(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本実施の形態に係るウェーハカセットが使用される切削装置について説明する。
図1は、本実施の形態に係る切削装置の斜視図である。なお、本実施の形態においては、ウェーハカセットが切削装置に対するウェーハの搬入及び搬出に使用される構成について説明するが、この構成に限定されない。ウェーハカセットは、他の装置に対するウェーハの搬入及び搬出に使用されてもよい。なお、
図1においては、ウェーハカセットを二点鎖線で示している。
【0014】
図1に示すように、切削装置1には、複数枚のウェーハWが収容されたウェーハカセット2が搬入される。切削装置1は、ウェーハカセット2から1枚ずつウェーハWを取り出して切削し、切削後のウェーハWをウェーハカセット2内に収容するように構成されている。ウェーハWは、略円板状に形成されており、表面が格子状の分割予定ラインによって複数の領域に区画されている。分割予定ラインに区画された各領域には、各種デバイスが形成されている。ウェーハWの裏面には粘着テープTが貼着されており、この粘着テープTの外周には環状フレームFが貼着されている。
【0015】
このように、ウェーハWは、粘着テープTを介して環状フレームFと一体となった状態で、ウェーハカセット2に収容されている。なお、ウェーハWは、シリコン、ガリウム砒素等の半導体基板にIC、LSI等のデバイスが形成された半導体ウェーハでもよいし、セラミック、ガラス、サファイア系の無機材料基板にLED等の光デバイスが形成された光デバイスウェーハでもよい。
【0016】
切削装置1は、切削機構(不図示)が収容された直方体状の筐体11に隣接して、筐体11よりも低い基台12を有している。基台12の上面中央は、筐体11内に向かって延在するように開口されており、この開口を覆うように蛇腹状の防水カバー13が設けられている。防水カバー13上には、ウェーハWを筐体11内に取り込むチャックテーブル14が設けられている。防水カバー13の下方には、チャックテーブル14をX軸方向に移動させるボールねじ式の移動機構(不図示)が設けられている。
図1においては、チャックテーブル14を筐体11の外部に移動させて基台12上で待機させた状態を示している。
【0017】
基台12上には、チャックテーブル14を挟んで、ウェーハカセット2が載置されるエレベータ手段15、加工済みのウェーハWを洗浄する洗浄手段16が設けられている。エレベータ手段15では、ステージ17上にウェーハカセット2が載置され、昇降機構(不図示)によってウェーハカセット2内のウェーハWの出し入れ位置が調整される。洗浄手段16では、スピンナテーブル18上のウェーハWが基台12内に降下され、洗浄水が噴射されてウェーハWが洗浄された後、乾燥エアが吹き付けられてウェーハWが乾燥される。
【0018】
また、チャックテーブル14の上方には、Y軸方向に延在する一対のガイドレール19が設けられている。一対のガイドレール19では、X軸方向の離間接近によってウェーハカセット2に対してウェーハWが出し入れ可能にガイドされると共に、チャックテーブル14に対してウェーハWのX軸方向が位置決めされる。チャックテーブル14では、ウェーハWが保持された状態で筐体11内に送り込まれる。筐体11内では、切削機構の真下にウェーハWが位置付けられ、切削機構に対してチャックテーブル14がX軸方向に切削送りされる。
【0019】
さらに、基台12の上方には、チャックテーブル14及び洗浄手段16の相互間でウェーハWを搬送する第1、第2の搬送手段21、22が設けられている。また、第1の搬送手段21は、ウェーハカセット2に対してウェーハWを出し入れするプッシュプル機構としても機能する。第1、第2の搬送手段21、22は、それぞれ筐体11の側面に配置されたボールねじ式の駆動機構24、25で駆動される。第1の搬送手段21では、ウェーハカセット2とガイドレール19との間でウェーハWが出し入れされる共に、チャックテーブル14と洗浄手段16との間でウェーハWが搬送される。第2の搬送手段22では、チャックテーブル14と洗浄手段16との間でウェーハWが搬送される。
【0020】
筐体11の前面には、切削装置1を操作するためのタッチパネル式のモニター23が設けられている。モニター23に映し出された操作画面によって切削装置1の加工条件等が設定される。このように構成された切削装置1では、第1の搬送手段21によってウェーハカセット2からチャックテーブル14にウェーハWが搬送され、チャックテーブル14によって筐体11内にウェーハWが取り込まれる。筐体11内でウェーハWが切削された後、第2の搬送手段22によってチャックテーブル14から洗浄手段16にウェーハWが搬送される。そして、第1の搬送手段21によって洗浄済みのウェーハWが洗浄手段16からウェーハカセット2に搬送される。
