(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アクセプター元素は、B(ほう素)、Al(アルミニウム)及びGa(ガリウム)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含む、請求項1に記載の半導体基板の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。また本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。更に本明細書において組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0031】
また、本明細書において、「含有率」とは、特に記載がなければ、不純物拡散層形成組成物の全量を100質量%としたときの、各成分の質量%を表す。また、本明細書において「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構成に加え、一部に形成されている形状の構成も包含される。
【0032】
<拡散層を有する半導体基板の製造方法>
本発明の拡散層を有する半導体基板の製造方法は、半導体基板上の少なくとも一部に、アクセプター元素を含むガラス粒子及び分散媒を含有するp型拡散層形成組成物を付与する工程と、熱処理によって前記アクセプター元素を前記半導体基板に拡散させてp型拡散層を形成する工程(第一の拡散工程)と、前記p型拡散層形成組成物の熱処理物の少なくとも一部をマスクとして、前記半導体基板にリンを拡散させてn型拡散層を形成する工程(第二の拡散工程)と、を含む。第二の拡散工程におけるリンの拡散は、POCl
3等を用いるガス拡散法を用いても、リン酸等を含む液を部分的又は全面に付与する方法を用いてもよい。
【0033】
また、本発明の拡散層を有する半導体基板の製造方法は、半導体基板上の少なくとも一部に、ドナー元素を含むガラス粒子及び分散媒を含有するn型拡散層形成組成物を付与する工程と、熱処理によって、前記ドナー元素を前記半導体基板に拡散させてn型拡散層を形成する工程(第一の拡散工程)と、前記n型拡散層形成組成物の熱処理物の少なくとも一部をマスクとして、前記半導体基板にホウ素を拡散させてp型拡散層を形成する工程(第二の拡散工程)と、を含む。第二の拡散工程におけるホウ素の拡散は、BBr
3、BCl
3等を用いるガス拡散法を用いても、ホウ酸等を含む液を部分的又は全面に付与する方法を用いてもよい。
【0034】
このように本発明は、第一の拡散工程及び第二の拡散工程により一の半導体基板の異なる箇所にn型拡散層とp型拡散層とを形成する。第一の拡散工程が、p型拡散層形成組成物を付与する工程と、アクセプター元素を半導体基板に拡散させてp型拡散層を形成する工程とを有する場合、第二の拡散工程は、p型拡散層形成組成物の熱処理物をマスクにしてリンを拡散させる工程を有する。第一の拡散工程のp型拡散層形成組成物を、n型拡散層形成組成物に代えてもよく、この場合、第二の拡散工程では、n型拡散層形成組成物の熱処理物をマスクにしてホウ素を拡散させる。
【0035】
第一の拡散工程において、ドーパント材料としてドナー元素含有ガラス粒子又はアクセプター元素含有ガラス粒子を用いることで、ドナー元素又はアクセプター元素は揮発し難くなり、半導体基板上にp
+層又はn
+層のいずれかを位置選択的に形成できる。また、ドナー元素含有ガラス粒子又はアクセプター元素含有ガラス粒子は、ドナー元素又はアクセプター元素を半導体基板に拡散する際に軟化又は溶融するため、その熱処理物はクラックが少ない緻密な層を形成する。そのため、この熱処理物の層はマスク性能が高く、そのままマスク層として利用することができる。このように本発明では、従来の製造方法で必要であったエッチング工程及びマスク層の形成工程を簡略化でき、第二の拡散工程においてn
+層又はp
+層を簡便に形成することが可能である。
【0036】
以下では、まず、本発明の製造方法で使用するn型拡散層形成組成物、p型拡散層形成組成物及び半導体基板について説明し、次にこれらを用いて半導体基板に拡散層を形成する方法について説明する。
【0037】
(n型拡散層形成組成物)
本発明に係るn型拡散層形成組成物は、少なくとも、ドナー元素を含むガラス粒子の少なくとも1種と、分散媒の少なくとも1種と、を含有し、更に塗布性等を考慮してその他の添加剤を必要に応じて含有してもよい。
ここで、n型拡散層形成組成物とは、ドナー元素を含有し、半導体基板に付与した後にこのドナー元素を熱拡散することで半導体基板にn型拡散層を形成することが可能な材料をいう。ドナー元素をガラス粒子中に含むn型拡散層形成組成物を用いることで、所望の部位にn型拡散層が形成され、不要な領域にn型拡散層が形成されることを抑制できる。
【0038】
したがって、本発明に係るn型拡散層形成組成物を適用すれば、従来広く採用されている気相反応法とは異なり付与領域のパターニングが可能となり、工程が簡易化される。尚、リン酸、五酸化二リン、リン酸エステル等の揮発性の高いリン化合物を用いてn型拡散層とp型拡散層とを一括して形成しようとすると、リン化合物を付与した領域以外にもリンが拡散されることになる。これは、一般的にリンよりもホウ素等のアクセプター元素の方が半導体基板中への拡散速度が遅いために、アクセプター元素を十分に拡散させようとするとリン拡散よりも高い温度(例えば、900℃〜950℃)で拡散することになり、リン等のドナー元素が揮発し易くなるためである。
【0039】
なお、本発明に係るn型拡散層形成組成物に含有されるガラス粒子は熱処理(焼成)により溶融し、n型拡散層の上にガラス層を形成する。しかし、従来の気相反応法、及びリン酸塩含有の溶液又はペーストを付与する方法においても、n型拡散層の上にガラス層が形成されており、よって本発明において生成したガラス層は、従来の方法と同様に、エッチングにより除去することができる。したがって本発明に係るn型拡散層形成組成物は、従来の方法と比べても不要な生成物を発生させず、工程を増やすこともない。
【0040】
