【文献】
阿部一雄ら著,「次世代LIB用リン酸鉄リチウム正極材料の製造プロセスの開発」,三井造船技報,No.192(2007−11),p.13〜17
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳細に説明する。
<電極材料>
本発明の電極材料は、表面に炭素質被膜が形成された電極活物質粒子を有し、パルスNMR(パルス核磁気共鳴)によるN−メチル−2−ピロリジノンとの親和性値が5000以上20000以下である。
パルスNMR法は、対象物のスピン(磁気)状態を観測するものであり、エネルギーを加えた直後(励起状態)から定常状態に戻るまでの時間(スピン−スピン緩和時間)を測定する。対象物が溶媒の場合は、溶媒分子(水素原子核)の緩和時間を測定することになるが、粒子分散液においては、緩和時間は溶媒中の粒子の状態によって変化する。これは緩和時間が粒子に接する溶媒分子の量に影響を受けるためである。ここで、粒子に接する溶媒分子の量とは、粒子の表面積や溶媒−粒子間の濡れ性の影響を受けて変化すると考えられる。したがって、特定の粒子を分散させた分散液における溶媒の緩和時間をパルスNMRで測定することにより、溶媒−粒子間の界面状態をとらえることができ、これから粒子表面の微細な状態変化を溶媒分子の緩和時間から解析することができる。
【0012】
本発明においては、緩和時間を粒子の比表面積、分散液中の粒子濃度で規格化した値を用いた溶媒との「親和性値」とし、溶媒−粒子間の界面状態、すなわち粒子表面の微細な状態変化の指標とした。
ここで、上記親和性値Aは下記式(1)で表される。
【0013】
【数1】
上記において、R
SPは粒子表面吸着液の緩和時間相当値であり、S
totは総比表面積である。また、R
SP及びS
totは各々式(2)及び式(3)で表されるから、結局親和性値Aは式(4)で表される。
【0014】
【数2】
なお上記において、R
av及びR
bは各々サンプル及びブランクの緩和時間の逆数であり、ρ
wt、ρ
s及びρ
bは各々サンプル、粒子及びブランクの密度である。またS
BET、Ψ
pは各々BET法による比表面積、粒子の体積濃度である。
【0015】
電極材料に含まれる炭素質被覆電極活物質粒子は、表面が炭素質被膜で覆われているため、有機溶媒との親和性は炭素被覆のない電極材料表面とは大きく異なる。パルスNMRの測定に用いる溶媒は、炭素質被覆電極活物質粒子を分散し得る溶媒であって、かつ金属イオンを含まない媒体であることが好ましいが、本発明者らが種々の溶媒について検討したところ、溶媒としてN−メチル−2−ピロリジノン(以下「NMP」と称する)を用いた場合に、炭素質被膜が形成された凝集粒子の分散性が良好であり、しかもジェットミルなどにより凝集粒子が集合した造粒体を粉砕した電極材料について、粉砕条件が強くなる程親和性値が上昇することがわかった。これは、粉砕により顆粒が崩れることで、NMPとの接触面積が大きくなること、及び電極活性物質表面の炭素質被膜が剥がれ電極活性物質露出面の面積が大きくなることに起因すると考えられる。したがって、粉砕された電極材料についてパルスNMRによるNMPとの親和性値を測定することにより、粉砕処理条件の指標を得ることができることが見出された。
【0016】
本発明において、溶媒をN−メチル−2−ピロリジノンとした時のパルスNMRによる電極材料の親和性値は5000以上20000以下である。親和性値が5000未満であると、粉砕が十分でなく電極材料の粒径が大きいためレート特性を向上させることができない。一方、親和性値が20000を越えると、電極材料における炭素質被膜の剥がれが大きくなり充放電特性が悪化する。
上記NMPとの親和性値は、5500以上19000以下であることが好ましく、6000以上18000以下であることがより好ましい。
【0017】
なお、測定に用いられる電極材料の分散液は、炭素質被覆電極活物質粒子1質量部に対し、NMPを10質量部〜10,000質量部添加し、混合することにより得ることができる。特に、炭素質被覆電極活物質粒子1質量部に対するNMPの量は、999質量部であることが測定誤差が少ない点でより好ましい。
また、炭素のみからなる粒子及び炭素を含まない活物質粒子(未被覆)の緩和時間を測定し、それらから検量線を作成、試料の緩和時間と比較することにより炭素質被膜の被覆率を算出することもできる。
【0018】
そして、本発明の電極材料では、粉砕による炭素質被膜の剥がれを最小限に抑えつつ粒径を所望の範囲とすることができるため、電極材料の導電性を悪化させることなくレート特性に優れた微紛状の電極材料を得ることができる。その結果、本発明の電極材料を電極に用い、かかる電極を正極として備えたリチウムイオン電池は電極及びリチウムイオン電池は優れた充放電特性を有すると考えられる。
以下、電極材料を構成する各要素及び電極材料の形態について詳細に説明する。
【0019】
