(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記耐熱向上層は、フラーレンまたはフラーレン誘導体と前記電子ブロッキング層を構成する材料が混合された層であり、隣接する前記画素電極の間の前記絶縁層に溝部が形成されている請求項1に記載の固体撮像素子。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、添付の図面に示す好適実施形態に基づいて、本発明の固体撮像素子を詳細に説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態の固体撮像素子を示す模式的断面図である。
図2(a)は、本発明の第1の実施形態の固体撮像素子の要部を示す模式的断面図であり、(b)は、本発明の第1の実施形態の固体撮像素子の光電変換素子を示す模式的断面図である。
なお、本発明において、数値範囲を示す「〜」とは両側に記載された数値を含む。例えば、xが数値A〜数値Bとは、xの範囲は数値Aと数値Bを含む範囲であり、数学記号で示せばA≦x≦Bである。
図1に示す固体撮像素子10は、デジタルスチルカメラ、デジタルビデオカメラ等の撮像装置に用いることができる。更には電子内視鏡および携帯電話機等の撮像モジュール等に搭載して用いることもできる。
【0013】
図1に示す固体撮像素子10は、少なくとも可視光を含む入射光Lが入射されて、可視光像を電気信号に変換するものである。例えば、固体撮像素子10は、基板12と、絶縁層14と、画素電極16と、耐熱向上層18と、電子ブロッキング層20と、光電変換層22と、対向電極24と、封止層26と、隔壁27と、カラーフィルタ28と、遮光層29と、オーバーコート層30とを有する。
基板12には読出し回路40と対向電極電圧供給部42とが形成されている。なお、固体撮像素子10は、電気信号に変換するのは可視光に限定されるものではなく、可視光以外の波長帯の光を電気信号に変換するものであってもよい。
【0014】
基板12は、例えば、ガラス基板またはSi等の半導体基板が用いられる。基板12の表面12aに、例えば、窒化珪素、酸化珪素等の絶縁材料からなる絶縁層14が設けられている。絶縁層14の直上、すなわち、絶縁層14の表面14aに複数の画素電極16が、隙間17をあけて互いに離間して1次元または2次元状に配置される。複数の画素電極16の隙間17に対応する絶縁層14の領域に溝部15が形成されている。この溝部15の底部には耐熱向上層18と同じ材料で形成された残存部19がある。
絶縁層14には、画素電極16と読出し回路40とを接続する第1の接続部44が形成されている。更に、対向電極24と対向電極電圧供給部42とを接続する第2の接続部46が形成されている。第2の接続部46は、画素電極16および電子ブロッキング層20に接続されない位置に形成されている。第1の接続部44および第2の接続部46は、銅等の導電性材料で形成されている。
【0015】
また、絶縁層14の内部には読出し回路40および対向電極電圧供給部42を、例えば、固体撮像素子10の外部と接続するための導電性材料からなる配線層48が形成されている。上述のように、基板12上の絶縁層14の表面14aに、各第1の接続部44に接続された画素電極16が形成されたものを回路基板11という。なお、この回路基板11はCMOS基板ともいう。
【0016】
各画素電極16上に耐熱向上層18が設けられているが、耐熱向上層18は画素電極16の隙間17には設けられておらず、耐熱向上層18は互いに分離して独立している。耐熱向上層18は、複数の画素電極16が設けられた同一面、この場合、絶縁層14の表面14a上にはない。耐熱向上層18は画素電極16間の隙間17上の少なくとも一箇所において、非連続であればよい。すなわち、耐熱向上層18は1つの画素電極16間の隙間17で、少なくとも一箇所において、つながっていなければよい。これにより、隣接する画素電極16間での導通が防止される。
耐熱向上層18は固体撮像素子10の耐熱性を向上させるものであり、フラーレンまたはフラーレン誘導体と電子ブロッキング層20を構成する材料が混合されたもので構成されている。このため、耐熱向上層18では電荷が移動可能である。
【0017】
耐熱向上層18を覆い、かつ画素電極16の隙間17を埋めるようにして電子ブロッキング層20が設けられている。電子ブロッキング層20は、画素電極16から光電変換層22への電子注入を抑制するための層である。
電子ブロッキング層20上に光電変換層22が設けられている。光電変換層22は入射光Lを受光して、その光量に応じた電荷を発生するものである。
【0018】
耐熱向上層18は、固体撮像素子10の耐熱性を向上させるための層である。耐熱向上層18は、電子ブロッキング層20を構成する材料とフラーレンまたはフラーレン誘導体を混合した層である。耐熱向上層18は有機材料とフラーレンまたはフラーレン誘導体の比率が一定の層でもよいし、膜厚方向によって比率が異なるグラデーション層であってもよい。耐熱向上層18を画素電極16と電子ブロッキング層20との間に設けることで固体撮像素子10の光電変換効率、暗電流特性、光応答速度を低下させずに、固体撮像素子10の耐熱性を向上させることができる。電子ブロッキング層20と耐熱向上層18の間に別の機能層を設けてもよい。
【0019】
耐熱向上層18のフラーレンまたはフラーレン誘導体のC
60比率が多すぎると、耐熱向上層18の正孔輸送能が低下してしまう。また、混合膜のフラーレンまたはフラーレン誘導体のC
60比率が少なすぎると、十分な耐熱性向上の効果が得られなくなってしまう。耐熱向上層18中のフラーレンまたはフラーレン誘導体の比率としては、30%〜70%が好ましい。より好ましくは35%〜65%、さらに好ましくは40%〜60%である。この領域の比率にすることで耐熱性と電荷輸送性を両立することができる。
耐熱向上層18の厚みとしては、画素電極16を十分に覆うために5nm以上であることが好ましく、より好ましくは10nm以上である。耐熱向上層18の厚みが厚すぎると、光電変換層22に適切な電界強度を印加するために必要な供給電圧が高くなってしまう問題が生じる。このため、耐熱向上層18の厚みは30nm以下が好ましく、より好ましくは20nm以下、さらに好ましくは15nm以下である。
【0020】
耐熱向上層18は、フラーレンまたはフラーレン誘導体を含むため、隣接する画素電極16から電子が注入される。したがって、
図7に示す固体撮像素子100のように隣接する画素電極16間で、耐熱向上層18がつながっていると、すなわち、耐熱向上層18が連続していると、隣接する画素電極16が短絡してしまい、画素電極16間で電荷のやり取りが生じるという問題が生じる。しかしながら、
図1に示す固体撮像素子10のように隣接する画素電極16の間で耐熱向上層18を断絶させることで、隣接画素間の短絡を防止することができる。これにより、隣接する画素電極16間で電荷のやり取りが起り防止され、撮像画像に滲みが発生しない。
なお、
図7に示す固体撮像素子100において、
図1に示す固体撮像素子10と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0021】
電子ブロッキング層20は、電極から光電変換層に電子が注入されてしまうのを防ぐための層であり、単層または複数層で構成されている。電子ブロッキング層20は、有機材料単独膜で構成されてもよいし、複数の異なる有機材料の混合膜で構成されていてもよい。
【0022】
電子ブロッキング層20は、隣接する画素電極16からの電子注入障壁が高くかつ正孔輸送性が高い材料で構成することが好ましい。電子注入障壁としては、隣接する画素電極16の仕事関数よりも、電子ブロッキング層20の電子親和力が1eV以上小さいことが好ましい、より好ましくは1.3eV以上、特に好ましいのは1.5eV以上である。
電子ブロッキング層20は、画素電極16と光電変換層22の接触を十分に抑制し、また画素電極16表面に存在する欠陥またはゴミの影響を避けるために、厚みは20nm以上であることが好ましい。より好ましくは厚みが40nm以上であり、特に好ましいのは厚みが60nm以上である。
電子ブロッキング層20を厚くしすぎると、光電変換層に適切な電界強度を印加するために必要な供給電圧が高くなってしまう問題、および電子ブロッキング層20中のキャリア輸送過程が、光電変換素子の性能に悪影響を与えてしまう問題が生じる。電子ブロッキング層20の総膜厚は、300nm以下であることが好ましい、より好ましくは200nm以下、さらに好ましくは100nm以下である。
【0023】
電子ブロッキング層20が複数の層で構成される場合、電子ブロッキング層20の総膜厚は、300nm以下であることが好ましく、より好ましくは200nm以下、更に好ましくは100nm以下である。
電子ブロッキング層の厚みが上述の範囲であれば、光電変換層に適切な電界強度を印加するために必要な、供給電圧が高くなるのを抑えることができる。また、電子ブロッキング層中のキャリア輸送過程が、固体撮像素子の性能に悪影響を与えない。
