているので、ピーク位置が複数の画素(ピクセル)にまたがるケースがある。例えば、2次元フーリエスペクトルの強度(Sp)特性が、
図14(A)に示す曲線(アナログ値)で表される時、デジタル処理された同じ2次元フーリエスペクトルの強度特性は、
図14(B)に示す棒グラフ(デジタル値)で表されるが、
図14(A)に示される2次元フーリエスペクトルの強度のピークPは、対応する
図14(B)では、2つの画素にまたがることになる。
したがって、ピーク位置に存在する強度を取得する際には、
図13(B)に示すように、ピーク位置周辺の複数の画素を含む領域内の複数の画素のスペクトル強度が上位から複数点、例えば、7×7画素の領域内の画素のスペクトル強度が上位から5点の強度(絶対値)の合計値をピーク強度とするのが好ましい。
ここで、得られたピーク強度は、画像面積(画像サイズ)で規格化するのが好ましい。例えば、上述した画像サイズで規格化しておくのが好ましい(パーセバルの定理)。
【0073】
次に、手順4として、手順2(ステップ14)で得られたRGB各色の副画素配列パターンのピーク周波数及びピーク強度と手順3(ステップ16)で得られたメッシュパターン24のピーク周波数及びピーク強度からモアレの周波数及び強度の算出を行う。
即ち、
図7に示すように、ステップS18において、ステップS14及び16でそれぞれ算出したBMパターン38のRGB各色の副画素配列パターン及びメッシュパターン24の両2次元フーリエスペクトルのピーク周波数及びピーク強度から各色についてそれぞれモアレの周波数及び強度を算出する。なお、ここでも、ピーク強度及びモアレの強度は、絶対値として取り扱う。
実空間においては、モアレは、本来、メッシュパターン24とBMパターン38の各色の副画素配列パターンとの画像データ(透過率画像データと明度画像データと)の掛け算によって起こるため、周波数空間においては、両者の畳み込み積分(コンボリューション)を行うことになる。しかしながら、ステップS14及び16において、BMパターン38の各色の副画素配列パターン及びメッシュパターン24の両方の2次元フーリエスペクトルのピーク周波数及びピーク強度が算出されているので、RGBの中の1色の副画素配列パターンとメッシュパターン24との両者のそれぞれの周波数ピーク同士の差分(差の絶対値)を求め、求められた差分をモアレの周波数とし、両者の組み合わせた2組のベクトル強度の積を求め、求められた積をモアレの強度(絶対値)とすることができる。
これらのモアレの周波数及びモアレの強度は、RGBの各色毎に求められる。
【0074】
ここで、
図11(A)及び(B)にそれぞれ示すBMパターン38の各色の副画素配列パターンとメッシュパターン24とのそれぞれ両者の2次元フーリエスペクトルの強度特性のそれぞれの周波数ピーク同士の差分は、各色について、両者の2次元フーリエスペクトルの強度特性を重ね合わせて得られる強度特性において、両者のそれぞれの周波数ピークの周波数座標上のピーク位置間の相対距離に相当する。
なお、BMパターン38の各色の副画素配列パターンとメッシュパターン24との両2次元フーリエスペクトルのスペクトルピークは、各色毎に、それぞれ複数存在するので、その相対距離の値である周波数ピーク同士の差分、即ちモアレの周波数も複数求められることになる。したがって、両2次元フーリエスペクトルのスペクトルピークが多数存在すると、求めるモアレの周波数も多数となり、求めるモアレの強度も多数となる。
【0075】
しかしながら、求められたモアレの周波数におけるモアレの強度が弱い場合は、モアレが視認されないため、モアレの強度が弱いと見做せる所定値またはそれより大きいモアレ、例えば、強度が−4.5以上のモアレのみを扱うのが好ましい。
また、ここで、表示装置においては、ディスプレイ解像度が決まっているため、ディスプレイが表示できる最高の周波数はその解像度に対して決まる。このため、この最高の周波数より高い周波数を持つモアレは、このディスプレイで表示されないことになるので、本発明における評価の対象とする必要はない。従って、ディスプレイ解像度に合わせてモアレの最高周波数を規定することができる。ここで、本発明において考慮すべきモアレの最高周波数は、ディスプレイの画素配列パターンの画素ピッチをPd(μm)とする時、1000/Pd(cycle/mm)とすることができる。
