(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面等を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、以下に示す各図には、説明と理解を容易にするために、XYZ直交座標系を設けた。この座標系では、撮影者が光軸OAを水平として横長の画像を撮影する場合のカメラの位置(以下、正位置という)において撮影者から見て左側に向かう方向をXプラス方向とする。また、正位置において上側に向かう方向をYプラス方向とする。さらに、正位置において被写体に向かう方向をZプラス方向とする。
【0010】
図1は、本発明の一実施形態が適用されるレンズ鏡筒20の外観斜視図である。
レンズ鏡筒20は、いわゆる交換レンズであって、その基端部に備えるレンズマウントLMが、カメラボディのボディマウントと係合することで、カメラボディに着脱可能に装着される。
【0011】
レンズ鏡筒20は、詳細な説明は省略するが、外筒(被装着部材)21の内部に、AFレンズ群およびブレ補正レンズ群を含む複数のレンズ群によって構成された結像光学系を備えている。
外筒21の基端部近傍の外周面には、オートフォーカスのON/OFFを切替るAFスイッチ30Aと、ブレ補正のON/OFFを切替るブレ補正スイッチ30Bと、が周方向に隣接して配置されている。
AFスイッチ30Aおよびブレ補正スイッチ30Bは、レンズ鏡筒20の光軸と平行方向(Z軸方向)にスライドさせてON/OFFを切替るように設けられている。
このAFスイッチ30Aおよびブレ補正スイッチ30Bに、本発明に係るスイッチ機構の一実施形態が適用されている。
【0012】
つぎに、前述した
図1に加えて
図2〜
図3を参照して、このスイッチ機構を説明する。
図2は、レンズ鏡筒20における外筒21のスイッチ機構の内周斜視図である。
図3は、
図2のA−A断面に相当するスイッチ機構の断面図である。
【0013】
図2および
図3に示すスイッチ機構は、前述したように、レンズ鏡筒における外筒21の周方向に所定間隔で並列に配置された、AFスイッチ30Aとブレ補正スイッチ30Bとを備えている。
外筒21におけるスイッチ配置部位の外面には、AFスイッチ30Aとブレ補正スイッチ30Bの後述する各スライド駒(被操作部)310が所定範囲で移動可能な装着凹部22がそれぞれ形成されている。各装着凹部22にはそれぞれ装着孔23が外筒21を貫通して形成されている。
【0014】
外筒21におけるスイッチ配置部位の内面には、装着孔23の周囲に後述する操作ブロック(連結操作部材)320が当接して摺動する摺動面24が形成され、二つの装着孔23の間には平面状の装着座25が形成されている。摺動面24と装着座25との間には、外周側に向けて抉られた形状の迂回凹部26が設けられている。
【0015】
さらに、装着孔23の装着座25とは反対側に、クリック部27が形成されている。
クリック部27は、AFスイッチ30Aおよびブレ補正スイッチ30Bの操作方向において、V字状の山と谷とが連続して形成されている。このクリック部27は、後述するクリックバネ323のクリック係合部323Aが、谷の部位と、山を乗り越えた部位と、に安定的に位置している。これによってクリックバネ323の位置が規定される。
【0016】
つぎに、AFスイッチ30Aとブレ補正スイッチ30Bとについて説明する。これらは全く同様に構成されて装着座25を挟んで点対称に配置されている。このため、特に必要がある場合を除いてスイッチ30として説明する。
スイッチ30は、スライド駒310と、操作ブロック320と、スイッチ本体330(スイッチング部材)と、電装品としてのフレキシブル基板(以下、FPCと称する)340と、により構成されている。
【0017】
スライド駒310は、板状の被操作部311の表面側に操作突起312を備える。そしてその裏面に軸状の固定部313を備えている。スライド駒310は、被操作部311の裏面が外筒21の装着凹部22に密着すると共に、固定部313が外筒21の装着孔23に嵌合している。
スライド駒310の固定部313の先端は、外筒21の内面と略面一となり、ここに、内面側から螺合した固定ネジ350によって操作ブロック320が固定されている。これにより、スライド駒310は、Z軸方向に所定距離移動可能として外筒21に装着されている。
【0018】
操作ブロック320は、スライド駒310の固定部313に固定される基部321に、連結部322と、クリックバネ(位置規定部材)323と、を備えている。