〔電極活物質粒子〕
本発明の電極材料は、電極活物質粒子を有する。
電極活物質粒子を構成する電極活物質としては、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム、LixAyDzPO
4(ただし、Aは、Co、Mn、Ni、Fe、Cu、及びCrからなる群より選択される1種または2種以上、Dは、Mg、Ca、S、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、及び希土類元素からなる群より選択される1種または2種以上、0<x<2、0<y<1.5、0≦z<1.5)等が挙げられる。
電極活物質粒子は、コバルト酸リチウム、ニッケル酸リチウム、マンガン酸リチウム、チタン酸リチウム、及びLixAyDzPO
4からなる群より選択される少なくとも1種を主成分とすることが好ましい。
ここで、主成分とは、電極活物質粒子全質量中の含有量が50質量%を超えることをいう。
【0020】
Aについては、Co、Mn、Ni、Feが、高い放電電位が得られ易いため好ましい。Dについては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ti、Zn、Alが、高い放電電位が得られやすいため好ましい。
また、希土類元素とは、ランタン系列であるLa、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Luの15元素のことである。
以上の中でも、電極活物質としては、LixFeyDzPO
4(AがFe)であることが好ましく、LixFeyPO
4(AがFe、かつzが0)であることがより好ましく、更にLiFePO
4であることがより好ましい。
【0021】
LixAyDzPO
4にて表される化合物は、固相法、液相法、気相法等の従来の方法により製造したものを用いることができる。LixAyDzPO
4は、例えば、粒子状のもの(LixAyDzPO
4粒子と称することがある)を用いることができる。
LixAyDzPO
4は、例えば、Li源と、A源と、P源と、水と、必要に応じてD源と、を混合して得られるスラリー状の混合物を水熱合成し、得られた沈殿物を水洗して、電極活物質の前駆体物質を生成し、さらに前駆体物質を焼成することで得られる。水熱合成には耐圧密閉容器を用いることが好ましい。
ここで、Li源としては、酢酸リチウム(LiCH
3COO)、塩化リチウム(LiCl)等のリチウム塩及び水酸化リチウム(LiOH)等が挙げられ、酢酸リチウム、塩化リチウム及び水酸化リチウムからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
A源としては、Co、Mn、Ni、Fe、Cu、及びCrからなる群より選択される少なくとも1種を含む塩化物、カルボン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。例えば、AがFeである場合、Fe源としては、塩化鉄(II)(FeCl
2)、酢酸鉄(II)(Fe(CH
3COO)
2)、硫酸鉄(II)(FeSO
4)等の2価の鉄塩が挙げられ、塩化鉄(II)、酢酸鉄(II)、及び硫酸鉄(II)からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
D源としては、Mg、Ca、S、Sr、Ba、Ti、Zn、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sc、Y、及び希土類元素からなる群より選択される1種を含む塩化物、カルボン酸塩、硫酸塩等が挙げられる。
P源としては、リン酸(H
3PO
4)、リン酸二水素アンモニウム(NH
4H
2PO
4)、リン酸水素二アンモニウム((NH
4)
2HPO
4)等のリン酸化合物が挙げられ、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、及びリン酸水素二アンモニウムからなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0022】
LixAyDzPO
4粒子は、結晶性粒子であっても非晶質粒子であってもよく、結晶質粒子と非晶質粒子が共存した混晶粒子であってもよい。ここで、LixAyDzPO
4粒子が非晶質粒子でも良いとする理由は、非晶質のLixAyDzPO
4粒子は、500℃以上かつ1000℃以下の非酸化性雰囲気下にて熱処理すると、結晶化するからである。
また本発明においては、電極活物質粒子がLiFePO
4またはLiFe
xM
1−xPO
4(但し、MはCo、Mn及びNiの群から選択された1種または2種以上、0<x<1)からなる粒子であることが、正極材料として用いた場合に、前記本発明の効果をより有効に発揮できる点で好ましい。
【0023】
