特許第6232486号(P6232486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232486
(24)【登録日】2017年10月27日
(45)【発行日】2017年11月15日
(54)【発明の名称】光学積層体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20171106BHJP
   B32B 7/02 20060101ALI20171106BHJP
【FI】
   G02B5/30
   B32B7/02 103
【請求項の数】11
【全頁数】33
(21)【出願番号】特願2016-210988(P2016-210988)
(22)【出願日】2016年10月27日
(65)【公開番号】特開2017-129843(P2017-129843A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2016年10月28日
(31)【優先権主張番号】特願2016-8163(P2016-8163)
(32)【優先日】2016年1月19日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100100158
【弁理士】
【氏名又は名称】鮫島 睦
(74)【代理人】
【識別番号】100132252
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 環
(72)【発明者】
【氏名】松本 大輔
(72)【発明者】
【氏名】寇 レイ
【審査官】 池田 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−191203(JP,A)
【文献】 特開2009−244486(JP,A)
【文献】 特開2012−226000(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、保護フィルムと、第1の粘着剤層と、偏光板とを有する光学積層体の製造方法であって、
前記保護フィルムと前記第1の粘着剤層と前記偏光板とを貼合せ、光学積層体の前駆体を作製する工程、および、
前記光学積層体の前駆体を、30℃以下の温度、かつ、0.2MPaG以上の雰囲気中に配置する工程、
を含む、光学積層体の製造方法。
【請求項2】
前記光学積層体が、さらに機能性フィルムと、第2の粘着剤層とを有する、請求項1に記載の光学積層体の製造方法であって、
さらに、前記機能性フィルムと、前記第2の粘着剤層とを貼合せる工程、および
前記第2の粘着剤層を、40℃未満の温度、かつ、0.2MPaG以上の雰囲気中に配置する工程、
を含む、光学積層体の製造方法。
【請求項3】
前記光学積層体が、さらに第3の粘着剤層および剥離紙を有する、請求項1または2に記載の光学積層体の製造方法であって、
さらに、第3の粘着剤層と剥離紙とを貼合せる工程、および
前記第3の粘着剤層を、40℃未満の温度、かつ、0.2MPaG以上の雰囲気中に配置する工程、
を含む、光学積層体の製造方法。
【請求項4】
前記光学積層体の前駆体を雰囲気中に配置する工程に要する加圧時間は、30分以下である、請求項1から3のいずれか1項に記載の、光学積層体の製造方法。
【請求項5】
前記第2の粘着剤層を雰囲気中に配置する工程において、30℃以下の温度、かつ、0.2MPaG以上とする、請求項2に記載の、光学積層体の製造方法。
【請求項6】
前記第2の粘着剤層を雰囲気中に配置する工程に要する加圧時間は、30分以下である、請求項2またはに記載の、光学積層体の製造方法。
【請求項7】
前記第3の粘着剤層を雰囲気中に配置する工程において、30℃以下の温度、かつ、0.2MPaG以上とする、請求項3に記載の、光学積層体の製造方法。
【請求項8】
前記第3の粘着剤層を雰囲気中に配置する工程に要する加圧時間は、30分以下である、請求項3またはに記載の、光学積層体の製造方法。
【請求項9】
前記光学積層体の厚さが、200μm以下である、請求項1からのいずれか1項に記載の、光学積層体の製造方法。
【請求項10】
前記偏光板の厚さが、10〜65μmである、請求項1からのいずれか1項に記載の、光学積層体の製造方法。
【請求項11】
前記保護フィルムの厚さが、100μm以下である、請求項1から10のいずれか1項に記載の、光学積層体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光板を有する光学積層体は、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等のモバイル機器や大型テレビジョン等の液晶表示装置における偏光の供給素子として、または偏光の検出素子として、広く用いられている。上記光学積層体は、例えば、液晶表示装置の製造時にその表面を保護する目的で、上記偏光板と粘着剤層と保護フィルムとが貼合されている。さらに、例えば、上記偏光板と保護フィルムの間には、必要に応じて、光学フィルム、例えば、輝度向上フィルムなどの機能性フィルムが、粘着剤層を介して貼合されている。このようにして製造された光学積層体は、液晶パネルにさらなる粘着剤層を介して貼着され、液晶表示装置の構成部品となる。
【0003】
このような光学積層体に用いる粘着剤層は、例えば、偏光板に粘着剤を塗布することにより形成される(例えば、特許文献1)。
【0004】
また、貼り直しが可能な再剥離性両面粘着シートを用いて、偏光板とその他の光学部材および保護フィルム等とを貼合せる技術が提案されている(例えば、特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平11−337730号公報
【特許文献2】特開2010−180367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に示された偏光板のように、粘着剤層を介してフィルム同士を貼合してなる光学積層体では、例えば、偏光板と粘着剤層の貼合面に気泡が噛み込まれるという問題が生じ得る。
【0007】
例えば、偏光板と保護フィルムとを貼合する際に、貼合面に存在する気泡が粘着剤層などに噛み込まれることにより、偏光板と粘着剤層の貼合面に気泡が噛み込まれ得る。また、貼合面に埃、金属粉等の異物が付着していると、偏光板と保護フィルムとを貼合した際に、異物が存在している部分の保護フィルム、偏光板が周囲よりも浮き上がり、その結果、異物の周囲に気泡が噛み込まれた状態となることがある。
【0008】
特に、近年、液晶表示装置の薄肉軽量化の要求から、偏光板の厚さを薄くするために、例えば、粘着剤層の厚さを従来よりも薄くすることが求められている。粘着剤層の厚さを従来よりも薄くすると、異物の付着による気泡の噛み込みが、従来の粘着剤層よりも一層顕著に認識されることになる。
【0009】
具体的には、従来の厚さの粘着剤層では、或る程度の大きさの異物は粘着剤層に埋没されるので、異物の付着による気泡の噛み込みの問題はあまり生じない。また、気泡の噛み込みが生じたとしても、気泡サイズはあまり大きくない。これに対して、粘着剤層の厚さを従来よりも薄くすると、従来では問題にならなかった大きさの異物であっても、その大きさが粘着剤層の厚さよりも相対的に大きくなり、粘着剤層に埋没されない。その結果、異物による気泡の噛み込みが生じるおそれが従来よりも高くなり、さらに、生じる気泡サイズは従来よりも大きくなる。
【0010】
一方、特許文献2に示された貼り直しが可能な再剥離性両面粘着シートのように、粘着剤層を再剥離し、貼直すことにより、気泡および異物を取り除くことが提案されている。しかし、貼直しが可能な粘着剤層は、再剥離できない粘着剤層と比べて、粘着力、耐熱性、防湿性などの物性が劣り得る。このため、再剥離性の粘着剤層を液晶表示装置などに用い、高温条件下に曝した場合、この粘着剤層に起因する光学的な欠点が生じ得る。また、再剥離の際に、新たな異物の付着、および気泡の噛み込みが生じ得る。
【0011】
このように、例えば、偏光板の貼合面に大きな気泡が噛み込まれると、偏光板、さらには光学積層体の品質が低下する。その結果として、光学積層体の生産性や歩留りが減少(不良率が増加)するという不具合が生じ得る。
【0012】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、例えば、偏光板の貼合面に大きな気泡が噛み込まれることによる光学積層体の品質低下を防ぎ、光学積層体を効率よく製造する方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は以下を含む
[1]少なくとも、保護フィルムと、第1の粘着剤層と、偏光板とを有する光学積層体の製造方法であって、
前記保護フィルムと前記第1の粘着剤層と前記偏光板とを貼合せ、光学積層体の前駆体を作製する工程、および、
前記光学積層体の前駆体を、50℃未満の温度、かつ、0.2MPaG以上の雰囲気中に配置する工程、
を含む、光学積層体の製造方法。
[2]前記光学積層体が、さらに機能性フィルムと、第2の粘着剤層とを有する、[1]に記載の光学積層体の製造方法であって、
さらに、前記機能性フィルムと、前記第2の粘着剤層とを貼合せる工程、および
前記第2の粘着剤層を、50℃未満の温度、かつ、0.2MPaG以上の雰囲気中に配置する工程、
