特許第6231858号(P6231858)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6231858
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】極細導電性複合繊維及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   D01F 8/12 20060101AFI20171106BHJP
   D04B 1/16 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   D01F8/12 A
   D04B1/16
【請求項の数】11
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2013-234565(P2013-234565)
(22)【出願日】2013年11月13日
(65)【公開番号】特開2015-94048(P2015-94048A)
(43)【公開日】2015年5月18日
【審査請求日】2016年6月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001085
【氏名又は名称】株式会社クラレ
(72)【発明者】
【氏名】中塚 均
(72)【発明者】
【氏名】田中 和彦
(72)【発明者】
【氏名】古賀 宣広
(72)【発明者】
【氏名】手島 宏一
【審査官】 春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平01−280042(JP,A)
【文献】 特開2011−236530(JP,A)
【文献】 特公昭59−030419(JP,B2)
【文献】 特開平05−179510(JP,A)
【文献】 特開2012−072515(JP,A)
【文献】 特開昭57−082526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D01F 8/00−8/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性熱可塑性ポリマー(B)からなる鞘成分と、導電性ポリマー(C)からなる芯成分を有する鞘芯型複合繊維であって、単繊維繊度が0.05〜1.00dtexであり、かつ繊維横断面の長軸の長さをa、短軸の長さをbとしたときに1.8≧a/b≧1.2を満たす扁平断面であることを特徴とする、極細導電性複合繊維。
【請求項2】
前記導電性ポリマー(C)の含有量が1〜50重量%であることを特徴とする、請求項1に記載の極細導電性複合繊維。
【請求項3】
前記導電性ポリマー(C)がカーボンブラックを含有するポリマーであることを特徴とする、請求項1または2に記載の極細導電性複合繊維。
【請求項4】
前記導電性ポリマー(C)が熱可塑性ポリアミドをベースポリマーとすることを特徴とする、請求項1 〜3のいずれか1項に記載の極細導電性複合繊維。
【請求項5】
前記結晶性熱可塑性ポリマー(B)が、ジカルボン酸成分の60モル%以上が芳香族ジカルボン酸成分であるジカルボン酸成分と、ジアミン成分の60モル%以上が炭素数6〜12の脂肪族アルキレンジアミンであるジアミン成分とからなる、熱可塑性ポリアミドであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載の極細導電性複合繊維。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の極細導電性複合繊維を得るための海島型複合繊維であって、少なくとも2成分の結晶性熱可塑性ポリマー(A、B)からなる海島型複合繊維において、該複合繊維の島成分を形成するポリマー(B)に導電性ポリマー(C)が含有され、少なくとも3成分から構成されたことを特徴とする、海島型複合繊維。
【請求項7】
前記結晶性熱可塑性ポリマー(A)がアルカリ熱水溶液、または酸熱水溶液に対して易溶解性を示すポリマーからなることを特徴とする、請求項6に記載の海島型複合繊維。
【請求項8】
少なくとも2成分の結晶性熱可塑性ポリマー(A、B)からなる海島型複合繊維において、該複合繊維の島成分を形成するポリマー(B)に導電性ポリマー(C)を含有させ、海成分を形成するポリマー(A)を減量することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の極細導電性複合繊維の製造方法。
【請求項9】
前記結晶性熱可塑性ポリマー(A、B)の溶融粘度が下記式を満たし、かつ前記海島型複合繊維における海成分(A)の比率が95〜20重量%であることを特徴とする、請求項8に記載の極細導電性複合繊維の製造方法。
ηA<30×ηB
ηA;海成分(A)の290℃におけるゼロせん断応力下の溶融粘度
ηB;島成分(B)の290℃におけるゼロせん断応力下の溶融粘度
【請求項10】
請求項1〜のいずれか1項に記載の複合繊維を少なくとも一部に含有する繊維集合体。