また、ガラス粒子中のドナー成分は拡散のための熱処理(焼成)中でも揮散しにくいため、揮散ガスの発生によって所望の領域以外にまでn型拡散層が形成されるということが抑制される。この理由として、ドナー成分がガラス粒子中の元素と結合しているか、又はガラス中に取り込まれているため、揮散しにくいことが考えられる。
【0041】
更に、本発明に係るn型拡散層形成組成物は、ドナー元素の濃度を調整することで、所望の部位に所望の濃度のn型拡散層を形成することが可能であることから、n型ドーパント濃度の高い選択的な領域を形成することが可能となる。一方、n型拡散層の一般的な方法である気相反応法や、リン酸塩含有溶液を用いる方法によってn型ドーパント濃度の高い選択的な領域を形成することは一般には困難である。
【0042】
本発明に係るドナー元素を含むガラス粒子について、詳細に説明する。
ドナー元素とは、半導体基板中にドーピングさせることによってn型拡散層を形成することが可能な元素である。ドナー元素としては第15族の元素が使用でき、例えばP(リン)、Sb(アンチモン)、Bi(ビスマス)、As(ヒ素)等が挙げられる。安全性、ガラス化の容易さ等の観点から、P及びSbからなる群より選択される少なくとも1種が好適である。
【0043】
ドナー元素を含むガラス粒子は、例えば、ドナー元素含有物質とガラス成分物質とを含んで形成できる。ドナー元素をガラス粒子に導入するために用いるドナー元素含有物質としては、例えば、P
2O
3、P
2O
5、Sb
2O
3、Bi
2O
3及びAs
2O
3が挙げられ、P
2O
3、P
2O
5及びSb
2O
3からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0044】
ガラス成分物質としては、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V
2O
5、SnO、ZrO
2、WO
3、MoO
3、MnO、La
2O
3、Nb
2O
5、Ta
2O
5、Y
2O
3、TiO
2、ZrO
2、GeO
2、TeO
2、Lu
2O
3等が挙げられ、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V
2O
5、SnO、ZrO
2及びMoO
3から選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、V
2O
5、SnO、ZrO
2及びMoO
3から選択される少なくとも1種を用いることがより好ましい。
【0045】
ドナー元素を含むガラス粒子は、必要に応じて成分比率を調整することによって、溶融温度、軟化点、ガラス転移点、化学的耐久性等を制御することが可能である。
【0046】
ドナー元素を含むガラス粒子の具体例としては、前記ドナー元素含有物質と前記ガラス成分物質の双方を含む系が挙げられ、P
2O
5−SiO
2(ドナー元素含有物質−ガラス成分物質の順で記載、以下同様)含有ガラス粒子、P
2O
5−K
2O含有ガラス粒子、P
2O
5−Na
2O含有ガラス粒子、P
2O
5−Li
2O含有ガラス粒子、P
2O
5−BaO含有ガラス粒子、P
2O
5−SrO含有ガラス粒子、P
2O
5−CaO含有ガラス粒子、P
2O
5−MgO含有ガラス粒子、P
2O
5−BeO含有ガラス粒子、P
2O
5−ZnO含有ガラス粒子、P
2O
5−CdO含有ガラス粒子、P
2O
5−PbO含有ガラス粒子、P
2O
5−V
2O
5含有ガラス粒子、P
2O
5−SnO含有ガラス粒子、P
2O
5−GeO
2含有ガラス粒子、P
2O
5−TeO
2含有ガラス粒子等のドナー元素含有物質としてP
2O
5を含むガラス粒子、前記のP
2O
5を含むガラス粒子におけるP
2O
5の代わりにドナー元素含有物質としてSb
2O
3を含むガラス粒子が挙げられる。
なお、P
2O
5−Sb
2O
3含有ガラス粒子、P
2O
5−As
2O
3含有ガラス粒子等のように、2種類以上のドナー元素含有物質を含むガラス粒子でもよい。
上記では2成分を含む複合ガラス粒子を例示したが、P
2O
5−SiO
2−V
2O
5、P
2O
5−SiO
2−CaO等、3成分以上の物質を含むガラス粒子でもよい。
【0047】
ガラス粒子中のガラス成分物質の含有比率は、溶融温度、軟化点、ガラス転移点及び化学的耐久性を考慮して適宜設定することが望ましく、一般には、0.1質量%〜95質量%であることが好ましく、0.5質量%〜90質量%であることがより好ましい。
【0048】
また、ガラス成分物質として、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、SnO、ZrO
2及びMoO
3から選択される少なくとも1種を含有するガラス粒子である場合、拡散のための熱処理によって生成したシリコン基板との反応物が、フッ酸処理時に残渣として残らないため、好ましい。また、ガラス成分物質として酸化バナジウムV
2O
5を含むガラス粒子(例えばP
2O
5−V
2O
5含有ガラス粒子)の場合には、溶融温度及び軟化点を降下させる観点から、V
2O
5の含有比率は、1質量%〜50質量%であることが好ましく、3質量%〜40質量%であることがより好ましい。
【0049】
ガラス粒子の軟化点は、拡散のための熱処理時の拡散性、液だれ等の観点から、200℃〜1000℃であることが好ましく、300℃〜980℃であることがより好ましく、ガラス粒子の半導体基板に対する高い濡れ性によってドナー元素を半導体基板に均一に拡散させる観点から、400℃〜970℃であることが更に好ましく、拡散温度でのガラスの低揮発性の観点から、800℃〜960℃であることが特に好ましい。
【0050】
上記範囲の軟化点のガラス粒子を用いることで、拡散のための熱処理時に均一に半導体基板へ追従することができ、n型拡散層
形成組成物の熱処理物をマスク層として利用する際のマスク性能が十分となる。つまり、従来の塗布型のドーパント材料では熱処理後の熱処理物にピンホール等が存在していたのに対して、本発明に係るn型拡散層形成組成物は熱処理において一度軟化して半導体基板を覆うため、熱処理物でのピンホール等の発生が抑えられ、熱処理物のマスク性能が高くなる。
【0051】
