(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
被加工物を保持する保持面を有する保持手段と、該保持手段に保持された被加工物を切削する切削ブレードを装着するスピンドル及び該スピンドルを回転可能に支持するスピンドルハウジングを有する切削手段と、該保持手段に保持された被加工物の表面を撮像する撮像手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的にX軸方向に移動するX軸移動手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的にX軸方向に直交するY軸方向に移動するY軸移動手段と、該保持手段と該切削手段とを相対的に鉛直方向に移動するZ軸移動手段と、を少なくとも備えた分割装置であって、
該スピンドルハウジングの下端には、該スピンドルの軸芯方向に延伸し且つ該スピンドルハウジングの下端側に、該切削ブレードで被加工物を切削中に被加工物に接触しない量突出して形成された押圧刃が配設されており、
該保持手段上に保持された被加工物の表面に形成された分割予定ラインに沿って予め形成された分割起点の上方側から該押圧刃を該分割起点に沿って位置付けて押圧させ、該被加工物を該分割起点を起点として該分割予定ラインに沿って分割する分割装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付の図面を参照して、本実施の形態について説明する。
図1は、本実施の形態に係る分割装置の斜視図である。なお、本実施の形態では、一対の切削ブレードを備えた分割装置を例示するが、この構成に限定されない。本発明は、切削ブレードを用いてウェーハを加工可能な分割装置であれば、どのような分割装置にも適用可能である。
【0012】
図1に示すように、分割装置1は、保持手段12に保持された被加工物Wと一対の切削手段16とを相対的に移動させることによって被加工物Wを加工するように構成されている。被加工物Wは、セラミック、ガラス、サファイア系の光デバイスウェーハで略板状に形成されている。被加工物Wの表面71は格子状の分割予定ライン73(
図3A参照)で複数の領域に区画されており、各領域にLED等の光デバイスが形成されている。なお、被加工物Wは、光デバイスウェーハに限らず、シリコン、ガリウム砒素等の半導体ウェーハでもよい。被加工物Wは、ダイシングテープT1を介して環状フレームFに支持された状態で分割装置1に搬入される。
【0013】
分割装置1の基台11上には、保持手段12をX軸方向に移動するX軸移動手段13が設けられている。X軸移動手段13は、基台11上に配置されたX軸方向に平行な一対のガイドレール31と、一対のガイドレール31にスライド可能に設置されたモータ駆動のX軸テーブル32とを有している。X軸テーブル32の背面側には、図示しないナット部が形成され、これらナット部にボールネジ33が螺合されている。そして、ボールネジ33の一端部に連結された駆動モータ34によりボールネジ33が回転駆動されることで、保持手段12がガイドレール31に沿ってX軸方向に移動される。
【0014】
X軸テーブル32の上部には、被加工物Wを保持する保持手段12が設けられている。保持手段12には、ポーラスセラミック材により保持面21が形成されており、この保持面21に生じる負圧によって被加工物Wが吸引保持される。保持手段12の周囲には、エア駆動式の4つのクランプ部22が設けられ、各クランプ部22によって被加工物Wの周囲の環状フレームFが挟持固定される。また、基台11上には、X軸移動手段13を跨ぐように立設した門型の柱部17が設けられている。柱部17には、保持手段12の上方で一対の切削手段16をY軸方向に移動するY軸移動手段14と、一対の切削手段16をZ軸方向(鉛直方向)に移動するZ軸移動手段15とが設けられている。
【0015】
Y軸移動手段14は、柱部17の前面に対してY軸方向に平行な一対のガイドレール41と、一対のガイドレール41にスライド可能に設置されたモータ駆動の一対のY軸テーブル42とを有している。また、Z軸移動手段15は、各Y軸テーブル42の前面に配置されたZ軸方向に平行な一対のガイドレール51と、このガイドレール51にスライド可能に設置されたモータ駆動のZ軸テーブル52とを有している。各Z軸テーブル52の下部のそれぞれには、保持手段12に保持された被加工物Wを切削する切削手段16が設けられている。
【0016】
