【文献】
A. De and Craig E. Pryor,"Predicted band structures of III-V semiconductors in the wurtzite phase",PHYSICAL REVIEW B,2010年 4月20日,Vol.81,155210-1~155210-13
【文献】
Yusuke Kitauchi, Yasunori Kobayashi, Katsuhiro Tomioka, Shinjiro Hara, Kenji Hiruma, Takashi Fukui,and Junichi Motohisa,"Structural Transition in Indium PhosphideNanowires",NANO Lettres,American Chemical Society,2010年,vol.10,p.1699-1703
【文献】
Hyung-Joon Chu, Ting-Wei Yeh, Lawrence Stewart, and P. Daniel Dapkus,"Wurtzite InP nanowire arrays grownby selective area MOCVD",Physica Status Solidi C,2010年,vol.7, no.10,p.2494-2497
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
1.ウルツ鉱型構造のIII−V族化合物半導体の作製
本発明に係る発光素子は、ウルツ鉱型構造のInPからなるナノワイヤを下地結晶として作製された、ウルツ鉱型構造のIII−V族化合物半導体(例えばGaP)からなる発光層を有することを一つの特徴とする。InPは、イオン性が高いため、GaPなどの他のIII−V族化合物半導体に比べてウルツ鉱型構造となりやすい。そこで、本発明では、ウルツ鉱型構造のInPからなるナノワイヤを作製し、このナノワイヤを下地結晶として用いることで、ウルツ鉱型構造のIII−V族化合物半導体からなる発光層を作製する。そこで、本発明に係る発光素子について説明する前に、ウルツ鉱型構造のIII−V族化合物半導体層の形成方法について説明する。
【0016】
図1は、ウルツ鉱型構造のGaP層の作製方法を説明するための模式図である。ここでは、GaP層を例にして説明するが、AlPなどの他のIII−V族化合物半導体からなる層、またはAlGaPやAlInPなどのIII−V族化合物半導体の混晶系からなる層も同様に形成することができる。
【0017】
まず、
図1Aに示されるように、InP基板10の(111)面上に絶縁膜20を形成する。絶縁膜20は、例えば六角形状の開口部を有しており、マスクパタンとして機能する。
【0018】
次に、
図1Bに示されるように、InP基板10の(111)面から絶縁膜20の開口部を介してウルツ鉱型構造のInPナノワイヤ30を成長させる。前述のとおり、InPはイオン性が高いため、他のIII−V族化合物半導体に比べて容易にウルツ鉱型構造のInPナノワイヤ30を作製することができる。ウルツ鉱型構造のInPナノワイヤ30の作製方法は、すでに確立されており、例えば非特許文献3に開示されている。六角柱状のInPナノワイヤ30の側面は、{11−2}面となる。
【0019】
次に、
図1Cに示されるように、ウルツ鉱型構造のInPナノワイヤ30の側面上にウルツ鉱型構造のGaP層40を成長させる。前述のとおり、InPナノワイヤ30の側面は、{11−2}面である。この{11−2}面では、AB型の積層構造が保たれる。このため、
図2に示されるように、InPナノワイヤ30の結晶構造(ウルツ鉱型構造;WZ)が、GaP層40に転写される。これは、他のIII−V族化合物半導体でも同じである。
【0020】
図3Aは、InPナノワイヤおよびGaP層の断面を示す透過電子顕微鏡像である。
図3Bは、
図3Aにおいて破線で示される領域の拡大像である。これらの写真から、InPナノワイヤの結晶構造(ウルツ鉱型構造;WZ)が、GaP層に転写されることがわかる。
【0021】
図4は、InPナノワイヤおよびGaP層の電子線回折パターンである。従来のVLS成長法で作製されたウルツ鉱型構造のGaPの電子線回折パターンでは、欠陥による回折線が現れる(非特許文献2の
図2(b)参照)。これに対し、本発明に係る方法で作製されたウルツ鉱型構造のGaPの電子線回折パターンでは、このような回折線は生じず、明確なスポットが観察される。このことから、本発明に係る方法で作製されたGaPは、閃亜鉛鉱型構造のGaPを含まず、ウルツ鉱型構造のGaPのみからなることがわかる。なお、
図4においてスポットが二重に見えるのは、InPからの回折とGaPからの回折とが重なっているためである。
【0022】
以上のように、ウルツ鉱型構造のInPからなるナノワイヤを下地結晶として用いることで、ウルツ鉱型構造のIII−V族化合物半導体からなる層を作製することができる。上記の例では、InPナノワイヤの側面上にGaP層を形成したが、InPナノワイヤとGaP層との間、またはGaP層の上にさらに別のIII−V族化合物半導体層を形成してもよい。この場合も、InPナノワイヤをテンプレートとしてウルツ鉱型構造のIII−V族化合物半導体層を形成することができる。
【0023】
2.発光素子およびその製造方法
[発光素子の構成]
次に、本発明に係る発光素子について説明する。本発明に係る発光素子は、III−V族化合物半導体からなる基板、絶縁膜、III−V族化合物半導体からなるコアマルチシェルナノワイヤ、第1の電極および第2の電極を有する、量子井戸型またはダブルヘテロ型の発光ダイオードである。
【0024】
基板は、InPなどのIII−V族化合物半導体またはSiからなる、(111)面を有する基板である。基板は、第1の導電型(n型もしくはp型)にドープされている。基板の例には、n型InP(111)基板、p型InP(111)基板、n型Si(111)基板およびp型Si(111)基板が含まれる。
【0025】
