(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
接触状態における測定により得られた両基板の相対位置と、離間状態における測定により得られた両基板の相対位置とに基づいて、次の接触状態にするための接触直前の両接合面の平行度を計算し、
当該計算された平行度に基づいて、両接合面の平行度を調節する、
ことを更に備える、請求項13から15のいずれか一項に記載の基板接合方法。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、添付の図面を参照して本願発明に係る実施形態を説明する。
【0042】
<1.接合方法>
図1は、本願発明の基板同士の接合方法を示すフローチャートである。本願発明に係る基板の接合方法によれば、工程S110で、一対の基板の接合面を接触させ、工程S120で、接触状態(第1接触状態)にある接合面に対して、少なくとも一方の基板の接合面の臨界圧力未満の圧力を掛け、工程S130で、接触状態(第1接触状態)にある基板の相対位置を測定し、工程S140で、基板の補正移動量を決定し、工程S150で、工程S140で決定された補正移動量だけ基板を移動させる。本願発明に係る基板接合方法は、更に工程S160として、工程S150での基板移動後に、両接合面を第2接触状態にする又は第2状態に保持する工程を備えていてもよい。以下、各工程についてより詳細に説明する。
【0043】
工程S110では、一対の基板の接合面を接触させる。基板は、接合の際に他の基板と接合界面を形成する接合面を有して形成される。接合面は、基板の一表面の一部又は全体として形成される。基板の接合面は、平坦面であっても曲面であってもよい。また、両接合面が互いに接触する際に、当該接合面ではない基板の表面部位が他の基板と接触してもよい。あるいはまた、接合面は、その全部ではなく一部が接触するように構成されてもよい。
【0044】
工程S120では、上記工程S110後に接触状態(第1接触状態)にある接合面に対して、少なくとも一方の基板の接合面の臨界圧力以下の圧力を掛ける。圧力の印加は、接触と同時に開始してもよく、また接触後、ある時間経過後に開始してもよい。また、圧力の印加は、接触状態にある時間の一部に亘って行われてもよく、全体に亘って行われてもよい。さらにまた、圧力の印加は、断続的に行われてもよく、印加中は、一定の圧力が保たれても、時間的に変化されてもよい。
【0045】
「接合面の臨界圧力」とは、それを超える圧力で接合面を押すと、接合面の所望の特性が変化し又は失われる圧力として定義されうる。
【0046】
たとえば、最終的に接合界面を形成する工程(本接合)の前の、接触工程(仮接合)で接合面に圧力を掛けすぎると、両基板が接合し離間させることができなくなる場合や、離間させることができ、再度接触し加圧しても、所望の接合ができなくなる場合がある。そこで、接触工程で接合面に印加する圧力を低くすると、所望の接合を行うための表面特性を損なわずに、接触した基板を離間させることができる。このように、その後に基板が離間されうる最低の圧力を臨界圧力と定義してもよい。
【0047】
あるいは、接触と離間を複数回繰り返す場合に、離間をさせることはできるが、接触又は接触の繰り返しにより、その後、接合工程を行っても、所望の接合強度などの特性を得ることができなくなる。たとえば、接触界面の一部で新生表面同士が接触して、局部的に又は微視的に強固な接合界面が形成されても、比較的小さい力で基板を離間できる場合がある。しかし、基板自体は離間できても、離間により上記強固に形成された接合界面が破壊するなどして表面特性が悪化し、その結果、所望の接合特性が最終的に得られなくなる。この場合には、接触工程での接合面に掛かる圧力を小さくすることで、新生表面の露出や接触を十分に回避することも可能である。このように、接触工程での接合面に掛かる圧力が実質的に高いことが原因である場合には、当該圧力を低くすることで、接触と離間を複数回繰り返しても、最終的に所望の接合強度を得ることが可能になる。このように離間可能で、かつ最終的に所望の接合強度が得られるための、接触工程での圧力を臨界圧力と定義してもよい。
【0048】
臨界圧力は、それ以上の圧力を掛けると所望の接合を行うことができなくなる圧力と定義されてもよく、またそれを超える圧力を掛けると所望の接合を行うことができなくなる圧力と定義されてもよい。
【0049】
臨界圧力は、接合面を形成する材料、接合面上の表面層の存在の有無、表面層の特性、表面エネルギーなど種々の要因に応じて決定することができる。したがって、本願の接合方法は、
図1の工程S110の前に、少なくとも一方の基板の接合面の臨界圧力を決定する工程(図示せず)を有していてもよい。
【0050】
工程S120において印加される圧力は、両接合面に定義される臨界圧力の小さい方の臨界圧力以下又はこれ未満であることが好ましい。これにより、いずれの接合面に対しても、適切な圧力の印加を確実にすることができる。一方の接合面に臨界圧力が定義されない場合には、臨界圧力が定義される他方の接合面の臨界圧力以下又は未満の圧力を、印加してもよい。
【0051】
臨界圧力は、接触又は加圧工程を複数回行う場合、各接触工程等により変化しうる。接触により、又接触時の加圧条件や接合面の状況により、接合面における所定の表面層の存在又は消滅、微細表面形状などの表面特性が変化しうる。したがって、一の接触工程は、次の接触工程の臨界圧力に影響を及ぼしうる。
【0052】
たとえば、接合面が所定の表面層で覆われている場合に、接触工程により、当該表面層が部分的に破壊することで、表面特性が変化することがあり得る。
【0053】
その一例として、金属又はシリコンなどの材料からなる接合面が、親水化処理を経て金属の表面が水酸基(OH基)で終端化されて形成されている場合に、接触により、当該水酸基の層が一部破壊され、金属の新生表面同士が接触し、局部的に強固な接合界面を形成することが考えられる。
【0054】
また他の例として、接触工程前の接合面上に酸化膜層が形成されている場合に、接触により、当該酸化膜層が一部破壊され、同様に、新生表面同士が接触し、局部的に強固な接合界面を形成することが考えられる。あるいは、接触工程前の接合面上に水酸基(OH基)が形成されその上に水分子が存在する場合に、接触により、水分子を追いやりOH基同士で接触する、あるいはOH基層を突き抜けて、新生表面同士が接触して、局部的に強固な接合界面を形成することも考えられる。
【0055】
上記例では、接合強度を所望の特性としたが、これに限られない。たとえば、接合強度以外の機械的特性でもよく、あるいは電気的又は化学的特性でもよい。
【0056】
「臨界圧力」については、以下の実施例において具体例を用いて例示的に説明する。
【0057】
工程S130では、上記工程S110後に接触状態(第1接触状態)にある接合面の相対的な位置関係又は両接合面の相対位置を測定する。この測定に基づいて、接触にある接合面が所望の位置関係にあるか否かを判断するようにしてもよい。接触にある接合面が所望の位置関係にない場合には、測定で求められた接合面の相対的な位置関係の、所望の相対的な位置関係からのずれ量を測定してもよい。
【0058】
相対位置は、たとえば、両基板の対応する位置にマークを附し、両マークの位置関係を測定することで測定することができる。たとえば、接合面上又は接合面近傍の基板の表面上にマークを附すと、接合面同士が接触しているときには、両マークは接合面に垂直方向に最も接近している。このような場合には、接合面の相対位置をより直接的かつ正確に測定することができる。したがって、対応する両基板のマークを光学的に同時に又は同一の画像内に撮像して、その所望の位置関係からのずれ量を精度よく測定することができる。以下で詳しく説明する。
【0059】
工程S120で接触圧力下にある状態で、接合面の相対位置を測定することがより好ましい。接触かつ圧力が掛かっている状態では、接合面の相対位置が、第2接触状態又は最終的な接合状態に近づく。たとえば、接合面が比較的大きな領域を有する場合、又は一基板上に複数の接合面が設けられている場合、接合面上の位置又は接合面の基板上の位置によっては、接合面の近接距離が異なる場合がある。また、現実的に基板には、そりや接合面の高さのばらつきなどの理想的な形状からの変位が存在する。さらにまた、同様に、上記マークの附される位置によっては、接近距離がことなる場合がある。したがって、加圧により、基板上又は接合面上の接近距離のばらつきを低減させることができる。このため、加圧によりより正確で均一な接触状態を形成又は維持することができる。
【0060】
工程S140では、基板の補正移動量を決定する。工程S130で測定された相対位置から、所望の相対位置へと移動するための基板の補正移動量を求める。
【0061】
上記補正移動量は、測定された相対位置を始点、補正後に目的とする相対位置を終点として、その間を結ぶ基板の相対移動経路及び姿勢変更(以下、「移動経路」という。)を含むとして定義されてもよい。この移動経路は、工程S130で相対位置を測定された時点での相対位置から、所望の相対位置への最短直線経路又は最短姿勢変更動作でなくてもよい。
【0062】
たとえば、工程S130で測定が行われた相対位置から、一旦、接合面の接触状態を解除し、すなわち接合面を離間させ、接合面にほぼ平行方向に基板を相対的に移動させ、再び接合面同士を接触させるように、移動経路を形成してもよい。すなわち、以下の工程S150では、一旦接触していた接合面又は接触していた基板が離間して、補正移動量の移動後に、再び接触する。あるいは、工程S130で測定が行われた相対位置から、一旦、接合面の接触状態での加圧を除去又は減圧させ、接触状態を保ったままで、接合面にほぼ平行方向に基板を相対的に移動させ、再び加圧することで、移動経路を形成してもよい。上記の移動経路の形成は、例示であって、これに限定されない。
【0063】
補正移動量は、所定のパラメータの関数として決定されるようにしてもよい。測定された基板の相対位置が、当該関数が考慮する一パラメータであることが好ましい。上記関数のパラメータは、測定された基板の相対位置以外のパラメータを含んでいてもよい。上述のとおり、相対位置の補正のための基板の移動経路は、種々の形状をとり得るので、その際の基板の移動機構又は測定機構のくせや誤差などをパラメータとして考慮してもよい。
【0064】
工程S150では、工程S140で決定された補正移動量だけ基板を移動させる。あるいは、上記求められた移動経路に従って基板を移動させる。これにより、測定された位置ずれが補正され、又は最小化される。
【0065】
工程S160では、工程S150で基板を移動させた後に、両接合面を第2接触状態にする。工程S150での基板の移動に離間状態での移動経路が含まれている場合には、接合面を再び接触状態にする。また、工程S150において、基板又は接合面が離間せずに接触状態を保ちつつ、基板が移動する場合には、工程S150での移動が完了した時点で、第2接触状態が実現されていてもよい。また、基板の接合面を含む表面が樹脂など変形する材料で形成されている場合には、接触状態を保ちつつ、基板を離間方向に一旦移動させ、接合面に平行方向への基板を移動させ、再び基板を接近させる方向に移動させて、両接合面を第2接触状態にするようにしてもよい。
【0066】
第2接触状態にする又は第2接触状態を維持する工程S160は、接触する接合面に対して加圧、加熱、又はこれらの両方を行う工程を含んでもよい。工程S160は、例えば第1接触状態での圧力を超える圧力を加える、臨界圧力を超える圧力の印加を加える、基板に対する電圧を掛けることで圧力を加える又は所定の温度で加熱するなどの、接合面同士をより密着させる工程、あるいは最終的に所望される接合界面を形成する工程を含んでもよい。これにより、再び離間又は補正移動を行うことができなくなり、あるいは敢えて剥がすと再度接合ができなくなる場合などがありえる。
【0067】
すなわち、第1接触状態は、その後に補正移動が可能な接合面の接触状態であり、第2接触状態は、その後に補正移動が出来ず、又は補正移動をすると最終的に良好な接合界面を形成することができない接合面の接触状態であると定義することができる。
【0068】
<第1接触の繰り返し>
なお、
図2に示すように、本願発明は、工程S130の後に、測定された相対位置が所定の精度(許容誤差範囲)内であるか否かを判断する工程S135を有してもよい。工程S130で測定された相対位置が所定の許容誤差範囲内又は精度以内であれば、所望の位置決めが到達されたとして、工程S160に進み、工程S130で測定された相対位置が所定の精度以内でなければ、工程S140及びS150を行い、その後再びS120、及びS130を行い、再度、測定された測定位置が精度以内か否かを判断する(S135)ようにしてもよい。工程S135で測定された位置が所定の精度以内と判断されるまで、工程S140、S150、S120及びS130を繰り返すことが好ましい。これにより、精度の高い基板間の位置決めを行い、最終的に接合面又は基板間で高い位置決め精度を有する接合界面を形成することができる。
【0069】
工程S110の接触(第1接触)が複数回行われる場合には、各接触工程に応じた臨界圧力を定義してもよい。たとえば、接触により接合面の表面状態が変わりえる場合には、ある接触と次の接触において臨界圧力を変更する工程を設けることが有効である。
【0070】
