特許第6232931号(P6232931)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6232931非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法。
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6232931
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法。
(51)【国際特許分類】
   H01M 4/525 20100101AFI20171113BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20171113BHJP
   H01M 4/36 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   H01M4/525
   H01M4/505
   H01M4/36 C
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2013-226089(P2013-226089)
(22)【出願日】2013年10月31日
(65)【公開番号】特開2015-88343(P2015-88343A)
(43)【公開日】2015年5月7日
【審査請求日】2016年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000226057
【氏名又は名称】日亜化学工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】原田 直弥
(72)【発明者】
【氏名】木村 昭博
【審査官】 正 知晃
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/108571(WO,A1)
【文献】 特開2010−040382(JP,A)
【文献】 特開平07−192720(JP,A)
【文献】 特開2003−017054(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/00−4/62
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
LiNi1−x(0.95≦a≦1.05、0≦x≦0.25、MはCo、Mn、Alから選択される少なくとも一種の元素)
で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含むコア粒子を洗浄し、洗浄粒子を得る洗浄工程と、
前記洗浄粒子と、酸素を含むホウ素化合物とを混合し、混合粒子を得る混合工程と、
前記混合粒子を100℃以上400℃以下の熱処理温度で熱処理する熱処理工程と、
を含む、正極活物質の製造方法。
【請求項2】
前記混合粒子における前記ホウ素化合物が、前記洗浄粒子に対してホウ素として0.4mol%以上1.5mol%以下である、請求項1に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、正極活物質の製造方法に関する。特にニッケル酸リチウム系のリチウム遷移金属複合酸化物を用いた非水電解液二次電池用正極活物質の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、VTR、携帯電話、ノートパソコン等の携帯機器の普及及び小型化が進み、その電源用にリチウムイオン二次電池等の非水電解液二次電池が用いられるようになってきている。更に、最近の環境問題への対応から、電気自動車等の動力用電池としても注目されている。
【0003】
リチウムイオン二次電池の正極活物質としては、層状構造のコバルト酸リチウムが代表的に実用化されているが、資源的に貴重なコバルトを用いているため、コスト面での不利がある。こういった事情に鑑み、遷移金属としてニッケルを用いた層状構造のニッケル酸リチウムが検討されている。、ニッケル酸リチウムはコバルト酸リチウムに比べて単位重量当たりの充放電容量が多いという利点を有するが、一方で合成がしにくく未反応原料が発生し易いという難点も有する。未反応原料が残留するニッケル酸リチウムを正極活物質として用いると、充電時に未反応原料が分解し、ガス発生の原因となる。ガス発生によって電池内部では圧力が高まるので、電池容器の形状が円筒形以外の場合、大抵はその圧力変化に耐え切れず電池容器の形状が変化する。例え圧力変化に耐えられる構造だとしても電池容器が破裂する危険を孕むので、何らかの対策が必要である。その他コバルト酸リチウムとは異なる問題を抱えている。
【0004】
ニッケル酸リチウム等の、ニッケルを遷移金属の主成分として用いた(所謂ニッケル酸リチウム系の)リチウム遷移金属複合酸化物において、目的に応じて純水等で洗浄する技術が存在する。
【0005】
特許文献1には、ニッケル酸リチウムを正極活物質として用いた二次電池において、正極中の不純物を低減し、放電容量を向上する目的で正極活物質を水洗又は酸洗する技術が開示されている。
【0006】
