(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ポリビニルアルコールと炭素数1〜7のアルデヒド化合物とのアセタール化反応により得られる水溶性高分子であって、分子中にビニルアルコール構造単位70〜99mol%及びアセタール化された構造単位1〜30mol%を有する水溶性高分子を含む半導体用濡れ剤。
【背景技術】
【0002】
パソコン及び携帯電話等の情報通信機器、並びに、デジタルカメラ及びテレビ等のデジタル家電製品では、シリコンウェーハを基板とする半導体デバイスが広く用いられている。近年の半導体チップの高集積化、大容量化に伴い、半導体デバイスの加工精度は微細化の一途をたどっており、デバイス形成前のウェーハに対しては、その平滑性、及びキズ等の欠陥を有さないいわゆる無傷性の要求がますます厳しいものとなっている。
【0003】
ウェーハの平滑化技術としては、CMP(ケミカルメカニカルポリッシング:化学機械研磨)と呼ばれる研磨プロセスがよく用いられている。CMPによる平滑化処理では、微細な砥粒と塩基性化合物を含有した研磨用組成物が使用される。この研磨用組成物を研磨パッド表面に供給しながら、圧接した研磨パッドと被研磨物であるウェーハとを相対移動させて表面を研磨する。このとき、砥粒によるメカニカル研磨と、塩基性化合物によるケミカル研磨とが同時に進行することにより、広範囲にわたりウェーハ表面を高精度に平滑化することができる。
一般に、CMPによるウェーハ研磨では、3〜4段階の研磨を行うことにより、高精度の平滑化を実現している。第1段階および第2段階に行う1次研磨および2次研磨では、表面の平滑化を主な目的としていることから、研磨速度が重要視される傾向がある。これに対し、第3段階または第4段階の仕上げ研磨では、ウェーハ表面のヘイズ及びCOP(Crystal Originated Particles;結晶欠陥)の抑制、更には凝集した研磨砥粒、研磨パッド屑、研磨により除去されたシリコン粉といったいわゆるパーティクルの付着による汚染防止などについても重要視される。
【0004】
上記仕上げ研磨に使用される研磨用組成物としては、研磨用組成物中に水溶性高分子化合物を添加する方法が有効であることが知られている。特許文献1には、分子量10万以上の水溶解性の高分子化合物及び水溶改正の塩類等を含有してなる研磨用組成物が開示されている。また、特許文献2には、水溶性高分子化合物を含む研磨用組成物が記載され、該水溶性高分子化合物として、セルロース誘導体又はポリビニルアルコールを用いることができる旨が示されている。
【0005】
【特許文献1】特開平2−158684号公報
【特許文献2】特開平11−116942号公報
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を詳しく説明する。尚、本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルを意味し、「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート及びメタクリレートを意味する。また、「(メタ)アクリロイル基」とは、アクリロイル基及びメタクリロイル基を意味する。
【0012】
<水溶性高分子>
本発明の半導体用濡れ剤は、ポリビニルアルコールと炭素数1〜7のアルデヒド化合物とのアセタール化反応により得られる水溶性高分子であって、分子中にビニルアルコール構造単位70〜99mol%及びアセタール化された構造単位1〜30mol%を有する水溶性高分子を含む。
ここで、前記ビニルアルコール単位とは、以下の式(1)で表される構造単位を示す。また、前記アセタール化された構造単位とは、主に以下の一般式(2)で表される構造単位を示す。
[−CH
2CH(OH)−] (1)
【化1】
〔式中、Yは、水素又は炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基であって、該アルキル基は官能基によって置換されていてもよい。〕
【0013】
