【文献】
地域における安心安全のためのRFIDの利活用に関する調査検討,日本,総務省 信越総合通信局,2011年 3月,p.34-38,URL,http://www.soumu.go.jp/main_content/000274747.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、実施形態の位置特定システム1のシステム構成を示すシステム構成図である。
端末2−1〜2−n(nは1以上の整数)は、位置特定システム1が位置を特定する対象となる端末である。端末2−1〜2−nは、端末の所持者によって携帯される。端末2−1〜2−nは、アクティブタグ21及びパッシブタグ22を備え基地局3と通信する。アクティブタグ21は、基地局3に定期的にビーコン信号を送信する。また、端末2−1〜2−nは、所持者に各種情報を伝達するための出力装置や、所持者が操作を入力するための入力装置、端末の状態を取得するセンサ等の各種デバイスを備える。
図1の例では、端末2−1〜2−nは、出力装置としてスピーカ23及びLED(Light Emitting Diode)24、入力装置としてスイッチ25、センサとして振動センサ26を備える。端末2−1〜2−nは、これらのデバイスに関する情報(以下、「デバイス情報」という。)と、識別情報などの自装置に関する情報とを端末情報としてビーコン信号に含める。パッシブタグ22は、基地局3の要求に応じてパッシブタグ信号を送信する。以下、説明を簡単にするため、特に区別しない限り端末2−1〜2−nを端末2と記載する。なお、端末2は、電池27が供給する電力によって動作する。
【0022】
位置特定システム1は、基地局3、ネットワーク4及びサーバ5を備える。基地局3は、アクティブタグリーダ31及びパッシブタグリーダ32を備える。アクティブタグリーダ31は、端末2のアクティブタグ21と無線通信する。アクティブタグリーダ31は、端末2のアクティブタグ21から送信されるビーコン信号を受信する。パッシブタグリーダ32は、端末2のパッシブタグ22と無線通信する。パッシブタグリーダ32は、パッシブタグ22にパッシブタグ信号の送信を要求する。パッシブタグリーダ32は、パッシブタグ22から送信されるパッシブタグ信号を受信する。また、基地局3は、ネットワーク4を介してサーバ5と通信する。基地局3は、ビーコン信号から端末情報を取得し、取得した端末情報をサーバ5に送信する。また、基地局3は、自装置及び端末2の動作に関する指示を示す端末指示情報をサーバ5から取得する。アクティブタグリーダ31は、端末指示情報に基づいて無線通信による送信信号(以下、「端末指示信号」という。)を生成する。基地局3は、端末指示信号を端末2のアクティブタグ21に送信する。
【0023】
なお、基地局3のパッシブタグリーダ32は、基地局3から切り離されて動作することが可能である。パッシブタグリーダ32は、パッシブタグ22との通信に用いる通信インターフェースの他に無線通信インターフェースを備え、基地局3から切り離されて動作する場合においても、基地局3本体又はサーバ5にパッシブタグ信号を送信することが可能である。この場合、パッシブタグリーダ32と基地局3本体又はサーバ5との間の無線通信には、携帯電話回線や無線LAN(Local Area Network)、Bluetooth(登録商標)等が用いられてもよい。
【0024】
ネットワーク4は、基地局3とサーバ5との間のネットワークである。ネットワーク4は、例えばインターネットやLAN、WAN(Wide Area Network)等のネットワークである。
サーバ5は、基地局3から送信されるパッシブタグ信号に基づいて端末2の位置を特定する。また、サーバ5は、端末情報に基づいて端末2の状態を判断し、端末2の所持者の救助要否や、救助の優先順位等を判定する。
【0025】
具体的には、サーバ5は、災害等の緊急事態が発生すると、端末2の位置の特定及び上記判断に必要な情報を取得するために、基地局3に端末指示情報を送信する。基地局3は端末指示情報から端末指示信号を生成し、生成した端末指示信号を端末2に送信する。端末2は、端末指示情報によって指示された動作を行う。端末2は、指示された動作を行うと、端末情報を取得して基地局3に送信する。このとき、端末情報に含まれるデバイス情報には、端末2が実行した動作の実行結果や、動作の実行によって取得された情報などが含まれる。端末情報は基地局3によってサーバ5に中継される。サーバ5は、端末情報に基づいて端末2の位置の特定や、端末2の所持者の救助要否、救助の優先順位等の判定を行う。以下では、上記のような緊急事態が発生した状態を緊急時と呼び、通常の状態を平常時と呼ぶ。
【0026】
次に、端末2の機能部について補足する。スピーカ23は、音声を出力する装置である。LED24は、発光ダイオードである。LED24は、発光機能を有する装置であれば、LED以外の装置を用いて構成されてもよい。スイッチ25は、端末2に操作を入力するための入力装置である。例えば、スイッチ25は、押下による入力を受け付ける入力ボタンである。本実施形態では、スイッチ25は赤色ボタン及び緑色ボタンの2つの入力ボタンを用いて構成される。振動センサ26は、自装置の振動を検知するセンサである。
【0027】
パッシブタグ22は、パッシブタグリーダによって供給される電力で動作する無線通信タグである。具体的には、パッシブタグ22は、パッシブタグリーダが送信する電波を電磁誘導等によって電力に変換して動作する。そのためパッシブタグ22は、アクティブタグ21と異なり、自身の動作に電池等の電源を必要としない。パッシブタグ22は、基地局3のパッシブタグリーダ32と通信する。パッシブタグ22には、パッシブタグ22の識別情報であるパッシブタグIDが予め記録される。パッシブタグ22は、パッシブタグIDが含まれるパッシブタグ信号を基地局3の要求に応じてパッシブタグリーダ32に送信する。
【0028】
一般に、パッシブタグは、数メートルの範囲での無線通信が可能である。パッシブタグ及びパッシブタグリーダには、13.56MHz帯等で電磁誘導方式により通信を行うものと、920MHz帯や2.4GHz帯で電波方式により通信を行うものとがある。実施形態に用いられるパッシブタグ22及びパッシブタグリーダ32には、いずれの方式によるものが用いられてもよい。また、本実施形態において、パッシブタグ信号に含まれる情報として必要な情報はパッシブタグIDのみであり、パッシブタグ信号のフォーマットも特別な様式に限定されない。そのため、実施形態のパッシブタグ22及びパッシブタグリーダ32には、特別な仕様を持たない一般的なパッシブタグ及びリーダを用いることができる。