以上から、本発明では、両2次元フーリエスペクトルのスペクトルピークから求められたモアレの周波数及び強度の中で、本発明における評価の対象とするモアレは、モアレの周波数が、ディスプレイ解像度に応じて規定されるモアレの最高周波数1000/Pd以下の周波数を持つモアレであって、モアレの強度が−4.5以上のモアレである。本発明において、モアレの強度が−4.5以上のモアレを対象とする理由は、強度が−4.5未満のモアレも多数発生し、合算値をとると本来見えないモアレまで点数付けすることになるからである。このため、本発明においては、経験的な視認限界より−4.5以上という閾値を設けている。
【0076】
なお、両2次元フーリエスペクトルのスペクトルピークが多数存在すると、求めるモアレの周波数も多数となり、計算処理に時間がかかることになる。このような場合は、予め両第2次元フーリエスペクトルのスペクトルピークにおいて、それぞれピーク強度が弱いものを除いて、ある程度強いもののみを選定しておいてもよい。その場合は、選定されたピーク同士の差分のみを求めることになるので、計算時間を短縮することができる。
例えば、対象として、モアレスペクトルに観察距離400mmとして視覚伝達関数(VTF;Visual Transfer Function)(低周波は1.0となる)を畳み込んだ後、−3.8以上のもののみを取り扱うことができる。
ここで、人の目に見えるモアレのみを抽出するために、システム内での散乱の効果を踏まえて、観察距離400mm相当のVTFを代用している。
こうして残ったスペクトルピークをモアレ評価用スペクトルピークとすることができる。この際、スペクトル強度は、常用対数で−3.8以上のピークのみを用いることが好ましい。
【0077】
こうして求められたモアレ周波数及びモアレの強度を、
図15に示す。
図15は、
図8(A)に示す画素配列パターンと
図1に示す配線パターンとの干渉によって発生するモアレの周波数及びモアレの強度を模式的に表わす概略説明図であり、
図11(A)及び(B)に示す2次元フーリエスペクトルの強度特性の畳み込み積分の結果ということもできる。
図15においては、モアレの周波数は、縦横軸の位置によって表され、モアレの強度は、グレー(無彩色)濃淡で表され、色が濃いほど小さく、色が薄い、即ち白いほど大きくなることを示している。
【0078】
次に、手順5として、手順4(ステップS18)で算出したRGB各色の副画素毎のモアレの周波数及び強度を用いて、モアレの数値化を行い、モアレの評価指標を求める。
即ち、
図7に示すように、ステップS20において、ステップS18で残ったモアレ評価用スペクトルピークに対して視覚伝達関数(VTF;Visual Transfer Function)を畳み込み、定量化する。
具体的には、ステップS20において、ステップS18で得られたRGB各色の副画素毎のモアレの周波数及び強度(絶対値)に、それぞれ下記式(2)で示す人間の視覚応答特性の一例を表す観察距離750mm相当の人間の視覚応答特性(VTF)を作用させて、即ち畳み込み積分を行い、各色毎の複数のモアレの評価値(副評価値)を算出する。ここで、モアレの点数付けのために、観察距離750mm相当のVTFを代用している。
こうして、RGBの各色毎に、強度の常用対数をとったモアレの副評価値を求め、RGBのモアレの副評価値の中の最悪値をモアレの評価指標(モアレ値)とする。モアレの評価指標の値も、常用対数で表され、モアレの評価指標の常用対数での値(常用対数値)として求められる。なお、最悪値の算出に伴い、評価画像もRGB表示で合せて評価するのが好ましい。
【0079】
【数2】
ここで、uは、立体角で定義される空間周波数(cycle/deg)であり、上記式(2)で表され、frは、長さで定義される空間周波数(cycle/mm)であり、Lは、観察距離(mm)である。
上記式(2)で示される視覚伝達関数は、Dooley−Shaw関数と呼ばれるもので、参考文献(R.P.Dooley, R.Shaw: Noise Perception in Electrophotography, J.Appl.Photogr.Eng., 5, 4 (1979), pp.190-196.)の記載を参照することにより求めることができる。
【0080】
以上のモアレの評価指標は、ディスプレイ40の表示ユニット30の表示画面に積層された導電性フイルム11を表示画面の正面から観察する場合のものであるが、本発明はこれに限定されず、正面に対し、斜めから観察する場合のモアレの評価指標を求めても良い。
