(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0029】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による経皮投薬装置の概略を説明する図であり、経皮投薬装置の全体構成(
図1(a))、経皮投薬装置の注射針部分(
図1(a)のIb−Ib線断面)の構造(
図1(b))、経皮投薬装置の注射針部分の先端の構造(
図1(c))、及び皮膚における注射針の穿刺部位と当接部の当接領域との位置関係(
図1(d))を示している。
【0030】
実施形態1の経皮投薬装置100は、薬液を経皮的に皮下組織に注入するための注射針部分(以下、薬液注入針という。)110と、薬液を収容し、収容した薬液を薬液注入針110に供給するための注射器部分(以下、単に注射器という。)120とを有している。薬液注入針110は注射器120の先端部に取り付けられている。
【0031】
薬液注入針110は、複数の注射針115と、複数の注射針115を支持する針支持部111とを含む。針支持部111は、複数の注射針115が突出する針突出面113と、針突出面113に形成された当接部112とを有する。針支持部111の外形は概略円柱形状をしており、一方の端面(針突出面)113には複数の注射針115が針突出面113から突出するように設けられている。針支持部111の他方の端面にはフランジ114が形成されている。各注射針115は筒状構造を有し、先端には薬液の吐出口115aが形成されている。
【0032】
当接部112は、複数の注射針115が皮膚に所定深さの深さ侵入したとき、複数の注射針115の皮膚への侵入が阻止されるように皮膚に当接する部分である。ここで、当接部112は、
図1(b)に示すように、複数の注射針115の各々の周囲に観察可能な膨診が形成されるように注射針115から離して設けられ、さらに複数の注射針115のうちの隣接する注射針115の間を避けて配置されている。例えば、ここでは、当接部112と各注射針115とは、例えば1mm〜10mm程度の間隔を空けて配置し、当接部112と注射針115との間に確認可能な膨診が形成されるようにしている。当接部112の針先端側の端面は、皮膚に当接する皮膚当接面112bとなっている。従って、皮膚Skにおける当接部112が当接する当接領域Rcは、
図1(d)に示すように、皮膚における注射針115が突き刺さる穿刺部位Rnから、穿刺部位Rnと当接領域Rcとの間に膨診Whが形成される程度離れて位置している。また、当接領域Rcは、少なくとも、複数の注射針115が突き刺さる皮膚Sk上の複数の穿刺部位Rnのうちの隣接する2箇所の間には存在しない。
【0033】
また、注射器120は、薬液を収容する筒状体(注射器本体)121と、注射器本体121内に挿入されるプランジャ123と、注射器本体121の先端部に形成された針装着部(ルアーロック部)122とを有する。針装着部122は、注射器本体121と一体に形成された外筒体122aおよび内筒体122bを有し、外筒体122aと内筒体122bとは同軸状に重なるように配置されている。針装着部122は、外筒体122aと内筒体122bとの隙間に針支持部111のフランジ114をねじ込むことにより、薬液注入針110が注射器120に装着されるように構成されている。
【0034】
次に、薬液注入針110について詳しく説明する。
【0035】
図2は、本発明の実施形態1による薬液注入針(注射針部分)110の具体的な構造を示す斜視図である。
【0036】
薬液注入針110の針支持部111は、3本の注射針115が取り付けられた針支持部本体111bと、針支持部本体111bの一方の端部に取り付けられ、注射針115の皮膚に対する穿刺深さを規制する針支持部キャップ111aとを有する。
【0037】
ここで、針支持部本体111bの一方の端部には注射針115の根元部分が埋め込まれており、針支持部本体111bの他方の端部には、薬液注入針110を注射器120に装着するためのフランジ114が形成されている。
【0038】
