特許第6232361号(P6232361)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232361
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】紫外線殺菌装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/32 20060101AFI20171106BHJP
【FI】
   C02F1/32
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-189655(P2014-189655)
(22)【出願日】2014年9月18日
(65)【公開番号】特開2016-59875(P2016-59875A)
(43)【公開日】2016年4月25日
【審査請求日】2016年12月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(72)【発明者】
【氏名】濱 康孝
(72)【発明者】
【氏名】松井 新吾
(72)【発明者】
【氏名】堀井 ゆり子
(72)【発明者】
【氏名】山本 玲緒
(72)【発明者】
【氏名】弘中 啓一郎
【審査官】 河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−088826(JP,A)
【文献】 特開2012−115715(JP,A)
【文献】 特開2014−131787(JP,A)
【文献】 特開2007−125511(JP,A)
【文献】 国際公開第2005/066076(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2007/0245507(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2004/0262236(US,A1)
【文献】 特開2014−161768(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/20 − 1/26
C02F 1/30 − 1/38
A61L 2/00 − 2/28
A61L 11/00 − 12/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
微生物及び浮遊物質を含有する水性流体からなる被殺菌流体に殺菌作用を有する紫外線を照射して前記被殺菌流体の殺菌を行う紫外線殺菌装置であって、
前記殺菌装置は、前記被殺菌流体が所定時間滞在する殺菌室と、前記殺菌室に前記被殺菌流体を供給するための流路と、前記殺菌室から殺菌処理された前記被殺菌流体を排出するための流路と、殺菌作用を有する紫外線を出射する紫外線発光ダイオード本体と、前記被殺菌流体と前記紫外線発光ダイオード本体とが接触しないように両者を隔離するための、殺菌作用を有する紫外線に対する透過性を有する隔離壁と、前記隔離壁の一方の面を清浄化するための表面クリーニング機構と、を有し、
前記殺菌装置の稼働時において前記隔離壁の一方の面は前記殺菌室内の前記被殺菌流体と接触すると共に前記隔離壁の他方の面側には前記紫外線発光ダイオード本体が配置されて、前記紫外線発光ダイオード本体から放射され、前記隔離壁を透過した前記紫外線を前記殺菌室内の前記被殺菌流体に照射し、
前記表面クリーニング機構は、前記被殺菌流体又は殺菌処理された前記被殺菌流体の水流によって回転する水車と、ブラシ、織布、不織布、ヘラ又は刃からなる接触部材と、を有し、前記接触部材と前記水車とを直接または連結部材を介して連結すると共に、前記水車の回転力を駆動力として前記接触部材を前記隔離壁の一方の面上を摺動させることによって前記隔離壁の一方の面上に付着した汚れ物体を除去する機構であり、
前記表面クリーニング機構による前記隔離壁の一方の面上における前記接触部材の摺動が断続的又は間欠的に行われ、前記接触部材が前記隔離壁の一方の面上を摺動した後、次の摺動が開始されるまでの間に、前記接触部材と前記隔離壁の一方の面との接触を解除し、前記接触部材に付着した前記汚れ物体を除去するようにしたことを特徴とする紫外線殺菌装置。