を含む、光学積層体の製造方法。
[3]前記光学積層体が、さらに第3の粘着剤層および剥離紙を有する、[1]または[2]に記載の光学積層体の製造方法であって、
さらに、第3の粘着剤層と剥離紙とを貼合せる工程、および
前記第3の粘着剤層を、50℃未満の温度、かつ、0.2MPaG以上の雰囲気中に配置する工程、
を含む、光学積層体の製造方法。
[4]前記光学積層体の厚さが、200μm以下である、[1]〜[3]のいずれか1に記載の、光学積層体の製造方法。
[5]前記偏光板の厚さが、10〜65μm以下である、[1]〜[4]のいずれか1に記載の、光学積層体の製造方法。
[6]保護フィルムの厚さが、100μm以下である、[1]〜[5]のいずれか1に記載の、光学積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0014】
本発明の製造方法は、光学積層体の製造時に生じ得る気泡サイズを効率よく縮小できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は本発明の製造方法により得られた光学積層体の一例を示す概略断面図である。
図2図2は、本発明の実施例に係る気泡サイズを計算する方法を説明する図である。
図3図3は、光学積層体の断面図と、反り量の関係とを示す概略図である。
図4図4(a)は、観察された気泡を示し、図4(b)は、本発明の製造方法により気泡が除去されたことを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る製造方法について適宜図を用いて説明するが、本発明はこれらの実施態様に限定されるものではない。また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【0017】
本発明における製造方法は、少なくとも、保護フィルムと、第1の粘着剤層と、偏光板とを有する光学積層体の製造方法であって、
前記保護フィルムと前記第1の粘着剤層と前記偏光板とを貼合せ、光学積層体の前駆体を作製する工程、および、
前記光学積層体の前駆体を、50℃未満の温度、かつ、0.2MPaG以上の雰囲気中に配置する工程(以下、「前駆体の後処理工程」または「第1の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程」ともいう)
を含む、光学積層体の製造方法に関する。
本発明の製造方法によれば、第1の粘着剤層の存在する気泡サイズを効果的に縮小でき、気泡を効果的に除去できる。なお、本発明において、圧力単位が「MPaG」で示される場合、その圧力は、特に指定がない限り、ゲージ圧を意味する。
さらに、得られた光学積層体の寸法変化と、反り量の変化量についても抑制できる。
【0018】
本発明における光学積層体は、少なくとも保護フィルムと、第1の粘着剤層と、偏光板とを有し、例えば、保護フィルムと、第1の粘着剤層と、偏光板とがこの順で積層されている。本発明は、前記保護フィルムと前記第1の粘着剤層と前記偏光板とを貼合せ、光学積層体の前駆体を作製する工程、および、光学積層体の前駆体を、50℃未満の温度、かつ、0.2MPaG以上の雰囲気中に配置する工程を含む。
【0019】
保護フィルムと前記第1の粘着剤層と前記偏光板とを貼合せ、光学積層体の前駆体を作製する工程は、当該技術分野において既知の方法を使用できる。例えば、保護フィルムと第1の粘着剤層とを貼合せ、その後、第1の粘着剤層における保護フィルムとは反対側の面と、偏光板とを貼合せてもよい。あるいは、偏光板と第1の粘着剤層とを貼合せ、その後、第1の粘着剤層における偏光板とは反対側の面と、保護フィルムとを貼合せてもよい。
【0020】
本発明は、光学積層体の前駆体を、50℃未満の温度、例えば、10〜40℃の温度、別の例では15〜30℃の温度、かつ、0.2MPaG以上の加圧雰囲気中、例えば、0.2〜0.7MPaGの加圧雰囲気中、別の例では、0.2〜0.6MPaGの雰囲気中に配置することにより、第1の粘着剤層における気泡を縮小または除去できる。
これらの温度範囲および圧力範囲である限り、温度と圧力の組合せは限定されない。例えば、温度が15〜30℃である場合、圧力は0.2〜0.5MPaGであってもよい。
例えば、温度は、上記範囲に加えて、10〜45℃であってもよく、30℃超〜50℃未満であってもよく、35℃〜45℃あってもよい。
また、加圧雰囲気は、上記範囲に加えて、0.3〜0.6MPaG、0.35〜0.55MPaGの範囲であってもよい。
【0021】
圧力が高いほど気泡を縮小する効果は高くなる。加圧処理の安全性を考慮すると、圧力は0.7MPaG以下であり得る。
【0022】
処理温度の下限値は、例えば−10℃以上であり、ある態様においては5℃以上である。このような範囲であると、例えば、第1の粘着剤層等に用い得る粘着剤が流動性を保持しているため、効率的に気泡を減少および/または除去できる。
【0023】
前駆体の後処理工程に要する加圧時間は、例えば、24時間以下、例えば、1時間以下であり、特に、30分以下である。このような範囲で加圧を行うことにより、気泡の除去を効果的に行え、さらに、光学積層体の収縮を予防できる。また、得られた光学積層体の反り量が著しく大きくなることを防ぎ得る。
例えば、3〜30分かけて処理をおこなう。なお、本明細書において、加圧時間とは、特に記載のない限り、加圧の開始から、所定の圧力に達し、その後一定の圧力を保持した時間の合計である。また、圧力を段階的に増加させてもよく、一定の上昇率で圧力を増加させてもよい。
【0024】
加圧後の減圧時間は、付与した圧力、温度などに応じて適宜設定できる。減圧時間は、例えば、0.5〜30分、別の態様では、8〜30分である。例えば、加圧処理を、0.2〜0.7MPaGの範囲、常温(25℃)で行った場合、減圧時間は5〜30分、例えば、8〜30分であってもよい。別の例では、加圧処理を、0.2〜0.6MPaGの範囲、常温で行った場合、減圧時間は8〜30分であってもよい。
このような条件で減圧を行うことにより、気泡サイズの縮小および気泡除去を効果的に行え、さらに、光学積層体の収縮を予防できる。また、得られた光学積層体の反り量が著しく大きくなることを防ぎ得る。
本明細書において減圧時間とは、特に記載のない限り、減圧の開始から、常圧に達するまでの時間を意味する。減圧を段階的に行ってもよく、一定の変化率で圧力を低下させてもよい。
【0025】
本明細書において、加圧処理の圧力を0.2〜0.7MPaGに設定するとは、このような範囲内であれば、任意の値を取り得ることを意味する。例えば、加圧処理の圧力は、0.3〜0.65MPaGであってもよく、0.4〜0.6MPaGであってもよい。また、気泡除去に付される粘着剤層の厚さ、粘着剤層の数に応じて、これらの値を、本発明の範囲を逸脱しない限り、適宜設定できる。
【0026】
本発明は、前駆体の後処理工程に加えて、必要に応じて、光学積層体の前駆体を作製する前段階で、第1の粘着剤層に存在する気泡を縮小または除去するさらなる工程(以下、「前駆体の予備処理工程」ともいう)を含んでもよい。
例えば、光学積層体の製造方法は、保護フィルムと第1の粘着剤層を貼合わせた後に、前駆体の予備処理工程を含み、その後、前駆体の後処理工程を含んでもよい。
第1の粘着剤層と偏光板を貼合わせた後、前駆体の後処理工程を含んでもよい。光学積層体の前駆体を作製する前段階において、前駆体の予備処理工程を含むことにより、さらに効果的に気泡を除去できる。
【0027】
ここで、第1の粘着剤層に存在する気泡は、第1の粘着剤層と隣接する層との界面、例えば、保護フィルムと、第1の粘着剤層との界面に存在する気泡であってもよく、第1の粘着剤層と、偏光板との界面に存在する気泡であってもよく、第1の粘着剤層内部に存在する気泡であってもよく、これらの組合せにおいて存在する気泡であってもよい。なお、このような例は、第1の粘着剤層のみならず、後述する第2の粘着剤層および第3の粘着剤層にも該当する。
【0028】
本明細書において、気泡を縮小するとは、粘着剤層に噛み込まれた気泡のサイズを小さくすることである。気泡の縮小および除去が行われるメカニズムは、この説に限定されないが、例えば、粘着剤層に存在している気泡を光学積層体の端部から外に押し出すことにより、気泡サイズをより小さくできるものと推定される。それゆえ、本発明の製造方法によれば、光学積層体の品質が低下する大きさの気泡の噛み込みが無く、品質の高い光学積層体を、効率よく製造できる。その結果、光学積層体の生産性や歩留りを増加(不良率を減少)できるという効果を奏する。さらに、本発明の製造方法は、上記所定の温度かつ圧力条件下で気泡除去を行うので、偏光板等の収縮により生じ得る寸法変化と、反り量の変化を抑制できる。さらには、得られた光学積層体の寸法変化と、反り量の変化量についても抑制できる。
【0029】
本発明の光学積層体の製造方法においては、例えば、光学積層体の前駆体が長尺である場合、上記長尺の光学積層体の前駆体を、チップ状の光学積層体の前駆体に切断する工程(切断工程ともいう)をさらに包含していてもよい。また、保護フィルムなどの原料を切断した後に、第1の粘着剤層等と貼合せ、上記した気泡除去工程に付してもよい。例えば、本発明に係る光学積層体の製造方法においては、上記した気泡除去工程を、上記切断工程の後に行なってもよい。光学積層体の前駆体の大きさ(面積)が小さければ、光学積層体の前駆体から気泡を効率よく押し出し得るからである。