絶縁膜は、基板の(111)面を被覆しており、1または2以上の開口部を有している。絶縁膜は、この後説明する中心ナノワイヤを基板の(111)面から成長させる際にマスクパタンとして機能する。絶縁膜の材料は、中心ナノワイヤの成長を阻害することができ、かつ絶縁体であれば特に限定されない。絶縁膜の材料の例には、酸化シリコン(SiO
2)、窒化シリコン(SiN)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)などが含まれる。絶縁膜は、1層であってもよいし、2層以上からなっていてもよい。絶縁膜の膜厚は、絶縁性能を発揮できれば特に限定されない。絶縁膜の膜厚は、例えば25nmである。
【0026】
前述の通り、絶縁膜には、1または2以上の開口部が形成されている。開口部は基板の(111)面まで貫通しており、開口部内では基板の(111)面が露出している。開口部は、本発明に係る発光素子を製造する際に、中心ナノワイヤの成長位置、太さおよび形状を規定する。開口部の形状は、特に限定されず、任意に決定することができる。開口部の形状の例には、三角形、四角形、六角形および円形が含まれる。開口部の直径は、2〜500nm程度であればよい。開口部の数が2以上の場合、開口部の中心間距離は、数十nm〜数μm程度であればよい。
【0027】
コアマルチシェルナノワイヤは、III−V族化合物半導体からなる、直径40〜520nm、長さ100nm〜100μmの構造体である。コアマルチシェルナノワイヤは、絶縁膜(および開口部内で露出している基板の(111)面)上に、その長軸が絶縁膜の表面(基板の(111)面)に垂直になるように配置されている。本明細書では、コアマルチシェルナノワイヤの2つの端面(長軸方向に沿う中心線と交わる2つの面)のうち、基板(絶縁膜)側の端面を「下側の端面」といい、その反対側の端面を「上側の端面」という。後述するように、基板の(111)面上にナノワイヤを形成することで、ナノワイヤを(111)面に垂直になるように配置することができ、ナノワイヤを高密度に配置することができる。たとえば、コアマルチシェルナノワイヤは、基板の表面1cm
2あたり10億本以上配置されうる。
【0028】
コアマルチシェルナノワイヤは、中心ナノワイヤと、前記中心ナノワイヤの側面(長軸方向に沿う中心線と交わらない面)を被覆する第1のクラッド層と、第1のクラッド層を被覆する発光層と、発光層を被覆する第2のクラッド層と、第2のクラッド層を被覆するキャップ層とを有する。すべての被覆層(第1のクラッド層、発光層、第2のクラッド層およびキャップ層)は、中心ナノワイヤの側面を被覆しているが、中心ナノワイヤの2つの端面は被覆していない。中心ナノワイヤおよびその側面を被覆するすべての被覆層は、コアマルチシェルナノワイヤの両端部において端面を形成している。被覆層全体の膜厚は、特に限定されないが、20〜300nm程度であればよい。
【0029】
中心ナノワイヤおよび第1のクラッド層は、基板と同じ第1の導電型(n型もしくはp型)のIII−V族化合物半導体からなる。一方、第2のクラッド層およびキャップ層は、第1の導電型と異なる第2の導電型(p型もしくはn型)のIII−V族化合物半導体からなる。したがって、コアマルチシェルナノワイヤ内では、動径方向にpn接合(またはpin接合)が形成されており、中心ナノワイヤの側面全面上においてpn接合(またはpin接合)が形成されている。このような構成とすることで、従来の発光素子よりもpn接合の面積(発光面積)を大幅に増大させることができ(平面型pn接合を有する発光素子の4〜10倍)、高輝度化を実現することができる。次に、中心ナノワイヤおよび各被覆層についてより詳細に説明する。
【0030】
中心ナノワイヤは、基板と同じ第1の導電型のウルツ鉱型構造のInPからなり、基板の(111)面から絶縁膜の開口部を通って上方に延伸している。中心ナノワイヤの直径は、2〜500nm程度であればよい。また、中心ナノワイヤの長さは、100nm〜100μm程度であればよい。
【0031】
第1のクラッド層は、中心ナノワイヤの側面を被覆している。第1のクラッド層は、絶縁膜に接触しているが、基板には接触していない。第1のクラッド層は、中心ナノワイヤを構成するIII−V族化合物半導体よりもバンドギャップが大きい、第1の導電型のウルツ鉱型構造のIII−V族化合物半導体からなる。第1のクラッド層を構成するIII−V族化合物半導体の種類は、中心ナノワイヤを構成するIII−V族化合物半導体および発光層を構成するIII−V族化合物半導体よりもバンドギャップが大きければ特に限定されず、2元化合物半導体、3元化合物半導体、4元化合物半導体、それ以上の元素からなる半導体のいずれでもよい。2元化合物半導体の例には、AlP、GaP、InAs、InP、GaAs、GaN、InSb、GaSbおよびAlSbが含まれる。3元化合物半導体の例には、AlGaAs、InGaAs、InGaN、AlGaN、GaNAs、InAsSb、GaAsSb、InGaSbおよびAlInSbが含まれる。4元化合物半導体の例には、InGaAlN、AlInGaP、InGaAsP、GaInAsN、InGaAlSb、InGaAsSbおよびAlInGaPSbが含まれる。第1のクラッド層の膜厚は、pn接合界面に形成される空乏層の厚さよりも厚ければ特に限定されず、例えば5nm以上であればよい。
【0032】
発光層は、第1のクラッド層を被覆している。発光層は、絶縁膜に接触しているが、基板には接触していない。発光層は、第1のクラッド層を構成するIII−V族化合物半導体および第2のクラッド層を構成するIII−V族化合物半導体よりもバンドギャップが小さいウルツ鉱型構造のIII−V族化合物半導体からなる。発光層を構成するIII−V族化合物半導体の種類は、前記条件を満たせば特に限定されず、2元化合物半導体、3元化合物半導体、4元化合物半導体、それ以上の元素からなる半導体のいずれでもよい。発光層を構成するIII−V族化合物半導体は、第1の導電型または第2の導電型にドープされていてもよいし、真性半導体であってもよい。発光層の膜厚は、1〜50nm程度であればよい。
【0033】