【請求項2】
前記表面クリーニング機構は、前記殺菌室内に、軸支された回転軸と羽根車とを有する水車を有し、前記水車の回転時において前記接触部材が前記隔離壁の一方の面上を摺動するように、前記接触部材が前記水車の羽根車に直接又はアームを介して取り付け機構により着脱可能に取り付けられた構造を有する請求項1に記載された紫外線殺菌装置。
【請求項3】
前記表面クリーニング機構は、断続的又は間欠的に、前記隔離壁の一方の面に超音波照射する機構を更に含んでなる請求項1又は2に記載された紫外線殺菌装置。
【請求項4】
前記接触部材に付着した前記汚れ物体を除去する方法が、接触部材に高圧水を照射するか、接触部材に超音波照射するか、又は接触部材を凸部と接触させて前記接触部材に付着した前記汚れ物体を除去する方法である、請求項に記載の紫外線殺菌装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な紫外線殺菌装置に関する。
【背景技術】
【0002】
紫外線殺菌は、薬剤による殺菌と異なり残留する物がなく、安全性が高いため、養殖魚や観賞魚などの水性生物の飼育水の殺菌方法として適している。そして、紫外線殺菌した飼育水を用いて魚の養殖を行った場合には、魚の細菌感染による死滅を有効に防止することができるために、餌に添加して投与する抗生物質を無くすか又はその量を著しく減少させることができ、安心・安全の点で付加価値の高い養殖魚を生産することが可能となる。
【0003】
このような飼育水の紫外線殺菌を行うための装置としては、紫外線光源として水銀ランプを用いた特許文献1乃至3に記載されているような装置が、また、紫外線発光ダイオード(以下、UV−LEDともいう。)を使用したものとしては、特許文献4及び5に記載されているような装置が知られている。
【0004】
ところで、UV−LEDは、水銀ランプに比べて発光する紫外線強度が低いという欠点があるものの、寿命が長く、消費電力も低いばかりでなく、破損した場合に水銀汚染が起こらないという優れた特徴を有しているため、光源としてUV−LEDを使用することが好ましいことが多い。
【0005】
なお、前記特許文献4に開示される殺菌装置では、一旦殺菌した水が太陽光に晒されると細菌の光回復現象により殺菌効果が低下するという問題の発生を避けるために、光源として、主発光ピーク320〜400nmのUVA発光するUV−LEDを、好ましくは主発光ピーク254nmのUVCを発光する紫外線ランプと組み合わせて使用することを特徴とするものである。しかしながら、UV−LEDとしては、260nm付近の波長を有する紫外線(所謂、殺菌線)の方が高いことが知られており、太陽光の影響が少ないか実質的に無視できるような環境下で殺菌を行う場合には、200〜350nm、更には240〜290nm波長を有する深紫外線を照射することが好ましいと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平08−243554号公報
【特許文献2】特開平08−252575号公報
【特許文献3】特開2014−131787号公報
【特許文献4】国際公開第2010/058607号パンフレット
【特許文献5】特開2012−115715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1乃至3に記載されているように、微生物及び浮遊物を含む水を紫外線殺菌する場合には、紫外線ランプを内蔵した光透過管の外側面に液体中の有機物等の汚染物質が付着して紫外線照射効率が低下することを防止するため、適宜自動清掃を行う必要があった。そして、このような自動清掃は、汚染状況をモニタリングしながら汚れが一定のレベルを越えた時に行われるか、装置稼働開始時のみに行われるといったように、比較的長時間のインターバルで行われるのが一般的であった。また、前記特許文献1及び2に示される自動清掃は、モーターを用いてスクレーパー又はブラシを摺動させる、或いは空気噴射により乱流を増加させるなど、何れも高いエネルギーコストを要し、且つ複雑な機構を有する装置によって行われていた。また、前記特許文献3に記載される方法は、簡単なメカニズムにより低エネルギーコストで清掃を行うことができるものの、光源や殺菌室の形状が特定のときのみに実施可能であり、しかも清浄頻度をコントロールすることは困難であった。