本発明における水溶性高分子は、前記式(1)で表されるビニルアルコール構造単位を70〜99mol%の範囲で有する。該構造単位の好ましい範囲は70〜95mol%であり、より好ましい範囲は75〜90mol%である。式(1)で表される構造単位は、ウェーハへの吸着性が良好であるとともに、水溶性高分子の水への溶解性を確保する点で重要である。
水溶性高分子におけるビニルアルコール構造単位が70mol%未満の場合、水への溶解性が十分でなく、本発明の半導体用濡れ剤の効果が得られない場合がある。また、99mol%を超える場合、前記式(2)で表されるアセタール化された構造単位が1mol%未満となるため、ウェーハへの吸着性が不十分となることがある。
【0014】
式(2)において、Yは、水素又は炭素数1〜6の直鎖又は分岐アルキル基であって、該アルキル基は官能基によって置換されていてもよい。Yは、これらの内の1種でもよく、又2種以上を併用してもよい。上記の内、ウェーハに対する吸着性が良好である点で、炭素数3〜6の直鎖または分岐アルキル基が好ましい。
【0015】
また、水溶性高分子において、前記アセタール化された構造単位は1〜30mol%の範囲にあることが必要である。該構造単位の好ましい範囲は5〜30mol%であり、より好ましい範囲は10〜25mol%である。アセタール化された構造単位は、ウェーハへの吸着性を付与するために重要な構造単位である。
アセタール化された構造単位が1mol%未満の場合はウェーハへの吸着性が不十分となる場合があり、30mol%を超える場合は水への溶解性が不十分となることが懸念される。
【0016】
水溶性高分子の数平均分子量は、1,000〜200,000の範囲であることが好ましく、より好ましくは1,500〜100,000の範囲であり、さらに好ましくは2,000〜50,000の範囲である。数平均分子量が1,000以上の場合、ウェーハの濡れ性が良好となる傾向があり、200,000以下であれば、研磨砥粒の分散性を確保することができる。
【0017】
<水溶性高分子の製造方法>
本発明における水溶性高分子は、例えば、溶媒中、ポリビニルアルコール類の水酸基の一部をアルデヒド化合物と反応させ、アセタール化することにより得ることができる。
一般に、アセタール化は、ポリビニルアルコールとアルデヒド化合物とを塩酸等の酸触媒の存在下で脱水縮合させて行われ、従来公知の方法を使用することができる。例えば、ポリビニルアルコールを1〜30質量%含む水溶液を調整し、−5〜60℃程度の温度範囲で酸触媒及びアルデヒド化合物を接触させて20分〜6時間反応を進行させる。その後、必要に応じて温度を10〜50℃上昇させて更に30分〜5時間熟成反応させて反応を完了し、好ましくは冷却することによりアセタール化ポリビニルアルコールを得る方法が挙げられる。
【0018】
上記アルデヒド化合物としては、例えば、ホルムアルデヒド、並びにアセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、t−ブチルアルデヒド及びヘキシルアルデヒド等の直鎖または分岐アルキルアルデヒド類;シクロヘキサンカルバルデヒド、ベンズアルデヒド等の脂環式又は芳香族アルデヒド類等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。また、ホルムアルデヒドを除き、1以上の水素原子がハロゲン等により置換されたものであってもよい。これらの内でも、水に対する溶解性が高くアセタール化反応が容易である点から、直鎖または分岐アルキルアルデヒド類であることが好ましく、その中でもn−プロピルアルデヒド、n−ブチルアルデヒド、n−ペンチルアルデヒドであることがより好ましい。
アルデヒド化合物としては、上記の他にも、2−エチルヘキシルアルデヒド、ノニルアルデヒド、デシルアルデヒド等の炭素数8以上のアルデヒド化合物を用いてもよい。
【0019】
ポリビニルアルコールは、市販のものを用いてもよいし、重合開始剤等の存在下でギ酸ビニル、酢酸ビニル及びプロピオン酸ビニル等のビニルエステル類の溶液重合により得られたポリビニルエステルを鹸化することにより得ることもできる。尚、ビニルエステル類としては、重合安定性等の観点から酢酸ビニルが好ましい。本発明では、ポリビニルアルコールは完全鹸化型及び部分鹸化型のいずれを用いてもよいが、部分鹸化の場合、鹸化率は70mol%以上であることが好ましく、80mol%以上であることがより好ましく、90mol%以上であることがさらに好ましい。