ガラスの軟化点は、示差熱分析(DTA)法で測定できる。具体的には、示差熱分析(DTA)装置を用い、リファレンスにα−アルミナを用い加熱速度約10K/分で測定を行い、得られたDTA曲線の微分曲線の第二吸熱ピークを軟化点とすることができる。測定雰囲気に特に制限はなく、ガラス粒子が化学的に安定な雰囲気で測定することが好ましい。
【0052】
ドナー元素を含むガラス粒子の形状としては、略球状、扁平状、ブロック状、板状、鱗片状等が挙げられ、n型拡散層形成組成物とした場合の半導体基板への塗布性及び均一拡散性の点から、略球状、扁平状又は板状であることが望ましい。
【0053】
ドナー元素を含むガラス粒子の粒径は、100μm以下であることが好ましい。100μm以下の粒径を有するガラス粒子を用いた場合には、平滑な塗膜が得られやすい。更に、ガラス粒子の粒径は50μm以下であることがより好ましく、10μm以下であることが更に好ましい。なお、下限は特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましい。
ここで、ドナー元素を含むガラス粒子の粒径は、粒度分布において小径側からの体積累積50%に対応する粒子径D50%を表し、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置等により測定することができる。
【0054】
ドナー元素を含むガラス粒子は、以下の手順で作製される。
まず、原料、例えば、前記ドナー元素含有物質及びガラス成分物質を秤量し、るつぼに充填する。るつぼの材質としては白金、白金−ロジウム、イリジウム、アルミナ、石英、炭素等が挙げられ、溶融温度、雰囲気、溶融物質との反応性等を考慮して適宜選ばれる。
次に、電気炉でガラス組成に応じた温度で加熱し融液とする。このとき融液が均一となるよう攪拌することが望ましい。得られた融液をジルコニア基板やカーボン基板等の上に流し出して融液をガラス化する。そして、ガラスを粉砕し粉末状とする。粉砕にはジェットミル、ビーズミル、ボールミル等公知の装置を適用できる。
【0055】
n型拡散層形成組成物中の、ドナー元素を含むガラス粒子の含有比率は、塗布性、ドナー元素の拡散性等を考慮し決定される。一般には、n型拡散層形成組成物中のガラス粒子の含有比率は、0.1質量%〜95質量%であることが好ましく、1質量%〜90質量%であることがより好ましく、1.5質量%〜85質量%であることが更に好ましく、2質量%〜80質量%が特に好ましい。
【0056】
n型拡散層形成組成物の全固形分中の、無機化合物成分の含有比率は、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
前記無機化合物成分中の、ドナー元素を含むガラス粒子の含有比率は、50質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0057】
次に、分散媒について説明する。
分散媒とは、組成物中において上記ガラス粒子を分散させる媒体である。具体的に分散媒としては、バインダー及び溶剤が採用される。
【0058】
バインダーとしては、ポリビニルアルコール;ポリアクリルアミド樹脂;ポリビニルアミド樹脂;ポリビニルピロリドン樹脂;ポリエチレンオキサイド樹脂;ポリスルホン樹脂;アクリルアミドアルキルスルホン樹脂;セルロースエーテル、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルセルロース等のセルロース誘導体;ゼラチン、ゼラチン誘導体;澱粉、澱粉誘導体;アルギン酸ナトリウム化合物;キサンタン;グアーガム、グアーガム誘導体;スクレログルカン、スクレログルカン誘導体;トラガカント、トラガカント誘導体;デキストリン、デキストリン誘導体;(メタ)アクリル酸樹脂;アルキル(メタ)アクリレート樹脂、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート樹脂等の(メタ)アクリル酸エステル樹脂;ブタジエン樹脂;スチレン樹脂;ブチラール樹脂;これらの共重合体;シロキサン樹脂等を適宜選択しうる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
ここで、(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸又はメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。
【0059】
これらの中でも、分解性、及びスクリーン印刷した際の液ダレ防止の観点から、バインダーとしては、アクリル酸樹脂、ブチラール樹脂又はセルロース誘導体を含むことが好ましく、少なくともセルロース誘導体を含むことが好ましい。セルロース誘導体としてはエチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースを例示することができ、これらの中でもエチルセルロースを用いることが好ましい。バインダーは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
【0060】
バインダーの分子量は特に制限されず、組成物としての所望の粘度を鑑みて適宜調整することが望ましい。p型拡散層形成組成物がバインダーを含有する場合、バインダー含有率は、p型拡散層形成組成物中、0.5質量%〜30質量%であることが好ましく、3質量%〜25質量%であることがより好ましく、3質量%〜20質量%であることが更に好ましい。
【0061】
溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチル−n−プロピルケトン、メチルイソプロピルケトン、メチル−n−ブチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチル−n−ペンチルケトン、メチル−n−ヘキシルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、トリメチルノナノン、シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルシクロヘキサノン、2,4−ペンタンジオン、アセトニルアセトン等のケトン溶剤;ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、メチル−n−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、メチルテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメチルジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールメチルエチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジメチルエーテル、テトラエチレングリコールジエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチルエチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラエチレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテル、プロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、プロピレングリコールジブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、ジプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールジエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、トリプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジメチルエーテル、テトラプロピレングリコールジエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチルエチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル、テトラプロピレングリコールメチル−n−ヘキシルエーテル、テトラプロピレングリコールジ−n−ブチルエーテル等のエーテル溶剤;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソプロピル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、酢酸sec−ブチル、酢酸n−ペンチル、酢酸sec−ペンチル、酢酸3−メトキシブチル、酢酸メチルペンチル、酢酸2−エチルブチル、酢酸2−エチルヘキシル、酢酸2−(2−ブトキシエトキシ)エチル、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、酢酸メチルシクロヘキシル、酢酸ノニル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、酢酸ジエチレングリコールメチルエーテル、酢酸ジエチレングリコールモノエチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールメチルエーテル、酢酸ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジ酢酸グリコール、酢酸メトキシトリエチレングリコール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸n−ブチル、プロピオン酸イソアミル、シュウ酸ジエチル、シュウ酸ジ−n−ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸n−ブチル、乳酸n−アミル、エチレングリコールメチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールエチルエーテルプロピオネート、エチレングリコールメチルエーテルアセテート、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のエステル溶剤;アセトニトリル、N−メチルピロリジノン、N−エチルピロリジノン、N−プロピルピロリジノン、N−ブチルピロリジノン、N−ヘキシルピロリジノン、N−シクロヘキシルピロリジノン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド等の非プロトン性極性溶剤;メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール、n−ペンタノール、イソペンタノール、2−メチルブタノール、sec−ペンタノール、t−ペンタノール、3−メトキシブタノール、n−ヘキサノール、2−メチルペンタノール、sec−ヘキサノール、2−エチルブタノール、sec−ヘプタノール、n−オクタノール、2−エチルヘキサノール、sec−オクタノール、n−ノニルアルコール、n−デカノール、sec−ウンデシルアルコール、トリメチルノニルアルコール、sec−テトラデシルアルコール、sec−ヘプタデシルアルコール、フェノール、シクロヘキサノール、メチルシクロヘキサノール、ベンジルアルコール、イソボルニルシクロヘキサノール、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール等のアルコール溶剤;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル(セロソルブ)、エチレングリコールモノフェニルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールモノ−n−ヘキシルエーテル、エトキシトリグリコール、テトラエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル溶剤;α−テルピネン、α−テルピネオール、ミルセン、アロオシメン、リモネン、ジペンテン、α−ピネン、β−ピネン、ターピネオール、カルボン、オシメン、フェランドレン等のテルペン溶剤;イソボルニルシクロヘキサノール、イソボルニルフェノール、1−イソプロピル−4−メチル−ビシクロ[2.2.2]オクタ−5−エン−2,3−ジカルボン酸無水物、p−メンテニルフェノール;及び水が挙げられる。これらは1種類を単独で又は2種類以上を組み合わせて使用される。