なお、接触ごとにその接触後に表面状態を検査して、検査結果に応じて次の接触の臨界圧力を定義又は計算してもよい。
【0071】
<第2接触状態での加圧>
本願発明は、
図1又は
図2に示す工程S160で第2接触状態にある接合面に対して圧力を加える工程を有してもよい。
【0072】
第2接触状態で印加される圧力は、第1接触状態で印加された圧力より大きいことが好ましい。これにより、最終的な接触工程において接合面を一層密着させることができる。第2接触状態で印加される圧力は、臨界圧力以上の圧力又は臨界圧力を超える圧力でもよい。たとえば、
図2のように、第1接触状態で圧力を印加した状態を(S120)、相対位置を測定する工程(S130)で維持し、測定された相対位置が精度以内であると判断された後に(S135)、圧力を上げてもよい。
【0073】
第2接触状態で印加される圧力は、第1接触状態で印加される圧力と同じでもよい。たとえば、
図2のように、第1接触状態で圧力を印加した状態で(S120)、相対位置を測定し(S130)、測定された相対位置が精度以内であると判断されるまで(S135)、維持し続けてもよい。
【0074】
あるいは、測定された相対位置が精度以内であると判断されたら(S135)、減圧又は圧力の解除を行ってもよい。
【0075】
第2接触状態での加圧は、例えば、以下で説明する基板接合装置100のZ方向昇降移動機構406のような機構を用いて、機械的に基板に対して加えることができる。
【0076】
あるいは、第2接触状態での加圧は、基板に対して反対電荷を与えることで、この電荷による静電気の引力を用いて、電気的に基板に対して加えてもよい。
【0077】
第2接触状態での加圧の態様、方法、圧力等は、上記の例に限られず、種々の具体的な基板接合方法に応じて、適宜調節されてもよい。
【0078】
以下の実施形態及び実施例では、特に説明がない場合でも、矛盾のない限り、
図2の繰り返しを有する工程を含むこともできると理解すべきである。
【0079】
<第2接触状態での加熱>
本願発明は、
図1又は
図2に示す工程S160で第2接触状態にある接合面に対して熱を加える工程を有してもよい。
【0080】
加熱により、所望の特性を有する接合界面を形成させることができる。加熱により、最終的に所望の特性を有する接合界面を形成してもよい。加熱により、接合面近傍の原子の拡散を促進させることで、接合面の表面に存在する、最終的には不要な表面層を拡散させて除去し、新生表面が直接接触する接合界面を形成し、微視的な表面凹凸を減らして実質的な接合界面の面積を増大させることなどが可能になる。これにより、接合界面の機械的特性、電気特性、化学的特性など種々の特性を向上させることができる。
【0081】
加熱は、上記の加圧と同時に行うことができる。または、加熱時間と加圧時間とを一部又はすべてが重なるように、加熱と加圧とを行ってもよい。加熱と加圧とを同時に行うことにより、接合面近傍の原子の拡散を一層促進させて、得られる接合界面の特性を向上させ、また接合プロセスを一層効率化させることができる。
【0082】
たとえば、上記のように、第2接触状態で、基板に対して反対電荷を与えることで、この電荷による静電気の引力を用いて、電気的に基板に対して加圧しつつ、加熱するようにしてもよい。これにより、いわゆる陽極接合を行うことができる。
【0083】
加熱は、基板を支持する支持体(ステージ)から熱を伝導させることで行ってもよく、基板の雰囲気のガスを加熱することでガスから熱を伝導させることで行ってもよく、接合面を光などで照射することにより行ってもよい。
【0084】
<基板接合装置の構成、及び基板接合方法>
次に、上に説明した接合を行うための基板接合装置の一例を説明し、その後、当該基板接合装置を使って基板を接合する方法を説明する。
【0085】
図3は、本発明の一実施形態に係る基板接合装置100の内部の概略構造を示す正面図である。以下、全体の装置構成を説明する。なお、各図においては、便宜上、XYZ直交座標系を用いて方向等を示している。
【0086】
基板接合装置100は、チャンバ200と、被接合物である基板301,302を対向して支持し、両基板の相対的な位置決めをする基板支持手段400と、基板の相対的位置関係を測定する位置測定手段500と、対向して支持された基板301,302の表面に対して表面処理を行う表面処理手段600と、を有して構成されている。
【0087】
<チャンバ>
チャンバ200は、後述の基板支持手段400のステージ401,402と表面処理手段600とを有する。また、チャンバ200は、内部を真空引きするための真空引き手段として、真空ポンプ201を備える。当該真空ポンプ201は、排気管202と排気弁203とを介してチャンバ200内の気体を外部に排出するように構成されている。チャンバ200は、真空チャンバとしても機能しうる。(以下、「真空チャンバ」ともよぶ。)
【0088】
真空ポンプ201の吸引動作に応じて真空チャンバ200内の圧力が低減(減圧)されることによって、真空チャンバ200内の雰囲気は真空又は低圧状態にされる。また、排気弁203は、その開閉動作と排気流量の調整動作とによって、真空チャンバ200内の真空度を制御、調整することができる。
【0089】
真空ポンプ201は、真空チャンバ200内の気圧を1Pa(パスカル)以下にする能力を有する。真空ポンプ201は、以下で説明する表面処理手段600の表面活性化処理手段610としての粒子ビーム源が作動する前のバックグラウンド圧力を、1×10
−2Pa(パスカル)以下にする能力を有することが好ましい。真空ポンプ201は、粒子ビーム源610により1eVから2keVの運動エネルギーを有する粒子(エネルギー粒子)を放射する場合には、1×10
−5Pa(パスカル)以下にする能力を有することが好ましい。これにより、粒子ビーム源610による表面処理中の雰囲気に存在する不純物の量を低減させ、表面処理後に、新生表面の不要な酸化や新生表面への不純物の付着などを防ぐことができる。さらに、粒子ビーム源610は、比較的高い加速電圧を印加することができるので、比較的高い真空度では、高い運動エネルギーを粒子に付与することができる。したがって、効率良く表面層の除去及び新生表面のアモルファス化を行い、表面を活性化することができると考えられる。
【0090】
真空ポンプ201の作動により比較的高い真空に引くことで、粒子ビームの照射により基板表面の表面層から除去された物質が効率よく雰囲気(真空チャンバ200)外へ排気される。すなわち、露出された新生表面へ再び付着し汚染するような、望ましくない物質が雰囲気外へ効率よく排気される。
【0091】
<基板支持手段>
図3に示す基板支持手段400は、基板301,302を支持するステージ401,402と、それぞれのステージを移動させるステージ移動機構403,404と、Z軸方向に基板同士を加圧する際の圧力を測定する圧力センサ408,411と、基板を加熱する基板加熱手段420とを有して構成されている。
【0092】
基板301,302は、ステージ401,402の支持面に取り付けられる。ステージ401,402は、機械式チャック、静電チャックなどの保持機構を有し、これにより基板を支持面に固定して保持し、又は保持機構を開放することで基板を取り外すことができるように構成されている。
【0093】
図3において下側の第1ステージ401は、スライド式の第1ステージ移動機構403を有して構成され、これにより、第1ステージ401は、真空チャンバ200に対して又は上側の第2ステージ402に対してX方向に並進移動することができる。
【0094】
図3において上側の第2ステージ402は、アラインメントテーブルとも呼ばれるXY方向並進移動機構405を有し、これにより第2ステージ402は真空チャンバ200に対して又は下側の第1ステージ401に対して、XY方向に並進移動することができる。
【0095】
第2ステージ402は、アラインメントテーブル405に連結されたZ方向昇降移動機構406を有し、これにより第2ステージ402は、上下方向又はZ方向に移動し、両ステージ401,402間のZ方向の間隔を変え又は調節することができるように構成されている。また、両ステージ401,402は、保持する基板301,302の対向する接合面同士を接触させ、又は接触中に加圧することができる。
【0096】
Z方向昇降移動機構406には、そのZ軸に係る力を測定するZ軸圧力センサ408が配置され、これにより加圧下で接触している接合面に垂直方向に係る力を測定し、接合面に係る圧力を計算することができる。Z軸圧力センサ408には、例えばロードセルを用いてもよい。
【0097】
図3及び
図4に示すように、アラインメントテーブル405と第2ステージ402との間には、3つのステージ圧力センサ411(411a,411b,411c)と、各ステージ圧力センサ411においてZ軸方向にピエゾアクチュエータ412(412a,412b,412c)とが設けられている。各ステージ圧力センサ411とピエゾアクチュエータ412の組は、第2ステージ402の基板支持面上の非同一線上の異なる3つの位置に配置されている。より詳細には、3つのステージ圧力センサ411と、3つのピエゾアクチュエータ412とにより構成される各組は、略円柱状の第2ステージ402の略円形上面内の外周部付近において略等間隔で配置されている。また、3つの圧力検出センサ411は、対応する各ピエゾアクチュエータ412の上端面とアライメントテーブル405の下面とを接続している。これにより、ステージ圧力センサ411により基板の接合面に掛かる力又は圧力の分布を測定することができる。そして、ピエゾアクチュエータ412を互いに独立にZ方向に伸縮させることで上記力又は圧力の分布を微細又は正確に調節し、或いは基板の接合面に掛かる力又は圧力を、接合面に亘って均一又は所定の分布にするように制御することができる。
【0098】
第2ステージ402には、Z軸周り回転移動機構407が設けられ、第2ステージ402をZ軸周りに回転させることができる。回転移動機構407により、第2ステージ402を第1ステージ401に対してZ軸周りの回転位置θを制御して、両基板の回転方向の相対的位置を制御することができる。
【0099】
なお、
図3に示す実施例では、Z方向昇降移動機構406は、基板支持手段400に連結されて構成されているが、これに限られない。たとえば、真空チャンバ200内で基板同士を接触させ接合させるのではなく、表面処理を行った後に、真空チャンバ200以外のチャンバに移動して、基板同士を接触させ接合させる接合機構(図示せず)を配置してもよい。
【0100】
<基板加熱手段>
上述のとおり、
図3のステージ401,402は、それぞれ基板加熱手段420として、ヒータ421,422を内蔵している。ヒータ421,422は、例えば電熱ヒータでジュール熱を発するように構成される。ヒータ421,422は、ステージ401,402を介して熱を伝導させ、ステージ401,402に支持されている基板301,302を加熱する。ヒータ421,422が発する熱量を制御することで、基板301,302の温度や各基板の接合面の温度を調節し制御することができる。
【0101】
<位置測定手段>
図3に示す基板表面処理装置100は、基板301,302の相対的位置関係を測定するための位置測定手段500として、真空チャンバ200に設けられた窓503と、光源(図示せず)と、光源から発せられ両基板301,302のマークが設けられた部分(図示せず)を通過して上記窓503を通過して真空チャンバ200の外部に伝播する光と上記マークの影とを撮像する複数のカメラ501,502とを有して構成されている。
【0102】
図3に示される位置測定手段500は、Z方向に伝播する光をXY面方向に屈折させるミラー504,505を有し、カメラ501,502はY方向に屈折した光を撮像するように配置されている。この構成により、Z軸方向の装置の大きさを小さくすることができる。
【0103】
図3では、カメラ501,502は、それぞれ、同軸照明系を有している。光源は、第1ステージ401の上側に設けられてもよく、また、カメラ501,502側からその光軸を進むように光を発するように設けられてもよい。なお、カメラ501,502の各同軸照明系の光としては、基板301,302のマークが附された部分及び両ステージなどの光が通過すべき箇所を透過する波長領域(例えば基板がシリコンで出来ている場合には、赤外光)の光を用いる。
【0104】
<基板のアラインメント>
基板接合装置100は、上記位置測定手段500と、ステージの位置決めをする各移動機構403〜407と、これらに接続されたコンピュータ700とを用いて、水平方向(X及びY方向)並びにZ軸周りの回転方向(θ方向)について、基板301,302の各々の真空チャンバ200内の位置(絶対的位置)又は基板301,302間の相対的位置とを測定及び制御することができるように構成されている。
【0105】
基板301,302には、測定用の光が通過する箇所が規定されており、ここにマークが附されていて、通過光の一部を反射、遮断又は屈折させる。カメラ501,502が通過光を受光すると、明視野像である撮影画像内でマークは暗く現れる。あるいは、マークからの反射光を受光する場合には、マークは暗い画像内に明るく現れる。マークは、好ましくは、基板に複数個、例えば基板の対向する2つの角に設けられている。これにより、複数個のマークの位置から、基板301又は302の絶対的位置を特定することができる。
【0106】