電極活物質粒子の大きさは、特に制限されず、1次粒子の平均粒径は10nm以上20,000nm以下であることが好ましく、より好ましくは20nm以上5,000nm以下である。
電極活物質粒子の1次粒子の平均粒径が10nm以上であることで、1次粒子の表面を炭素質被膜で充分に被覆することができ、高速充放電レートにおける放電容量の低下を抑制し、充分な充放電レート性能を実現することができる。また、電極活物質粒子の1次粒子の平均粒径が20,000nm以下であることで、1次粒子の内部抵抗が大きくなりにくく、高速充放電レートにおける放電容量を損ねにくい。
なお、本発明において、平均粒径とは、粒度分布における累積体積百分率が50%のときの粒径D50を意味する。また、電極活物質粒子の一次粒子の平均粒径は、株式会社堀場製作所製、LB−550を用いて分散体を測定したり、電子顕微鏡により観察し、計数することにより測定することができる。
【0024】
電極活物質粒子の形状は、特に制限されないが、球状、特に真球状であることが好ましい。電極活物質粒子が球状であることで、本発明の電極材料用いて正電極用ペーストを調製する際の溶媒量を低減させることができるとともに、正電極用ペーストの集電体への塗工も容易となる。なお、正電極用ペーストは、例えば、本発明の電極材料と、バインダー樹脂(結着剤)と、溶媒とを混合して調製することができる。
【0025】
また、電極活物質粒子の形状が球状であることで、電極活物質粒子の表面積が最小となり、電極材料に添加するバインダー樹脂(結着剤)の配合量を最小限にすることができ、得られる正電極の内部抵抗を小さくすることができるので、好ましい。
さらに、電極活物質粒子の形状が球状であれば、電極活物質が最密充填し易いので、単位体積あたりの正極材料の充填量が多くなり、よって、電極密度を高くすることができる。その結果、リチウムイオン電池の高容量化を図ることができるので、好ましい。
【0026】
〔炭素質被膜〕
本発明の電極材料において、炭素質被膜は、電極活物質粒子を被覆する。
炭素質被膜は、炭素質被膜の原料となる有機化合物を炭化することにより得られる。炭素質被膜の原料となる有機化合物の詳細は、後述する。
本発明においては、電極活物質粒子の表面にはほぼ炭素質被膜が均一に形成されるが、電極活性物質の一次粒子が凝集粒子、さらには造粒体となり、その後粉砕工程を経て電極材料となるため、電極活性物質表面の炭素質被膜は必ずしもすべて均一であるわけではない。その均一性の指標となるのが前述のパルスNMRによる特定溶媒との親和性値である。
【0027】
炭素質被膜の膜厚は、1.0nm以上10.0nm以下であり、平均膜厚が2.0nm以上7.0nm以下であることが好ましい。
炭素質被膜の平均膜厚が2.0nm以上であることで、炭素質被膜中の電子の移動抵抗の総和が高くなりにくく、電池の内部抵抗の上昇が抑えられ、高速充放電レートにおける電圧低下を防止することができる。炭素質被膜の平均膜厚が7.0nm以下であることで、リチウムイオンが炭素質被膜中を拡散する際の立体障害が抑制され、リチウムイオンの移動抵抗が低くなる結果、電池の内部抵抗の上昇が抑えられ、高速充放電レートにおける電圧低下を防止することができる。
また、炭素質被膜の膜厚が1.0nm以上であることで、炭素質被膜の平均膜厚を2.0nm以上に保ち易く、膜厚が10.0nm以下であることで、平均膜厚を7.0nm以下に抑え易い。
なお、炭素質被膜の膜厚は、透過型電子顕微鏡を用いて、測定することができる。
【0028】
また、上記「内部抵抗」とは、主として電子の移動抵抗とリチウムイオン移動抵抗とを合算したものである。
内部抵抗の評価方法としては、例えば、電流休止法等が用いられる。電流休止法では、内部抵抗は、配線抵抗、接触抵抗、電子の移動抵抗、リチウムイオン移動抵抗、正負電極におけるリチウム反応抵抗、正負極間距離によって定まる極間抵抗、リチウムイオンの溶媒和、脱溶媒和に関わる抵抗およびリチウムイオンのSEI(SOLID ELECTROLYTE INTERFACE)移動抵抗の総和として測定される。
【0029】
炭素質被膜は、電極材料中の炭素量としても確認することができる。電極材料中の炭素量は、炭素分析計を用いることにより測定される。
電極材料中の炭素量は、リチウムイオン伝導性の観点から、0.2質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以上6質量%以下であることがより好ましく、0.8質量%以上3質量%以下であることが更に好ましい。
【0030】
炭素質被膜に被覆された電極活物質粒子(炭素質被覆電極活物質粒子)は、凝集粒子を形成している。
炭素質被覆電極活物質粒子の凝集粒子は、炭素質被覆電極活物質粒子の1次粒子同士が複数個接触した状態で凝集している。炭素質被覆電極活物質粒子の接触状態は特に限定されないが、粒子同士の接触面積が小さく、接触部分が断面積の小さい頸部状となって強固に接続された状態の凝集粒子であることが好ましい。このように、これら炭素質被覆電極活物質粒子の電極活物質粒子同士の接触部分が断面積の小さい頸部状となることで、凝集粒子内部にチャネル状(網目状)の空隙が三次元に広がった構造となる。