これらの中でも、半導体基板への塗布性の観点から、分散媒としては、水、アルコール溶剤、グリコールモノエーテル溶剤、又はテルペン溶剤が好ましく、水、アルコール、セロソルブ、α−テルピネオール、ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、又は酢酸ジエチレングリコールモノ−n−ブチルエーテルが好ましく、水、アルコール、α−テルピネオール又はセロソルブが好ましい。
【0062】
n型拡散層形成組成物中の分散媒の含有比率は、塗布性、ドナー元素濃度等を考慮し決定される。n型拡散層形成組成物の粘度は、塗布性を考慮して、10mPa・s〜1000000mPa・sであることが好ましく、50mPa・s〜500000mPa・sであることがより好ましい。
【0063】
更に、n型拡散層形成組成物は、その他の添加剤を含有してもよい。その他の添加剤としては、例えば、上記ガラス粒子と反応しやすい金属が挙げられる。
n型拡散層形成組成物は、半導体基板上に付与され、高温で熱処理されることでn型拡散層を形成し、その際に表面にガラスが形成される。このガラスは、フッ酸等の酸に浸漬して除去されるが、ガラスの種類によっては除去し難いものがある。その場合に、Ag、Mn、Cu、Fe、Zn、Si等の金属を添加しておくことにより、酸洗浄後に容易にガラスを除去することができる。これらのなかでも、Ag、Si、Cu、Fe、Zn及びMnから選択される少なくとも1種を用いることが好ましく、Ag、Si及びZnから選択される少なくとも1種を用いることがより好ましく、Agであることが特に好ましい。
【0064】
前記金属の含有比率は、ガラスの種類及び当該金属の種類によって適宜調整することが望ましく、一般的には上記ガラス粒子に対して0.01質量%〜10質量%であることが好ましい。
【0065】
(p型拡散層形成組成物)
本発明に係るp型拡散層形成組成物は、少なくとも、アクセプター元素を含むガラス粒子の少なくとも1種と、分散媒の少なくとも1種と、を含有し、更に塗布性等を考慮してその他の添加剤を必要に応じて含有してもよい。
ここで、p型拡散層形成組成物とは、アクセプター元素を含有し、半導体基板に付与した後にこのアクセプター元素を熱拡散することで半導体基板にp型拡散層を形成することが可能な材料をいう。アクセプター元素をガラス粒子中に含むp型拡散層形成組成物を用いることで、所望の部位にp型拡散層が形成され、不要な領域にp型拡散層が形成されることを抑制できる。
【0066】
また、ガラス粒子中のアクセプター元素は拡散のための熱処理(焼成)中でも揮散しにくいため、揮散ガスの発生によって所望の領域以外にまでp型拡散層が形成されるということが抑制される。この理由として、アクセプター元素がガラス粒子中の元素と結合しているか、又はガラス中に取り込まれているため、揮散しにくいことが考えられる。
【0067】
更に、本発明に係るp型拡散層形成組成物は、アクセプター元素の濃度を調整することで、所望の部位に所望の濃度のp型拡散層を形成することが可能であることから、p型ドーパント濃度の高い選択的な領域を形成することが可能となる。
【0068】
本発明に係るアクセプター元素を含むガラス粒子について、詳細に説明する。
アクセプター元素とは、半導体基板中にドーピングさせることによってp型拡散層を形成することが可能な元素である。アクセプター元素としては第13族の元素が使用でき、例えば、B(ほう素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)等が挙げられ、B(ほう素)、Al(アルミニウム)及びGa(ガリウム)からなる群より選択される少なくとも1種の元素を含むことが好ましく、ガラス化の容易さ等の観点から、B又はGaが好適である。
【0069】
アクセプター元素を含むガラス粒子は、例えば、アクセプター元素含有物質とガラス成分物質とを含んで形成できる。アクセプター元素をガラス粒子に導入するために用いるアクセプター元素含有物質としては、B
2O
3、Al
2O
3、及びGa
2O
3が挙げられ、B
2O
3、Al
2O
3及びGa
2O
3からなる群より選択される少なくとも1種を用いることが好ましい。
【0070】
ガラス成分物質としては、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、Tl
2O、V
2O
5、SnO、ZrO
2、WO
3、MoO
3、MnO、La
2O
3、Nb
2O
5、Ta
2O
5、Y
2O
3、TiO
2、GeO
2、TeO
2及びLu
2O
3等が挙げられ、SiO
2、K
2O、Na
2O、Li
2O、BaO、SrO、CaO、MgO、BeO、ZnO、PbO、CdO、Tl
2O、V
2O
5、SnO、ZrO
2、WO
3、MoO
3及びMnOから選択される少なくとも1種を用いることが、好ましい。
【0071】
また、アクセプター元素を含むガラス粒子は、必要に応じて成分比率を調整することによって、溶融温度、軟化点、ガラス転移点、化学的耐久性等を制御することが可能である。
【0072】
アクセプター元素を含むガラス粒子の具体例としては、アクセプター元素含有物質とガラス成分物質の双方を含むガラス粒子が挙げられ、B
2O
3−SiO
2(アクセプター元素含有物質−ガラス成分物質の順で記載、以下同様)含有ガラス粒子、B
2O
3−ZnO含有ガラス粒子、B
2O
3−PbO含有ガラス粒子、Al
2O
3−SiO
2含有ガラス粒子、B
2O
3−Al
2O
3含有ガラス粒子、Ga
2O
3−SiO
2含有ガラス粒子、Ga
2O
3−B
2O
3含有ガラス粒子、B
2O
3単独含有ガラス粒子等のガラス粒子が挙げられる。
【0073】
上記では1成分ガラス及び2成分を含む複合ガラスを例示したが、B
2O
3−SiO
2−Na
2O等必要に応じて3種類以上の複合ガラスでもよい。また、B
2O
3−Al
2O
3系等のように、2種以上のアクセプター元素含有物質を含むガラス粒子でもよい。
【0074】
ガラス粒子中のガラス成分物質の含有比率は、溶融温度、軟化点、ガラス転移点及び化学的耐久性等を考慮して適宜設定することが望ましく、一般には、0.1質量%〜95質量%であることが好ましく、0.5質量%〜90質量%であることがより好ましい。