【0008】
このように、水銀ランプを光源とした紫外線菌装置においては、上記したような自動清浄装置を用いる事により、長期間安定して殺菌を行うことが可能であった。そして、特許文献5に示されるよなUV−LEDを光源として用いた装置においても紫外線透過性の窓材においても自動清浄装置を設けて窓材の表面を定期的に洗浄すれば特に問題なく使用できるとされていた。
【0009】
ところが、太陽光照射がない様な条件下における、UV−LEDのみを光源として用いた特許文献4の図12に示されるような装置による魚類の飼育水の循環殺菌では、殺菌効果が短時間で急激に低下することがあることが明らかとなった。そして、前記特許文献1、2又は5に示されるような自動清浄を用いて頻繁に洗浄を行って殺菌効率を維持しようとすると、多大なエネルギーコストを要するばかりでなく、頻繁に自動清浄装置のメンテナンス作業を行う必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者等は、上記問題を解決すべく、先ずその原因を突き止めるべく鋭意検討を行った。その結果、UV−LEDの発光強度が水銀ランプに比べて著しく低いため、特に流路が広く光源から離れた被照射体に紫外線が届き難い場合には、水銀ランプを用いた場合と比べて魚類の飼育水に含まれる微生物及び浮遊物に由来する汚れ物体(特に微生物汚染物)が移送管の内壁に付着しやすく、更に水銀ランプを用いた場合には問題とならないような僅かなレベルで汚れ物体が付着した場合でも、前記汚れ物体よる紫外線吸収効果より被殺菌体である飼育水に到達する紫外線の強度が著しく低下してしまうことが原因であることが明らかとなった。
【0011】
このような原因からすると、UV−LEDの発光強度を著しく高くすることができれば、上記問題を解決することができる。しかしながら、発光強度を高める為には非常に多くのUV−LEDを使用する必要があり経済的に不利であるばかりでなく、装置が大型化してしまう。
【0012】
そこで、本発明者は、メンテナンスが容易であるような簡便な機構で、頻繁かつ低エネルギーコストで、紫外線透過性の管壁に付着した前記汚れ物体を除去することができるクリーニング機構を設けるという観点から種々検討を行った。その結果、被処理水の水流を利用した簡便なクリーニング機構に想到し、本発明を完成するに至った。
【0013】
即ち、本発明は、微生物及び浮遊物質を含有する水性流体からなる被殺菌流体に殺菌作用を有する紫外線を照射して前記被殺菌流体の殺菌を行う紫外線殺菌装置であって、前記殺菌装置は、前記被殺菌流体が所定時間滞在する殺菌室と、前記殺菌室に前記被殺菌流体を供給するための流路と、前記殺菌室から殺菌処理された前記被殺菌流体を排出するための流路と、殺菌作用を有する紫外線を出射する紫外線発光ダイオード本体と、前記被殺菌流体と前記紫外線発光ダイオード本体とが接触しないように両者を隔離するための、殺菌作用を有する紫外線に対する透過性を有する隔離壁と、前記隔離壁の一方の面を清浄化するための表面クリーニング機構と、を有し、前記殺菌装置の稼働時において前記隔離壁の一方の面は前記殺菌室内の前記被殺菌流体と接触すると共に前記隔離壁の他方の面側には前記紫外線発光ダイオード本体が配置されて、前記紫外線発光ダイオード本体から放射され、前記隔離壁を透過した前記紫外線を前記殺菌室内の前記被殺菌流体に照射し、前記表面クリーニング機構は、前記被殺菌流体又は殺菌処理された前記被殺菌流体の水流によって回転する水車と、ブラシ、織布、不織布、ヘラ又は刃からなる接触部材と、を有し、前記接触部材と前記水車とを直接または連結部材を介して連結すると共に、前記水車の回転力を駆動力として前記接触部材を前記隔離壁の一方の面上を摺動させることによって前記隔離壁の一方の面上に付着した前記汚れ物体を除去する機構であ前記表面クリーニング機構による前記隔離壁の一方の面上における前記接触部材の摺動が断続的又は間欠的に行われ、前記接触部材が前記隔離壁の一方の面上を摺動した後、次の摺動が開始されるまでの間に、前記接触部材と前記隔離壁の一方の面との接触を解除し、前記接触部材に付着した前記汚れ物体を除去するようにした、ことを特徴とする紫外線殺菌装置である。