ここで、炭素質被覆電極活物質粒子の凝集粒子中の炭素質被膜の被覆率は80%以上であることが好ましい。凝集体中の炭素質被膜の被覆率が80%以上であることで、炭素質被膜の被覆効果が十分に得られる。
本発明の電極材料は、既述の構成が得られる任意の方法により製造することができるが、電極材料が、既述の好ましい態様を備える観点から、次に示す本発明の電極材料の製造方法により製造することが好ましい。
【0031】
<電極材料の製造方法>
本発明の電極材料は、例えば、電極活物質及び電極活物質の前駆体からなる群より選択される少なくとも1種の電極活物質粒子原料、有機化合物、及び水を混合し、電極活物質粒子原料の粒度分布における累積体積百分率が90%のときの粒子径(D90)の累積体積百分率が10%のときの粒子径(D10)に対する比(D90/D10)が、5以上30以下であるスラリーを調製するスラリー調製工程、該スラリーを乾燥し、得られた乾燥物を500℃以上1,000℃以下の非酸化性雰囲気下にて焼成する焼成工程、及び該焼成工程で得られた凝集粒子が集合した造粒体を粉砕機で解砕する解砕工程を有する製造工程を経て製造することができる。
【0032】
前記の電極材料の製造で用いる電極活物質は、本発明の電極材料が含む電極活物質粒子を構成する電極活物質として説明した物質が挙げられ、好ましい態様も同様である。電極活物質の前駆体の前駆体も、電極材料の説明において挙げた前駆体が挙げられる。
【0033】
また、前記の電極材料の製造で用いる有機化合物としては、電極活物質粒子の表面に炭素質被膜を形成できる化合物であれば特に限定されず、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、セルロース、デンプン、ゼラチン、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリアクリル酸、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリルアミド、ポリ酢酸ビニル、グルコース、フルクトース、ガラクトース、マンノース、マルトース、スクロース、ラクトース、グリコーゲン、ペクチン、アルギン酸、グルコマンナン、キチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン、アガロース、ポリエーテル、2価アルコール、3価アルコール等が挙げられる。
【0034】
電極活物質粒子原料と有機化合物との配合比は、有機化合物の全量を炭素量に換算したとき、電極活物質粒子原料100質量部に対して0.6質量部以上4.0質量部以下であることが好ましく、より好ましくは1.1質量部以上1.7質量部以下である。
ここで、有機化合物の炭素量換算の配合比が0.6質量部以上であることで、電池を形成した場合に高速充放電レートにおける放電容量が低くなりにくく、充分な充放電レート性能を実現することができる。有機化合物の炭素量換算の配合比が4.0質量部以下であることで、リチウムイオンが炭素質被膜中を拡散する際に立体障害が少なく、リチウムイオン移動抵抗が低くなる。その結果、電池を形成した場合に電池の内部抵抗が上昇しにくく、高速充放電レートにおける電圧低下を抑制することができる。
【0035】
電極活物質粒子原料と有機化合物とを、水に溶解又は分散させて、均一なスラリーを調製する。溶解あるいは分散の際には、分散剤を加えるとなお良い。電極活物質粒子原料と有機化合物とを水に溶解又は分散させる方法としては、電極活物質粒子原料が分散し、有機化合物が溶解または分散する方法であればよく、特に限定されないが、例えば、遊星ボールミル、振動ボールミル、ビーズミル、ペイントシェーカー、アトライタ等の分散装置を用いることが好ましい。
【0036】
電極活物質粒子原料と有機化合物とを水に溶解又は分散する際には、電極活物質粒子原料を1次粒子として分散し、その後、有機化合物を添加して溶解するように攪拌することが好ましい。このようにすれば、電極活物質粒子の1次粒子の表面が有機化合物で被覆され易い。その結果として、電極活物質粒子表面が均一に有機化合物由来の炭素によって被覆される。
【0037】
このスラリーを調製する際には、電極活物質粒子原料の比(D90/D10)を5以上30以下となるように、スラリーの分散条件、例えば、スラリー中の電極活物質粒子原料及び有機化合物の濃度、撹拌時間等を適宜調整する。これにより、得られる凝集粒子の体積密度を、該凝集粒子を中実とした場合の体積密度として50体積%以上80体積%以下とすることができる。
【0038】
次いで、このスラリーを高温雰囲気中、例えば70℃以上250℃以下の大気中に噴霧し、乾燥させる。