また、針支持部キャップ111aは、針支持部本体111bを構成する円筒体に針支持部キャップ111aを構成する円筒体を被せ、針支持部キャップ111aの円筒体の側壁に形成された係合孔111a1に、針支持部本体111bの円筒体の外周面に形成された係合突起111b1を係合させることにより針支持部本体111bに取り付けられている。針支持部キャップ111aにおける注射針115の先端側の面には、注射針115を突出させる針貫通孔113aが形成されており、この針貫通孔113aから注射針115が突出している。つまり、針支持部キャップ111aにおける注射針115の先端側の面が針支持部111の針突出面113となっている。なお、針支持部本体111bを構成する円筒体の外周面には、薬液注入針110を収容する針ホルダー内で薬液注入針110の回転が規制されるように針ホルダー内の溝に係合する回転規制突起111b2が形成されている。
【0039】
針突出面113には、当接部112としての3つの板状当接片1121〜1123が3本の注射針115を囲むように針突出面113の周縁に沿って等間隔で配置されており、これらの板状当接片1121〜1123の各々は、3つの注射針115のいずれかに対向するように配置されている。ここで、対向する注射針115と板状当接片1121〜1123とは、これらの間に観察が可能な膨診が形成される程度の間隔(例えば、1mm〜10mm)を空けて配置されていることは言うまでもない。ここで、板状当接片1121〜1123の高さは、例えば1mm〜10mmであり、板状当接片1121〜1123の厚さは、例えば0.5mm〜2.0mmである。
【0040】
さらに、針突出面113より突出する注射針115の長さは、板状当接片1121〜1123の針突出面113上での高さより長い。板状当接片1121〜1123の高さに相当するスペース、つまり、針突出面113から各板状当接片1121〜1123の皮膚当接面112bまでの空間が、薬液の注入により膨診(皮膚の膨らみ)が形成されるのを阻害しないようにするための膨診形成スペース112aとなっている。
【0041】
また、針支持部111の針支持部キャップ111aは、針突出面113及び板状当接片1121〜1123を含む外殻部101と、この外殻部101に組み込まれ、針支持部本体111bに取り付けられた注射針115を針突出面113の針貫通孔113aに案内する針ガイド部材102とを含んでいる。針支持部キャップ111aの外殻部101には、針ガイド部材102の針案内通路(図示せず)と針支持部キャップ111aの針突出面113の針貫通孔113aとの位置決めを行うための位置決め開口部111a2が形成されている。
【0042】
針支持部111の針支持部本体111b、並びに針支持部111の針支持部キャップ111aを構成する外殻部101及び針ガイド部材102は、ポリカーボネート、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリスチレン等の熱可塑性樹脂を材料として、射出成形等により製造することができる。注射針115の構成材料としては、限定するものではないが、ステンレス鋼、アルミニウムまたはアルミニウム合金、チタンまたはチタン合金等の金属材料が挙げられる。
【0043】
また、3本の注射針115は円形の針突出面113の中心から等距離に配置され、かつ3本の注射針115の各々と針突出面113の中心とを結ぶ3つの線分のうちの隣接するもののなす内周角は120°である。
【0044】
例えば、薬液注入針110の針突出面113の直径を5〜20mmとし、3本の注射針115を針突出面113に設ける場合には、各注射針115の針突出面113の中心からの距離は1〜5mmであるのが好ましく、さらに1〜1.5mmであることが好ましい。
【0045】
また、隣接する注射針115間のピッチ(距離)は1〜10mmが好ましく、さらに好ましくは1〜5mm、最も好ましくは1〜3mmである。
【0046】
注射針115が板状当接部112の皮膚当接面112bから突出する寸法は、0.1〜3mm以下であるのが好ましく、0.5〜2.0mm程度であるのがより好ましく、0.5〜1.5mm程度であるのがさらに好ましい。注射針115の最大外径は、0.1〜0
.6mm程度であるのが好ましく、0.2〜0.6mm程度であるのがより好ましい。注射針115の先端は、管状部材を斜めにカットしたような形状をなしている。
【0047】
ただし、針支持部111における注射針115の本数、配置、あるいは形状は上記のものに限定されるものではなく、針支持部111は、複数の注射針115により皮膚への薬液の注入箇所を分散させることができるものであればよい。
【0048】
さらに、経皮投薬装置100で使用される薬液は、典型的には、薬剤を含有する溶液、ゲルまたは懸濁液である。使用可能な薬剤は、経皮的な投与に適さない薬剤以外であれば実質的に制限されない。
【0049】