第2のクラッド層は、発光層を被覆している。第2のクラッド層は、絶縁膜に接触しているが、基板には接触していない。第2のクラッド層は、第1のクラッド層を構成するIII−V族化合物半導体と同じ組成のウルツ鉱型構造のIII−V族化合物半導体である。第2のクラッド層を構成するIII−V族化合物半導体は、第2の導電型にドープされている。第2のクラッド層を構成するIII−V族化合物半導体は、第1のクラッド層を構成するIII−V族化合物半導体と同様に、発光層を構成するIII−V族化合物半導体よりもバンドギャップが大きい。第2のクラッド層の膜厚は、例えば5〜100nm程度であればよい。
【0034】
キャップ層は、第2のクラッド層を被覆している。キャップ層は、絶縁膜に接触しているが、基板には接触していない。キャップ層は、第2のクラッド層と同じ第2の導電型のウルツ鉱型構造のIII−V族化合物半導体からなり、第2の電極との間でオーミック接続を形成しやすくする。たとえば、キャップ層は、第2の導電型のIII−V族化合物半導体からなる層か、または第2の導電型のIII−V族化合物半導体からなる層と第2の導電型で不純物濃度の高いIII−V族化合物半導体からなる層との積層体である。キャップ層を構成するIII−V族化合物半導体の種類は、第2の電極との間でオーミック接続を形成することができれば特に限定されず、2元化合物半導体、3元化合物半導体、4元化合物半導体、それ以上の元素からなる半導体のいずれでもよい。キャップ層の膜厚は、5〜10nm程度であればよい。
【0035】
第1の電極は、コアマルチシェルナノワイヤと接触しないように、基板に接続されている。たとえば、第1の電極は、基板の裏面に配置されている。第1の電極の材料は、基板とオーミック接続できる金属であれば特に限定されない。たとえば、基板がn型III−V族化合物半導体からなる場合、第1の電極は、Ti/Au多層膜、Ti/Al多層膜などであればよい。また、基板がp型III−V族化合物半導体からなる場合、第1の電極は、Cr/Au多層膜、AuZn合金膜などであればよい。第1の電極の膜厚は、特に限定されず、1〜1000nm程度であればよい。
【0036】
第2の電極は、コアマルチシェルナノワイヤの側面を被覆しており、コアマルチシェルナノワイヤのキャップ層に接続されている。第2の電極は、コアマルチシェルナノワイヤの側面を被覆しているため、中心ナノワイヤの側面に形成されたpn接合に効率よく電流を注入することができる。これにより、低消費電力化が実現される。また、第2の電極は、コアマルチシェルナノワイヤの側面において光を反射するため、コアマルチシェルナノワイヤ内で生じた光をコアマルチシェルナノワイヤ内に閉じ込めることができる。コアマルチシェルナノワイヤ内に閉じ込められた光は、コアマルチシェルナノワイヤの上側の端面から外部に効率的に放出される。これにより、高輝度化が実現される。
【0037】
コアマルチシェルナノワイヤの側面の総面積に占める第2の電極が被覆する面積の割合は、低消費電力化および高輝度化を両立する観点から、10〜100%の範囲内が好ましく、20〜100%の範囲内がより好ましく、50〜100%の範囲内が特に好ましい。コアマルチシェルナノワイヤの側面のうち第2の電極で被覆されていない領域は、誘電体膜で被覆されていることが好ましい。たとえば、コアマルチシェルナノワイヤの側面のうち上端側の80%が第2の電極で被覆されている場合、下端側(基板側)の20%は誘電体膜で被覆されていることが好ましい。このようにすることで、第2の電極と基板との間にリーク電流が流れることをより確実に防ぐことができる。誘電体膜の例には、SiO
2膜やAl
2O
3膜などが含まれる。
【0038】
第2の電極の材料は、キャップ層とオーミック接続できる金属であれば特に限定されない。たとえば、キャップ層がn型III−V族化合物半導体からなる場合、第2の電極は、Ti/Au多層膜、Ti/Al多層膜などであればよい。また、キャップ層がp型III−V族化合物半導体からなる場合、第2の電極は、Cr/Au多層膜、AuZn合金膜などであればよい。第2の電極の膜厚は、特に限定されず、1〜1000nm程度であればよい。
【0039】
本発明に係る発光素子の効果については、製造方法について説明した後に説明する。
【0040】
[発光素子の製造方法]
次に、本発明に係る発光素子の製造方法について説明する。本発明に係る発光素子の製造方法は、(1)基板を準備する第1のステップと、(2)コアマルチシェルナノワイヤを形成する第2のステップと、(3)第1の電極および第2の電極を形成する第3のステップを含む。
【0041】
(1)基板の準備
第1のステップでは、第1の導電型にドープされたIII−V族化合物半導体またはSiからなる基板であって、基板の(111)面が開口部を有する絶縁膜で被覆されている基板を準備する。基板の種類は、(111)面を有するものであれば特に限定されず、例えばn型InP(111)基板やp型InP(111)基板、n型Si(111)基板、p型Si(111)基板などである。
【0042】
基板の(111)面は、絶縁膜で被覆されている。(111)面を被覆する絶縁膜の材料は、中心ナノワイヤの成長を阻害することができ、かつ絶縁体であれば特に限定されない。絶縁膜の材料の例には、SiO
2、SiN、Al
2O
3などなどが含まれる。(111)面を被覆する絶縁膜の厚さは、特に限定されないが、例えば25nm程度であればよい。絶縁膜の形成方法は、特に限定されず、スパッタリング法などの公知の薄膜形成法から適宜選択されうる。
【0043】
基板の(111)面を被覆する絶縁膜には、1または2以上の開口部が形成される。開口部は、電子ビームリソグラフィーや、フォトリソグラフィー、ナノインプリントリソグラフィーなどの微細パターン加工技術を用いることで形成されうる。基板の(111)面は、開口部を通して外部に露出している。開口部の形状は、特に限定されず、任意に決定することができる。開口部の形状の例には、三角形、四角形、六角形および円形が含まれる。開口部の直径は、2〜500nm程度であればよい。開口部の直径が大きすぎると、基板の(111)面と中心ナノワイヤとの接合界面に多数の転位または欠陥が形成されるおそれがある。開口部の数が2以上の場合、開口部の中心間距離は、数十nm〜数μm程度であればよい。