次いで、この乾燥物を、非酸化性雰囲気下、500℃以上1,000℃以下、好ましくは600℃以上900℃以下の範囲内の温度にて、0.1時間〜40時間焼成する。
【0039】
非酸化性雰囲気としては、窒素(N
2)、アルゴン(Ar)等の不活性雰囲気が好ましく、より酸化を抑えたい場合には水素(H
2)等の還元性ガスを数体積%程度含む還元性雰囲気が好ましい。また、焼成時に非酸化性雰囲気中に蒸発した有機分を除去する目的で、酸素(O
2)等の支燃性または可燃性ガスを不活性雰囲気中に導入することとしてもよい。
【0040】
ここで、焼成温度を500℃以上とすると、乾燥物に含まれる有機化合物の分解及び反応が充分に進行し易く、有機化合物の炭化を充分に行い易い。その結果、得られた凝集体中に高抵抗の有機化合物の分解物が生成することを防止し易い。焼成温度を1000℃以下とすることで、電極活物質中のLiが蒸発しにくく、また、電極活物質の粒成長が抑制される。その結果、高速充放電レートにおける放電容量が低くなることを防止することができ、充分な充放電レート性能を実現することができる。
この焼成過程では、乾燥物を焼成する際の条件、例えば、昇温速度、最高保持温度、保持時間等を適宜調整することにより、得られる凝集粒子の造粒体の粒度分布を制御することが可能である。この造粒体の平均粒子径は、0.5μm以上かつ100μm以下が好ましく、より好ましくは1μm以上かつ20μm以下である。なお平均粒子径は、レーザー式回折粒度分布測定装置(島津製作所(株)製、SALD−1000)を用いて測定した。後述の電極材料の平均粒子径の測定も同様である。
【0041】
次いで、この造粒体の少なくとも一部を解砕する。
ここで、「造粒体の少なくとも一部を解砕する」とは、造粒体の少なくとも一部が解砕されていればよく、造粒体全てが解砕されている必要はない。
この解砕された造粒体の量(解砕粒子)の造粒体全体量に占める割合は、この造粒体を解砕して得られる凝集粒子を電極材料として用いる場合に要求される特性によって決まってくるので一概にはいえないが、高速の充放電特性が求められている高出力電源、あるいは高エネルギー密度が求められている高容量電源に適用する場合には、20質量%以上80質量%以下が好ましく、より好ましくは30質量%以上70質量%以下である。
【0042】
造粒体の解砕に用いられる装置としては、この造粒体を完全に粉砕することなく、この造粒体の一部が解砕されるものであればよく、例えば、乾式ボールミル、湿式ボールミル、ミキサー、ジェットミル等の気流式微粉砕機、超音波破砕機等を用いることができる。
本発明においては、パルスNMRによるNMPとの親和性を所望の範囲とする上で、ジェットミルを解砕に用いることが好ましく、またジェットミルへの造粒体の投入量を10〜30kg/分、粉砕圧を粒子0.3〜0.7MPa、空気0.03〜0.55MPaとすることが好ましい。
上記造粒体は、この解砕過程で、少なくともその一部が解砕されて、造粒体の一部が解砕された一部解砕造粒体の他に、電極活物質粒子の表面に炭素質被膜が形成された一次粒子、及び、この一次粒子が複数個集合した凝集粒子を含む混合物が得られる。
この解砕過程では、凝集粒子の生成量は電極材料全体量の20質量%以上80質量%以下に抑制されている。
【0043】
この造粒体の解砕にあたっては、造粒体に導電助剤を加えた後に、解砕することもできる。
導電助剤としては、炭素源であるカーボンブラック、アセチレンブラック、無定形炭素、結晶性炭素、繊維状炭素の群から選択される1種または2種以上が好適に用いられる。
この導電助剤の添加量は、凝集粒子に所望の導電性を付与することのできる炭素源の量に相当する量であればよく、特に限定はされない。この造粒体に導電助剤を加えた後に解砕することにより、一部が解砕された造粒体を含む凝集粒子と、導電助剤とが均一に混合された混合粉体を得ることができる。
【0044】
また、この造粒体の解砕にあたっては、凝集体に粉砕助剤を加えた後に、解砕することもできる。
粉砕助剤としては、有機化合物が好ましく、中でもメタノール、エタノール、2−プロパノール等の一価アルコール、エチレングリコール等の多価アルコール、アセトン等のケトン類等、電極材料の炭素源となるとともに、後工程の正極形成用スラリーにも用いられる有機溶媒が好適である。この造粒体に粉砕助剤を加えた後に解砕することにより、上記の有機化合物が炭素源となって、一部が解砕された造粒体を含む凝集粒子と、炭素源とが均一に混合された混合粉体を得ることができる。
以上により、本発明の電極材料を作製することができる。なお本発明においては、上記工程以外に任意の工程を含んでもよい。
【0045】
前記解砕工程を経た電極材料の平均粒子径は0.3μm以上5.0μm以下であることが好ましく、0.4μm以上4.5μm以下であることがより好ましい。
平均粒子径を上記範囲とすることにより、粉砕処理を行っても炭素質被膜の被覆性を担保でき、充放電におけるレート特性等を低下させることのない電極材料を得ることができる。