各Y軸テーブル42の背面側には、図示しないナット部が形成され、これらナット部にボールネジ43が螺合されている。また、各Z軸テーブル52の背面側には、図示しないナット部が形成され、これらナット部にボールネジ53が螺合されている。Y軸テーブル42用のボールネジ43、Z軸テーブル52用のボールネジ53の一端部には、それぞれ駆動モータ44、54が連結されている。これら駆動モータ44、54によりボールネジ43、53が回転駆動されることで、一対の切削手段16がガイドレール41、51に沿ってY軸方向及びZ軸方向に移動される。
【0017】
一対の切削手段16は、スピンドルハウジング61にスピンドル62(
図2参照)が回転可能に支持され、スピンドル62の先端に切削ブレード63が装着されている。切削ブレード63は、ダイアモンド砥粒をレジンボンドで固めた円板状に形成されている。切削ブレード63はブレードカバー65によって周囲が覆われており、ブレードカバー65には切削部分に向けて切削水を噴射する噴射ノズルが設けられている。また、スピンドルハウジング61には、保持手段12に保持された被加工物Wの表面を撮像するアライメント用の撮像手段66が設けられており、撮像手段66の撮像画像に基づいて分割予定ライン73(
図3A参照)に対して切削ブレード63がアライメントされる。
【0018】
このような分割装置1では、複数の噴射ノズルから切削水が噴射されながら、切削ブレード63によって被加工物Wが分割予定ライン73に沿ってハーフカットされる。この被加工物Wを破断するためには、ハーフカットによって形成された分割起点に外力を加える必要がある。本実施の形態に係る分割装置1では、スピンドルハウジング61にブレーキング加工用の押圧刃67を設けることで、保持手段12上の被加工物Wを分割予定ライン73に沿って分割している。これにより、1台の分割装置1で切削加工及びブレーキング加工を実施して、装置コスト及び装置の設置スペースを低減している。
【0019】
図2を参照して、本実施の形態に係るブレーキング機構について説明する。
図2は、本実施の形態に係るスピンドルハウジングの正面模式図及び側面模式図である。なお、
図2Bにおいては、説明の便宜上、スピンドルから切削ブレードを取り外した図を示している。
【0020】
図2A及び
図2Bに示すように、切削手段16のスピンドルハウジング61からはスピンドル62が突出しており、スピンドル62の先端にフランジ64を介して切削ブレード63が装着されている。この切削手段16は、ブレーキング手段としても機能しており、スピンドルハウジング61の下端側にブレーキング加工用の押圧刃67が設けられている。押圧刃67は、ステンレス等の剛性薄板で長尺状に形成されており、スピンドル62の軸芯方向であるY軸方向に延伸している。押圧刃67は、1回の押圧動作で1列の分割予定ライン73(
図3A参照)に沿って破断できるように被加工物Wの直径以上の長さを有している。
【0021】
また、押圧刃67は、切削ブレード63による切削加工中に被加工物Wに接触しないように、切削ブレード63のフランジ64の外径よりも突出しない長さLでスピンドルハウジング61の下端から突出している。押圧刃67の先端部分は、下方に向かって板厚が狭くなるように形成されている。押圧刃67はスピンドルハウジング61に設けられているため、Y軸移動手段14及びZ軸移動手段15によってY軸方向及びZ軸方向に移動される。また、被加工物Wに対する押圧刃67のアライメントは、スピンドルハウジング61に設けられた撮像手段66によって実施される。
【0022】
このように、切削ブレード63による切削加工時の装置構成を利用して、押圧刃67によるブレーキング加工が実施されている。よって、装置コスト及び装置の設置スペースを増大させることなく、同一の装置内で切削加工とブレーキング加工が実施される。
【0023】
以下、
図3を参照して、分割装置による分割動作について説明する。
図3は、本実施の形態に係る分割装置による分割動作の一例を示す図である。なお、
図3Aは切削工程、
図3Bは転写工程、
図3Cはブレーキング工程をそれぞれ示している。
【0024】
図3Aに示すように、先ず切削加工が実施される。切削加工では、ダイシングテープT1を介して被加工物Wの裏面72側が保持手段12に保持され、クランプ部22によって被加工物Wの周囲の環状フレームFが挟持固定される。また、被加工物Wの上方にスピンドルハウジング61が位置付けられ、撮像手段66によって被加工物Wが撮像される。この被加工物Wの撮像画像に基づいて、切削ブレード63が被加工物Wの径方向外側で分割予定ライン73に対して位置合わせされ、この位置において被加工物Wの厚さ方向の途中まで切り込み可能な高さに下降される。
【0025】