【0024】
光電変換層22は、入射光L、例えば、可視光等の受光した光の光量に応じた電荷を発生する光電変換材料を含んで構成された層である。光電変換材料としては有機化合物を使用することができる。
光電変換層22は、p型有機化合物またはn型有機化合物を含有した層であることが好ましい。光電変換層22は、p型有機化合物と、n型有機化合物を混合したバルクへテロ層であることがより好ましい。さらに好ましくは、p型有機化合物と、フラーレンまたはフラーレン誘導体を混合したバルクへテロ層である。光電変換層22として、バルクへテロ層を用いることにより有機層の励起子拡散長が短いという欠点を補い、光電変換効率を向上させることができる。最適な混合比率でバルクへテロ層を作製することにより、光電変換層22の電子移動度、正孔移動度を高くすることができ、固体撮像素子10の光応答速度を十分高速にすることができる。バルクへテロ層のフラーレン、もしくはフラーレン誘導体の比率としては、フラーレンを30%〜80%含むことが好ましく、50%〜80%含むことがより好ましく、フラーレンを65%〜75%含むことが特に好ましい。
【0025】
これらの有機化合物を含む層は、例えば、乾式成膜法または湿式成膜法により成膜される。乾式成膜法の具体的な例としては、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、MBE法等の物理気相成長法またはプラズマ重合等のCVD法が挙げられる。湿式成膜法としては、キャスト法、スピンコート法、ディッピング法またはLB法等が挙げられる。
p型有機化合物、またはn型有機化合物のうちの少なくとも一つとして高分子化合物を用いる場合は、作成の容易な湿式成膜法により成膜することが好ましい。蒸着等の乾式成膜法を用いた場合、高分子を用いることは分解の虞があるため難しく、代わりとしてそのオリゴマーを好ましく用いることができる。一方、本発明において、低分子を用いる場合は、乾式成膜法が好ましく用いられ、特に真空蒸着法が好ましく用いられる。均一な蒸着を可能とするために基板を回転させて蒸着することは好ましい。蒸着時のすべての工程は真空中で行われることが好ましく、基本的には化合物が直接、外気の酸素、水分と接触しないようにする。水晶振動子、干渉計等の膜厚モニタ−を用いて蒸着速度をPIもしくはPID制御することが好ましく用いられる。2種以上の化合物を同時に蒸着する場合には共蒸着法、フラッシュ蒸着法等を好ましく用いることができる。
なお、電子ブロッキング層20および光電変換層22については後に詳細に説明する。
【0026】
対向電極24は、画素電極16と対向する電極であり、光電変換層22を覆うようにして設けられている。対向電極24は、複数の画素電極16に対して個別に分離されることなく共通して設けられている。
対向電極24は、光電変換層22に光を入射させるため、入射光Lに対して透明な導電性材料で構成されている。対向電極24は、光電変換層22よりも外側に配置された第2の接続部46と電気的に接続されており、第2の接続部46を介して対向電極電圧供給部42に接続されている。
【0027】
対向電極24は、光電変換層22に入射する光の絶対量を増加させ、外部量子効率を高くするために、透明電極であることが好ましい。
対向電極24の材料として好ましいのは、ITO、IZO、SnO
2、ATO(アンチモンドープ酸化スズ)、ZnO、AZO(Alドープ酸化亜鉛)、GZO(ガリウムドープ酸化亜鉛)、TiO
2、FTO(フッ素ドープ酸化スズ)のいずれかの材料である。
対向電極24の光透過率は、可視光波長において、60%以上が好ましく、より好ましくは80%以上で、より好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上である。
また、対向電極24は、厚みが5〜30nmであることが好ましい。対向電極24を5nm以上の膜厚にすることにより、下層を十分に被覆することができ、均一な性能が得られる。一方、対向電極24の膜厚が30nmを超えると、対向電極24と画素電極16が局所的に短絡してしまい、暗電流が上昇してしまうことがある。対向電極24を30nm以下の膜厚にすることで、局所的な短絡が発生するのを抑制することができる。
【0028】
対向電極24の作製には材料によって種々の方法が用いられるが、例えば、ITOの場合、電子ビーム法、スパッタリング法、抵抗加熱蒸着法、ゾルーゲル法等の化学反応法、酸化インジウムスズの分散物の塗布等の方法が用いられる。
本発明においては対向電極24をプラズマフリーで作製することが好ましい。プラズマフリーで対向電極24を作製することで、プラズマが固体撮像素子10に与える影響を少なくすることができ、光電変換特性を良好にすることができる。ここで、プラズマフリーとは、対向電極24の成膜中にプラズマが発生しないか、またはプラズマ発生源から基体までの距離が2cm以上、好ましくは10cm以上、更に好ましくは20cm以上であり、処理対象に到達するプラズマが減ずるような状態を意味する。
【0029】
画素電極16は、画素電極16とそれに対向する対向電極24との間にある光電変換層22で発生した電荷を捕集するための電荷捕集用の電極である。画素電極16は、第1の接続部44を介して読出し回路40に接続されている。この読出し回路40は、複数の画素電極16の各々に対応して基板12に設けられており、対応する画素電極16で捕集された電荷に応じた信号を読み出すものである。
【0030】
画素電極16の材料としては、導電性があれば良く、例えば、金属、導電性のある金属酸化物、金属窒化物および金属硼化物、ならびに有機導電性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体例としては、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属硼化物、有機導電性化合物、これらの混合物等が挙げられる。具体例としては、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化インジウム亜鉛(IZO)、酸化インジウムタングステン(IWO)、酸化チタン等の導電性金属酸化物、窒化チタン(TiN)等の金属窒化物、金(Au)、白金(Pt)、銀(Ag)、クロム(Cr)、ニッケル(Ni)、アルミニウム(Al)等の金属、更にこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール等の有機導電性化合物、これらとITOとの積層物、等が挙げられる。画素電極の材料として特に好ましいのは、窒化チタン、窒化モリブデン、窒化タンタル、窒化タングステンのいずれかの材料である。
【0031】
読出し回路40は、例えば、CCD、CMOS回路、またはTFT回路等で構成されており、絶縁層14内に設けられた遮光層(図示せず)によって遮光されている。なお、読出し回路40は、一般的なイメージセンサ用途ではCCDまたはCMOS回路を採用することが好ましく、ノイズおよび高速性の観点からはCMOS回路を採用することが好ましい。
なお、図示しないが、例えば、基板12にp領域によって囲まれた高濃度のn領域が形成されており、このn領域に第1の接続部44が接続されている。p領域に読出し回路40が設けられている。n領域は光電変換層22の電荷を蓄積する電荷蓄積部として機能するものである。n領域に蓄積された信号電荷は読出し回路40によって、その電荷量に応じた信号に変換されて、例えば、配線層48を介して固体撮像素子10外部に出力される。
【0032】
対向電極電圧供給部42は、第2の接続部46を介して対向電極24に所定の電圧を印加するものである。対向電極24に印加すべき電圧が固体撮像素子10の電源電圧よりも高い場合は、チャージポンプ等の昇圧回路によって電源電圧を昇圧して上述の所定の電圧を供給するものである。
【0033】
封止層26は、光電変換層22を水分子、酸素等の劣化因子から保護するためのものであり、封止層26は対向電極24を覆っている。
封止層26により、固体撮像素子10の各製造工程において、有機溶媒等の溶液、プラズマ等に含まれる有機光電変換材料を劣化させる因子の浸入を阻止して光電変換層22を保護する。また、固体撮像素子10の製造後に、水分子、酸素等の有機光電変換材料を劣化させる因子の浸入を阻止して、長期間の保存、および長期の使用にわたって、光電変換層22の劣化を防止する。更には、封止層26を形成する際、既に形成された光電変換層22を劣化させない。また、入射光Lは、封止層26を通じて光電変換層22に到達する。このため、封止層26は、光電変換層22で検知する波長の光、例えば、可視光に対して透明である。
【0034】
封止層26は、少なくとも1層で構成されるものであり、
図1に示す例では、封止層26は単層である。この封止層26は、例えば、酸化窒化珪素膜(SiON膜)で構成される。封止層26は、例えば、気相成膜法により形成されることが好ましい。気相成膜法としては、例えば、プラズマCVD法、スパッタ法、反応性スパッタ法、イオンプレーティング法を用いることができる。封止層26は、例えば、総膜厚が30〜500nmである。