好ましくは、基板301,302の対応する箇所、例えば接合時にZ方向に重なり合う位置に、対応するマークが附されている。基板301,302の両方のマークを同じ視野内で観測して、その相対的ずれ(Δx,Δy)を測定する。複数個所での相対的ずれ(Δx,Δy)を測定することで、基板301,302の相対的位置(ΔX,ΔY,Δθ)を計算することができる。
【0107】
後述するように、位置ずれ量ΔDの測定動作は、両基板301,302の非接触状態において実行されるとともに、両基板301,302の接触状態においても実行される。
【0108】
<マークを用いた基板の相対位置測定>
【0109】
図5及び
図6に示すように、両基板301,302には、それぞれ、位置合わせ用のマーク(以下、アライメントマークなどとも称する)MKが付されている。例えば、一方の基板301に2つのアライメントマークMK1a,MK1b(
図5)が設けられ、他方の基板302に2つのアライメントマークMK2a,MK2b(
図6)が設けられる。
【0110】
位置測定手段500は、両基板301,302が対向する状態において、カメラ501,502の各同軸照明系から出射された照明光の透過光及び反射光に関する撮影画像(画像データ)GAを用いて、両基板301,302の位置を認識することもできる。換言すれば、両基板301,302の位置合わせ動作(ファインアライメント動作)のための位置ずれ測定は、当該位置測定手段(カメラ等)501,502により、両基板301,302に付された2組のアライメントマーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)の位置を同時に認識することによって実行される。
【0111】
より詳細には、
図3に示すように、カメラ501,502における同軸照明系の光源(不図示)から水平方向に出射された光は、ミラー504,505で反射されて、その進行方向が変更され垂直方向上方に進行する。当該光は、さらに、窓503および両基板301,302の一部(あるいは全部)を透過した後に両基板301,302の各マーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)で反射され、当該反射光は逆向き(垂直方向下向き)に進行する。そして、再び、窓503を透過してミラー504,505で反射されて、その進行方向が水平方向に変更され、カメラ501,502内の撮像素子に到達する。位置測定手段500は、このようにして両基板301,302に関する光像として、マークMK1a,MK2aを含む画像GAaとマークMK1b,MK2bを含む画像GAbとを取得し(
図7)、当該画像GAa,GAbに基づいて両基板301,302に付された或る各組のマーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)の位置を認識する。当該マークの画像と相対位置に基づいて、計算機手段(図示せず)により当該1組のマーク(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)相互間の位置ずれ量(Δxa,Δya)を求めることができる(
図8)。
【0112】
図7は、マークの各組(MK1a,MK2a),(MK1b,MK2b)がほぼ所望の位置にある状態を示し、
図8は、1組のマーク(MK1a,MK2a)が所望の位置から互いにずれている状態を示している。
【0113】
図8に示すように、各画像GAa,GAb(
図8では画像GAaが示されている)について、基板301,302のマークの幾何学的関係に基づいて、各マークの組ごとに位置ずれ量(Δxa,Δya),(Δxb,Δyb)が求められる。
【0114】
基板301,302の相対位置を正確に測定するために、一旦基板と接近又は接触させてもよい。この場合、各ステージ401,402を移動させる際には、再度基板301,302を離間させるようにしてもよい。
【0115】
<補正移動量の算出及び移動動作>
この2組の位置ずれ量(Δxa,Δya),(Δxb,Δyb)に基づいて、X方向、Y方向およびθ方向における両基板301,302の所望の位置からの相対的ずれ量ΔD(詳細にはΔx,Δy,Δθ)を算出する。当該相対的ずれ量ΔDが、その後の補正移動による補正移動量に対応するものである。
【0116】
基板301,302間の相対的ずれ量(Δx,Δy,Δθ)に対応して、コンピュータ700は、基板を最終的に(−Δx,―Δy,―Δθ)だけ移動させるような補正移動の経路を計算し、当該補正経路に従って両基板301,302を移動させるように、各ステージ401,402の移動機構に指示を出す。
【0117】
補正移動は、相対的ずれ量ΔDがゼロ又は低減されるように、行われる。
図3に示す基板接合装置100の場合には、基板302を支持するサポート402が、基板301を支持するサポート401に対して、最終的に相対的ずれ量(−ΔD)だけ移動するように、ステージ機構404を2つの並進方向(X方向およびY方向)と回転方向(θ方向)とに駆動される。これにより、両基板301,302が相対的に移動され、上記の位置ずれ量ΔDが補正される。
【0118】
補正移動は、基板の接合面が離間した状態で行う場合と、接触した状態で行う場合とが考えられる。それぞれの、補正移動については、以下で説明する。
【0119】
このようにして、鉛直方向(Z方向)に垂直な平面(水平平面)内における位置ずれ量ΔD(詳細にはΔx,Δy,Δθ)が測定され、当該位置ずれ量ΔDを補正するアライメント動作(ファインアライメント動作)が実行される。
【0120】
相対的位置の測定及び位置決め動作は、複数回繰り返して行ってもよい。
【0121】
なお、ここでは、2つのカメラ501,502を用いて、2つの撮影画像GAa,GAbを並列的に(ほぼ同時に)撮影して取得する場合を例示するが、これに限定されない。たとえば、1つのカメラをX方向及び/又はY方向に移動することによって、各撮影画像GAa,GAbを逐次的に撮影して取得するようにしてもよい。また、各マークの組を同じ光軸上で同時に撮像したが、これに限られない。たとえば、基板が並進方向(X方向およびY方向)において別の位置にあるときに、それぞれの基板の位置に対して配置された2組(合計4個の)カメラを用いて行ってもよい。カメラの光軸の位置関係が分かっていてれば、それぞれのカメラで、対応するマーク(MK1a,MK2a)のそれぞれを、撮像した後に、これらを合成することで、基板を並進方向においてほぼ接合位置に移動させて位置決めを行うことができる(ラフアラインメント)。
【0122】
<補正移動経路>
上述のとおり、補正移動として、主に基板の接合面が離間した状態で行う場合(第1実施形態)と、接触した状態での移動を含む場合(第2実施形態)との各々の場合について、以下に説明する。
【0123】
<第1実施形態>
本実施形態による基板の接合方法は、
図1に示す工程S140の補正移動量だけ基板を移動させる工程が、接合面を離間させることを含む。
【0124】
本実施形態では、主に工程S140について説明し、他の工程については、上記説明の事項を含み、その他の説明の事項についても矛盾しない限り、本実施形態について適用される。
【0125】
本実施形態では、工程S140は、たとえば、接触状態にある基板を接合面に対して実質的に垂直方向(Z方向)に離間させ、離間された基板を接合面に対して平行方向(XY面内方向)に移動させ、基板の接合面を再び接近させて接触させることを含むようにしてもよい。当該再接触させることは、工程S160の接合面を第2接触状態にすることに含めて考えてもよい。
【0126】
基板を接合面に対して実質的に平行方向(XY面内方向)に移動させる際に、接合面が離間状態にあることで、せん断方向の力が接合面に負荷されることを回避し、接合面の特性変化を最小限に抑制することができる。
【0127】
しかし、離間動作を含む補正移動工程は、上記に限られない。たとえば、接合面の特性に応じて、接触状態での接合面に対して平行方向の移動が含まれていてもよい。また、上記説明では、離間動作と、平行方向移動動作と、接近動作とをこの順に行ったが、これらの動作の順番、回数、各動作での移動量又は移動経路を適宜組み合わせて、補正移動工程を構成してもよい。また、移動方向が、XY方向成分とZ方向成分とを含む、たとえば斜め方向の移動動作を含んでいてもよい。
【0128】
<接触離間の繰り返し動作>
上述のとおり、基板間の相対的位置間関係が判明した後に、一旦基板を離間させ、位置補正移動を行い、再び接触させることで、正確な位置決めを実現することができる。しかし、それでも十分な精度の位置決めを得られないことがある。このような場合には、位置ずれを測定し、その測定値が所定の誤差許容範囲(精度)以内になるまで、離間と接触動作を繰り返すことにより、位置決め精度を向上させることができる。以下、より具体的に説明する。
【0129】
図9から
図14では、接合面として複数のパッド311,金属バンプ312を有する、半導体基板(例えばシリコン基板、シリコンウエハ)301,302を用いた例を説明する。マークMKは、接合面(接合部)311,312の脇であって基板の接合時に向かい合う面上に付されている。しかし、この例は、接触離間の繰り返し動作を説明するための一例であり、本願発明又は本実施形態はこれに限定されない。
【0130】
図18は、接触離間を繰り返す基板接合方法の工程を示すフローチャートである。本フローチャートは、
図2のフローチャートに対して、工程S150が接合面を離間させる工程(S151)と接合面を平行移動させる(S152)工程とを有している点で主に相違する。以下、相違点について説明する。
【0131】
図9は、第1接触状態にもたらされる前に、接合面に対して垂直方向に離間し、接触していない状態にある基板301,302を示している。
図9では、両基板301,302が水平方向においてほぼ正しい位置関係を有している状態を示している。
【0132】
その後、工程S110において、Z方向昇降移動機構406を駆動することによって、ステージ402を下降させて、両基板301,302を接触させる(工程S110、
図10)。
図10は、両基板301,302が、水平方向において正しい位置関係を有する状態で、接触している様子を示している。なお、このとき、圧力検出センサ408の検出結果に基づいて、両基板301,302の接合面相互間の接触圧が所定値(たとえば0.1N/mm
2又は1MPa程度)になるように調整される。
【0133】
しかしながら、このような接触動作後においては、実際には、
図13に示すように両基板301,302は正しい位置関係(
図10)からずれていることが多い。このような接触に伴う位置ずれは、仮に両基板301,302が接触前に正しい位置関係を有していたとしても、両基板301,302が接触する際に物理的な衝撃力が作用することなどに起因して生じ得る。
【0134】
また、特に、このような位置ずれは、次のような要因によって招来されることがある。
具体的には、接触前の時点において、
図9のような理想状態(平行配置状態)とは異なる状態(傾斜状態)で両基板301,302が配置されることがある。より詳細には、
図11に示すように、ステージ401,402の両者の間の平行度が十分ではなく、両ステージ401,402(ひいては両基板301,302)が互いに対して若干傾いて配置されることがある。
【0135】
そして、このような場合には、
図12に示すように、基板302の下降に伴って、まず、所定方向における一端側(たとえば図の右側)において基板302が基板301に接触する。その後、当該接触部分での摺動動作を伴いながら基板302が基板301に対して水平方向(たとえば図の右側)に移動するとともに、基板302が他端側(たとえば図の左側)においても下降する。このようにして、両基板301,302が徐々に平行状態に近づくように相対的な姿勢が変更されて、当該両基板301,302の接触面積が徐々に増大していく。なお、両基板301,302の接触動作および摺動動作は、より詳細には、基板302の金属バンプ312が、当該金属バンプ312に対向する(基板301の)パッド311に接触しつつ移動することによって行われる。そして、このような動作の結果、
図13に示すように、両基板301,302が、水平方向における位置ずれを伴った状態で接触する。
【0136】
なお、ここでは、位置ずれの要因の一つとして、両基板301,302の傾斜配置を例示した。ただし、実際には、両基板301,302が傾斜していない場合にも種々の要因によって、上記のような位置ずれが生じ得る。
【0137】
上記のような接触後の位置ずれを解消することを企図して、この実施形態に係る接合装置1は、基板301,302が接触した状態において、両基板301,302の水平方向における位置ずれを測定する。そして、当該基板接合装置100は、当該位置ずれを補正して両基板301,302の位置合わせを行う。このような動作によれば、両基板301,302を水平方向において更に正確に位置決めした状態で、当該両基板301,302を接合することが可能である。
【0138】
具体的には、まず、工程S130において、第1接触状態において臨界圧力未満の圧力下(
図13)にある両基板301,302の撮影画像GAa,GAb(
図7)が取得される。そして、当該2つの撮影画像GAa,GAbに基づいて両基板301,302のX方向、Y方向およびθ方向の位置ずれ量(Δx,Δy,Δθ)がそれぞれ測定される。
【0139】