【0029】
図2は、ビーコン信号のフォーマットの具体例を示す図である。
図2は、ビーコン信号に含まれるデータの項目と、その項目のデータが占めるビット数を示す。
図2の例では、ビーコン信号は、バージョン、シーケンス、状態通知、モード、端末ID及びペイロードの項目を有する。各項目のビット数は、それぞれ8、24、24、8、96及び96である。バージョンは、端末2のファームウェアのバージョンを示す情報である。シーケンスは、端末2が送信するビーコン信号のシーケンス番号を表す。状態通知は、電池27の電圧や、ビーコン信号の送信間隔及び送信出力、温度などの端末2の状態を示す情報である。モードは端末2の動作モードを示す情報である。端末2の動作モードには平時モードと緊急モードとがある。平時モードは、平常時における動作モードである。緊急モードは、災害等の発生により端末2の位置特定を行うときの動作モードである。端末IDは、端末の識別情報である。ペイロードはビーコン信号によって送信される情報の実データ部分であり、ペイロードには用途に応じた任意の情報を含めることができる。本実施形態では、ペイロードにデバイス情報が格納される。
【0030】
図3は、実施形態の位置特定システム1の平常時における動作の概要を示すシーケンス図である。
まず、端末2のアクティブタグ21は、端末情報を含むビーコン信号を基地局3のアクティブタグリーダ31に送信する(ステップS101)。基地局3は、受信したビーコン信号から端末情報を取得してサーバ5に送信する(ステップS102)。そして、基地局3は、ビーコン信号を受信したことを通知する応答信号を端末2に送信する(ステップS103)。端末2は、応答信号を受信すると、次にビーコン信号を送信するまで処理を待機する。前記待機の後、端末2は、ステップS101と同様にビーコン信号を基地局3に送信する(ステップS104)。基地局3は、ステップS102と同様に端末情報をサーバ5に送信する(ステップS105)。基地局3は、ステップS103と同様に応答信号を端末2に送信する(ステップS106)。以降、端末2、基地局3及びサーバ5は、同様の処理を繰り返し実行する。
【0031】
なお、平常時における位置特定システム1では、上記のビーコン信号の送受信が定期的に行われる。本実施形態では、平常時におけるビーコン信号の送受信は、図中の『第1のビーコン信号送信間隔』の周期で行われる。そのため、例えば、端末2のスイッチ25が第1のビーコン信号送信間隔の間に押下された場合(ステップS107)、スイッチ25が押下されたことを示す端末情報は、ステップS104のタイミングで送信されるビーコン信号により送信される。このように、ビーコン信号の送受信が定期的に実行されることによって、端末2の電力消費が抑制される。
なお、平常時においてサーバ5が端末指示情報を生成する場合、基地局3は、端末指示情報を応答信号に含めて端末2に送信してもよい。
【0032】
図4は、実施形態の位置特定システム1の緊急時における動作の概要を示すシーケンス図である。
緊急時における位置特定システム1では、
図3の平常時と同様に定期的にビーコン信号の送受信が行われる。さらに、緊急時における位置特定システム1では、定期的な送受信に加えて、サーバ5の指示又は端末2の各種デバイスの動作を契機としてビーコン信号の送受信が行われる。
まず、サーバ5は、端末指示情報を生成する(ステップS201)。サーバ5は生成した端末指示情報を基地局3に送信する(ステップS202)。例えば
図4では、サーバ5は、スピーカ23に音声出力を行わせる端末指示情報を生成する。なお、
図4における端末指示情報は一例であり、サーバ5は、スピーカ23以外のデバイスを動作させる端末指示情報を生成してもよい。例えば、サーバ5は、LED24を点灯させる端末指示情報を生成してもよい。サーバ5は、端末2の位置の特定や、端末2の所持者の救助要否、救助の優先順位等の判定に必要な情報に応じて端末指示情報を生成する。
【0033】
基地局3は、端末指示情報を取得する。基地局3のアクティブタグリーダ31は、端末指示情報を無線信号に変換し端末指示信号を生成する。アクティブタグリーダ31は、生成した端末指示信号を端末2のアクティブタグ21に無線送信する(ステップS203)。端末2は端末指示信号を受信する。端末2は、端末指示信号から端末指示情報を取得し、端末指示情報が示す動作を自装置の各種デバイスに行わせる。
図4では、端末2はスピーカ23に音声出力を行わせる(ステップS204)。端末2は、各種デバイスを動作させると、端末情報を取得し、端末情報を含むビーコン信号を生成する。端末2は、ビーコン信号を基地局3に送信する(ステップS205)。基地局3は、ビーコン信号を受信する。基地局3は、受信したビーコン信号から端末情報を取得し、サーバ5に送信する(ステップS206)。
図4では、スピーカ23の音声出力結果を示す端末情報がビーコン信号に含められる。基地局3は、サーバ5に端末情報を送信すると、端末2に応答信号を送信する(ステップS207)。このように、緊急時の位置特定システム1では、サーバ5の指示に応じてビーコン信号の送受信が行われる。
【0034】
また、端末2において各種デバイスの操作が行われた場合、端末2は各種デバイスの操作に関する情報を端末情報としてビーコン信号を生成する。
図4は、端末2においてスイッチ25が押下された場合(ステップS208)を示す。端末2は、スイッチ押下の操作に関する情報を端末情報としてビーコン信号を生成する。端末2は、ビーコン信号を基地局3に送信する(ステップS209)。基地局3は、ビーコン信号を受信する。基地局3は、受信したビーコン信号から端末情報を取得し、サーバ5に送信する(ステップS210)。基地局3は、サーバ5に端末情報を送信すると、端末2に応答信号を送信する(ステップS211)。このように、緊急時の位置特定システム1では、端末2の各種デバイスの操作を契機としてビーコン信号の送受信が行われる。
【0035】