封止層26の総膜厚が30nmを下回るとバリア性が低下したり、カラーフィルタの現像液に対する耐性が低下する虞がある。一方、封止層26の厚みが500nmを超えると、画素サイズが1μmを切る場合に、混色を抑制することが難しくなる。
【0035】
封止層26は単層構造に限定されるものではなく、例えば、2層構造としてもよい。この場合、上述の封止層26と同様の構成でもよく、これに以外に、例えば、酸化アルミニウム(AlOx)、酸化珪素(SiOx)および窒化珪素(SiNx)のうち、いずれかの組合せの構成とすることができる。
【0036】
なお、例えば、画素寸法が2μm未満、特に1μm程度の固体撮像素子10において、カラーフィルタ28と光電変換層22との距離、すなわち、封止層26の膜厚が厚いと、封止層26内での入射光Lの斜入射成分の影響が大きくなり混色が発生する虞がある。このために、封止層26は、いずれも薄い方が好ましい。
【0037】
カラーフィルタ28は、封止層26上の各画素電極16と対向する位置に形成されている。隔壁27は、封止層26上のカラーフィルタ28同士の間に設けられており、カラーフィルタ28の光透過効率を向上させるためのものである。遮光層29は、封止層26上のカラーフィルタ28および隔壁27を設けた領域(有効画素領域)以外に形成されており、有効画素領域以外に形成された光電変換層22に光が入射することを防止するものである。カラーフィルタ28、隔壁27および遮光層29は、例えば、フォトリソグラフィ法により形成される。
【0038】
オーバーコート層30は、カラーフィルタ28を後工程等から保護するためのものであり、カラーフィルタ28、隔壁27および遮光層29を覆っている。
図2(a)、(b)に示すように、固体撮像素子10においては、画素電極16、耐熱向上層18、電子ブロッキング層20、光電変換層22、対向電極24およびカラーフィルタ28が上方に設けられた画素電極16、1つが単位画素Uになる。単位画素Uと第1の接続部44と読出し回路40とを組み合わせたもので光電変換素子50が構成される。
【0039】
オーバーコート層30は、アクリル系樹脂、ポリシロキサン系樹脂、ポリスチレン系樹脂もしくは弗素樹脂等のような高分子材料、または酸化珪素もしくは窒化珪素のような無機材料を適宜使用できる。ポリスチレン系等の感光性樹脂を使用すると、フォトリソグラフィ法によってオーバーコート層30をパターニングできるので、ボンディング用パッド上の周辺遮光層、封止層、絶縁層等を開口する際のフォトレジストとして使用すること、オーバーコート層30自体をマイクロレンズとして加工することが容易になり好ましい。一方、オーバーコート層30を反射防止層として使用することも可能であり、カラーフィルタ28の隔壁として使用した各種低屈折率材料を成膜することも好ましい。また、後工程に対する保護層としての機能、反射防止層としての機能を追求するために、オーバーコート層30を、上述の材料を組合せた2層以上の構成にすることも可能である。
【0040】
固体撮像素子10では、
図2(a)に示すように、溝部15の深さをT
1とし、耐熱向上層18の厚みをT
2とするとき、T
2<T
1であることが好ましい。これにより後述するように、耐熱向上層18を形成した際に、残存部19が溝部15内に全て収まり、画素電極16の隙間17に残存部19が存在することがない。すなわち、導電性を有する耐熱向上層18がない。このため、隣接する画素電極16同士の導通が防止され、暗電流、応答速度および変換効率を劣化させることなく、耐熱向上層18の効果が発揮される。
好ましくは厚みT
2と深さT
1の差が5nm以上であり、より好ましくは10nm以上である。厚みT
2と深さT
1の差、すなわち、段差が大きい程、耐熱向上層18を厚くすることができ、耐熱向上層18が画素電極16上を十分に被覆することができる。
【0041】
固体撮像素子10では、溝部15の角度θ
1は50°以上であることが好ましい。角度θ
1が50°未満であると溝部15の深さを深くしないと、隣接する画素電極16間で耐熱向上層18を断絶させることができない可能性がある。なお、溝部15の角度θ
1は50°以上60°以下がより好ましく、さらに好ましくは50°以上55°以下である。
また、固体撮像素子10では、電子ブロッキング層20は溝部15に対応する領域に凹部21での角度θ
2は30°以下であることが好ましく、より好ましくは20°以下、更に好ましくは15°以下である。凹部21での角度θ
2が30°を超えると、画素電極16間上にある電子ブロッキング層20、光電変換層22に粗密な領域が形成される。光電変換層22上に形成した対向電極24が粗密部に侵入し、電界を印加した際に、侵入した対向電極24の一部に電界が集中し、暗電流が増加することが生じる虞がある。
【0042】
以下、溝部15の角度θ
1と電子ブロッキング層20の角度θ
2について説明する。
図3(a)は、本発明の第1の実施形態の固体撮像素子の溝部の角度を説明するための模式図であり、(b)は、本発明の第1の実施形態の固体撮像素子の電子ブロッキング層の角度を説明するための模式図である。
なお、
図3(a)、(b)において、
図1、
図2(a)に示す固体撮像素子10と同一構成物には同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
【0043】
図3(a)に示すように、溝部15の上面15aにおいて基板12(
図1参照)の表面12a(
図1参照)と平行な面をm
1とし、溝部15の底面15bにおいて基板12の表面12aと平行な線をm
2とする。このとき、溝部15の上面15aでの起点をP
1とし、溝部15の底面15bでの起点をP
2とする。そして、起点P
1と起点P
2を通る直線をm
3とするとき、基板12の表面12aと平行な線m
2と直線m
3とのなす角度をθ
1とする。この角度θ
1が溝部15の角度である。
なお、起点P
1とは、溝部15の断面において溝部15の側面15cと絶縁層14の表面14aとの境界である。起点P
2とは、溝部15の断面において溝部15の側面15cと溝部15の底面15bとの境界である。
【0044】
また、
図3(b)に示すように、電子ブロッキング層20において、画素電極16の溝部15側の端部を通り、基板12(
図1参照)の表面12a(
図1参照)に垂直な線をnとし、溝部15の中心を通り、基板12の表面12aに垂直な線をcとする。この場合、電子ブロッキング層20の凹部21において、線nと交わる点をP
3とし、線cと交わる点をP
4とする。点P
3と点P
4を通る直線をm
4とする。上述の平行な線m
2と直線m
4とのなす角度をθ
2とする。この角度θ
2が電子ブロッキング層20の角度である。
【0045】
次に、固体撮像素子10の製造方法について説明する。
図4(a)〜(d)は、本発明の第1の実施形態の固体撮像素子の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。
図4(a)に示すように、読出し回路40と対向電極電圧供給部42(
図4(a)では図示せず)とが形成された基板12の表面12aに、第1の接続部44と第2の接続部46(
図4(a)では図示せず)と、配線層48(
図4(a)では図示せず)が設けられた絶縁層14が形成されたものを用意する。
【0046】
絶縁層14の表面14aに、例えば、スパッタ法でTiNの導電層60を形成する。
次に、
図4(b)に示すように、導電層60と絶縁層14の一部をエッチングにより除去し、溝部15を形成する。これにより、導電層60から画素電極16が形成される。
なお、導電層60と絶縁層14とは、1度のエッチングで除去することに限定されるものではなく、導電層60をエッチングで除去した後、絶縁層14をエッチングで除去してもよい。
次に、
図4(c)に示すように、例えば、マスク(図示せず)を用いた真空共蒸着法により、フラーレンまたはフラーレン誘導体と電子ブロッキング層20を構成する材料が混合されたものからなる耐熱向上層18を画素電極16上に形成する。
【0047】
次に、
図4(d)に示すように、耐熱向上層18上に、画素電極16の隙間17を埋めるようにして、例えば、真空蒸着法により、電子ブロッキング層20を形成する。この場合、電子ブロッキング層20は、溝部15に対応する領域に凹部21が形成される。
【0048】
以降、図示はしないが、電子ブロッキング層20上に、例えば、真空共蒸着法により光電変換層22を形成し、順次、対向電極24を、例えば、高周波マグネトロンスパッタ法によりITOで形成する。
対向電極24を覆うようにして、封止層26として、例えば、酸化アルミニウム膜と窒化珪素膜の積層膜を形成する。なお、酸化アルミニウム膜は、例えば、原子層堆積法により形成し、窒化珪素膜は、例えば、マグネトロンスパッタ法により形成する。
【0049】
次に、封止層26の表面26aに、隔壁27、カラーフィルタ28および遮光層29を、例えば、フォトリソグラフィ法を用いて形成する。隔壁27、カラーフィルタ28および遮光層29には、有機固体撮像素子に用いられる公知のものが用いられる。隔壁27、カラーフィルタ28および遮光層29の形成工程は、所定の真空下でも、非真空下であってもよい。