ここにおいて、両基板301,302の第1接触状態(工程S130)においては、被基板301の表面上の凸部であるパッド311と基板302の表面上の凸部である金属バンプ312とが接触している。一方、基板301の表面上の非凸部に設けられたマークMK1と基板302の表面上の非凸部に設けられたマークMK2とは、
図9(あるいは
図11)等に示すように、Z方向において離間して配置されている。
【0140】
そして、Z方向に離間した両マークMK1a,MK2aを同時に読み取った画像GAaに基づきベクトル相関法を用いてずれ量(Δxa,Δya)が算出される。(ベクトル相関法を用いた位置ずれ測定については後述する。)同様に、Z方向に離間した両マークMK1b,MK2bを同時に読み取った画像GAbに基づきベクトル相関法を用いてずれ量(Δxb,Δyb)が算出される。そして、ずれ量(Δxa,Δya),(Δxb,Δyb)に基づいて、両基板301,302の水平方向における位置ずれ量(Δx,Δy,Δθ)が測定される。
【0141】
その後、工程S135において、当該位置ずれ量が許容誤差範囲内に収まっていないと判定されると、工程S140に進む。
【0142】
なお、位置ずれ量が所定の許容誤差範囲内に収まっているか否かは、3つの位置ずれ量(Δx,Δy,Δθ)及び平行度の全てがそれぞれの許容誤差範囲に収まっている旨の条件を充足するか否かに基づいて判定されてもよい。
【0143】
また、位置ずれ量が所定の許容誤差範囲内に収まっているか否かは、3つの位置ずれ量(Δx,Δy,Δθ)及び平行度の内の全てについての位置ずれ測定と補正動作とを同時に行うのではなく、先ずいくつかのパラメータについて位置ずれ測定と補正動作とを行った後に、他のパラメータについて位置ずれ測定と補正動作とを行うようにしてもよい。たとえば、先ず、平行度が許容誤差範囲に収まっているか否かを判断し、補正動作を行うことを繰り返し、所定の平行度が得られたら、(Δx,Δy,Δθ)について、その値が許容誤差範囲に収まっているか否かを判断し、補正動作を行うことを繰り返すようにしてもよい。
【0144】
本願発明の位置ずれ測定及びその補正動作は、上記例に限られず、種々の位置ずれ量について、種々の順序で行うように構成することができる。
【0145】
工程S140では、接合面に垂直方向に基板を移動させて接合面を離間させる経路と、上記測定により求められた接合面にほぼ水平方向面内の位置ずれ量(Δx,Δy,Δθ)を補正するための基板の移動経路と、接合面に垂直方向に基板を移動させて接合面を再び接触させる経路とを含む、基板の補正移動量(移動経路)を決定する。
【0146】
工程S151では、両基板301,302をZ方向において相対的に離れる向きに移動させ、両基板301,302の接触状態を一旦解除する(
図14)。詳細には、基板302を支持するステージ402が上昇されることによって、両基板301,302の接触状態が解除される。
【0147】
そして、工程S152において、両基板301,302の非接触状態、すなわち両基板301,302が水平方向において自由に移動可能な状態で、両基板301,302が当該位置ずれ量(Δx,Δy,Δθ)を補正すべく相対的に移動され、位置合わせ動作(アライメント動作)が実行される(
図14)。具体的には、基板301を支持するステージ401がチャンバ200に対して固定された状態において、基板302を支持するステージ402が、位置ずれ量(Δx,Δy,Δθ)を解消するように、X方向、Y方向およびθ方向に移動する(
図14の左向き矢印参照)。
【0148】
その後、工程S110に戻り、接合装置100は、Z方向昇降駆動機構406を駆動して、ステージ402を下降させ、両基板301,302を再度接触させる。
【0149】
そして、第1接触状態での臨界圧力未満の圧力下で(工程S120)、両基板301,302の位置ずれ測定動作が再度実行され(工程S130)、測定された位置ずれが許容誤差範囲内であるか判断される工程(S135)に進む。
【0150】
上記のような動作(特に、接触状態における位置ずれ測定動作、および位置ずれを補正する補正動作)を、1回、あるいは所定周期(たとえば1秒)間隔等で複数回繰り返し実行することにより、両基板301,302相互間における接触動作自体に起因する位置ずれを低減することができる。したがって、両基板301,302は、接触後の最終状態においても、水平方向において非常に高い精度(たとえば許容誤差が0.2マイクロメートル以内)でアライメントされる(
図10)。
【0151】
そして、工程S135において、両基板301,302の位置ずれが許容誤差範囲内に収まっていると判定されると、工程S160に進む。
【0152】
工程S160においては、両基板301,302の接合面に対して加圧とともに加熱することで、両基板301,302間の最終的な接合界面を形成するようにしてもよい。具体的には、基板302の金属バンプ312が基板301のパッド311に接触した状態で、金属バンプ312が加熱溶融されパッド311に対して接合される。その後、適宜の冷却期間を経て金属バンプ312が固化した後に加圧状態が解除される。このようにして、両基板301,302が良好にアライメントされて最終的な接合が達成される。
【0153】
以上のように、この実施形態に係る動作によれば、第1接触状態という最終的な接合位置に比較的近い状態で、かつ所定の圧力下で位置ずれが測定され、当該圧力が離間圧力未満であるので接合面の特性を損なわずに位置決め精度が獲られるまで当該位置ずれを補正するアライメント動作が実行されるので、両基板301,302を非常に高精度にアライメントすることが可能である。この結果、両基板301,302等で構成されるデバイス(半導体デバイス)等が非常に精密に製造される。
【0154】
<ベクトル相関法によるマークのぼけ補正>
また、工程S130においては、上述したように、基板301に付されたアライメントマークMK1aと基板302に付されたアライメントマークMK2aとの双方を含む撮影画像GAaが取得される(
図5〜
図7参照)。同様に、基板301に付されたアライメントマークMK1bと基板302に付されたアライメントマークMK2bとの双方を含む撮影画像GAbが取得される。そして、撮影画像GAa,GAbに基づいて両基板301,302の位置ずれが測定される。
【0155】
ここで、位置測定用の撮影画像GAaは、基板301に付されたアライメントマークMK1aと基板302に付されたアライメントマークMK2aとが同時に読み取られて取得された画像である。同様に、位置測定用の撮影画像GAbは、基板301に付されたアライメントマークMK1bと基板302に付されたアライメントマークMK2bとが同時に読み取られて取得された画像である。
【0156】
仮に2つのアライメントマークを2つの異なる画像でそれぞれ別個に読み取る場合には、当該2つの画像の座標系相互間のマッチング誤差等に起因する相対的な位置誤差が、2つのアライメントマークの位置ずれ検出時に生じ得る。たとえば、基板301に付されたアライメントマークMK1aを画像GC(図示せず)で取得し、基板302に付されたアライメントマークMK2aを別の画像GD(図示せず)で読み取る場合には、画像GCにおける座標系と画像GDにおける座標系とのマッチング誤差等に起因して、2つのアライメントマークのMK1a,MK2aの相互間のずれ量に誤差が生じ得る。特に、2つの画像GC,GDが別個の時点で取得されるために、種々の振動等によって2つのアライメントマークのMK1a,MK2aの相対位置関係が正しく把握されず、誤差が生じることもある。
【0157】
一方、上記実施形態の態様によれば、撮影画像GAaは、両基板301,302に付されたアライメントマークMK1a,MK2aを同時に読み取って取得された画像である。したがって、当該画像GAaを用いることによれば、上記のような誤差の発生を防止できる。画像GAbに関しても同様である。
【0158】
<ベクトル相関法>
また、工程S151後に、両アライメントマークMK1a,MK2aをZ方向に離間させた状態で撮影画像GAaを取得して、位置ずれを測定してもよい。マークが離れた状態では、同一撮影画像内で両方のマークに対して焦点を合わせることはできないので、少なくとも一方のマークの輪郭(エッジ)がぼける。このような場合には、撮影画像GAa内の両アライメントマークMK1a,MK2aに対応する部分のエッジをベクトル相関法により検出することが有効である。
【0159】
図15は、ぼけの無い状態で取得されたマークMK1aの撮影画像(円形形状)を示す概念図であり、
図16は、ぼけを伴って取得されたマークMK1aの撮影画像(円形形状)を示す概念図である。本実施形態に係るベクトル相関法においては、エッジ図形の特徴量(たとえばエッジ部分での濃淡情報(濃淡の傾斜方向))がベクトル化された状態で取得される。そして、両マークMK1a,MK2aの画像に関するエッジ部分でのベクトルの「向き」の情報が主に用いられて比較動作が実行される。そのため、両マークMK1a,MK2aの画像を画素単位で比較する場合に比べて、画像のぼけ具合による影響が低減される。
【0160】
このように、ベクトル相関法を用いることによれば、画像のぼけ具合による影響を低減することが可能であり、アライメントマークの位置を精度良く検出することができる。なお、撮影画像GAbにおいても同様である。
【0161】
また、上記実施形態の撮像部(カメラ)501,502は、それぞれ、物体からの光の結像位置を調節する焦点位置調節機構を有している。焦点位置調節機構は、撮影レンズのレンズ位置を移動させ、所定の被写体距離に存在する物体からの光を撮像面に結像させることによって、当該物体の像を合焦状態で撮影させることができる。そして、撮影画像GAa,GAbは、それぞれ、たとえば次のような合焦状態で取得される。
【0162】
具体的には、撮影画像GAaは、アライメントマークMK1aのZ方向位置PZ1(PZ1a)とアライメントマークMK2aのZ方向位置PZ2(PZ2a)との間のZ方向位置MP(
図17)の仮想物体からの光が撮像部(カメラ)501の撮像面に結像する状態で、取得される。同様に、撮影画像GAbは、アライメントマークMK1bのZ方向位置PZ1(PZ1b)とアライメントマークMK2bのZ方向位置PZ2(PZ2b)との間のZ方向位置MPの仮想物体からの光が撮像部(カメラ)502の撮像面に結像する状態で、取得される。
【0163】
このように、両アライメントマークMK1a,MK2aの間(好ましくは中間(中央))に焦点を合わせることによれば、両アライメントマークMK1a,MK2aのぼけ具合のバランスを図り(一方のぼけ具合が非常に大きくなることを防止し)、高精度に位置ずれを検出することが可能である。
【0164】
また、本実施形態においては、表面活性化処理が施された両基板301,302(具体的には、パッド311および金属バンプ312)に対して、工程S120の接触動作が(多くの場合)複数回繰り返し実行される。この接触動作(加圧接触動作)によれば、接合界面における不要な再吸着物層が押し破られて除去され、接合界面におけるボイドが低減された良好な活性化接合が達成され得る。より詳細には、再吸着物層がこの接触動作に伴って押し破られて除去され、当該再吸着物層の下の新生面が露出することによって、良好な接合が実現される。
【0165】
一般的に、2つの接合表面はそれぞれ微視的には比較的大きな凹凸を有しており、比較的少数の点で接触している。仮に、1回の接触動作のみで再吸着物層を押し破ろうとすると、比較的少数の点(たとえば1点)で再吸着物層を潰すことになるため、比較的大きな圧力を要する。
【0166】
一方、本実施形態において、工程S120の接触動作が複数回繰り返し実行される場合には、両基板301,302の再接触動作(工程S120)に伴って多数の箇所で再吸着物層が押し破られて除去され、両者の接合表面相互間での接触点が増大し、両基板301,302が多数の点で接触する。たとえば、1回目の接触動作直後よりも2回目の接触動作直後の方が、両基板301,302は比較的多数の点で接触する。そのため、多数の点において新生面が露出して良好な接合が実現される。また、1回のみの接触動作が行われる場合に比べて、比較的小さな圧力(接触圧)でも良好な接合が可能になる。
【0167】
<平行度の調整>
なお、接触後の位置ずれ測定に応じて、平行度の調整動作を実行するようにしてもよい。
【0168】
上述したように、
図10のようにステージ401,402との両者の平行度が十分ではなく、当該両ステージ401,402が傾いて配置され、ひいては両基板301,302が傾斜して(非平行状態で)配置されることがある。そして、このような傾斜に起因して、接触状態におけるずれ等が大きくなることがある。
【0169】
たとえば、
図12に示す状態で接合面311,312同士が接触し、さらに接触させると接合面方向に基板が滑って動く(摺動する)。基板全面で両接合面が接触状態になった時点では、傾斜がなかった場合と比べて、接触開始前の傾斜に関連する接合面内方向の位置ずれが生じている。
【0170】
非接触状態における両基板の位置ずれと接触状態における両基板の位置ずれとに基づいて、あるいはその関連性に基づいて、両被接合物の接触直前における平行度を計測(推定)し、その計測結果(推定結果)に基づいて両基板の平行度を調節(調整)することが好ましい。
【0171】
上記3つのピエゾアクチュエータ412(412a,412b,412c)の変位を調節して、ステージ402の傾斜角度を変更することで、両基板301,302の非接触状態における平行度が調整される。