【0030】
本発明の製造方法は、前駆体の後処理工程に続いて、必要において、当該技術分野において公知の更なる切断工程、他の光学部材の積層工程を含んでもよい。
【0031】
本発明は、また、光学積層体が、さらに機能性フィルムと、第2の粘着剤層とを有する、上記した光学積層体の製造方法であって、
さらに、前記機能性フィルムと、前記第2の粘着剤層とを貼合せる工程、および
前記第2の粘着剤層を、50℃未満の温度、かつ、0.2MPaG以上の雰囲気中に配置する工程(以下、「第2の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程」ともいう)を含む、光学積層体の製造方法を提供する。
本発明の製造方法によれば、少なくとも、第2の粘着剤層の存在する気泡サイズを効果的に縮小でき、気泡を効果的に除去できる。
さらに、得られた光学積層体の寸法変化と、反り量の変化量についても抑制できる。
【0032】
例えば、保護フィルムと、第1の粘着剤層と、機能性フィルムと、第2の粘着剤層と、偏光板とをこの順で貼合せてもよい。同様に、保護フィルムと、第1の粘着剤層と、偏光板と、第2の粘着剤層と機能性フィルムとをこの順で貼合せてもよい。これら各層の貼合せ順および貼合せ態様は、適宜設定できる。
【0033】
ここで、第2の粘着剤層に存在する気泡は、第2の粘着剤層と隣接する層との界面、例えば、機能性フィルムと、第2の粘着剤層との界面に存在する気泡であってもよく、第2の粘着剤層と、偏光板との界面に存在する気泡であってもよく、第2の粘着剤層内部に存在する気泡であってもよく、これらの組合せにおいて存在する気泡であってもよい。
【0034】
第2の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程は、機能性フィルムと、第2の粘着剤層とを貼合せた後におこなってもよい。
また、保護フィルムと、第1の粘着剤層と、機能性フィルムと、第2の粘着剤層とを貼合せた後におこなってもよい。
例えば、保護フィルムと、第1の粘着剤層と、機能性フィルムと、第2の粘着剤層とを貼合せ、得られた光学積層体の前駆体を、50℃未満の温度、0.2MPaG以上の雰囲気中に配置し、第2の粘着剤層に存在する気泡を縮小または除去し、次いで、第2の粘着剤層における機能性フィルムとは反対側の面に偏光板を貼合わせ、偏光板を含む、光学積層体の前駆体を50℃未満の温度、0.2MPaG以上の雰囲気中に配置し、第2の粘着剤層に存在する気泡を縮小または除去し、光学積層体を得てもよい。
さらには、保護フィルムと、第1の粘着剤層と、機能性フィルムと、第2の粘着剤層と、偏光板とを貼合せた後に、0.2MPaG以上の雰囲気中に配置し、第2の粘着剤層に存在する気泡を縮小または除去し、光学積層体を得てもよい。
いずれの形態であっても、第2の粘着剤層が、50℃未満の温度、0.2MPaG以上の雰囲気中に配置されることにより、第2の粘着剤層に存在する気泡を、効率的に除去できる。
【0035】
保護フィルムと、第1の粘着剤層と、機能性フィルムと、第2の粘着剤層と、偏光板とを貼合せる工程も、当該技術分野において既知の方法で行われ、また、粘着剤層等を貼合せる順序も、適宜選択できる。この工程を経て、光学積層体の前駆体が得られる。
【0036】
第2の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程は、上記第1の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程と共に行われてもよく、例えば、第1および第2の粘着剤層を有する光学積層体の前駆体を作製した後、前駆体の後処理工程を行ってもよい。このような場合、本明細書においては、上記「前駆体の後処理工程」に「第2の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程」が含まれることになる。
また、第2の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程を単独で行ってもよい。第2の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程は、第1の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程と共に行う場合、上記前駆体の後処理工程に付される条件に従い行われ得る。また、第1の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程と、第2の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程とを、それぞれ独立して行う場合、処理温度、圧力等の条件は、同一であってもよく、異なってもよい。施された第1および第2の粘着剤層の種類、厚さ等により、これらの条件を適宜設定できる。
【0037】
例えば、第2の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程は、第2の粘着剤層を50℃未満の温度、例えば、10〜40℃の温度、別の例では、15〜30℃の温度、および、0.2MPaG以上の雰囲気中、例えば、0.2〜0.7MPaGの雰囲気中、別の例では、0.2〜0.6MPaGの雰囲気中に配置することにより、第2の粘着剤層に存在する気泡を縮小または除去できる。
これらの温度範囲および圧力範囲である限り、温度と圧力の組合せは限定されない。例えば、温度15〜30℃であるの場合、圧力は0.2〜0.5MPaGであってもよい。
例えば、温度は、上記範囲に加えて、10〜45℃であってもよく、30℃超〜50℃未満であってもよく、35℃〜45℃あってもよい。
また、加圧雰囲気は、上記範囲に加えて、0.3〜0.6MPaG、0.35〜0.55MPaGの範囲であってもよい。
【0038】
圧力が高いほど気泡を縮小する効果は高くなる。加圧処理の安全性を考慮すると、圧力は0.7MPaG以下であり得る。
【0039】
処理温度の下限値は、例えば5℃以上である。このような範囲であると、例えば、第1の粘着剤層および第2の粘着剤層に用い得る粘着剤が流動性を保持しているため、効率的に気泡を減少および/または除去できる。
【0040】
前駆体の後処理工程に要する加圧時間は、例えば、24時間以下、例えば、1時間以下であり、特に、30分以下である。例えば、3〜30分かけて処理をおこなう。このような範囲で加圧を行うことにより、気泡サイズの縮小および気泡の除去を効果的に行え、さらに、光学積層体の収縮を予防できる。また、得られた光学積層体の反り量が著しく大きくなることを防ぎ得る。
【0041】
加圧後の減圧時間は、付与した圧力、温度などに応じて適宜設定できる。減圧時間は、例えば、0.5〜30分、別の態様では、8〜30分である。例えば、加圧処理を、0.2〜0.7MPaGの範囲、常温で行った場合、減圧時間は5〜30分、例えば、8〜30分であってもよい。別の例では、加圧処理を、0.2〜0.6MPaGの範囲、常温で行った場合、減圧時間は8〜30分であってもよい。
このような範囲で減圧を行うことにより、気泡サイズの縮小および気泡の除去を効果的に行え、さらに、光学積層体の収縮を予防できる。また、得られた光学積層体の反り量が著しく大きくなることを防ぎ得る。
【0042】
本発明の製造方法によれば、光学積層体の品質が低下する大きさの気泡の噛み込みが無く、品質の高い光学積層体を、効率よく製造できる。その結果、光学積層体の生産性や歩留りを増加(不良率を減少)できるという効果を奏する。さらに、本発明の製造方法は、上記所定の温度かつ圧力条件下で気泡除去を行うので、偏光板等の収縮により生じ得る寸法変化と、反り量の変化を抑制できる。さらには、得られた光学積層体の寸法変化と、反り量の変化量についても抑制でき、その結果、光学積層体の生産性および歩留りを増加(不良率を減少)できるという効果を奏する。
【0043】
本発明の光学積層体の製造方法においては、例えば、光学積層体の前駆体が長尺である場合、上記長尺の光学積層体の前駆体を、チップ状の光学積層体の前駆体に切断する工程(切断工程ともいう)をさらに包含していてもよい。また、保護フィルムなどの原料を切断した後に、第1の粘着剤層等と貼合せ、上記した気泡除去工程に付してもよい。例えば、本発明に係る光学積層体の製造方法においては、上記した気泡除去工程を、上記切断工程の後に行なってもよい。光学積層体の前駆体の大きさ(面積)が小さければ、光学積層体の前駆体から気泡を効率よく押し出し得るからである。
【0044】
本発明はまた、光学積層体が、さらに第3の粘着剤層および剥離紙を有する、上記した光学積層体の製造方法であって、
さらに、第3の粘着剤層と剥離紙とを貼合せる工程、および
前記第3の粘着剤層を、50℃未満の温度、かつ、0.2MPaG以上の雰囲気中に配置する工程(以下、「第3の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程」ともいう)、
を含む、光学積層体の製造方法を提供する。
上記工程を含むことにより、少なくとも、第3の粘着剤層の存在する気泡サイズを効果的に縮小でき、気泡を効果的に除去できる。
さらに、得られた光学積層体の寸法変化と、反り量の変化量についても抑制できる。