特許文献2には、ニッケルを必須とするリチウム遷移金属複合酸化物を特定の方法で水洗し、炭酸リチウム等ガス発生の元となる物質を除去する技術が開示されている。
【0007】
特許文献3には、正極スラリーのゲル化を抑制するために上澄み液のpH範囲を特定範囲に調整しながら正極活物質を純水で洗浄する技術が開示されている。
【0008】
また、特許文献4によると、無作為にリチウムニッケル複合酸化物を水洗すると、リチウムイオンの溶出や高温による正極活物質の構造変化を招くとされている。このため、特許文献4では高温時の熱安定性を向上させるために水洗時間を特定の条件で規定している。
【0009】
一方、種々の目的に応じて、ホウ酸等のホウ素化合物とリチウム遷移金属複合酸化物とを混合させる、あるいはリチウム遷移金属複合酸化物表面にホウ素化合物を存在させる技術も存在する。
【0010】
特許文献5には、マンガン酸リチウムを用いた正極において、酸化ホウ素、オルトホウ酸、メタホウ酸、四ホウ酸等電解液に溶解可能なホウ素化合物を含ませることでスピネル構造のマンガン酸リチウムとハロゲン化水素酸との反応を抑制し、サイクル特性を改善させる技術が開示されている。
【0011】
特許文献6には、リチウム遷移金属複合酸化物の表面に、ホウ素等コーティング元素の、ヒドロキシド、オキシヒドロキシド等を含むイオン伝導度に優れた表面処理層を形成して平均放電電位を高め、寿命特性を向上する技術が開示されている。具体的に開示されているコーティング手法は、溶媒に溶解したコーティング元素をリチウム遷移金属複合酸化物の表面に析出させ、溶媒を除去してなるものである。
【0012】
特許文献7には、リチウム遷移金属複合酸化物等を用いた電極中に、無機酸としてホウ酸等を含有させ、電極ペーストのゲル化を防止する技術が開示されている。具体的なリチウム遷移金属複合酸化物としてはニッケル酸リチウムが開示されている。
【0013】
特許文献8には、ニッケルまたはコバルトを必須としたリチウム遷移金属複合酸化物粒子の表面に、ホウ酸アンモニウム、ホウ酸リチウム等のホウ酸化合物等を被着させ、酸化性雰囲気下で加熱処理することで、二次電池の高容量化と、二次電池の充放電効率向上を図る技術が開示されている。具体的に開示されているリチウム遷移金属複合酸化物は、ニッケルの一部をコバルト及びアルミニウムで置換したニッケル酸リチウムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開平6−111820号公報
【特許文献2】特開2003−017054号公報
【特許文献3】特開2003−031222号公報
【特許文献4】特開2003−273108号公報
【特許文献5】特開2001−257003号公報
【特許文献6】特開2002−124262号公報
【特許文献7】特開平10−079244号公報
【特許文献8】特開2009−146739号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
特許文献1によれば水洗によって不純物を除去することで充放電容量が向上するとされているが、本発明者らの研究によれば、充放電容量はむしろ低下する傾向が確認された。また、サイクル特性が悪化する傾向も確認された。特許文献2にもあるように、ニッケル酸リチウム系のリチウム遷移金属複合酸化物を水洗することは、ガス発生の抑制に有効であるが、充放電容量及びサイクル特性と両立することができず、解決が求められていた。
【0016】
本発明はこれらの事情に鑑みてなされたものである。本発明の目的は、ニッケル酸リチウム系の正極活物質において、ガス発生を抑制し、且つ高い充放電容量と良好なサイクル特性を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために本発明者らは鋭意検討を重ね、本発明を完成するに至った。本発明者らはニッケル酸リチウム系のリチウム遷移金属複合酸化物を洗浄した後、特定のホウ素化合物と混合し、特定の熱処理温度で熱処理することでガス発生抑制、充放電容量及びサイクル特性の全てを満足させられることを見出した。
【0018】
本発明の正極活物質の製造方法は、一般式LiNi1−x(0.95≦a≦1.05、0≦x≦0.25、MはCo、Mn、Alから選択される少なくとも一種の元素)で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を含むコア粒子を洗浄し、洗浄粒子を得る洗浄工程と、前記洗浄粒子と、酸素を含むホウ素化合物とを混合し、混合粒子を得る混合工程と、前記混合粒子を100℃以上400℃以下の熱処理温度で熱処理する熱処理工程とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明の正極活物質の製造方法は上記の特徴を備えているため、ニッケル酸リチウム系のリチウム遷移金属複合酸化物を正極活物質として用いた非水電解液二次電池において、ガス発生を抑制し、且つ高い充放電容量と良好なサイクル特性とを実現することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の正極活物質の製造方法について、実施の形態及び実施例を用いて詳細に説明する。但し、本発明はこれら実施の形態及び実施例に限定されるものではない。