サーバ5は、端末情報に基づいて端末2の状態を判定し、端末2の所持者の救助要否を判断する端末状態判定処理を行う(ステップS212)。端末2は、ステップS209においてビーコン信号を送信した後、『第2のビーコン信号送信間隔』を待機した後、定期的なビーコン信号の送信を行う(ステップS213)。基地局3は、端末2から送信されたビーコン信号を受信する。基地局3は、受信したビーコン信号から端末情報を取得し、サーバ5に送信する(ステップS214)。基地局3は、サーバ5に端末情報を送信すると、端末2に応答信号を送信する(ステップS215)。第2のビーコン信号送信間隔は、第1のビーコン信号送信間隔よりも短い間隔である。
このように、緊急時の位置特定システム1では、ビーコン信号の送受信は少なくとも『第2のビーコン信号送信間隔』の周期で行われる。このとき、端末2は緊急モードで動作することによって、端末指示信号の受信処理と、ビーコン信号の送信処理とを常時実行することが可能となる。端末2の動作モードは、サーバ5によって制御される。次に、端末2の動作モードが平時モードから緊急モードに変更される処理の流れを説明する。
【0036】
図5は、端末2の動作モードが緊急モードに変更される処理の流れを示すシーケンス図である。
図5のシーケンスの開始時点では、端末2は、平時モードで動作している。端末2、基地局3及びサーバ5は、
図3と同様に定期的にビーコン信号の送受信を行っている(ステップS301〜S303)。そして、災害等の緊急事態が発生したことがサーバ5に通知される。サーバ5は、緊急事態が発生したことの通知を受ける(ステップS304)と、端末2を緊急モードに移行させるためのモード移行指示情報を生成する(ステップS305)。サーバ5は、生成したモード移行指示情報を基地局3に送信する(ステップS306)。基地局3は、モード移行指示情報を受信すると、ステップS301の次に行われるビーコン信号の送信を待機する。端末2は、ステップS301に続いて定期的なビーコン信号の送信を行う(ステップS307)。基地局3は、ビーコン信号を受信し、ステップS303と同様に端末情報をサーバ5に送信する(ステップS308)。
【0037】
基地局3は、受信したビーコン信号に対する応答信号にモード移行指示情報を含め、端末2に送信する(ステップS309)。端末2は、応答信号を受信し、応答信号からモード移行指示情報を取得する。端末2は、モード移行指示情報に基づいて自装置の動作モードを緊急モードに変更する(ステップS310)。端末2は、動作モードを変更すると、動作モードの変更が完了したことを示す端末情報を含むビーコン信号を送信する(ステップS311)。具体的には、端末2は、ビーコン信号に含まれる動作モードの項目に緊急モードを示す値を設定してビーコン信号を送信する。基地局3は、受信したビーコン信号から端末情報を取得し、サーバ5に送信する(ステップS312)。基地局3は、ビーコン信号に対する応答信号を端末2に送信する(ステップS313)。基地局3及びサーバ5は、取得した端末情報から端末2の動作モードが緊急モードに変更されたことを判断する(ステップS314及びS315)。
【0038】
このように動作モードが緊急モードに変更されることによって、端末2は、緊急時において定期的な送信タイミングを待つことなくビーコン信号を送信することが可能となる。また、動作モードが緊急モードに変更されることによって、端末2は、端末指示信号を常時受信することが可能となり、応答信号の受信を待つことなく端末指示情報を取得することが可能となる。基地局3は端末2が緊急モードに変更されたことを記憶して、ビーコン信号を待たずに端末指示信号を送信する等の緊急モードに応じた動作をする。
【0039】
図6は、端末2の動作モードが平時モードに変更される処理の流れを示すシーケンス図である。
図6のシーケンスの開始時点では、端末2は、緊急モードで動作している。端末2、基地局3及びサーバ5は、
図4と同様に定期的にビーコン信号の送受信を行っている(ステップS401〜S403)。そして、端末状態判定処理において、端末2の所持者が救助対象外として判断された場合、サーバ5は、当該端末2の動作モードを平時モードに移行させるための端末指示情報を生成する(ステップS404)。サーバ5は、生成したモード移行指示情報を基地局3に送信する(ステップS405)。基地局3は、モード移行指示情報を含む端末指示信号を生成する。基地局3は、端末指示信号を端末2に送信する(ステップS406)。
【0040】
端末2は、端末指示信号からモード移行指示情報を取得する。端末2は、モード移行指示情報に基づいて自装置の動作モードを平時モードに変更する(ステップS407)。端末2は、動作モードを変更すると、動作モードの変更が完了したことを示す端末情報を含むビーコン信号を送信する(ステップS408)。具体的には、端末2は、ビーコン信号に含まれる動作モードの項目に平時モードを示す値を設定してビーコン信号を送信する。基地局3は、受信したビーコン信号から端末情報を取得し、サーバ5に送信する(ステップS409)。基地局3は、ビーコン信号に対する応答信号を端末2に送信する(ステップS410)。基地局3及びサーバ5は、取得した端末情報から端末2の動作モードが平時モードに変更されたことを判断する(ステップS411及びS412)。
【0041】
図7は、応答信号及び端末指示信号の具体例を示す図である。
図7は応答信号及び端末指示信号のフォーマットの例である。
図7は、応答信号及び端末指示信号に含まれるデータの項目と、その項目のデータが占めるビット数を示す。
図7の例では、応答信号及び端末指示信号は、端末ID、基地局ID、状態通知、コマンド及びペイロードの値を有する。そして、それぞれの項目のビット数は、64、64、8、8及び8である。端末IDは、応答信号及び端末指示信号の送信先となる端末2の識別情報である。基地局IDは、応答信号及び端末指示信号を送信した基地局3の識別情報である。状態通知は、基地局IDが示す基地局3の状態に関する情報である。コマンドは、応答信号及び端末指示信号によって端末2に通知される指示の種別を表す情報である。ペイロードは、コマンドの値が示す指示の詳細を示す情報である。
【0042】
図8は、応答信号及び端末指示信号のコマンド及びペイロードの具体例を示す図である。