例えば、経皮投薬装置100で経皮投与される薬剤としては、好ましくは、経口投与で効果を表さないかあるいは減弱してしまうタンパク、ぺプチド、多糖類、オリゴヌクレオチド、DNA等であり、具体的な例としては、インスリン、成長ホルモン、インターフェロン、カルシトニン等の高分子量医薬品である。
【0050】
次に、注射針部分(薬液注入針)110を注射器120に取り付けることにより経皮投薬装置100を組み立てる方法について説明する。
【0051】
図3は、本発明の実施形態1による経皮投薬装置を組み立てる方法を説明する図であり、
図3(a)〜
図3(d)は、針収容容器(針ホルダー)に収容された注射針部分(薬液注入針)を注射器に取り付ける手順を示している。
【0052】
薬液注入針110は密閉された針ホルダーHに収容されて提供される。針ホルダーHは、薬液注入針110を収容するホルダー本体Hbと、ホルダー本体Hbの開口に沿って形成されたホルダーフランジHfと、このホルダーフランジHfに貼り付けられたシール蓋材Hsとを有する。薬液注入針110は、薬液注入針110が針ホルダーH内で回転しないように、針支持部111の針支持部本体111bの外面に形成した回転規制突起111b2がホルダー本体Hb内の溝(図示せず)に係合する状態で、ホルダー本体Hb内に収容され、ホルダーフランジHfに貼り付けたシール蓋材Hsによってホルダー本体Hb内は無菌状態に密封されている。個々の患者に薬液の投与を行う場合は、針ホルダーHを開封して薬液注入針110を注射器120に装着する。
【0053】
具体的にはまず、新しい薬液注入針110を収容した針ホルダーHを注射器120とともに準備し(
図3(a))、針ホルダーHのシール蓋材Hsを引き剥がし(
図3(b))、針ホルダーH内に収容されている薬液注入針110のフランジ114が、注射器120の装着部122の外筒体122aと内筒体122bとの間に挿入されるように、注射器120の装着部122を薬液注入針110の端部にねじ込む(
図3(c))。その後、薬液注入針110を注射器120に装着した状態で薬液注入針110を針ホルダーHから取り出す(
図3(d))。これにより注射器120の先端に薬液注入針110を装着した経皮投薬装置100が組み立てられる。
【0054】
その後、経皮投薬装置100の注射器120に薬液を充填し、この経皮投薬装置100を用いて薬液の経皮投与を行う。
【0055】
具体的には、注射針115を皮膚に差し込み、薬液注入針110の当接部112(板状当接片1121〜1123)の皮膚当接面112bが人の皮膚に当接した状態で、プランジャ123を押し込んで薬液を人の皮下組織に注入する。
【0056】
このとき、注射針115による穿刺部位Rnと、当接部112の皮膚当接面112bが皮膚の表面に接触する領域(当接領域)Rcとの位置関係は、
図1(d)に示す位置関係となる。つまり、当接領域Rcは、穿刺部位Rnから、当接領域Rcと穿刺部位Rnとの間に観察可能な膨診Whが形成される以上の間隔(1mm〜10mm)を空けて位置しており、また、隣接する注射針115の穿刺部位Rnの間には当接領域Rcが存在していない。
【0057】
このように本実施形態1では、薬液の経皮投与を行うための薬液注入針110において、複数の注射針115をそれぞれの先端が突出するように支持する針支持部111を有しているので、薬液の注入箇所を分散させることにより、皮膚組織内で薬液がより均一に広がるように薬液の注入を行うことができる。
【0058】
また、複数の注射針が皮膚に所定深さの深さ侵入したときに皮膚に当接することにより複数の注射針の皮膚への侵入を阻止する当接部112として、板状当接片1121〜1123をこれらの板状当接片と注射針115との間に観察可能な膨診が形成される程度の間隔(例えば1mm〜10mm)を空けて設けているので、実施形態1の経皮投薬装置100を用いて薬液を皮下組織に注入したとき、薬液が注入されたことを示す膨診の確認が可能となる。
【0059】
また、複数の板状当接片1121〜1123を複数の注射針151を囲むように等間隔で配置しているので、板状当接片1121〜1123が隣接する注射針115の間に存在することはなく、注射針の穿刺深さを規制する板状当接片1121〜1123により、隣接する注射針115の間で膨診が形成されにくくなるのを抑制できる。
【0060】
その結果、薬液の注入を複数箇所から行うことができるだけでなく、観察可能な膨診が形成されにくくなるのを抑制しつつ注射針の穿刺深さを規制することができる薬液注入針110及びこの薬液注入針110を備えた経皮投薬装置100を実現することができる。