【0046】
<電極>
本発明の電極は、本発明の電極材料を含有する。
本発明の電極を作製するには、上記の電極材料と、バインダー樹脂からなる結着剤と、溶媒とを混合して、電極形成用塗料又は電極形成用ペーストを調製する。この際、必要に応じてカーボンブラック等の導電助剤を添加してもよい。
結着剤、すなわちバインダー樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)樹脂、ポリフッ化ビニリデン(PVdF)樹脂、フッ素ゴム等が好適に用いられる。
電極材料とバインダー樹脂との配合比は、特に限定されないが、例えば、電極材料100質量部に対してバインダー樹脂を1質量部以上30質量部以下、好ましくは3質量部以上20質量部以下とする。
【0047】
電極形成用塗料又は電極形成用ペーストに用いる溶媒としては、バインダー樹脂の性質に合わせて適宜選択すればよい。
例えば、水、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール(イソプロピルアルコール:IPA)、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、オクタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン等のエステル類、ジエチルエーテル、エチレングルコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングルコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)、エチレングルコールモノブチルエーテル(ブチルセロソルブ)、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、アセチルアセトン、シクロヘキサノン等のケトン類、ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアセトアミド、N−メチルピロリドン等のアミド類、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類等を挙げることができる。これらは、1種のみを単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0048】
次いで、電極形成用塗料又は電極形成用ペーストを、金属箔の一方の面に塗布し、その後、乾燥し、上記の電極材料とバインダー樹脂との混合物からなる塗膜が一方の面に形成された金属箔を得る。
次いで、塗膜を加圧圧着し、乾燥して、金属箔の一方の面に電極材料層を有する集電体(電極)を作製する。
このようにして、充放電特性、レート特性に優れた電極を作製することができる。
【0049】
<リチウムイオン電池>
本発明のリチウムイオン電池は、本発明の電極からなる正極を備える。
このリチウムイオン電池は、本発明の電極材料を用いて電極を作製することにより、電極の内部抵抗を小さくすることができる。したがって、電池の内部抵抗を低く抑えることができ、その結果、電圧が著しく低下する虞もなく、高速の充放電を行うことができるリチウムイオン電池を提供することができる。
本発明のリチウムイオン電池では、負極、電解液、セパレーター等は特に限定されない。例えば、負極としては、金属Li、炭素材料、Li合金、Li
4Ti
5O
12等の負極材料を用いることができる。また、電解液とセパレーターの代わりに、固体電解質を用いてもよい。
本発明のリチウムイオン電池によれば、本発明の電極からなる正極を備えたので、充放電特性、レート特性に優れる。
【実施例】
【0050】
以下、実施例1〜5及び比較例1〜3により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0051】
<実施例1>
〔電極材料の作製〕
(造粒体の作製)
水2L(リットル)に、4molの酢酸リチウム(LiCH
3COO)、2molの硫酸鉄(II)(FeSO
4)、2molのリン酸(H
3PO
4)を、全体量が4Lになるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、200℃にて1時間、水熱合成を行った。
次いで、得られた沈殿物を水洗し、ケーキ状の電極活物質の前駆体を得た。
【0052】
次いで、この電極活物質の前駆体150g(固形分換算)と、有機化合物としてポリビニルアルコール(PVA、重合度:1500)20gを水200gに溶解したポリビニルアルコール水溶液と、当該ポリビニルアルコールの全量を炭素に換算した時の炭素量の6質量%に相当する量のノニオン系界面活性剤ポリオキシエチレンラウリルエーテルと、媒体粒子として直径5mmのジルコニアボール500gとをボールミルに投入して分散処理を行い、前駆体スラリーを得た。
【0053】
