(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、研磨装置の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る研磨装置を示す図である。
図1に示すように、研磨装置は、研磨パッド23を支持する研磨テーブル22と、研磨対象物であるウェハ等の基板を保持して研磨テーブル22上の研磨パッド23に押圧するトップリング(基板保持部)30とを備えている。
【0016】
研磨テーブル22は、テーブル軸22aを介してその下方に配置されるテーブルモータ29に連結されており、そのテーブル軸22a周りに回転可能になっている。研磨パッド23は研磨テーブル22の上面に貼付されており、研磨パッド23の表面23aがウェハWを研磨する研磨面を構成している。研磨テーブル22の上方には研磨液供給ノズル25が設置されており、この研磨液供給ノズル25によって研磨テーブル22上の研磨パッド23上に研磨液Qが供給されるようになっている。
【0017】
トップリング30は、ウェハWを研磨面23aに対して押圧するトップリング本体31と、ウェハWを保持してウェハWがトップリング30から飛び出さないようにするリテーナリング32とを備えている。トップリング30は、トップリングシャフト27に接続されており、このトップリングシャフト27は、上下動機構81によりトップリングヘッド64に対して上下動するようになっている。このトップリングシャフト27の上下動により、トップリングヘッド64に対してトップリング30の全体を昇降させ位置決めするようになっている。トップリングシャフト27の上端にはロータリージョイント82が取り付けられている。
【0018】
トップリングシャフト27およびトップリング30を上下動させる上下動機構81は、軸受83を介してトップリングシャフト27を回転可能に支持するブリッジ84と、ブリッジ84に取り付けられたボールねじ88と、支柱86により支持された支持台85と、支持台85上に設けられたサーボモータ90とを備えている。サーボモータ90を支持する支持台85は、支柱86を介してトップリングヘッド64に固定されている。
【0019】
ボールねじ88は、サーボモータ90に連結されたねじ軸88aと、このねじ軸88aが螺合するナット88bとを備えている。トップリングシャフト27は、ブリッジ84と一体となって上下動するようになっている。したがって、サーボモータ90を駆動すると、ボールねじ88を介してブリッジ84が上下動し、これによりトップリングシャフト27およびトップリング30が上下動する。
【0020】
トップリングシャフト27はキー(図示せず)を介して回転筒66に連結されている。この回転筒66はその外周部にタイミングプーリ67を備えている。トップリングヘッド64にはトップリングモータ68が固定されており、上記タイミングプーリ67は、タイミングベルト69を介してトップリングモータ68に設けられたタイミングプーリ70に接続されている。したがって、トップリングモータ68を回転駆動することによってタイミングプーリ70、タイミングベルト69、およびタイミングプーリ67を介して回転筒66およびトップリングシャフト27が一体に回転し、トップリング30が回転する。トップリングヘッド64は、フレーム(図示せず)に回転可能に支持されたトップリングヘッドシャフト80によって支持されている。研磨装置は、トップリングモータ68、サーボモータ90をはじめとする装置内の各機器を制御する研磨制御部50を備えている。
【0021】
トップリング30は、その下面にウェハWを保持できるように構成されている。トップリングヘッド64はトップリングヘッドシャフト80を中心として旋回可能に構成されており、下面にウェハWを保持したトップリング30は、トップリングヘッド64の旋回によりウェハWの受取位置から研磨テーブル22の上方位置に移動される。ウェハWの研磨は次のようにして行われる。トップリング30および研磨テーブル22をそれぞれ回転させ、研磨テーブル22の上方に設けられた研磨液供給ノズル25から研磨パッド23上に研磨液Qを供給する。この状態で、トップリング30を所定の位置(所定の高さ)まで下降させ、この所定の位置でウェハWを研磨パッド23の研磨面23aに押圧する。ウェハWは研磨パッド23の研磨面23aに摺接され、これによりウェハWの表面が研磨される。
【0022】
次に、トップリング30について説明する。