【0061】
(実施形態2)
図4は、本発明の実施形態2による経皮投薬装置の概略を説明する図であり、経皮投薬装置の全体構成(
図4(a))、経皮投薬装置の注射針部分(
図4(a)のIVb−IVb線断面)の構造(
図4(b))、経皮投薬装置の注射針部分の先端の構造(
図4(c))、及び皮膚における注射針の穿刺部位と当接部の当接領域との位置関係(
図4(d))を示している。
図5は、本発明の実施形態2による経皮投薬装置の注射針部分の具体的な構造を示す斜視図である。
【0062】
実施形態2の経皮投薬装置200は、実施形態1の経皮投薬装置100における薬液注入針110に代えて、薬液注入針110とは構造の異なる薬液注入針210を備えたものである。
【0063】
具体的には、薬液注入針210は、実施形態1の薬液注入針110と同様に、複数(3本)の注射針115と、複数の注射針115を支持する針支持部211とを有し、針支持部211は、複数の注射針115が突出する円形の針突出面213と、複数の注射針115が皮膚に所定深さの深さ侵入したとき、複数の注射針115の皮膚への侵入が阻止されるように皮膚に当接する当接部212を有している。
【0064】
ここでは、当接部212は、実施形態1における針突出面113の周縁に沿って均等に配置された板状当接片1121〜1123とは異なり、円筒状をなすように円形の針突出面213の周縁に沿って配置された構造となっている。つまり、当接部212は、円形の針突出面213の直径と等しい円筒状当接片2121により構成されている。従って、当接部212としての円筒状当接片2121は、
図4(b)に示すように、複数の注射針115の各々の周囲に観察可能な膨診が形成されるように注射針115から離れて、かつ複数の注射針115のうちの隣接する注射針115の間を避けて位置している。
【0065】
例えば、円筒状当接片2121は、この円筒状当接片2121と注射針115との間に観察可能な膨診が形成される程度の間隔(例えば、1mm〜10mm)を空けて設けられている。円筒状当接片2121の高さは例えば1mm〜10mmであり、円筒状当接片2121の厚さは、例えば0.5mm〜2.0mmである。ここで円筒状当接片2121の高さに相当するスペース、つまり、針突出面213から円筒状当接片2121の皮膚当接面212bまでの空間が、薬液の注入により皮膚が膨らむのを阻害しないようにするための膨診形成スペース212aとなっている。
【0066】
なお、この実施形態2の経皮投薬装置200では、針支持部211における針支持部キャップ211a、針支持部本体211b、外殻部201、針ガイド部材202、針貫通孔213a、フランジ214、係合孔211a1、回転規制突起211b1、開口部211a2、及び係止突起211b2はそれぞれ、実施形態1における針支持部キャップ111a、針支持部本体111bと、外殻部101、針ガイド部材102、針貫通孔113a、フランジ114、係合孔111a1、係合突起111b1、開口部111a2、及び回転規制突起111b2と同一のものである。
【0067】
この実施形態2においても、経皮投薬装置200の円筒状当接片1121が皮膚に当接するまで注射針115を皮膚に差し込んだ状態で、プランジャ123を押し込んで薬液を人の皮下組織に注入する。このように注射針115を皮膚に差し込んだ状態では、注射針115による穿刺部位Rnと、当接部212の皮膚当接面212bと皮膚の表面との当接領域Rcとの位置関係は、
図4(d)に示す位置関係となる。
【0068】
つまり、当接領域Rcと穿刺部位Rnとは、これらの間に観察可能な膨診Whが形成される以上の間隔を空けて位置しており、隣接する注射針115の穿刺部位Rnの間には当接領域Rcが存在していない。
【0069】
このような構成の実施形態2では、薬液の経皮投与を行うための薬液注入針210において、複数の注射針115をそれぞれの先端が突出するように支持する針支持部211を有しているので、薬液の注入箇所を分散させるにより、皮膚組織内で薬液がより均一に広がるように薬液の注入を行うことができる。
【0070】
また、複数の注射針115が皮膚に所定深さの深さ侵入したときに皮膚に当接することにより複数の注射針115の皮膚への侵入を阻止する当接部212として、円筒状当接片2121を、この円筒状当接片2121と注射針115との間に観察可能な膨診が形成される程度の間隔(例えば1mm〜10mm)を空けて複数の注射針115を囲むように設けているので、実施形態2の経皮投薬装置200を用いて薬液を皮下組織に注入したとき、薬液が注入されたことを示す膨診の確認が可能となる。