そして、高速回転する切削ブレード63に対して保持手段12上の被加工物WがX軸方向に切削送りされることで、分割予定ライン73に沿って被加工物Wがハーフカットされる。一本の分割予定ライン73に沿って被加工物Wがハーフカットされると、隣接する分割予定ライン73に切削ブレード63が位置合わせされてハーフカットされる。この切削動作が繰り返されて被加工物Wの全ての分割予定ライン73に沿って分割溝74が形成される。この結果、被加工物Wの表面71側にブレーキング加工時の分割起点となる格子状の分割溝74が形成される。
【0026】
この場合、スピンドルハウジング61の下端側の押圧刃67が、切削ブレード63のフランジ64よりも下方に突出せず、押圧刃67の先端部分が被加工物Wの表面71に接触することが防止されている。よって、スピンドルハウジング61に押圧刃67が設けられていても、押圧刃67によって被加工物Wの切削加工が阻害されることがない。なお、押圧刃67は、被加工物Wの切削加工中に被加工物Wの表面71に接触しない長さでスピンドルハウジング61から突出していれば、切削ブレード63のフランジ64よりも下方に突出していてもよい。
【0027】
図3Bに示すように、切削加工の後には転写工程が実施される。転写工程では、被加工物Wの表面71側に保護テープT2が貼着され、被加工物Wの裏面72側からダイシングテープT1が剥離される。被加工物WがダイシングテープT1から保護テープT2に転写されることによって、被加工物Wの表面71が保護テープT2で保護されると共に、被加工物Wの裏面72が外部に表出される。また、表出した被加工物Wの裏面72には、埃等が付着しないように離型紙S(
図3C参照)が載置される。なお、転写工程におけるテープの貼り替え作業は、専用の装置によって実施されてもよいし、オペレータの手作業によって実施されてもよい。
【0028】
図3Cに示すように、転写工程の後にはブレーキング工程が実施される。本実施の形態に係るブレーキング工程では、スピンドル62から切削ブレード63(
図3A参照)が取り外された状態で実施される。ブレーキング工程では、保護テープT2を介して被加工物Wの表面71側が保持手段12に保持され、クランプ部22によって被加工物Wの周囲の環状フレームFが挟持固定される。また、被加工物Wの上方にスピンドルハウジング61が位置付けられ、撮像手段66によって被加工物Wが撮像される。この被加工物Wの撮像画像に基づいて保持手段12が移動されることで、押圧刃67の真下に被加工物Wの分割溝74(分割予定ライン73)が位置合わせされる。
【0029】
そして、押圧刃67が下降されることで、離型紙Sを介して押圧刃67が被加工物Wに押し当てられて分割溝74を分割起点として被加工物Wが破断される。このとき、押圧刃67の押圧によって保護テープT2が部分的に潰れることで、被加工物Wの破断時の撓みが保護テープT2に吸収される。これにより、被加工物Wの分割溝74に曲げ応力が作用して、被加工物Wが分割溝74に沿って破断される。一本の分割予定ライン73に沿って被加工物Wが破断されると、隣接する分割溝74に押圧刃67が位置合わせされて破断される。この加工動作が繰り返されて被加工物Wの全ての分割溝74に沿って被加工物Wが破断される。この結果、被加工物Wが分割溝74を分割起点として個々のデバイスDに分割される。
【0030】
なお、本実施の形態に係るブレーキング工程では、スピンドル62から切削ブレード63が取り外されているため、押圧刃67が被加工物Wに当接される際に、切削ブレード63によって保護テープT2が傷付けられることがない。また、保護テープT2は、部分的に潰れることで被加工物Wの撓みを大きくできるように形成されていればよく、例えば、保護テープT2の代わりにダイシングテープT1が用いられてもよい。また、保護テープT2は、100μm以上の厚みを有することが好ましいが、被加工物Wの割れ易さに応じてテープ基材の厚み、粘着層の厚み、材質等は適宜変更されてもよい。
【0031】
また、上記した分割方法では、切削工程、転写工程、ブレーキング工程を経て被加工物Wを個々のデバイスDに分割する構成にしたが、転写工程を省略してもよい。すなわち、切削後の被加工物WをダイシングテープT1から保護テープT2に転写することなく、ブレーキング加工が実施されてもよい。この場合、ブレーキング加工において、被加工物Wの裏面72側が上方に向くように表面71側を保持手段12に保持させて、押圧刃67によってダイシングテープT1を介して被加工物Wを分割するようにする。
【0032】