基部321は、所定厚さで矩形の板状であって、一方の側縁の下面(外筒21の内面と対向する側)に迂回凸部324が突出して形成されている。この迂回凸部324は、外筒21の迂回凹部26と所定の隙間を有して対応するようになっている。
連結部322は、基部321の迂回凸部324が形成された側の側面の長手方向略中央に、直方体状に突設されている。
【0019】
クリックバネ323は、基部321の迂回凸部324が形成された側とは逆側の側面に設けられている。クリックバネ323は、所定幅で平面形状はL字状を呈している。クリックバネ323の先端は、その延設方向と直交すると共に板面と直交する方向から見てV字状に屈曲形成されたクリック係合部323Aとなっている。
【0020】
ここで、操作ブロック320は、基部321(迂回凸部324および連結部322を含む)が不導電体の合成樹脂によって形成されると共に、クリックバネ323がバネ性を有する金属板によって形成され、両者はインサート成形によって一体に形成されている。
【0021】
上記のような操作ブロック320は、基部321の下面においてスライド駒310の固定部313の先端に固定ネジ350によって固定されている。
基部321に形成された迂回凸部324は、外筒21の迂回凹部26と対応して位置し、両者の間には所定の隙間がある。
連結部322は、操作ブロック320の移動に伴う移動領域が、後述するスイッチ本体330における操作アーム331と干渉するようになっている。
クリックバネ323は、外筒21のクリック部27に対応する。
【0022】
そして、操作ブロック320は、スライド駒310のスライド操作により、クリックバネ323のクリック係合部323Aが、外筒21のクリック部27の谷と対応する位置と、山を乗り越えた位置と、の間で移動可能となっている。
クリック係合部323Aが山を乗り越える際には、クリックバネ323が弾性変形することで移動に所定の抵抗を付与し、その前後の定位置においてクリック感を与えると共に、所定位置に規定する。
【0023】
スイッチ本体330は、外形が直方体状で側方に操作アーム331が突出している。本実施形態では、操作アーム331は突出側に揺動付勢されており、その突出位置と、付勢力に抗して引っ込む側に揺動操作された待避位置と、の2つのポジションでそれぞれ電気回路を形成する。
つまり、スイッチ本体330は、操作アーム331を揺動方向に一方的に操作力を作用させた状態と、操作力を解除した状態と、で回路が切り換わるようになっている。
【0024】
スイッチ本体330は、FPC340に予め実装され、外筒21の装着座25にFPC340を介して固定されている。
スイッチ本体330の位置は、操作アーム331が操作ブロック320における連結部322の移動領域と干渉し、操作ブロック320の移動によって切替え操作されるように設定されている。
FPC340は、外筒の内周に沿って周方向に配置され、レンズ鏡筒20における制御ユニットを構成する図示しないメイン基板に接続されている。
【0025】
上記のようなスイッチ機構の構成によれば、レンズ鏡筒20の外部から隙間を介してFPC34に至る静電気の侵入経路は、断面図である
図3中に矢印で示すようになる。
すなわち、静電気は、外筒21の装着凹部22とスライド駒310の被操作部311との隙間から、外筒21の装着孔23とスライド駒310の固定部313との隙間、および、外筒21の内面と操作ブロック320の外面との隙間を介してFPC34に至る。
【0026】
ここで、外筒21の内面と操作ブロック320の外面とは、迂回凹部26と迂回凸部324とによって遠回りに屈曲した経路を形成しており、これによって、レンズ鏡筒20の外部から侵入する静電気の最短経路長(沿面距離)が長くなっている。沿面距離が1mm長くなると、静電気の電圧は1〜3kv程度低下する。
つまり、迂回凹部26と迂回凸部324とが沿面距離を長くしており、これによって、静電気の侵入による電装品の誤動作や破壊を抑制できる。
【0027】
図4は、比較例としての従来のスイッチ機構の斜視図であって、(a)はフレキシブル基板が装着された状態を、(b)はフレキシブル基板が無い状態を、それぞれ示す。
図5は、そのスイッチ機構の断面図である。なお、図中上記実施形態と同機能の構成要素には同符号を付してある。
図4および
図5に示す比較例では、スライド駒310の内面側に、操作部材400が固定ネジ350で締着されている。また、AFスイッチ30Aとブレ補正スイッチ30Bとは、全く同様の構成であって、並列に配置されている。
【0028】
操作部材400は、スライド駒310の移動方向に対する左右にクリックバネ410と連結部420とを備えて、金属板によってプレス成形で一体に形成されている。