図8の例は、応答信号及び端末指示信号が端末2に対する指示を含まない場合のコマンドの値が“0x00”、応答信号及び端末指示信号がモード移行情報を含む場合のコマンドの値が“0x01”、応答信号及び端末指示信号が端末指示情報を含む場合のコマンドの値が“0x02”で表されることを示している。さらに
図8の例は、コマンドの値が“0x01”で、モード移行情報が平時モードへの移行を指示する情報である場合、ペイロードに“0x00”の値が設定され、緊急モードへの移行を指示する情報である場合、ペイロードに“0x01”の値が設定されることを示している。また
図8の例は、端末指示情報がLED24の点灯を指示する情報である場合、その指示はペイロード中の1〜2ビット目の値によって示されることを表している。同様に、スピーカ23に対する音声出力の指示は、ペイロード中の3〜5ビット目の値によって示されることを表している。さらにモード移行情報を指示する場合、ペイロード中の6ビット目の値によって示されることを表している。
【0043】
図9は、アクティブタグ21の機能構成を示す機能ブロック図である。
アクティブタグ21は、送信部211、受信部212、デバイス制御部213、モード管理部214、ビーコン信号生成部215及びタイミング制御部216を備える。
送信部211は、ビーコン信号を基地局3のアクティブタグリーダ31に送信する。具体的には、送信部211は、ビーコン信号生成部215から出力されるビーコン信号を変調し、変調波をアナログ信号に変換して無線送信する。
【0044】
受信部212は、基地局3のアクティブタグリーダ31から応答信号及び端末指示信号を受信する。具体的には、受信部212は、受信した変調波を復調する。受信部212は、復調前、または復調後においてデジタル信号に変換された応答信号または端末指示情報から、モード移行指示情報または端末指示情報を取得する。平常時においては、受信部212は、タイミング制御部216から通知されたタイミングで受信処理を行う。送信部211が第1のビーコン信号送信間隔で行った送信処理に続いて受信処理を行うタイミングが通知される。一方、緊急時においては、受信部212は、常時受信処理が可能な状態となる。受信部212は、モード移行指示情報をモード管理部214に出力する。受信部212は、端末指示情報をデバイス制御部213に出力する。受信部212は、応答信号を受信したことを示す応答信号受信情報をタイミング制御部に出力する。
【0045】
デバイス制御部213は、端末2の各種デバイス(
図1では、スピーカ23、LED24、スイッチ25及び振動センサ26)の動作を制御する。デバイス制御部213は、端末指示情報に基づいてこれらの各種デバイスを動作させるとともに、各種デバイスの動作に関する情報をデバイス情報としてビーコン信号生成部215に出力する。例えばデバイス情報には、スピーカ23及びLED24の動作結果や、スイッチ25への入力操作、振動センサ26によって計測結果などを示す情報が含まれる。
【0046】
モード管理部214は、端末2の動作モードを管理する。具体的には、モード管理部214は、モード移行指示情報に基づいて自装置の動作モードを変更する。モード管理部214は、変更後の動作モードを示すモード情報を、ビーコン信号生成部215及びタイミング制御部216に出力する。
【0047】
ビーコン信号生成部215は、モード情報及びデバイス情報に基づいて端末情報を生成する。ビーコン信号生成部215は、
図2の例に示されたフォーマットに基づいて端末情報からビーコン信号を生成する。ビーコン信号生成部215は、平常時ならば、タイミング制御部216から出力されるビーコン信号の送信タイミングに基づいて、生成したビーコン信号を送信部211に出力する。ビーコン信号生成部215は、緊急時ならば、デバイス情報の受信に基づいて、またはタイミング制御部216から出力されるビーコン信号の送信タイミングに基づいて、生成したビーコン信号を送信部211に出力する。
タイミング制御部216は、応答信号受信情報と、モード情報とに基づいて、ビーコン信号の送信タイミングを制御する。具体的には、タイミング制御部216は、平時モードにおいては第1のビーコン信号送信間隔で送信タイミングを生成し、緊急モードにおいては第2のビーコン信号送信間隔で送信タイミングを生成する。タイミング制御部216は、生成したビーコン信号の送信タイミングをビーコン信号生成部215に通知する。また、タイミング制御部216は、平時モードにおいてはビーコン信号生成部215への送信タイミングの通知に続けて、受信部212に受信タイミングを通知する。
【0048】
図10は、サーバ5の機能構成を示す機能ブロック図である。
サーバ5は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)やメモリや補助記憶装置などを備え、サーバプログラムを実行する。サーバ5は、サーバプログラムの実行によって通信部51、表示部52、外部状況取得部53、端末情報記憶部54、蓄積情報記憶部55、端末制御部56、状態判定部57及び位置特定部58を備える装置として機能する。なお、サーバ5の各機能の全て又は一部は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やPLD(Programmable Logic Device)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等のハードウェアを用いて実現されてもよい。サーバプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録されてもよい。コンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、例えばフレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置である。サーバプログラムは、電気通信回線を介して送信されてもよい。
【0049】
通信部51は、LAN等の通信インターフェースを用いて構成される。通信部51は、ネットワーク4を介して基地局3との間で通信する。また、通信部51は、パッシブタグリーダ32が基地局3から切り離されて動作する場合、パッシブタグリーダ32との間で通信する。通信部51は、パッシブタグ信号に含まれるパッシブタグIDを位置特定部58に出力する。また、通信部51は、位置特定部58から通知されるパッシブタグID通知が示すパッシブタグIDをパッシブタグリーダ32に送信する。