【0071】
また、円筒状当接片2121を複数の注射針151を囲むように配置しているので、円筒状当接片2121が隣接する注射針115の間に存在することはなく、注射針の穿刺深さを規制する円筒状当接片2121により、隣接する注射針115の間で膨診が形成されにくくなるのを抑制できる。
【0072】
その結果、薬液の注入を複数箇所から行うことができるだけでなく、観察可能な膨診が形成されにくくなるのを抑制しつつ注射針の穿刺深さを規制することができる薬液注入針210及びこの薬液注入針210を備えた経皮投薬装置200を実現することができる。
【0073】
(実施形態3)
図6は、本発明の実施形態3による経皮投薬装置の概略を説明する図であり、経皮投薬装置の全体構成(
図6(a))、経皮投薬装置の注射針部分(
図6(a)のVIb−VIb線断面)の構造(
図6(b))、経皮投薬装置の注射針部分の先端の構造(
図6(c))、及び皮膚における注射針の穿刺部位と当接部の当接領域との位置関係(
図6(d))を示している。
図7は、本発明の実施形態3による経皮投薬装置の注射針部分の具体的な構造を示す斜視図である。
【0074】
実施形態3の経皮投薬装置300は、実施形態1の薬液注入針110あるいは実施形態2の薬液注入針210とは構造の異なる薬液注入針310を備えたものである。
【0075】
具体的には、薬液注入針310は、実施形態1の薬液注入針110あるいは実施形態2の薬液注入針210と同様に、複数(3本)の注射針115と、注射針115を支持する針支持部311とを有し、針支持部311は、複数の注射針115が突出する円形の針突出面313と、複数の注射針115が皮膚に所定深さの深さ侵入したとき、複数の注射針115の皮膚への侵入が阻止されるように皮膚に当接する当接部312を有している。
【0076】
ここでは、針支持部311は、当接部312として、実施形態1の薬液注入針110の針支持部111における板状当接片1121〜1123に代わる柱状当接体3121〜3123を備えたものであり、柱状当接体3121〜3123は円形の針突出面313の周縁に沿って等間隔で配置されている。具体的には、当接部312としての柱状当接体3121〜3123は、
図6(b)に示すように、複数の注射針115の各々の周囲に観察可能な膨診が形成されるように注射針115から離して、かつ複数の注射針115のうちの隣接する注射針115の間を避けて配置されている。
【0077】
例えば、対向する注射針115と板状当接片3121〜3123とは、これらの間に観察が可能な膨診が形成される程度の間隔(例えば、1mm〜10mm)を空けて配置されている。また、柱状当接体3121〜3123の高さは、例えば1mm〜10mmであり、柱状当接体3121〜3123の半径方向の寸法及びこれに直交する方向の厚さはそれぞれ、例えば0.5mm〜2.0mmである。柱状当接体3121〜3123の断面形状は、砲弾型形状(二次関数のグラフの頂点付近の形状)となっている。また、柱状当接体3121〜3123の高さに相当するスペース、つまり、針突出面313から柱状当接体3121〜3123の皮膚当接面312bまでの空間が、薬液の注入により皮膚が膨らむのを阻害しないようにするための膨診形成スペース312aとなっている。
【0078】
なお、この実施形態3の経皮投薬装置300では、針支持部311における針支持部キャップ311a、針支持部本体311b、外殻部301、針ガイド部材302、針貫通孔313a、フランジ314、係合孔311a1、係合突起311b1、開口部311a2、及び回転規制突起311b2はそれぞれ、実施形態1における針支持部キャップ111a、針支持部本体111b、外殻部101、針ガイド部材102、針貫通孔113a、フランジ114、係合孔111a1、係合突起111b1、開口部111a2、及び回転規制突起111b2と同一のものである。
【0079】
この実施形態3においても、経皮投薬装置300の柱状当接体3121〜3123が皮膚に当接するまで注射針115を皮膚に差し込んだ状態で、プランジャ123を押し込んで薬液を人の皮下組織に注入する。このように注射針115を皮膚に差し込んだ状態では、注射針115による穿刺部位Rnと、当接部312の皮膚当接面312bと皮膚の表面との当接領域Rcとの位置関係は、
