(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232220
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】発振回路の調整方法
(51)【国際特許分類】
H03B 5/32 20060101AFI20171106BHJP
H03B 5/36 20060101ALI20171106BHJP
H03B 5/02 20060101ALI20171106BHJP
H03B 1/00 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
H03B5/32 Z
H03B5/36
H03B5/02 Z
H03B1/00 D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-145084(P2013-145084)
(22)【出願日】2013年7月11日
(65)【公開番号】特開2015-19241(P2015-19241A)
(43)【公開日】2015年1月29日
【審査請求日】2016年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083194
【弁理士】
【氏名又は名称】長尾 常明
(72)【発明者】
【氏名】稲垣 武
(72)【発明者】
【氏名】大和田 宙
(72)【発明者】
【氏名】芳賀 旭洋
【審査官】
▲高▼橋 義昭
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−152454(JP,A)
【文献】
特開平04−304008(JP,A)
【文献】
特開平10−063756(JP,A)
【文献】
特開2001−217649(JP,A)
【文献】
特開2007−208490(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2003/0090297(US,A1)
【文献】
特開2005−303639(JP,A)
【文献】
特開2006−060687(JP,A)
【文献】
特開2009−017257(JP,A)
【文献】
特開2007−116487(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0090889(US,A1)
【文献】
特開2002−204128(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0125965(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03B 5/32
H03B 1/00
H03B 5/02
H03B 5/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の反転増幅器と、該第1の反転増幅器の入力側と出力側との間に接続した振動子とを有する発振コア回路を備え、前記第1の反転増幅器の前記出力側に一端が接続された第1の容量と、該第1の容量の他端に入力側が接続された第2の反転増幅器と、該第2の反転増幅器の入力側と出力側との間に接続された第1の抵抗と、前記第2の反転増幅器の入力側と出力側との間に接続された第2の容量と、前記第2の反転増幅器の出力側と前記第1の反転増幅器の入力側との間に接続された第3の容量とを備える補正回路を設けた発振回路の回路定数を設定する発振回路の調整方法であって、
前記振動子を取り外し、前記振動子の接続されていた箇所に前記振動子の等価並列容量よりも小さな値の容量を接続した状態で、前記第1の反転増幅器と、前記第1の容量と、前記第2の反転増幅器と、前記第3の容量とからなる一巡回路の増幅率Aを0<A≦1になるように調整する第1のステップと、
前記振動子を取り外し、前記振動子が接続されていた箇所に前記振動子の等価並列容量より大きな値の容量を接続した状態で、前記振動子の共振周波数において前記振動子の等価直列抵抗よりも大きな値の負性抵抗が得られるように、前記第1の抵抗の値を調整する第2のステップと、
を備え、自励発振防止と適切な負性抵抗特性を両立させるようにしたことを特徴とする発振回路の調整手法。
【請求項2】
請求項1に記載の発振回路の調整方法において、
前記第1のステップは、前記第1の容量と前記第2の容量の値の比を調整することを特徴とする発振回路の調整方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の発振回路の調整方法において、
前記第2のステップは、前記第3の容量の値を一定として前記第1の抵抗の値を調整することを特徴とする発振回路の調整方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コルピッツ型発振回
路の調整方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図3(a)に最も基本的なコルピッツ型の発振回路を示す。発振コア回路10は、反転増幅器11、値がRfの帰還抵抗12、値がCgの負荷容量13、値がRdのダンピング抵抗14、値がCdの負荷容量15からなり、水晶振動子20を駆動する。
図3(b)は水晶振動子20の等価回路であり、値がR1の等価直列抵抗21、値がC1の等価直列容量22、値がL1の等価直列インダクタンス23、値がC0の水晶振動子端子間容量24を有する。
【0003】
等価直列抵抗21による損失を補って発振を持続させる為には、発振周波数において発振コア回路10の水晶振動子接続端子間に抵抗値R1以上の負性抵抗を有する必要がある。また発振開始時においては、等価直列抵抗21の値R1は大きくなるため、一般に発振コア回路10の負性抵抗はその値R1の3〜5倍が要求される。
【0004】