【0045】
例えば、保護フィルムと、第1の粘着剤層と、機能性フィルムと、第2の粘着剤層と、偏光板と、第3の粘着剤層と、剥離紙とをこの順で貼合せてもよい。同様に、保護フィルムと、第1の粘着剤層と、偏光板と、第2の粘着剤層と機能性フィルムと、第3の粘着剤層と、剥離紙とをこの順で貼合せてもよい。これら各層の貼合せ順および貼合せ態様は、適宜設定できる。
【0046】
ここで、第3の粘着剤層に存在する気泡は、第3の粘着剤層と隣接する層との界面、例えば、偏光板と、第3の粘着剤層との界面に存在する気泡であってもよく、第3の粘着剤層と、剥離紙との界面に存在する気泡であってもよく、第3の粘着剤層内部に存在する気泡であってもよく、これらの組合せにおいて存在する気泡であってもよい。
【0047】
第3の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程は、偏光板と第3の粘着剤層とを貼合せた後におこなってもよい。
また、保護フィルムと、第1の粘着剤層と、機能性フィルムと、第2の粘着剤層と偏光板と第3の粘着剤層とを貼合せた後におこなってもよい。
例えば、保護フィルムと、第1の粘着剤層と、機能性フィルムと、第2の粘着剤層と偏光板と第3の粘着剤層と剥離紙とを貼合せ、得られた光学積層体の前駆体を、50℃未満の温度、0.2MPaG以上の雰囲気中に配置し、上記前駆体の後処理工程を経て、光学積層体を得てもよい。このような場合、本明細書においては、上記「前駆体の後処理工程」に「第3の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程」が含まれることになる。
いずれの形態であっても、第3の粘着剤層が、50℃未満の温度、0.2MPaG以上の雰囲気中に配置されることにより、第3の粘着剤層に存在する気泡を、効率的に除去できる。
【0048】
第3の粘着剤と、剥離紙とを偏光板などに貼合せる工程も、当該技術分野において既知の方法で行われ、また、粘着剤層等を貼合せる順序も、適宜選択できる。この工程を経て、光学積層体の前駆体が得られる。
【0049】
第3の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程は、第1の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程と共に行われてもよく、第2の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程と共に行われてもよく、第3の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程を単独で行ってもよい。さらに、第1〜第3の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程の順序は限定されない。例えば、第3の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程を、上記第1の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程と、上記第2の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程と共に行う場合、例えば、上記第1の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程に付される条件に従い行われ得る。また、
これらの前駆体の後処理工程をそれぞれ独立して行う場合、処理温度、圧力等の条件は、同一であってもよく、異なってもよい。
さらに、第1の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程と、第2の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程とを同一工程で行い、第3の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程を独立して行う場合、処理温度、圧力等の条件は、両者において同一であってもよく、異なってもよい。施された第1〜第3の粘着剤層の種類、厚さ等により、これらの条件を適宜設定できる。
【0050】
例えば、第3の粘着剤層を含む前駆体の後処理工程は、第3の粘着剤層を50℃未満の温度、例えば、10〜40℃の温度、別の例では、15〜30℃の温度、および、0.2MPaG以上の雰囲気中、例えば、0.2〜0.7MPaGの雰囲気中、別の例では、0.2〜0.6MPaGの雰囲気中に配置することにより、第3の粘着剤層に存在する気泡を縮小または除去できる。
これらの温度範囲および圧力範囲である限り、温度と圧力の組合せは限定されない。例えば、温度15〜30℃であるの場合、圧力は0.2〜0.5MPaGであってもよい。
例えば、温度は、上記範囲に加えて、10〜45℃であってもよく、30℃超〜50℃未満であってもよく、35℃〜45℃あってもよい。
また、加圧雰囲気は、上記範囲に加えて、0.3〜0.6MPaG、0.35〜0.55MPaGの範囲であってもよい。
【0051】
圧力が高いほど気泡を縮小する効果は高くなる。加圧処理の安全性を考慮すると、圧力は0.7MPaG以下であり得る。
【0052】
処理温度の下限値は、例えば5℃以上である。このような範囲であると、例えば、第1の粘着剤層、第2の粘着剤層および第3の粘着剤層に用い得る粘着剤が流動性を保持しているため、効率的に気泡を減少および/または除去できる。
【0053】
上記前駆体の後処理工程に要する加圧時間は、例えば、24時間以下、例えば、1時間以下であり、特に、30分以下である。例えば、3〜30分かけて処理をおこなう。このような範囲で加圧を行うことにより、気泡サイズの縮小および気泡の除去を効果的に行え、さらに、光学積層体の収縮を予防できる。また、得られた光学積層体の反り量が著しく大きくなることを防ぎ得る。
【0054】
加圧後の減圧時間は、付与した圧力、温度などに応じて適宜設定できる。減圧時間は、例えば、0.5〜30分、別の態様では、8〜30分である。例えば、加圧処理を、0.2〜0.7MPaGの範囲、常温で行った場合、減圧時間は5〜30分、例えば、8〜30分であってもよい。別の例では、加圧処理を、0.2〜0.6MPaGの範囲、常温で行った場合、減圧時間は8〜30分であってもよい。
このような範囲で減圧を行うことにより、気泡サイズの縮小および気泡の除去を効果的に行え、さらに、光学積層体の収縮を予防できる。また、得られた光学積層体の反り量が著しく大きくなることを防ぎ得る。
【0055】
本発明の製造方法によれば、光学積層体の品質が低下する大きさの気泡の噛み込みが無く、品質の高い光学積層体を、効率よく製造できる。その結果、光学積層体の生産性や歩留りを増加(不良率を減少)できるという効果を奏する。さらに、本発明の製造方法は、上記所定の温度かつ圧力条件下で気泡除去を行うので、偏光板等の収縮により生じ得る寸法変化と、反り量の変化を抑制できる。さらには、得られた光学積層体の寸法変化と、反り量の変化量についても抑制でき、その結果、光学積層体の生産性および歩留りを増加(不良率を減少)できるという効果を奏する。
【0056】
本発明の光学積層体の製造方法においては、例えば、光学積層体の前駆体が長尺である場合、上記長尺の光学積層体の前駆体を、チップ状の光学積層体の前駆体に切断する工程(切断工程ともいう)をさらに包含していてもよい。また、保護フィルムなどの原料を切断した後に、第1の粘着剤層等と貼合せ、上記した気泡除去工程に付してもよい。例えば、本発明に係る光学積層体の製造方法においては、上記した気泡除去工程を、上記切断工程の後に行なってもよい。光学積層体の前駆体の大きさ(面積)が小さければ、光学積層体の前駆体から気泡を効率よく押し出し得るからである。
【0057】
例えば、偏光板と、第3の粘着剤層と、剥離紙とを貼合せる工程は、当該技術分野において既知の方法で行われ、また、粘着剤層等を貼合せる順序も、適宜選択できる。この工程を経て、光学積層体の前駆体が得られる。
【0058】
本発明に係る光学積層体の製造方法では、上記光学積層体は、ニップ部を形成する一対の加圧ローラによって、フィルム同士を、上記粘着剤層を介して圧着してなる光学積層体であってもよい。
【0059】
ニップ部を形成する一対の加圧ローラにより、フィルム同士を、上記粘着剤層を介して圧着する方法(ラミネーション法)によって当該フィルム同士を貼合してなる光学積層体では、粘着剤層において気泡の噛み込みが生じ得る。このため、ラミネーション法によって貼合した偏光板について、本発明に係る所定の工程に供することによって、粘着剤層において光学積層体の品質が低下する大きさの気泡の噛み込みが無い、または限りなく低減された光学積層体を、効率よく製造することができる。
【0060】
さらに、近年、偏光板の厚さを薄くするために、偏光子保護フィルムと偏光子とを有する偏光板の厚さを薄くすることが行われている。偏光板の厚さを薄くすると、偏光子の熱収縮による物性変化が生じ得る。しかし、本発明の製造方法であれば、偏光板に熱収縮は起こりにくく、光学積層体の寸法変化と、反り量の変化を抑制できる。
【0061】
本発明に係る光学積層体の製造方法では、上記粘着剤層は、感圧性粘着剤からなることがより好ましい。