図2は、トップリング30を示す断面図である。トップリング30は、トップリングシャフト27に自由継手39を介して連結されるトップリング本体31と、トップリング本体31の下方に配置されたリテーナリング32とを備えている。
【0023】
トップリング本体31の下方には、ウェハWに当接する柔軟なメンブレン(弾性膜)34と、メンブレン34を保持するチャッキングプレート35とが配置されている。メンブレン34とチャッキングプレート35との間には、4つの圧力室(エアバッグ)C1,C2,C3,C4が設けられている。圧力室C1,C2,C3,C4はメンブレン34とチャッキングプレート35とによって形成されている。中央の圧力室C1は円形であり、他の圧力室C2,C3,C4は環状である。これらの圧力室C1,C2,C3,C4は、同心上に配列されている。
【0024】
圧力室C1,C2,C3,C4にはそれぞれ気体移送ラインF1,F2,F3,F4を介して気体供給源(流体供給源)40により加圧空気等の加圧気体(加圧流体)が供給されるようになっている。また、気体移送ラインF1,F2,F3,F4には真空ラインV1,V2,V3,V4が接続されており、真空ラインV1,V2,V3,V4によって圧力室C1,C2,C3,C4に負圧が形成されるようになっている。圧力室C1,C2,C3,C4の内部圧力は互いに独立して変化させることが可能であり、これにより、ウェハWの対応する4つの領域、すなわち、中央部、内側中間部、外側中間部、および周縁部に対する研磨圧力を独立に調整することができる。また、トップリング30の全体を昇降させることにより、リテーナリング32を所定の圧力で研磨パッド23に押圧できるようになっている。
【0025】
チャッキングプレート35とトップリング本体31との間には圧力室C5が形成され、この圧力室C5には気体移送ラインF5を介して上記気体供給源40により加圧気体が供給されるようになっている。また、気体移送ラインF5には真空ラインV5が接続されており、真空ラインV5によって圧力室C5に負圧が形成されるようになっている。これにより、チャッキングプレート35およびメンブレン34全体が上下方向に動くことができる。
【0026】
ウェハWの周端部はリテーナリング32に囲まれており、研磨中にウェハWがトップリング30から飛び出さないようになっている。圧力室C3を構成する、メンブレン34の部位には開口が形成されており、圧力室C3に真空を形成することによりウェハWがトップリング30に吸着保持されるようになっている。また、この圧力室C3に窒素ガスやクリーンエアなどを供給することにより、ウェハWがトップリング30からリリースされるようになっている。
【0027】
トップリング本体31とリテーナリング32との間には、環状のローリングダイヤフラム36が配置されおり、このローリングダイヤフラム36の内部には圧力室C6が形成されている。圧力室C6は、気体移送ラインF6を介して上記気体供給源40に連結されている。気体供給源40は加圧気体を圧力室C6内に供給し、これによりリテーナリング32を研磨パッド23に対して押圧する。また、気体移送ラインF6には真空ラインV6が接続されており、真空ラインV6によって圧力室C6に負圧が形成されるようになっている。圧力室C6内に真空が形成されると、リテーナリング32の全体が上昇する。
【0028】
圧力室C1,C2,C3,C4,C5,C6に連通する気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5,F6には、それぞれ電空レギュレータ(圧力レギュレータ)R1,R2,R3,R4,R5,R6が設けられている。気体供給源40からの加圧気体は、電空レギュレータR1〜R6を通って圧力室C1〜C6内に供給される。電空レギュレータR1〜R6は、気体供給源40から供給される加圧気体の圧力を調整することによって、圧力室C1〜C6内の圧力を制御する。電空レギュレータR1〜R6は研磨制御部50に接続されている。圧力室C1〜C6は大気開放弁(図示せず)にも接続されており、圧力室C1〜C6を大気開放することも可能である。研磨制御部50は、圧力室C1〜C6それぞれの目標圧力値を電空レギュレータR1〜R6に送り、電空レギュレータR1〜R6は、圧力室C1〜C6内の圧力が対応する目標圧力値に維持されるように動作する。
【0029】
