(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
厚さ方向と幅方向と長手方向とを有する吸収性物品であって、
前記長手方向に関して背側部と股下部と腹側部とを有し、尿を吸収する吸収性コアと、
前記長手方向に沿って前記吸収性コアに設けられた導電部材であって、互いの間に間隔をあけながら前記幅方向に二つ並んで配された前記導電部材と、
前記導電部材の通電状態に基づいて排尿又は排便を検知する検知部に前記導電部材を電気的に接続する接続部と、を有し、
前記導電部材のうちで前記股下部に位置する部分は、前記導電部材よりも低い導電率の被覆部材によって被覆されているとともに、前記導電部材は、前記背側部の位置に、前記被覆部材によって被覆されずに露出された部分を有することを特徴する吸収性物品である。
【0015】
このような吸収性物品によれば、二つの導電部材は、それぞれ、吸収性コアのうちの背側部の位置に、被覆部材によって被覆されずに露出された部分を有している。よって、背側部に排出された大便によって、同露出された部分同士が導通されれば、二つの導電部材は通電状態となって、これにより、排便を検知することができる。また、排出された尿が背側部に到達して、当該尿によって、同露出された部分同士が導通されれば、二つの導電部材は通電状態となって、これにより、尿の背側部への到達を検知することができる。
【0016】
また、同背側部の二つの導電部材は、互いの間に間隔をあけながら、幅方向に並んで配置されている。そのため、二つの導電部材の各露出された部分も、互いの間に間隔をあけながら幅方向に並んで配置されている。よって、これら二つの露出された部分同士の間に、肛門対向位置を設定することができて、これにより、同露出された部分を、長手方向に関して肛門対向位置とほぼ同位置に位置させることができる。そして、その結果、排便時点から大きく遅れること無く排便を検知可能となって、これにより、大便が、吸収性物品の長手方向の端縁部から漏れ出す前に吸収性物品を交換可能となる。
【0017】
更に、二つの導電部材は、長手方向に沿って設けられているので、電気接点に相当する上記露出された部分も、同じく長手方向に沿って設けられており、つまり、吸収性コアを幅方向に横断するようには設けられてはいない。よって、上記露出された部分による吸収性コアの中央部の柔軟性の阻害を有効に抑制可能であり、結果、吸収性物品の着用時に着用者が覚え得る違和感を抑制することができる。
また、上記のように、露出された部分は、吸収性コアを幅方向に横断するようには設けられていないことから、同露出された部分起因の吸収性コアへの尿の吸収阻害も有効に抑制される。
【0018】
かかる吸収性物品であって、
前記導電部材は、前記腹側部の位置にも、前記被覆部材によって被覆されずに露出された部分を有しているのが望ましい。
【0019】
このような吸収性物品によれば、二つの導電部材に基づいて、背側部での排便の検知、及び背側部への尿の到達の検知だけでなく、腹側部への尿の到達の検知も可能となる。すなわち、排出された尿が腹側部に到達して、当該尿によって、腹側部の上記露出された部分同士が導通されれば、二つの導電部材は通電状態となって、これにより、尿の腹側部への到達を検知することができる。よって、背側部及び腹側部から尿が漏れ出す前に、吸収性物品を速やかに交換可能となる。
【0020】
かかる吸収性物品であって、
前記二つの前記導電部材は、それぞれ前記吸収性コアにおいて着用者の肛門が対向すべき肛門対向位置を、前記幅方向の両側から挟むように配置されており、
前記導電部材が前記背側部の位置に有する前記露出された部分は、前記長手方向に所定の長さを有し、
前記肛門対向位置を前記長手方向に跨ぐように、前記露出された部分は配置されているのが望ましい。
【0021】
このような吸収性物品によれば、導電部材に係る上記の露出された部分を、長手方向の位置に関して肛門対向位置とほぼ同位置に確実に位置させることができる。よって、排便時点から大きく遅れること無く排便を検知可能となって、これにより、便が、吸収性物品の長手方向の端縁部から漏れ出す前に、確実に吸収性物品を交換可能となる。
【0022】
かかる吸収性物品であって、
前記導電部材は、前記長手方向に沿って設けられた可撓性の帯状シート部材を基材とし、
前記帯状シート部材のうちで前記厚さ方向の肌側を向いた面に、前記長手方向に沿って連続して導電性インクが塗布されることによって、前記被覆部材よりも高い導電率の導電性が前記帯状シート部材に付与されており、
前記被覆部材は、前記帯状シート部材の前記導電性インクを前記厚さ方向から覆っているのが望ましい。
【0023】