【0062】
上記構成であれば、常温で圧力をかけることによって、フィルム、偏光板などを相互に貼合せることができる。
【0063】
本発明に係る光学積層体の製造方法では、上記感圧性粘着剤は、25℃における貯蔵弾性率が、0.05MPa〜1.0MPaであってもよい。第1〜第3の粘着剤層の貯蔵弾性率は、同一であってもよく、相互に相違していてもよい。例えば、第1の粘着剤層の貯蔵弾性率は0.1〜0.3MPaであり、第2の粘着剤層の貯蔵弾性率は0.4〜0.7MPaであり、第3の粘着剤層の貯蔵弾性率は0.3〜0.6MPaである。
【0064】
一般に、50℃における貯蔵弾性率が0.01MPa程度の比較的軟らかい粘着剤が用いられてきた。本発明に係る光学積層体の製造方法では、50℃未満の温度、0.2MPaG以上の雰囲気中に光学積層体の前駆体を配置する前駆体の後処理工程を含むので、一般に用いられている粘着剤よりも硬い粘着剤を用いることができる。また、粘着剤の50℃における貯蔵弾性率が上記範囲の粘着剤を用いれば、粘着剤層の強度を高めることができるので、粘着剤層の厚さをさらに薄くできる。
【0065】
特に、薄型偏光板を得るためには、加工性、耐久性の特性を損なわない範囲でより薄い粘着剤層を設けることが望ましく、粘着剤層1の厚さは1μm〜70μmであり得る。例えば、第1の粘着剤層の厚さは15〜25μm、第2の粘着剤層の厚さは10〜20μm、第3の粘着剤層の厚さは15〜25μmであり得る。
【0066】
一般に、第1〜3の粘着剤層の厚さは、25μm程度であった。本発明に係る光学積層体の製造方法によれば、粘着剤層の厚さが25μmよりも薄い場合であっても、光学積層体の品質が低下する大きさの気泡の噛み込みが無い光学積層体を製造できる。また、粘着剤層の厚さが、上記範囲内であれば、得られる光学積層体の厚さを、より薄くできる。
【0067】
本発明の条件に従い、光学積層体を製造することにより、第1〜第3の粘着剤層に存在している気泡を、商業的に満足できる程度、つまり光学積層体の品質を低下させない程度にまで小さくできる。具体的には、例えば、後述する「気泡サイズの確認方法」によって気泡サイズを測定した場合において、気泡の直径が600μm以下、好ましくは400μm以下、より好ましくは200μm以下、さらに好ましくは100μm以下となるまで小さくすることができる。
【0068】
例えば、気泡サイズの測定は、以下のようにして行える。
気泡サイズを計算する方法を、図2に基づいて説明する。図2は、本発明の気泡サイズを計算する方法を説明する図であり、(a)は点状の気泡(点状気泡)の大きさを計算する方法を説明する図であり、(b)は斑点状の気泡(斑点状気泡)の大きさを計算する方法を説明する図である。なお、図2の(a)および(b)中に示した矢印Eは、偏光板の光学軸方向を示している。
【0069】
図2の(a)に示すように、点状気泡サイズ(Φ1)は、偏光板の光学軸方向およびそれに直交する方向に辺を有し、且つ測定対象となる点状気泡に外接する矩形(図2の(a)中に破線で示した矩形)における、偏光板の光学軸方向の辺の長さをaとし、偏光板の光学軸方向に直交する方向の辺の長さをbとして、以下の式(1)
Φ1 =(a+b)/2 …(1)
から求められる。
【0070】
また、図2の(b)に示すように、斑点状気泡サイズ(Φ2)は、偏光板の光学軸方向およびそれに直交する方向に辺を有し、且つ測定対象となる斑点状気泡を構成する全ての気泡を内包する最小の矩形(図2の(b)中に破線で示した矩形)における、偏光板の光学軸方向の辺の長さをcとし、偏光板の光学軸方向に直交する方向の辺の長さをdとして、以下の式(2)
Φ2 =(c+d)/2 …(2)
から求められる。
【0071】
なお、本明細書では、図2の(b)に示すように、直径500μm程度の範囲において複数の比較的小さい気泡が例えば環状に配列してなる気泡群を、一つの斑点状気泡として規定し、それ以外の気泡を点状気泡と規定した。
【0072】
気泡の縮小および除去に関する評価は、例えば、気泡サイズの変化率平均を算出してもよい。気泡サイズの変化率平均は、加圧処理前の気泡サイズから、加圧処理後の気泡サイズを差し引いた差を、加圧処理前の気泡サイズで除した値から算出される割合である。(具体的な算出方法は、実施例に記載した)。本明細書においては、気泡サイズの変化率が高いほど、効率的に気泡サイズの減少および気泡除去を行えたことを意味する。
気泡サイズの変化率平均は、例えば、1〜70%であり、特に、10〜60%である。
また、気泡の縮小および除去に関する評価は、気泡縮小率を算出して評価してもよい(具体的な算出方法は、実施例に記載した)。気泡縮小率の値が100%であると、観察された気泡全てにおいて気泡サイズが縮小したことを意味する。気泡縮小率は、例えば10〜100%であり、特に、30〜100%である。
さらに、気泡の縮小および除去に関する評価は、気泡サイズが10%以上減少した割合を算出することにより行ってもよい。本発明の製造方法によれば、例えば、気泡サイズが10%以上減少した気泡の割合は、100%となる場合がある。気泡サイズが10%以上減少した気泡の割合は、例えば、20〜100%である。
上記評価に代えて、または加えて、当該技術分野において既知の方法により気泡サイズを測定し、評価を行ってもよい。
【0073】
上述した雰囲気中で、貼合せた偏光板を加圧条件下で加熱処理する方法は特に限定されない。例えば、公知のオートクレーブを用いて偏光板を加熱処理することができる。前駆体の後処理工程において、加熱対象となる貼合せた偏光板を取り巻く周囲の気体は、偏光板などのフィルムに悪影響を及ぼさない限り、特に限定されるものではない。例えば、空気、窒素ガス等の不活性ガスであり得る。通常は、空気が適用される。
【0074】
ここで、本発明の製造方法により得られた光学積層体の一例を図1に示す。図1は、光学積層体10の概略の構成を示す断面図である。
【0075】
例えば、図1に示すように、光学積層体10は、保護フィルム2、第1の粘着剤層1a、機能性フィルム4、第2の粘着剤層1b、偏光板3、第3の粘着剤層1c、および剥離紙5を含む。なお、以下の説明において、第1〜第3の粘着剤層をまとめて粘着剤層1とも記載され得る。
【0076】
粘着剤層1を介してフィルム同士を貼合する方法は特に限定されない。一実施態様において、ニップ部を形成する一対の加圧ローラによって、フィルム同士を圧着する方法、すなわちラミネーション法(例えば、特開2005−213314号公報等を参照)を採用してもよい。ラミネーション法では、フィルム同士を貼合する際に、粘着剤層1における気泡の噛み込みが生じ得る。このため、ラミネーション法によって貼合した偏光板などを、本発明に係る前駆体の後処理工程に供することによって、粘着剤層において光学積層体の品質が低下する大きさの気泡の噛み込みが無い光学積層体を、効率よく製造できる。
【0077】
本発明における光学積層体は、少なくとも、保護フィルムと第1の粘着剤層と偏光板とを有する光学積層体であれば、その構成は、図1に示した光学積層体10に限定されるものではない。例えば、図1に示した光学積層体10において、機能性フィルム4を複数層設けてもよい。
【0078】
光学積層体の厚さは、例えば、300μm以下であり、例えば、200μm以下である。本発明に係る製造方法に従えば、このような厚さの光学積層体であっても、寸法変化と、反り量の変化を抑制できる。その結果、例えば、液晶ディスプレイにおいて、液晶パネルを囲む枠(額縁)の幅を狭くしたもの(狭額縁)に貼り付ける光学フィルムとして、寸法精度要求の高いフィルム製造することができる。さらに、反り量の抑制により光学フィルムを張り付け後の液晶ディスプレイの反り量を抑えることができる。
【0079】
粘着剤層1(粘着剤層1a、粘着剤層1bおよび粘着剤層1c)は、特に限定されるものではなく、当該技術分野に用いられる公知の粘着剤を塗布することにより形成される。このような粘着剤としては、具体的には、例えば、アクリル系、ゴム系、ウレタン系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系の樹脂等が挙げられる。これらの中でも、透明性、耐候性、耐熱性等に優れるアクリル系の樹脂をベースポリマーとした粘着剤がより好適である。
【0080】
また、常温で圧力をかけることによって接着することができることから、粘着剤としては、感圧性粘着剤(pressure sensitive adhesive)を好適に用いることができる。上記「感圧性粘着剤」としては、特に限定されないが、具体的には、例えば、アクリル系ポリマー;シリコーン系ポリマー;ポリエステル、ポリウレタン、ポリエーテル等をベースポリマーとするもので構成されている。アクリル系ポリマーのように、光学的な透明性に優れ、適度の濡れ性や凝集力を保持し、基材との接着性にも優れ、さらには耐候性や耐熱性などを有し、加熱や加湿の条件下で浮きや剥がれ等の剥離問題を生じないものを選択して用いることがより好ましい。
【0081】
上記「粘着剤」は、一種類を単独で用いてもよく、二種類以上を組み合わせて用いてもよい。
【0082】
光学積層体が複数の粘着剤層を有している場合、具体的には、例えば、図1に示すように、光学積層体10が粘着剤層1a〜1cを有している場合は、粘着剤層1a〜1cの全てが一種類(同一)の粘着剤からなっていてもよく、上記粘着剤層によって、粘着剤の種類が互いに異なっていてもよい。また、粘着剤層1a〜1cの全ての厚さが同じであってもよく、それぞれの粘着剤層の厚さが異なっていてもよい。