【発明の効果】
【0014】
本発明の紫外線殺菌装置によれば、光源として(水銀ランプと比較して)発光強度が著しく低いUV−LEDを使用しているにもかかわらず、魚類の飼育水のように微生物及び浮遊物質を含有する水性流体からなる被殺菌流体を紫外線殺菌するに際し、長期わたって高い殺菌効率を維持することができる。
【0015】
また、自動清浄装置を用いた場合に必要となるエネルギーコスト、およびメンテナンスコストを削減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本図は、代表的な本発明の紫外線発殺菌装置の模式図である。
図2】本図は、図1に示す装置の殺菌室底面の別の態様を示す模式図である。
図3】本図は、特表2012−530920号公報の図1および2に示される流量計の分解図及び組立図である。なお、本図における符号は上記公報の明細書で説明されている通りのものであり、他の図面(図1、2、4、5、6、及び7)における符号とは関係がない。
図4】本図は、別の代表的な本発明の紫外線発殺菌装置の模式図である。
図5】本図は、図4に示す本発明の紫外線発殺菌装置の横断面図である。
図6】本図は、更に別の本発明の紫外線発殺菌置の模式図である。
図7】本図は、図6に示す本発明の紫外線発殺菌装置の横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の紫外線殺菌装置は、微生物及び浮遊物質を含有する水性流体からなる被殺菌流体に殺菌作用を有する紫外線を照射して前記被殺菌流体の殺菌を行う紫外線殺菌装置であって、前記殺菌装置は、前記被殺菌流体が所定時間滞在する殺菌室と、前記殺菌室に前記被殺菌流体を供給するための流路と、前記殺菌室から殺菌処理された前記被殺菌流体を排出するための流路と、殺菌作用を有する紫外線を出射する紫外線発光ダイオード本体と、前記被殺菌流体と前記紫外線発光ダイオード本体とが接触しないように両者を隔離するための、殺菌作用を有する紫外線に対する透過性を有する隔離壁と、前記隔離壁の一方の面を清浄化するための表面クリーニング機構と、を有し、前記殺菌装置の稼働時において前記隔離壁の一方の面は前記殺菌室内の前記被殺菌流体と接触すると共に前記隔離壁の他方の面側には前記紫外線発光ダイオード本体が配置されて、前記紫外線発光ダイオード本体から放射され、前記隔離壁を透過した前記紫外線を前記殺菌室内の前記被殺菌流体に照射し、前記表面クリーニング機構は、前記被殺菌流体又は殺菌処理された前記被殺菌流体の水流によって回転する水車と、ブラシ、織布、不織布、ヘラ又は刃からなる接触部材と、を有し、前記接触部材と前記水車とを直接または連結部材を介して連結すると共に、前記水車の回転力を駆動力として前記接触部材を前記隔離壁の一方の面上を摺動させることによって前記隔離壁の一方の面上に付着した前記汚れ物体を除去する機構である、ことを特徴とする。
【0018】
上記本発明の紫外線殺菌装置は、上記特定の表面クリーニング機構を設けたことを主たる特徴とするもので、その基本的構造は紫外線光源としてUV−LEDを用いた従来の紫外線殺菌装置と特に変わる点はない。例えば、前記特許文献4の図9、10、12、13、14及び15に示されるような装置、更には前記特許文献5の図1乃至図9に示される装置と同様の基本構造を有する。これら従来の装置は、何れも“水性流体からなる被殺菌流体に殺菌作用を有する紫外線を照射して前記被殺菌流体の殺菌を行う紫外線殺菌装置であって、前記殺菌装置は、前記被殺菌流体が所定時間滞在する殺菌室と、前記殺菌室に前記被殺菌流体を供給するための流路と、前記殺菌室から殺菌処理された前記被殺菌流体を排出するための流路と、殺菌作用を有する紫外線を出射する光源と、前記被殺菌流体と前記光源とが接触しないように両者を隔離するための、殺菌作用を有する紫外線に対する透過性を有する隔離壁と、を有し、前記殺菌装置の稼働時において前記隔離壁の一方の面は前記殺菌室内の前記被殺菌流体と接触すると共に前記隔離壁の他方の面側には前記光源が配置されて、前記光源から放射され、前記隔離壁を透過した前記紫外線を前記殺菌室内の前記被殺菌流体に照射する”点で共通している。