このような吸収性物品によれば、基材としての帯状シート部材の可撓性に由来して、導電部材は可撓性を有したものとなる。よって、導電部材による吸収性コアの柔軟性の阻害を有効に抑制可能であり、結果、吸収性物品の着用時に着用者が覚え得る違和感を抑制することができる。
【0024】
かかる吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、前記厚さ方向の肌側から液透過性の表面シートで覆われており、
前記表面シートと前記吸収性コアとの間に前記導電部材が介挿されているのが望ましい。
【0025】
このような吸収性物品によれば、導電部材を吸収性コアよりも肌側に位置させているので、吸収性コアに排出された尿及び大便の検知性を高めることができる。
【0026】
かかる吸収性物品であって、
前記導電部材のうちで前記表面シートと対向する面には、前記長手方向の腹側又は背側の向きを示す印が設けられているのが望ましい。
【0027】
このような吸収性物品によれば、導電部材の上記印を見た介護者又は着用者は、吸収性物品の長手方向の腹側と背側とを容易に認識することができる。よって、腹側と背側とを間違わずに、吸収性物品を装着可能となる。
【0028】
かかる吸収性物品であって、
前記導電部材の前記露出された部分は、前記長手方向に沿った直線状に設けられているのが望ましい。
【0029】
このような吸収性物品によれば、導電部材の上記露出された部分は、長手方向に沿った直線状に設けられていることから、吸収性コアを幅方向に横断するようには設けられてはいない。よって、上記露出された部分起因の吸収性コアの中央部の柔軟性の阻害を有効に抑制可能であり、結果、吸収性物品の着用時に着用者が覚え得る違和感を抑制することができる。
また、上記のように、露出された部分は、吸収性コアを幅方向に横断するようには設けられていないことから、同露出された部分起因の吸収性コアへの尿の吸収阻害も有効に抑制される。
【0030】
かかる吸収性物品であって、
前記吸収性コアは、前記厚さ方向の肌側から液透過性の表面シートで覆われており、
前記表面シートのうちで前記厚さ方向の肌側を向いた面には、前記厚さ方向の肌側から前記表面シート及び前記吸収性コアの両者を一緒に圧搾してなる圧搾部がへこんで形成されており、
前記圧搾部が形成されていない位置に、前記導電部材が配置されているのが望ましい。
【0031】
このような吸収性物品によれば、導電部材は、圧搾部の形成位置を回避して配置されている。よって、圧搾部が奏すべき尿の拡散作用又は吸収性コアの折り曲げ作用が、導電部材によって阻害されることは有効に防止されて、同圧搾部は上記作用を確実に奏することができる。
【0032】
かかる吸収性物品であって、
前記接続部は、前記吸収性物品のうちで前記吸収性コアの前記腹側部よりも前記長手方向の端側の部分に配されているのが望ましい。
【0033】
このような吸収性物品によれば、接続部は、吸収性物品のうちで吸収性コアの腹側部よりも長手方向の端側の部分に配置されている。よって、かかる吸収性物品の着用者が、仰向けになっても、接続部の上に着用者の背中が乗ることはなく、結果、同背中を接続部で痛めることは有効に防がれる。
【0034】
===第1実施形態===
第1実施形態に係る吸収性物品は、尿取りパッド1である。尿取りパッド1は、使い捨ておむつ101に取り付けて使用される。
図2Aは、使い捨ておむつ101の概略平面図であり、
図2Bは、
図2A中のB−B断面図である。
図2A及び
図2Bに示すように、同おむつ101は、パルプ繊維等の液体吸収性素材で形成された吸収性コア111と、吸収性コア111を厚さ方向の肌側から覆う液透過性の表面シート121と、同コア111を非肌側から覆う液不透過性の裏面シート131と、を有している。また、おむつ101の展開形状は、
図2Aに示すように、長手方向と幅方向と厚さ方向とを有した略砂時計形状をなしている。すなわち、長手方向の中央部が幅方向にくびれた形状をなしている。そして、くびれた部分が股下部として着用者の股間にあてがわれ、股下部よりも長手方向の腹側の部分が前身頃として着用者の下腹部にあてがわれ、股下部よりも長手方向の背側の部分が後身頃として着用者の臀部にあてがわれて、これにより、着用者の下半身に装着される。
【0035】
ここで、この第1実施形態に係る尿取りパッド1は、同おむつ101の表面シート121の肌側面に載置されて取り付けられる。そして、そのまま、おむつ101を着用者が履くことにより、尿取りパッド1はおむつ101と一体となって着用者の下半身に装着される。なお、場合によっては、尿取りパッド1の非肌側面に、ホットメルト系接着剤でなるずれ止め用粘着部又は面ファスナーの雄材などを設けて、おむつ101に載置した状態から尿取りパッド1が相対移動しないように固定しても良い。
【0036】