また、FPC340は、外筒21の内周に固定されたスイッチ本体330に、後付けで装着される。FPC340は、AFスイッチ30Aとブレ補正スイッチ30Bの両スイッチ本体330を渡すように内周側に配置されている。
【0029】
このような比較例構成では、レンズ鏡筒20の外部から隙間を介してFPC34に至る静電気の侵入経路は、断面図である
図5中に矢印で示すようになる。
すなわち、静電気は、外筒21の装着凹部22とスライド駒310の被操作部311との隙間から、外筒21の装着孔23とスライド駒310の固定部313との隙間を通ってそのすぐ内周側にある金属製の操作部材400に至り、その内周側に隣接して位置するFPC34に達する。
このため、レンズ鏡筒20の外部から侵入する静電気の最短経路長(沿面距離)は極めて短く、静電気の侵入による電装品の誤動作や破壊の虞がある。
これに対して、本実施形態の構成では、前述したように、沿面距離を長く設定することが可能となり、静電気の侵入による電装品の誤動作や破壊を抑制できる。
【0030】
以上、本実施形態によると、以下の効果を有する。
(1)本実施形態におけるスイッチ機構の構成によれば、操作ブロック320は基部321および連結部322が不導電体である合成樹脂により形成されており、レンズ鏡筒20の外部から隙間を介してFPC34に侵入する静電気の沿面距離は、外筒21の迂回凹部26と操作ブロック320の迂回凸部324とによって、長く設定されている。
これにより、静電気の侵入による電装品の誤動作や破壊を抑制できる。また、操作ブロック320は、基部321にクリックバネ323が一体に形成されており、部品点数の増加によってコストアップを招来することはない。
【0031】
(2)AFスイッチ30Aとブレ補正スイッチ30Bとは同様に構成されて、両者の間に配置されたスイッチ本体330を実装したFPC340を挟んで略点対称に配置されている。このため、合理的でコンパクトに構成でき、コストダウンも可能となる。
【0032】
(変形形態)
以上、説明した実施形態に限定されることなく、以下に示すような種々の変形や変更が可能であり、それらも本発明の範囲内である。
(1)本実施形態では、スイッチ機構部がレンズ鏡筒に設けられている形態について説明したがこれに限定されず、
図6に示すようにカメラ1に設けられたスイッチ機構部11に適用してもよい。カメラ1はカメラボディ10と、該カメラボディ10に対して着脱可能なレンズ鏡筒20とを備える。
【0033】
カメラボディ10は、詳細な説明は省略するが、オートフォーカス(AF)機能を備え、ボディマウントBMの側部に、そのモード(ワンショットモードやコンティニュアスモード)を切り替えるAFモード切替スイッチ11が配置されている。このモード切替スイッチ11として、本発明に係るスイッチ機構が適用可能である。なお、カメラボディ10は、撮像素子によって光像を電気信号に変換して記録するデジタルカメラ、またはフィルムを用いるいわゆる銀塩カメラ、のいずれであっても良い。また、レンズ鏡筒がカメラボディと一体に構成されたものであっても良い。
(2)本実施形態では、外筒21の迂回凹部26と、操作ブロック320の迂回凸部324とによって、レンズ鏡筒20の外部から侵入する静電気の最短経路長(沿面距離)を長く設定している。このような沿面距離を長くするための迂回凹部26および迂回凸部324の形状は、これに限らず適宜変更可能なものである。
【0034】
図7は、迂回凹部26および迂回凸部324の変形例を示す断面図である。なお、図中、上記実施形態と同機能の構成要素には同符号を付してある。
図7に示す構成では、迂回凸部324にスリット324Aが形成されると共に、迂回凹部26にはスリット324Aに入り込むリブ26Aが形成されており、いわゆるラビリンス構造を呈している。このような構成により、沿面距離をより一層長くすることができる。スリット324Aやリブ26Aは、一つに限らず複数設けても良い。
また、スペース的に許容されれば、外筒21を凸状とすると共に、操作ブロック320を凹状としても良い。
【0035】
(3)上記実施形態では、AFスイッチ30Aとブレ補正スイッチ30Bとは、機構的には全く同様に構成されて装着座25を挟んで略点対称に配置されている。しかし、両者の間の中心軸を挟む線対称な構成としても良い。その場合、両者の構成はわずかに異なることとなるが、同様な効果を得ることができる。
【0036】
なお、実施形態及び変形形態は、適宜組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。また、本発明は以上説明した実施形態によって限定されることはない。