以上のように、本実施の形態によれば、切削ブレード63によって被加工物Wの分割予定ライン73に沿って分割溝74が形成され、スピンドルハウジング61の下端に設けられた押圧刃67によって分割溝74に沿って被加工物Wが破断される。この場合、切削ブレード63による切削加工用の各移動手段13、14、15や撮像手段66等の装置構成が押圧刃67によるブレーキング加工にも利用され、同一の装置内で切削加工とブレーキング加工を実施することができる。また、切削ブレード63の切削加工時に、被加工物Wに接触しないように押圧刃67の突出量が抑えられているため、押圧刃67によって切削ブレード63の切削加工が阻害されることがない。このように、装置コスト及び装置の設置スペースを増大させることなく、1台の分割装置1で切削加工及びブレーキング加工を実施することが可能になっている。
【0033】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。上記実施の形態において、添付図面に図示されている大きさや形状などについては、これに限定されず、本発明の効果を発揮する範囲内で適宜変更することが可能である。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。
【0034】
例えば、上記した本実施の形態では、1台の分割装置1で切削加工とブレーキング加工を実施する構成について説明したが、この構成に限定されない。本実施の形態に係る分割装置1は、切削加工にだけ使用されてもよいし、ブレーキング加工にだけ使用されてもよい。すなわち、分割装置1がブレーキング加工にだけ使用される場合、レーザー加工装置等で形成された改質層やレーザー加工溝等を分割起点として被加工物Wがブレーキングされてもよい。例えば、改質層は、被加工物Wに対して透過性を有する波長のレーザービームを用いたステルスダイシング(登録商標)によって形成される。また、レーザー加工溝は、被加工物Wに対して吸収性を有する波長のレーザービームを用いたアブレーション加工によって形成される。
【0035】
なお、改質層は、レーザービームの照射によって被加工物Wの内部の密度、屈折率、機械的強度やその他の物理的特性が周囲と異なる状態となり、周囲よりも強度が低下する領域のことをいう。改質層は、例えば、溶融処理領域、クラック領域、絶縁破壊領域、屈折率変化領域であり、これらが混在した領域でもよい。また、アブレーションとは、レーザービームの照射強度が所定の加工閾値以上になると、固体表面で電子、熱的、光科学的及び力学的エネルギーに変換され、その結果、中性原子、分子、正負のイオン、ラジカル、クラスタ、電子、光が爆発的に放出され、固体表面がエッチングされる現象をいう。
【0036】
また、上記した本実施の形態では、スピンドル62から切削ブレード63を取り外した状態でブレーキング加工が実施される構成にしたが、この構成に限定されない。ブレーキング加工は、スピンドル62に切削ブレード63が装着された状態で実施されてもよい。
【0037】
また、上記した本実施の形態では、光デバイスウェーハを被加工物Wとして説明したが、半導体ウェーハを被加工物Wにしてもよい。この場合、撮像手段66として赤外線カメラを用いて被加工物Wの分割溝74を検出するようにする。
【0038】
また、上記した本実施の形態では、スピンドルハウジング61に押圧刃67が設けられているが、押圧刃67の突出量を調整可能なようにスピンドルハウジング61に押圧刃67が取り付けられていてもよい。例えば、押圧刃67に上下に延びる長穴が形成され、長穴に差し込まれた固定ボルトによってスピンドルハウジング61の側面に押圧刃67がネジ止めされてもよい。
【0039】
また、上記した本実施の形態では、切削加工時に使用される撮像手段66によって、ブレーキング加工時に被加工物Wに対する押圧刃67のアライメントが実施されたが、この構成に限定されない。分割装置1に、切削加工用の撮像手段66とは別に、ブレーキング加工用の撮像手段66が設けられる構成でもよい。
【0040】
また、上記した本実施の形態では、被加工物Wの直径よりも長い押圧刃67によりブレーキング加工を実施する構成にしたが、この構成に限定されない。押圧刃67は、被加工物Wを分割予定ライン73に沿って分割可能であれば、形状や長さが限定されない。
【0041】
また、上記した本実施の形態では、X軸移動手段13によって切削手段16に対して保持手段12がX軸方向に移動され、Y軸移動手段14及びZ軸移動手段15によって保持手段12に対して切削手段16がY軸方向及びZ軸方向に移動される構成にしたが、この構成に限定されない。X軸移動手段13、Y軸移動手段14、Z軸移動手段15は、保持手段12と切削手段16とを相対的にX軸方向、Y軸方向、Z軸方向に移動させる構成であればよい。例えば、X軸移動手段13によって保持手段12に対して切削手段16がX軸方向に移動され、Y軸移動手段14及びZ軸移動手段15によって切削手段16に対して保持手段12がY軸方向及びZ軸方向に移動されてもよい。