図3は、尿取りパッド1を平面に展開した状態の概略平面図である。また、
図4Aは、
図3中のA−A断面図であり、
図4Bは、
図3中のB−B断面図であり、
図4Cは、
図3中のC−C断面図である。
【0037】
図3に示すように、尿取りパッド1は、互いに直交する三方向として長手方向と幅方向と厚さ方向とを有する。そして、尿取りパッド1の長手方向と幅方向とで規定される平面形状は、縦長形状の一例として略砂時計形状をなしている。すなわち、長手方向の略中央の位置が幅方向にくびれた形状をなしている。
なお、以下では、厚さ方向に関して、人体に接触する側のことを「肌側」とも言い、下着に接する側のことを「非肌側」とも言う。また、長手方向のことを「前後方向」とも言い、幅方向のことを「左右方向」とも言う。なお、人体への装着時には、尿取りパッド1の長手方向の前側は、人体の腹側を向き、後側は、人体の背側を向く。また、尿取りパッド1の長手方向の寸法は、幅方向の寸法よりも長く、幅方向の寸法は厚さ方向の寸法よりも長くなっている。
【0038】
<<<尿取りパッド1の基本構成について>>>
図3及び
図4Bに示すように、尿取りパッド1は、使用時におむつ101に取り付けられる本体部1sを有する。本体部1sは、尿を吸収する液体吸収性素材で形成された吸収性コア11と、吸収性コア11を厚さ方向の肌側から覆う液透過性の表面シート21と、同コア11を非肌側から覆う液不透過性の裏面シート31と、を有する。
【0039】
吸収性コア11は、例えば二種類の液体吸収性素材として液体吸収性繊維と液体吸収性粒状物とが所定の配合比で混合されてなる混合物を、所定形状の一例として平面視略砂時計形状に成形したものである。すなわち、吸収性コア11は、長手方向の略中央の位置が幅方向にくびれた形状をなしている。そして、このくびれた部分が、吸収性コア11の股下部11mとして着用者の股間にあてがわれ、同股下部11mよりも長手方向の前側の部分11aが、吸収性コア11の腹側部11aとして着用者の下腹部にあてがわれ、同股下部11mよりも長手方向の後側の部分11bが、吸収性コア11の背側部11bとして着用者の臀部にあてがわれる。
【0040】
なお、この例では、液体吸収性繊維としてパルプ繊維を使用し、また液体吸収性粒状物として高吸収性ポリマー(所謂SAP)を用いているが、何等これに限らない。また、液体吸収性素材として液体吸収性繊維及び液体吸収性粒状物のどちらか一方だけを含んでいても良いし、上記の二種類の液体吸収性素材に加えて、或いはどちらか一方に代えて、別種の液体吸収性素材が混合されていても良い。
【0041】
また、この例では、吸収性コア11は、液透過性シートとしてのティッシュペーパー11tで被覆されているが、被覆されていなくても良い。更に、この例では設けられていないが、吸収性コア11と表面シート21との間に、液透過性のセカンドシートとして、適宜な不織布又はティッシュペーパー等が介挿されていても良い。
【0042】
図3及び
図4Bに示すように、表面シート21は、人体から排泄された尿を受け止めて速やかに厚さ方向に吸い込んで吸収性コア11へと導くものであり、例えば吸収性コア11の平面形状よりも大きな略長方形のシートが使用される。この表面シート21の素材には、例えばエアスルー不織布やスパンボンド不織布等の不織布が使用され、不織布の構成繊維としては、例えばポリエチレンやポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂繊維が用いられる。また、表面シート21の肌側面には、厚さ方向の肌側から表面シート21及び吸収性コア11の両者が一緒に圧搾されてなる圧搾部Eが形成されており、これにより、表面シート21と吸収性コア11との両者は接合一体化されている。
【0043】
図5に、尿取りパッド1を非肌側から見た概略平面図を示す。
図5及び
図4Bに示すように、裏面シート31は、尿取りパッド1の本体部1sの非肌側からの尿漏れを防止する防漏シート31であり、その平面形状は、吸収性コア11よりも大きな略砂時計形状である。すなわち、その外周縁部は、全周に亘って吸収性コア11よりも外方にはみ出している。そして、この裏面シート31に吸収性コア11を載せた状態で、例えば長手方向の各端部及び幅方向の各端部にて表面シート21と熱溶着等で接合され、これにより、裏面シート31と表面シート21との間に吸収性コア11が保持されている。なお、この裏面シート31と表面シート21との間に吸収性コア11が保持された状態のものが、前述した尿取りパッド1の本体部1sに相当する。かかる裏面シート31の素材としては、例えばポリエチレンやポリエチレンテレフタレート等の熱可塑性樹脂を素材とするフィルムなどが使用される。
【0044】
図3及び