【請求項11】
請求項1〜のいずれか1項に記載の複合繊維を少なくとも一部に含有する繊維製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、除電性能に優れた極細導電性複合繊維に関する。詳しくは、該極細導電性複合繊維を使用したワイパーにおいて、実使用時の発塵性が抑えられ、拭き取り性能に優れ、かつ導電性能が長期に亘り保持することができる極細導電性複合繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスクや磁気テープ等の精密電子機器部品や自動車のボディーでは、それらの表面にできる油膜や塵等の汚れの有無が品質・性能に重大な影響を及ぼすため、これら部品の製造工程には汚れの拭き取り工程が設けられて、製品の清浄処理が行われるようになっている。
【0003】
従来、このような拭き取り工程の拭き取り手段としては、例えば極細繊維を用いた布帛をスリットしたワイピングテープを使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。この極細繊維を用いた布帛からなるワイピングテープは、通常繊度の繊維からなるワイピングテープに比べて被処理面への拭き残しが少ないため、より高い拭き取り性能を発揮することができるものであった。しかしながら、拭き取り時の摩擦により発生する静電気によって塵・埃等が再付着する問題があった。
【0004】
この問題を解決するために、制電加工剤を塗布する制電加工によって静電気を抑制できるものがあるが、低湿度等の環境や、洗濯を含めた耐久性に問題があるため安定な拭き取り性能が得られなかった。
【0005】
さらに、ワイパー中に除電性能に優れた導電性繊維を使用する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)が、導電性繊維の繊度が大きいため、拭き取り時のキズや損傷等精密材料への品質に影響するため使用できなかった。
【0006】
導電性繊維として、例えば導電性を有さない繊維の表面に金属メッキを施して導電性を付与したものや導電性カーボンブラックを樹脂やゴム類に分散させ、これを繊維表面にコートすることによって導電性被覆層を形成せしめたもの等がある。しかし、これらは製造工程が複雑で技術的に困難な方法を必要とするものであったり、導電性繊維を実用に供するための準備段階、例えば製織編のための精練工程での薬品処理や実使用における摩耗や繰返し洗濯といった外的作用によって導電性が容易に低下し実用の域を脱したりするという問題があつた。
【0007】
また、他の導電性繊維としてスチール繊維のような金属繊維が挙げられるが、コストが高いこと、製織、染仕上工程でのトラブルの原因となること、あるいは拭き取り時に脱落が生じやすくトラブルの原因となること等が課題である。
【0008】
さらに、導電性カーボンブラックを均一に分散させたポリマーを繊維化して導電性繊維を得る方法が提案されているが、導電性カーボンブラックを多量に含有するために繊維の製造が難しく、収率も悪く、コスト高であり、かつ繊維物性が著しく低下し、細繊度の導電性繊維を製造することが困難であった。
【0009】
さらにまた別の導電性繊維として、例えば芯鞘型複合繊維の芯成分ポリマーに導電性カーボンブラックを含有させ、それを通常の繊維形成性ポリマーからなる鞘で被覆する方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。また、導電性カーボンブラックを含む芯成分のかなりの部分が鞘成分を貫通して繊維の表面に露出している導電性繊維も提案されている(例えば、特許文献3参照。)。
【0010】
特許文献1の場合、繊維物性を保つため芯成分を50%以下にする必要があり、そのため非導電性の鞘成分が芯成分を厚く被覆し、芯成分中のカーボンブラック含有量を多くしないと充分な性能が発揮されないため細繊度のものはできないという課題があった。特許文献2は、特許文献1の前記課題を解消しようとするものであるが、カーボンブラックを含む芯成分が表面に露出している割合が大きいため、細繊度にすることができなかった。
【0011】
導電性ポリマー層と非導電性ポリマー層を組み合わせた複合繊維によって、細繊度の導電性繊維を製造することは可能であるが、分割後に導電性ポリマー層は単独の細繊度となり、低強度や実用時に導電性カーボンが剥離する等、実用できる細繊度のものは得られなかった。
【0012】
一方、特許文献4で開示される極細導電性繊維の製造方法では、3成分系の海島型複合繊維の繊維化後に海成分を溶解除去して、島成分のみからなる極細繊維としている。この場合、海成分の溶解後の極細繊維が丸断面であるために、ワイパーとして用いた場合に高い拭き取り性能を得ることができないという課題があった。
【0013】
このように、長期耐久性に優れた除電性能と高い拭き取り性能が得られるワイパーやそれに用いることのできる細繊度の導電性繊維は従来提案されていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平11−050350号公報