【0020】
<半導体用濡れ剤>
本発明の半導体用濡れ剤は、前記水溶性高分子及び水を含んでなる。水は、濡れ剤としての効果を損なわないよう、純度の高いものを用いることが好ましい。具体的には、イオン交換樹脂により不純物イオンを除去した後、濾過により異物を除去した純水若しくは超純水、又は、蒸留水を使用することが好ましい。濡れ剤には、この他に、水との混和性が高いアルコール及びケトン類等の有機溶剤等を含んでいてもよい。
半導体用濡れ剤中の水溶性高分子の割合は、水溶液として扱いやすい粘度であれば特に限定されないが、1〜50質量%の範囲が好ましく、3〜40質量%の範囲がより好ましく、5〜30質量%の範囲がさらに好ましい。
【0021】
本発明における水溶性高分子は、ウェーハ表面等への吸着性に優れ、特に完全に酸化膜が除去された状態のウェーハ表面に対して高い吸着性を示す。このため、ウェーハの表面処理工程に本発明の半導体用濡れ剤を用いた場合、研磨後のウェーハ表面の平滑性を高め、COP及びパーティクル付着による汚染等を低減することができる。これらの効果が得られる理由として、以下のメカニズムを想定している。
ウェーハ表面の平滑性に関しては、半導体用濡れ剤中の水溶性高分子がウェーハ表面に吸着することで、CMPのメカニカル研磨においてウェーハ表面と砥粒との間の摩擦が緩和される。このため、メカニカル研磨によりウェーハ表面に形成される微小な凹凸が低減され、平滑性が向上すると考えられる。
【0022】
また、上述した通り、メカニカル研磨では、ウェーハ表面に研磨用組成物が供給されるとともに研磨パッドがウェーハ表面に押し付けられて回転することにより、ウェーハ表面を物理的に研磨する。よって、ウェーハ表面ではCOP以外の箇所に研磨パッドが押し付けられ、ウェーハ表面に対して垂直方向に研磨されることとなる。メカニカル研磨の進行に伴いCOPは次第に小さくなり、その深さ以上にウェーハ表面が研磨されたときにCOPは消滅することとなる。したがって、メカニカル研磨は、COPの数を減少させ、又その大きさを低減する効果を示すと考えられる。
一方、ケミカル研磨では、研磨の際にCOP内に研磨用組成物が入り込み、塩基性化合物がCOP内部を腐食又はエッチングする。このように、COP内部では、その内部壁に対して垂直方向に研磨されるため、ケミカル研磨の進行に伴いウェーハ表面のCOPは大きくなると考えられる。
本発明では、ウェーハ表面に吸着した水溶性高分子は、メカニカル研磨以上にケミカル研磨を抑制する働きを有するものと想定している。ウェーハに対する水溶性高分子の吸着性が高いほどこの傾向は強くなり、結果として平滑性が高くCOPの少ないウェーハ表面を得ることができると推察される。
【0023】
さらに、ウェーハ表面に水溶性高分子が吸着することにより、その表面が親水化される。これにより、研磨の際のパーティクルの付着による汚染も防止することができる。
【0024】
<研磨用組成物>
本発明の研磨用組成物は、上記半導体用濡れ剤、水、砥粒及びアルカリ化合物を含んでなるものである。研磨用組成物中の半導体用濡れ剤の割合は、特に限定されるものではないが、研磨用組成物がCMPにおける扱い上、又ウェーハ表面に吸着するにあたり適度な粘度とすることが好ましい。研磨用組成物の具体的な粘度は、0.1〜10mPa・sの範囲であることが好ましく、0.3〜8mPa・sの範囲であることがより好ましく、0.5〜5mPa・sの範囲であることがさらに好ましい。
また、上記水溶性高分子は、研磨剤用組成物全体の0.001〜10質量%の範囲となるよう用いることが好ましく、0.005〜5質量%の範囲であることがより好ましい。
【0025】
砥粒としてはコロイダルシリカ等を用いることができる。砥粒としてコロイダルシリカを用いる場合、研磨用組成物におけるその含有量は、0.1〜50質量%であることが好ましく、1〜30質量%であることがより好ましく、3〜20質量%であることがさらに好ましい。コロイダルシリカの使用量が0.1質量%以上であればメカニカル研磨の研磨速度が良好なものとなる。また、50質量%以下であれば、砥粒の分散性が保持され、ウェーハ表面の平滑性が良好なものとすることができる。