図4Bに示すように、尿取りパッド1の本体部1sには、幅方向の端側への尿漏れを防ぐ目的で、吸収性コア11の幅方向の各端部に対応させて、一対の防漏壁部40,40が設けられている。一対の防漏壁部40,40は、それぞれ、撥水処理等されたSMS不織布等からなるサイドシート41,41によって形成されている。各サイドシート41,41は、長手方向に沿って表面シート21の幅方向の各端部を肌側から覆って設けられている。そして、吸収性コア11の幅方向の各端部に対応する位置で、表面シート21に熱溶着等で固定されており、これにより、基端部41bが形成されている。なお、この基端部41bから幅方向の略中央側に延びる部分41fは、自由端部分41fであり、つまり当該部分41fが基本的に防漏壁部40となる。一方、同基端部41bから幅方向の端側に延びる部分41sは、尿取りパッド1の幅方向の端縁にまで至っており、そして、かかる部分は、表面シート21又は裏面シート31に重ね合わせられて、同端縁で、熱溶着等で表面シート21又は裏面シート31に接合されている。
【0045】
ここで、自由端部分41fには、長手方向に沿った糸ゴム等の弾性部材45が伸長状態でホットメルト系接着剤により固定されている。よって、表面シート21側が内周側となるように尿取りパッド1を長手方向に湾曲させると、弾性部材45が長手方向に収縮して当該収縮力が自由端部分41fに付与されるが、そうすると、自由端部分41fは長手方向に収縮して表面シート21から起立して、これにより同自由端部分41fは防漏壁部40として機能する。なお、
図4Bの例では、自由端部分41f及び基端部41bが、折り返しにより二枚重ねのサイドシート41で構成されており、そして、自由端部分41fの二枚重ねの間に弾性部材45が介挿されているが、何等これに限らない。
【0046】
また、
図3、
図4A、及び
図4Cに示すように、自由端部分41fのうちの前端部41fa及び後端部41fbは、表面シート21上に伏せられた状態で、ホットメルト系接着剤等により同表面シート21に接合固定されており、これにより、前端部41fa及び後端部41fbは、起立しない未起立部とされている。よって、弾性部材45の収縮力は、専ら、自由端部分41fのうちの前端部41faと後端部41fbとの間に存在する中間部分41fmのみに選択的に付与されて、当該中間部分41fmが収縮して防漏壁部40として起立するようになっている。
【0047】
以上、尿取りパッド1の基本構成について説明してきたが、この尿取りパッド1には、排尿及び排便を検知する排泄物検知機能が付与されている。そして、排尿及び排便を検知することによって、尿及び大便が尿取りパッド1から漏れ出す前に、速やかに尿取りパッド1の交換を行えるようにしている。以下、この検知機能について説明する。
【0048】
<<<排泄物検知機能について>>>
排泄物検知機能は、尿取りパッド1に対して排泄物検知装置70を設けることで実現されている。そして、同検知装置70は、尿取りパッド1内に設けられた排泄物検知センサー71と、尿取りパッド1外に設けられて、上記センサー71から出力される電気信号に基づいて排尿及び排便を検知する検知部75と、を有する。
【0049】
図6は、排泄物検知装置70の説明図であって、表面シート21及びサイドシート41を取り外して示す尿取りパッド1の概略平面図である。また、同
図6では、吸収性コア11を覆うティッシュペーパー11tについても不図示としている。
【0050】
図6、及び
図4A乃至
図4Cに示すように、排泄物検知センサー71は、吸収性コア11の肌側面と表面シート21との間に長手方向に沿って配された長尺な二つの導電部材71p,71pを有する。そして、二つの導電部材71p,71pは、互いの間に間隔をあけながら幅方向に二つ並んで配されている。例えば、
図4の例では、二つの導電部材71p,71p同士が、幅方向の中央線CLWに関して線対称になるように配置されているとともに、各導電部材71p,71pは、長手方向の前後に沿った直線状に配置されている。
【0051】
また、導電部材71pのうちで吸収性コア11の背側部11bに位置する後端部71pbと71pa(「被覆部材によって被覆されずに露出された部分」に相当)は、絶縁用被覆部材72cによって被覆されずに露出されているが、後端部71pb以外の部分71prは、同絶縁用被覆部材72cによって被覆されて絶縁されており、更に、導電部材71pは、吸収性コア11の腹側部11aよりも長手方向の前側の部分で、コネクタ74(接続部に相当)を介して電気的に上記検知部75に接続されている。すなわち、同検知部75は、電源75bと、同電源75bの正極の電位を計測するテスター75tとを有しているが、同電源の正極は、一方の導電部材71pに接続され、負極は、もう一方の導電部材71pに接続されている。