電空レギュレータR1〜R6は、気体移送ラインF1〜F6によって圧力室C1〜C6に接続されている。気体移送ラインF1〜F6には、その内部を流れる気体の流量を測定するための流量計G1,G2,G3,G4,G5,G6がそれぞれ設けられている。これら流量計G1〜G6は、対応する圧力室C1〜C6の気体漏洩の検出に使用される。圧力室C1〜C6の気体漏洩の検出が必要でない場合は、流量計G1〜G6は省略してもよい。気体移送ラインF1〜F6は、圧力室C1〜C6からロータリージョイント82を経由して電空レギュレータR1〜R6まで延びている。真空ラインV1〜V6は、圧力室C1〜C6と流量計G1〜G6との間の位置において、気体移送ラインF1〜F6にそれぞれ接続されている。
【0030】
電空レギュレータR1,R2,R3,R4,R5,R6と、加圧気体のユースポイントであるトップリング30との間には、バッファタンクT1,T2,T3,T4,T5,T6が設けられている。これらバッファタンクT1,T2,T3,T4,T5,T6は、分岐ラインB1,B2,B3,B4,B5,B6を通じて気体移送ラインF1,F2,F3,F4,F5,F6にそれぞれ接続されている。バッファタンクT1〜T6は、電空レギュレータR1〜R6と、流量計G1〜G6との間に配置されている。言い換えれば、分岐ラインB1〜B6は、電空レギュレータR1〜R6と流量計G1〜G6との間の位置において気体移送ラインF1〜F6に接続されている。
【0031】
研磨制御部50には、研磨パッド23に対するトップリング30の相対的な高さの最適値である目標高さが予め記憶されている。ウェハWの研磨中、研磨パッド23に対するトップリング30の相対的な高さは、この所定の目標高さに維持される。この目標高さは、圧力室C1〜C4に負圧を形成してウェハWをメンブレン34上に引き付けているときに、ウェハWと研磨パッド23の研磨面23aとの間に僅かな隙間が形成される高さである。この隙間は、圧力室C1〜C4内に気体を供給することで0となる。研磨パッド23に対するトップリング30の相対的な高さは、サーボモータ90によって調整され、サーボモータ90の動作は研磨制御部50によって制御される。
【0032】
トップリング30の相対的な高さを上記目標高さに維持するためには、研磨パッド23の研磨面23aの高さを検出する必要がある。研磨パッド23の研磨面23aの高さは、次のようにして検出することができる。トップリング30を所定の初期位置から下降させてトップリング30の下面(すなわち、リテーナリング32の下面)を研磨パッド23の研磨面23aに接触させる。トップリング30の下面が研磨パッド23の研磨面23aに接触すると、サーボモータ90に対する負荷が増加し、サーボモータ90に流れる電流が増加する。したがって、研磨制御部50は、サーボモータ90に流れる電流の変化から、トップリング30の下面が研磨パッド23の研磨面23aに接触した時点を検出することができる。研磨制御部50は、トップリング30の下面が研磨パッド23の研磨面23aに接触したときにサーボモータ90の動作を停止させ、トップリング30の下降を停止させる。研磨制御部50は、トップリング30の初期位置と、トップリング30の下降距離とから、研磨パッド23の研磨面23aの高さを算出する。
【0033】
ウェハWの研磨中、研磨パッド23に対するトップリング30の相対的な高さが一定に維持された条件下で、研磨テーブル22とトップリング30は回転される。しかしながら、研磨テーブル22およびトップリング30の回転軸受には軸方向の振れが僅かにあるため、これら研磨テーブル22およびトップリング30の回転に伴って、研磨テーブル22とトップリング30の上下方向の相対位置は僅かに変化する。この相対位置の変化によって圧力室C1〜C6の内部容積が変動するので、圧力室C1〜C6の内部圧力も変動してしまう。そこで、このような圧力室C1〜C6の内部圧力の変動を小さくするために、圧力室C1〜C6にはバッファタンクT1〜T6がそれぞれ連通している。
【0034】
それぞれのバッファタンクT1〜T6の構成および配置は、互いに同じである。したがって、以下、バッファタンクT1について
図3を参照して説明する。
図3は、バッファタンクT1、電空レギュレータ(圧力レギュレータ)R1、流量計G1、圧力室C1の配置を説明するための模式図である。バッファタンクT1は、金属または硬質の樹脂などの硬質の材料から形成された密閉容器である。バッファタンクT1は、剛性の高い構造を有しており、その内部容積は実質的に変化しない。一例として、バッファタンクT1はPVC(ポリ塩化ビニル)から形成されている。