【0021】
本発明の製造方法は、洗浄工程、混合工程及び熱処理工程を含む。以下これらの工程を中心に説明する。
【0022】
[コア粒子]
コア粒子は、遷移金属にニッケルを必須として含むリチウム遷移金属複合酸化物(所謂ニッケル酸リチウム系)を主成分とした粒子を用いる。ニッケル酸リチウム系の充放電容量に関する長所を十分生かすため、遷移金属中におけるニッケルの比率は75mol%以上とする。ニッケルを置換する金属としてはコバルト、マンガン及びアルミニウムからなる少なくとも一種の元素が選択可能である。一方、リチウムの遷移金属に対する比は、1近辺とする。化学量論比から5%程度ならずれていても差し支えない。これらをまとめると、コア粒子の主成分は、一般式LiNi1−x(0.95≦a≦1.05、0≦x≦0.25、MはCo、Mn、Alから選択される少なくとも一種の元素)で表される。コア粒子ではそのままでは未反応原料等が存在してガス発生が生じるので、後述の洗浄工程を施す。なお、コア粒子自体は公知の手法を用いて製造すれば良い。
【0023】
[洗浄工程]
コア粒子を洗浄し、洗浄粒子を得る。洗浄に用いる液相は、未反応原料を除去することが出来ればその種類は特に問わない。通常は純水を用いれば十分である。洗浄工程の細かい条件は特に限定されない。この工程によって未反応原料等の主成分以外の成分がコア粒子から洗浄される。洗浄粒子中には不純物の類は存在しないか存在しても検出できない程度しか存在しない。しかし、洗浄粒子の表面近辺はリチウム欠損があり、リチウム欠損のある領域ではリチウムイオンの脱離挿入が阻害される。そのため、洗浄粒子を正極活物質として用いると充放電特性及びサイクル特性が悪化する。これらの事情を踏まえ、後述の工程を施す。
【0024】
[混合工程]
得られる洗浄粒子を酸素を含むホウ素化合物と混合し、混合粒子を得る。混合されるホウ素化合物は、洗浄粒子に対して少なすぎると効果が十分に発揮されず、多すぎると充放電容量が低下するので適宜調整する。好ましい範囲は、洗浄粒子に対してホウ素として0.4mol%以上1.5mol%以下である。混合粒子のままでは充放電特性及びサイクル特性の改善効果はまだ発揮されないので、以下の熱処理工程を施す。酸素を含むホウ素化合物としては、酸化ホウ素、ホウ素のオキソ酸及びホウ素のオキソ酸塩からなる群より選択される少なくとも一種が選択可能である。より具体的な例としては、四ホウ酸リチウム(Li)、五ホウ酸アンモニウム(NH)、オルトホウ酸(HBO;所謂普通のホウ酸)、メタホウ酸リチウム(LiBO)、酸化ホウ素(B)等が挙げられる。
【0025】
[熱処理工程]
得られる混合粒子に熱処理を施し、コア粒子にホウ素及び酸素を含む被覆層が形成された正極活物質を得る。被覆層は、混合工程で混合されるホウ素化合物の少なくとも一部と、コア粒子を構成する元素の一部とが反応した結果得られるものである。熱処理工程の有無、あるいは被覆層形成に用いられたプロセスの違いは、正極活物質表面近辺について、最表面から20nm程度までのX線蛍光分析(XPS)のスペクトルにに反映される。熱処理温度は、100℃より低いと被覆層が形成されず、400℃より高いとコア粒子からリチウムが粒子表面に溶出し、炭酸リチウム等のガス発生源に変化するので100℃以上400℃以下とする。
【0026】
以下、実施例を用いてより具体的に説明する。
【実施例1】
【0027】
公知の手法を用いて一般式LiNi0.829Co0.155Al0.016で表されるリチウム遷移金属複合酸化物を主成分とするコア粒子を得た。
【0028】
得られたコア粒子を洗浄容器に移し、質量比で10倍の純水を洗浄容器に加え、そのまま固相と液相の境界が明確になるまで静置した。静置後、液相の電気伝導度を測定し、デカンテーションを行った。液相の電気伝導度が0.5mS/cm以下になるまで純水投入、静置及びデカンテーションを繰り返した。最後のデカンテーション後、固相を脱水し、さらに120℃で10時間乾燥して洗浄粒子を得た。
【0029】
得られた洗浄粒子に対し、ホウ素として0.5mol%のホウ酸を添加し、撹拌機を用いて混合し、混合粒子を得た。得られた混合粒子を250℃で10時間熱処理を行い、目開き75μmの乾式篩を通し、目的の正極活物質を得た。
【実施例2】
【0030】
添加するホウ酸が洗浄粒子に対してホウ素として1.0mol%である以外実施例1と同様にし、目的の正極活物質を得た。
【実施例3】
【0031】
添加するホウ酸が洗浄粒子に対してホウ素として0.3mol%である以外実施例1と同様にし、目的の正極活物質を得た。
【実施例4】
【0032】
リチウム遷移金属複合酸化物の組成が一般式LiNi0.8Co0.1Mn0.1であるコア粒子を用いた以外実施例1と同様にし、目的の正極活物質を得た。
【0033】
[比較例1]
実施例1において、洗浄工程以降を省略し、目的の正極活物質を得た。
【0034】
[比較例2]
実施例1において、混合工程以降を省略し、目的の正極活物質を得た。
【0035】
[比較例3]
実施例1において、熱処理工程を省略し、目的の正極活物質を得た。