次に、隔壁27、カラーフィルタ28および遮光層29を覆うようにして、オーバーコート層30を、例えば、塗布法を用いて形成する。これにより、
図1に示す固体撮像素子10を形成することができる。オーバーコート層30には、有機固体撮像素子に用いられる公知のものが用いられる。オーバーコート層30の形成工程は、所定の真空下でも、非真空下であってもよい。
【0050】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図5は、本発明の第2の実施形態の固体撮像素子の要部を示す模式的断面図である。
なお、本実施形態において、
図1、
図2(a)に示す固体撮像素子10と同一構成物には、同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。
図5に示す固体撮像素子10aでは、図示を簡略化しており、光電変換層22よりも上の構成、対向電極電圧供給部42(
図1参照)、第2の接続部46(
図1参照)、および配線層48(
図1参照)の図示を省略している。
【0051】
図5に示す固体撮像素子10aは、要部しか示していないが、
図1、
図2(a)に示す固体撮像素子10に比して、絶縁層14において、隣接する画素電極16の隙間17に相当する領域に溝部15が形成されておらず、代りに画素電極16の隙間17に絶縁体70が設けられている点、および絶縁体70上に残存部72がある点が異なり、それ以外の構成は、
図1、
図2(a)に示す固体撮像素子10の構成物と同様の構成であるため、その詳細な説明は省略する。
【0052】
絶縁体70は、耐熱向上層18の表面18aから突出して設ける。なお、絶縁体70の高さをT
3とする。これにより、隣接する画素電極16上の耐熱向上層18が電気的に絶縁されて、隣接する画素電極16間での導通が防止される。
絶縁体70は、絶縁層14と同じ組成とすることができ、例えば、窒化珪素、酸化珪素等で構成することができる。残存部72は、耐熱向上層18と同じ組成であり、耐熱向上層18の形成工程で形成される。
本実施形態の固体撮像素子10aでは、隣接する画素電極16の隙間17に絶縁体70を設け、耐熱向上層18同士の導通を防止することで、暗電流、応答速度および変換効率を劣化させることなく、耐熱向上層18の効果を発揮することができる。本実施形態の固体撮像素子10aは第1の実施形態の固体撮像素子10と同様の効果を得ることができる。
【0053】
次に、本実施形態の固体撮像素子10aの製造方法について説明する。
図6(a)〜(f)は、本発明の第2の実施形態の固体撮像素子の製造方法を工程順に示す模式的断面図である。
なお、本実施形態の固体撮像素子10aの製造方法において、
図4(a)〜(d)に示す第1の実施形態の固体撮像素子10の製造方法と同一工程については、その詳細な説明は省略する。
図6(a)に示す工程は、
図4(a)に示す工程と同じであるため、説明を省略し、
図6(b)から説明する。
【0054】
図6(a)に示す導電層60を、例えば、ウエットエッチングまたはドライエッチングにより、画素電極パターンにパターニングして、
図6(b)に示すように画素電極16を形成する。
次に、
図6(c)に示すように、画素電極16を覆い、かつ画素電極16の間の隙間17を埋めるようにして絶縁膜74を形成する。この絶縁膜74は、例えば、窒化珪素、または酸化珪素で、CVD法またはスパッタ法を用いて形成される。この絶縁膜74の絶縁層14の表面14aからの高さT
3は、画素電極16と耐熱向上層18の合計の厚みよりも高い。
【0055】
次に、絶縁膜74を、画素電極16の隙間17の部分を残して、例えば、ウエットエッチングまたはドライエッチングで除去する。これにより、
図6(d)に示すように、画素電極16の隙間17に高さT
3の絶縁体70が形成される。
次に、
図6(e)に示すように、画素電極16上にフラーレンまたはフラーレン誘導体と電子ブロッキング層20を構成する材料が混合されたものを用いて、例えば、真空共蒸着法で耐熱向上層18を形成する。この場合、絶縁体70は耐熱向上層18よりも高く、耐熱向上層18の表面18aから突出する。さらには絶縁体70上にも耐熱向上層18が形成されるが、これを残存部72という。
【0056】
次に、
図6(f)に示すように、耐熱向上層18上に電子ブロッキング層20を、例えば、真空蒸着法により形成する。
以降、上述のように、電子ブロッキング層20上に光電変換層22(
図5参照)を形成する。その他の構成も、第1の実施形態と同様にして作製する。これにより、固体撮像素子10aを得ることができる。
【0057】
以下、電子ブロッキング層20および光電変換層22を構成する材料等について詳細に説明する。まず、光電変換層22について説明する。
光電変換層22の材料としては特に限定されるものではないが、p型有機化合物とn型有機化合物を混合したバルクへテロ構造の層で形成することで、固体撮像素子の性能を良好なものにすることができる。
【0058】
p型有機化合物は、ドナー性有機化合物であり、主に正孔輸送性有機化合物に代表され、電子を供与しやすい性質がある有機化合物である。更に詳しくは2つの有機材料を接触させて用いたときにイオン化ポテンシャルの小さい方の有機化合物である。したがって、ドナー性有機化合物は、電子供与性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、トリアリールアミン化合物、ベンジジン化合物、ピラゾリン化合物、スチリルアミン化合物、ヒドラゾン化合物、トリフェニルメタン化合物、カルバゾール化合物、ポリシラン化合物、チオフェン化合物、フタロシアニン化合物、シアニン化合物、メロシアニン化合物、オキソノール化合物、ポリアミン化合物、インドール化合物、ピロール化合物、ピラゾール化合物、ポリアリーレン化合物、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等を用いることができる。なお、これに限らず、上述したように、n型(アクセプター性)化合物として用いた有機化合物よりもイオン化ポテンシャルの小さい有機化合物であればドナー性有機化合物として用いてよい。
【0059】
n型有機化合物は、アクセプター性有機化合物であり、主に電子輸送性有機化合物に代表され、電子を受容しやすい性質がある有機化合物である。更に詳しくは2つの有機化合物を接触させて用いたときに電子親和力の大きい方の有機化合物である。したがって、アクセプター性有機化合物は、電子受容性のある有機化合物であればいずれの有機化合物も使用可能である。例えば、縮合芳香族炭素環化合物(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)、窒素原子、酸素原子、硫黄原子を含有する5〜7員のヘテロ環化合物(例えばピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、トリアジン、キノリン、キノキサリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、イソキノリン、プテリジン、アクリジン、フェナジン、フェナントロリン、テトラゾール、ピラゾール、イミダゾール、チアゾール、オキサゾール、インダゾール、ベンズイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、トリアゾロピリダジン、トリアゾロピリミジン、テトラザインデン、オキサジアゾール、イミダゾピリジン、ピロリジン、ピロロピリジン、チアジアゾロピリジン、等)、ポリアリーレン化合物、フルオレン化合物、シクロペンタジエン化合物、シリル化合物、含窒素ヘテロ環化合物を配位子として有する金属錯体等が挙げられる。なお、これに限らず、上述したように、ドナー性有機化合物として用いた有機化合物よりも電子親和力の大きな有機化合物であればアクセプター性有機化合物として用いてよい。
【0060】
光電変換層22に用いる有機色素としてはいかなるものでもよいが、p型有機色素、またはn型有機色素を用いることが好ましい。有機色素としては、いかなるものを用いてもよいが、好ましくは、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素(ゼロメチンメロシアニン(シンプルメロシアニン)を含む)、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素、クマリン色素、アリーリデン色素、アントラキノン色素、トリフェニルメタン色素、アゾ色素、アゾメチン色素、スピロ化合物、メタロセン色素、フルオレノン色素、フルギド色素、ペリレン色素、ペリノン色素、フェナジン色素、フェノチアジン色素、キノン色素、ジフェニルメタン色素、ポリエン色素、アクリジン色素、アクリジノン色素、ジフェニルアミン色素、キナクリドン色素、キノフタロン色素、フェノキサジン色素、フタロペリレン色素、ジケトピロロピロール色素、ジオキサン色素、ポルフィリン色素、クロロフィル色素、フタロシアニン色素、金属錯体色素、縮合芳香族炭素環系色素(ナフタレン誘導体、アントラセン誘導体、フェナントレン誘導体、テトラセン誘導体、ピレン誘導体、ペリレン誘導体、フルオランテン誘導体)が挙げられる。