なお、斜めから観察する場合のモアレの評価指標を求める場合には、斜め観察時のディスプレイ40のRGBの強度を、正面観察時の明度の90%で計算し、ステップS14に戻り、再度、各色のフーリエスペクトルのピーク周波数・強度を算出する。この後、ステップS16〜S20を同様に繰り返し、斜め観察時のモアレの評価指標を算出する。
こうして、ステップS22において、正面観察時及び斜め観察時のモアレの評価指標が算出されると、ステップS24において、正面観察時及び斜め観察時のモアレの評価指標の内の大きい値(最悪値)がモアレの評価に供されるモアレの評価指標として算出される。
なお、正面観察時及び斜め観察時の一方しか行わない場合には、正面観察時又は斜め観察時のモアレの評価指標がそのままモアレの評価に供されるモアレの評価指標となる。
【0081】
次に、手順6として、手順5(ステップS24)で算出されたモアレの評価指標(最悪値)に基づいて配線パターンの評価を行う。
即ち、
図7に示すように、ステップS26において、ステップS24で求めた当該メッシュパターン24のモアレの評価指標の常用対数値が、所定の評価閾値以下であれば、当該メッシュパターン24は、本発明の導電性フイルム11の最適化されたメッシュパターン24であると評価し、最適化されたメッシュパターン24として設定し、本発明の導電性フイルム11であるとして評価する。
なお、モアレの評価指標の値を、常用対数で、所定の評価閾値以下に限定する理由は、所定の評価閾値より大きいと、重畳された配線パターンとBMパターン各副画素配列パターンのとの干渉によって生じたモアレがあると視認され、視認されたモアレが目視するユーザにとって気になるものとなるからである。モアレの評価指標の値が、所定の評価閾値以下では、僅かに気になることはあってもあまり気にならないからである。
【0082】
ここで、所定値は、導電性フイルム及び表示装置の性状に応じて、具体的には、メッシュパターン24の金属細線14の線幅や、開口部22の形状やそのサイズ(ピッチ等)や角度や、2つの導電層の配線パターンの位相角(回転角、ズレ角)等、及びBMパターン38の形状やそのサイズ(ピッチ等)や配置角度等に応じて適宜設定されるものであるが、例えば、常用対数で−2.70(真数で10
−2.70)以下であるのが好ましい。即ち、モアレの評価指標は、その値が、例えば、常用対数で−2.70(真数で10
−2.70)以下であるのが好ましく、より好ましくは、常用対数で−2.80以下であり、さらに好ましくは、常用対数で−3.00以下であるのが良い。
【0083】
なお、詳しくは後述するが、多数のメッシュパターン24について、シミュレーションサンプル及び実サンプルでモアレの評価指標を求め、3名の官能評価者がメッシュパターン24とBMパターンのRGB3色の各色の副画素配列パターンとの干渉によるモアレを目視による官能評価を行ったところ、モアレの評価指標が、常用対数で−2.70以下であれば、重畳された配線パターンとBMパターンのRGB3色の各色の副画素配列パターンとの干渉によって生じたモアレが視認されても、僅かに気になることはあってもあまり気にならないレベル以上であり、常用対数で−2.80以下であれば、殆ど気にならないレベル以上であり、常用対数で−3.00以下であれば、気にならないレベルだからである。
したがって、本発明では、モアレの評価指標を、好ましい範囲として、常用対数で−2.70(真数で10
−2.70)以下に特定し、より好ましい範囲として、常用対数で−2.80以下に特定し、さらに好ましい範囲として、常用対数で−3.00以下に特定する。
【0084】
もちろん、メッシュパターン24の金属細線14の線幅や、開口部22の形状やそのサイズ(ピッチや角度)や、2つの導電層の配線パターンの位相角(回転角、ズレ角)等に応じて、複数の最適化されたメッシュパターン24が得られるが、モアレの評価指標の常用対数値が小さいものが最良のメッシュパターン24となり、複数の最適化されたメッシュパターン24には序列を付けることもできる。
こうして、本発明の導電性フイルムの配線評価方法は、終了し、表示装置の表示ユニットのBMパターンの各色の副画素配列パターンに重畳してもモアレの発生が抑止され、異なる解像度の表示装置に対しても、また、観察距離によらず、モアレの視認性に優れた、最適化された配線パターンを持つ本発明の導電性フイルムを作製することができる。