具体的には、B
2O
3−SiO
2−CaO含有ガラス粒子の場合には、CaOの含有比率は、1質量%〜30質量%であることが好ましく、5質量%〜20質量%であることがより好ましい。
【0075】
アクセプター元素を含むガラス粒子の軟化点は、拡散のための熱処理時の拡散性、液だれ等の観点から、200℃〜1000℃であることが好ましく、300℃〜900℃であることがより好ましく、ガラス粒子の半導体基板に対する高い濡れ性によってアクセプター元素を半導体基板に均一に拡散させる観点及びアクセプター元素の拡散速度の観点から、400℃〜880℃であることが更に好ましく、拡散温度でのガラスの低揮発性 の観点から、700℃〜860℃であることが特に好ましい。
【0076】
上記範囲の軟化点のガラス粒子を用いることで、拡散のための熱処理時に均一に半導体基板へ追従することができ、p型拡散層
形成組成物の熱処理物をマスク層として利用する際のマスク性能が十分となる。つまり、従来の塗布型のドーパント材料では熱処理後の熱処理物にピンホール等が存在していたのに対して、本発明に係るp型拡散層形成組成物は熱処理において一度軟化して半導体基板を覆うため、熱処理物でのピンホール等の発生が抑えられ、熱処理物のマスク性能が高くなる。アクセプター元素を含むガラス粒子の軟化点は、ドナー元素を含むガラス粒子の軟化点の測定方法と同様である。
【0077】
アクセプター元素を含むガラス粒子の形状としては、略球状、扁平状、ブロック状、板状及び鱗片状等が挙げられ、n型拡散層形成組成物とした場合の半導体基板への塗布性及び均一拡散性の点から、略球状、扁平状又は板状であることが望ましい。
【0078】
アクセプター元素を含むガラス粒子の平均粒径は、100μm以下であることが望ましい。100μm以下の平均粒径を有するガラス粒子を用いた場合には、平滑な塗膜が得られやすい。更に、ガラス粒子の平均粒径は50μm以下であることがより望ましく、10μm以下であることが更に望ましい。なお、下限は特に制限されないが、0.01μm以上であることが好ましい。
ここで、アクセプター元素を含むガラスの平均粒径は、粒度分布において小径側からの体積累積50%に対応する粒子径D50%を表し、レーザー散乱回折法粒度分布測定装置等により測定することができる。
【0079】
アクセプター元素を含むガラス粒子は、以下の手順で作製される。
まず、原料、例えば、アクセプター元素含有物質及びガラス成分物質を秤量し、るつぼに充填する。るつぼの材質としては白金、白金−ロジウム、イリジウム、アルミナ、石英、炭素等が挙げられ、溶融温度、雰囲気、溶融物質との反応性、不純物の混入等を考慮して適宜選ばれる。
次に、電気炉でガラス組成に応じた温度で加熱し融液とする。このとき融液が均一となるよう攪拌することが望ましい。得られた融液をジルコニア基板、カーボン基板等の上に流し出して融液をガラス化する。そして、ガラスを粉砕し粉末状とする。粉砕にはジェットミル、ビーズミル、ボールミル等公知の装置を適用できる。
【0080】
p型拡散層形成組成物中の、アクセプター元素を含むガラス粒子の含有比率は、塗布性、アクセプター元素の拡散性等を考慮して決定される。一般には、p型拡散層形成組成物中のガラス粒子の含有比率は、0.1質量%〜95質量%であることが好ましく、1質量%〜90質量%であることがより好ましく、1.5質量%〜85質量%であることが更に好ましく、2質量%〜80質量%が特に好ましい。
【0081】
p型拡散層形成組成物の全固形分中の、無機化合物成分の含有比率は、40質量%以上であることが好ましく、60質量%以上であることがより好ましく、70質量%以上であることが更に好ましく、80質量%以上が特に好ましい。
前記無機化合物成分中の、アクセプター元素を含むガラス粒子の含有比率は、50質量%以上であることが好ましく、75質量%以上であることがより好ましく、85質量%以上であることが更に好ましく、90質量%以上が特に好ましい。
【0082】
p型拡散層形成組成物に用いることのできる分散媒は、n型拡散層形成組成物で例示した分散媒と同様であり、好適な分散媒についても同様である。
【0083】
p型拡散層形成組成物中の分散媒の含有比率は、塗布性、アクセプター元素濃度等を考慮し決定される。p型拡散層形成組成物の粘度は、塗布性を考慮して、10mPa・s〜1000000mPa・sであることが好ましく、50mPa・s〜500000mPa・sであることがより好ましい。
【0084】
(半導体基板)
半導体基板は特に制限されず、通常のものを適用することができる。シリコン基板、リン化ガリウム基板、窒化ガリウム基板、ダイヤモンド基板、窒化アルミニウム基板、窒化インジウム基板、ヒ化ガリウム基板、ゲルマニウム基板、セレン化亜鉛基板、テルル化亜鉛基板、テルル化カドミウム基板、硫化カドミウム基板
、リン化インジウム基板
、炭化シリコン基板、シリコンゲルマニウム基板、銅インジウムセレン基板等が挙げられる。太陽電池素子に用いる場合には、半導体素子は、シリコン基板、ゲルマニウム基板、又は炭化ケイ素基板であることが好ましく、シリコン基板であることがより好ましい。
【0085】
(半導体基板の製造方法)
本発明の半導体基板の製造方法では、第一の拡散工程において、半導体基板上の少なくとも一部にp型拡散層形成組成物又はn型拡散層形成組成物を付与し、その後、熱処理によってアクセプター元素又はドナー元素を半導体基板に拡散させてp型拡散層又はn型拡散層を形成する。そして、第二の拡散工程において、p型拡散層形成組成物の熱処理物又はn型拡散層形成組成物の熱処理物の少なくとも一部をマスクとして用い、半導体基板にリン又はホウ素を拡散させてn型拡散層又はp型拡散層を形成する。
【0086】
第一の拡散工程と第二の拡散工程は一連で行ってもよい。例えば、第二の拡散工程でガス拡散法を適用する場合、第一の拡散工程における熱処理はドーパント及びアクセプターを含まないガス雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)で行い、その後ドーパント又はアクセプターを含むガス雰囲気に切り替えて、第一の拡散工程から第二の拡散工程に連続的に移行して、一連の熱処理工程としてもよい。