図6(d)に示す位置関係となる。
【0080】
つまり、当接領域Rcと穿刺部位Rnとはこれらの間に観察可能な膨診Whが形成される以上の間隔を空けて位置しており、隣接する注射針115の穿刺部位Rnの間には当接領域Rcが存在していない。
【0081】
このような構成の実施形態3では、薬液の経皮投与を行うための薬液注入針310において、複数の注射針115をそれぞれの先端が突出するように支持する針支持部311を有しているので、薬液の注入箇所を分散させるにより、皮膚組織内で薬液がより均一に広がるように薬液の注入を行うことができる。
【0082】
また、複数の注射針115が皮膚に所定深さの深さ侵入したときに皮膚に当接することにより複数の注射針115の皮膚への侵入を阻止する当接部312として、柱状当接体3121〜3123を、これらの柱状当接体3121〜3123と注射針115との間に観察可能な膨診が形成される程度の間隔(例えば1mm〜10mm)を空けて設けているので、実施形態3の経皮投薬装置300を用いて薬液を皮下組織に注入したとき、薬液が注入されたことを示す膨診の確認が可能となる。
【0083】
また、柱状当接体3121〜3123を複数の注射針115のうちの隣接する注射針115の間を避けてそれぞれの注射針115に対向するように配置しているので、柱状当接体3121〜3123が隣接する注射針115の間に存在することはなく、注射針の穿刺深さを規制する柱状当接体3121〜3123により膨診が形成されにくくなるのを抑制できる。
【0084】
その結果、薬液の注入を複数箇所から行うことができるだけでなく、膨診が形成されにくくなるのを抑制しつつ注射針の穿刺深さを規制することができる薬液注入針310及びこの薬液注入針310を備えた経皮投薬装置300を実現することができる。
【0085】
(実施形態4)
図8は、本発明の実施形態4による経皮投薬装置の概略を説明する図であり、経皮投薬装置の全体構成(
図8(a))、経皮投薬装置の注射針部分(
図8(a)のVIIIb−VIIIb線断面)の構造(
図8(b))、経皮投薬装置の注射針部分の先端の構造(
図8(c))、及び皮膚における注射針の穿刺部位と当接部の当接領域との位置関係(
図8(d))を示している。
図9は、本発明の実施形態4による経皮投薬装置の注射針部分の具体的な構造を示す斜視図である。
【0086】
実施形態4の経皮投薬装置400は、実施形態1の薬液注入針110、実施形態2の薬液注入針210、あるいは実施形態3の薬液注入針310とは構造の異なる薬液注入針410を備えたものである。
【0087】
具体的には、薬液注入針410は、実施形態1、2、あるいは3の薬液注入針110、210、あるいは310と同様に、複数(3本)の注射針115と、注射針115を支持する針支持部411とを有し、針支持部411は、複数の注射針115が突出する円形の針突出面413と、複数の注射針115が皮膚に所定深さの深さ侵入したとき、複数の注射針115の皮膚への侵入が阻止されるように皮膚に当接する当接部412を有している。
【0088】
ここでは、針支持部411は、当接部412として、実施形態3の薬液注入針310の針支持部311における3つの柱状当接体3121〜3123に代えて、針突出面413の中心に配置された円柱状当接体4121を備えている。ここで、当接部412としての円柱状当接体4121は、
図8(b)に示すように、複数の注射針115の各々の周囲に観察可能な膨診が形成されるように注射針115から離して、かつ複数の注射針115のうちの隣接する注射針115の間を避けて配置されている。
【0089】
例えば、円柱状当接体4121は、この円柱状当接体4121と注射針115との間に観察可能な膨診が形成される程度の間隔(例えば、1mm〜10mm)を空けて設けられている。円柱状当接体4121の高さは、例えば1mm〜10mmであり、円柱状当接体4121の直径は、例えば1mm〜5mmである。また、当接部412(円柱状当接体4121)の高さに相当するスペース、つまり、針突出面413から円柱状当接体4121の皮膚当接面412bまでの空間が、薬液の注入により皮膚が膨らむのを阻害しないようにするための膨診形成スペース412aとなっている。ここで、当接部412の断面形状は円形形状に限定されるものではなく、楕円形状や多角形形状などであってもよい。
【0090】