表示部52は、CRT(Cathode Ray Tube)ディスプレイや液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ等のディスプレイ装置を用いて構成される。表示部52は、端末2の状態判定や位置特定に関する情報を、端末ごとに表示する。なお、表示部52は、上記のディスプレイ装置を接続するインターフェースとして構成されてもよい。
【0050】
外部状況取得部53は、外部状況を示す情報を取得する。例えば、外部状況取得部53は、災害発生に関する情報(以下、「災害情報」という。)を取得し、災害が発生したか否かを判断する。例えば、外部状況取得部53は、LAN等の通信インターフェースを備え、外部のシステムから災害情報を取得する。外部状況取得部53は、例えば地震や火山の噴火、がけ崩れ等の災害が発生したことを示す災害情報を取得する。また、例えば、外部状況取得部53は、自装置周辺に設置された振動センサ等の観測装置から、計測値が所定の閾値を超えたことを示す災害情報を取得する。このようにして取得される災害情報に基づいて、外部状況取得部53は災害が発生したか否かを判断する。外部状況取得部53は、災害が発生したことを判断すると、災害発生の通知を端末制御部56に通知する。
なお、外部状況取得部53は、端末の位置特定や状態判定を要する事象であれば、災害以外の事象に関する情報を取得するように構成されてもよい。例えば、外部状況取得部53は、行方不明者の捜索に関する情報を取得してもよい。例えば、外部状況取得部53は、徘徊者の発生状況を示す捜索情報を取得する。この場合、外部状況取得部53は、捜索情報に基づいて、徘徊者が発生したか否かを判断する。外部状況取得部53は、徘徊者が発生したことを判断すると、徘徊者が発生したことの通知を端末制御部56に通知する。
【0051】
端末情報記憶部54は、端末情報テーブル541を記憶する。端末情報テーブル541は、位置特定の対象となる端末2の情報を記憶するテーブルである。
図11は、端末情報テーブル541の具体例を示す図である。
端末情報テーブル541は、端末IDごとに端末情報レコードを有する。端末情報レコードは、端末ID及びパッシブタグIDの各値を有する。端末IDは端末2の識別情報である。パッシブタグIDは、端末2が備えるパッシブタグ22の識別情報である。端末情報レコードは、位置特定システム1の管理者によって予め端末情報テーブル541に登録される。
【0052】
図10の説明に戻る。
蓄積情報記憶部55は、蓄積情報テーブル551を記憶する。蓄積情報テーブル551は、端末2ごとに端末情報や状態判定の結果、位置特定に関する情報などを蓄積するテーブルである。本実施形態における蓄積情報テーブル551の例を次に示す。
【0053】
図12は、蓄積情報テーブル551の具体例を示す図である。
蓄積情報テーブル551は、端末IDごとに蓄積情報レコードを有する。蓄積情報レコードは、端末ID、時刻情報、端末制御情報、端末情報及び状態情報の各値を有する。端末IDは端末2の識別情報である。時刻情報は、蓄積情報レコードが登録された時刻を表す。端末制御情報は端末2に通知された端末指示情報やモード移行指示情報である。端末情報は、ビーコン信号に含まれる端末2に関する情報である。状態情報は、端末情報に基づいて判定された端末2の状態、例えば救助の要否、位置特定の有無、または救助対象優先度を表す。蓄積情報レコードは、端末制御部56、状態判定部57及び位置特定部58によって登録又は更新される。
【0054】
図10の説明に戻る。
端末制御部56は、端末2の動作を制御するための情報を生成する。具体的には、端末制御部56は、外部状況取得部53から災害発生の通知を受けると、端末2の動作モードを緊急モードに移行させるためのモード移行指示情報を生成する。また、端末制御部56は、端末2の所持者の状態判定に必要な情報を取得するために、端末2に所定の動作を行わせる端末指示情報を生成する。また、端末制御部56は、救助対象外と判断された端末2の動作モードを平常モードに移行させるためのモード移行指示情報を生成する。端末制御部56は、生成した端末指示情報及びモード移行指示情報を基地局3に送信する。端末制御部56は、通知した端末制御情報を蓄積情報記憶部55に出力する。
【0055】
状態判定部57は、基地局3から送信された端末情報に基づいて、端末2の所持者の状態判定を行う。状態判定部57は、判定結果を端末制御部56に出力する。また、状態判定部57は、判定結果と端末情報とに基づいて蓄積情報レコードを生成し、蓄積情報テーブル551に登録する。また、端末2が救助対象として判定された場合、状態判定部57は、当該端末2の端末IDを位置特定部58に出力する。状態判定部57は、取得した端末情報と判定した状態情報を蓄積情報記憶部55に出力する。
【0056】
位置特定部58は、救助対象として判定された端末2の位置を特定する。具体的には、位置特定部58は、状態判定部57から救助対象として判定された端末2の端末IDを取得する。位置特定部58は、端末情報テーブル541を参照し、状態判定部57から取得した端末IDを値に持つ端末情報レコードを選択する。位置特定部58は、選択した端末情報レコードからパッシブタグIDの値を取得する。端末情報テーブル541から取得したパッシブタグIDが、通信部51によって受信されたパッシブタグ信号に含まれるパッシブタグIDと等しい場合、位置特定部58は、パッシブタグ信号を受信したパッシブタグリーダ32の付近に当該端末2が位置することを判断する。位置特定部58は、端末2の位置が特定されたことを示す情報(位置特定情報)を蓄積情報記憶部55に出力する。
【0057】
図13は、アクティブタグリーダ31の機能構成を示す機能ブロック図である。
アクティブタグリーダ31は、送信部311、受信部312、サーバ通信部313、モード情報記憶部314、送信信号生成部315、モード情報管理部316及びタイミング制御部317を備える。