【0044】
(2)コアマルチシェルナノワイヤの作製
第2のステップでは、絶縁膜上にコアマルチシェルナノワイヤを形成する。より具体的には、開口部を通して露出した基板の(111)面から中心ナノワイヤを成長させ、次いで前記中心ナノワイヤの側面に複数の被覆層を形成する。
【0045】
(中心ナノワイヤの形成)
基板の表面から絶縁膜の開口部を通してウルツ鉱型構造のInPからなる中心ナノワイヤを成長させる。中心ナノワイヤの成長は、例えば有機金属化学気相エピタキシ法(以下「MOVPE法」ともいう)や、分子線エピタキシ法(以下「MBE法」ともいう)などにより行われる。好ましくは、中心ナノワイヤの成長は、MOVPE法により行われる。なお、開口部以外の領域では、絶縁膜により中心ナノワイヤの成長は阻害される。
【0046】
MOVPE法による半導体ナノワイヤの形成は、通常のMOVPE装置を用いて行うことができる。つまり、所定の温度かつ減圧条件下で、Inを含む原料ガスおよびPを含む原料ガスを提供すればよい。たとえば、約660℃でTMIn(trimethylindium)、TBP(tertiarybutylphosphine)を含むガスを提供すればよい。これにより、ウルツ鉱型構造のInPからなる中心ナノワイヤを、その長軸が(111)面に対して垂直になるように基板の(111)面上に形成することができる。このようにして形成された中心ナノワイヤと基板の(111)面との接合界面は、基本的に無転位かつ無欠陥である。
【0047】
中心ナノワイヤは、第1の導電型(n型もしくはp型)にドープされる。たとえば、MOVPE法で中心ナノワイヤを形成している間にドーピングガスまたはドーピング有機金属を供給することで、中心ナノワイヤにn型ドーパントまたはp型ドーパントをドープすることができる。具体的には、MOVPE法でIV族原子を含むガスまたは有機金属材料と中心ナノワイヤの材料とを同時に供給することで、n型の中心ナノワイヤを形成することができる。同様に、VI族原子を含むガスまたは有機金属材料と中心ナノワイヤの材料とを同時に供給することで、p型の中心ナノワイヤを形成することができる。n型にドープする場合、ドーピングガスおよびドーピング有機金属の種類は、C、Si、Ge、Sn、O、S、SeまたはTeを含むものであれば特に限定されない。p型にドープする場合、ドーピングガスおよびドーピング有機金属の種類は、C、ZnまたはTeを含むものであれば特に限定されない。この他にも、中心ナノワイヤに対してIV族原子からなるイオンをイオン注入法で打ち込むことで、n型の中心ナノワイヤを形成することができる。同様に、中心ナノワイヤに対してVI族原子からなるイオンを打ち込むことで、p型の中心ナノワイヤを形成することができる。キャリアの濃度は、特に限定されないが、例えば1×10
16〜5×10
20cm
−3程度であればよい。
【0048】
(被覆層の形成)
次いで、中心ナノワイヤの側面に被覆層を形成する。より具体的には、中心ナノワイヤの側面に第1のクラッド層を形成し、次いで第1のクラッド層の上に発光層、第2のクラッド層およびキャップ層をこの順番で積層させる。前述のとおり、ウルツ鉱型構造の中心ナノワイヤを下地結晶として使用することで、ウルツ鉱型構造の被覆層を形成することができる。被覆層の形成は、例えば有機金属化学気相エピタキシ法(以下「MOVPE法」ともいう)や、分子線エピタキシ法(以下「MBE法」ともいう)などにより行われる。作業工程を減らす観点からは、被覆層の形成方法は、中心ナノワイヤの製造方法と同じであることが好ましい。
【0049】
中心ナノワイヤの側面に被覆層を形成するためには、中心ナノワイヤの長さ方向よりも動径方向の成長を促進させることが好ましい。動径方向の成長を促進させるには、基板温度を中心ナノワイヤを成長させた際の温度から50〜200℃程度低下させればよい。これにより、ナノワイヤの側面における成長速度がナノワイヤの長さ方向の成長速度よりも大きくなり、中心ナノワイヤの側面に被覆層を形成する横方向成長を実現できる。縦方向の成長は完全に阻害されていなければならないわけではなく、中心ナノワイヤの上側の端面を被覆するように被覆層が形成された場合は、機械研磨などにより中心ナノワイヤおよび各被覆層の端面を露出させればよい。
【0050】
第1のクラッド層、発光層、第2のクラッド層およびキャップ層を順に形成するには、被覆層の形成過程において供給する原料ガスの種類を切り替えればよい。たとえば、中心ナノワイヤ側から動径方向にAlP、GaP、AlP、GaPの順で積層した構造の被覆層を形成するには、TMAl(trimethylaluminum)およびTBPを供給して600℃でウルツ鉱型構造のAlPを成長させ;次いでTMGaおよびTBPを供給して600℃でウルツ鉱型構造のGaPを成長させ;次いでTMAlおよびTBPを供給して600℃でウルツ鉱型構造のAlPを成長させ;次いでTMGaおよびTBPを供給して600℃でウルツ鉱型構造のGaPを成長させればよい。
【0051】
第1のクラッド層、第2のクラッド層およびキャップ層は、第1の導電型(n型もしくはp型)または第2の導電型(p型もしくはn型)にドープされる。発光層は、第1の導電型(n型もしくはp型)または第2の導電型(p型もしくはn型)にドープされることもあれば、ドープされないこともある。MOVPE法でIV族原子を含むガスまたは有機金属材料と被覆層の材料とを同時に供給することで、n型の被覆層を形成することができる。同様に、VI族原子を含むガスまたは有機金属材料と被覆層の材料とを同時に供給することで、p型の被覆層を形成することができる。n型にドープする場合、ドーピングガスおよびドーピング有機金属の種類は、C、Si、Ge、Sn、O、S、SeまたはTeを含むものであれば特に限定されない。p型にドープする場合、ドーピングガスおよびドーピング有機金属の種類は、C、ZnまたはTeを含むものであれば特に限定されない。キャリアの濃度は、特に限定されず、1×10
