【実施例】
【0015】
図1は、紫外線レーザの光源を示しており、手のひらに乗る大きさでありながら、メガワットの紫外線レーザを射出する。
参照番号4は、1.1 at.%の[111]cutのNd:YAGであり、直径が5mmであり、厚みが4mmである。参照番号6は、[110]cutのCr
4+:YAGであり、直径が5mmであり、厚みが4mmである。参照番号8は、出力カプラーである。以上によって波長1064nmの可視光レーザ10を発振する装置2が構成されている。可視光レーザ発振装置2は、ピーク強度が13メガワットのパルスレーザ(可視光レーザ)10を発振する。
参照番号16は、θ=90°、φ=11.4°でカットされたLBO(TYPE 1のLiB
3O
5)結晶であり、断面が5mm×5mmであり、長さが10mmであり、波長1064nmの可視光レーザ10を入射し、2倍の周波数で波長が532 nmの緑色光レーザ12を射出する。参照番号18は、θ=47.7°、φ=0°でカットされたBBO(フラックレス成長したβ-BaB
2O
4)結晶であり、断面が5mm×5mmであり、長さが6mmであり、波長532nmの緑色光レーザ12を入射し、2倍の周波数で波長が266 nmの紫外線レーザ14を射出する。
可視光レーザ発振装置2と、LBO結晶16と、BBO結晶18は、共通の基板19に固定されており、相対的位置と相対的姿勢が保持されている。
LBO結晶16の変換効率と、BBO結晶18の変換効率には、光強度が影響し、光強度が高いほど変換効率が高い。通常は、集光光学系を利用し、光強度を高めて波長変換結晶に入射する。本実施例では、可視光レーザ発振装置2がピーク強度=13メガワットという高強度のパルスレーザ(可視光レーザ)10を発振するために、集光しなくても変換効率が高く、集光レンズ等を必要としない。
【0016】
波長変換結晶の変換効率は、入射光の光軸に対する結晶軸の姿勢によっても影響を受ける。結晶の外形と結晶軸は正確には対応しておらず、入射光の光軸に対する結晶の外形姿勢を管理するだけでは、入射光の光軸と結晶軸の姿勢が高変換効率を得る姿勢に調整されない。本実施例では、LBO結晶16とBBO結晶18の各々を、
図2に示す球形ホルダ20に保持し、入射光の光軸に対する結晶軸の姿勢を調整可能としている。球形ホルダ20は任意の方向に回転可能であり、直交3軸の各々の軸の周りの角度を調整することができる。
【0017】
図2は、LBO結晶16を保持している姿勢調整装置の一部を模式的に示している。ベース30は、フランジ42,46に形成されている通過穴44,48(参照番号48の通過穴は
図4参照)にねじを通すことによって、基板19に固定される。通過穴44,48はねじの軸の径よりも大径であり、可視光レーザ発振装置2に対するベース30の相対的位置関係を調整可能となっている。ベース30の上面の中央には、凹部40が形成されている。凹部40の壁面の形状は、凹な球面の一部であり、本明細書では部分凹球面という。部分凹球面を提供している凹部40に、球形ホルダ20の一部がはまり込む関係になっている。ベース30の部分凹球面40の半径と、球形ホルダ20の半径は同一であり、球形ホルダ20の外周面の一部は部分凹球面40に密着ないし倣う関係となっている。凹部と部分凹球面は、同一位置に存在しているので、本明細書では共通番号40を用いる。
参照番号32,34は、後記するねじ穴であり、参照番号36,38は、後記するばね通過穴である。
【0018】
球形ホルダ20は、ほぼ球形状であるが、直径に沿って伸びている貫通穴22と、後記するハンドル50の先端が挿入される挿入穴24等が形成されており、完全な球体ではない。球形ホルダ20は、後記するように、1対の半球をねじで固定して形成されており、ねじ等の存在位置でも球ではない。球形ホルダ20の貫通穴22内にLBO結晶16が保持されている。BBO結晶18についても同様であり、重複説明は省略する。
【0019】
ベース30の部分凹球面40の半径と球形ホルダ20の半径は同一であり、球形ホルダ20の外周面の一部は部分凹球面40に密着ないし倣う関係となっている。そのために、球形ホルダ20はベース30に対して任意の方向に回転可能であり、LBO結晶16の立体的な姿勢を調整可能であることが理解できる。球形ホルダ20を回転させてLBO結晶16の立体的な姿勢を調整しても、球形ホルダ20の中心位置(すなわちLBO結晶16の中心位置)は、移動しない。相対的位置関係を維持しながら、相対的姿勢を調整できることがわかる。