【0052】
よって、二つの導電部材71p,71pの後端部71pb,71pb同士の間に位置する吸収性コア11の部分11pが、湿潤状態ではない場合には、後端部71pb,71pb同士は電気的に非導通となるので、テスター75tの計測値は、概ね電源75bの正極の電位値となる。しかし、湿潤状態になった場合には、後端部71pb,71pb同士が導通するため、テスター75tの計測値は、概ね負極の電位値まで降下する。ここで、かかる吸収性コア11の部分11pの湿潤状態は、背側部11bへ排出された大便、或いは背側部11bに到達した尿によってもたらされる。よって、テスター75tの計測値の降下に基づいて、背側部11bへの排便の有無及び尿の背側部11bへの到達の有無を検知することができる。
【0053】
図7Aは、排泄物検知センサー71を構成する上記導電部材71pの一例の概略図であって、
図6中のVII部の拡大図である。また、
図7Bは、
図7A中のB−B断面図である。
導電部材71pは、長手方向に長尺で可撓性且つ所定の絶縁性(低い導電率)を有した帯状シート部材72sを基材とする。帯状シート部材72sの長手方向の全長は、例えば尿取りパッド1の長手方向の全長と同長であり、また帯状シート部材72sの幅方向の寸法は、4mm〜12mmの範囲から選択され、この例では、全長に亘って8mmの一定幅とされており、更に、帯状シート部材72sの厚さ方向の寸法は、10μm〜50μmの範囲から選択され、この例では、25μmとされている。
【0054】
そして、同帯状シート部材72sの肌側面には、長手方向に沿って連続して導電性インクが全長に亘って塗布されていて、これにより、導電性インク層72iが形成されており、かかる導電性インク層72iによって、所定の導電率(電気伝導率とも言われ、単位は(S/m))の導電性が長手方向の全長に亘って帯状シート部材72sに付与されている。
【0055】
導電性インク層72iの幅方向の寸法は、帯状シート部材72sの幅方向の寸法よりも小さくされており、これにより、帯状シート部材72sの肌側面における幅方向の両側の部分には、導電性インク層72iが存在しない未存在領域が形成されている。この例では、導電性インク層72iの幅方向の寸法は、3mm〜8mmの範囲から選択され、この例では3mmとされており、よって、幅方向の両側には、それぞれ1〜3.5mmの範囲から選択され、この例では2.5mmの幅方向の寸法で上記の未存在領域が形成されている。また、導電性インク層72iの坪量(g/m
2)は、例えば10〜30(g/m
2)の範囲から選択され、この例では、20(g/m
2)とされている。
【0056】
また、かかる帯状シート部材72sの肌側面には、上記の導電性インク層72iごと同肌側面を厚さ方向から被覆するように、絶縁用被覆部材72cが設けられている。すなわち、絶縁用被覆部材72cは、導電性インク層72iを完全に被覆すべく、導電性インク層72iの幅方向の両側から幅方向にはみ出すように設けられており、また、同被覆部材72cの導電率は、導電性インク層72iよりも大幅に低い導電率に設定されている。よって、同被覆部材72cで被覆された導電性インク層72iの部分は、絶縁されている。但し、帯状シート部材72cの長手方向の後端部71pbは、上記被覆部材72cで被覆されておらず、これにより、同後端部71pbでは導電性インク層72iが露出しているため、絶縁状態とはされていない。そして、これにより、導電部材71pの後端部71pbは、前述したような絶縁用被覆部材72cで被覆されない露出状態となっている。
【0057】
なお、帯状シート部材72sの材料としては、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリスチレン等の2軸延伸フィルムを使用可能であり、この例では、ポリプロピレンフィルムが使用されている。但し、何等上記に限るものではない。すなわち、導電性インク層72iよりも低い導電率の材料であれば、使用可能である。ただ、望ましくは、帯状シート部材72sの導電率は、絶縁用被覆部材72cの導電率と同等又はそれよりも小さいと良い。
【0058】