【0172】
離間(非接触)状態で基板の平行度を調節することで、非平行状態で接触を行った場合に接合面に掛かる望ましくない力の付加を防止できるので、接触後(再接触後)の位置ずれ量を特に低減することができる。
【0173】
なお、平行度調整動作は、1回のみ実行しても、数回繰り返して実行してもよい。数回繰り返すことにより、平行度に関する誤差を徐々に低減することが可能である。
【0174】
<補正移動量のパラメータ>
補正移動量又は移動経路は、測定された基板の相対位置を考慮して決定される。あるいは、補正移動量は測定された基板の相対位置、をパラメータとする関数として定義されてもよい。上記関数のパラメータは、測定された基板の相対位置以外のパラメータを含んでいてもよい。上述のとおり、相対位置の補正のための基板の移動経路は、種々の形状をとり得るので、その際の基板の移動機構又は測定機構のくせや誤差などをパラメータとして考慮してもよい。
【0175】
たとえば、接触状態にある基板301,302を離間させて再び接触させるために、ステージ401,402を、Z方向昇降駆動機構406のみを用いてZ方向に移動させて、XY方向並進移動機構405は全く駆動させない場合を考える(
図19)。Z方向昇降駆動機構406のみを用いているにも係らず、基板間の相対位置が、XY方向に、ある距離及び方向にずれている場合がる(
図19a)。このような上記移動機構の動作により生じる誤差(移動誤差)vが生じる原因として、種々の部品又は駆動機構の誤差やくせなどが挙げられる。
【0176】
最初の第1接触のときに基板の相対位置又は基板間の位置ずれΔX(ΔX,ΔY)が測定により求められた場合、移動誤差vを考慮しないで離間接触動作を行うと、ΔX分だけ補正移動を行ったにも係らず、移動誤差v(v
x,v
y)が再接触後に位置ずれとして現れる(
図19a)。このような場合は、予め所定の移動誤差vを考慮して、補正移動量を決定することが好ましい(
図19b)。
【0177】
すなわち、予め移動誤差vが分かっている場合、又は予測可能である場合には、補正移動量として、ΔX−vの移動をするように、移動機構(Z方向昇降駆動機構406及びXY方向並進移動機構405)に指令を出すことが好ましい。
【0178】
<表面処理手段>
基板接合装置100は、表面処理手段600を有して構成されてもよい。
図3に示す基板接合装置100の表面処理手段600は、表面活性化処理手段610と親水化処理手段620とを有して構成されている。以下、表面活性化処理手段610と親水化処理手段620について説明する。
【0179】
<表面活性化処理手段>
表面活性化処理手段として、たとえば、粒子ビーム源やプラズマ源を採用することができる。
【0180】
これにより、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させて、接合面を形成する物質を物理的に弾き飛ばす現象(スパッタリング現象)を生じさせることで、表面層を除去することができる。表面活性化処理には、表面層を除去して接合すべき物質の新生表面を露出させるのみならず、所定の運動エネルギーを有する粒子を衝突させることで、露出された新生表面近傍の結晶構造を乱し、アモルファス化する作用もあると考えられている。アモルファス化した新生表面は、原子レベルの表面積が増え、より高い表面エネルギーを有するので、その後の親水化処理において結合される、単位表面積当たりの水酸基(OH基)の数が増加すると考えられる。これに対し、従来のウェット処理による表面の不純物の除去工程後に化学的に親水化処理する場合には、所定の運動エネルギーを有する粒子の衝突に起因する新生表面の物理的変化がないので、本願発明の接合方法に係る表面活性化処理に続く親水化処理は、この点で従来の親水化処理とは根本的に異なると考えられる。また、結晶構造が乱れ、アモルファス化した新生表面近傍の領域にある原子は、本接合時の加熱処理の際に、比較的低い熱エネルギーで拡散しやすく、比較的低温での本接合プロセスを実現することができると考えられる。
【0181】
表面活性化処理に用いる粒子として、例えば、ネオン(Ne)、アルゴン(Ar)、クリプトン(Kr)、キセノン(Xe)などの希ガス又は不活性ガスを採用することができる。これらの希ガスは、比較的大きい質量を有しているので、効率的に、スパッタリング現象を生じさせることができ、新生表面の結晶構造を乱すことも可能になると考えられる。
【0182】
表面活性化処理に用いる粒子として、酸素のイオン、原子、分子などを採用することもできる。酸素イオン等を用いて表面活性化処理を行うことで、表面層を除去した後に新生表面上を酸化物の薄膜で覆うことが可能になる。新生表面上の酸化物の薄膜は、その後の親水化処理における、水酸(OH)基の結合又は水の付着の効率を高めると考えられる。また、新生表面上に形成された酸化物の薄膜は、本接合での加熱処理の際に、比較的容易に分解すると考えられる。
【0183】
表面活性化される接合面に衝突させる粒子の運動エネルギーは、1eVから2keVであることが好ましい。上記の運動エネルギーにより、効率的に表面層におけるスパッタリング現象が生じると考えられる。除去すべき表面層の厚さ、材質などの性質、新生表面の材質などに応じて、上記運動エネルギーの範囲から所望の運動エネルギーの値を設定することもできる。
【0184】
表面活性化される接合面に衝突させる粒子には、粒子を接合面に向けて加速することで所定の運動エネルギーを与えることができる。
【0185】
プラズマ発生装置を用いて、粒子に所定の運動エネルギーを与えることができる。基板の接合面に対して、交番電圧を印加することで、接合面の周りに粒子を含むプラズマを発生させ、プラズマ中の電離した粒子の陽イオンを、上記電圧により接合面に向けて加速させることで、所定の運動エネルギーを与える。プラズマは数パスカル(Pa)程度の低真空度の雰囲気で発生させることができるので、真空システムを簡易化でき、かつ真空引きなどの工程を短縮化することができる。
【0186】
プラズマ発生装置は、例えば、100Wで稼動して、アルゴン(Ar)のプラズマを発生させて、このプラズマを接合面に600秒ほど照射させるように使用されてもよい。
【0187】
接合面から離間された位置に配置された、中性原子ビーム源、イオンビーム源(イオンガン)などの粒子ビーム源を用いて、粒子に所定の運動エネルギーを与えることもできる。所定の運動エネルギーが付与された粒子は、粒子ビーム源から基板の接合面に向けて放射される。
【0188】
粒子ビーム源は、例えば1x10
−5Pa(パスカル)以下などの、比較的高い真空中で作動するので、表面活性化処理後に、新生表面の不要な酸化や新生表面への不純物の付着などを防ぐことができる。さらに、粒子ビーム源は、比較的高い加速電圧を印加することができるので、高い運動エネルギーを粒子に付与することができる。したがって、効率良く表面層の除去及び新生表面のアモルファス化を行うことができると考えられる。
【0189】
中性原子ビーム源としては、高速原子ビーム源(FAB、Fast Atom Beam)を用いることができる。高速原子ビーム源(FAB)は、典型的には、ガスのプラズマを発生させ、このプラズマに電界をかけて、プラズマから電離した粒子の陽イオンを摘出し電子雲の中を通過させて中性化する構成を有している。この場合、例えば、希ガスとしてアルゴン(Ar)の場合、高速原子ビーム源(FAB)への供給電力を、1.5kV(キロボルト)、15mA(ミリアンペア)に設定してもよく、あるいは0.1W(ワット)から500W(ワット)の間の値に設定してもよい。たとえば、高速原子ビーム源(FAB)を100W(ワット)から200W(ワット)で稼動してアルゴン(Ar)の高速原子ビームを2分ほど照射すると、接合面の上記酸化物、汚染物等(表面層)は除去され、新生表面を露出させることができる。
【0190】
イオンビーム源は、例えば110V、3Aで稼動して、アルゴン(Ar)を加速させ600秒ほど接合面に照射させるように使用されてもよい。
【0191】
本願発明において、表面活性化に用いられる粒子は、中性原子又はイオンでもよく、さらには、ラジカル種でもよく、またさらには、これらが混合した粒子群でもよい。
【0192】
各プラズマ又はビーム源の稼動条件、又は粒子の運動エネルギーに応じて、表面層の除去速度は変化しえる。そこで、表面活性化処理に必要な処理時間を調節する必要がある。たとえば、オージェ電子分光法(AES、Auger Electron Spectroscopy)やX線光電子分光法(XPS、X−ray Photo Electron Spectroscopy)などの表面分析法を用いて、表面層に含まれる酸素や炭素の存在が確認できなくなる時間又はそれより長い時間を、表面活性化処理の処理時間として採用してもよい。
【0193】
表面活性化処理において接合面をアモルファス化するためには、粒子の照射時間を、表面層を除去し新生表面を露出させるために必要な時間より、長く設定してもよい。長くする時間は、10秒から15分、あるいは、表面層を除去し新生表面を露出させるために必要な時間の5%以上に設定してもよい。表面活性化処理において接合面をアモルファス化するための時間は、接合面を形成する材料の種類、性質、及び所定の運動エネルギーを有する粒子の照射条件によって適宜設定してもよい。
【0194】
表面活性化処理において接合面をアモルファス化するためには、照射される粒子の運動エネルギーは、表面層を除去し新生表面を露出させるために必要な運動エネルギーより、10%以上高く設定されてもよい。表面活性化処理において接合面をアモルファス化するための粒子の運動エネルギーは、接合面を形成する材料の種類、性質、及び粒子の照射条件によって適宜設定してもよい。
【0195】
ここで、「アモルファス化した表面」又は「結晶構造が乱れた表面」とは、具体的に表面分析手法を用いた測定により存在が確認されたアモルファス層又は結晶構造が乱れた層を含むとともに、粒子の照射時間を比較的長く設定した場合、又は粒子の運動エネルギーを比較的高く設定した場合に想定される結晶表面の状態を表現する概念的な用語であって、具体的に表面分析手法を用いた測定によりアモルファス層又は結晶構造が乱れた表面の存在が確認されていない表面をも含むものである。また、「アモルファス化する」又は「結晶構造を乱す」とは、上記アモルファス化した表面又は結晶構造が乱された表面を形成するための動作を概念的に表現したものである。
【0196】
<親水化処理手段>
親水化処理は、上記表面活性化処理の後に行われることが好ましい。これにより、清浄又は活性化された接合面表面に水酸基(OH基)が結合されると考えられている。さらには、水酸基(OH基)が結合された接合面上に水分子が付着してもよい。
【0197】
親水化処理により、接合面に酸化物が形成されることもある。酸化物は、比較的薄い(例えば、数nm又は数原子層以下)ので、本接合の際の加熱処理において、接合面を形成する材料内に吸収され、又は水として接合界面から外側へ逃げるなどして、消滅あるいは減少すると考えられる。したがって、この場合、接合面間に形成された接合界面を介した導電性や機械的特性には実用上の問題が生じることはほぼないと考えられる。
【0198】
親水化処理は、表面活性化された接合面に水を供給することにより行われる。当該水の供給は、上記表面活性化された接合面の周りの雰囲気に、水(H
2O)を導入することで行うことができる。水は、気体状で(ガス状で、又は水蒸気として)導入されても、液体状(霧状)で導入されてもよい。さらに、水の付着の他の態様として、ラジカルやイオン化されたOHなどを付着させてもよい。しかし、水の導入方法はこれらに限定されない。
【0199】
表面活性化された接合面の周りの雰囲気の湿度を制御することで、親水化処理の工程を制御することができる。当該湿度は、相対湿度として計算しても、絶対湿度として計算してもよく、又は他の定義を採用してもよい。
【0200】
気体状の水は、たとえば液体の水の中に窒素(N
2)、アルゴン(Ar)、ヘリウム(He)、酸素(O
2)などのキャリアガスを通過させること(バブリング)で、気体状の水がキャリアガスに混合されて、表面活性化された接合面を有する基板が配置された空間又はチャンバ内に導入されることが好ましい。
【0201】
水の導入は、両基板の接合面の少なくとも一方又は両方の周りの雰囲気における相対湿度を10%から90%となるように制御することが好ましい。
【0202】
たとえば、窒素(N
2)又は酸素(O
2)をキャリアガスとして気体状の水を導入する場合、上記チャンバ内の全圧を9.0x10
4Pa(パスカル)、すなわち0.89atm(アトム)とし、チャンバ内での気体状の水の量を、容積絶対湿度で8.6g/m
3(グラム/立方メートル)又は18.5g/m
3(グラム/立方メートル)、23℃(摂氏23度)の相対湿度でそれぞれ43%又は91%となるように制御することができる。また例えば、銅(Cu)を、容積絶対湿度で、5g/m
3(グラム/立方メートル)から20g/m
3(グラム/立方メートル)の気体状の水を含む雰囲気に曝すと、2nm(ナノメートル)から14nm(ナノメートル)程度の酸化銅の層が形成されると想定される。
【0203】
また、チャンバ内の酸素(O
2)の雰囲気中濃度を10%としてもよい。
【0204】