【0021】
本実施の形態に係るウェーハカセット2は、このような切削装置1に対する搬送時に、内部に収容されたウェーハWが外部に飛び出さないように、飛び出し防止機構が設けられている。飛び出し防止機構は、ウェーハカセット2からのウェーハWの飛び出しを防止するだけでなく、ウェーハカセット2の搬送時に生じる上下方向の揺れによるウェーハWの破損を防止している。以下、本実施の形態に係るウェーハカセット2及び飛び出し防止機構について詳細に説明する。
【0022】
図2及び
図3を参照して、本実施の形態に係るウェーハカセットについて詳細に説明する。
図2は、本実施の形態に係るウェーハカセットの斜視図である。
図3は、本実施の形態に係るウェーハカセットのフレーム規制部の斜視図である。なお、
図2においては、ウェーハの搬入出が規制された閉状態を示し、背止部を二点鎖線で示している。また、
図3Aは、ウェーハの搬入出が可能な開状態を示し、
図3Bは、ウェーハの搬入出を規制する閉状態を示している。
図3においては、説明の便宜上、側板を省略して記載している。
【0023】
図2に示すように、ウェーハカセット2は、対向する一対の側板31の上端同士及び下端同士を下板32及び上板33で連結した箱状に形成されている。また、ウェーハカセット2の正面側には、環状フレームF(
図1参照)を出し入れする開口部34が形成され、ウェーハカセット2の背面側には、環状フレームFを背部で支持する背止部35が設けられている。一対の側板31の内側面には、水平方向(Y軸方向)に延びる複数の棚板36が等間隔に設けられている。この複数の棚板36によって、一対の側板31に環状フレームFを収容する収容棚が複数形成される。
【0024】
一対の側板31の開口部34近傍には、環状フレームF(
図1参照)の飛び出しを規制するフレーム規制部41が上下方向にスライド可能に配設されている。フレーム規制部41には、一対の側板31の棚板36と同じ間隔で、複数の棚板42が等間隔に設けられている。すなわち、フレーム規制部41の棚板42は、側板31の棚板36と共に収容棚の一部を構成している。このフレーム規制部41に対応して、一対の側板31の下端が切り欠かれている。切欠部37には、エレベータ手段15のステージ17上に設けられた一対の突起46(
図2では1つのみ図示)が入り込み、一対の突起46によってフレーム規制部41が押し上げられるように構成されている。
【0025】
ステージ17上にウェーハカセット2が載置されると、一対の突起46によってフレーム規制部41が押し上げられ、フレーム規制部41の各棚板42が側板31の各棚板36に一致される。これにより、収容棚に収容された環状フレームF(ウェーハW)を搬出可能な開状態になるようにフレーム規制部41が移動される(
図3A参照)。一方、ステージ17上からウェーハカセット2が離間すると、付勢手段47(
図4参照)によってフレーム規制部41が押し下げられて、フレーム規制部41の各棚板42が側板31の各棚板36の間に位置付けられる。これにより、収容棚の一部が上下にずれて環状フレームFの搬出を規制する閉状態になるようにフレーム規制部41が移動される。
【0026】
一対の側板31の背止部35近傍には、上下方向に延びる規制板38が形成されている。規制板38は、収容棚に収容されるウェーハWの環状フレームFに当接して、背止部35と共に環状フレームFの背部を支持している。上板33には、搬送時に把持される取っ手39が設けられている。なお、ウェーハカセット2は、OHT(Overhead Hoist Transport)、AGV(Automated Guided Vehicle)、RGV(Rail Guided Vehicle)等の搬送手段により搬送される構成に限らず、オペレータに手動で搬送されてもよい。
【0027】
図3Aに示すように、フレーム規制部41の各棚板42は、側板31(
図2参照)の各棚板36よりも厚く形成されている。フレーム規制部41の棚板42の下半部は切り欠かれており、閉状態において環状フレームFの上面に当接する上面当接面43、開口部34側の環状フレームFの側面に当接する側面当接面44が形成されている。上面当接面43は、上面視三角形状に形成されており、環状フレームFの上面に平行な水平面になっている。側面当接面44は、開口部34側から背止部35側に向かって一対のフレーム規制部41間が徐々に幅方向で広がるように傾斜し、かつ上方から下方に向かって一対のフレーム規制部41間が徐々に広がるように傾斜している(