【0036】
[比較例4]
熱処理工程における熱処理温度を600℃とした以外実施例1と同様にし、目的の正極活物質を得た。
【0037】
[比較例5]
実施例4において、洗浄工程以降を省略し、目的の正極活物質を得た。
【0038】
[比較例6]
実施例4において、混合工程以降を省略し、目的の正極活物質を得た。
【0039】
[サイクル特性評価]
実施例1〜3及び比較例1〜6について、サイクル特性を以下のようにして評価する。
【0040】
[1.正極の作製]
正極活物質90重量部、アセチレンブラック2.5重量部、グラファイトカーボン2.5重量部及びPVDF(ポリフッカビニリデン)5重量部をNMP(ノルマルメチル−2−ピロリドン)に分散、溶解し、正極スラリーを調整した。得られた正極スラリーをアルミニウム箔からなる集電板に塗布、乾燥し、正極を得た。
【0041】
[2.負極の作製]
人造黒鉛97.5重量部、CMC(カルボキシメチルセルロース)1.5重量部、及びSBR(スチレンブタジエンゴム)1.0重量部を水に分散させて負極スラリーを調整した。得られた負極スラリーを銅箔に塗布、乾燥し、さらに圧縮成型して負極を得た。
【0042】
[3.非水電解液の作製]
EC(エチレンカーボネイト)とMEC(メチルエチルカーボネイト)を体積比率3:7で混合し、溶媒とした。得られた混合溶媒に六フッ化リン酸リチウム(LiPF)をその濃度が、1mol/lになるように溶解させて、非水電解液を得た。
【0043】
[4.評価用電池の組み立て]
上記正極と負極の集電体に、それぞれリード電極を取り付けたのち120℃で真空乾燥を行った。次いで、正極と負極との間に多孔性ポリエチレンからなるセパレータを配し、袋状のラミネートパックにそれらを収納した。収納後60℃で真空乾燥して各部材に吸着した水分を除去した。真空乾燥後、ラミネートパック内に、先述の非水電解液を注入、封止し、評価用のラミネートタイプの非水電解液二次電池を得た。
【0044】
[5.エージング]
得られた評価用電池に充電電圧4.2V、充電電流0.1C(1C≡1時間で放電が終了する電流)での定電圧定電流充電と、放電電圧2.75V、放電電流0.2Cの定電流放電からなる充放電を二回行った。その後、充電電流を0.2Cに替えて充放電を一回行い、正極及び負極に非水電解液をなじませた。
【0045】
[6.放電容量維持率測定]
エージング後、充電電圧4.2V、充電電流1Cでの定電圧定電流充電と、放電電圧2.75V、放電電流1Cでの定電流放電とを1サイクルとし、各サイクル後の放電容量を測定する。nサイクル後の放電容量Ed(n)の、1サイクル後の放電容量Ed(1)に対する比(≡Ed(n)/Ed(1))を、nサイクル後の放電容量維持率Rs(n)とする。
【0046】
[充放電特性評価]
実施例1、2及び比較例1〜3について、充放電特性を以下のようにして評価した。
【0047】
サイクル特性評価用と同様の二次電池を作製し、エージングを行った。エージング後、充電電圧4.3V、充電電流0.2Cで定電圧定電流充電を行い、充電容量Ecを測定した。測定後、放電電圧2.75V、放電電流0.2Cで定電流放電を行い、放電容量Edを測定した。
【0048】
[ガス発生評価]
実施例1〜4及び比較例1〜6について、ガス発生量を以下のようにして評価した。
【0049】
サイクル特性評価用と同様の二次電池を作製し、エージングを行った。エージング後、充電電圧4.2V、充電電流0.2Cで最後の定電圧定電流充電を行った。最後の充電後、評価用電池を分解して正極及び負極を取り出した。取り出した正極板、負極板及び新たな非水電解液500μLを新たなラミネートパックに封入し、80℃の恒温槽で24時間静置し、ガスを発生させた。静置前後のラミネートパックの体積変化をアルキメデスの原理を用いて測定し、ガス発生量Vgとした。
【0050】
実施例1〜4及び比較例1〜6の製造条件を表1に、ガス発生量Vg、充電容量Ec、放電容量Ed及び100サイクル後の放電容量維持率Rs(100)を表2に示す
【0051】
【表1】
【0052】
【表2】
【0053】
表1及び表2より以下のことが分かる。
【0054】
比較例1と比較例2の結果、あるいは比較例5と比較例6の結果から、ガス発生量を低減するには洗浄工程が必要である。一方、比較例2と実施例1〜3の結果、あるいは比較例6と実施例4の結果から、充放電容量及びサイクル特性を満足行く程度にするには混合工程以降によって被覆層を形成する必要がある。比較例3、4と実施例1〜3の結果、あるいは比較例6と実施例4の結果から、被覆層の形成には適切な熱処理温度の熱処理工程が必要である。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の製造方法によって得られる正極活物質を用いると、ガス発生が抑制され、且つ充放電容量及びサイクル特性に優れた非水電解液二次電池が得られる。こうして得られる二次電池は、ガス発生が抑制されているため、電池容器の形状を角型にして電源スペースを有効に使うことも可能になる。このため、前記二次電池は、電気自動車等の体積当たりのエネルギー密度が高く、且つ高出力、高寿命が求められる大型機器の動力源として特に好適に利用可能である。