親水化処理は、表面活性化処理された接合面を大気に曝すことなく、当該接合面に水を供給することが好ましい。例えば、表面活性化処理を行うチャンバと親水化処理を行うチャンバとを同一とするように構成されていてもよい。また、表面活性化処理を行うチャンバと親水化処理を行うチャンバとは、基板がそれらの間を大気に曝されることなく搬送されるように連結されて構成されていてもよい。これらの構成を採用して、表面活性化処理された接合面を大気に曝さないことで、接合面の望ましくない酸化や、接合面への不純物などの付着などを防ぐとともに、親水化処理をより容易に制御することができ、効率よく表面活性化処理の後に親水化処理を続けて実行することができる。
【0205】
また、親水化処理を行うために、所定の湿度を有するチャンバ外の大気を導入してもよい。大気をチャンバ内に導入する際には、望ましくない不純物の接合面への付着を防ぐために、当該大気が所定のフィルタを通過するように構成することが好ましい。所定の湿度を有するチャンバ外の大気を導入して親水化処理を行うことで、接合面の親水化処理を行う装置構成を簡略化することができる。
【0206】
また、水(H
2O)の分子やクラスターなどを加速して、接合面に向けて放射してもよい。水(H
2O)の加速に、上記表面活性化処理に用いる粒子ビーム源などを使用してもよい。この場合、上記バブリングなどで生成したキャリアガスと水(H
2O)との混合ガスを、上記粒子ビーム源に導入することにより、水の粒子ビームを発生させ、親水化処理すべき接合面に向けて照射することができる。また、親水化処理は、接合面の近傍の雰囲気中で、水分子をプラズマ化して、これを接合面に接触させることで行ってもよい。
【0207】
なお、粒子ビーム照射やプラズマへの露出などによる表面活性化処理の後に、親水化処理として、パーティクル(汚染粒子)などの除去をかねた水洗浄を行ってもよい。この水洗浄により、上記の親水化処理と同様の効果を得ることができる。
【0208】
なお、親水化処理として、同種又は異種の親水化処理を複数回行ってもよい。また、親水化処理の一環として、又は親水化処理の後に、接合面に強制的に水分子を付着させてもよい。これにより、接合面上の水分子の量を増やし又は制御することができる。さらには、これにより臨界圧力を調整することができる。
【0209】
表面活性化処理と親水化処理が施された接合面は、その後の基板の接触の際に水素結合の作用により互いに引き合い、比較的強い仮接合を形成する。さらに水素と酸素とを含む接合界面が形成されているので、本接合での加熱処理により水素と酸素が接合界面の外部に放出され、清浄な接合界面を形成することが可能になる。
【0210】
なお、上記表面処理は、少なくとも第2接触状態にする前に行うようにしてもよい。少なくとも第2接触状態にする前に所定の表面処理を行うことで、最終的に得られる接合界面において所望の特性を得ることができる。
【0211】
また、上記表面処理は、第1接触状態のための接触の前に行うようにしてもよい。第1接触状態にする前に接合面に対して表面処理を行うことで、第1接触状態での接合面の表面の特性を制御し、あるいは臨界圧力を制御することができる。
【0212】
<実施例1:シリコンウエハ接合>
第1実施形態の一実施例として、半導体基板の接合、特に産業用のシリコン(Si)基板のウエハ接合について説明する。本実施例では、Si基板の一つの面のほぼ全体が接合面であるとし、その接合面上に接合面の良好な接触を妨げないように位置測定用のマークを附した。
【0213】
一対のSi基板の各表面に対して、真空中で粒子ビームの照射を行うことで表面活性化処理を行い、新生表面を露出させ又は表面極近傍をアモルファス化し、この表面に対して親水化処理を行い、表面をOH基で終端化させ、さらに水分子を付着させた。
【0214】
これらの親水化処理されたSi基板同士を接触させると、水分子の層を介して、両接合面同士が接合する。この接合した状態は、通常のウエハのハンドリングにおいては、保たれ、基板が剥がれ又は滑ることはほぼない。
【0215】
しかし、産業用のSiウエハは、極めて平坦に形成されているものの、ある程度の表面粗さ又はウエハ全体の変形(例えば、うねり)などの非平坦性を有する。そのため、接触だけでは十分な基板接合面間の密着性が得られない場合がある。この場合には、ある程度の圧力を、接触した接合面に対して加えることが有効である。
【0216】
とはいえ、接触した接合面に、所定以上の圧力、すなわち所定の臨界圧力以上の圧力を加えると、水分子の層を押しのけて、OH基同士が直接接触にいたる箇所が多くなり、あるいはOH基も破壊されてシリコン同士が直接接触にいたる箇所も発生すると考えられる。OH基間の接合強度は、水分子の層を介した場合の接合強度と比べて高く、シリコン同士が直接接触に到った場合はシリコン原子間で共有結合が形成されて極めて高い接合強度になる。
【0217】
このため、又は他のメカニズムによって、再びシリコン基板を離間させることができなくなり、又は離間させることができ再び接触させることはできても、良好な接合を得ることができなくなる場合がある。これは、臨界圧力以上で接合面を押すと、シリコン表面のOH基層又はシリコン表面近傍にダメージが導入されるためだと考えられる。
【0218】
具体的には、一般的な4インチ(約100mm)の産業用シリコン基板及びシリコン基板を熱酸化させた基板を使用し、それぞれについて一対の基板を接合した。シリコン基板及び熱酸化基板(以下、いずれに対しても基板と呼ぶ。)のいずれの接合に対しても、同条件で以下の表面処理を行った。
【0219】
すなわち、基板を、まず100WのO
2プラズマに60秒間暴露し、次に大気に暴露し、湿度50%,温度25℃の環境のクリーンルーム雰囲気内で、20℃まで冷却することで接合面周りの雰囲気の湿度を80%にして、両基板を接触させ、第1接触状態として接触する接合面に対して1kNの力を加えた。その後、離間及び接触を行って、再接触後に、第2接触状態として接触する接合面に対して1.2kNの力を加えた。その後、接合している一対の基板を150℃で7時間加熱した。これにより得られた基板接合体に対して、ブレード挿入試験を行ったところ、基板の一部がバルク破壊を起こした。したがって、接合界面の接合強度は2.0J/mm
2以上であることが確認された。すなわち、上記親水化処理された基板を接触させ、1kNの力で押しつけ、離間させると、再度接触又は加圧しても、良好な接触及び良好な最終的な接合界面が得られることが分かった。
【0220】
仮接合の良否は、たとえば、接触状態にある一対の基板を赤外線カメラで撮影して、基板の密着性の悪い箇所が存在することで確認することができる。
【0221】
図24aは、ほぼ1kN下での第1接触状態と離間とを繰り返した後に、第1接触状態にある一対の基板の赤外線画像である。シリコン基板全体に亘って密着性の高い接合界面又は仮接合界面が形成されていることが確認された。基板中央部に見られる点は、接合面上にあったパーティクル(粒子)が接合界面に取り込まれたために発生した非接合領域であり、良好な接合界面の形成について、否定的な意味を持つものではない。
【0222】
また、第1接触状態において0.5kNで押圧した後でも、離間再接触を繰り返して行うことができた。この場合、再接触後の一対の基板の赤外線画像は、
図24aとほぼ変わらなかった。
【0223】
これに対し、
図24bは、ほぼ1.2kNで加圧接触した後に、一旦離間させて再度接触させた後の状態にある一対の基板の赤外線画像である。シリコン基板の広い領域に亘って、干渉縞が確認された。この干渉縞は、接合界面が離間していることを示している。干渉縞が現れた部位の外側、すなわち基板の円周に近い部分はさらに接合界面が離間している状態を表している。この後、加圧し更に加熱したとしても、最終的に良好な接合界面を形成することができなかった。これは、基板表面に形成されたOH基が臨界圧力を超える圧力によりOH基同士が結合し、無理やり引き剥がされたことにより、結合が破壊したことに起因すると考えられる。このように、臨界圧力を超える圧力で押圧した後に引き剥がした場合には、再び良好な接合を実現できないことが確認された。上記試験に基づいて、本実施例では、臨界圧力に相当する基板へ加える力は1kN程度であることが分かった。
【0224】
また、一対のシリコン(Si)基板に対して、親水化処理を行わずに、イオンボンバードメントにより新生面からなる結合手を露出させる表面活性化処理を行って接合試験を行った。表面活性化処理として、超高真空化でアルゴン(Ar)イオンビーム照射を行い、接触を行い、表面活性化処理後の一対のシリコン基板を、所定の圧力下で接合した。より具体的には、5×10
−5Paのバックグラウンドで、イオンガンを100V、3A、60秒間で作動させて、アルゴン(Ar)イオンを加速させてシリコン基板の接合面を照射した。これで、十分な表面活性化処理が行われている。そして、10
−5Pa程度の真空度で、数分間放置し、すなわちこの雰囲気に暴露させた後、両接合面を接触させて、接触する接合面に対して1kNの力を加えた。その後、離間及び1kN下の接触を行って、再接触後に、接触する接合面に対して1.2kNの力を加えた。これにより、十分な接合強度を有する接合界面を形成することができた。すなわち、第1接触状態に接合面に対して1kNの力を加えた場合、同様に離間及び接触を行って、最終的に十分な接合強度を有する接合界面を形成することが確認された。
【0225】
一方、同様の表面活性化処理後に、基板を接触させ、第1接触状態で1.2kNを加え、一旦離間させて、再接触させると、再接触時の基板の赤外線画像では、ほぼ
図24bと同様に干渉縞が確認された。これは、表面活性化処理後、臨界圧力以上の加圧を加えることで不純物が押しやられ新生面が現れて結合した後に、引き剥がされることで、原子レベルのバルク破壊が起き、接合面の表面粗さが所定の値より大きくなり、良好な接合が得られなかったものと考えられる。これに対し、第1接触状態において0.5kN又は1kNを加えて、一旦離間させて、再接触させると、再接触時の基板の赤外線画像は、ほぼ
図24aと同じであり、離間再接触を数回繰り返しても、
図24aとほぼ同じであった。
【0226】
したがって、上記試験した、表面活性化処理後に親水化処理されたシリコン基板及び熱酸化基板、及び親水化処理なく表面活性化処理を行ったシリコン基板のいずれに対しても、臨界圧力に該当する力は、1kN以上1.2kN未満の範囲にあると考えることができる。すなわち、臨界圧力は、4インチシリコン基板の接合面を直径10cmの円状の面とした場合、0.127MPa(1kNに対応)以上0.152MPa(1.2kNに対応)以下の範囲にある。本実施例の上記2つの試験のいずれにおいても、臨界圧力に該当する力を1kN、すなわち臨界圧力を0.127MPaと定義し、仮接合(第1接触状態での加圧)には、接合面に対して、上記臨界圧力1kN以下の力、すなわち0.127MPa以下の圧力を印加することができる。
【0227】
上記実施例の2つの場合で使用したシリコン基板は一般的に使用される接合面としては最も平坦度の高い、又は表面粗さの小さい接合面であり、表面状態も極めて清浄であるから、その他の接合面の場合は、臨界圧力はより大きくなると推測される。この意味で、通常想定される基板及び表面処理の範囲において、0.127MPaが最小の臨界圧力であると考えられる。
【0228】
上記実施例の2つの場合、いずれも、臨界圧力は、0.127MPa又は4インチウエハに対して1kNの力であったが、これを変えることもできる。
【0229】
親水化処理を行う場合には、OH基層上に存在する水分子の量又は水分子層の厚さを変えることで、臨界圧力を上記値から変えることもできる。一般的に、OH基層上に存在する水分子の量又は水分子層の厚さを増加させることで、臨界圧力を大きくし、減少させることで臨界圧力を小さくすることができる。
【0230】
親水化処理を行わずに表面活性化処理を行う場合には、表面活性化処理後の雰囲気への暴露量を変えることで、臨界圧力を変えることもできる。一般的に、暴露量すなわち雰囲気の圧力又は暴露時間、若しくはその両方を増加させることで、臨界圧力を大きくし、減少させることで臨界圧力を小さくすることができる。
【0231】
上記第1接触状態での加圧下で、基板間の相対位置又は所定の位置からのずれ量を測定し、離間と第1接触とを上記ずれ量が所定の許容範囲となるまで繰り返した。
【0232】
親水化処理され仮接合されている基板の離間は、たとえば、基板の横から接合面に平行方向に、ブレードを挿入し又は水ジェットを噴射することで行ってもよい。これにより、接合面の接合特性への離間動作の影響を最小限に抑制することができる。
【0233】
所定の誤差許容範囲内になったことが確認された後、第2接触状態として、基板間の仮接合状態を維持して、かつ加圧を解除した。次に、仮接合状態の1対の基板を、加熱した。この加熱は、アルゴン雰囲気中で200から300℃の温度で行い、これにより十分な接合界面強度が得られた。所定の加熱を行うことにより、シリコンのバルク破壊強度とほぼ同等の接合強度を得ることもできる。
【0234】
すなわち、本実施例において、上記第1接触状態での加圧下で、基板間の相対位置又は所定の位置からのずれ量を測定し、離間と第1接触とを繰り返すことで、極めて高い精度で位置決めされたシリコン基板のウエハ接合を実現することができた。
【0235】
<実施例2:金属接合>
本実施例では、
図9から
図14に示されるパッド311と金属バンプ312とを有する基板301,302との接合において、パッド311と金属バンプ312との間での接触接合を行うようにしてもよい。
【0236】