また、導電性インク層72iに係る導電性インクは、導電性粉体、固定材(バインダ)、充填剤などを混練して作成される。導電性粉体としては、例えば、銀、金、銅、ニッケル、アルミニウム等の導電性金属粉、或いは、カーボン、黒鉛等の導電性非金属粉等を例示でき、この例では、導電性カーボンと黒鉛が使用されている。固定材としては、例えば、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリアクリル系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリエステル系樹脂等を例示でき、この例ではポリエステル系樹脂が使用されている。充填剤は、導電性インクの塗布時の粘度を調整する粘度調整剤や、塗布時の塗布性を高める分散材などであり、具合的にはイソホロンやアノンである。そして、これら導電性粉体と固定材と充填剤とは、所定の配合比(重量比)で配合され、この例では、配合比は40:20:40とされている。また、帯状シート部材72sへの導電性インク層72iの形成は、例えばスクリーン印刷、ダイレクトグラビア印刷、フレキソ印刷等によって行われる。
【0059】
また、絶縁用被覆部材72cの材料としては、シリコン系接着剤、ホットメルト系コーティング材、ワリセン等を例示できて、この例では、高い絶縁性(低い導電率)を奏するワセリンが使用されている。
【0060】
ところで、
図6に示すように、二つの導電部材71pは、吸収性コア11において着用者の肛門が対向すべき肛門対向位置PAを、幅方向の両側から挟むように配置されている。また、吸収性コア11の背側部11bに位置する導電部材71pの後端部71pbは、長手方向に所定の長さを有し、同後端部71pbは、肛門対向位置PAを長手方向に跨ぐように配置されている。そのため、導電部材71pの後端部71pbのうちの少なくとも一部は、長手方向の位置に関して、肛門対向位置PAと同位置に位置している。よって、排便時点から大きく遅れること無く排便を検知可能となって、これにより、大便が、吸収性コア11の長手方向の後端縁部11eb、ひいては、尿取りパッド1の長手方向の後端縁部から1eb漏れ出す前に、確実に尿取りパッド1を交換可能となる。
【0061】
また、
図6に示すように、二つの導電部材71p,71pの各後端部71pb,71pbは、それぞれ長手方向に沿った直線状に設けられており、つまり、同後端部71pbは、吸収性コア11を幅方向に横断するようには設けられてはいない。よって、後端部71pbによる吸収性コア11の中央部の柔軟性の阻害を有効に抑制可能であり、結果、尿取りパッド1の着用時に着用者が覚え得る違和感を抑制することができる。
【0062】
更に、
図4Cに示すように、二つの導電部材71p,71pの各後端部71pb,71pbは、それぞれ、表面シート21と吸収性コア11との間に介挿されている。すなわち、吸収性コア11よりも厚さ方向の肌側に配置されている。よって、吸収性コア11へ向けて排出された大便や尿の検知性を高めることができる。但し、このように表面シート21と吸収性コア11との間に導電部材71pの後端部71pbが介挿されていると、場合によっては、吸収性コア11の肌側面が後端部71pbによって肌側から部分的に覆われてしまって、これにより、吸収性コア11への尿の吸収阻害を招く恐れがある。しかし、この点につき上述の例では、導電部材71pの後端部71pbは、吸収性コア11を幅方向に横断するようには設けられておらず、吸収性コア11のうちの幅方向の端部に設けられている。よって、同後端部71pb起因の吸収性コア11への尿の吸収阻害も有効に抑制されるようになっている。
【0063】
また、既述のように、表面シート21の肌側面には、表面シート21と吸収性コア11とを一緒に圧搾してなる圧搾部E,Eがへこんで形成されている。詳しくは、この例では、吸収性コア11の股下部11mには、長手方向に沿った溝状の圧搾部E,Eが、幅方向に二つ並んで形成されている。そして、ここで、二つの導電部材71p,71pは、これら二つの圧搾部E,Eよりも幅方向の端側の位置に配置されている。すなわち、圧搾部E,Eが形成されていない位置に、二つの導電部材71p,71pが配置されている。
【0064】
よって、圧搾部Eが奏すべき尿の拡散作用又は吸収性コア11の折り曲げ作用が、導電部材71pによって阻害されることは有効に防止されて、その結果、同圧搾部Eは上記の作用を確実に奏することができる。
【0065】
なお、望ましくは、導電部材71pのうちで表面シート21と対向する面、すなわち肌側面には、尿取りパッド1の腹側たる前側又は背側たる後側の向きを示す印が示されていると良い。そして、このようになっていれば、上記印を見た介護者又は着用者は、尿取りパッド1の前側と後側とを容易に認識することができて、結果、前側と後側とを間違わずに尿取りパッド1をおむつ101に取り付け可能となる。
【0066】
===第2実施形態===
図8は、第2実施形態の尿取りパッド1の概略平面図である。なお、
図8では、表面シート21及びサイドシート41を取り外して示している。
前述の第1実施形態では、
図6に示すように、吸収性コア11の背側部11bに位置する導電部材71pの部分71pbたる後端部71pbだけを絶縁用被覆部材72cで被覆せずに導電可能に露出させていたが、この点につき、この第2実施形態では、