【特許文献2】米国特許第3,803,453号公報
【特許文献3】特公昭53−044579号公報
【特許文献4】特開昭57−143525号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、拭き取り後の清浄度をこれまで以上に向上することができるワイパーに資する極細導電性複合繊維を提供することにあり、特に、多くの極細単繊維から構成されるワイパーに対して、長期安定な除電効果と同時に優れた拭き取り性能を付与できる、細繊度の導電性複合繊維を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者等は上記課題を解決すべく鋭意検討を行った結果、結晶性熱可塑性ポリマーを用い、その一成分に導電性ポリマーを含有し特定の繊度と繊維断面を有する複合繊維を用いたワイパーが、上記目的が達成されることを見出し、本発明を完成した。
【0017】
すなわち、本発明の第1の構成は、結晶性熱可塑性ポリマー(B)からなる鞘成分と、導電性ポリマー(C)からなる芯成分を有する鞘芯型複合繊維であって、単繊維繊度が0.05〜1.00dtexであり、かつ繊維横断面の長軸の長さをa、短軸の長さをbとしたときに1.8≧a/b≧1.2を満たす扁平断面であることを特徴とする、極細導電性複合繊維である。
【0018】
前記極細導電性複合繊維は、前記導電性ポリマー(C)の含有量が1〜50重量%であることが好ましい。
【0019】
また、前記導電性ポリマー(C)がカーボンブラックを含有するポリマーであることが好ましい。
【0020】
さらに、前記導電性ポリマー(C)が熱可塑性ポリアミドをベースポリマーとすることが好ましい。
【0021】
さらにまた、前記結晶性熱可塑性ポリマー(B)が、ジカルボン酸成分の60モル%以上が芳香族ジカルボン酸成分であるジカルボン酸成分と、ジアミン成分の60モル%以上が炭素数6〜12の脂肪族アルキレンジアミンであるジアミン成分とからなる、熱可塑性ポリアミドであることが好ましい。
【0022】
本発明の第2の構成は、前記極細導電性複合繊維を得るための海島型複合繊維であって、少なくとも2成分の結晶性熱可塑性ポリマー(A、B)からなる海島型複合繊維において、該複合繊維の島成分を形成するポリマー(B)に導電性ポリマー(C)が含有され、少なくとも3成分から構成されたことを特徴とする、海島型複合繊維である。
【0023】
前記海島型複合繊維は、前記結晶性熱可塑性ポリマー(A)がアルカリ熱水溶液、または酸熱水溶液に対して易溶解性を示すポリマーからなることが好ましい。
【0024】
本発明の第3の構成は、少なくとも2成分の結晶性熱可塑性ポリマー(A、B)からなる海島型複合繊維において、該複合繊維の島成分を形成するポリマー(B)に導電性ポリマー(C)を含有させ、海成分を形成するポリマー(A)を減量することを特徴とする、前記極細導電性複合繊維の製造方法である。
【0025】
また、前記製造方法は、前記結晶性熱可塑性ポリマー(A、B)の溶融粘度が下記式を満たし、かつ前記海島型複合繊維における海成分(A)の比率が95〜20重量%であることが好ましい。
ηA<30×ηB
ηA;海成分(A)の290℃におけるゼロせん断応力下の溶融粘度
ηB;島成分(B)の290℃におけるゼロせん断応力下の溶融粘度
【0026】
本発明の第4の構成は、前記極細導電性複合繊維を少なくとも一部に含有する繊維集合体である。
【0027】
本発明の第5の構成は、前記極細導電性複合繊維を少なくとも一部に含有する繊維製品である。
【発明の効果】
【0028】
本発明の極細導電性複合繊維は、実使用において耐久性に優れた除電性能と優れた拭き取り性能を有する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明における海島型複合繊維の断面に関する、一実施形態の模式図。
図2】本発明とは異なる海島型複合繊維の断面に関する、一形態の模式図。
図3】本発明とは異なる鞘芯型複合繊維の断面に関する、一形態の模式図。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本発明の極細導電性複合繊維は、結晶性熱可塑性ポリマー(B)からなる鞘成分と、導電性ポリマー(C)からなる芯成分を有する鞘芯型複合繊維であることが重要である。
【0031】
まず、芯成分の導電性ポリマー(C)に関して、以下に詳細を説明する。
本発明において、導電性ポリマー(C)は、ベースポリマーと導電性化合物から構成される。該導電性化合物としては、カーボンブラック、アセチレンブラック、オイルファーネスブラック、サーマルブラック、チャネルブラック、ケッチェンブラック等が例示されるが、本発明においてはカーボンブラックを用いることが好ましく、後述する導電性カーボンブラックを用いることがより好ましい。
【0032】