なお、この実施形態4の経皮投薬装置400では、針支持部411における針支持部キャップ411a、針支持部本体411b、外殻部401、針ガイド部材402、針貫通孔413a、フランジ414、係合孔411a1、係合突起411b1、開口部411a2、及び回転規制突起411b2はそれぞれ、実施形態3における針支持部キャップ311a、針支持部本体311b、外殻部301、針ガイド部材302、針貫通孔313a、フランジ314、係合孔311a1、係合突起311b1、開口部311a2、及び回転規制突起311b2と同一のものである。
【0091】
この実施形態4においても、経皮投薬装置400の円柱状当接体4121が皮膚に当接するまで注射針115を皮膚に差し込んだ状態で、プランジャ123を押し込んで薬液を人の皮下組織に注入する。このように注射針115を皮膚に差し込んだ状態では、注射針115による穿刺部位Rnと、当接部412の皮膚当接面412bと皮膚の表面との当接領域Rcとの位置関係は、
図8(d)に示す位置関係となる。つまり、当接領域Rcと穿刺部位Rnとはこれらの間に観察可能な膨診Whが形成される以上の間隔を空けて位置しており、隣接する注射針115の穿刺部位Rnの間には当接領域Rcが存在していない。
【0092】
このような構成の実施形態4では、薬液の経皮投与を行うための薬液注入針410において、複数の注射針115をそれぞれの先端が突出するように支持する針支持部411を有しているので、薬液の注入箇所を分散させることができる。
【0093】
また、複数の注射針115が皮膚に所定深さの深さ侵入したときに皮膚に当接することにより複数の注射針115の皮膚への侵入を阻止する当接部412として、円柱状当接体4121を、この円柱状当接体4121と注射針115との間に観察可能な膨診が形成される程度の間隔(例えば1mm〜10mm)を空けて設けているので、実施形態4の経皮投薬装置400を用いて薬液を皮下組織に注入したとき、薬液が注入されたことを示す膨診の確認が可能となる。
【0094】
また、円柱状当接体4121を、円柱状当接体4121の周りに3本の注射針151が均等な間隔で位置するように円形の針突出面413の中心に配置しているので、円筒状当接片4121が隣接する注射針115の間に存在することはなく、注射針の穿刺深さを規制する円筒状当接片4121により、隣接する注射針115の間で膨診が形成されにくくなるのを抑制できる。
【0095】
その結果、薬液の注入を複数箇所から行うことができるだけでなく、膨診が形成されにくくなるのを抑制しつつ注射針の穿刺深さを規制することができる薬液注入針410及びこの薬液注入針410を備えた経皮投薬装置400を実現することができる。
【0096】
(実施形態5)
図10は、本発明の実施形態5による経皮投薬装置の概略を説明する図であり、経皮投薬装置の全体構成(
図10(a))、経皮投薬装置の注射針部分(
図10(a)のXb−Xb線断面)の構造(
図10(b))、経皮投薬装置の注射針部分の先端の構造(
図10(c))、及び皮膚における注射針の穿刺部位と当接部の当接領域との位置関係(
図10(d))を示している。
図11は、本発明の実施形態5による経皮投薬装置の注射針部分の具体的な構造を示す斜視図である。
【0097】
実施形態5の経皮投薬装置500は、実施形態1の薬液注入針110、実施形態2の薬液注入針210、実施形態3の薬液注入針310、あるいは実施形態4の経皮投薬装置400における薬液注入針410とは構造の異なる薬液注入針510を備えたものである。
【0098】
具体的には、薬液注入針510は、実施形態1、2、3、あるいは4の薬液注入針110、210、310、あるいは410と同様に、複数(3本)の注射針115と、注射針115を支持する針支持部511とを有し、針支持部511は、複数の注射針115が突出する円形の針突出面513と、複数の注射針115が皮膚に所定深さの深さ侵入したとき、複数の注射針115の皮膚への侵入が阻止されるように皮膚に当接する当接部512を有している。
【0099】
ここでは、針支持部511は、当接部512として、実施形態4の薬液注入針410の針支持部411における1つの円柱状当接体412に代えて3つの円柱状当接体5121〜5123を備えている。この3つの円柱状当接体5121〜5123は、円形の針突出面513の周縁に沿って等間隔で配置されている。また、3本の注射針115は、3つの円柱状当接体5121〜5123の位置を結んで得られる正三角形の領域の内部に位置している。ここで、当接部512としての円柱状当接体5121〜5123は、