16〜5×10
20cm
−3程度であればよい。
【0052】
(3)第1の電極および第2の電極の形成
第3のステップでは、第1の電極および第2の電極を形成する。
【0053】
第1の電極は、コアマルチシェルナノワイヤと接触しないように基板上に形成すればよい。第1の電極を基板上に形成する方法は特に限定されない。たとえば、フォトリソグラフィー法を用いて、電極形成予定部位以外の領域をレジスト膜でマスクし、金や白金、チタン、クロム、アルミニウム、パラジウム、モリブデンなどの金属を蒸着させ、レジスト膜を除去(リフトオフ)すればよい。また、クロムやチタンなどを蒸着した後、さらに金を蒸着して二層構造の電極としてもよい。
【0054】
第2の電極は、基板と接触しないようにコアマルチシェルナノワイヤの側面(キャップ層)上に形成すればよい。第2の電極をコアマルチシェルナノワイヤの側面に形成する方法は特に限定されない。たとえば、1)コアマルチシェルナノワイヤの表面を所定の膜厚の誘電体膜で被覆し、2)誘電体膜で被覆されたコアマルチシェルナノワイヤを絶縁樹脂で包埋し、3)絶縁樹脂の一部を除去して誘電体膜で被覆されたコアマルチシェルナノワイヤの先端部分を露出させ、4)コアマルチシェルナノワイヤを被覆する誘電体膜を除去してコアマルチシェルナノワイヤと絶縁樹脂との間に空隙を形成し、5)4)で形成された空隙に金属を堆積させて第2の電極を形成すればよい(実施の形態参照)。この方法では、4)で誘電体膜を除去する程度(面積)を調整することで、第2の電極がコアマルチシェルナノワイヤを被覆する面積を調整することができる。たとえば、4)でコアマルチシェルナノワイヤを被覆する誘電体膜のうち、コアマルチシェルナノワイヤの上側80%の部分を被覆する誘電体膜を除去した場合、第2の電極はコアマルチシェルナノワイヤの上側80%の部分を被覆することになる。この場合、コアマルチシェルナノワイヤの下側20%の部分は、誘電体膜で被覆されたままとなる。
【0055】
本発明に係る発光素子では、コアマルチシェルナノワイヤの上側の端面(特に発光層の上側の端面)が金属膜(遮光物)で被覆されておらず、かつ第2の電極がコアマルチシェルナノワイヤの側面にのみ接続されている。したがって、第2の電極を形成する際にコアマルチシェルナノワイヤの上側の端面が金属膜で被覆されてしまった場合は、機械研磨などによりコアマルチシェルナノワイヤの端面を露出させることが好ましい。
【0056】
以上の手順により、本発明に係る発光素子を製造することができる。
【0057】
[効果]
以上のように、本発明に係る発光素子の製造方法では、ウルツ鉱型構造のInPからなる中心ナノワイヤを下地結晶として、ウルツ鉱型構造のIII−V族化合物半導体からなる被覆層を形成する。従来のVLS成長法で作製されたウルツ鉱型構造のGaPには、閃亜鉛鉱型構造が混在してしまう(非特許文献4参照)。これに対し、本発明に係る発光素子の製造方法では、ウルツ鉱型構造のInPを下地結晶として、積層欠陥の無いウルツ鉱型構造の発光層(例えばGaP)を形成することができる。したがって、本発明に係る発光素子では、直接遷移による発光を実現することができ、緑色領域においても発光効率を向上させることができる。
【0058】
また、VLS成長法では、コアシェル構造のナノワイヤを作製することが困難であるため、縦型接合(axial junction)を形成することが多い。これに対し、本発明に係る発光素子の製造方法では、コアシェル構造のナノワイヤを作製して、横型接合(radial junction)を形成する。ここで、ナノワイヤの直径が200nm、ナノワイヤの中心間距離が400nm、ナノワイヤの高さが3μmであるナノワイヤ発光素子を想定する。この場合、縦型接合のナノワイヤ発光素子の発光面積は、プレーナ比で1/5倍であるのに対し、横型接合のナノワイヤ発光素子の発光面積は、プレーナ比で12倍である。したがって、本発明に係る発光素子は、従来のナノワイヤ発光素子に比べて発光面積の観点で優れているといえる。また、同量の電流を流した場合、横型接合のナノワイヤ発光素子の電流密度は、プレーナ比で約1/10倍である。これは、本発明に係る発光素子は、同じ電流密度を維持しながら、10倍量の電流を流すことが可能であることを意味する。
【0059】
また、VLS成長法でウルツ鉱型構造のGaPを作製する際にドーピングを行うと結晶構造が変化してしまうことが報告されている(非特許文献4〜6参照)。これに対して、本発明に係る発光素子の製造方法では、下地結晶の結晶構造が転写されるため、ドーピングを行っても結晶構造が変化することはない。
【0060】
3.複数の発光素子の製造方法
本発明に係る発光素子の製造方法では、互いに発光波長が異なる複数の発光素子を1つの基板上に同時に製造することもできる。
【0061】
前述の通り、本発明に係る発光素子の製造方法は、1)基板を準備する第1のステップと、2)コアマルチシェルナノワイヤを形成する第2のステップと、3)第1の電極および第2の電極を形成する第3のステップを含む。ここで、第1のステップにおいて、絶縁膜の開口部の中心間距離および/または開口部のサイズを変化させると、第2のステップにおいて、中心ナノワイヤおよび各被覆層の組成ならびに各被覆層の膜厚が変わる(理由は後述)。第1のクラッド層、発光層および第2のクラッド層の組成(バンドギャップ)および膜厚が変わると、発光素子の発光波長が変わる。したがって、1つの基板において絶縁膜を2以上の領域に区分し、その領域ごとに開口部の中心間距離および/または開口部のサイズを変えることで、発光素子の発光波長を領域ごとに変えることができる。
【0062】
以下、互いに発光波長が異なる複数の発光素子を1つの基板上に同時に製造する方法について、より詳細に説明する。すでに説明した事項については、説明を省略する。
【0063】
第1のステップでは、絶縁膜で被覆された基板を準備する。前述の通り、絶縁膜は2以上の領域に区分されている。後述するように、絶縁膜の領域ごとにコアマルチシェルナノワイヤ(中心ナノワイヤおよび各被覆層)の組成および各被覆層の膜厚を変えるために、絶縁膜の領域ごとに開口部の中心間距離および/または開口部の径を変える。