【0035】
バッファタンクT1は気体移送ラインF1に接続されている。したがって、バッファタンクT1は、気体移送ラインF1を通じて圧力室C1に連通している。このバッファタンクT1の容積は、圧力室C1の容積と同じか、またはそれよりも大きい。このようなバッファタンクT1は、電空レギュレータR1から圧力室C1までの気体通路の体積を大きくすることで、圧力室C1の圧力の変動を相対的に小さくすることができる。
【0036】
バッファタンクT1は、電空レギュレータR1と流量計G1との間に位置している。これは、電空レギュレータR1の応答性を向上させるためである。電空レギュレータR1の応答性は、目標圧力値が変化した時点と、電空レギュレータR1の下流側の圧力(すなわち、電空レギュレータR1の二次側圧力)がその目標圧力値に到達した時点との差分の示す応答時間で表される。流量計G1は、絞り孔を有しており、絞り孔の上流側での圧力と下流側での圧力の差に基づいて流量を測定するように構成されている。このような構成を持つ流量計G1の上流側にバッファタンクT1が接続されているので、電空レギュレータR1から供給される気体は、その流量が流量計G1によって低下される前にバッファタンクT1に供給され、速やかにバッファタンクT1を満たす。よって、電空レギュレータR1は、目標圧力値の変化に応じて圧力室C1内の圧力を速やかに変化させることができる。流量計G1は、バッファタンクT1と圧力室C1との間に位置している。
【0037】
図3から分かるように、バッファタンクT1は、電空レギュレータR1と真空ラインV1との間に配置されている。このような配置とすることにより、真空ラインV1によって圧力室C1内に真空を形成するときに、バッファタンクT1は真空形成にほとんど影響を与えない。したがって、真空ラインV1は、速やかに圧力室C1内に真空を形成することができる。
【0038】
図4は、
図3の比較例を示す図である。
図4に示す例では、バッファタンクT1は、流量計G1と圧力室C1との間に配置されている。このような配置では、電空レギュレータR1から供給される気体は、その流量が流量計G1によって低下された後にバッファタンクT1に供給される。結果として、気体がバッファタンクT1を満たすのにより長い時間がかかり、応答性が低下してしまう。しかも、真空ラインV1によって圧力室C1内に真空を形成するときに、バッファタンクT1内の気体が真空ラインV1によって吸い込まれるために、圧力室C1内に真空を形成するのにより長い時間がかかる。
【0039】
図5は、
図3に示す配置、
図4に示す配置、およびバッファタンクT1がない配置において、目標圧力値を変化させたときの電空レギュレータR1の応答時間の実験結果を示すグラフである。この実験結果から分かるように、
図3に示す配置は、
図4に示す配置よりも短い応答時間を示している。しかも、
図3に示す配置は、バッファタンクT1がない配置とほぼ同じ応答時間を示している。これは、
図3に示すようにバッファタンクT1を電空レギュレータR1と流量計G1との間に配置することにより、バッファタンクを設けない場合と同等の良好な応答性が得られることを意味している。
【0040】
図6は、バッファタンクT1を電空レギュレータR1と流量計G1との間に設けた場合およびバッファタンクT1を設けなかった場合における電空レギュレータR1の下流側での圧力の変動の大きさを示すグラフであり、
図7は、バッファタンクT1を電空レギュレータR1と流量計G1との間に設けた場合およびバッファタンクT1を設けなかった場合における電空レギュレータR1の下流側での流量の変動の大きさを示すグラフである。
図6および
図7において、圧力の変動の大きさは、圧力の最大値と最小値との差分を表し、流量の変動の大きさは、流量の最大値と最小値との差分を表している。
図6および
図7に示す実験結果から、バッファタンクT1を設けることによって圧力変動および流量変動が低下することが分かる。
【0041】
図5乃至
図7に示す実験結果から分かるように、バッファタンクT1を電空レギュレータR1と流量計G1との間に設けることによって、圧力変動および流量変動を低下させつつ、バッファタンクを設けない場合と同等の良好な応答性を得ることができる。上述したように、圧力室C1〜C6の気体漏洩の検出が必要でない場合は、流量計G1〜G6は省略してもよい。この場合でも、バッファタンクT1〜T6は、圧力室C1〜C6の圧力の変動を相対的に小さくすることができる。