送信部311は、端末指示信号又は応答信号を端末2のアクティブタグ21に送信する。具体的には、送信部311は、送信信号生成部315から出力される応答信号又は端末指示信号を変調し、変調波をアナログ信号に変換して無線送信する。送信部311は、端末指示信号又は応答信号の送信をブロードキャストにより送信してもよいし、送信先の端末2のグループを指定するマルチキャストにより送信してもよいし、送信先の端末2を指定するユニキャストにより送信してもよい。
【0058】
受信部312は、端末2のアクティブタグ21からビーコン信号を受信する。具体的には、受信部312は、受信したビーコン信号の変調波を復調する。受信部312は、復調前、または復調後に得られるデジタル信号のビーコン信号から端末情報を取得する。受信部312は、端末情報に含まれるモード情報をモード情報管理部316に出力する。また、受信部312は、端末情報をサーバ通信部313に出力する。
サーバ通信部313は、LAN等の通信インターフェースを用いて構成される。サーバ通信部313は、受信部312から出力された端末情報をサーバ5に送信する。また、サーバ通信部313は、サーバ5から送信されたモード移行指示情報及び端末指示情報を送信信号生成部315に出力する。
【0059】
モード情報記憶部314は、動作モード管理テーブル3141を記憶する。動作モード管理テーブル3141は、端末2ごとの動作モードを記憶するテーブルである。
【0060】
図14は、動作モード管理テーブル3141の具体例を示す図である。
動作モード管理テーブル3141は、端末IDごとに動作モード管理レコードを有する。動作モード管理レコードは、端末ID及びモード情報の各値を有する。端末IDは、端末2の識別情報である。モード情報は、端末2の動作モードを表す。モード情報の値には、平時モードを表す値である“平時”又は緊急モードを表す値である“緊急”のいずれかの値が登録される。動作モード管理テーブル3141には、モード情報の値に“平時”を持つ動作モード管理レコードが予め登録される。動作モード管理テーブル3141は、モード情報管理部316によってモード情報の値が更新される。
【0061】
図13の説明に戻る。
送信信号生成部315は、端末2のアクティブタグ21に送信する送信信号を生成する。具体的には、送信信号生成部315は、送信信号として応答信号又は端末指示信号を生成する。送信信号生成部315は、サーバ通信部313から出力されるモード移行指示情報を含む応答信号を生成する。また、送信信号生成部315は、サーバ通信部313から出力される端末指示情報およびモード移行指示情報を含む端末指示信号を生成する。送信信号生成部315は、生成した応答信号又は端末指示信号を送信部311に出力する。なお、送信信号生成部315は、タイミング制御部317によって通知されたタイミングで応答信号を生成する。
【0062】
モード情報管理部316は、端末2の動作モードを管理する。具体的には、モード情報管理部316は、受信部312から通知される端末情報から送信元の端末2の動作モードを取得する。モード情報管理部316は、動作モード管理テーブル3141を参照し、送信元の端末2に対応する動作モード管理レコードのモード情報の値を更新する。
タイミング制御部317は、送信信号生成部315が応答信号を生成するタイミングを制御する。具体的には、タイミング制御部317は、応答信号を生成するタイミングを、受信部312からビーコン信号の受信の通知を受けたタイミングで通知する。
【0063】
図15は、実施形態の位置特定システム1における処理の流れを示すシーケンス図である。
まず、サーバ5の外部状況取得部53は、災害情報に基づいて災害が発生したか否かを判定する(ステップS501)。災害が発生していないと判定された場合(ステップS501−NO)、外部状況取得部53はステップS501の処理を繰り返す。一方、災害が発生したと判定された場合(ステップS501−YES)、外部状況取得部53は、災害発生の通知を端末制御部56に通知する。災害発生の通知を受けた端末制御部56は、モード移行指示情報を生成する。端末制御部56は、生成したモード移行指示情報を基地局3に送信する(ステップS502)。基地局3は、サーバ5から送信されたモード移行指示情報を端末2に送信する。端末2は、モード移行指示情報を受信すると、自装置の動作モードを緊急モードに変更する。
【0064】
モード移行指示情報を送信されると、サーバ5の状態判定部57は、端末状態判定処理を実行する(ステップS503)。端末状態判定処理は、端末2ごとに所持者の救助要否を判定する処理である。状態判定部57は、判定対象の端末2の端末IDと、判定結果とを端末制御部56に通知する。端末制御部56は、判定対象の端末2が救助対象であるか否かを判定する(ステップS504)。判定対象の端末2が救助対象でない場合(ステップS504−NO)、端末制御部56は、当該の端末2の動作モードを平時モードに移行させるためのモード移行指示情報を生成する。端末制御部56は、生成したモード移行指示情報を基地局3に送信する(ステップS505)。基地局3は、サーバ5から送信されたモード移行指示情報を端末2に送信する。端末2は、モード移行指示情報を受信すると、自装置の動作モードを平時モードに変更する。
【0065】
一方、ステップS504において判定対象の端末2が救助対象である場合(ステップS504−YES)、位置特定部58は、当該端末2の位置特定処理を実行する(ステップS506)。位置特定処理は、パッシブタグリーダ32が、救助対象の端末2からパッシブタグ信号を受信したことを検知する処理である。
このように、実施形態の位置特定システム1では、緊急時において端末2の動作モードが緊急モードに変更され、端末状態判定処理及び位置特定処理が行われることによって、救助対象の端末2の位置が特定される。次に、端末状態判定処理及び位置特定処理の詳細について説明する。
【0066】
図16は、端末状態判定処理の流れを示すフローチャートである。
端末状態判定処理では、サーバ5は、判定対象の端末2に所定の音声メッセージを出力させる。サーバ5は、音声メッセージに対する応答を示す入力操作の有無に基づいて、端末2の所持者の救助要否を判定する。まず、
図16のフローチャートで用いられる音声メッセージについて説明する。
【0067】
図17は、音声メッセージの具体例を示す図である。