本発明に用いるカーボンブラックは、10−3〜10Ω・cmの固有電気抵抗を有するものがよい。カーボンブラックが完全に粒子状分散をしている場合は一般に導電性が不良であり、ストラクチャーと呼ばれる連鎖構造を形成している場合には、導電性能が向上して導電性カーボンブラックと称されるものになる。したがって、導電性カーボンブラックによってポリマーを導電化するに当たっては、このストラクチャーを破壊しないでカーボンブラックを分散させることが肝要となる。
【0033】
一般に、通常の延伸を行うとストラクチャーが破壊され易いこととなるため、本発明では、特許第4902652号(段落0056、及び0057)において開示されている特殊な延伸方法を使用することが好ましい。該延伸方法は、繊維が延伸されているにもかかわらず、ストラクチャーがほとんど破壊されないという特長を有している。すなわち、従来の一般的な延伸方法はローラー間の速度差により無理に延伸する方法であるため、繊維が無理に延伸されストラクチャーが切断されることとなるが、本発明のように、ローラー間で延伸を行う方法ではなく、繊維の自由延伸に委ねるような方法の場合には、無理な張力が繊維にかからないため、ストラクチャーが切断され難くなる。
【0034】
そして、導電性カーボンブラック含有複合体の電気伝導メカニズムとしては、カーボンブラック連鎖の接触によるものとトンネル効果によるものが考えられているが、前者の方が主と考えられている。したがって、カーボンブラックの連鎖は長い方が、また高密度でポリマー中にカーボンブラックが存在する方が、接触確率が大きくなり高導電性となる。連鎖を長くするためには、導電性ポリマーを結晶化させ、かつ非晶部が分子運動できるようなルーズな構造にすると、カーボンブラックが非晶部に集中して非晶部のカーボン濃度が高くなり、導電性能が高くなる。
【0035】
本発明において、導電性ポリマー(C)に含まれる導電性化合物は、好ましくは15〜50重量%、より好ましくは20〜40重量%含有される。導電性化合物の含有量が15重量%より少ない場合には目的とする導電性能が得られず、充分な除電効果は発揮されないおそれがある。一方、50重量%を越える量を含有させても導電性のより一層の向上は認められず、むしろポリマーの流動性が著しく低下して紡糸性が極端に悪化するので好ましくない。
【0036】
続けて、本発明の導電性ポリマー(C)を構成するベースポリマーについて説明する。該ベースポリマーに用いる樹脂としては、200℃以上の融点を有することが実用耐久性の点で好ましく、そのような樹脂として熱可塑性ポリアミド、あるいは熱可塑性ポリエステルであることが好ましい。特に、導電性化合物を多量に添加でき導電性能をより高められる点から、熱可塑性ポリアミドを用いることがより好ましく、具体的にはナイロン12、ナイロン11、ナイロン6、ナイロン66、ナイロンエラストマー、半芳香族ポリアミド等を挙げることができる。
【0037】
一方、熱可塑性ポリエステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸等のジカルボン酸成分と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族ジオール;ビスフェノールAまたはビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物等の芳香族ジオール;シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等のジオール成分を用いて形成された繊維形成性ポリエステルを挙げることができる。なかでも汎用ポリエステルであるエチレンテレフタレート単位あるいはブチレンテレフタレート単位を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリエステルが好ましい。
【0038】
特に、ポリブチレンテレフタレート系の樹脂、すなわちブチレンテレフタレート単位を80モル%以上含有するポリエステル系の樹脂が導電性化合物を練り込みやすく、且つ結晶化しやすいことから高い導電性能が得られるので好ましい。ポリエチレンテレフタレート系の樹脂も使用可能であるが、導電性化合物を多量に添加すると溶融紡糸の際の紡糸性が低下することとなり、紡糸性を高めるために共重合ポリエチレンテレフタレートを用いるということも考えられるが、共重合ポリエチレンテレフタレートを使用すると一般に結晶性が低下し、導電性能が低下することとなる。以上のことから、結晶を形成しやすいポリエステル系の樹脂であるポリブチレンテレフタレート系樹脂が特に優れていることとなる。
【0039】
次に、本発明の極細導電性複合繊維の鞘成分を形成する、結晶性熱可塑性ポリマー(B)に関して、以下に詳細を説明する。