【0085】
なお、上述した
図3に示す本発明の導電性フイルム11の例では、導電層28bにおいては、第2導電部16b以外は形成されていないが、本発明はこれに限定されず、
図16に示す導電性フイルム11Aように、導電層28aと同様に、第1導電部16aの複数の金属細線14に対応する位置に、第2導電部16bと電気的に絶縁されたダミー電極部26を設けても良い。この場合には、導電層28aの配線パターン24と導電層28bの配線パターン24とを、同一のものとすることができ、電極視認性を更に改善することができる。
また、
図16に示す例では、導電層28aと導電層28bとは、同一の配線パターン24を持ち、ずれることなく重なり合って1つの配線パターン24を形成しているが、両導電層28a及び導電層28bのそれぞれの配線パターンは、本発明の評価基準を満たすものであれば、ずれた位置に重ね合わされていても良いし、それぞれの配線パターン自体が異なっていても良い。
【0086】
また、上述した本発明の導電性フイルムは、連続した金属細線からなるメッシュ状配線パターンを持つものであるが、本発明はこれに限定されず、上述したように、本発明の評価基準を満たすものであれば、本出願人の出願に係る特願2012−276175号明細書に記載の導電性フイルムのメッシュ状配線パターンのパターン形状のように、金属細線に断線(ブレーク)が入ったメッシュ状配線パターンを持つものであっても良い。
図17は、本発明の別の実施形態に係る導電性フイルムの別の一例を模式的に示す部分拡大平面図であり、そのメッシュパターンの複数の断線部の一例を示す模式図である。なお、
図17においては、理解を容易にするために、導電性フイルムのメッシュ状配線のメッシュ状配線パターンの内、電極配線パターンを太線で、ダミー電極パターンを細線で示しているが、これらは、同一の不透明な金属細線で形成されるものであり、太さに違いが無いのはもちろんである。
【0087】
図17に示す導電性フイルム11Bは、
図2に示す導電層28、
図3に示す導電層28a、又は
図16に示す導電層28a及び28bのそれぞれに、複数の金属細線14からなるメッシュ状配線21を備え、メッシュ状配線21は、詳細には、2方向の複数の金属細線14を交差するように配線した配線パターン、即ち、複数の金属細線14をメッシュ状に配列したメッシュ状配線パターン24を有する。図示例においては、配線パターン24によって形成される開口部22のメッシュ形状は菱形であり、ダイヤモンドパターンと呼ぶことができる。
メッシュ状配線21は、複数の金属細線14により連続するようにメッシュ状に形成された電極配線パターン24aを備える電極部23aと、複数の金属細線により同様にメッシュ状に形成され、複数の断線部25を持ち、非連続であるダミー電極(非電極)配線パターン24bを備え、電極部23aと絶縁されているダミー電極部(非電極部)23bとを有する。ここで、電極部23aの電極配線パターン24aと、ダミー電極部23bのダミー電極配線パターン24bとは、図示例では、同一のメッシュ形状(菱形)を持つ配線パターンであり、両者が合成されてメッシュ状配線21の配線パターン24となる。
【0088】
なお、電極部23aは、
図1に示す導電層28の導電部16、
図3に示す導電層28a第1導電部16a、
図16に示す導電層28a及び28bのそれぞれの第1導電部16a及び第2導電部16bによって構成されるものであり、ダミー電極部(非電極部)23bは、
図3及び
図16に示すダミー電極部26によって構成されるものである。
ここで、図示例の電極部23aの電極配線パターン24aは、X電極を構成する電極パターンであるが、本発明はこれに限定されず、静電容量式タッチセンサ(パネル)に用いられる電極パターンであれば、どのようなものでも良く、例えば、ストライプ電極、バーアンドストライプ電極、ダイヤモンド電極、スノーフレーク電極等の従来公知の電極パターンであっても良い。
【0089】
電極部23aにおいてメッシュ状に形成された金属細線14は、断線部25を持たず、連続しているのに対し、ダミー電極部23bにおいてメッシュ状に形成された金属細線14には、複数の断線部(切断部)25が設けられており、複数の断線が付加されている。電極部23aにおける金属細線14とダミー電極部23bにおける金属細線14との間には、必ず断線部25が設けられており、電極部23aの金属細線14とダミー電極部23bの金属細線14とは断線されており、不連続である。即ち、ダミー電極部23bは、電極部23aと電気的に絶縁されている。