【0019】
なお、本発明において隔離壁とは、光源と前記光源から出射される光が照射される被照射体との間に介在して両者を隔てると共にそれを通して光源から出射された光を被照射体に照射できるような光透過性を有する隔壁を意味する。したがって、1)開口部を有する容器内に光源を収容し、前記開口部を透光性板状体で塞いで封止し、前記透光性板状体の外側に配置した被照射体に向かって光を照射するタイプの紫外線殺菌装置における前記透光性板状体、2)透光性管状体の内部に光源を収容し、両端を蓋で塞いで封止し、前記透光性管状体の外部に配置された被照射体に向かって光を照射するタイプの紫外線殺菌装置における前記透光性管状体、及び3)透光性管状体の内部に被照射体を配置し、前記透光性管状体の外周に沿って光源を配置して前記被照射体に向かって光を照射するタイプの紫外線殺菌装置における前記透光性管状体を構成する材料も窓材に含まれる。例えば、前記特許文献4の図9及び10に示される装置における「透光プレート7」、図12及び13における「移送管25」、図14及び15における「容器33」、更には前記特許文献5の図3に示される「保護カバー19」は何れも本発明でいうところの隔離壁に相当する。
【0020】
このように、本発明の紫外線殺菌装置は、前記特定の表面クリーニング機構を設けて前記隔離壁の一方の面上に付着した前記汚れ物体を除去するようにした点に主たる特徴があるので、以下、この点について説明する。
【0021】
本発明の紫外線殺菌装置における表面クリーニング機構は、前記被殺菌流体又は殺菌処理された前記被殺菌流体の水流によって回転する水車と、ブラシ、織布、不織布、ヘラ又は刃からなる接触部材と、を有する。ここで、水車とは回転軸とこれに取り付けられた羽根車(ランナー)を有し、羽根車が水流を受けて回転軸を中心に回転するものであれば特に限定されず、フランシス水車、ペルトン水車、プロペラ水車、クロスフロー水車、羽根車を有するコマ状の回転子などが使用できる。また、接触部材は、これが隔離壁の表面に当節しながら摺動することにより、隔離壁の表面に付着した汚れを物理的にかき取る又は絡め取ることができるブラシ、織布、不織布、ヘラ又は刃からなる。これら接触部材は、可撓性、弾力性又は柔軟性を有することが好ましく、また、隔離壁を傷つけない樹脂やゴム(エラストマー)等の材料からなることが好ましい。
【0022】
以下、本発明の紫外線殺菌装置について、図面を参照して説明する。ただし、本発明の紫外線殺菌装置は、これら具体例に限定されるものではない。
【0023】
図1に示す紫外線発殺菌置10は、底面が隔離壁4で構成される円筒状の殺菌室1を有し、供給側の流路2より流入する被殺菌流体の流れを受けてプロペラ水車5を回転させながら殺菌室1内に入り、排出側流路2’より排出されるようになっている。殺菌室1の底面を構成する隔離壁4の下側(裏側)にはUV−LED本体3が配置されており、前記UV−LED本体3から出射する紫外線が隔離壁4を透過して被殺菌流体に照射されることにより殺菌が行われる。
【0024】
殺菌装置10における表面クリーニング機構11は、プロペラ水車5、回転軸7、アーム8及び接触部材6より構成される。プロペラ水車5は、軸受(図示せず)により流路内に回転自在に取り付けられた、殺菌室内の隔離壁4の上側(表側)近傍まで延出した回転軸7に着脱自在に固定され、更に回転軸7の先端部にはアーム8が固定されている。アーム8には接触部材6が適切な押圧力をもって隔離壁4に押しつけられるように着脱自在に取り付けられている。そして、前記プロペラ水車5の回転力を駆動力として前記接触部材6が前記隔離壁4の一方の面(表面)上を摺動することによって前記面上に付着した汚れ物体を除去することができるようになっている。
【0025】