この場合、パッド311と金属バンプ312の一方又は両方の表面に対して、第1接触の前に、表面活性化処理と親水化処理とを行うようにしてもよい。表面活性化処理をして接合面を清浄にし、この接合面に対して親水化処理を行うことで、清浄、活性化された接合面を保護することができる。これにより、接合界面に汚染物質などの望ましくない物質が混入することを回避又は最小限に抑えるとともに、親水化処理された表面の比較的弱い接合強度を利用して、一旦接触しても再び離間させることが可能になる。親水化処理された表面に水分子が存在していることが更に好ましい。水分子の水素結合は、接触状態にある基板を互いに動かない程度に固定しつつ、更に弱い接合強度で基板を結び付けているので、より容易に基板を離間させることができる。これにより、離間接触を繰り返す場合でも、接合面を保護し続けることができる。親水化処理された表面に存在する水分子や水酸基(OH基)は、比較的低いサーマルバジェットでの熱処理により接合界面から消えて、清浄で強固な接合界面を形成することができる。
【0237】
あるいは、例えばパッド311や金属バンプ312などが銅(Cu)又は金(Au)若しくは比較的酸化しにくい金属で構成されている場合には、第1接触の前に、親水化処理を行わずに表面活性化処理を行ってもよい。表面活性化処理としては、イオンビーム源を用いて、イオンビームにより接合面を照射してもよく、プラズマ発生装置を用いてプラズマ中のイオンにより接合面を照射してもよい。多くの場合、これらの金属接合面の表面粗さはRa100nm程度であり、臨界圧力は、50から100MPa程度の圧力であること定義することができた。したがって、接触する接合面に対して、第1接触状態において10MPaの圧力を、第2接触状態において100MPaの圧力を加えることにより、最終的に良好な接合界面を得ることができた。
【0238】
パッド311及び金属バンプ312の臨界圧力は、表面活性化処理完了後に、周辺雰囲気への接合面の暴露量すなわち雰囲気の種類、気圧及び暴露時間に依存する。すなわち、臨界圧力は、表面活性化処理後に、残留雰囲気中に存在する分子やガスの接合面に付着する量により調節することができる。
【0239】
なお、本実施形態において、第2接触前に、接合面が離間している状態で、接合面に対して、表面活性化処理、親水化処理、又はその両方を行うようにしてもよい。
【0240】
<実施例3:複合材料を有する接合面の接合>
第1実施形態の一実施例として、接合される基板301,302の接合面311,312は、複数の材料で構成されていてもよい。本実施例では、一例として
図25を参照して、金属部MRと非金属部NRとを有して構成される接合面311,312を有する基板301,302を接合する場合について説明する。
【0241】
図25aに示すように、本実施例では、接合面311,312は、金属部MRと非金属部NRとを有して構成され、接合面311,312の接触においては、基板301,302間でそれぞれ対応する金属部MRと非金属NRとが実質的に接触するように構成されている。例えば、このような接合面311,312は、非金属部NR(金属部MR)内に形成された凹部に、金属部MR(非金属部NR)を蒸着などにより形成し、その後、複合材料の接合面311,312の表面に対して、CMPなどの研磨、あるいは研削などを行って、金属部MRの表面と非金属部NRの表面とが実質的に同一平面を構成するように形成することができる。これにより、他の基板において対応する金属部MRと非金属部NRと、良好に接触することができる。
【0242】
金属部MRは銅(Cu)により、非金属部NRは酸化ケイ素(SiO
2)又は樹脂で構成されていることが好ましい。
【0243】
この場合には、表面処理として、表面活性化処理と親水化処理とを行うことが好ましい。親水化処理された金属部MRの表面同士及び非金属部NR同士は、第1接触により臨界圧力以下の圧力を加えることで、比較的強く接合(仮接合)し、基板のハンドリングにおいて互いに滑ることなく接合状態を容易に維持することに役立ち、その一方で、その後に離間再接触を行っても、再接触時においても良好な接合界面を形成することができる。
【0244】
第1接触状態において、加える圧力が大きすぎると、金属部MR又は非金属部NRが強固に接続して、離間しても、良好な再接触を行うことができない、あるいは、離間再接触を行うことができても、最終的に良好な接合界面を形成することができない。このようにして、基板301,302の位置決め動作を行うために必要な、適切な第1接触状態と離間とを繰り返すことができる圧力の上方限界を、臨界圧力として定義することができる。
【0245】
臨界圧力は、例えば、10MPaより大きく100MPa以下の圧力、又は50MPa以上100MPa以下の圧力として、定義されてもよい。
【0246】
図25bに示すように、これらの接合面311,312を互いに接触させ、この第1接触状態において、それぞれの基板301,302に付されたマークMK1,MK2の位置ずれを画像処理により計算し、基板301,302の補正移動量を決定する。
【0247】
図25cに示すように、親水化処理された接合面311,312を、接合面311,312に垂直方向に離間させ、平行方向に補正移動させる。
【0248】
図25dに示すように、補正移動後に再び、接合面311,312を再接触させる。このとき、位置ずれを測定し、位置ずれが所定の許容誤差範囲内になければ、補正移動量の決定と、離間動作と補正移動とを再度行うようにしてもよい。位置ずれが所定の許容誤差範囲内であれば、第2接触状態にして、所定の加圧加熱を行い、本接合を行う。金属部MRが銅(Cu)であり、接触前に親水化処理されている場合には、加熱を150℃で行うことで、接合された金属部MR間で良好な導電性と、金属部MRと非金属部NRとを含む接合面311,312との全体で良好な機械的特性とを有する接合界面を形成することができる。
【0249】
このように、親水化処理された金属部MR又は非金属部NR上にはOH層とその上に水分子の層が形成されており、臨界圧力以下で接触と離間とを繰り返す限り、接触が水分子の層を介して行われると考えられる。つまり、微視的には、接合面311,312は、水分子の層を介して接触し、離間も水分子の層の中で離間されることになるので、再接触は水分子層を介して行われると考えられる。
【0250】
さらには、表面活性化処理により清浄化された金属部MR(銅)の表面は、OH基及び水分子で保護されており、清浄度を保つことができ、比較的低い温度又は比較的低いサーマルバジェットでOH基層及び水分子層を消滅させて、接合面の新生表面同士の良好な接合界面を形成することができる。
【0251】
<第2実施形態>
上記実施形態では、
図1又は
図2に示す工程S150の補正移動量だけ基板を移動させる工程が離間状態である場合について説明し、
図18の工程S151からS152のように、接合面が離間状態である場合について説明したが、本実施形態による基板の接合方法は、
図1又は
図2に示す工程S150の補正移動量だけ基板を移動させる工程が、接合面を接触状態に保ったままで行われることを含む。
【0252】
以下では、主に工程S140,S150について、
図3の基板接合装置100を用いて説明し、他の工程については、上記説明の事項を含み、その他の説明の事項についても矛盾しない限り、本実施形態について適用される。また、以下では、第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0253】
本実施形態の工程S150では、両基板301,302の接触状態(加圧接触状態)が維持されたまま当該両基板301,302の水平方向における位置合わせが実行される。具体的には、工程S140で検出された位置ずれ量(Δx,Δy,Δθ)を補正すべく、第2ステージ402が水平方向(詳細にはX方向、Y方向およびθ方向)に移動され、位置合わせ動作(アライメント動作)が実行される。これにより、位置ずれ量(Δx,Δy,Δθ)が補正される。
【0254】
当該位置ずれを補正するアライメント動作が両基板301,302の接触状態を維持したまま実行されるので、接触状態解除のための動作に要する時間を短縮することができる。また、両基板301,302の相互間の接触面積が小さい場合、接触抵抗が小さい場合など、両基板301,302が接触状態のまま動き易い場合等に特に有用である。
【0255】
たとえば、
図9から
図14に示す基板301,302を用いた場合、表面活性化処理が施された両基板301,302(例えば、パッド311および金属バンプ312)を、接触状態を維持したまま摺動させてもよい。このような摺動動作を1回以上(複数回)繰り返して実行することにより、接合界面における不要な再吸着物層がこの摺動動作に伴って押し破られて除去され、接合界面におけるボイドが低減された良好な活性化接合が達成され得る。より詳細には、再吸着物層がこの摺動動作に伴って押し破られて除去され、当該再吸着物層の下の新生面が露出することによって、良好な接合が実現される。
【0256】
一般的には、2つの接合表面はそれぞれ微視的には比較的大きな凹凸を有しており、比較的少数の点で接触している。仮に、摺動動作を伴わずに鉛直方向の圧力のみによって再吸着物層を押し破って除去しようとすると、比較的少数の点(たとえば1点)で再吸着物層を潰すことになるため比較的大きな圧力を要する。
【0257】
接触状態で、水平移動動作(加圧摺動動作)が繰り返し実行されることにより、両基板301,302の摺動動作に伴って多数の箇所で再吸着物層が押し破られて除去され、両者の接合表面相互間での接触点が増大し、両基板301,302が多数の点で接触する。このような動作により、多数の点において新生面が露出して良好な接合が実現される。また、水平移動動作(加圧摺動動作)を伴わない場合に比べて、比較的小さな圧力(接触圧)でも良好な接合が可能になる。
【0258】
なお、接触状態での補正移動は、接合面に掛けられた圧力を低下させた状態で行うようにしてもよい。これにより、移動の際の摩擦力が減り、移動が容易に行えるとともに、補正精度が向上する。
【0259】
<実施例4:封止接合>
本実施例では、基板301,302等の正面断面図を示す
図20aから
図20cを参照しつつ、封止構造を形成するための基板接合について説明する。一方の基板302の表面には環状に封止部322が形成され、封止部322の表面には断面形状において突起する接合面312が形成されている。基板302の接合面312は、他の基板301の表面とエポキシ系樹脂などの接着剤330を介して接合される。両基板301,302が近接し押されるにしたがって、封止部に突起状に形成された接合面312は、液体又は流動性の接着剤330の中に進入して基板302の接合面311に近づいていく(
図20b)。十分に近づくと、基板301,302と環状の封止部322とに囲まれた空間がその外部に対して封止される。
図20b及び
図20cは、
図20aの接合面近傍領域Aの拡大図で、それぞれ第1接触状態と第2接触状態に対応している。
【0260】
図20a及び
図20bに示すように、環状の封止部に対応する基板301上の箇所に、流動性の接着剤が塗布されている。接着剤は、通常、多数のバブル(気泡)335を含んでいる。
図20bは、基板302の接合面312が基板301上の接着剤330に、臨界圧力(後述)未満の圧力で押し込まれている状態(第1接触状態)での接合部位を模式的に示す拡大断面図である。この状態においては、基板302の接合面312と基板302の接合面312との間の接着剤330中に、バブル335が存在している。さらに、この状態においては、基板301,302は、互いに接合面311に平行方向(XY方向)に補正移動することができる。すなわち、この接合面312が液体に漬かった状態(液浸状態)で、マークMKを画像認識することにより、基板301,302の相対位置を測定し、補正移動をすることができる。
【0261】
図20cは、第2接触状態での接合部位を模式的に示す拡大断面図である。
図20cは、基板302の接合面312が基板301上の接着剤330に、臨界圧力(後述)以上の圧力で押し込まれている状態を示している。基板301,302が互いに押し付けられ、
図20bの状態から
図20cの状態になるに間に、バブル335は、接合面から横に動いていき、最終的に、基板301,302の接合面311,312間の接着剤330中にはバブル335がほぼ存在しなくなる。この状態で、所定の位置決め動作が完了し、基板301,302は、互いに接合面に平行方向(XY方向)に補正移動することができない。
【0262】
本実施例の場合、
図20cの状態をもたらすために接合面に加えられる圧力の最小値を臨界圧力と定義することができる。すなわち、基板301,302を互いに押さえつけて接合面間の接着剤330中にバブル335がなくなり、十分な強度で基板301,302が接合されている状態にするために必要な、接合面311,312に掛けられる最小圧力を臨界圧力と定義することができる。あるいは、
図20bの状態で補正移動を行うことができる圧力の最大値を臨界圧力と定義してもよい。
【0263】
通常の幅50μm、50mm四方の封止構造においては、
図20cの状態にするのに必要な力は20kNであった。そして、
図20bの第1接触状態で補正移動可能な圧力は18kNであった。この場合、臨界圧力に該当する力を18kNと定義してもよい。
【0264】
また、本実施例においては、両接合面を接着剤を介して接触させ(S110)、第1接触状態において臨界圧力未満の圧力を掛け(S120及び