音声メッセージ1は、地震が発生したことを通知するメッセージである。音声メッセージ2は、救助を必要としない端末2の所持者に、救助が不要であることの意思表示を促すメッセージである。音声メッセージ3は、救助を必要とする端末2の所持者に、救助を要することの意思表示を促すメッセージである。音声メッセージ4は、音声メッセージ3と同様に、救助を必要とする端末2の所持者に、救助を要することの意思表示を促すメッセージである。音声メッセージ5は、端末2の所持者に、救助対象として認識されたことを通知するメッセージである。
【0068】
図16の説明に戻る。
まず、サーバ5の端末制御部56は、判定対象の端末2に音声メッセージ1を出力させるための端末指示情報を送信する(ステップS601)。端末2のデバイス制御部213は、スピーカ23に音声メッセージ1を出力させる。スピーカ23は、音声メッセージ1を出力する。次に、端末制御部56は、判定対象の端末2に音声メッセージ2を出力させるための端末指示情報を送信する(ステップS602)。スピーカ23は、音声メッセージ2を出力する。端末2は、スイッチ25のデバイス情報を取得してビーコン信号を送信する。サーバ5の状態判定部57は、端末情報からデバイス情報を取得して、音声メッセージ2によって指示された緑色ボタンが押下されたか否かを判定する(ステップS603)。緑色ボタンが押下されたことが判定された場合(ステップS603−YES)、状態判定部57は、判定対象の端末2の所持者は救助対象外であると判断する(ステップS604)。
【0069】
一方、緑色ボタンが押下されなかったことが判定された場合(ステップS603−NO)、端末制御部56は、判定対象の端末2に音声メッセージ3を出力させるための端末指示情報を送信する(ステップS605)。スピーカ23は、音声メッセージ3を出力する。端末2は、スイッチ25のデバイス情報を取得してビーコン信号を送信する。サーバ5の状態判定部57は、端末情報からデバイス情報を取得して、音声メッセージ3によって指示された赤色ボタンが押下されたか否かを判定する(ステップS606)。赤色ボタンが押下されたことが判定された場合(ステップS606−YES)、状態判定部57は、判定対象の端末2の所持者は救助対象であると判断する(ステップS607)。判定対象の端末2の所持者が救助対象であると判断されると、端末制御部56は、判定対象の端末2に音声メッセージ5を出力させるための端末指示情報を送信する(ステップS608)。
【0070】
一方、ステップS606において、赤色ボタンが押下されなかったことが判定された場合(ステップS606−NO)、端末制御部56は、判定対象の端末2に音声メッセージ4を出力させるための端末指示情報を送信する(ステップS609)。スピーカ23は、音声メッセージ4を出力する。端末2は、振動センサ26のデバイス情報を取得してビーコン信号を送信する。サーバ5の状態判定部57は、端末情報からデバイス情報を取得して、音声メッセージ4の指示に対する操作によって振動センサ26が振動を検知したか否かを判定する(ステップS610)。振動センサ26が振動を検知したことが判定された場合(ステップS610−YES)、状態判定部57は、端末2の温度情報が示す温度が所定の温度より高いか否かを判定する(ステップS611)。温度情報が示す温度が所定の温度より高いことが判定された場合(ステップS611−YES)、状態判定部57は、ステップS607に進み、判定対象の端末2の所持者は救助対象であると判断する。これは、振動センサ26が振動を検知した場合であっても、その振動が人の操作によるものかどうかを判断することは困難だからである。例えば、端末2が海に浮かんでいる状況では、人が操作を行わなくても、振動センサ26は波の動きによる振動を検知する。そのため、本実施形態では、振動センサ26の振動検知に加えて、温度情報に基づいて救助要否の判定が行われる。なお、端末2の温度情報は、端末情報に含まれる状態通知から取得される。端末2が各種デバイスとして温度センサを備える場合、温度情報は、温度センサのデバイス情報として取得されてもよい。
【0071】
一方、ステップS610において、振動センサ26が振動を検知しなかったことが判定された場合(ステップS610−NO)、又はステップS611において、温度情報が示す温度が所定の温度以下であることが判定された場合(ステップS611−NO)、状態判定部57は、判定対象の端末2の所持者の救助要否は判定不能であると判断する(ステップS612)。
【0072】
図18は、端末状態判定処理における判定例を示す図である。
図18において『スイッチ押下』は、端末2におけるスイッチ25の押下の有無を表す。『振動』は、端末2における振動センサ26による振動検知の有無を表す。『温度』は、温度情報が示す温度が所定の温度よりも高いか否かを表す。例えば、『No』が1の状況では、『スイッチ押下』、『振動』及び『温度』の情報から、端末2の所持者は、端末を動かすことはできるが、スイッチを押せない状況であることが想定される。
図18の例は、このような状況にある端末2の所持者が、優先度『高』の救助対象であり、捜索の優先度が『高』いと判断されることを表している。なお、図示された判定方法は例であり、端末2の状況や想定する状況に応じて
図18と異なる判定方法が定められてもよい。
【0073】
図19は、位置特定処理の流れを示すフローチャートである。
位置特定処理では、基地局3のパッシブタグリーダ32は、基地局3本体から切り離された状態で動作する。救助活動を行う者(以下、「救助者」という。)は、パッシブタグリーダ32の位置を移動させ、パッシブタグ信号を送信する端末2を捜索する。まず、サーバ5の状態判定部57は、救助対象として判定された端末2(以下、「対象端末」という。)の端末情報に含まれる端末IDを位置特定部58に出力する。位置特定部58は、端末情報テーブル541を参照し、対象端末の端末IDを持つ端末情報レコードを選択する。位置特定部58は、選択した端末情報レコードからパッシブタグIDの値を取得する(ステップS701)。位置特定部58は、取得したパッシブタグIDの値を通知するパッシブタグID通知を、基地局3のパッシブタグリーダ32に送信する(ステップS702)。
【0074】