紫外線殺菌装置10において、装置本体の前記隔離壁4以外の部分(主として筺体)は、ガラスや樹脂、金属等の各種材料により作製することが出来るが、流入する水性流体による腐食等の影響が無いものが好ましい。また、紫外線の照射による変質がないものがより好ましい。隔離壁4はUV−LED本体3から放射される紫外線を透過する材質からなるもので、具体的には、石英、フッ化マグネシウム、フッ化カルシウム、サファイア等を用いることが出来る。
【0026】
UV−LED本体3は、殺菌効果のある波長の光を放射するものであれば特に限定されない。また、その数は、光出力や殺菌室の大きさに応じて、効率的な殺菌が行えるように適宜決定すればよい。なお、UV−LED本体3から放射された光の隔離壁4表面での反射を抑制するために、UV−LED本体3と隔離壁4の隙間に屈折率緩和剤を充填しても良い。屈折率緩和剤としては、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等が適している。さらに、紫外線殺菌装置10は、紫外線放射によりUV−LED本体3から放出される熱を効果的に排出する冷却機構を備える事が好ましい。
【0027】
紫外線殺菌装置10において、殺菌室1は、被殺菌流体が前記殺菌室内において十分に紫外線照射されるような滞在時間を確保できるような容積を有することが好ましい。
【0028】
このような表面クリーニング機構においては、例えば、殺菌室1の底面を図2に示されるように全てを隔離壁4で構成するのではなく、一部を筺体と同様の材質からなる底板17とする等といった手段を講じることにより、前記隔離壁の一方の面上における前記接触部材の摺動が断続的又は間欠的に行われるようにすると共に前記接触部材が前記隔離壁の一方の面上を摺動した後、次の摺動が開始されるまでの間に、前記接触部材と前記隔離壁の一方の面との接触が解除されるようにして、この接触が解除された間に、接触部材に高圧水を噴射するか、接触部材に超音波照射するか、又は接触部材を凸部と接触させて前記接触部材に付着した前記汚れ物体を除去する等の方法により、前記接触部材に付着した前記汚れ物体を除去するようにすることが好ましい。図2に示した態様では、前記底板17の表面側に凸状突起18を設けると共に裏側に超音波振動子19を設置して、凸部接触と超音波照射が同時に行われるようになっている。
【0029】
図1には水車としてプロペラ水車を用い、これに結合した回転軸の回転により、接触部材を回転させているが、例えば回転軸を上方に伸ばし、装置外側に延出させてギアを取り付けて動力を伝達し、スライダクランク機構、ラック&ピニオン機構、スコッチ・ヨーク機構などの汎用的な機構を用いて回転運動を往復運動に変換し、例えばモップがけするようにして接触部材を摺動させてもよい。
【0030】
また、プロペラ水車に代えてスランシス水車を用いることもできるし、更に、羽根車を有するコマ状の回転子からなる水車を用いることもできる。例えば、観賞魚用の水槽内の水を循環殺菌する場合のように少量の水を殺菌する場合には、図3に示す、特表2012−530920号公報(以下、参考特許文献ともいう。)の図1及び図2に示される流量計と同様の構造とすることが好ましい。この場合、上記流量計の計測隔室(参考特許文献図1の計測隔室10)を殺菌室とし、その底面を紫外線透過性材料で構成して隔離壁とし、その裏側(計測隔離壁の外側)にUV−LED本体3を配置すると共に、回転可能なシャフト(参考特許文献図1のシャフト32)からなる羽根車に接触部材を取り付けられることにより、このような用途で好適に使用できる本発明の紫外線殺菌装置とすることができる。
【0031】
なお、図1に示される装置では水車の回転力を利用して発電を行い、得られた電力を蓄えて、動力源として使用することもできる。また、回転軸を外部のモーターに接続することにより、装置非稼働時のように被殺菌流体が流れていない状態でも隔離壁の洗浄を行うことが可能となる。
【0032】
図4及び図6には、微生物及び浮遊物質を含有する水槽、生簀、湖沼等に、循環ポンプを有する配管設備を介して接続され、水性流体を殺菌する場合に好適に使用できる本発明の紫外線殺菌装置を10a及び10b示した。