次いで、この前駆体スラリーを200℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が7μmの乾燥粉体を得た。
次いで、得られた乾燥粉体を、窒素雰囲気下、250℃にて1時間保持した後、700℃にて1時間焼成し、平均粒子径が8.5μmである造粒体を得た。
【0054】
(造粒体の解砕)
上記の得られた造粒体をジェットミル装置(セイシン企業社製、SKジェット・オー・ミル)を用い、平均粒子径0.9μmに解砕し実施例1の電極材料1を得た。
【0055】
〔電極材料の親和性評価〕
得られた電極材料1とN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)とを、質量比が1:999となるように混合した。この混合物(分散液)を用いて、パルスNMR装置(Xigo社製、Acorn Area)により緩和時間を測定した。測定された緩和時間は「サンプルの緩和時間」であり、その逆数をR
avとした。
次いで、上記電極材料とNMPとの混合物を、遠心分離器を利用して固液分離し、その上澄み液を回収し、同様にパルスNMR装置にて緩和時間を評価した。測定された緩和時間は「ブランクの緩和時間」であり、その逆数をR
bとした。
【0056】
また、親和性の計算に必要となる値として、電極材料の比表面積をBET法を用いて評価した。このときの値をS
BETとした。さらに、電極材料、NMPの質量比及び密度から、電極材料とNMPの混合物における両者の体積比を求め、[電極材料体積]/[NMP体積]で計算される値でΨ
pとした。
以上から、これらの値と前記式(4)とから親和性値Aを求めた。その結果、電極材料1の親和性値は8990となった。
【0057】
〔電極の作製〕
得られた電極材料1と、バインダーとしてポリフッ化ビニリデン(PVdF)と、導電助剤としてアセチレンブラック(AB)とを、質量比(電極材料1:PVdF:AB)が90:5:5となるように混合し、さらに溶媒としてN−メチル−2−ピロリジノン(NMP)を加えて流動性を付与し、混練機(シンキー社製、あわとり練太郎)を用いて、公転1200rpm、自転800rpmの条件で30分混練し、電極用ペーストを作製した。
次いで、この電極用ペーストを、集電体である厚み15μmのアルミニウム(Al)箔上に塗布し、乾燥した。その後、600kgf/cm
2の圧力にて加圧し、実施例1のリチウムイオン電池の正極1を作製した。
【0058】
〔リチウムイオン電池の作製〕
このリチウムイオン電池の正極1に対し、負極としてリチウム金属を配置し、これら正極1と負極との間に多孔質ポリプロピレンからなるセパレーターを配置し、電池用部材1とした。
一方、炭酸エチレンと炭酸ジエチルとを1:1(質量比)にて混合し、さらに1MのLiPF
6溶液を加えて、リチウムイオン伝導性を有する電解質溶液1を作製した。
次いで、電池用部材1を電解質溶液1に浸漬し、実施例1のリチウムイオン電池1を作製した。
【0059】
〔リチウムイオン電池の評価〕
上記リチウムイオン電池1の充放電特性及びレート特性それぞれの評価を行った。評価方法は下記の通りである。
(1)充放電特性
上記のリチウムイオン電池1の充放電試験を、室温(25℃)にて、カットオフ電圧2−4.2V、充放電レート0.1Cの定電流(10時間充電の後、10時間放電)の条件にて実施した。その結果、初期放電容量は約160mAh/gであった。
(2)レート特性
上記のリチウムイオン電池1のレート特性の評価試験を、室温(25℃)にて、カットオフ電圧2−4.5V、充電レート0.1C、放電レート10C(10時間充電の後、6分放電)の条件にて実施した。その結果、放電容量は約75mAh/gであった。
結果をまとめて第1表に示す。なお第1表においては、ジェットミル粉砕処理を施さない電極材料を用いたリチウムイオン電池(参考例)の放電容量を基準とし、これと比べて、優れていた場合を「◎」、同等の場合を「○」、それ以下の場合を「×」とし、総合評価は、10Cの放電容量が参考例の放電容量より5%以上改善した場合を「○」、5%以下であった場合を「×」とした。
【0060】
<実施例2>
実施例1で用いた造粒体を、実施例1と同様のジェットミル粉砕装置にて、平均粒子径0.5μmに解砕して実施例2の電極材料2を作製し、同様にして正極2、リチウムイオン電池2を得た。
そして、これらの電極材料2、リチウムイオン電池2について、実施例1と同様の評価を行った。結果をまとめて第1表に示す。
【0061】
<実施例3>
実施例1の造粒体を、実施例1と同様のジェットミル粉砕装置にて、平均粒子径4.2μmに解砕して実施例3の電極材料3を作製し、同様にして正極3、リチウムイオン電池3を得た。
そして、これらの電極材料3、リチウムイオン電池3について、実施例1と同様の評価を行った。結果をまとめて第1表に示す。
【0062】
<参考例1>