【0083】
保護フィルム2としては、公知の保護フィルムが好適に用いられる。より具体的には、保護フィルム2としては、例えば、ポリエステルフィルム、ポリエチレンテレフタラート(PET)フィルム、ポリエチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリスチレンフィルム等の公知の保護フィルムが挙げられる。
【0084】
保護フィルム2の厚さは、特に限定されないが、例えば、10μm〜100μmである。別の実施態様においては、保護フィルム2の厚さは35〜45μmである。
【0085】
偏光板3としては、公知の偏光板が好適に用いられる。具体的には、偏光板3としては、偏光子の両面に保護膜が貼着されている公知の偏光板が挙げられる。また、偏光板3として、偏光子の片側に保護膜が貼着されている公知の偏光板を用いてもよい。例えば、偏光子と保護膜との貼着には、公知の接着剤を用いてもよく、一例として、ポリビニルアルコール系接着剤が使用され得る。
【0086】
上記「偏光子」としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)、部分ホルマール化ポリビニルアルコール、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分ケン化物、セルロース等の親水性高分子等からなるフィルムに、一軸延伸およびヨウ素等の色素による染色処理を施すと共に、色相調整等の各種処理を施したフィルムが挙げられる。ただし、偏光子の製造方法は、上記製造方法に限定されるものではなく、公知の偏光子が好適に用いられる。
【0087】
上記「保護膜」としては、例えば、TAC(トリアセチルセルロース)フィルム、シクロオレフィン樹脂(COP)フィルム、ジアセチルセルロース等の酢酸セルロース樹脂フィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂フィルム;ポリカーボネート樹脂フィルム;アクリル樹脂フィルム;ポリプロピレン樹脂フィルム等の公知のフィルムが挙げられる。
【0088】
偏光板3の厚さは、特に限定されないが、例えば10〜100μmであり、特に10〜65μmである。偏光板3は、実用上において支障のない範囲で上記三層(保護膜、偏光子、保護膜)以外にさらに他の層を備えていてもよく、偏光子の一方の面にのみ保護膜を備えてもよい。具体的には、例えば、偏光板3は、偏光子と保護膜とを貼着する接着剤層をさらに備えていてもよい。
偏光板3の厚さがこのような範囲であることにより、例えば、液晶ディスプレイの薄型化が可能となる。偏光板3の厚さがこのような範囲であっても、液晶パネルを囲む枠(額縁)の幅を狭くしたもの(狭額縁)に貼り付ける光学フィルムとして、寸法精度要求の高いフィルム製造することができる。さらに、反り量の抑制により光学フィルムを張り付け後の液晶ディスプレイの反り量を抑えることができる。
【0089】
また、偏光板に含まれる偏光子の厚さは、例えば2〜30μm、別の態様では5〜15μmである。
【0090】
機能性フィルム4は、光学的な機能性を備えるフィルムおよび層であり、たとえば、輝度向上フィルム層、位相差フィルム層、防眩層、導電層、ハードコート層、および反射防止層等が挙げられる。機能性フィルム4は、これらの層を組合せて用いてもよく、単独で用いてもよい。機能性フィルム4の厚さは、例えば5〜50μmである。
【0091】
また、光学積層体10を液晶パネル等に貼着するために、光学積層体10の液晶パネル等に貼着される側の面には、第3の粘着剤層1cが形成され、剥離フィルム(プロテクトフィルムまたはセパレータとも称する)が貼合されていてもよい。
【0092】
切断工程は、光学積層体が長尺の偏光板である場合に、上記長尺の光学積層体(「偏光板原反」とも称する)をチップ状の光学積層体に切断する工程である。
【0093】
切断工程では、偏光板原反を所定の大きさを有するチップ状の光学積層体に切断することができる限り、切断方法は特に限定されない。切断手段としては、例えば、刃物、レーザカッター等の公知のカッターが好適に用いられる。
【0094】
チップ状の光学積層体の大きさは、液晶パネルの大きさと同様に、目的に応じて適宜設定することができるものの、概して液晶パネル対角で1.5インチ〜60インチであることが好ましく、小型ないし中型の液晶パネルに適用される1.5インチ〜18インチであることがより好ましく、携帯電子端末に適用される3.5インチ〜6インチであることがさらに好ましい。
【0095】
上記「前駆体の後処理工程」および上記「切断工程」の順序は特に限定されず、前駆体の後処理工程後に切断工程を行なってもよく、切断工程の後に前駆体の後処理工程を行なってもよい。前駆体の後処理工程と、所定の圧力および温度条件下で光学積層体の前駆体を処理することによって、粘着剤層に存在している気泡を光学積層体の前駆体の端部から外に押し出していると推定されるので、前駆体の後処理工程に供する光学積層体の前駆体の大きさ(面積)が小さいほど、光学積層体の前駆体から気泡を効率よく押し出すことができる。それゆえ、切断工程の後に前駆体の後処理工程を行なうことがより好ましい。光学積層体が長尺の光学積層体である場合には、これを所定の大きさを有するチップ状の光学積層体に切断して、光学積層体の大きさ(面積)を小さくしてから気泡を縮小または除去する工程を行なうことにより、粘着剤層に存在している気泡をより効率よく縮小または除去できる。
【0096】
本発明に係る製造方法によれば、粘着剤層に気泡の噛み込みが無い偏光板を、効率よく製造することができる。その結果、偏光板の生産性や歩留りを増加(不良率を減少)させることができるという効果を奏する。
【0097】
本発明に係る製造方法によれば、光学積層体の収縮を低減できる。例えば、長辺方向の変化量は、得られた光学積層体における長辺長さ(LAC後)から、光学積層体の前駆体における長辺長さ(LAC前)を差し引いた差で示される。例えば、長さ10〜13cm、幅6〜10cm未満の光学積層体の場合、該長辺方向の変化量は、−0.02〜+0.02mmの間であり、例えば、−0.01〜+0.01mmの間である。同様に、短辺方向の変化量は、得られた光学積層体における短辺長さ(WAC後)から、光学積層体の前駆体における短辺長さ(WAC前)を差し引いた差で示される。例えば、長さ10〜13cm、幅6〜10cm未満の光学積層体の場合、該短辺方向の変化量は、−0.02〜+0.02mmの間であり、例えば、−0.01〜+0.01mmの間である。
なお、本明細書において変化量がマイナスの値を取る場合、光学積層体の前駆体が収縮し、光学積層体が得られたことを意味する。
長辺方向の変化量(以下、長辺変化量と記載する場合もある)、および短辺方向の変化量(以下、短辺変化量と記載する場合もある)が上記範囲内であることにより、光学積層体の著しい収縮が生じておらず、薄型の光学積層体に要求される寸法精度を保つことができる。
【0098】
また、長辺方向の寸法変化率および短辺方向の寸法変化率を用いて、本発明における製造方法の評価を行ってもよい。長辺方向の寸法変化率(以下、「寸法変化率長辺」と記載する場合もある)は、次式に従い導かれる
寸法変化率長辺=(LAC後−LAC前)/LAC前×100
同様に、短辺方向の寸法変化率(以下、「寸法変化率短辺」と記載する場合もある)は、次式に従い導かれる
寸法変化率短辺=(WAC後−WAC前)/WAC前×100
【0099】
「寸法変化率長辺」は、例えば−0.05〜0.10%の範囲であり、「寸法変化率短辺」は、例えば−0.03〜0.05%の範囲である。寸法変化率が上記範囲内であることにより、光学積層体の著しい収縮が生じることなく、薄型の光学積層体に要求される寸法精度を保つことができる。
なお、本明細書において変化量がマイナスの値を取る場合、光学積層体の前駆体が収縮し、光学積層体が得られたことを意味する。
例えば、光学積層体の前駆体を、30℃超〜50℃未満、具体的には、35℃〜45℃の温度、かつ、0.2MPaG以上、例えば、0.2〜0.7MPaGの雰囲気中に20分以下、例えば1分〜10分間配置する場合、光学積層体の前駆体の「寸法変化率長辺」は、例えば−0.01〜0.01%の範囲であることができ、光学積層体の前駆体の「寸法変化率短辺」は、例えば−0.01〜0.01%の範囲であることができる。
【0100】
本発明に係る製造方法によれば、光学積層体の反りを低減できる。このような反りについて、本発明においては、例えば、反り量の変化量等を測定することにより評価できる。
例えば、光学積層体の反り量から、光学積層体の前駆体の反り量を差し引いた差から反り量の変化量を求めることにより、光学積層体の反りの大小を評価できる。
具体的には、光学積層体10における反り量は、例えば、図3に示すように、光学積層体10をカールの向きが図3で示す向きとなる様に水平なガラスパネル60に載せ、面内中心部の水平面70(ガラスパネル60の水平面)に対する、端部の盛り上がりの相対高さ(Δh)を測定したものである。