本発明の結晶性熱可塑性ポリマー(B)は、良好な工程性を維持することと導電性ポリマー(C)との界面剥離を生じさせず、長期耐久性能を維持するための重要な役割を担っている。ポリマーとしては、融点150℃以上が好ましく、好ましい例としては、熱可塑性ポリアミドや熱可塑性ポリエステル、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン等のポリオレフィン及びその共重合体、エチレン単位を25〜70モル%含有する変性ポリビニルアルコールを使用することができる。特に融点が210℃以上の結晶性熱可塑性ポリマーが耐久性能の点でより好ましく使用される。曳糸性に劣るポリマーは、本発明の極細導電性複合繊維の鞘成分としては基本的に不適である。
【0040】
前述したように、本発明において、結晶性熱可塑性ポリマー(B)として熱可塑性ポリアミドを用いることが好ましく、4,6−ナイロン、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、6,12−ナイロン、11−ナイロン、12−ナイロン等の脂肪族ポリアミド、芳香族ポリアミドが挙げられる。より好ましいものとしては、6−ナイロン、6,6−ナイロン、6,12−ナイロン、12−ナイロンが挙げられるが、特に、ジカルボン酸成分の60モル%以上が芳香族ジカルボン酸成分であるジカルボン酸成分と、ジアミン成分の60モル%以上が炭素数6〜12の脂肪族アルキレンジアミンであるジアミン成分とからなる熱可塑性ポリアミドが、低吸湿性であり導電性能の安定性につながる点から好ましい。
【0041】
一方、熱可塑性ポリエステルとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタリン−2,6−ジカルボン酸、4,4’−ジカルボキシジフェニル、5−ナトリウムスルホイソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸;アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸等のジカルボン酸成分と、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の脂肪族ジオール;ビスフェノールAまたはビスフェノールSのエチレンオキサイド付加物等の芳香族ジオ−ル;シクロヘキサンジメタノール等の脂環族ジオール等のジオール成分を用いて形成された繊維形成性ポリエステルを挙げることができる。なかでも汎用ポリエステルであるエチレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位を80モル%以上、特に90モル%以上含有するポリエステルを挙げることができ、少量の第3成分を含む変性ポリエステルも使用することが可能である。さらに、これらに少量の添加剤、蛍光増白剤、安定剤等を含んでいてもよい。これらのポリエステルは、繊維化する際の溶融粘度特性が良好であり、さらに繊維物性、耐熱性が優れたものとなる。なかでも、ポリエチレンテレフタレート系のポリエステルが繊維化工程性、繊維物性、耐久性の点で好ましい。特に、融点が240℃以上、280℃以下のポリエステルが好ましい。
【0042】
本発明においては、結晶性熱可塑性ポリマー(B)のSP値(φB)と導電性ポリマー(C)を構成するベースポリマーのSP値(φC)が0≦|φB−φC|≦1.1を満足するポリマーを選択することが好ましい。この条件を満足する組み合わせのものは、両ポリマーの接着性が良好で、界面剥離が生じ難く、繊維物性の点でも優れている。|φB−φC|>1.1の場合には、界面剥離が生じ易く、実用における耐久性は得られにくい。
【0043】
また、本発明において、前記導電性ポリマー(C)の含有量は、断面形成安定性、導電性能安定性、及び繊維化工程性の点から1〜50重量%であることが好ましく、5〜40重量%であることがより好ましい。導電性ポリマー(C)が1重量%未満では導電性能、及びワイパーとして用いた際の拭き取り性能が不十分となり、50重量%を超える場合には断面形成の不安定化、繊維化工程性不良を引き起こすおそれがあるため好ましくない。
【0044】
前述したように、本発明の極細導電性複合繊維は、前記結晶性熱可塑性ポリマー(B)と前記導電性ポリマー(C)を有する鞘芯型複合繊維であることが必要であるが、最も重要なことは、該複合繊維が細繊度であり、かつ扁平断面を有することである。
【0045】
すなわち、前記極細導電性複合繊維は、単繊維繊度が0.05〜1.00dtexであることが重要である。0.05dtex未満では強度が不十分で損傷により性能が低下し、1.00dtexを超えるとワイパーとして用いた際に拭き取り性能不良となるおそれがある。好ましくは0.08〜0.8dtexであり、より好ましくは0.1〜0.5dtexである。
【0046】
さらに、前記極細導電性複合繊維は扁平断面を有することが重要であり、横断面の長軸の長さをa、短軸の長さをbとしたときに、a/b≧1.2を満たす繊維断面である必要がある。扁平断面とすることによって、非衣料用途であるワイピング性においても接触面積の増加とエッジ効果により、優れた拭き取り性能が発現する。好ましくはa/b≧1.4であり、より好ましくはa/b≧1.6を満たす扁平断面である。なお、本発明において、扁平断面の長軸の長さaと短軸の長さbは、繊維断面の拡大写真を用いて繊維断面形状に沿って切り取り、該断面の長軸、及び短軸の長さをそれぞれ測定し、その比を簡単に求めることができる。