【0026】
コリダルシリカの平均粒子径は、必要とする研磨速度と研磨後のウェーハ表面の平滑性から適宜選択されるが、一般的には、2〜500nmの範囲であり、5〜300nmの範囲が好ましく、5〜200nmの範囲がより好ましい。
【0027】
アルカリ化合物としては、水溶性のアルカリ化合物であれば特に制限はなく、アルカリ金属水酸化物、アミン類又はアンモニア若しくは4級水酸化アンモニウム塩等を使用することができる。アルカリ金属水酸化物としては、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化ルビジウム及び水酸化セシウム等が挙げられる。アミン類としては、トリエチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチルペンタミン及びテトラエチルペンタミン等が挙げられる。4級水酸化アンモニウム塩としては、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム及び水酸化テトラブチルアンモニウム等が挙げられる。これらの内では、半導体基板に対する汚染が少ないという点からアンモニア又は4級水酸化アンモニウム塩が好ましい。
本発明の研磨用組成物は、前記アルカリ化合物を添加することにより、そのpHが8〜13となるように調整されるのが好ましい。pHの範囲は8.5〜12に調整するのがより好ましい。
【0028】
研磨剤用組成物には、上記以外にも、必要に応じて有機溶剤、各種キレート剤及び界面活性剤等を添加することができる。
【実施例】
【0029】
以下、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例により限定されるものではない。尚、以下において「部」及び「%」は、特に断らない限り質量部及び質量%を意味する。
製造例で得られた水溶性高分子の分析方法並びに、実施例及び比較例における半導体用濡れ剤又は研磨用組成物の評価方法について以下に記載する。
【0030】
<アセタール化率>
ポリビニルアルコールのアセタール化率は、以下の方法で算出した。すなわち、アセタール化反応は、理論上アルデヒド1molに対しビニルアルコール由来の水酸基2molが反応することから、用いたアルデヒド量をXmol%(対水酸基)、アルデヒドの反応率をY%とした場合、下式によって表すことができる。
アセタール化率(mol%)=2×X×Y
アルデヒドの反応率は、GC(ガスクロマトグラフィー GC−2014、島津製作所製)を用いて測定した。
【0031】
<数平均分子量(Mn)>
各製造例で得られた重合体について、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー HLC−8220、東ソー製)を用いて、ポリスチレン換算により測定した。
【0032】
<耐エッチング性(E.R.)>
ガラスカッターで3×6cmに切出したウェーハの重量を測定後、3%フッ酸水溶液に20秒浸漬してウェーハ表面の酸化膜を除去し、その後純水で10秒洗浄した。この工程をウェーハの表面が完全撥水になるまで繰り返した。次いで、アンモニア:水の重量比が1:19であるアンモニア水に、水溶性高分子の濃度が0.18wt%となるように半導体用濡れ剤を加えて、エッチング薬液を調整した。ウェーハをエッチング薬液に完全に浸漬させ、25℃、12時間静置してエッチングした。エッチング前後のウェーハ重量変化から、次式に従いエッチングレート(E.R.)を算出した。
【数1】
【0033】
<濡れ性>
耐エッチング性と同様の方法にてウェーハ表面の酸化膜を除去後、0.18wt%の水溶性高分子溶液中に5分間浸漬した。浸漬後、ピンセットを用いて、ウェーハの表面が液面に対して垂直になるように引き上げ、10秒経過時点におけるウェーハ端部からの撥水距離を目視で確認し、以下の基準により判定した。
○:撥水距離 5mm未満