以上から、メッシュ状配線21の配線パターン24は、複数の断線部25を含むメッシュパターンとなる。
【0090】
(実施例)
以下に、本発明を実施例に基づいて具体的に説明する。
図8(A)に示す223dpiのディスプレイのBMパターン38の副画素32g、32r、32bの各副画素配列パターンに対して、
図18(A)に示す菱形パターン形状を持ち、開口部22の形状及びサイズ(ピッチp及び角度θ)が異なり、金属細線14の線幅の異なる多数のメッシュパターン24について、シミュレーションサンプル及び実サンプルで、メッシュパターン24とBMパターン38の各色の副画素配列パターンとを重畳し、モアレの評価指標を求めると共に、3名の官能評価者が、モアレのシミュレーション画像において重畳された両者の干渉によって生じるモアレを目視で官能評価した。
【0091】
ここで、モアレの評価は、
図7に示すように、ステップS14で用いた画素配列(BM)パターン38の各色の副画素配列パターンの明度画像データ上にステップS16で用いたメッシュパターン24の透過率データを重畳して、明度画像上に透過率画像が重畳されたモアレの逆変換画像を作成してディスプレイに表示し、表示された逆変換画像を3名の官能評価者が目視して官能評価を行った。
その結果を表1に示す。
【0092】
ここで、官能評価結果は、1〜5の6段階で行い、1名でもモアレが視認されて邪魔になると評価する官能評価者がいる場合は、「邪魔になる」評価として5と評価し、5と評価をする官能評価者がいない場合であって1名でもモアレが視認されて気になると評価する官能評価者がいる場合は、「気になる」評価として4と評価し、4及び5と評価をする官能評価者がいない場合であって、僅かに気になることはあってもあまり気にならないと評価する1名でもいる場合は、「あまり気にならない」評価として3と評価し、3〜5と評価をする官能評価者がいない場合であって、ほとんど気にならないと評価する1人でもいる場合、即ち、全員がほとんど気にならないか、気にならないと評価する場合は、「ほとんど気にならない」評価として2と評価し、全員が気にならないと評価した場合は、「気にならない」評価として1と評価した。
モアレの視認性としては、評価3以下であれば合格であるが、評価2以下であるのが望ましく、評価1であるのが最も望ましい。
【0093】
本実施例においては、メッシュパターン24の開口部22の形状については、ピッチpを100μm〜200μmの範囲で20μm刻みで変化させ、角度θは30°、35°及び40°に変化させた。
また、メッシュパターン24の線幅は、2μmと、4μmに変化させた。
なお、
図8(A)に示す233dpiのBMパターン38において、G副画素(Gチャネルカラーフィルタ)32gは、幅8μm、長さ43μmのサイズの長方形で、R副画素(Rチャネルカラーフィルタ)32rは、幅21μm、長さ28μmのサイズの長方形で、B副画素(Bチャネルカラーフィルタ)32bは、図中右下に5μm×5μmのサイズの正方形の切り欠きを持つ幅21μm、長さ43μmのサイズの長方形であり、図中点線で示される1画素32は、110μm×110μmのサイズの正方形であった。
なお、画素配列(BM)パターン38の各色の副画素配列パターンの撮像においては、マイクロスコープとしてSTM6(OLYMPUS社製)、レンズとしてUMPlanFIx10(OLYMPUS社製)、カメラとしてQIC−F−CLR−12−C(Linkam Scientific Instruments社製)を用いた。この際、撮像条件は、ゲイン1.0、ホワイトバランス(G、R、B)は(1.00、2.17、1.12)とした。また、撮像画像は、シェーディングを行った。
モアレの評価指標の算出は、
図7に示す方法で、上述のように行った。
【0095】
表1は、種々のメッシュパターン24に関する実施例1〜19及び比較例1〜17を示す。
ここで、表1に示す実施例1〜8は、金属細線14の線幅が、2μm及び4μmであり、メッシュパターン24の開口部22の形態が、