【0047】
本発明の極細導電性複合繊維の製造方法は、前述した細繊度と扁平断面を有する繊維が得られれば特に限定されないが、例えば、前記極細導電性複合繊維を得るために、少なくとも2成分の結晶性熱可塑性ポリマー(A、B)からなる海島型複合繊維において、該複合繊維の島成分を形成するポリマー(B)に導電性ポリマー(C)が含有され、少なくとも3成分から構成されたことを特徴とする、海島型複合繊維とすることが好ましい。すなわち、少なくとも2成分の結晶性熱可塑性ポリマー(A、B)からなる海島型複合繊維において、該複合繊維の島成分を形成するポリマー(B)に導電性ポリマー(C)を含有させ、海成分を形成するポリマー(A)を減量することにより、前記極細導電性複合繊維を好適に得ることができる。ここで、該海島型複合繊維の島成分が鞘芯型であり、結晶性熱可塑性ポリマー(B)が該島成分の鞘成分、導電性ポリマー(C)が該島成分の芯成分となる必要がある。
【0048】
本発明の海島型複合繊維に用いる結晶性熱可塑性ポリマー(A)は該複合繊維において海成分を形成し、良好な工程性を維持することと容易に減量できることが重要である。そのため、結晶性熱可塑性ポリマー(A)は、島成分の鞘成分を形成するポリマー(B)と異なるポリマーを用いて複合繊維を構成し、アルカリ熱水溶液や酸熱水溶液に容易に溶解するものであれば良く、特にアルカリ溶解速度が速いポリエステルを用いることが好ましい。例えば、5−ナトリウムスルホイソフタル酸を1〜5モル%、ポリアルキレングリコールを5〜30重量%用い、従来用いられているジオール成分及びジカルボン酸成分を共重合してなる共重合ポリエステル、あるいはポリ乳酸を採用することができる。
【0049】
さらに、前記ポリマー(A)としては、アルカリ溶解速度の速いポリエステルの代りに、水溶性熱可塑性ポリビニルアルコールを用いても本発明の繊維を得ることができる。用いるポリビニルアルコール重合体は、粘度平均重合度が200〜500、ケン化度が90〜99.99モル%、融点が160〜230℃のポリビニルアルコールが好ましく、ホモポリマーであっても共重合体であってもよいが、溶融紡糸性、水溶性、繊維物性の観点からは、エチレン、プロピレン等炭素数が4以下のα-オレフィン等で0.1〜20モル%変成された共重合ポリビニルアルコールを用いることが好ましい。
【0050】
本発明の海島型複合繊維を構成するポリマー(A)のSP値(φA)とポリマー(B)のSP値(φB)は、0.5<|ΦB−ΦA |<10を満足することが好ましい。0.5以下の場合、狙いとする海島型複合繊維の易減量性が得られず、つまりは狙いとする細繊度の導電性複合繊維が得られないおそれがあり好ましくない。10以上の場合は、安定な繊維化工程性が得られない可能性がある。
【0051】
また、本発明の海島型複合繊維は、島成分の芯成分を形成する導電性ポリマー(C)、島成分の鞘成分を形成するポリマー(B)、及び海成分を形成するポリマー(A)の複合比率が、(C):(B):(A)=0.9:89.1:10〜25:25:50の重量比率であることが好ましい。導電性ポリマー(C)の比率が0.9未満では安定した導電性能が得られず、25より大きい場合は該海島型複合繊維の安定な断面形成性が得られない場合が多い。また、島成分の鞘成分となるポリマー(B)の比率が25未満では、該海島型複合繊維から得た極細導電性複合繊維をワイパーに用いた際に時の外的作用に対する耐久性が不十分となる場合があり、89.1より大きい場合は繊維断面の安定な連続性が得られない場合がある。さらに、ポリマー(A)の比率が10未満になると安定した複合構造として紡糸することが困難となる場合があり、特に繊維断面において導電性ポリマー(C)とポリマー(B)が安定に連続性をもつ海島型複合繊維を得るのが難しくなる。前記ポリマー(A)の比率が50を越えると、該複合繊維の紡糸性及び延伸後の繊維物性が極端に低下し実用性が失われてしまう場合がある。前記3成分の複合比率は、8:72:20〜18:42:40の範囲であることがより好ましい。
【0052】
本発明の海島型複合繊維において、用いられる結晶性熱可塑性ポリマー(A、B)中に、平均粒径0.01〜1μmの無機微粒子が0.05〜10重量%の割合で含有されていることが、紡糸性の点で好ましい。無機微粒子の含有量が0.05重量%未満の場合には、得られる極細導電性複合繊維にループ、毛羽、繊度斑等が生じ易くなり、10重量%を超えると工程通過性が悪く断糸の原因となる。より好ましくは、0.2〜5重量%の割合で無機微粒子を含有させるとよい。
【0053】