△:撥水距離 5〜10mm
×:撥水距離 10mm超
【0034】
<ウェーハ外観>
耐エッチング性と同様の方法でエッチングを行った後の、ウェーハ表面を目視で確認し、以下の基準により判定した。
○:表面に荒れが認められない
△:表面がやや荒れている
×:表面が著しく荒れている
【0035】
<耐アルカリ性>
50ccのスクリュー瓶に水酸化ナトリウムを水に溶かして調整したpH10のアルカリ水溶液40gに水溶性高分子5.0gを加え、蓋をして良く混合した。アルミブロックヒーター内で50℃、1ヶ月静置後の加水分解率をGCから評価し、以下の基準より判定した。
○:水溶性高分子の加水分解率が1%未満
△:水溶性高分子の加水分解質が1%以上5%未満
×:水溶性高分子の加水分解率が5%以上
【0036】
<シリカ分散性>
9ccスクリュー瓶にコロイダルシリカ(1次粒子径:30〜50nm)5.0gに樹脂固形分20%の水溶性高分子水溶液を0.5g加えて、良く混合した。一晩静置後のシリカの粒子径(A)を動的光散乱法(ELSZ−1000、大塚電子製)により測定し、水溶性高分子を加えていないコロイダルシリカの粒子径(B)からの変化率を下式に従って算出し、以下の基準より判定した。
変化率(%)={(A−B)/B}×100
○:変化率が10%未満
△:変化率が10%以上〜30%未満
×:変化率が30%以上
【0037】
≪ポリビニルアルコールのアセタール化≫
製造例1
攪拌翼、還流冷却管、温度計、各種導入管を備えた3Lの4つ口フラスコを用意し、PVA105(クラレ社製ポリビニルアルコール、鹸化度98mol%、重合度500)を100部及び純水400部を仕込み、攪拌翼を150rpmで回転させながら、90℃に昇温させて完全に溶解させた。次いで、内温を60℃まで冷却した後、攪拌を継続しながら98%硫酸11.0部を加えた。さらにn−ブチルアルデヒド(和光純薬工業社製)6.6部を純水100部で希釈した水溶液を30分間に渡り滴下した。60℃で4時間反応させた後、25%アンモニア水を7.7部加えて反応を終了させた。ガスクロマトグラフィ(GC)の結果から、使用したアルデヒドは全量消失していることを確認した。その後、80℃で一晩真空乾燥を行い、白色固体の重合体1を得た。アセタール化率は8.0mol%であった。
重合体1をピリジン中、110℃で無水酢酸と反応させてアセチル化した後、GPCにより分子量を測定したところ、Mn=41,000であった。
【0038】
製造例2
製造例1において、使用したアルデヒドを37%ホルムアルデヒド液(和光純薬工業社製)25.8部に変更した以外は同様の操作により白色固体の重合体2を得た。GCの結果から、使用したアルデヒドは全量消失していることを確認した。アセタール化率は28.0mol%であった。また、重合体2のMnは34,000であった。
【0039】
製造例3
製造例1において、使用したアルデヒドをn−プロピルアルデヒド(和光純薬工業社製)12.5部に変更した以外は同様の操作により白色固体の重合体3を得た。GCの結果から、使用したアルデヒドは全量消失していることを確認した。アセタール化率は19.0mol%であった。また、重合体3のMnは38,000であった。
【0040】
製造例4
製造例1において、使用したアルデヒドをn−ヘキシルアルデヒド(和光純薬工業社製)5.7部に変更した以外は同様の操作により白色固体の重合体4を得た。GCの結果から、使用したアルデヒドは全量消失していることを確認した。アセタール化率は5.0mol%であった。また、重合体4のMnは43,000であった。
【0041】
製造例5
製造例1において、使用したポリビニルアルコールをPVA115(クラレ社製、鹸化度98mol%、重合度1500)に変更した以外は同様の操作により白色固体の重合体5を得た。GCの結果から、使用したアルデヒドは全量消失していることを確認した。アセタール化率は8.0mol%であった。また、重合体5のMnは129,000であった。
【0042】
製造例6
製造例1において、使用したn−ブチルアルデヒドの使用量を0.7部に変更した以外は同様の操作により白色固体の重合体6を得た。GCの結果から、使用したアルデヒドは全量消失していることを確認した。アセタール化率は0.8mol%であった。また、重合体6のMnは43,000であった。