図4参照)。
【0028】
フレーム規制部41が開状態に位置付けられると、フレーム規制部41の各棚板42の上面が側板31の各棚板36の上面と面一になるように、フレーム規制部41の各棚板42と側板31の各棚板36とが位置合わせされている。このとき、フレーム規制部41の各棚板42の上面は、側板31の各棚板36と共に環状フレームFの下面を支持している。上面当接面43及び側面当接面44は環状フレームFから上方に離間されている。このように、フレーム規制部41の各棚板42が側板31の各棚板36に揃えられて、フレーム規制部41の各棚板42が側板31の各棚板36の収容棚の一部を構成している。
【0029】
図3Bに示すように、フレーム規制部41が閉状態に位置付けられると、フレーム規制部41の各棚板42の上面が側板31(
図2参照)の各棚板36の上面からずれて、フレーム規制部41の各棚板42が下方向にスライドされる。フレーム規制部41がスライドする際に側面当接面44に環状フレームFが当接して、側面当接面44の斜面に環状フレームFの側面がガイドされて、環状フレームFがウェーハカセット2(
図2参照)内で位置決めされる。そして、上面当接面43が環状フレームFの上面に当接すると共に、側面当接面44が環状フレームFの側面に当接して環状フレームFの搬出が規制される。
【0030】
これにより、フレーム規制部41の各棚板42と側板31の各棚板36との間に環状フレームFが挟まれ、ウェーハWの上下のバタツキが抑えられる。また、側面当接面44が環状フレームFの側面に当接することで、フレーム規制部41の棚板42と背止部35(
図2参照)との間に環状フレームFが挟まれ、ウェーハWの水平方向の移動が規制される。このように、フレーム規制部41は、上方及び側方から環状フレームFに当接して、搬送時における環状フレームFの上下のバタツキを防止すると共に環状フレームF(ウェーハW)の飛び出しを防止している。
【0031】
図4を参照して、本実施の形態に係るフレーム規制部の動作について詳細に説明する。
図4は、本実施の形態に係るフレーム規制部の動作説明図である。
図4Aはフレーム規制部の開状態、
図4B及び
図4Cはフレーム規制部の閉状態をそれぞれ示している。なお、
図4Cにおいて、二点鎖線は開状態における環状フレームを示している。
【0032】
図4Aに示すように、一対のフレーム規制部41の最上段の棚板42は、コイルばね等の付勢手段47によって常に下方に付勢されている。また、エレベータ手段15のステージ17の上面には、一対の突起46が一対のフレーム規制部41に対応した位置に設けられている。ウェーハカセット2がステージ17に載置されると、一対の突起46がフレーム規制部41の下端部に当接し、付勢手段47の付勢力に抗してフレーム規制部41が上方に押し上げられる。このとき、一対の突起46は、フレーム規制部41の各棚板42が押し上げられた状態で、側板31の棚板36に揃うような高さに設計されている。
【0033】
これにより、フレーム規制部41の各棚板42の上面が側板31の各棚板36の上面に面一となり、フレーム規制部41と側板31によってウェーハカセット2の収容棚が形成される。このように、フレーム規制部41の開状態では、収容棚に収容された環状フレームF(ウェーハW)の搬出及び収容棚への環状フレームFの搬入が可能になっている。また、フレーム規制部41の開状態では、上面当接面43及び側面当接面44が環状フレームFから離間しており、ウェーハWが位置決めされていない。よって、収容棚に収容された一部のウェーハWは、前後左右に僅かな位置ズレが生じている。
【0034】
図4Bに示すように、ステージ17からウェーハカセット2が持ち上げられると、一対の突起46の先端から一対のフレーム規制部41が離間する。上記したように、一対のフレーム規制部41は付勢手段47によって常に下方に付勢されているため、一対のフレーム規制部41は付勢手段47の付勢力によって下方に押し下げられる。一対のフレーム規制部41は、その側面当接面44の間隔が下方に向かって徐々に広がるように傾斜している。フレーム規制部41の下方へのスライドに合わせて、一対の側面当接面44の斜面によって、環状フレームFが左右方向に押し込まれる。これにより、環状フレームFの左右方向が位置決めされる。
【0035】