図10(b)に示すように、複数の注射針115の各々の周囲に観察可能な膨診が形成されるように注射針115から離して、かつ複数の注射針115のうちの隣接する注射針115の間を避けて配置されている。
【0100】
例えば、隣接する注射針115と円柱状当接体5121〜5123とは、これらの間に観察が可能な膨診が形成される程度の間隔(例えば、1mm〜10mm)を空けて配置されている。ここで、円柱状当接体5121〜5123の高さは、例えば1mm〜10mmであり、各円柱状当接体5121〜5123の直径は、例えば0.5mm〜2.0mmである。また、当接部512の高さに相当するスペース、つまり、針突出面513から当接部512としての各円柱状当接体5121〜5123の皮膚当接面512bまでのスペース空間が、薬液の注入により皮膚が膨らむのを阻害しないようにするための膨診形成スペース512aとなっている。ここで、当接部512としての柱状当接体5121〜5123の断面形状は円形形状に限定されるものではなく、楕円形状や多角形形状などであってもよい。
【0101】
なお、この実施形態5の経皮投薬装置500では、針支持部511における針支持部キャップ511a、針支持部本体511b、外殻部501、針ガイド部材502、針貫通孔513a、フランジ514、係合孔511a1、係合突起511b1、開口部511a2、及び回転規制突起511b2はそれぞれ、実施形態4における針支持部キャップ411a、針支持部本体411b、外殻部401、針ガイド部材402、針貫通孔413a、フランジ414、係合孔411a1、係合突起411b1、開口部411a2、及び回転規制突起411b2と同一のものである。
【0102】
この実施形態5においても、薬液注入針510の針支持部511の円柱状当接体5121〜5123が皮膚に当接するまで注射針115を皮膚に差し込んだ状態で、プランジャ123を押し込んで薬液を人の皮下組織に注入する。このように注射針115を皮膚に差し込んだ状態では、注射針115による穿刺部位Rnと、当接部512の皮膚当接面512bと皮膚の表面との当接領域Rcとの位置関係は、
図10(d)に示す位置関係となる。
【0103】
つまり、当接領域Rcと穿刺部位Rnとはこれらの間に観察可能な膨診Whが形成される以上の間隔を空けて位置しており、隣接する注射針115の穿刺部位Rnの間には当接領域Rcが存在していない。
【0104】
このような構成の実施形態5では、薬液の経皮投与を行うための薬液注入針510において、複数の注射針115をそれぞれの先端が突出するように支持する針支持部511を有しているので、薬液の注入箇所を分散させることができる。
【0105】
また、複数の注射針115が皮膚に所定深さの深さ侵入したときに皮膚に当接することにより複数の注射針115の皮膚への侵入を阻止する当接部512として、3つの円柱状当接体5121〜5123を、これらの円柱状当接体5121〜5123と注射針115との間に観察可能な膨診が形成される程度の間隔(例えば1mm〜10mm)を空けて設けているので、実施形態5の経皮投薬装置500を用いて薬液を皮下組織に注入したとき、薬液が注入されたことを示す膨診の確認が可能となる。
【0106】
また、円柱状当接体5121〜5123を複数の注射針151のうちの隣接する注射針の間を避けて配置しているので、円柱状当接体5121〜5123が、隣接する注射針の間に存在することはなく、注射針の穿刺深さを規制する円柱状当接体5121〜5123により膨診が形成されにくくなるのを抑制できる。
【0107】
その結果、薬液の注入を複数箇所から行うことができるだけでなく、膨診が形成されにくくなるのを抑制しつつ注射針の穿刺深さを規制することができる薬液注入針510及びこの薬液注入針510を備えた経皮投薬装置500を実現することができる。
【0108】
なお、前記実施形態では、当接部の具体的な構造を示したが、当接部は、上述した実施形態のものに限定されるものではなく、複数の注射針の各々の周囲に観察可能な膨診が形成されるように注射針から離して設けられているものであればどのようなものでもよい。この場合、当接部は、複数の注射針のうちの隣接する注射針の間を避けて設けられていることが望ましい。
【0109】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した特許文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。