前記無機微粒子の種類としては、樹脂に対して実質的に劣化作用をもたず、それ自体で安定性に優れるものであればいずれも使用できる。かかる無機微粒子の代表例としては、シリカ、アルミナ、酸化チタン、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等を挙げることができ、これらは単独で使用しても2種以上併用してもよい。
【0054】
また、前記無機微粒子の平均粒径は、前述したように0.01〜1μmであることが好ましく、より好ましくは0.02〜0.6μmである。平均粒径が0.01μm未満であると、延伸時の糸条にかかる張力等にわずかな変動が生じただけでも得られる繊維にループや毛羽、繊度斑等が発生するようになる。一方、平均粒径が1μmを越えると繊維の紡糸性、延伸性の低下をもたらし、紡糸断糸、延伸捲付等を発生し易くなる。なお、ここでいう平均粒径とは遠心沈降法を用いて求めた値をいう。
【0055】
前記無機微粒子の添加方法については特に制限されず、ポリマーの重合時から溶融紡出直前までの任意の段階で樹脂中に無機微粒子が均一に混合されているように添加、混合すればよい。
【0056】
また本発明においては、ポリマー(A)、ポリマー(B)を形成する熱可塑性ポリマー中に、必要に応じて、蛍光増白剤、安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、帯電防止剤、難燃剤、着色剤及びその他の添加剤の1種または2種以上を含有してもよい。
【0057】
本発明の極細導電性複合繊維の製造方法の好適な例として、前記海島型複合繊維において海成分を形成するポリマー(A)を減量する方法を前述したが、前記結晶性熱可塑性ポリマー(A、B)の溶融粘度が下記式を満たし、かつ前記海島型複合繊維における海成分(A)の比率が95〜20重量%であることが、紡糸性の点からより好ましい。
ηA<30×ηB
ηA;海成分(A)の290℃におけるゼロせん断応力下の溶融粘度
ηB;島成分(B)の290℃におけるゼロせん断応力下の溶融粘度
【0058】
一方、本発明の海島型複合繊維の製造方法は特に限定されず、例えば、通常の海島型複合繊維を製造するために使用される溶融紡糸装置を用い、複合紡糸を行い、その後延伸する方式で製造してもよいし、高速紡糸を行い、延伸工程を省略する方式で製造してもよい。ただし、該海島型複合繊維の島成分が、結晶性熱可塑性ポリマー(B)により導電性ポリマー(C)が被覆されて鞘芯型となり、かつ扁平形状となるように、紡糸装置内での分配板における導電性ポリマー(C)用の導入孔と鞘成分ポリマー(B)用の導入孔の位置関係を調節したり、両ポリマーの複合比率を調整したりすることが好ましい。
【0059】
本発明の極細導電性複合繊維は、各種繊維集合体として用いることが可能である。本発明における繊維集合体とは、本発明の極細導電性複合繊維単独よりなる編織布、不織布は言うに及ばず、該極細導電性複合繊維を一部使用してなる編織布や不織布、例えば通常の天然繊維、化学繊維、合成繊維との交編織布、あるいは混紡糸としての編織布、不織布等であっても良い。ただし、編織布あるいは不織布に占める該極細導電性複合繊維の割合は、1重量%以上、特に3重量%以上である事が本発明の十分な効果が得られる点で好ましい。また編成、製織あるいは不織布とした後に、必要に応じて針布起毛等による起毛を行ったものであっても本発明には何ら差しつかえない。
【0060】
本発明の極細導電性複合繊維は、各種繊維製品として用いることが可能である。具体的にはワイパー、人工皮革といった繊維製品に好適に用いることができる。
【0061】
以下に本発明について実施例等により具体的に説明するが、本発明はそれにより何ら限定されない。以下の例において、海島型複合繊維の紡糸性、極細導電性複合繊維の電気抵抗値の測定、得られた編物(ワイピングクロス)の拭き取り性、及び帯電電荷密度は以下のようにして測定、または評価した。
【0062】
[海島型複合繊維の紡糸性]
海島型複合繊維を20kg紡糸し、紡糸時の断糸の有無を調べると共に得られた複合繊維における毛羽の発生の有無を目視により観察して、下記に示す評価基準にしたがって評価した。
(紡糸性の評価基準)
◎:紡糸時に断糸が何ら発生せず、しかも得られた海島型複合繊維には毛羽が全く発生しておらず、紡糸性が極めて良好である。
○:紡糸時に断糸が発生せず、そして得られた海島型複合繊維には毛羽がわずかに発生していたが、紡糸性がほぼ良好である。
△:100kgを紡糸したときに、断糸が3回まで発生し、紡糸性が不良である。
×:100kgを紡糸したときに、断糸が3回よりも多く発生し、紡糸性が極めて不良である。
【0063】
[極細導電性複合繊維の電気抵抗値R Ω/cm・ヤーン]
極細導電性複合繊維を試料として、電圧電流計法により、平行クリップ電極にセットされた試料に、直流電圧25〜500Vを印可し、その電圧とその時の試料に流れる電流値からオームの法則により求めた。なお、本発明で規定される電気抵抗値は100V印可時で求めたものである。
【0064】
[ワイピングクロスの拭き取り性]