また、光学積層体の前駆体の反り量は、上記光学積層体と同様に、例えば、本発明に係る製造方法を経て得られた光学積層体の前駆体をカールの向きが図3で示す向きとなる様に水平なガラスパネルに載せ、面内中心部の水平面(ガラスパネルの水平面)に対する、端部の盛り上がりの相対高さを測定したものである。
反り量の変化量は、このようにして求めた光学積層体の反り量から、光学積層体の前駆体の反り量を差し引いた差である。
ここで、反り量の変化量を絶対値で示すと、変化量の絶対値が大きくなるにつれ、光学積層体の反りも大きくなることを意味する。
図3に、参考として、光学積層体の断面図と、反り量の関係とを示す概略図を示す。
【0101】
本明細書においては、保護フィルム方向に光学積層体等が反ることを、正カール方向に反りが生じたと記載し、反り量の値は正の値で示される。一方、保護フィルムとは反対側の面に向かって光学積層体が反ることを、逆カール方向に反りが生じたと記載し、反り量の値は負の値で示される。
【0102】
光学積層体の反り量、すなわち、気泡サイズの縮小および気泡除去の少なくとも一方を行った後における光学積層体反り量は、例えば、−5〜+5mmであり、別の態様では−2〜+2mmである。
【0103】
本発明の製造方法によれば、光学積層体の反りは、例えば、正カール方向に生じ、反り量の変化量は、−1〜+1mmの間、別の態様では、−0.5〜+0.5mmの間となる。このような範囲に反り量の変化量を有することにより、偏光板の外観に悪影響が及ぼされることを予防でき、例えば、液晶表示装置に光学積層体を組み込んだときに、液晶表示装置の端部に光漏れが生じ、表示の品質が低下することも回避できる。
例えば、長さ10〜13cm、幅6〜10cm未満、厚さ60〜200μmの光学積層体の場合、反り量の変化量は、−1〜+1mmであり得る。
【0104】
本発明により得られた光学積層体は、例えば、液晶表示装置に適用できる。例えば、本発明により得られた光学積層体を、液晶パネルに貼着してなる構成であり得る。
【0105】
上記「液晶パネル」としては、公知の液晶パネルが好適に用いられる。具体的には、液晶パネルとしては、一対のガラス基板等の基板と液晶層とからなり、基板と液晶層との間に配向膜が配されてなる公知の液晶パネルが挙げられ、例えば、横電界式液晶セル、TFT(Thin Film Transistor)方式液晶セル、STN(Super Twisted Nematic)方式液晶セル、IPS(In-Plane Switching)方式液晶セル、VA(Vertical Alignment)方式液晶セル等が挙げられる。
【0106】
液晶表示装置は、本発明に係る偏光板と液晶パネルとを、粘着剤層を介して貼着することによって製造することができる。
【0107】
本発明に係る液晶表示装置は、本発明に係る光学積層体を液晶パネルに貼着してなるので、品質の高い液晶表示装置を提供することができる。このため、生産性や歩留りが高い液晶表示装置となり得る。
【0108】
本発明は上述した各実施態様に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施態様にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施態様についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【実施例】
【0109】
以下、本発明を実施例によってさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0110】
(使用した材料)
(前駆体A)
粘着剤付保護フィルム−A1:PET樹脂フィルム(厚さ38μm)にアクリル樹脂系粘着剤(厚さ15μm、貯蔵弾性率0.2MPa)を塗布したもの(藤森工業製)。
第2の粘着剤:アクリル樹脂系粘着剤、厚さ15μm、貯蔵弾性率0.5MPa
第3の粘着剤:アクリル樹脂系粘着剤、厚さ20μm、貯蔵弾性率0.4MPa
偏光板−A1:住友化学製、SR024CUT、厚さ20μm、偏光板構成:PVA/COP、ポリビニルアルコール系接着剤
剥離紙:PET樹脂フィルム(厚さ38μm)にシリコン系離型剤を塗布したもの
機能性フィルム:スリーエム社製、輝度向上フィルム、APF−V3−HC、厚さ28μm
(前駆体B)
粘着剤付保護フィルム−B1:PET樹脂フィルム(厚さ38μm)にアクリル樹脂系粘着剤(厚さ20μm、貯蔵弾性率0.2MPa)を塗布したもの(藤森工業製)。
偏光板−B1:住友化学製、SRCZ4QJ−HCB、厚さ60μm、偏光板構成:TAC/PVA/COP、ポリビニルアルコール系接着剤。
(前駆体C)
粘着剤付保護フィルム−C1:PET樹脂フィルム(厚さ38μm)にアクリル樹脂系粘着剤(厚さ25μm、貯蔵弾性率0.2MPa)を塗布したもの(藤森工業製)。
偏光板−C1:住友化学製、SRW062A、厚さ100μm、偏光板構成:TAC/PVA/COP、ポリビニルアルコール系接着剤。
【0111】
(貯蔵弾性率の測定)
第1の粘着剤層に用いたアクリル系感圧性粘着剤の25℃における貯蔵弾性率は、0.2MPaであった。第2の粘着剤層に用いたアクリル系感圧性粘着剤の50℃における貯蔵弾性率は、0.5MPaであった。第3の粘着剤層に用いたアクリル系感圧性粘着剤の50℃における貯蔵弾性率は、0.4MPaであった。上記粘着剤の貯蔵弾性率(σ)は、測定対象の粘着剤からなる直径8mm×厚さ1mmの円柱状の試験片を作製し、動的粘弾性測定装置(Dynamic Analyzer RDA II:Reometric社製)を用いて、周波数1Hzの捻りせん断法で初期歪み1Nとし、温度23℃または50℃の条件で測定を行った(WO2009/119435 A1の段落〔0164〕の記載を参照)。
【0112】
(製造例A1)
光学積層体の前駆体Aの作製
保護フィルムと、第1の粘着剤層と、機能性フィルムと、第2の粘着剤層と、偏光板と、第3の粘着剤層と、剥離紙とを貼合せ、光学積層体Aの前駆体を作製した。得られた光学積層体Aの前駆体における気泡サイズ等の各種物性値を、後述の方法に従い測定した。
【0113】
(実施例A1)
光学積層体A−1の製造
光学積層体Aの前駆体を、10.6cm×9.1cmの大きさに裁断し、光学積層体Aの前駆体における保護フィルムと第1の粘着剤層の間に、100μm径の疑似異物を導入し、人工的な気泡を作製した。
次いで、光学積層体Aの前駆体を、オートクレーブ(栗原製作所製、型番YK−750L)を用いて、圧力0.2MPaG、温度常温25℃の環境下で5分間にわたって加圧し、次いで、10分かけて、オートクレーブ内の圧力を、常圧(0)MPaGに減圧することを含む、前駆体の後処理工程を経て、光学積層体A−1を製造した。なお、上記圧力および温度は、オートクレーブに表示されている値(ゲージ圧)を読み取ったものである。また、オートクレーブ内における気体は空気であった。
【0114】
(気泡サイズの測定)
実施例および比較例における気泡除去処理前の気泡(点状気泡)の大きさを、以下に記載した方法によって測定した。気泡のサイズ測定には、OLYMPUS製の顕微鏡(BX51)を用いて行った。
【0115】
前駆体における気泡サイズ、点状気泡サイズ(ΦAC前)は、例えば、図2(a)に示すように、偏光板の光学軸方向およびそれに直交する方向に辺を有し、且つ測定対象となる点状気泡に外接する矩形(図2の(a)中に破線で示した矩形)における、偏光板の光学軸方向の辺の長さをaとし、偏光板の光学軸方向に直交する方向の辺の長さをbとして、以下の式(1)
ΦAC前=(a+b)/2 …(1)
から求めた。
同様に、光学積層体、すなわち気泡除去工程後の点状気泡サイズ(ΦAC後)を、上記と同様にして測定した。なお、これらの気泡サイズの測定を複数回行い、その平均値を表に記載した。
例えば、実施例A3において人工的に作製した気泡を、図4(a)に示す。気泡の中心部分には異物が確認される。また、図4(b)は、本発明の製造方法を経た後の、図4(a)に示した異物周囲の状態を示す写真である。このように、本発明の製造方法によると、前駆体に存在した気泡を効果的に除去できる。
【0116】
(気泡サイズ変化率平均の算出)
気泡サイズ変化率平均Φは、次式
Φ=(ΦAC前−ΦAC後)/ΦAC前
に従い算出した。本明細書においては、気泡サイズの変化率が高いほど、効率的に気泡サイズの減少および気泡除去を行えたことを意味する。実施例に関する気泡サイズ変化率平均の結果を、表1に示す。
【0117】
(気泡縮小率の算出)
気泡縮小率の評価は、次式
気泡縮小率=気泡縮小した数/評価n数
に従い算出した。換言すると、ΦAC前>ΦAC後となった気泡サンプルの割合を示す評価である。この気泡縮小率の値が100%であると、観察された気泡全てにおいて気泡サイズが縮小したことを意味する。
なお、実施例A1において、気泡サイズが10%以上減少した気泡の割合について算出したところ、100%であった。また、実施例A1において、気泡のサイズを複数回測定したところ、本発明の製造方法を経ることにより、気泡が消失した例もあった。
また、気泡が消失した割合を示す気泡削減率、加圧後の気泡サイズの最大値、最小値および平均値を表1に示す。
【0118】
実施例A2〜A6
上記実施例A1で作製した光学積層体の前駆体Aを用い、表1に記載した圧力、温度、加圧時間、減圧時間の条件以外は、実施例A1と同様の条件で、光学積層体A−2〜A−6を作製した。これらの実施例における各種評価結果を表1に示す。なお、例えば、実施例A3において、複数個の試料に対して、気泡サイズが10%以上減少した気泡の割合について算出したところ、上記割合の最高値は100%であった。