図4Cに示すように、対向する一対のフレーム規制部41は、その側面当接面44の間隔が開口部34側から背止部35側に向かって徐々に広がるように傾斜している。フレーム規制部41の下方へのスライドに合わせて、一対の側面当接面44の斜面によって環状フレームFが後方に押し込まれる。これにより、環状フレームFの背部が背止部35及び規制板38に当接され、環状フレームFの前後方向が位置決めされる。このように、収容棚に収容された一部の環状フレームF(ウェーハW)が前後左右に位置ズレしても、側面当接面44によって環状フレームFが前後左右に位置決めされる。
【0036】
また、環状フレームFの側面が一対のフレーム規制部41の側面当接面44に当接されることで、フレーム規制部41と背止部35とで環状フレームFが把持され、環状フレームF(ウェーハW)の前後方向の移動が規制される。よって、環状フレームFがフレーム規制部41と背止部35で挟まれた状態でウェーハカセット2が搬送されるため、ウェーハカセット2の搬送時におけるウェーハWの飛び出しが防止される。
【0037】
図4Bに戻り、環状フレームFの側面が一対の側面当接面44にガイドされて、環状フレームFの上面が一対のフレーム規制部41の上面当接面43に当接される。これにより、側板31の棚板36とフレーム規制部41の棚板42との間に環状フレームFが挟まれ、環状フレームF(ウェーハW)の上下方向の移動が規制される。このとき、フレーム規制部41は付勢手段47によって下方に付勢されているため、ウェーハカセット2の搬送時に上下に強い揺れが生じても、収容棚に収まった環状フレームFの上下のバタツキが抑えられる。よって、ウェーハWに強い衝撃が与えられることがなく、ウェーハWの破損が防止される。
【0038】
このように、フレーム規制部41によって、環状フレームFの飛び出し及び上下のバタツキが同時に防止されるため、環状フレームFの飛び出しを防止する規制部と上下のバタツキを防止する規制部とを個々に設ける必要がない。よって、部品点数を増やすことなく環状フレームFの飛び出し及び上下のバタツキを同時に防止することが可能になっている。また、ウェーハWが大口径化して質量が増加しても、搬送中のウェーハWのバタツキが抑えられるため、ウェーハWの衝撃による破損が防止される。
【0039】
以上のように、本実施の形態に係るウェーハカセット2によれば、収容棚の一部がフレーム規制部41になっており、フレーム規制部41が閉状態に位置付けられると、フレーム規制部41の上面当接面43が環状フレームFの上面に当接し、フレーム規制部41の側面当接面44が環状フレームFの側面に当接する。これにより、環状フレームFが収容棚とフレーム規制部41との間に挟まれ、環状フレームFの上下のバタツキが抑えられる。同時に、環状フレームFが背止部35とフレーム規制部41との間に挟まれ、環状フレームFの水平方向の移動が規制される。よって、ウェーハカセット2の搬送時に、側面当接面44によって環状フレームFが開口部34からの飛び出しが防止され、上面当接面43によってウェーハWのバタツキによる破損が抑えられる。また、フレーム規制部41のみで環状フレームFの上下方向及び水平方向の移動が同時に規制されるため、部品点数を増やすことなく環状フレームFの飛び出し防止及び上下のバタツキ防止を実現できる。
【0040】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0041】
例えば、上記した実施の形態においては、フレーム規制部41が下方にスライドすることによって環状フレームFに当接する構成としたが、この構成に限定されない。フレーム規制部41は、環状フレームFに当接して環状フレームFの飛び出し及び上下のバタツキを抑えることができればよい。例えば、一対の側板31の片側にだけフレーム規制部41が設けられてもよい。
【0042】
また、上記した実施の形態においては、フレーム規制部41の側面当接面44が平らな斜面で形成されたが、この構成に限定されない。側面当接面44は、開口部34側から背止部35側に向かって一対のフレーム規制部41間が徐々に広がるように湾曲して傾斜し、上方から下方に向かって一対のフレーム規制部41間が徐々に広がるように湾曲して傾斜してもよい。
【0043】
また、上記した実施の形態においては、フレーム規制部41は、付勢手段47と突起46によって開状態及び閉状態にスライドされる構成としたが、この構成に限定されない。フレーム規制部41は、ステージ17上にウェーハカセット2が載置された場合に開状態となり、ウェーハカセット2の搬送時に閉状態になる構成であればよい。