極細導電性複合繊維を含有したワイピングクロスを試験布として用いて、下記汚染物質を付着させたスライドグラスを摩擦試験機(JIS l 0823に準拠した試験機)の平面型試験台に仮接着し、試験布を装着した摩擦子により拭き取りを実施した。拭き取り荷重は200g、拭き取り幅は20mm、拭き取り応力は100g/mmの条件で拭き取りを数回行い、拭き取り前後の透過光率を測定し、下記により算出した。
拭き取り率(%)=[(Wn−W0 )/(Wb−W0 )]×100
Wb:スライドグラスの380nmまたは580nmにおける透過率
Wn:拭き取り後の透過率
0 :拭き取り前の透過率
(汚染物質)
a.ニコチン
燻蒸箱中にスライドグラス(20枚)を水平に設置し、タバコ(ピ−ス)約20本にて燻蒸し、ニコチンを主体とする汚染物質を付着させた。可視光線透過率は20%以下になるように調整した。
b.潤滑油
スライドグラスに枠を設置し、市販の潤滑油を30cmの距離から3秒間スプレーして付着させた。
c.糊
スライドグラスにコーンスターチ10g/lよりなる糊(0.5g/cm2 )を塗布して付着させた。
【0065】
[ワイピングクロスの帯電電荷密度 μC/m
極細導電性複合繊維を含有したワイピングクロスを用いて、労働省産業安全研究所発行の静電気安全指針のRIISTR78−1によって行った(22℃、30%RHの部屋に24時間放置後測定)。洗濯は、浴比1:30、合成洗剤(弱アルカリ性)を標準使用量添加して、40℃で5分間洗濯し、ついで浴比1:30の水で2回溜め濯ぎを行い、5分間脱水を行う過程を250回繰り返し、初期の帯電電荷密度と比較した。
【0066】
[実施例1]
導電性ポリマー(C)として導電性カーボンブラック(吸油量;115cc/100g)を35重量%含有したナイロン6を、島成分の鞘成分を形成するポリマー(B)として平均粒子径0.4μmの酸化チタンを0.5重量%含有するナイロン6を、海成分を形成するポリマー(A)として分子量2000のポリエチレングリコール8重量%と5−ナトリウムスルホイソフタル酸を5モル%共重合した極限粘度0.52のポリエチレンテレフタレートを用い、(C):(B):(A)=14:56:30(重量比)の複合比率とし、図1に示すような10島の海島断面で複合紡糸し、その後延伸を実施し、56dtex/12fの海島型複合繊維を得た。この海島型複合繊維をアルカリ減量し、単繊維繊度0.33dtexの極細導電性複合繊維を得た。
【0067】
次に、ナイロン6(宇部興産社製、1013BK)と極限粘度0.70のポリエチレンテレフタレートを用い、別々の押出機で溶融押出し、複合比率がナイロン6:ポリエチレンテレフタレート=33:67(重量比)となるようにそれぞれギアポンプで計量した後、紡糸パック内に供給し、口金温度290℃で吐出し、速度1000m/分で巻き取った。ついで倍率2.9倍で75℃のローラヒーターで延伸を施し、130℃のプレートヒーターで熱セットして84dtex/24fの延伸糸を得た。糸条の断面は、縦割り分割型断面(11層交互貼り合わせ型)構造とした。続いて、この延伸糸に仮撚数3390T/M、温度170℃で仮撚を施し、分割処理を行った。得られたポリエステル及びポリアミドからなる捲縮加工糸の単繊維繊度は約0.32dtexであった。この極細繊維を用いて筒編地を作成し、リラックス、水洗、乾燥、プレセット、微アルカリ減量(5重量%減量)、水洗処理を施して乾燥し、布帛を得た。この布帛に上述の極細導電性複合繊維を30重量%混入させて、ワイピングクロスとしての性能評価を行った。結果を表2に示す。
【0068】
[実施例2〜5]
導電性ポリマー(C)、島成分の鞘成分を形成するポリマー(B)と海成分を形成するポリマー(A)それぞれのポリマーの種類、及びその複合比率と断面を形成する紡糸ノズル部品を変更し、表1に示す種類、数値とする以外は実施例1と同様にして、海島型複合繊維、それから得られる極細導電性複合繊維、さらにワイピングクロスを作製し、性能評価に供した。結果を表2に示す。
【0069】
[比較例1]
海島型複合繊維の断面を形成する紡糸ノズル部品を変更し、表1に示すような断面とする以外は実施例1と同様にして、海島型複合繊維、それから得られる扁平断面でない極細導電性複合繊維、さらにワイピングクロスを作製し、性能評価に供した。結果を表2に示す。得られた極細導電性繊維が丸断面であるため、拭き取り性能として不十分の結果であった。
【0070】
[比較例2]
紡糸ノズル部品を変更し、海島型複合繊維を経ずに導電性ポリマー成分(C)を芯成分、ポリマー(B)を鞘成分とする鞘芯型複合繊維を紡糸し、表1に示すような単繊維繊度と断面とする以外は実施例1と同様にして、繊度が比較的大きく、かつ偏平断面でない導電性複合繊維、及びそれを用いてワイピングクロスを作製し、性能評価に供した。結果を表2に示す。得られた繊維が太いため、拭き取り性能が不十分の結果であった。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【符号の説明】
【0073】
1 導電性ポリマー(C)
2 結晶性熱可塑性ポリマー(B)
3 結晶性熱可塑性ポリマー(A)
図1
図2
図3