図3(c)に発振コア回路10の負性抵抗の周波数特性を示す。反転増幅器11のトランスコンダクタンスをgmとし、水晶振動子20の接続端子の全容量をそれぞれCG,CCとし、簡単のためにダンピング抵抗14の値Rdをゼロとすると、容量CC,CGのリアクタンスが帰還抵抗12の値Rfより小さい高周波数帯では、負性抵抗(-Riで表す)は、次の式(1)で表される。
【0005】
また、低周波数帯では容量CC,CGのリアクタンスが大きくなるため、帰還抵抗12の影響により負性抵抗Riが減少し、負性抵抗Riの極性が正負切り替わるカットオフ周波数fcが式(2)のように表される。
【0006】
ここで、式(2)のCは水晶振動子20から見た容量であり、
図3(a)ではCgとCdの直列容量Cg×Cd/(Cg+Cd)となる。一方、式(1)のCC,CGは水晶振動子20の接続端子の全容量であり、発振コア回路10の容量Cg,Cdだけでなく水晶振動子端子間容量C0も含まれるため、負性抵抗は
図3(c)に示すように容量C0が大きくなるほど小さくなり、特に高周波ではその傾向が強く、発振し難くなる。
【0007】
また、
図3(c)および式(2)で示されるカットオフ周波数fcは、低周波側の発振範囲を制限するが、水晶振動子の基本共振周波数で発振させるか又はその高次共振周波数(主に3次)で発振させるかにより適宜設定される。
【0008】
基本共振周波数で発振させる場合には、ひと組の回路定数で広い周波数範囲で発振可能となるように出来るだけ低いカットオフ周波数fcに設定される。一方、高次共振周波数で発振させる場合は、水晶振動子の持つ基本共振周波数や他の高次共振周波数での発振を避けるため、ひと組の回路定数で発振可能な周波数範囲を狭く区切り、所望の高次共振周波数以外の周波数帯では負性抵抗Riがゼロもしくは非常に小さくなるようにカットオフ周波数fcおよび周波数特性を設定する。
【0009】
このように発振コア回路10には、水晶振動子端子間容量C0が付加しても所望の発振周波数帯で充分に大きな負性抵抗が得られるようにする必要がある。
【0010】
そこで、水晶振動子端子間容量C0の影響を低減する方法として、特許文献1に示されるような回路が提案されている。
図4に示す特許文献1の構成は、
図3(a)の発振コア回路10に補正回路30Aを追加した構成となっている。
【0011】
補正回路30Aは、反転増幅器31、値がRbの帰還抵抗32、値がCaの入力直列容量33、値がCcの出力直列容量34、および値がRaの入力直列抵抗36で構成され、入力直列抵抗36と帰還抵抗32の値の比(Rb/Ra)および出力直列容量34の値Ccを調整して、発振コア回路10の入力側に補正回路30Aによる交流成分を注入することで、水晶振動子端子間容量C0の影響を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3998233号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
ところで、
図4の構成は、反転増幅回路11,31の一方の出力を他方の入力に接続した一巡回路となっていることから、一巡利得と位相回転の状態によっては、負性抵抗による発振ではなく、水晶振動子20を接続していない状態でも反転増幅器11,31により発振が持続される自励発振を引き起こす場合がある。
【0014】
本来、
図4の回路では水晶振動子端子間容量C0の影響を低減するために、入力直列抵抗36と帰還抵抗32との比(Rb/Ra)を調整するが、これにより同時に補正回路30Aの利得が変化し一巡利得も変化するため、自励発振の防止と負性抵抗特性の調整の切り分けが出来ず、回路定数の調整が難しいという問題がある。
【0015】
さらに、
図4の回路では出力直列容量34の値Ccも調整するが、出力直列容量34は水晶振動子20の接続端子に接続されているため、調整により水晶振動子20の接続端子のインピーダンスが変化し、発振特性に与える影響が大きいという問題がある。
【0016】
本発明の目的は
、発振特性に大きな影響を与える回路利得と振動子の接続端子のインピーダンスを変化させることなく、最適な負性抵抗特性が得られるよう回路定数を調整することが出来る発振回
路の調整方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明
の発振回路の調整方法は、第1の反転増幅器と、該第1の反転増幅器の入力側と出力側との間に接続した振動子とを有する発振コア回路を備
え、前記第1の反転増幅器の前記出力側に一端が接続された第1の容量と、該第1の容量の他端に入力側が接続された第2の反転増幅器と、該第2の反転増幅器の入力側と出力側との間に接続された第1の抵抗と、前記第2の反転増幅器の入力側と出力側との間に接続された第2の容量と、前記第2の反転増幅器の出力側と前記第1の反転増幅器の入力側との間に接続された第3の容量とを備える補正回路を設け
た発振回路
の回路定数を設定する発振回路の調整方法であって、前記振動子を取り外し、前記振動子の接続されていた箇所に前記振動子の等価並列容量よりも小さな値の容量を接続した状態で、前記第1の反転増幅器と、前記第1の容量と、前記第2の反転増幅器と、前記第3の容量とからなる一巡回路の増幅率Aを0<A≦1になるように調整する第1のステップと、前記振動子を取り外し、前記振動子が接続されていた箇所に前記振動子の等価並列容量より大きな値の容量を接続した状態で、前記振動子の共振周波数において前記振動子の等価直列抵抗よりも大きな値の負性抵抗が得られるように、前記第1の抵抗の値を調整する第2のステップと、を備え、自励発振防止と適切な負性抵抗特性を両立させるようにしたことを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載
の発振回路の調整方法