【0119】
比較例A1〜A2
上記実施例A1で作製した光学積層体の前駆体Aを用い、例えば、圧力0.5MPaG、温度70℃、加圧時間5分、減圧時間20分の条件で、光学積層体AC1を作製した。比較例における各種評価結果を表1に示す。なお、表中、「気泡湧き出し」とは、オートクレーブ内での処理中に、新たな気泡が発生し、気泡サイズの測定等ができなかった状態を意味する。
【0120】
【表1】
【0121】
また、本発明に係る製造方法により得られた、実施例A3等の記載光学積層体について、後述のようにして、各種物性値を測定した。得られた結果を表2および表3に示す。同様の評価を、比較例A1等の光学積層体についても行った。得られた結果を表2および表3に示す。
【0122】
(寸法変化量および寸法変化率の測定)
例えば、実施例A3で得られた光学積層体A3、および比較例A1で作製した光学積層体AC1について、長辺方向の変化量、短辺方向の変化量、長辺方向の変化率および短辺方向の変化率を測定した。各種変化量および変化率の算出は、以下のようにして行った。また、いずれの積層体においても、偏光子の吸収軸は幅方向に存在した。得られた結果を、表2に示す。
【0123】
寸法変化量として、長辺変化量および短辺変化量を算出した。各種寸法の測定には、2次元測定器(中央電機計器製作所、GS−8550)を用い、測定を複数回行い、平均値を利用した。
長辺変化量は、得られた光学積層体における長辺長さ(LAC後)から、光学積層体の前駆体における長辺長さ(LAC前)を差し引いた差である。短辺変化量は、得られた光学積層体における短辺長さ(WAC後)から、光学積層体の前駆体における短辺長さ(WAC前)を差し引いた差で示される。得られた結果の符号がマイナスで表される場合、長辺方向に収縮が生じたことを意味する。結果を表2に示す。
なお、実施例および比較例における、光学積層体の前駆体のサイズは106.41mm×60.92mmのものを使用した。
【0124】
寸法変化率として、寸法変化率長辺および寸法変化率短辺を算出した。
長辺変化率=(LAC後−LAC前)/LAC前×100から算出され、
短辺変化率=(WAC後−WAC前)/WAC前×100から算出される。
結果を表2に示す。
【0125】
(光学積層体等の反り量、反り量の変化量の測定について)
光学積層体の前駆体における反り量は、光学積層体の前駆体をカールの向きが図3で示す向きとなる様に水平なガラスパネルに載せ、面内中心部の水平面(ガラスパネルの水平面)に対する、端部の盛り上がりの相対高さを測定したものである。反り量の測定は、金尺を用いて行った。
また、光学積層体の反り量は、例えば、本発明に係る製造方法を経て得られた光学積層体をカールの向きが図3で示す向きとなる様に水平なガラスパネルに載せ、面内中心部の水平面(ガラスパネルの水平面)に対する、端部の盛り上がりの相対高さを測定したものである。
反り量の変化量は、このようにして求めた光学積層体の反り量から、光学積層体の前駆体の反り量を差し引いた差である。
これらの評価を、実施例A3で得られた光学積層体A3等、および比較例A1で作製した積層体AC1等について行った。結果を、表3に示す。なお、表3中における値も、複数回測定を行い、その平均値を記載したものである。
【0126】
【表2】
【0127】
【表3】
【0128】
ここで、実施例A6にみられるように、本発明の製造方法により得られた光学積層体において、光学積層体の反り量は、前駆体の反り量よりも顕著に小さくなっている。このような性質を有する光学積層体を得ることができるので、本発明によると、例えば、偏光板を組み込んだ後の液晶パネルの反り量を小さくでききる。これにより、液晶パネルの反りによる表示品位の低下を防ぐことができ、また、液晶ディスプレイ等と筐体組み立て時の不良を回避できる。
一方、例えば、比較例A1に示されるように反り量が大きい場合、液晶パネル等との貼り合せ時に、貼り合せ不良が発生してしまう。また、反り量が大きくなると、液晶パネル等と偏光板等の光学積層体との間に気泡混入が生じやすい。
【0129】
(製造例B1)
光学積層体の前駆体Bの作製
保護フィルムと、第1の粘着剤層と、偏光板とを貼合せ、光学積層体Bの前駆体を作製した。得られた光学積層体Bの前駆体における気泡サイズ等の各種物性値を、上記方法に従い測定した。
【0130】
(実施例B1)
光学積層体B1の製造
光学積層体Bの前駆体を、10.6cm×9.1cmの大きさに裁断し、光学積層体Bの前駆体における保護フィルムと第1の粘着剤層の間に、100μm径の疑似異物を導入し、人工的な気泡を作製した。
上記実施例A1と同様にして、光学積層体B1を製造した。
【0131】
気泡サイズの測定など上記実施例A1と同様にして、測定した。得られた結果を、表4に示す。
【0132】
実施例B2〜B6
上記実施例B1で作製した光学積層体Bの前駆体を用い、表4に記載した条件以外は、実施例B1と同様の条件で光学積層体B−2〜B−6を作製した。これらの実施例における各種評価結果を表4に示す。
【0133】
比較例B1〜B2
上記実施例B1で作製した光学積層体Bの前駆体を用い、例えば、圧力0.5MPaG、温度70℃、加圧時間5分、減圧時間20分の条件で、光学積層体BC−1を作製した。比較例における各種条件および評価結果を表4に示す。なお、表中、「気泡湧き出し」とは、オートクレーブ内での処理中に、新たな気泡が発生し、気泡サイズの測定ができなかった状態を意味する。
【0134】
【表4】
【0135】
また、本発明に係る製造方法により得られた、実施例B3等の光学積層体についても、寸法変化量および寸法変化率の測定、ならびに、光学積層体等の反り量、反り量の変化量の測定を行った。同様の評価を、比較例B1についても行った。なお、実施例B3および比較例B1において、光学積層体の長辺方向に、偏光子の吸収軸が存在し、光学積層体の前駆体のサイズは106.41mm×60.92mmのものを使用した。結果を、表5および表6に示す。
【0136】
【表5】
【0137】
【表6】
【0138】
(製造例C1)
光学積層体の前駆体Cの作製
保護フィルムと、第1の粘着剤層と、偏光板とを貼合せ、光学積層体Cの前駆体を作製した。得られた光学積層体Cの前駆体における気泡サイズ等の各種物性値を、上記方法に従い測定した。
【0139】
(実施例C1)
光学積層体C1の製造
光学積層体Cの前駆体を、10.6cm×9.1cmの大きさに裁断し、光学積層体Cの前駆体における保護フィルムと第1の粘着剤層の間に、100μm径の疑似異物を導入し、人工的な気泡を作製した。
上記実施例A1と同様にして、光学積層体C1を製造した。実施例C1は、圧力0.5MPaG、処理温度30℃、加圧時間5分、減圧時間20分の条件で製造した。
【0140】
気泡サイズの測定など上記実施例A1と同様にして、測定した。
【0141】
実施例C2〜C3
上記実施例C1で作製した光学積層体Cの前駆体を用い、表7に記載した条件を用いて、実施例C1と同様にして光学積層体C2〜C3を作製した。これらの実施例における各種評価結果を表7に示す。
【0142】
比較例C1〜C2
上記実施例C1で作製した光学積層体Cの前駆体を用い、例えば、圧力0.5MPaG、温度50℃、加圧時間5分、減圧時間20分の条件で、光学積層体CC−1を作製した。比較例における各種条件および評価結果を表7に示す。なお、表中、「気泡湧き出し」とは、オートクレーブ内での処理中に、新たな気泡が発生し、気泡サイズの測定ができなかった状態を意味する。
【0143】
【表7】
【0144】
また、本発明に係る製造方法により得られた、実施例C1等における光学積層体について、寸法変化量および寸法変化率の測定、ならびに、光学積層体等の反り量、反り量の変化量の測定を行った。同様の評価を、比較例についても行った。なお、実施例および比較例において、光学積層体の長辺方向に、偏光子の吸収軸が存在し、光学積層体の前駆体のサイズは106.41mm×60.92mmのものを使用した。結果を、表8および表9に示す。
【0145】
【表8】
【0146】
【表9】
【0147】
本発明に係る光学積層体の製造方法によれば、光学積層体の製造時に生じ得る気泡サイズを、縮小でき、または、除去できる。さらに、本発明の製造方法は、光学積層体の寸法変化と、反り量の変化を抑制できる。また、本発明の製造方法であれば、偏光板に熱収縮は起こりにくく、光学積層体の寸法変化と、反り量の変化を抑制できる。
【産業上の利用可能性】
【0148】
本発明に係る製造方法によれば、粘着剤層において偏光板の品質が低下する大きさの気泡の噛み込みが無い偏光板を、効率よく製造することができる。その結果、偏光板の生産性や歩留りを増加(不良率を減少)させることができる。従って、本発明は、ノート型パーソナルコンピュータ、携帯電話等のモバイル機器や大型テレビジョン等、偏光板を利用する各種産業において広範に利用され得る。
【符号の説明】
【0149】
1 粘着剤層
1a 第1の粘着剤層
1b 第2の粘着剤層
1c 第3粘着剤層
2 保護フィルム
3 偏光板
4 機能性フィルム
5 剥離紙
10 光学積層体
60 ガラスパネル
70 面内中心部の水平面
図1
図2
図3
図4