図18(A)に示す菱形パターンであり、ピッチpが、100〜180μmであり、角度θが、30°〜40°であるが、モアレの評価値(評価指標)は、いずれも常用対数で−3.00以下であり、官能評価値が1で、全員が気にならないと評価する最も高い「気にならない」レベルの評価であった。
【0096】
次に、表1に示す実施例9〜14は、金属細線14の線幅が、2μm及び4μmであり、メッシュパターン24の開口部22の形態が、
図18(A)に示す菱形パターンであり、ピッチpが、120〜200μmであり、角度θが、30°〜40°であるが、モアレの評価値(評価指標)は、いずれも常用対数で−3.00超、−2.80以下であり、官能評価値が2で、全員がほとんど気にならない以上の評価をする「ほとんど気にならない」レベルの評価であった。
また、表1に示す実施例15〜19は、金属細線14の線幅が、2μm及び4μmであり、メッシュパターン24の開口部22の形態が、
図18(A)に示す菱形パターンであり、ピッチpが、100〜200μmであり、角度θが、30°〜40°であるが、モアレの評価値(評価指標)は、いずれも常用対数で−2.80超、−2.70以下であり、官能評価値が3で、全員が僅かに気になることはあってもあまり気にならない以上の評価をする「あまり気にならない」レベルの評価であった。
【0097】
これに対し、比較例1〜11は、金属細線14の線幅が、2μm及び4μmであり、メッシュパターン24の開口部22の形態が、
図18(A)に示す菱形パターンであり、ピッチpが、100〜200μmであり、角度θが、30°〜40°であるが、モアレの評価値(評価指標)は、いずれも常用対数で−2.70超、−2.30以下であり、官能評価値が4で、「気になる」レベルの評価であった。
また、比較例12〜17は、金属細線14の線幅が、2μm及び4μmであり、メッシュパターン24の開口部22の形態が、
図18(A)に示す菱形パターンであり、ピッチpが、100〜200μmであり、角度θが、30°〜40°であるが、モアレの評価値(評価指標)は、いずれも常用対数で−2.30超であり、官能評価値が5で、「邪魔になる」レベルの評価であった。
【0098】
以上の表1から、BMパターンの各色の副画素パターンの周期や強度が異なる場合であっても、また、配線パターンがどのようなパターン、すなわちその金属細線の線幅や、開口部の形状やそのサイズ(ピッチや角度)等がどのようなものであっても、モアレの評価指標が、常用対数で−2.70以下であれば、重畳された配線パターンとBMパターンの各色の副画素パターンとの干渉によって生じたモアレが視認され、僅かに気になることはあってもあまり気にならないレベル以上であり、常用対数で−2.80以下であれば、仮にモアレが視認されてもほとんど気にならないレベル以上であり、常用対数で−3.00以下であれば、気にならないレベルであることが分かる。
以上から、上記のモアレの評価指標が、上記範囲を満足する配線パターンを持つ本発明の導電性フイルムは、ディスプレイのBMパターンの各色の副画素パターンの周期や強度が異なっていても、また、正面観察時でも、斜め観察時でも、モアレの発生を抑止でき、視認性を大幅に向上させることができる。
以上から、本発明の効果は明らかである。
【0099】
なお、本発明では、上述した実施例のように、予め、種々のパターン形状の配線パターンを準備しておいて、本発明の評価方法によって最適化された配線パターンを持つ導電性フイルムを決定することができるが、1つの配線パターンのモアレの評価指標が、所定値未満である場合には、配線パターンの透過率画像データを新たな配線パターンの透過率画像データに更新して、上述した本発明の評価方法を適用してモアレの評価指標を求めることを繰り返して、最適化された配線パターンを持つ導電性フイルムを決定することもできる。
ここで、更新される新たな配線パターンは、予め準備されたものであっても、新たに作成されたものであっても良い。なお、新たに作成され場合には、配線パターンの透過率画像データの回転角度、ピッチ、パターン幅のいずれか1つ以上を変化させても良いし、配線パターンの開口部の形状やサイズを変更するようにしても良い。更には、これらにランダム性を持たせても良い。
【0100】
以上に、本発明に係る導電性フイルム、それを備える表示装置及び導電性フイルムの評価方法について種々の実施形態及び実施例を挙げて説明したが、本発明は、上述の実施形態及び実施例に限定されず、本発明の要旨を逸脱しないかぎり、種々の改良や設計の変更を行っても良いことはもちろんである。