【0064】
第2のステップでは、絶縁膜上にコアマルチシェルナノワイヤを形成する。より具体的には、開口部を通して露出した基板の(111)面から中心ナノワイヤを成長させ、次いで前記中心ナノワイヤの側面に各被覆層を形成する。中心ナノワイヤおよび各被覆層の形成は、例えばMOVPE法や、MBE法などにより行われる。好ましくは、中心ナノワイヤおよび各被覆層の形成は、MOVPE法により行われる。MOVPE法による半導体ナノワイヤの形成は、所定の温度かつ減圧条件下で、III族元素を含む原料ガスおよびV族元素を含む原料ガスを提供すればよい。たとえば、InGaP層を形成するときは、TMIn、TMGaおよびTBPを含むガスを提供すればよい。
【0065】
TMIn、TMGaおよびTBPを含むガスを供給すると、これらのガスは基板表面付近で熱分解反応を起こし、分解した元素(In、GaおよびP)は絶縁膜の開口部に絶縁膜の表面を移動して集まる。絶縁膜で被覆された領域では結晶成長が起こらず、開口部内で半導体結晶が露出している部分で結晶成長が起こる。絶縁膜の表面では基板が加熱されているため、表面に付着した元素や原料ガスは、一定時間経過した後に、基板表面から気相中へと離散する。絶縁膜の表面におけるInの表面移動距離はGaの表面移動距離よりも長いため、開口部から離れた位置に付着した元素のうち、Inの方がGaよりも多く開口部に到達する。このように開口部の中心間距離が大きい場合には、Inの割合が大きく、膜厚が薄いInGaAs層となる。一方、開口部の中心間距離が小さい場合、Inの表面移動距離およびGaの表面移動距離が開口部の中心間距離よりも長くなり、Gaの割合が大きく、膜厚が厚いInGaAs層となる。この原理は、他のIII−V族化合物半導体を成長させる場合も成り立つ。
【0066】
このように、第1のステップで領域ごとに開口部の中心間距離および/または開口部のサイズを変化させることで、第2のステップで領域ごとに中心ナノワイヤおよび各被覆層の組成ならびに各被覆層の膜厚を変えることができる。
【0067】
第3のステップでは、第1の電極および第2の電極を形成する。
【0068】
以上の手順により、基板上の絶縁膜が2以上の領域に区分されており、絶縁膜に形成された開口部の中心間距離および/またはサイズが領域ごとに異なり、コアマルチシェルナノワイヤの組成も領域ごとに異なる発光素子を製造することができる。
【0069】
たとえば、上記の製造方法によれば、互いに発光波長の異なる複数の発光素子を同一基板上に同時に製造することができる。
【0070】
4.実施の形態
以下、図面を参照して本発明に係る発光素子をより詳細に説明する。ここでは、ウルツ鉱型構造のn型GaPからなる発光層を有する発光素子の例を示す。
【0071】
図5は、本実施の形態に係る発光素子の構成を示す断面図である。
図6は、本実施の形態に係る発光素子のコアマルチシェルナノワイヤの断面図(基板面と平行な断面の図)である。
【0072】
図5に示されるように、本実施の形態に係る発光素子100は、p型InP基板110、絶縁膜120、コアマルチシェルナノワイヤ130、絶縁樹脂140、第1の電極150、第2の電極160、誘電体膜170を有する。
図5および
図6に示されるように、コアマルチシェルナノワイヤ130は、p型InPからなる中心ナノワイヤ131、p型AlPからなる第1のクラッド層132、n型GaPからなる発光層133、n型AlPからなる第2のクラッド層134およびn型GaPからなるキャップ層135を含む。発光素子100は、コアマルチシェルナノワイヤ130の下端側から上端側(
図5において白矢印の方向)に向けて光を放出する。
【0073】
p型InP基板110は、p型にドープされたInP(111)基板である。
【0074】
絶縁膜120は、p型InP基板110のコアマルチシェルナノワイヤ130が配置されている面((111)面)を被覆する絶縁性の膜である。絶縁膜120は、例えば膜厚25nmのSiO
2膜である。p型InP基板110と中心ナノワイヤ131とは直接接触しているので、その界面に絶縁膜120は存在しない。
【0075】
コアマルチシェルナノワイヤ130は、III−V族化合物半導体からなるコアマルチシェル構造のナノワイヤである。中心ナノワイヤ131は、ウルツ鉱型構造のp型InPからなり、p型InP基板110の(111)面上に、その長軸が前記(111)面に対して略垂直になるように配置されている。第1のクラッド層132は、ウルツ鉱型構造のp型AlPからなり、中心ナノワイヤ131の側面を被覆する。発光層133は、ウルツ鉱型構造のn型GaPからなり、第1のクラッド層132を被覆する。第2のクラッド層134は、ウルツ鉱型構造のn型AlPからなり、発光層133を被覆する。キャップ層135は、ウルツ鉱型構造のn型GaPからなり、第2のクラッド層134を被覆する。第1のクラッド層132、発光層133、第2のクラッド層134およびキャップ層135は、中心ナノワイヤ131の側面のみを被覆し、中心ナノワイヤ131の端面は被覆しない。したがって、中心ナノワイヤ131、第1のクラッド層132、発光層133、第2のクラッド層134およびキャップ層135の上側の端面は、いずれも外界雰囲気に露出している。
【0076】
絶縁樹脂140は、p型InP基板110(絶縁膜120)上においてコアマルチシェルナノワイヤ130間の空間を埋めるように配置されており、各コアマルチシェルナノワイヤ130を分離している。絶縁樹脂140は、コアマルチシェルナノワイヤ130と直接接触しておらず、絶縁樹脂140とコアマルチシェルナノワイヤ130との間には、第2の電極160または誘電体膜170が配置されている。絶縁樹脂140の材料は、絶縁性を有する樹脂であれば特に限定されないが、透明絶縁樹脂が好ましい。コアマルチシェルナノワイヤ130内で発生した光を効率よく取り出すためである。
【0077】