【0061】
固体撮像素子をカラー撮像素子とする場合、吸収波長の調整の自由度の高い、シアニン色素、スチリル色素、ヘミシアニン色素、メロシアニン色素、3核メロシアニン色素、4核メロシアニン色素、ロダシアニン色素、コンプレックスシアニン色素、コンプレックスメロシアニン色素、アロポーラー色素、オキソノール色素、ヘミオキソノール色素、スクアリウム色素、クロコニウム色素、アザメチン色素等のメチン色素が好ましい波長適性を与える場合がある。
p型有機化合物は、下記一般式(1)で表される化合物であることが好ましい。
【0063】
一般式(1)中、Z
1は少なくとも2つの炭素原子を含む環であって、5員環、6員環、または、5員環および6員環の少なくともいずれかを含む縮合環を表す。L
1、L
2、およびL
3はそれぞれ独立に無置換メチン基、または置換メチン基を表す。D
1は原子群を表す。nは0以上の整数を表す。
Z
1は少なくとも2つの炭素原子を含む環であって、5員環、6員環、または、5員環および6員環の少なくともいずれかを含む縮合環を表す。5員環、6員環、または、5員環および6員環の少なくともいずれかを含む縮合環としては、通常メロシアニン色素で酸性核として用いられるものが好ましく、その具体例としては例えば、以下のものが挙げられる。
【0064】
(a)1,3−ジカルボニル核:例えば、1,3−インダンジオン核、1,3−シクロヘキサンジオン、5,5−ジメチル−1,3−シクロヘキサンジオン、1,3−ジオキサン−4,6−ジオン等。
(b)ピラゾリノン核:例えば、1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、3−メチル−1−フェニル−2−ピラゾリン−5−オン、1−(2−ベンゾチアゾイル)−3−メチル−2−ピラゾリン−5−オン等。
(c)イソオキサゾリノン核:例えば、3−フェニル−2−イソオキサゾリン−5−オン、3−メチル−2−イソオキサゾリン−5−オン等。
(d)オキシインドール核:例えば、1−アルキル−2,3−ジヒドロ−2−オキシインドール等。
(e)2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核:例えば、バルビツル酸または2−チオバルビツル酸およびその誘導体等。誘導体としては例えば、1−メチル、1−エチル等の1−アルキル体、1,3−ジメチル、1,3−ジエチル、1,3−ジブチル等の1,3−ジアルキル体、1,3−ジフェニル、1,3−ジ(p−クロロフェニル)、1,3−ジ(p−エトキシカルボニルフェニル)等の1,3−ジアリール体、1−エチル−3−フェニル等の1−アルキル−1−アリール体、1,3−ジ(2―ピリジル)等の1,3位ジヘテロ環置換体等が挙げられる。
(f)2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核:例えば、ローダニンおよびその誘導体等。誘導体としては例えば、3−メチルローダニン、3−エチルローダニン、3−アリルローダニン等の3−アルキルローダニン、3−フェニルローダニン等の3−アリールローダニン、3−(2−ピリジル)ローダニン等の3位ヘテロ環置換ローダニン等が挙げられる。
【0065】
(g)2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン(2−チオ−2,4−(3H,5H)−オキサゾールジオン)核:例えば、3−エチル−2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン等。
(h)チアナフテノン核:例えば、3(2H)−チアナフテノン−1,1−ジオキサイド等。
(i)2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核:例えば、3−エチル−2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン等。
(j)2,4−チアゾリジンジオン核:例えば、2,4−チアゾリジンジオン、3−エチル−2,4−チアゾリジンジオン、3−フェニル−2,4−チアゾリジンジオン等。
(k)チアゾリン−4−オン核:例えば、4−チアゾリノン、2−エチル−4−チアゾリノン等。
(l)2,4−イミダゾリジンジオン(ヒダントイン)核:例えば、2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2,4−イミダゾリジンジオン等。
(m)2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン(2−チオヒダントイン)核:例えば、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン、3−エチル−2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン等。
(n)イミダゾリン−5−オン核:例えば、2−プロピルメルカプト−2−イミダゾリン−5−オン等。
(o)3,5−ピラゾリジンジオン核:例えば、1,2−ジフェニル−3,5−ピラゾリジンジオン、1,2−ジメチル−3,5−ピラゾリジンジオン等。
(p)ベンゾチオフェンー3−オン核:例えば、ベンゾチオフェンー3−オン、オキソベンゾチオフェンー3−オン、ジオキソベンゾチオフェンー3−オン等。
(q)インダノン核:例えば、1−インダノン、3−フェニルー1−インダノン、3−メチルー1−インダノン、3,3−ジフェニルー1−インダノン、3,3−ジメチルー1−インダノン等。
【0066】
Z
1で形成される環として好ましくは、1,3−ジカルボニル核、ピラゾリノン核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含み、例えば、バルビツル酸核、2−チオバルビツール酸核)、2−チオ−2,4−チアゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−オキサゾリジンジオン核、2−チオ−2,5−チアゾリジンジオン核、2,4−チアゾリジンジオン核、2,4−イミダゾリジンジオン核、2−チオ−2,4−イミダゾリジンジオン核、2−イミダゾリン−5−オン核、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェンー3−オン核、インダノン核であり、より好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含み、例えば、バルビツル酸核、2−チオバルビツール酸核)、3,5−ピラゾリジンジオン核、ベンゾチオフェンー3−オン核、インダノン核であり、更に好ましくは1,3−ジカルボニル核、2,4,6−トリケトヘキサヒドロピリミジン核(チオケトン体も含み、例えば、バルビツル酸核、2−チオバルビツール酸核)であり、特に好ましくは1,3−インダンジオン核、バルビツル酸核、2−チオバルビツール酸核およびそれらの誘導体である。
【0067】
L
1、L
2、およびL
3はそれぞれ独立に、無置換メチン基、または置換メチン基を表す。置換メチン基同士が結合して環(例、6員環例えば、ベンゼン環)を形成してもよい。置換メチン基の置換基は置換基Wが挙げられるが、L
1、L
2、L
3は全てが無置換メチン基である場合が好ましい。
L
1〜L
3は互いに連結して環を形成しても良く、形成する環として好ましくはシクロヘキセン環、シクロペンテン環、ベンゼン環、チオフェン環等が挙げられる。
【0068】
nは0以上の整数を表し、好ましくは0以上3以下の整数を表し、より好ましくは0である。nを増大させた場合、吸収波長域が長波長にする事ができるか、熱による分解温度が低くなる。可視域に適切な吸収を有し、かつ蒸着成膜時の熱分解を抑制する点でn=0が好ましい。
【0069】
D
1は原子群を表す。上述のD
1は−NR
a(R
b)を含む基であることが好ましく−NR
a(R
b)が置換したアリーレン基を表す場合が更に好ましい。R
a、R
bはそれぞれ独立に、水素原子、または置換基を表す。
【0070】
D
1が表すアリーレン基としては、好ましくは炭素数6〜30のアリーレン基であり、より好ましくは炭素数6〜18のアリーレン基である。アリーレン基は、後述の置換基Wを有していてもよく、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を有していてもよい炭素数6〜18のアリーレン基である。例えば、フェニレン基、ナフチル基、アントラセニレン基、ピレニレン基、フェナントレニレン基、メチルフェニレン基、ジメチルフェニレン基等が挙げられ、フェニレン基またはナフチル基が好ましい。
【0071】
R
a、R