図20b)、基板の相対位置を測定し(S130)、接着剤を介して両接合面が接触している状態(第1接触状態)を保ちつつ、基板301,302を補正移動させ(S150)、補正移動が完了したら、圧力をあげて、臨界圧力以上の圧力を両接合面に掛ける(S160)。補正移動後に基板の相対位置を再び測定し、相対位置が所定の許容誤差範囲内であることを判断するようにしてもよい。測定された相対位置が所定の許容誤差範囲内にあれば、圧力を上げる(
図20c)。測定された相対位置が所定の許容誤差範囲内になければ、再び補正移動させて、相対位置を測定することを、測定で求められた相対位置が所定の許容誤差範囲内に入るまで繰り返すようにしてもよい。
【0265】
本実施例に示す基板接合方法により、位置決め精度が高く、かつ封止性能の高い封止構造を形成することができる。
【0266】
<実施例5:樹脂の金型成形>
本実施例では、
図21aから
図21eを参照しつつ、プラスチックを金型で成型して微細構造を形成するための基板接合について説明する。
【0267】
図21aに示すように、基板301は平坦な表面を有し、この表面上に樹脂340が塗布されている。この樹脂(樹脂部)340は、流動性を有するが、所定の処理により硬化する。たとえば、当該樹脂は、UV硬化型樹脂、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂などであってもよい。一方、基板302は成形金型として機能し、所定の3次元形状352を有している。樹脂340は、基板301の接合面を形成していると考えてもよい。
【0268】
両基板301,302を接近させ(
図21a)、基板302を基板301上の樹脂340と接触させ(S110)臨界圧力未満の圧力で押圧する(工程S120、
図21b)。本実施例において、臨界圧力は、その圧力以上で押圧した場合、基板301,302との相対位置の補正がその後出来なくなる、又は出来たとしても所定の金型成形をすることが出来なくなる圧力と定義することができる。
【0269】
図21bに示す状態(液浸状態又は接触状態)で、マークMKの画像認識により基板間の位置ずれ(相対位置)を測定し(S130)、補正移動量を決定し(S140)ほぼ基板301,302の表面に平行方向(ZY方向)に基板301,302を相対的に補正移動させる(S150、
図21c)。補正移動と位置ずれ測定及び補正移動量の決定とは、
図2に示すように繰り返してもよい。
【0270】
位置ずれが十分に補正された場合には、圧力をあげて基板301,302を互いに押圧して(S160、
図21d)、樹脂を基板302の形状352で規定される所望の形状に成形することができる。この際の圧力は、
図21bの状態で掛けられた圧力よりも高く、臨界圧力以上であることが好ましい。これにより、所望の金型成形がなされる。
【0271】
たとえば、上記臨界圧力として、通常の樹脂を用いた場合、約4インチ(約100mm)の直径の基板に対して20kNの力に相当する圧力として定義することができた。
【0272】
金型成形を完了するためには、工程S160後に、樹脂340を所定の手法で硬化させ、金型である基板302を成形硬化された樹脂340から剥がす(
図21e)。これにより、樹脂を基板301上に、所望の形状を正確な位置決めで形成することができる。
【0273】
<実施例6:金属バンプ接合>
本実施例では、
図9から
図14に示される、パッド311と金属バンプ312とを有する基板301,302との接合において、パッド311と金属バンプ312とを接触させ(S110)、第1接触状態とし(S120)、金属バンプ312を加熱により溶融させて、金属バンプ312が加熱溶融状態にあるときに、両基板301,302の位置ずれを測定し(S130)、当該位置ずれの補正量を決定し(S140)、補正移動して両基板301,302の位置合わせを行い(S150)、工程S160として、第2接触状態において、当該位置合わせ後において金属バンプ312を冷却して固化させる。すなわち、本実施例では、金属バンプ311が溶融状態(接触状態)にあるときに、アライメント動作を実行する。
【0274】
工程S120において、両基板301,302のバンプ311と金属バンプ312とが固相状態で接触状態にされ、加圧処理が開始される(時刻T1)とともに、加熱処理が開始される。金属バンプ312が溶融するまで、すなわち、固相状態にあるときは、印加する圧力は、パッド311や金属バンプ312などが機械的変形をしない程度の圧力として定義することができる。
【0275】
加熱により、金属バンプ312は、その融点(溶融温度)よりも高い温度に達する(昇温段階)。その後、温度維持段階(定温段階)として、上記温度が維持される。所定の位置決めがされたことが確認されると、冷却される。冷却段階においては、ステージ402などに内蔵された空冷式の冷却装置(冷却部)等によって金属バンプ402が室温付近にまで冷却される。位置ずれ測定(相対位置測定)は、加熱の開始から所定の時間経過時に開始することが好ましい。
【0276】
なお、定温段階において、位置ずれ測定動作および再アライメント処理を実行してもよい。そして、当該定温段階において、位置ずれ量が許容誤差範囲内になったことが確認されると、補正移動を停止し、相対位置を固定して、直ちに冷却処理が実行される。
【0277】
位置ずれ(相対位置)の測定と補正移動は、金属バンプ312の溶融状態又は定温段階で、繰り返すことが好ましい。そして、位置ずれ量が許容誤差範囲内に収まるまで繰り返される。許容誤差範囲は、たとえば、X方向位置に関して、−0.2マイクロメートル以上且つ+0.2マイクロメートル以下、又は−0.3マイクロメートル以上且つ+0.3マイクロメートル以下として定められてもよい。Y方向位置およびθ方向位置についても、同様に、許容誤差範囲が定められてもよい。
【0278】
金属バンプ312の溶融状態又は定温段階においては、臨界圧力を、固相状態での臨界圧力と異なる値に定義してもよい。金属バンプ312が溶融状態にある場合には、所定の圧力を超えると、必要以上の変形が起こり、位置ずれ測定や補正移動に支障をきたすことがある。このような問題を避けるために、金属バンプ312が溶融状態でも十分に位置ずれ測定や補正移動できる範囲を臨界圧力未満の圧力範囲として定義することができる。この臨界圧力は、金属バンプ312の寸法、基板に対する大きさ、材質の融点などに応じて決定することができる。
【0279】
金属バンプ312が溶融状態で、位置ずれ測定動作と、接触状態を維持したままでの位置ずれ補正動作とが繰り返し実行することが好ましい。より詳細には、たとえば数百ms(ミリ秒)ごとにこれらの動作が繰り返し実行することができる。
【0280】
そして、相対位置(位置ずれ)が所定の許容誤差範囲内になったと判定されると、ステージ402に内蔵された冷却部により冷却処理が実行され、金属バンプ312が冷却され固化する。そして、所定の冷却期間の経過後に、両基板301,302の加圧状態が解除される。このような動作により、両基板301,302が非常に高精度にアライメントされて接合される。
【0281】
また、当該位置ずれを補正するアライメント動作が両基板301,302の接触状態維持したまま実行されるので、接触解除のための動作に要する時間を短縮することができる。
【0282】
また特に、金属バンプ312と対向パッド311との接触を伴うアライメント動作においては、一般的には、金属バンプ312と対向パッド311との接触時の衝撃力等に起因する位置ずれが生じ得る。また、金属バンプ312が加熱され溶融される際(特に昇温段階)にも、金属バンプ312が固相から液相に変化することに伴う位置ずれが生じ得る。
【0283】
これに対して、本実施例に示す基板接合方法によれば、金属バンプ312と対向パッド311との接触後において、実際の位置ずれが測定され、当該位置ずれを補正するアライメント動作が実行されるので、金属バンプ312と対向パッド311との接触時の衝撃力等に起因する位置ずれが良好に補正される。
【0284】
さらにまた、金属バンプ312が加熱溶融された後に、実際の位置ずれが測定されるとともに当該位置ずれを補正するアライメント動作が実行されるので、金属バンプ312が固相から液相に変化することに伴う位置ずれをも良好に補正することができる。また、特に、上記実施形態においては、金属バンプ312の加熱開始から所定時間経過後(詳細には昇温段階終了後)に位置ずれが測定されているので、溶融開始直後からの初期段階(昇温段階)において顕著に現れる位置ずれを、良好に補正することが可能である。
【0285】
パッド311と金属バンプ312の一方又は両方は、Sn−Agなどのはんだ材料、又は銅(Cu)、金(Au)若しくはこれらの合金で形成されてもよい。
【0286】
本願発明は、パッド311と金属バンプ312の一方又は両方の表面に対して、第1接触の前に、表面活性化処理を行い、活性化状態のまま第1接触を行うようにしてもよい。これにより、接合界面に汚染物質などの望ましくない物質が混入することを回避又は最小限に抑えることができる。
【0287】
なお、金属バンプ312等が溶融している間に、平行度調整動作等を実行するようにしてもよい。これにより、位置決め精度をより高めることができる。あるいは、加熱処理を開始する前に、平行度調整動作等を実行するようにしてもよい。
【0288】
なお、上記実施例では、離間せずに接触状態で基板を補正移動させる際に、両基板は、相対的にZ方向に動かずXY方向に補正移動されたが、これに限られない。たとえば、実施例5における樹脂が流動性を有している場合や、実施例6における溶融した金属が流動性を有している場合などには、特に基板を相対的に互いに離れる方向に移動させても、所定の移動量を超えなければ、基板間の接触状態は維持される。したがって、接触状態を保ちつつ、一旦基板を離れる方向に移動させてから、XY方向に移動させ、あるいは、補正移動の動作にZ方向の移動成分を含めるようにしてもよい。
【0289】
<その他の変形例>
以上、この発明の実施の形態について説明したが、この発明は上記説明した内容のものに限定されるものではない。
【0290】
たとえば、上記各実施形態及び各実施例においては、ファインアライメント用の撮影部として2台のカメラ501,502が固定配置される場合を例示したがこれに限定されず、1台のカメラが移動して2箇所のアライメントマーク付近の画像をそれぞれ撮影するようにしてもよい。
【0291】
また、上記各実施形態及び各実施例においては、ステージ401がX方向に移動される場合を例示したが、これに限定されない。たとえば、ステージ401は固定されるようにしてもよい。
【0292】
また、上記各実施形態及び各実施例においては、ステージ402がX方向、Y方向、Z方向、θ方向に移動されることによって、ステージ401,402がこれらの方向に相対的に移動される場合を例示したが、これに限定されない。たとえば、逆に、ステージ402が固定され、且つ、ステージ401がX方向、Y方向、Z方向、θ方向に移動されることによって、ステージ401,402がこれらの方向に相対的に移動されるようにしてもよい。
【0293】
上記各実施形態及び各実施例においては、所定の形状又は材料の基板301,302や接合面311,312を用いて説明したが、これに限られない。
【0294】
たとえば、
図22に示すように、各半導体ウエハ301,302の接合面上に金(Au)などの金属製薄膜351,352がそれぞれ形成された半導体ウエハ301,302を相互に接合する場合に適用してもよい。
【0295】
あるいは、
図23に示すように、半導体ウエハ301の接合面311上に、部分的に樹脂層を設けておき、半導体ウエハ302と半導体ウエハ301上の樹脂層360とを接合してもよい。樹脂層としては、たとえば熱硬化性樹脂あるいは光硬化性樹脂を用いることができる。より詳細には、樹脂層部分において両半導体ウエハ301,302が接触した状態において、水平方向における位置ずれを測定する。そして、水平方向における位置ずれを補正して両半導体ウエハ301,302を相互に接合した後に、樹脂層360を硬化させるようにしてもよい。これにより、樹脂層360を水平方向において精密に位置決めし、樹脂封止等を行うことができる。なお、水平方向における位置ずれの補正動作は、半導体ウエハ312と流動性を有する樹脂層360との接触状態を維持しつつ行われることが好ましい。また、樹脂層360は、両半導体ウエハ301,302の接合面の双方に設けられてもよい。さらに、このような樹脂層360は、両基板301,302のうちの少なくとも一方の全面にわたって設けられてもよい。
【0296】
また、
図3に示す基板接合装置1では、その内部において表面活性化処理を行う場合を例示したが、これに限定されない。たとえば、基板接合装置100の外部において、表面活性化処理を施すようにしてもよい。
【0297】
以上、本願発明の幾つかの実施形態及び実施例について説明したが、これらの実施形態及び実施例は、本願発明を例示的に説明するものである。特許請求の範囲は、本願発明の技術的思想から逸脱することのない範囲で、実施の形態に対する多数の変形形態を包括するものである。したがって、本明細書に開示された実施形態及び実施例は、例示のために示されたものであり、本願発明の範囲を限定するものと考えるべきではない。また、各実施形態で説明した態様は、実施形態間で矛盾がない限り、他の実施形態に適用することができる。