【0042】
次に、バッファタンクT1の他の構成例について説明する。以下に説明するバッファタンクT1の配置は、
図3に示すバッファタンクT1の上記配置と同じである。
図8は、バッファタンクT1の他の例を示す断面図である。他のバッファタンクT2〜T6も
図8に示すバッファタンクT1と同じ構成および配置を有している。
【0043】
図8に示すバッファタンクT1は、その内部の圧力に応じてバッファタンクT1の容積が変化するように構成されている点で、上述したバッファタンクと異なっている。この例のバッファタンクT1は、その全体がゴムなどの弾性材料から構成されており、バッファタンクT1内の圧力に応じてバッファタンクT1の全体が変形(すなわち、膨張および収縮)する。すなわち、バッファタンクT1の全体は、その内部の圧力に応じて変形可能な部材から構成されている。例えば、バッファタンクT1は、ゴム製のエアバッグから構成されている。バッファタンクT1の一部のみがゴムなどの弾性材料から構成されていてもよい。
【0044】
図9は、内部の圧力が低いときのバッファタンクT1、および内部の圧力が高いときのバッファタンクT1を示す図である。
図9に示すように、バッファタンクT1内の圧力が高くなると、バッファタンクT1全体が膨張してバッファタンクT1の容積が増加する。このように、バッファタンクT1内の圧力に応じてバッファタンクT1の容積が変化するので、バッファタンクT1はウェハの研磨時に発生する圧力室C1内での圧力変動を吸収することができる。
【0045】
図10は、バッファタンクT1のさらに他の例を示す断面図である。他のバッファタンクT2〜T6も
図10に示すバッファタンクT1と同じ構成および配置を有している。この例のバッファタンクT1自体は
図8に示すバッファタンクT1と同じであるが、バッファタンクT1の外側に制限カバー100が設けられている点で異なっている。この制限カバー100は、バッファタンクT1の上面および側面全体を覆う形状を有している。制限カバー100は、バッファタンクT1全体の体積よりも大きな内部空間を有している。この制限カバー100は、バッファタンクT1内の圧力上昇に応じて膨張したバッファタンクT1の破裂を防ぐために設けられている。
【0046】
図11は、バッファタンクT1の変形(膨張)が制限カバー100によって制限される様子を示す図である。
図11に示すように、バッファタンクT1内の圧力が低いときは、バッファタンクT1の外面は制限カバー100の内面に接触していないが、バッファタンクT1内の圧力がある程度上昇すると、バッファタンクT1の外面は制限カバー100の内面に接触する。
図11から分かるように、バッファタンクT1の膨張は制限カバー100によって制限されるので、バッファタンクT1の破裂を防止することができる。
【0047】
バッファタンクT1の壁を薄くするほど、バッファタンクT1は圧力変動をより吸収しやすくなる。その一方で、バッファタンクT1の壁を薄くすると、ウェハ研磨中にバッファタンクT1が大きく膨らみ、バッファタンクT1が破裂するおそれがある。制限カバー100は、このようなバッファタンクT1の破裂のリスクを大きく低減させることが可能である。さらに、バッファタンクT1の形状および厚みと、制限カバー100の形状および大きさとの組み合わせにより、バッファタンクT1によって吸収される圧力範囲および圧力変動の大きさを調整することが可能である。
【0048】
図12は、バッファタンクT1のさらに他の例を示す断面図である。他のバッファタンクT2〜T6も
図12に示すバッファタンクT1と同じ構成および配置を有している。この例のバッファタンクT1の周壁部は、樹脂や金属(例えばステンレス)からなるベローズ管102で構成されている。ベローズ管102は、バッファタンクT1内の圧力に応じて変形(すなわち、膨張および収縮)することが可能に構成される。ベローズ管102は膨張しても、その肉厚が変わらず、機械的強度が低下しないという利点がある。
【0049】
図13は、内部の圧力が低いときのバッファタンクT1、および内部の圧力が高いときのバッファタンクT1を示す図である。
図13に示すように、バッファタンクT1内の圧力が高くなると、ベローズ管102が伸びてバッファタンクT1の容積が増加する。このように、バッファタンクT1内の圧力に応じてバッファタンクT1の容積が変化するので、バッファタンクT1はウェハの研磨時に発生する圧力室C1内での圧力変動を吸収することができる。