bで表される置換基としては後述の置換基Wが挙げられ、好ましくは、脂肪族炭化水素基(好ましくは置換基を有してもよいアルキル基、アルケニル基)、アリール基(好ましくは置換基を有してもよいフェニル基)、またはヘテロ環基である。
【0072】
R
a、R
bが表すアリール基としては、それぞれ独立に、好ましくは炭素数6〜30のアリール基であり、より好ましくは炭素数6〜18のアリール基である。該アリール基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜18のアリール基を有していてもよい炭素数6〜18のアリール基である。例えば、フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基、ピレニル基、フェナントレニル基、メチルフェニル基、ジメチルフェニル基、ビフェニル基等が挙げられ、フェニル基またはナフチル基が好ましい。
【0073】
R
a、R
bが表すヘテロ環基としては、それぞれ独立に、好ましくは炭素数3〜30のヘテロ環基であり、より好ましくは炭素数3〜18のヘテロ環基である。該ヘテロ環基は、置換基を有していてもよく、好ましくは炭素数1〜4のアルキル基または炭素数6〜18のアリール基を有していてもよい炭素数3〜18のヘテロ環基である。また、R
a、R
bが表すヘテロ環基は縮環構造であることが好ましく、フラン環、チオフェン環、セレノフェン環、シロール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環からから選ばれる環の組み合わせ(同一でもよい)の縮環構造が好ましく、キノリン環、イソキノリン環、ベンゾチオフェン環、ジベンゾチオフェン環、チエノチオフェン環、ビチエノベンゼン環、ビチエノチオフェン環が好ましい。
【0074】
D
1、R
a、およびR
bが表すアリーレン基およびアリール基はベンゼン環または縮環構造であることが好ましく、ベンゼン環を含む縮環構造であることがより好ましく、ナフタレン環、アントラセン環、ピレン環、フェナントレン環を挙げることができ、ベンゼン環、ナフタレン環またはアントラセン環がより好ましくは、ベンゼン環またはナフタレン環が更に好ましい。
【0075】
置換基Wとしてはハロゲン原子、アルキル基(シクロアルキル基、ビシクロアルキル基、トリシクロアルキル基を含む)、アルケニル基(シクロアルケニル基、ビシクロアルケニル基を含む)、アルキニル基、アリール基、複素環基(ヘテロ環基といってもよい)、シアノ基、ヒドロキシ基、ニトロ基、カルボキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、シリルオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アシルオキシ基、カルバモイルオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アミノ基(アニリノ基を含む)、アンモニオ基、アシルアミノ基、アミノカルボニルアミノ基、アルコキシカルボニルアミノ基、アリールオキシカルボニルアミノ基、スルファモイルアミノ基、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基、メルカプト基、アルキルチオ基、アリールチオ基、ヘテロ環チオ基、スルファモイル基、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基、アルキルおよびアリールスルホニル基、アシル基、アリールオキシカルボニル基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、アリールおよびヘテロ環アゾ基、イミド基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスフィニルオキシ基、ホスフィニルアミノ基、ホスホノ基、シリル基、ヒドラジノ基、ウレイド基、ボロン酸基(−B(OH)
2)、ホスファト基(−OPO(OH)
2)、スルファト基(−OSO
3H)、その他の公知の置換基が挙げられる。
【0076】
R
a、R
bが置換基(好ましくはアルキル基、アルケニル基)を表す場合、それらの置換基は、−NR
a(R
b)が置換したアリール基の芳香環(好ましくはベンゼン環)骨格の水素原子、または置換基と結合して環(好ましくは6員環)を形成してもよい。
R
a、R
bは互いに置換基同士が結合して環(好ましくは5員または6員環、より好ましくは6員環)を形成してもよく、また、R
a、R
bはそれぞれがL(L
1、L
2、L
3のいずれかを表す)中の置換基と結合して環(好ましくは5員または6員環、より好ましくは6員環)を形成してもよい。
【0077】
一般式(1)で表される化合物は、特開2000−297068号公報に記載の化合物であり、特開2000−297068号公報に記載のない化合物も、上述の公報に記載の合成方法に準じて製造することができる。
一般式(1)で表される化合物は一般式(2)で表される化合物であることが好ましい。
【0079】
一般式(2)中、Z
2、L
21、L
22、L
23、およびnは一般式(1)におけるZ
1、L
1、L
2、L
3、およびnと同義であり、その好ましい例も同様である。D
21は置換または無置換のアリーレン基を表す。D
22、およびD
23はそれぞれ独立に、置換もしくは無置換のアリール基または置換もしくは無置換のヘテロ環基を表す。
【0080】
D
21が表すアリーレン基としては、D
1が表すアリーレン環基と同義であり、その好ましい例も同様である。D
22、およびD
23が表すアリール基としては、それぞれ独立に、R
a、およびR
bが表すヘテロ環基と同義であり、その好ましい例も同様である。
【0081】
以下に一般式(1)で表される化合物の好ましい具体例を、一般式(3)を用いて示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0083】
一般式(3)中、Z
3は下記表1におけるA−1〜A−12のいずれかを表す。L
31がメチレンを表し、nが0を表す。D
31がB−1〜B−9のいずれかであり、D
32、およびD
33がC−1〜C−16のいずれかを表す。Z
3としては、A−2が好ましく、D
32、およびD
33はC−1、C−2、C−15、C−16から選択されることが好ましく、D
31はB−1またはB−9であることが好ましい。なお、下記表1中「*」は、結合位置を示す。
【0085】
特に好ましいp型有機化合物としては、染料もしくは5個以上の縮環構造を持たない材料(縮環構造を0〜4個、好ましは1〜3個有する材料)が挙げられる。有機薄膜太陽電池で一般的に使用されている顔料系p型有機化合物を用いると、pn界面での暗時電流が増大しやすい傾向になること、結晶性の粒界でのトラップにより光応答が遅くなりがちであることから、固体撮像素子用として用いることが難しい。このため、結晶化しにくい染料系のp型有機化合物、もしくは5個以上の縮環構造を持たない材料が固体撮像素子用に好ましく用いることができる。
一般式(1)で表される化合物の更に好ましい具体例は、一般式(3)における下記表2の置換基、連結基および部分構造の組み合わせであるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0087】
なお、上記表2中のA−1〜A−12、B−1〜B−9、およびC−1〜C−16は上記表1に示したものと同義である。
以下に一般式(1)で表される化合物の特に好ましい具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0089】
(分子量)
一般式(1)で表される化合物は、成膜適性の観点から、分子量が300以上1500以下であることが好ましく、350以上1200以下であることがより好ましく、400以上900以下であることが更に好ましい。分子量が小さすぎる場合では、成膜した光電変換膜の膜厚が揮発により減少してしまい、逆に分子量が大きすぎる場合では蒸着ができず、固体撮像素子を作製できない。
【0090】
(融点)
一般式(1)で表される化合物は、蒸着安定性の観点から、融点が200℃以上であることが好ましく、220℃以上がより好ましく、240℃以上が更に好ましい。融点が低いと蒸着前に融解してしまい、安定に成膜できないことに加え、化合物の分解物が多くなるため、光電変換性能が劣化する。
【0091】
(吸収スペクトル)
一般式(1)で表される化合物の吸収スペクトルのピーク波長は、可視領域の光を幅広く吸収するという観点から450nm以上700nm以下であることが好ましく、480nm以上700nm以下がより好ましく、510nm以上680nm以下であることが更に好ましい。
【0092】
(ピーク波長のモル吸光係数)
一般式(1)で表される化合物は、光を効率よく利用する観点から、モル吸光係数は高ければ高いほどよい。吸収スペクトル(クロロホルム溶液)が、波長400nmから700nmまでの可視領域において、モル吸光係数は20000M
−1cm
−1以上が好ましく、30000M
−1cm
−1以上がより好ましく、40000M