【0043】
製造例7
製造例1において、使用したn−ブチルアルデヒドの使用量を31.1部に変更した以外は同様の操作によりアセタール化反応を行った。しかし、反応途中で水に不溶化した重合体7が析出した。溶媒に含まれるアルデヒドをGCにより測定した結果、使用したアルデヒドは全量消失していることを確認した。アセタール化率は38.0mol%であった。重合体7のMnは35,000であった。
【0044】
製造例8
製造例1において、使用したアルデヒドをn−オクチルアルデヒド(和光純薬工業社製)8.7部に変更した以外は同様の操作によりアセタール化反応を行った。しかし、原料アルデヒドの水溶解性が乏しく、反応の進行が認められず、重合体8は得られなかった。
【0045】
実施例1
水溶性高分子1の濃度が15質量%となるように水を加え、半導体用濡れ剤を調整した。得られた半導体用濡れ剤について、耐エッチング性、濡れ性、ウェーハ外観及び耐アルカリ性の評価を行った。得られた結果について表1に示した。
また、アンモニア水を加えてpHを10.0に調整したコロイダルシリカ分散液(1次粒子系30〜50nm、シリカ固形分10%)10.0g、上記半導体用濡れ剤を0.1g添加して、研磨剤用組成物を得た。得られた研磨剤用組成物についてシリカ分散性を評価し、表1に結果を示した。
【0046】
実施例2〜5及び比較例1〜3
表1に示された水溶性高分子を用いた以外は実施例1と同様に半導体用濡れ剤及び研磨剤組成物を調製した。ただし、比較例2は、アセタール化反応後の重合体が水に不溶または殆ど溶解しないため、濡れ剤及び研磨剤組成物としての評価ができなかった。各試料の評価結果について表1に示した。
【0047】
比較例4
水溶性高分子として市販のポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名「クラレポバールPVA505」、鹸化度73.5mol%、重合度500)を用いた以外は実施例1と同様に半導体用濡れ剤及び研磨剤組成物を調製し、評価結果について表1に示した。
【0048】
比較例5
水溶性高分子として市販のヒドロキシエチルセルロース(和光純薬工業社製、Mw=90,000)を用いた以外は実施例1と同様に半導体用濡れ剤及び研磨剤組成物を調製し、評価結果について表1に示した。
【0049】
比較例6
水溶性高分子として市販のポリビニルピロリドン(東京化成工業社製、商品名「PVP K30」)を用いた以外は実施例1と同様に半導体用濡れ剤及び研磨剤組成物を調製し、評価結果について表1に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示された水溶性高分子の詳細は以下の通り。
PVA505:低鹸化ポリビニルアルコール(クラレ社製、商品名「クラレポバール
PVA505」、鹸化度73.5mol%、重合度500)
HEC:ヒドロキシエチルセルロース(和光純薬工業社製、重量平均分子量90,000)
PVP K30:ポリビニルピロリドン(東京化成工業社製)
【0052】
実施例1〜5は、本発明で規定する水溶性高分子を用いた実験例であり、ウェーハへの吸着性が高いため、耐エッチング性、濡れ性及びウェーハへの外観に優れる結果が得られている。また、研磨剤組成物とした場合のシリカ分散性にも優れることが確認された。
一方、水溶性高分子におけるアセタール化された構造単位が本発明で規定する下限値に満たない比較例1はウェーハ表面への吸着性が不十分であるため、耐エッチング性、濡れ性及びウェーハ外観の点で劣る結果となった。また、アセタール化された構造単位が上限値を超える比較例2では、上記の通りアセタール化後の高分子の水への溶解性が不十分であった。
また、鹸化率の低いポリビニルアルコールを用いた比較例4は、酢酸ビニル由来のユニットの加水分解が生じるため、耐アルカリ性が不足するものであった。本発明の水溶性高分子と構造単位の異なる水溶性高分子を用いた比較例5及び6は、ウェーハ表面への吸着性及びシリカ分散性の点で、満足するものではなかった。