参照番号50は、球形ホルダ20を回転させる際に用いるハンドルである。ハンドル50の先端は、挿入穴24に挿入可能となっている。ハンドル50を傾けたり回転したりすることで球形ホルダ20は任意の方向に回転する。
【0020】
図3は、立体姿勢調整装置の全体を示し、ストッパ60、締め付け部材72,74、弾性部材86,88が示されている。
ストッパ60の下面の中央には、凹部66(
図6参照)が形成されている。凹部66の壁面の形状は、凹な球面の一部であり、本明細書では部分凹球面という。部分凹球面を提供している凹部66に、球形ホルダ20の一部がはまり込む関係になっている。ストッパ60の部分凹球面66の半径と、球形ホルダ20の半径は同一であり、球形ホルダ20の外周面の一部は部分凹球面66に密着ないし倣う関係となっている。凹部と部分凹球面は同一位置にあり、本明細書では共通番号66を用いる。
ストッパ60の上面の中央に、ハンドル50が通過する通過穴62が形成されている。通過穴62は部分凹球面66に達しており、通過穴62の底面にハンドル50の挿入穴24が観測される。通過穴62にハンドル50を通過させ、挿入穴24にハンドル50の先端を差し込むことができる。その状態でハンドル50を傾動させると、球形ホルダ20が回転する。通過穴62の壁面64は、上側ほど直径が大きくなっているロート形状となっており、ハンドル50の傾動を許容する。通過穴62の直径と、ロート形状の壁面64の傾斜角は、LBO結晶(波長変換結晶)16の姿勢を最適値に調整するのに必要な調整域にあわせてある。ハンドル50をロート形状の壁面64の範囲内で傾動させると、LBO結晶(波長変換結晶)16の立体的姿勢が最適値に調整される。
【0021】
参照番号86,88は、ストッパ60をベース40に向けて引っ張っている弾性部材(引っ張りばねである)。球形ホルダ20を回転させてLBO結晶(波長変換結晶)16の結晶軸の姿勢を調整する段階では、後記するねじ72,74を緩める。引っ張りばね86,88がないと、ねじ72,74を緩めたときに、球形ホルダ20が容易に回転してしまう。この立体姿勢調整装置は、球形ホルダ20を所望の姿勢に調整した後に、その姿勢に固定する方法で用いる。姿勢を調整してから保持するまでの間に、球形ホルダ20が不用意に回転すると、姿勢調整作業がやり難い。そこで引っ張りばね86,88によって、球形ホルダ20が意図せずに回転することを拘束する。引っ張りばね86,88の弾性力は、球形ホルダ20が意図せずに回転することを拘束するが、人が球形ホルダ20を意図的に回転させようと思えば容易に回転できる大きさのものが選ばれている。引っ張りばね86,88があるために、球形ホルダ20を好ましい角度に回転させた姿勢で仮保持することができる。
参照番号72,74は締め付け部材(ねじ)であり、ベース30に形成されているねじ穴32,34にねじ込むとストッパ60がベース30側に接近する。ねじ72,74を締め付けると、ストッパ60がベース30側に接近し、ベース30の部分凹球面40と球形ホルダ20の外周面が強く密着し、ストッパ60の部分凹球面66と球形ホルダ20の外周面が強く密着する。球形ホルダ20の回転が禁止される。
【0022】
図4から
図6は、実施例の姿勢調整装置の詳細を示している。
図4では、出力カプラー8と、LBO結晶16のための姿勢調整装置と、BBO結晶18のための姿勢調整が並んで配置されている様子を示す。姿勢調整装置は小型であり、出力カプラー8とLBO結晶16の間隔G1と、LBO結晶16とBBO結晶18の間隔G2を極めて接近させることができる。球形ホルダ20の直径は、LBO結晶16の長さ、またはBBO結晶18の長さに合わせることができ、必要最小限の大きさにまで小型化できる。
図5の参照番号76は、引っ張りばね86,88の上端に支えている支持ピンであり、ストッパ60に保持されている。参照番号39は、引っ張りばね86,88の下端に支えている支持ピンであり、ベース30に保持されている。
図6に示すように、球形ホルダ20は、一対の半球部材25,26をねじ27,28で保持することで形成されている。