−1cm
−1以上が更に好ましい。
【0093】
上述の光電変換層は一般式(1)で表される化合物以外に更にn型有機化合物を含有することが好ましい。一般式(1)で表される化合物ともに光電変換層22に含まれることがより好ましい。光電変換層に含まれるn型有機化合物をについて説明する。
【0094】
n型有機化合物はフラーレンまたはフラーレン誘導体が好ましい。フラーレンとは、フラーレンC
60、フラーレンC
70、フラーレンC
76、フラーレンC
78、フラーレンC
80、フラーレンC
82、フラーレンC
84、フラーレンC
90、フラーレンC
96、フラーレンC
240、フラーレンC
540、ミックスドフラーレン、フラーレンナノチューブを表し、フラーレン誘導体とはこれらに置換基が付加された化合物のことを表す。置換基としては、アルキル基、アリール基、または複素環基が好ましい。フラーレン誘導体としては、特開2007−123707号公報に記載の化合物が好ましい。
【0095】
また、フラーレンおよびフラーレン誘導体としては、日本化学会編 季刊化学総説No.43(1999)、特開平10−167994号公報、特開平11−255508号公報、特開平11−255509号公報、特開2002−241323号公報、特開2003−196881号公報等に記載の化合物を用いることもできる。フラーレンおよびフラーレン誘導体のうち、フラーレンが好ましく、特に、フラーレンC
60が好ましい。
【0096】
光電変換層においては、上述の一般式(1)で表される化合物と、フラーレンまたはフラーレン誘導体とが混合された状態で形成されるバルクヘテロ構造をなしていることが好ましい。バルクヘテロ構造は光電変換層内でp型有機化合物(一般式(1)で表される化合物)とn型有機化合物が混合、分散している膜(バルクへテロ層)であり、例えば、共蒸着法で形成することができる。へテロ接合構造を含有させることにより、光電変換層の励起子拡散長が短いという欠点を補い、光電変換層の光電変換効率を向上させることができる。なお、バルクへテロ接合構造については、特開2005−303266号公報の[0013]〜[0014]等において詳細に説明されている。
【0097】
バルクへテロ層はフラーレンまたはフラーレン誘導体を体積比で30%〜80%含むことが好ましく、バルクへテロ層がフラーレンまたはフラーレン誘導体を体積比で50%〜80%含むことがより好ましく、65%〜75%含むことが特に好ましい。
【0098】
光電変換層は、乾式成膜法または湿式成膜法により成膜することができる。乾式成膜法の具体的な例としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法,MBE法等の物理気相成長法あるいはプラズマ重合等のCVD法が挙げられる。湿式成膜法としては、キャスト法、スピンコート法、ディッピング法、LB法等が用いられる。好ましくは乾式成膜法であり、真空蒸着法がより好ましい。真空蒸着法により成膜する場合、真空度、蒸着温度等の製造条件は常法に従って設定することができる。
【0099】
光電変換層の厚みは、10nm以上1000nm以下が好ましく、更に好ましくは50nm以上800nm以下、特に好ましくは100nm以上500nm以下である。10nm以上とすることにより、好適な暗電流抑制効果が得られ、1000nm以下とすることにより、好適な光電変換効率が得られる。
【0100】
次に、電子ブロッキング層20について説明する。
電子ブロッキング層20には、電子供与性有機材料を用いることができる。具体的には、低分子材料では、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−(1,1’−ビフェニル)−4,4’−ジアミン(TPD)もしくは4,4’−ビス[N−(ナフチル)−N−フェニル−アミノ]ビフェニル(α−NPD)等の芳香族ジアミン化合物、オキサゾール、オキサジアゾール、トリアゾール、イミダゾール、イミダゾロン、スチルベン誘導体、ピラゾリン誘導体、テトラヒドロイミダゾール、ポリアリールアルカン、ブタジエン、4,4’,4”−トリス(N−(3−メチルフェニル)N−フェニルアミノ)トリフェニルアミン(m−MTDATA)、ポルフィン、テトラフェニルポルフィリン銅、フタロシアニン、銅フタロシアニン、チタニウムフタロシアニンオキサイド等のポリフィリン化合物、トリアゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アニールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、オキサゾール誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、シラザン誘導体、カルバゾール誘導体、ビフルオレン誘導体等を用いることができ、高分子材料では、フェニレンビニレン、フルオレン、カルバゾール、インドール、ピレン、ピロール、ピコリン、チオフェン、アセチレン、ジアセチレン等の重合体またはその誘導体を用いることができる。電子供与性化合物でなくとも、充分な正孔輸送性を有する化合物であれば用いることは可能である。
【0101】
電子ブロッキング層20としては、無機材料を用いることもできる。一般的に、無機材料は有機材料よりも誘電率が大きいため、電子ブロッキング層20に用いた場合に、光電変換層に電圧が多くかかるようになり、光電変換効率を高くすることができる。電子ブロッキング層20となりうる材料としては、酸化カルシウム、酸化クロム、酸化クロム銅、酸化マンガン、酸化コバルト、酸化ニッケル、酸化銅、酸化ガリウム銅、酸化ストロンチウム銅、酸化ニオブ、酸化モリブデン、酸化インジウム銅、酸化インジウム銀、酸化イリジウム等がある。
電子ブロッキング層20のイオン化ポテンシャル(Ip)が5.2eV以上であることが好ましく、5.3eV〜5.8eVがより好ましく、5.4eV〜5.7eVが更に好ましい。
【0102】
本発明は、基本的に以上のように構成されるものである。以上、本発明の固体撮像素子について詳細に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良または変更をしてもよいのはもちろんである。
【実施例】
【0103】
以下、本発明の固体撮像素子について、その効果を具体的に説明する。
本実施例においては、実施例1〜実施例9、比較例1〜比較例5の固体撮像素子を作製し、本発明の効果を確認した。なお、実施例1〜実施例9の固体撮像素子は、
図1に示す構成であり、基板上に形成された、画素電極/耐熱向上層/電子ブロッキング層/光電変換層/対向電極/封止層の構成である。比較例1の固体撮像素子は、実施例1の固体撮像素子に比して耐熱向上層がない点が異なる以外は、実施例1と同じ構成である。比較例2の固体撮像素子は、実施例1の固体撮像素子に比して溝がなく、かつ耐熱向上層がない点が異なる以外は、実施例1と同じ構成である。比較例3〜比較例5の固体撮像素子は、画素電極間で耐熱向上層がつながっている点が異なる以外は、実施例1と同じ構成である。
なお、下記表3において、耐熱向上層の形態の欄の「連続」とは、隣接する画素電極間で耐熱向上層がつながっていることである。「非連続」とは、隣接する画素電極間で耐熱向上層がつながっていないことである。
【0104】
(実施例1)
読み出し回路、電荷蓄積部、コンタクト部、画素電極を形成したSi基板上に、耐熱向上層、電子ブロッキング層、光電変換層、対向電極、封止層を積層した撮像素子である。隣り合う画素電極同士の間に深さ20nmの溝部を形成した。
画素電極は、Si基板上に形成されたSiN絶縁層上に10nmの膜厚で、TiNにより形成されている。溝部は画素電極間のSiN絶縁層に形成する。
耐熱向上層は、化合物1で示される有機化合物とC
60の混合膜(化合物1:C
60=1:1(体積比))を真空中で共蒸着により、10nmの膜厚で形成する。
電子ブロッキング層は化合物1で示される有機化合物を真空蒸着法で50nmの膜厚で形成する。
【0105】
光電変換層は化合物2で示される有機化合物とC
60の混合膜(化合物2:C
60=1:2(体積比))を、真空中で共蒸着により、400nmの膜厚で形成する。
対向電極はITOを高周波マグネトロンスパッタにより、10nmの膜厚で形成する。
封止層は、酸化アルミニウム膜と窒化珪素膜の積層膜を形成した。酸化アルミニウム膜は原子層堆積装置を使用し、100nmの膜厚で形成した。窒化珪素膜はマグネトロンスパッタにより、100nmの膜厚で形成した。
実施例1は、画素電極間に耐熱向上層が存在していない。溝部の角度θ
1は55°であり、電子ブロッキング層の角度θ
2は28°であった。
溝部の角度θ
1と、電子ブロッキング層の角度θ
2の測定は、作製した固体撮像素子から溝部を含む一部を切り取り、SEM像を得た。このSEM像を基に、上述の
図3(a)に示す角度θ
1と
図3(b)に示す角度θ
2を測定した。
【0106】
(実施例2)
実施例2は、実施例1と同様の構成であり、その作製方法も実施例1の固体撮像素子と同様の作製方法である。しかしながら、実施例2の固体撮像素子では、溝部の角度θ