第1の電極150は、p型InP基板110上に配置されており、p型InP基板110に接続されている。第1の電極150は、p型InP基板110にオーミック接続されていることが好ましい。第1の電極150は、例えばCr/Au多層膜やAuZn合金膜などである。
【0078】
第2の電極160は、絶縁樹脂140とコアマルチシェルナノワイヤ130との間および絶縁樹脂140上に配置されている。第2の電極160は、コアマルチシェルナノワイヤ130の側面の一部(上側の部分)を被覆するとともに、コアマルチシェルナノワイヤ130の側面(キャップ層135)に接続されている。第2の電極160は、コアマルチシェルナノワイヤ130の側面(キャップ層135)にオーミック接続されていることが好ましい。第2の電極160は、例えばTi/Au多層膜やTi/Al多層膜などである。
【0079】
誘電体膜170は、コアマルチシェルナノワイヤ130の側面の一部(第2の電極160で被覆されていない下側の部分)および絶縁膜120の一部(コアマルチシェルナノワイヤ130が配置されていない部分)を被覆する絶縁性の膜である。誘電体膜170は、例えば膜厚15nmのAl
2O
3膜および膜厚50nmのSiO
2膜の積層膜、または膜厚50nmのSiO
2膜である。
【0080】
本実施の形態に係る発光素子100では、中心ナノワイヤ131の側面全面に形成されたpn接合において光が発生する。発生した光は、第2の電極160で反射されるため、コアマルチシェルナノワイヤ130の側面ではなく上側の端面から外部に放出される(
図5中の白矢印)。
【0081】
以下、
図7〜9を参照して本実施の形態に係る発光素子100の製造方法について説明する。
図7は、コアマルチシェルナノワイヤ130の形成過程を示す模式図である。
図8は、コアマルチシェルナノワイヤ130を形成した後の基板の斜視図である。
図9は、第1の電極150および第2の電極160の形成過程を示す模式図である。
図9では、コアマルチシェルナノワイヤ130の被覆層132〜135を省略している。
【0082】
まず、
図7Aに示されるように、p型InP基板110を準備する。p型InP基板110上には、スパッタリング法などでSiO
2からなる膜厚25nmの絶縁膜120が形成されている。次いで、
図7Bに示されるように、p型InP基板110上の絶縁膜120に、フォトリソグラフィー法などを用いて開口部を形成する。次いで、
図7Cに示されるように、MOVPE法により、開口部を通して露出したp型InP基板110の(111)面から中心ナノワイヤ131(ウルツ鉱型構造のp型InPナノワイヤ)を成長させる。次に、
図7Dに示されるように、中心ナノワイヤ131の側面に第1のクラッド層132、発光層133、第2のクラッド層134およびキャップ層135を形成する。前述のとおり、ウルツ鉱型構造の中心ナノワイヤ131を下地結晶として使用することで、ウルツ鉱型構造の被覆層(第1のクラッド層132、発光層133、第2のクラッド層134およびキャップ層135)を形成することができる。以上の手順により、
図8に示されるように、p型InP基板110上にコアマルチシェルナノワイヤ130を形成することができる。
【0083】
次に、
図9A(
図7Dと同じ状態)および
図9Bに示されるように、コアマルチシェルナノワイヤ130の周囲を誘電体膜170で被覆する。たとえば、ALD法で膜厚15nmのAl
2O
3膜を形成した後、スパッタリング法で膜厚50nmのSiO
2膜を形成すればよい。ALD法でAl
2O
3膜を形成するのは、SiO
2膜を形成する際にコアマルチシェルナノワイヤ130が損傷を受けないようにするためである。したがって、コアマルチシェルナノワイヤ130の損傷を防止できれば、Al
2O
3膜を形成せずに、プラズマCVD法などでSiO
2膜のみを形成してもよい。誘電体膜170は、ガスエッチングの際にコアマルチシェルナノワイヤ130を保護するとともに(
図9D参照)、コアマルチシェルナノワイヤ130と絶縁樹脂140との間に第2の電極160を形成するための空間を確保する役割を担っている(
図9E参照)。
【0084】
次に、
図9Cに示されるように、誘電体膜170で被覆されたコアマルチシェルナノワイヤ130を絶縁樹脂140で包埋する。次いで、
図9Dに示されるように、ガスエッチングなどにより絶縁樹脂140を部分除去して、コアマルチシェルナノワイヤ130の先端部分を露出させる。次いで、
図9Eに示されるように、ウェットエッチングなどによりコアマルチシェルナノワイヤ130の周囲の誘電体膜170を選択的に除去して、コアマルチシェルナノワイヤ130の上側の端面および側面を露出させる。エッチング時間を調整することにより、コアマルチシェルナノワイヤ130の側面の露出面積を任意に調整することができる。
【0085】
次に、
図9Fに示されるように、コアマルチシェルナノワイヤ130と絶縁樹脂140との間の空隙に金属を堆積して第2の電極160を形成する。オーミック接続とするため、第2の電極160を形成した後アニーリングすることが好ましい。次いで、
図9Gに示されるように、コアマルチシェルナノワイヤ130の上部に堆積した金属をコアマルチシェルナノワイヤ130ごと機械研磨して、コアマルチシェルナノワイヤ130の上側の端面を露出させる。これにより、第2の電極160は、コアマルチシェルナノワイヤ130の側面のみを被覆するようになる。最後に、
図9Hに示されるように、p型InP基板110の裏面に金属を堆積して第1の電極150を形成する。
【0086】
以上の手順により、発光素子100を製造することができる。
【0087】
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されない。
【実施例】
【0088】
1.発光素子の作製
(1)基板の準備
p型InP(111)A基板の表面に、スパッタリング法により膜厚約25nmのSiO
2膜(絶縁膜)を形成した(
図7A参照)。電子線ビームリソグラフィーおよびウェットケミカルエッチングによりSiO
2膜に周期的に開口部を形成して、p型InP基板の(111)面を露出させた(
図7B参照)。開口部の形状は六角形とし、開口部の径は100nmとした。開口部の中心間距離は、400nmとした。