実施例1の電極材料の作製において、ジェットミル粉砕装置による造粒体の解砕を行わなかった以外は、実施例1と同様にして参考例1の電極材料4(平均粒子径:8.5μm)を作製し、同様にして正極4、リチウムイオン電池4を得た。
そして、これらの電極材料4、リチウムイオン電池4について、実施例1と同様の評価を行った。結果をまとめて第1表に示す。
【0063】
<比較例1>
実施例1の造粒体を、実施例1と同様のジェットミル粉砕装置にて、平均粒子径5.5μmに解砕して比較例1の電極材料5を作製し、同様にして正極5、リチウムイオン電池5を得た。
そして、これらの電極材料5、リチウムイオン電池5について、実施例1と同様の評価を行った。結果をまとめて第1表に示す。
【0064】
<比較例2>
実施例1の造粒体を、実施例1と同様のジェットミル粉砕装置にて、平均粒子径0.2μmに解砕して比較例2の電極材料6を作製し、同様にして正極6、リチウムイオン電池6を得た。
そして、これらの電極材料6、リチウムイオン電池6について、実施例1と同様の評価を行った。結果をまとめて第1表に示す。
【0065】
<実施例4>
〔電極材料の作製〕
(造粒体の作製)
水2L(リットル)に、4molの酢酸リチウム(LiCH
3COO)、0.5molの硫酸鉄(II)(FeSO
4)、1.5molの硫酸マンガン(II)(MnSO
4)、2molのリン酸(H
3PO
4)を、全体量が4Lになるように混合し、均一なスラリー状の混合物を調製した。
次いで、この混合物を容量8Lの耐圧密閉容器に収容し、200℃にて1時間、水熱合成を行った。
次いで、得られた沈殿物を水洗し、ケーキ状の電極活物質の前駆体を得た。
【0066】
次いで、この電極活物質の前駆体150g(固形分換算)と、有機化合物としてポリビニルアルコール(PVA、重合度:1500)20gを水200gに溶解したポリビニルアルコール水溶液と、当該ポリビニルアルコールの全量を炭素に換算した時の炭素量の6質量%に相当する量のノニオン系界面活性剤ポリオキシエチレンラウリルエーテルと、媒体粒子として直径5mmのジルコニアボール500gとをボールミルに投入して分散処理を行い、前駆体スラリーを得た。
【0067】
次いで、この前駆体スラリーを200℃の大気雰囲気中に噴霧し、乾燥して、平均粒子径が7μmの乾燥粉体を得た。
次いで、得られた乾燥粉体を、窒素雰囲気下、250℃にて1時間保持した後、700℃にて1時間焼成し、平均粒子径が7μmである造粒体を得た。
(造粒体の解砕)
上記の得られた造粒体をジェットミル装置(セイシン企業社製、SKジェット・オー・ミル)を用い平均粒子径0.4μmに解砕し実施例4の電極材料7を得た。
得られた電極材料7を用いて、実施例1と同様にして正極7、リチウムイオン電池7を作製し、これらの電極材料7、リチウムイオン電池7について、実施例1と同様の評価を行った。結果をまとめて第1表に示す。
【0068】
<実施例5>
実施例4の造粒体を、実施例1と同様のジェットミル粉砕装置にて、平均粒子径3.5μmに解砕して実施例5の電極材料8を作製し、同様にして正極8、リチウムイオン電池8を得た。
そして、これらの電極材料8、リチウムイオン電池8について、実施例1と同様の評価を行った。結果をまとめて第1表に示す。
【0069】
<参考例2>
実施例4の電極材料の作製において、ジェットミル粉砕装置による造粒体の解砕を行わなかった以外は、実施例4と同様にして参考例2の電極材料9(平均粒子径:7μm)を作製し、同様にして正極9、リチウムイオン電池9を得た。
そして、これらの電極材料9、リチウムイオン電池9について、実施例1と同様の評価を行った。結果をまとめて第1表に示す。
【0070】
<比較例3>
実施例4の造粒体を、実施例1と同様のジェットミル粉砕装置にて、平均粒子径0.15μmに解砕して比較例3の電極材料10を作製し、同様にして正極10、リチウムイオン電池10を得た。
そして、これらの電極材料10、リチウムイオン電池10について、実施例1と同様の評価を行った。結果をまとめて第1表に示す。
【0071】
【表1】
【0072】
以上の結果によれば、実施例1〜3の電極材料は、比較例1の電極材料に比べ、ジェットミルによる解砕を行っているためNMPとの親和性値が大きくなっており、その結果としてレート特性等が向上していることがわかる。一方、ジェットミル粉砕を行ってもNMPとの親和性値が5000に満たない比較例2や、ジェットミル粉砕の条件が強すぎてMNPとの親和性値が20000を超えてしまった比較例3では、レート特性等が比較例1と同等であるか劣る結果となっており、向上効果が得られなかった。
また、電極材料の組成を変えた実施例4、5と比較例3の電極材料に関しても、同様の結果となった。
【0073】
上記結果から、パルスNMRによるNMPとの親和性値を指標として、電池としたときの充放電特性やレート特性を向上させるための電極材料の解砕条件を最適化することが可能となることがわかる。