において、前記第1のステップは、前記第1の容量と前記第2の容量の値の比を調整することを特徴とする。
請求項3にかかる発明は、請求項
1又は2に記載の発振回路の調整方法において、前記第
2のステップは、前記
第3の容量の値を一定として前記第1の抵抗の値を調整することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、自励発振を防止し、発振周波数での十分な負性抵抗により、起動不良や発振停止等の不具合のない発振回路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施例のコルピッツ型の発振回路の回路図である。
【
図2】(a)は本発明による一巡回路の利得調整回路の回路図、(b)は負性抵抗特性の調整回路の回路図である。
【
図3】(a)は従来のコルピッツ型の発振回路の回路図、(b)は水晶振動子の等価回路図、(c)は負性抵抗の周波数特性図である。
【
図4】水晶振動子端子間容量の影響を低減する方法を実施した従来のコルピッツ型の発振回路の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1に本発明の1つの実施例のコルピッツ型の発振回路を示す。本実施例の発振回路は、コルピッツ型の発振コア回路10と水晶振動子20と補正回路30で構成される。発振コア回路10は、反転増幅器11、値がRfの帰還抵抗12、値がCgの負荷容量13、値がRdのダンピング抵抗14、値がCdの負荷容量15からなる。補正回路30は、反転増幅器31、値がRbの帰還抵抗32、値がCaの入力直列容量33、値がCcの出力直列容量34、値がCbの帰還容量35からなる。
【0021】
補正回路30の入力直列容量33は、「入力直流成分をカットし交流成分をバイパスする機能」と「帰還容量35との容量比(Ca/Cb)により補正回路30の利得を設定する機能」を担う。出力直列容量34は、「出力直流成分をカットし交流成分をバイパスする機能」と「水晶振動子端子間容量C0の影響を低減するために発振コア回路10の入力に注入する交流成分の位相を調整する機能」を担う。帰還抵抗32は、「反転増幅器31の自己バイアス機能」と「入力直列容量33、帰還抵抗32とのCR時定数による周波数特性の調整」を担う。ここで、各素子はそれぞれ2つの機能を有しているが、1つ目の機能については素子値の制限が比較的緩いため、各素子の値Ca、Cb、Cc、Rbは、2つ目の機能に対する最適値を選択するようにする。
【0022】
従来構成と同様、本発明の発振回路の構成でも、反転増幅回路11,31の一方の出力を他方の入力に接続した一巡回路となっていることから、一巡利得と位相回転の状態によっては、負性抵抗による発振ではなく、水晶振動子20が接続されていない状態でも反転増幅器11,31により発振が持続される自励発振を引き起こす場合がある。
【0023】
そこで、
図2(a)に示す一巡回路の利得調整回路により、自励発振を防止する回路定数を選定する。
図1の水晶振動子20を取り除き、発振コア回路10と補正回路30を接続する配線を切断し、発振コア回路10の入力から補正回路30の出力までの利得を調整する。ここで、発振コア回路10は、水晶振動子端子間容量C0が大きくなると回路利得が低下するが、発振の諸特性にとって回路利得の低下は望ましくない。
【0024】
よって、自励発振を防止し且つ出来るだけ回路利得を得る条件として、発振コア回路10の水晶振動子接続端子間に、水晶振動子端子間容量C0の想定する最小値C0minの容量を接続したときに、
図2(a)に示す一巡回路の利得調整回路の利得Aが、全周波数帯域において0<A≦1となるように、入力直列容量33と帰還容量35の比(Ca/Cb)による補正回路30の利得を調整する。
【0025】
これによって、実際に水晶振動子20が接続されたときには、自励発振が誘発されず負性抵抗による安定な発振が得られる。なお、本発明の調整手法では、容量CaとCbの比を一定に保つことで、一巡利得調整後の補正回路30の利得は常に一定値になるようにする。
【0026】
次に、
図2(b)に示す負性抵抗特性の調整回路により、所望周波数帯で最適な負性抵抗特性が得られるように回路定数を選定する。
図3(c)に示したように、負性抵抗Riは水晶振動子端子間容量C0が大きいほど小さくなることから、発振コア回路10の水晶振動子20の接続端子間に、水晶振動子端子間容量C0の想定する最大値C0maxの容量を接続して、負性抵抗特性を調整する。
【0027】
水晶振動子端子間容量C0の影響を低減するために、従来は、発振コア回路10の入力に注入する交流成分の位相調整において、容量Ccを可変していたが、本発明の調整方法では容量Ccを一定値(例えば容量Caと同一にする)として抵抗値Rbを可変する。よって、本調整により水晶振動子20の接続端子のインピーダンスを大きく変化させることはない。
【0028】
なお、対応周波数を大きく変化させる場合には、従来と同様に発振コア回路10の負荷容量13,15および帰還抵抗12の値Cg,Cd,Rfを可変して、カットオフ周波数fcを調整すればよい。
【0029】
以上より、本発明の発振回路およびその調整方法によれば、水晶振動子端子間容量C0の影響を低減する補正回路30を備えた発振回路によって、発振特性に大きな影響を与える回路利得と水晶振動子接続端子のインピーダンスを変化させることなく、最適な負性抵抗特性が得られるように回路定数を調整することが出来る発振回路を実現できる。
【符号の説明】
【0030】
10:発振コア回路、11:反転増幅器、12:帰還抵抗、13:負荷容量、14:ダンピング抵抗、15:負荷容量
20:水晶振動子、21:等価直列抵抗、22:等価直列容量、23:等価直列インダクタンス
30,30A:補正回路、31:反転増幅器、32:帰還抵抗、33:入力直列容量、34:出力直列容量、35:帰還容量、36:入力直列抵抗