図6では、ねじ27,28の上方に球面が存在しないが、図示しない断面では、ストッパ60の部分凹球面66に密着する球面が存在しており、ストッパ60を下方向に締め付ければ、ストッパ60の部分凹球面66と球形ホルダ20の外周面が強く密着する。
【0023】
実際の組み付け時には、下記の手順を実行する。
(1)
図1に示す基板19に、可視光レーザ発振装置2を固定する。
(2)基板19に、LBO結晶16を保持した姿勢調整装置のベース30を固定する。
(3)ねじ72,76を緩め、ハンドル50を挿入穴24に挿入する。
(4)可視光レーザ発振装置2を動作させ、球形ホルダ20を回転させながら、LBO結晶16から射出される緑色光レーザ12の強度を測り、最大強度が得られる回転角度に調整する。
(5)最大強度得られたら、ハンドル60を取り去り、ねじ72,76を締め付ける。ばね86,88がベース30とストッパ60の間に球形ホルダ20を挟みつけているので、(4)と(5)の間に球形ホルダ20が回転することはない。
(6)基板19に、BBO結晶18を保持した姿勢調整装置のベース30を固定する。
(7)ねじ72,76を緩め、ハンドル50を挿入穴24に挿入する。
(8)可視光レーザ発振装置2を動作させ、球形ホルダ20を回転させながらBBO結晶18から射出される紫外線レーザ14の強度を測り、最大強度が得られる回転角度に調整する。
(9)最大強度得られたら、ハンドル60を取り去り、ねじ72,76を締め付ける。ばね86,88がベース30とストッパ60の間に球形ホルダ20を挟みつけているので、(8)と(9)の間に球形ホルダ20が回転することはない。
【0024】
上記によって、実施例の装置では、LBO結晶16によって73%の変換効率を得ることができ、BBO結晶18によって45%の変換効率を得ることに成功した。その結果、波長266nm, 650μJ, 4.3MWのピーク強度、波長幅150psで100Hzの紫外線レーザ14を得ることができた。
【0025】
上記では、ベース側支持部とストッパ側支持部が、球形ホルダと同一半径の部分凹球面に沿って連続敵に伸びている実施例を説明した。これに代えて、例えば
図7に例示するような支持線90であってもよい。球形ホルダ20と接して支持する支持線90が、球形ホルダ20と同一半径の部分凹球面上に配置されていれば、球形ホルダ20の中心位置が不動な状態で、球形ホルダ20が任意の方向に回転可能な状態で保持される。あるいは
図8に例示するような支持点の集まりであってもよい。支持点群82,84,86が、球形ホルダ20と同一半径の部分凹球面上に配置されていれば、球形ホルダ20の中心位置が不動な状態で、球形ホルダ20が任意の方向に回転可能な状態で保持される。ストッパ側支持部についても同様である。
図8の場合、球形ホルダ20を支持する3個の部材自体がベアリングであり、ベース80に対して任意の方向に回転可能である。球形ホルダ20は、任意の方向にスムースに回転することができる。
上記では、上部半球と26と下部半球25の半径が共通である。これに代えて上部半球26と下部半球25の半径を変えてもよい。この場合、ベース側の部分凹球面と下部半球25の半径を揃え、ストッパ側の部分凹球面と上部半球と26の半径を揃える。上部半球と26と下部半球25の中心が一致していれば、球形ホルダ20は自在に回転することができる。球形ホルダは、異なる半径を持つ部分球から構成されていてもよい。
上記では、第2次高調波に変換する波長変換結晶(非線形光学結晶)の立体的姿勢を調整する。利用可能な光学素子はそれに限定されず、第3次高調波、第4次高調波、第5次高調波、和周波、差周波等に変換する非線形結晶に適用することができる。
上記では、ストッパ60と締め付け部材72,74を利用して、球形ホルダ20が回転できる状態と回転できない状態を作り出す。これに対して姿勢調整が終了したら、球形ホルダ20を固定してしまうことができる。例えば接着剤で固定してしまうことができる。その用法の場合、ストッパ60と締め付け部材72,74を省略することができる。ストッパを利用しない場合、球形ホルダは半球状であってもよく、光学素子を固定する貫通穴を形成する壁の一部が省略されていてもよい。
【0026】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。