【0033】
これら紫外線殺菌装置を10a及び10bは、何れも内筒(12a及び12b)と外筒(13a及び13b)とからなる二重管構造を有し、内筒(12a及び12b)の側壁が隔離壁(4a及び4b)で構成され、内筒の内部が殺菌室(1a及び1b)となっている。内筒と外筒との間の空間には、UV−LED本体(3a及び3b)が内筒中心部に向かって紫外線を放射するように配置されている。そして、供給側の流路2より殺菌室内に流入した被殺菌流体が、その流れによって水車(5a及び5b)回転させながら殺菌室1内を通過し、排出側流路2’より排出されるようになっている。そして、殺菌室1内を通過する間にUV−LED本体から出射する紫外線が隔離壁を透過して被殺菌流体に照射されることにより殺菌が行われる。
【0034】
これら殺菌装置における表面クリーニング機構(11a及び11b)は、それぞれ図5及び図7に示されるように、円形の枠体(14a及び14b)に嵌装された羽根車(15a及び15b)からなる2組の回転体(16a及び16b)からなる水車と、回転軸(7a及び7b)と、接触部材(6a及び6b)を含んでなる。
【0035】
すなわち、殺菌装置10aにおける表面クリーニング機構11aでは、図4及び図5に示されるように、内筒12aの中心軸上に回転軸7aが軸支されており、2枚の回転体が前記回転軸7aの殺菌室の天井部近傍と底部に固定されている。そしてこれら2枚の回転体の間に、円柱状又は長方形状の接触部材6aが、殺菌室の内面(隔離壁の内面)に沿って、適度な押圧力で前記内面に押しつけられるようにして、その両端が夫々2枚の回転体の枠体に固定されている。また、2枚の回転体16aは実質的に同じものであり、羽根車が被殺菌体の流れを受けることによって同じ方向に同じ速さで回転するようになっている。したがって、装置稼働時において被殺菌流体が流通した場合には、前記水車の回転力を駆動力として接触部材が前記隔離壁の内面上を摺動することになり、前記隔離壁の内面上に付着した前記汚れ物体が除去されるようになっている。
【0036】
また、殺菌装置10bにおける表面クリーニング機構11bでは、表面クリーニング機構11aと同様に内筒12bの中心軸上に回転軸7bが軸支され、2枚の回転体16bが前記回転軸7aの殺菌室の天井部近傍と底部に固定されている。また、2枚の回転体16bは実質的に同じものであり、羽根車が被殺菌体の流れを受けることによって同じ方向に同じ速さで回転するようになっている。しかし、表面クリーニング機構11bにおける接触部材の形状及びこれを摺動させるメカニズムは、表面クリーニング機構11aとは異なっている。すなわち、表面クリーニング機構11bでは、図6及び図7に示されるように、両端に歯車9bを形成した円柱状の支柱に接触部材6bを螺旋状に巻きつけた部材を用意し、これを、円形枠体14bの外周部形成された歯車9a及び内筒12bの内面に設けられたラック9cとかみ合わせて配置している。そして、2組の回転体16bからなる水車の回転により、前記部材が回転(自転)しながら前記隔離壁の内面上を摺動し、前記隔離壁の内面上に付着した前記汚れ物体を除去するようになっている。
【符号の説明】
【0037】
1、1a、1b・・・ 殺菌室
2、2a、2b・・・ 流路(供給側)
2’、2’a、2’b・・・ 流路(排出側)
3、3a、3b・・・ 紫外線発光ダイオード(UV−LED)本体
4、4a、4b・・・ 隔離壁
5、5a、5b・・・ 水車
6、6a、6b・・・ 接触部材
7、7a、7b・・・ 回転軸
8・・・ アーム
9a・・・ 歯車(大)
9b・・・ 歯車(小)
9c・・・ ラック
10、10a、10b・・・ 紫外線殺菌装置
11、11a、11b・・・ 表面クリーニング機構
12a、12b・・・ 内筒
13a、13b・・・ 外筒
14a、14b・・・ 枠体
15a、15b・・・ 羽根車
16a、16b・・・ 回転体
17・・・ 底板
18・・・ 凸状突起
19・・・ 超音波振動子
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7