【0087】
本発明の半導体基板の製造方法では、p型拡散層及びn型拡散層上にパッシベーション層を形成する工程を更に有していてもよい。パッシベーション層は、酸化ケイ素、窒化珪素及び酸化アルミニウムから選択される少なくとも一種を含有することが好ましい。
【0088】
以下では、本発明の半導体基板の製造方法の一例を、バックコンタクト型太陽電池素子の製造方法の中で説明する。このバックコンタクト型太陽電池素子の製造方法では、半導体基板としてシリコン基板を用い、第一の拡散工程においてp
+層を形成してから、第二の拡散工程においてn
+層を形成する方法を説明する。しかしながら本発明ではこの工程順に限定されず、n
+層を形成してからp
+層を形成してもよく、その場合は、nとpの文言を入れ替え、アクセプター元素をドナー元素に読み替え、リンをホウ素に読み替える。
【0089】
バックコンタクト型太陽電池素子の製造方法では、まず、シリコン基板、例えばn型シリコン基板の表面にあるダメージ層を、酸性又はアルカリ性の溶液を用いてエッチングしてダメージ層を除去する。例えば、80℃程度に加熱した30質量%以上の高濃度のNaOH水溶液にシリコン基板を5分以上浸漬することで、シリコン基板の表面にあるダメージ層を除去できる
【0090】
次いで、アルカリ性の溶液を用いてシリコン基板の受光面側のみをエッチングし、受光面にテクスチャ構造と呼ばれる微細な凹凸構造を形成する。テクスチャ構造は、例えば、テクスチャ構造を形成したくない箇所に予め保護層を設けたシリコン基板を、水酸化カリウム及びイソプロピルアルコール(IPA)を含む約80℃程度の液に浸漬させることによって形成することができる。
【0091】
シリコン基板の片面のみにテクスチャ構造を形成するには、シリコン基板の他方の面に耐水溶性のレジストを付与して、シリコン基板全面を水酸化カリウム水溶液に浸す、又はフローティング装置を用いて、シリコン基板の片面のみを水酸化カリウム水溶液に浸すことで形成することができる。レジストを使用した場合には、テクスチャ構造形成工程後に、レジストを除去する。
【0092】
次に、シリコン基板の受光面とは反対側の裏面側の表面上に、パターン状にp型拡散層形成組成物を付与し、熱処理することで、シリコン基板の裏面にp
+層を形成する。
【0093】
p型拡散層形成組成物の付与方法は特に制限されず、通常用いられる方法を用いることができる。例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等の印刷法、スピンコート法、刷毛塗り法、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコート法、インクジェット法等を用いることができ、印刷法、スプレー法、インクジェット法等のパターニングが可能な方法が好ましい。
p型拡散層形成組成物の付与量としては特に制限はない。例えば、ガラス粒子量として0.01g/m
2〜100g/m
2となるようにp型拡散層形成組成物をシリコン基板に付与することができ、0.1g/m
2〜10g/m
2とすることが好ましい。
【0094】
シリコン基板上にp型拡散層形成組成物が付与された後には、分散媒の少なくとも一部を除去する加熱工程を設けてもよい。加熱工程においては、例えば、100℃〜300℃で加熱処理することで、溶剤の少なくとも一部を揮発させることができる。また、例えば、200℃〜700℃で加熱処理することで、バインダーの少なくとも一部を除去してもよい。
【0095】
p型拡散層を形成する際の熱処理温度は、800℃〜1100℃であることが好ましく、850℃〜1050℃であることがより好ましく、870℃〜1030℃が更に好ましく、900℃〜1000℃が特に好ましい。
【0096】
p型拡散層を形成するための熱処理におけるガス雰囲気としては特に制限は無く、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、キセノン、ネオン、クリプトン等の混合ガス雰囲気であることが好ましい。
【0097】
次に、p型拡散層形成組成物の熱処理物をマスク層として残しながら、n型拡散層を形成する。n型拡散層は、ガス拡散法及び塗布拡散法のいずれの方法で形成してもよい。ガス拡散法では、POCl
3等のバブリングガスを流しながら、シリコン基板を750℃〜950℃の温度に加熱してリンをシリコン基板に拡散させる。塗布拡散法では、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、酸化リン、リン酸エステル等を含む液をシリコン基板に付与し、シリコン基板を750℃〜950℃の温度に加熱してリンをシリコン基板に拡散させる。付与方法は、特に制限されず通常用いられる方法を用いることができる。例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等の印刷法、スピンコート法、刷毛塗り、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコート法、インクジェット法等を用いて行うことができ、印刷法、スプレー法、インクジェット法等のパターニングが可能な方法が好ましい。
【0098】
第一の拡散工程でn型拡散層を形成してから第二の拡散工程でp型拡散層を形成する場合においても、第二の拡散工程はガス拡散法及び塗布拡散法のいずれを用いてもよい。多面ガス拡散法によりp型拡散層を形成する場合、BBr
3、BCl
3等のバブリングガスを流しながら、シリコン基板を850℃〜1050℃の温度に加熱してホウ素をシリコン基板に拡散させる。塗布拡散によりp型拡散層を形成する場合は、ホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸エステル等を含む液をシリコン基板に付与し、シリコン基板を850℃〜1050℃の温度に加熱してホウ素をシリコン基板に拡散させる。
【0099】