1は60°であり、電子ブロッキング層の角度θ
2は30°であった。
【0107】
(実施例3)
実施例3は、実施例1と同様の構成であり、その作製方法も実施例1の固体撮像素子と同様の作製方法である。しかしながら、実施例3の固体撮像素子では、溝部の角度θ
1は52°であり、電子ブロッキング層の角度θ
2は25°であった。
【0108】
(実施例4)
実施例4は、実施例1に対し、耐熱向上層の厚みが15nmである点以外は、実施例1と同様の構成である。その作製方法も、実施例1に比して、耐熱向上層の厚みを15nmとした点以外は、実施例1の固体撮像素子と同様の作製方法である。実施例4の固体撮像素子では、溝部の角度θ
1は55°であり、電子ブロッキング層の角度θ
2は27°であった。
【0109】
(実施例5)
実施例5は、実施例1に対し、耐熱向上層の厚みが5nmである点以外は、実施例1と同様の構成である。その作製方法も、実施例1に比して、耐熱向上層の厚みを5nmとした点以外は、実施例1の固体撮像素子と同様の作製方法である。実施例5の固体撮像素子では、溝部の角度θ
1は55°であり、電子ブロッキング層の角度θ
2は29°であった。
【0110】
(実施例6)
実施例6は、実施例1に対し、溝の深さが40nmである点以外は、実施例1と同様の構成である。その作製方法も、実施例1に比して、溝部の深さを40nmとした点以外は、実施例1の固体撮像素子と同様の作製方法である。実施例6の固体撮像素子では、溝部の角度θ
1は45°であり、電子ブロッキング層の角度θ
2は45°であった。
【0111】
(実施例7)
実施例7は、実施例1に比して溝の深さを40nmとし、電子ブロッキング層の厚みを70nmとした点以外は、実施例1と同様の構成である。その作製方法も、実施例1に比して、溝部の深さを40nmとし、電子ブロッキング層の厚みを70nmとした点以外は、実施例1の固体撮像素子と同様の作製方法である。実施例7の固体撮像素子では、溝部の角度θ
1は45°であり、電子ブロッキング層の角度θ
2は42°であった。
【0112】
(実施例8)
実施例8は、実施例1に対し、溝の深さを40nmとし、電子ブロッキング層の厚みを70nmとした点以外は、実施例1と同様の構成である。その作製方法も、実施例1に比して、溝部の深さを40nmとし、電子ブロッキング層の厚みを70nmとし、電子ブロッキング層にアニール処理を施した点以外は、実施例1の固体撮像素子と同様の作製方法である。実施例8の固体撮像素子では、溝部の角度θ
1は45°であり、電子ブロッキング層の角度θ
2は10°であった。なお、アニール処理は、温度190℃、10分の条件で行った。
【0113】
(実施例9)
実施例9は、実施例1に対し、溝の深さを30nmとし、電子ブロッキング層の厚みを60nmとした点以外は、実施例1と同様の構成である。その作製方法も、実施例1に比して、溝部の深さを30nmとし、電子ブロッキング層の厚みを60nmとし、電子ブロッキング層にアニール処理を施した点以外は、実施例1の固体撮像素子と同様の作製方法である。実施例9の固体撮像素子では、溝部の角度θ
1は45°であり、電子ブロッキング層の角度θ
2は36°であった。
【0114】
(比較例1)
比較例1は、実施例1に対し、耐熱向上層がない点以外は、実施例1と同様の構成である。その作製方法も、実施例1に比して、耐熱向上層を形成しない点以外は、実施例1の固体撮像素子と同様である。比較例1の固体撮像素子では、溝部の角度θ
1は55°であり、電子ブロッキング層の角度θ
2は32°であった。
【0115】
(比較例2)
比較例2は、実施例1に対し、溝部がなく、かつ耐熱向上層がない点以外は、実施例1と同様の構成である。その作製方法も、実施例1に比して、溝部を形成せず、かつ耐熱向上層を形成しない点以外は、実施例1の固体撮像素子と同様の作製方法である。比較例2の固体撮像素子では、電子ブロッキング層の角度θ
2は10°であった。
【0116】
(比較例3)
比較例3は、実施例1に対し、溝部の深さが10nmであり、耐熱向上層の厚みが20nmであり、画素電極間で耐熱向上層がつながっている点以外は、実施例1と同様の構成である。その作製方法も、実施例1に比して、溝部の深さを10nmとし、耐熱向上層の厚みを20nmとした点以外は、実施例1の固体撮像素子と同様である。
比較例3の固体撮像素子では、溝部の角度θ
1は55°であり、電子ブロッキング層の角度θ
2は36°であった。
【0117】
(比較例4)
比較例4は、実施例1に対し、画素電極間で耐熱向上層がつながっている点以外は、実施例1と同様の構成である。その作製方法も、実施例1に比して、耐熱向上層を画素電極間で連続するように形成する点以外は、実施例1の固体撮像素子と同様の作製方法である。比較例4の固体撮像素子では、溝部の角度θ
1は45°であり、電子ブロッキング層の角度θ
2は26°であった。
【0118】
(比較例5)
比較例5は、実施例1に対し、電子ブロッキング層の厚みを60nmとし、画素電極間で耐熱向上層がつながっている点以外は、実施例1と同様の構成である。その作製方法も、実施例1に比して、耐熱向上層を画素電極間で連続するように形成し、電子ブロッキング層の厚みを60nmとした点以外は、実施例1の固体撮像素子と同様の作製方法である。比較例5の固体撮像素子では、溝部の角度θ
1は48°であり、電子ブロッキング層の角度θ
2は27°であった。
【0119】
【化5】
【0120】
【化6】
【0121】
作製した各固体撮像素子の対向電極に、電界強度2.0×10
5V/cmの電界を印加して、光を照射しない環境での暗電流と、画像の滲みの有無を、各固体撮像素子作成後、熱処理無しで評価した評価結果と、熱処理後の評価結果を下記表3に示す。
画像の滲みは、隣接画素間でキャリアをやりとりするために、画像が滲む現象である(解像度低下)。画像の滲みの有無は、解像度チャートを撮影し、これによって得られる画像の滲みの有無を判定することにより評価した。
熱処理は、固体撮像素子を温度240℃のホットプレート上に2分間保持することで行った。作製した固体撮像素子の一部について、固体撮像素子を温度235℃のホットプレート上に2分間保持することで熱処理を行った。下記表3の「熱処理後(235℃、2分)」の欄において「−」は熱処理を行っていないことを示す。なお、下記表3において、各「暗電流(相対値)」は実施例1の初期状態を1とした数値である。
【0122】
【表3】
【0123】
実施例1〜9は、いずれも画像の滲みが無く、熱処理後の性能の劣化も起こらなかった。
また、耐熱向上層も厚みを厚くすると、光電変換層に同じ電界強度を印加するのに必要な外部電圧が高くなるため、必要以上の膜厚にしないほうがよい。耐熱向上層の厚みは30nm以下が好ましい。
【0124】
一方、耐熱向上層の無い比較例1は、熱処理後に暗電流が増加した。このように耐熱性が低い。また、比較例1は電子ブロッキング層の凹部の角度θ
2が30°を超えるために、画素電極間上にある電子ブロッキング層、光電変換層に粗密な領域が形成される。光電変換層上に形成した対向電極が、粗密部に侵入し、電界を印加した際に、侵入した対向電極の一部に電界が集中し、暗電流が増加してしまう。
比較例2は、溝部がなく、かつ耐熱向上層がないため、熱処理後に暗電流が増加した。
比較例3〜比較例5は、画素電極間で耐熱向上層がつながっているため、隣接する画素電極間で電荷のやり取りが行われ、熱処理前から暗電流が増加した。また、隣接する画素電極間で電荷のやり取りにより、撮影した解像度チャートで滲みが発生した。
【0125】
実施例1、実施例4、実施例5、比較例1を比較すると、耐熱向上層の厚みが厚い方が耐熱性が向上する。しかしながら、膜厚が厚いと電力消費が上がるという点で、耐熱向上層の厚みは必要最低限にした方がよい。具体的には、耐熱向上層の厚みとしては5nmあれば十分な耐熱性を得ることができる。
実施例1、実施例2、実施例3、比較例4、比較例5を比較すると、溝部の深さが20nmで、耐熱向上層の厚みが10nmの場合、溝部の角度θ
1を50°以上とすることで耐熱向上層を非連続にできる。比較例4、5のように溝部の角度θ
1が50°未満では耐熱向上層は連続である。
【0126】
実施例6、実施例7、実施例8、実施例9、比較例4を比較すると、溝部の角度θ
1が50°未満でも、溝部の深さを深くすることで耐熱向上層を非連続にできる。この場合、電子ブロッキング層の凹部の角度θ
2が増加し、暗電流が増加する。実施例8ではアニール処理を施すことで凹部の角度θ
2を小さくしている。また、電子ブロッキング層の凹部の角度θ
2を小さくするには、電子ブロッキング層の膜厚を厚くする必要があるが、膜厚が厚すぎると同じ電界強度を与えるために高い外部電圧を与える必要が生じるので、電子ブロッキング層の膜厚は必要最低限にした方がよい。
【0127】
実施例1〜実施例9を比較すると、
図8にも示すが、電子ブロッキング層の凹部の角度θ
2が30°を超えると暗電流が増加する。このことから、電子ブロッキング層の凹部の角度θ
2は30°以下であることが好ましい。