【0050】
図14は、バッファタンクT1のさらに他の例を示す断面図である。他のバッファタンクT2〜T6も
図14に示すバッファタンクT1と同じ構成および配置を有している。この例では、バッファタンクT1の一部は、樹脂またはゴムなどの弾性材料からなるダイヤフラム105から構成されている。より具体的は、バッファタンクT1は、開口部を有する容器106と、この開口部を塞ぐダイヤフラム105とを備えている。ダイヤフラム105は、屈曲部のない平坦な形状を有している。容器106は硬質の部材(例えば、金属または硬質の樹脂)から形成されている。ダイヤフラム105は容器106の開口部を塞いでおり、これによってバッファタンクT1内には密閉空間が形成される。この密閉空間は分岐ラインB1に連通している。
【0051】
図15は、内部の圧力が低いときのバッファタンクT1、および内部の圧力が高いときのバッファタンクT1を示す図である。
図15に示すように、バッファタンクT1内の圧力が高くなると、ダイヤフラム105が外側に膨らんでバッファタンクT1の容積が増加する。このように、バッファタンクT1内の圧力に応じてバッファタンクT1の容積が変化するので、バッファタンクT1はウェハの研磨時に発生する圧力室C1内での圧力変動を吸収することができる。ダイヤフラム105は、バッファタンクT1内の圧力に応じて変形する部材である。ダイヤフラム105は、その形状が単純で変形量も比較的小さいので長期間に亘って安定した動作が期待できる。
【0052】
図16は、バッファタンクT1のさらに他の例を示す断面図である。他のバッファタンクT2〜T6も
図16に示すバッファタンクT1と同じ構成および配置を有している。この例のバッファタンクT1は、分岐ラインB1に接続されたシリンダ111と、このシリンダ111内に収容されたピストン112と、シリンダ111とピストン112との間の隙間を封じるローリングダイヤフラム114と、ピストン112を支持するスプリング116とを有している。ローリングダイヤフラム114は、ゴムなどの弾性部材から構成されている。
【0053】
ローリングダイヤフラム114は、ピストン112を囲むように配置された逆U字型の断面を有する屈曲部を有しており、この屈曲部がシリンダ111とピストン112との間の隙間をシールしている。バッファタンクT1内の密閉空間は、ローリングダイヤフラム114とシリンダ111の内面とによって形成されている。この密閉空間は分岐ラインB1に連通している。ローリングダイヤフラム114は、バッファタンクT1内の圧力に応じて変形する部材である。
【0054】
図17は、内部の圧力が低いときのバッファタンクT1、および内部の圧力が高いときのバッファタンクT1を示す図である。
図17に示すように、バッファタンクT1内の圧力が高くなると、ピストン112がスプリング116の反発力に抗って外側に移動してバッファタンクT1の容積が増加するとともに、ローリングダイヤフラム114が変形する。このように、バッファタンクT1内の圧力に応じてバッファタンクT1の容積が変化するので、バッファタンクT1はウェハの研磨時に発生する圧力室C1内での圧力変動を吸収することができる。
【0055】
ローリングダイヤフラム114の屈曲部は、ピストン112の動作にあわせて転動するのみであり、ローリングダイヤフラム114はピストン112およびシリンダ111に摺接しない。したがって、ローリングダイヤフラム114が変形するときにローリングダイヤフラム114に作用する摩擦抵抗はほぼ0である。したがって、ピストン112はバッファタンクT1内の圧力変化に応じて速やかかつ滑らかに移動することができる。更に、スプリング116の反発力はピストン112の移動量に従って変化するので、ピストン112のストロークを長くすることで広い範囲での圧力振動を吸収することが可能である。
【0056】
上述した
図8乃至
図17に示す構成は、適宜組み合わせることも可能である。例えば、
図8に示すエアバックタイプのバッファタンクT1の一部に、
図14に示すダイヤフラム105を組み込むことで、バッファタンクT1はより広い範囲での圧力変動を吸収することが可能となる。
【0057】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。