図8に示すように、後端部71pbだけでなく前端部71paも導電可能に露出させている。そして、主にこの点で第1実施形態と相違し、これ以外の点は、上述の第1実施形態と概ね同じである。そのため、以下では、この相違点について主に説明し、第1実施形態と同じ構成については同じ符号を付して、その説明については省略する。
【0067】
図8に示すように、この第2実施形態では、導電部材71pの前端部71paについても、絶縁用被覆部材72cで被覆せずに導電可能に露出させている。そして、かかる前端部71paは、吸収性コア11の腹側部11aに位置している。よって、腹側部11aへの尿の到達も検知することができる。すなわち、排出された尿が腹側部11aに到達して、当該尿によって、腹側部11aに位置する二つの導電部材71p,71pの前端部71pa,71pa同士が導通されれば、二つの導電部材71p,71pは通電状態となって、これにより、尿の腹側部11aへの到達を検知することができる。よって、背側部11b及び腹側部11aから尿が漏れ出す前に尿取りパッド1を速やかに交換可能となる
ここで、望ましくは、
図8に示す導電部材71pの前端部71paの後側の端縁71paeの位置、及び導電部材71pの後端部71pbの前側の端縁71pbeの位置を、それぞれ、次のように設定すると良い。すなわち、吸収性コア11の前側の端縁11eaから上記前端部71paの後側の端縁71paeまでの長手方向の寸法をLaとした場合に、当該Laを吸収性コア11の長手方向の全長L11で除算した比率Raが、0.22〜0.36の任意値になるように設定すると良く、また、吸収性コア11の前側の端縁11eaから上記後端部71pbの前側の端縁71pbeまでの長手方向の寸法をLbとした場合に、当該Lbを吸収性コア11の長手方向の全長L11で除算した比率Rbが、0.78〜0.86の任意値になるように設定すると良い。
【0068】
そして、このように設定すれば、吸収性コア11から即座に漏れ出す可能性の無い状態のうちで、吸収性コア11に尿が適度に拡散したときに、当該拡散状態になったことを、導電部材71pの前端部71pa又は後端部71pbの導通に基づいて検知することができる。よって、吸収性コア11が持つ吸収可能容量に近い水準まで尿を同コア11に吸収させながらも、同コア11から尿漏れする前に尿取りパッド1を交換することができて、その結果、尿取りパッド1の使用枚数の大幅な削減を図れる。
【0069】
===尿取りパッド1の製造方法について===
上述の尿取りパッド1は、適宜な製造装置によって、例えば次のようにして製造される。
先ず、積繊装置によって吸収性コア11が生成される。積繊装置は、例えば、上面を搬送面として搬送対象物を吸着しながら搬送するサクションベルトコンベアと、その上方に配されて回転する回転ドラムと、を有する。
【0070】
回転ドラムは、外周面にへこみ部を有する。よって、適宜なダクトから散布される液体吸収性素材を、この外周面のへこみ部が吸着して積層することにより、上述の吸収性コア11が生成される。そして、生成された吸収性コア11は、上記のサクションベルトコンベアで搬送されるティッシュペーパー11tの連続体の上面に載置されて、ティッシュペーパー11tの連続体と一体となって搬送される。なお、この搬送中には、適宜なガイド部材によって、ティッシュペーパー11tの連続体の幅方向の両端部が巻き上げられて同両端部で吸収性コア11の上面は覆われて、これにより、吸収性コア11はティッシュペーパー11tの連続体でくるまれた状態にされる。そして、そのまま搬送方向の下流のロータリーカッター装置へと送られる。
【0071】
ロータリーカッター装置は、回転する一対のロールを有し、そのうちの一方のロールの外周面には、カッター刃が設けられている。よって、ロータリーカッター装置を通過する際に、吸収性コア11をくるむティッシュペーパー11tの連続体は、搬送方向に並ぶ吸収性コア11,11同士の間の位置で分断されて、これにより、各吸収性コア11は、単票状のティッシュペーパー11tに個別にくるまれた状態にされる。そして、かかる吸収性コア11は、順次、搬送方向の下流へと送られる。
【0072】
搬送方向の下流側の所定位置では、排泄物検知センサー71の連続体、すなわち二つの導電部材71p,71pの連続体が、幅方向に並んだ状態で吸収性コア11の上方から合流し、同吸収性コア11の上面のティッシュペーパー11tに載置されて接着される。なお、かかる接着は、二つの導電部材71p,71pの連続体に予め塗布された接着剤によってなされる。そして、搬送方向の下流へと搬送される。
【0073】