【0089】
(2)コアマルチシェルナノワイヤの作製
絶縁膜を形成したp型InP基板を減圧横型MOVPE装置(HR2339;大陽日酸株式会社)にセットし、p型InP基板表面から開口部を通してウルツ鉱型構造のp型InPナノワイヤ(中心ナノワイヤ)を成長させた(
図7C参照)。
【0090】
具体的には、p型InP基板の温度を660℃としてTMIn(trimethylindium)、TBP(tertiarybutylphosphine)およびジメチル亜鉛を水素ガスとともに供給して、p型InP基板表面から開口部を通して太さ100nmのウルツ鉱型構造のp型InPナノワイヤを成長させた。TMInの分圧は4.4×10
−6atmとし、TBPの分圧は8.1×10
−5atmとした。p型InPナノワイヤのキャリア濃度は、1.0×10
18〜1.0×10
19cm
−3とした。
【0091】
次に、p型InPナノワイヤ(中心ナノワイヤ)の周囲(主として側面となる{11−2}面)に、ウルツ鉱型構造のp型AlP層(第1のクラッド層)、ウルツ鉱型構造のn型GaP層(発光層)、ウルツ鉱型構造のn型AlP層(第2のクラッド層)およびウルツ鉱型構造のn型GaP層(キャップ層)をこの順番で形成した(
図7D参照)。
【0092】
具体的には、InP基板の温度を600℃としてTMAl(trimethylaluminum)、TBPおよびジメチル亜鉛を水素ガスとともに供給して、p型InPナノワイヤ(中心ナノワイヤ)の側面に膜厚25nmのウルツ鉱型構造のp型AlP層(第1のクラッド層)を形成した。次いで、TMGa(trimethylgallium)、TBPおよびモノシランを水素ガスとともに供給して、p型AlP層(第1のクラッド層)の上に膜厚10nmのウルツ鉱型構造のn型GaP層(発光層)を形成した。次いで、TMAl、TBPおよびモノシランを水素ガスとともに供給して、n型GaP層(発光層)の上に膜厚25nmのウルツ鉱型構造のn型AlP層(第2のクラッド層)を形成した。次いで、TMGa、TBPおよびモノシランを水素ガスとともに供給して、n型AlP層(第2のクラッド層)の上に膜厚10nmのウルツ鉱型構造のn型GaP層(キャップ層)を形成した。TMAlの分圧は5.0×10
−7atmとし、TMGaの分圧は5.0×10
−7atmとし、TBPの分圧は2.4×10
−4atmとした。p型AlP層(第1のクラッド層)のキャリア濃度は、1.0×10
18〜5.0×10
18cm
−3とし、n型GaP層(発光層)のキャリア濃度は、1.0×10
18〜5.0×10
18cm
−3とし、n型AlP層(第2のクラッド層)のキャリア濃度は、1.0×10
18〜5.0×10
18cm
−3とし、n型GaP層(キャップ層)のキャリア濃度は、1.0×10
18〜5.0×10
18cm
−3とした。
【0093】
この工程により、長さ2μmのコアマルチシェルナノワイヤがInP基板表面に形成された。コアマルチシェルナノワイヤの長軸は、InP基板の表面に対して垂直であった。
【0094】
図10は、作製したコアマルチシェルナノワイヤの構成を示す断面模式図である。
図10に示されるように、ウルツ鉱型構造のp型InPナノワイヤ(中心ナノワイヤ)231は、p型InP基板210の(111)面からSiO
2膜(絶縁膜)220の開口部を通して成長している。このp型InPナノワイヤ(中心ナノワイヤ)231の側面に、ウルツ鉱型構造のp型AlP層(第1のクラッド層)232、ウルツ鉱型構造のn型GaP層(発光層)233、ウルツ鉱型構造のn型AlP層(第2のクラッド層)234およびウルツ鉱型構造のn型GaP層(キャップ層)235が積層されている。
【0095】
(3)発光素子の作製
コアマルチシェルナノワイヤを形成したInP基板上に誘電体膜を形成した(
図9B参照)。具体的には、ALD法により、膜厚20nmのAl
2O
3膜を形成した後、スパッタリング法により、膜厚40nmのSiO
2膜を形成した。
【0096】
次に、誘電体膜を形成したInP基板上に絶縁樹脂(BCB樹脂)膜を形成して、InP基板上のコアマルチシェルナノワイヤを絶縁樹脂中に包埋した(
図9C参照)。次いで、反応性イオンエッチングにより絶縁樹脂の上側の一部を除去して、コアマルチシェルナノワイヤの先端を露出させた(
図9D参照)。
【0097】
次に、ウェットエッチングにより、コアマルチシェルナノワイヤの上部および側面の一部(上側部分)の誘電体膜を選択的に除去した(
図9E参照)。具体的には、InP基板を塩酸:超純水混合水溶液に2秒間浸漬してエッチングを行った。
【0098】
次に、コアマルチシェルナノワイヤが露出した面に第2の電極として膜厚120nmのTi/Au多層膜を形成した(
図9F参照)。第2の電極を形成する際には、コアマルチシェルナノワイヤと絶縁樹脂との空隙に金属が効率的に入り込むように、試料回転機構を有する金属蒸着器を用いた。また、オーミック電極を形成するために、400℃で15分間、窒素雰囲気中でアニールした。
【0099】
次に、コアマルチシェルナノワイヤの先端部分をTi/Au多層膜とともに機械的に研磨して、コアマルチシェルナノワイヤの上側の端面を露出させた(
図9G参照)。
【0100】
最後に、InP基板の裏面(コアマルチシェルナノワイヤが形成されていない面)に第1の電極として膜厚140nmのCr/Au多層膜を形成した(
図9H参照)。
【0101】
図11は、作製した発光素子の構成を示す断面模式図である。
図11に示されるように、n型GaP層(発光層)233は、下端側の端面においてSiO
2膜220と界面を形成し、上側の端面において外部雰囲気(空気)と界面を形成している。SiO
2膜220の上には、誘電体膜270、絶縁樹脂240およびTi/Au多層膜(第2の電極)260が形成されている。Ti/Au多層膜(第2の電極)260は、コアマルチシェルナノワイヤ230の側面(n型GaP層(キャップ層)235)に接続されている。また、Cr/Au多層膜(第1の電極)250は、p型InP基板210に接続されている。