パッシブタグリーダ32は、パッシブタグID通知から対象端末のパッシブタグIDを取得する。パッシブタグリーダ32は、通信範囲内に位置する複数の端末2からパッシブタグ信号が受信されたか否かを判定する(ステップS703)。パッシブタグ信号が受信されていない場合(ステップS703−NO)、パッシブタグリーダ32はステップS703の処理を繰り返し、パッシブタグ信号が受信されるのを待つ。このとき、救助者は、パッシブタグリーダ32を移動させて、パッシブタグ信号を送信する端末2を捜索する。一方、パッシブタグ信号が受信された場合(ステップS703−YES)、パッシブタグリーダ32は、受信したパッシブタグ信号をサーバ5に送信する。位置特定部58は、パッシブタグリーダ32から受信されたパッシブタグ信号からパッシブタグIDを取得する(ステップS704)。位置特定部58は、パッシブタグ信号から取得したパッシブタグIDが、対象端末のパッシブタグIDであるか否かを判定する(ステップS705)。
【0075】
パッシブタグ信号から取得したパッシブタグIDが、対象端末のパッシブタグIDでない場合(ステップS705−NO)、位置特定部58は、ステップS703に戻り、次のパッシブタグ信号の受信を待つ。一方、パッシブタグ信号から取得したパッシブタグIDが、対象端末のパッシブタグIDである場合(ステップS705−YES)、位置特定部58は、対象端末がパッシブタグリーダ32の付近に位置する。そして、端末制御部56は、対象端末の詳細な位置を把握するために、対象端末のスピーカ23にブザー音を出力させる端末指示情報を生成する。サーバ5は、生成した端末指示情報を基地局3に送信する(ステップS706)。
【0076】
このように構成された実施形態の位置特定システム1では、端末2はパッシブタグを用いて、基地局3と通信する。パッシブタグによる通信は数メートルの範囲で行われるため、基地局3がパッシブタグ信号を受信したことをもって、端末2の位置を基地局3の位置付近に特定することができる。また端末2は、アクティブタグを用いて、基地局3と通信する。アクティブタグによる通信は数十メートルの範囲で行われるため、基地局3が端末2のアクティブタグと通信したことをもって、アクティブタグの通信範囲における端末2の存在を検知することができる。そのため、実施形態の位置特定システム1は、端末2の位置をより正確に特定することができる。
【0077】
<変形例>
サーバ5は、過去の端末情報に基づいて端末状態判定処理を行ってもよい。
図20及び
図21は、変形例の端末状態判定処理の流れを示すフローチャートである。
なお、
図20及び
図21において、
図16と同様の処理については
図16と同じ符号を付すことによって説明を省略する。
ステップS610において、振動センサ26が振動を検知しなかったことが判定された場合(ステップS610−NO)、又はステップS611において、温度情報が示す温度が所定の温度以下であることが判定された場合(ステップS611−NO)、状態判定部57は、判定対象の端末2について、現在時刻から所定時間だけ遡った過去時刻までの間に蓄積された端末情報を蓄積情報記憶部55から取得する。状態判定部57は、過去の端末情報から振動センサ26のデバイス情報を取得する(ステップS801)。状態判定部57は、現在時刻から所定時間だけ遡った過去時刻までの間に、振動センサ26が振動を検知したか否かを判定する(ステップS802)。現在時刻から所定時間だけ遡った過去時刻までの間に、振動センサ26が振動を検知したことが判定された場合(ステップS802−YES)、ステップS607に進み、状態判定部57は、判定対象の端末2の所持者を救助対象として判断する。一方、現在時刻から所定時間だけ遡った過去時刻までの間に、振動センサ26が振動を検知しなかったことが判定された場合(ステップS802−NO)、ステップS604に進み、状態判定部57は、判定対象の端末2の所持者を救助対象外として判断する。
【0078】
図22は、変形例の端末状態判定処理における判定例を示す図である。
図22において『過去振動』は、端末2の振動センサ26による過去の振動検知の有無を表す。例えば、『No』が3の状況では、『スイッチ押下』、『振動』、『温度』及び『過去振動』の情報から、端末2の所持者は、端末を握ったまま、端末を動かせない瀕死の状態に陥ったことが想定される。
図22の例は、このような状況にある端末2の所持者が、優先度『中』の救助対象であり、捜索の優先度が『高』いと判断されることを表している。
【0079】
端末2が備える各種デバイスはスピーカ23、LED24、スイッチ25及び振動センサ26に限定されない。端末2は、所持者に伝達する情報の態様や、端末状態判定処理に必要となる情報に応じて、他のデバイスやアクチュエータを備えるように構成されてもよい。
【0080】
アクティブタグによる通信と同様に、基地局3の周辺に位置する端末2の存在を検知する手段を有すれば、端末2と基地局3との間のアクティブタグによる通信は他の通信手段に置き換えられてもよい。
【0081】
端末2が備える各種デバイスには、専用の電源が備えられても良い。そして、端末2の各種デバイスは、通常時において電源供給が停止され、緊急時において電源供給が行われるように構成されてもよい。
【0082】
パッシブタグリーダ32は、救助対象として判定された端末2のパッシブタグ信号のみをサーバ5に送信するように構成されてもよい。この場合、パッシブタグリーダ32は、サーバ5から送信されるパッシブタグID通知によって、救助対象として判定された端末2を識別する。
【0083】
上述した実施形態における位置特定システム1及び端末2をコンピュータで実現するようにしてもよい。その場合、この機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することによって実現してもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含んでもよい。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよく、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであってもよく、FPGA(Field Programmable Gate Array)等のプログラマブルロジックデバイスを用いて実現されるものであってもよい。
【0084】
以上、この発明の実施形態について図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。