搬送方向の下流側の所定位置では、一対のサイドシート41の連続体が組み付けられた表面シート21の連続体が上方から合流する。すなわち、表面シート21の連続体の幅方向の両側には、それぞれ各サイドシート41の連続体が熱溶着等で固定されており、また、各サイドシート41の連続体には、既に伸長状態の弾性部材45,45…が固定されている。そして、このような表面シート21の連続体によって吸収性コア11は上方から覆われた状態になる。そして、その後は、かかる吸収性コア11と表面シート21とが一体となって搬送方向に搬送されて、これにより、搬送方向の下流側のエンボスロール装置へと送られる。
【0074】
エンボスロール装置は、例えば回転する上下一対のロールを有し、そのうちの上ロールの外周面には、前述の圧搾部E,Eに対応した形状の突起部が設けられている。よって、エンボスロール装置を通過する際に、表面シート21の連続体と吸収性コア11との両者には圧搾部E,Eが形成され、そして、更に搬送方向の下流へと送られる。
【0075】
搬送方向の下流側の所定位置では、下方から裏面シート31の連続体が合流する。そして、吸収性コア11を介して表面シート21の連続体を裏面シート31の連続体上に載置することにより、表面シート21の連続体と裏面シート31の連続体との間に吸収性コア11が介挿された状態にされ、かかる状態のまま、その下流のラウンドシール装置へと送られる。
【0076】
ラウンドシール装置は、例えば回転する上下一対のロールを有し、そのうちの上ロールの外周面には、尿取りパッド1の輪郭形状に対応した形状の突起部が設けられている。よって、ラウンドシール装置を通過する際に、表面シート21の連続体と裏面シート31の連続体との両者は、尿取りパッド1における長手方向の各端部及び幅方向の各端部に相当する位置で互いに熱溶着等で接合される。そして、これにより、尿取りパッド1の連続体が生成され、かかる尿取りパッド1の連続体は、更に搬送方向の下流側のダイカッター装置へと送られる。
【0077】
ダイカッター装置は、回転する一対のロールを有し、そのうちの一方のロールの外周面には、尿取りパッド1の輪郭形状に対応した形状の抜き刃を有している。よって、尿取りパッド1の連続体がダイカッター装置を通過する際に、抜き刃によって尿取りパッド1の連続体から尿取りパッド1が個別に打ち抜かれて、これにより、単票状の尿取りパッド1が生成される。ちなみに、上記のように打ち抜かれる際には、上記の抜き刃によって、排泄物検知センサー71の連続体たる二つの導電部材71p,71pの連続体も尿取りパッド1毎に分断される。
【0078】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0079】
上述の実施形態では、吸収性物品として尿取りパッド1を例示したが、何等これに限らない。すなわち、上記の排泄物検知装置70を使い捨ておむつに対して設けても良い。
【0080】
上述の実施形態では、表面シート21と吸収性コア11との間に排泄物検知センサー71として二つの導電部材71p,71pを介挿していたが、当該導電部材71pの配置位置は、何等これに限らない。例えば、吸収性コア11と裏面シート31との間に介挿しても良いし、これら以外の位置に介挿されても良い。但し、尿及び大便の検知性の観点からは、表面シート21と吸収性コア11との間に導電部材71pを介挿するのが望ましい。
【0081】
上述の実施形態では、導電部材71pは、帯状シート部材72sと、その肌側面に形成された導電性インク層72iとを有し、同導電性インク層72iは、絶縁用被覆部材72cで被覆されていたが、何等これに限らない。例えば、ビニール被覆の銅線のように金属線の外周を適宜な絶縁用被覆部材で被覆してなる被覆電線を導電部材71pとして用いても良い。なお、この場合も、被覆電線は長手方向に沿って配置されるとともに、被覆電線の後端部は吸収性コア11の背側部11bに位置し、同後端部の被覆は剥がされて金属線が露出されている。
【0082】
上述の実施形態では、
図3又は
図6に示すように、導電部材71pは、長手方向に沿った直線状に配置されていたが、何等これに限らない。すなわち、導電部材71pが長手方向に沿って配置されていれば、長手方向の位置に応じて幅方向の位置が多少変化していても良い。例えば、波形に若干うねりながら、長手方向に延びて配置されていても良い。つまり、ここで言う「長手方向に沿って導電部材71pが設けられる」の記載の意味は、広義には、「導電部材71pの延びる方向が、長手方向に対して45度未満の角度の範囲に収まっていること」であり、狭義には、「導電部材71pの延びる方向が、長手方向に対して30度未満の角度の範囲に収まっていること」であり、更に狭義には、「導電部材71pの延びる方向が、長手方向に対して10度未満の角度の範囲に収まっていること」である。