次に、受光面上に、反射防止層を形成する。ここで、反射防止層としては、例えば、プラズマCVD法により形成された窒化物層を用いることができる。また、裏面側にはパッシベーション層を形成することが好ましい。パッシベーション層としては、熱酸化層、酸化アルミニウム層、SiNx層、アモルファスシリコン層を挙げることができ、蒸着法又は塗布法により形成できる。SiNx層の場合はパッシベーションと反射防止の役割を兼ねることができる。パッシベーション層は、単層構造であっても、二層構造、三層構造等の複層構造であってもよく、例えば、シリコン基板上に熱酸化層、SiNx層の順でパッシベートされていてもよい。
【0100】
次に、シリコン基板の裏面に電極が形成される。電極の形成には通常用いられる方法を特に制限なく用いることができる。
例えば、金属粒子及びガラス粒子を含む表面電極用金属ペーストを、拡散層形成領域上に所望の形状となるよう付与し、これを熱処理(焼成)することでp型拡散層及びn型拡散層上の電極形成領域上に表面電極を形成することができる。表面電極用金属ペーストとしては、例えば、当該技術分野で常用される銀ペースト等を用いることができる。
【0101】
次に、本発明の半導体基板の製造方法の他の一例を、両面受光型太陽電池の製造方法の中で説明する。この両面受光型太陽電池の製造方法では、半導体基板としてシリコン基板を用い、第一の拡散工程においてp
+層を形成してから、第二の拡散工程においてn
+層を形成する方法を説明する。しかしながら本発明ではこの工程順に限定されず、n
+層を形成してからp
+層を形成してもよく、その場合は、nとpの文言を入れ替え、アクセプター元素をドナー元素に読み替え、リンをホウ素に読み替える。
【0102】
両面受光型太陽電池の製造方法では、まず、シリコン基板、例えばn型シリコン基板の表面にあるダメージ層を、酸性又はアルカリ性の溶液を用いてエッチングしてダメージ層を除去する。例えば、80℃程度に加熱した30質量%以上の高濃度のNaOH水溶液にシリコン基板を5分以上浸漬することで、シリコン基板の表面にあるダメージ層を除去できる
【0103】
次いで、アルカリ性の溶液を用いてシリコン基板の両面をエッチングし、両面にテクスチャ構造と呼ばれる微細な凹凸構造を形成する。テクスチャ構造は、例えば、シリコン基板を水酸化カリウムとイソプロピルアルコール(IPA)とを含む約80℃程度の液に浸漬させることによって形成することができる。
【0104】
次に、シリコン基板の少なくとも一部に、p型拡散層形成組成物を付与し、p型拡散層形成組成物及が付与されたシリコン基板を熱処理してp型拡散層を部分的に形成する。
【0105】
p型拡散層形成組成物の付与方法は特に制限されず、通常用いられる方法を用いることができる。例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等の印刷法、スピンコート法、刷毛塗り、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコート法、インクジェット法等を用いることができ、印刷法、スプレー法、インクジェット法等のパターニングが可能な方法が好ましい。
p型拡散層形成組成物の付与量としては特に制限はない。例えば、ガラス粒子量として0.01g/m
2〜100g/m
2となるようにp型拡散層形成組成物をシリコン基板に付与することができ、0.1g/m
2〜10g/m
2とすることが好ましい。
【0106】
シリコン基板上にp型拡散層形成組成物が付与された後には、分散媒の少なくとも一部を除去する加熱工程を設けてもよい。加熱工程においては、例えば、100℃〜300℃で加熱処理することで、溶剤の少なくとも一部を揮発させることができる。また、例えば、200℃〜700℃で加熱処理することで、バインダーの少なくとも一部を除去してもよい。
【0107】
p型拡散層を形成する際の熱処理温度は、800℃〜1100℃であることが好ましく、850℃〜1050℃であることがより好ましく、870℃〜1030℃が更に好ましく、900℃〜1000℃が特に好ましい。
【0108】
p型拡散層を形成するための熱処理におけるガス雰囲気としては特に制限は無く、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、キセノン、ネオン、クリプトン等の混合ガス雰囲気であることが好ましい。
【0109】
次に、p型拡散層形成組成物の熱処理物をマスク層として残しながら、n型拡散層を形成する。n型拡散層は、ガス拡散法及び塗布拡散法のいずれの方法で形成してもよい。ガス拡散法では、POCl
3等のガスをバブリングしたN
2を流しながら、シリコン基板を750℃〜950℃の温度に加熱してリンをシリコン基板に拡散させる。塗布拡散法では、リン酸、リン酸二水素アンモニウム、酸化リン、リン酸エステル等を含む液をシリコン基板に付与し、シリコン基板を750℃〜950℃の温度に加熱してリンをシリコン基板に拡散させる。付与方法は、特に制限されず通常用いられる方法を用いることができる。例えば、スクリーン印刷法、グラビア印刷法等の印刷法、スピンコート法、刷毛塗り法、スプレー法、ドクターブレード法、ロールコート法、インクジェット法等を用いて行うことができ、印刷法、スプレー法、インクジェット法等のパターニングが可能な方法が好ましい。
【0110】
第一の拡散工程でn型拡散層を形成してから第二の拡散工程でp型拡散層を形成する場合においても、第二の拡散工程はガス拡散法及び塗布拡散法のいずれを用いてもよい。多面ガス拡散法によりp型拡散層を形成する場合、BBr
3、BCl
3等のガスをバブリングしたN
2を流しながら、シリコン基板を850℃〜1050℃の温度に加熱してホウ素をシリコン基板に拡散させる。塗布拡散によりp型拡散層を形成する場合は、ホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸エステル等を含む液をシリコン基板に付与し、シリコン基板を850℃〜1050℃の温度に加熱してホウ素をシリコン基板に拡散させる。
【0111】
次に、両面に反射防止層又はパッシベーション層が形成される。ここで、反射防止層とパッシベーション層とを兼ねることができる層としては、例えば、プラズマCVD法により形成された窒化物層が挙げられる。また、この層は、単層構造であっても、二層構造、三層構造等の複層構造であってもよい。例えば、熱酸化層、酸化アルミニウム層、SiNx層、アモルファスシリコン層を積層したものがあり、プラズマCVD法、ALD(原子層堆積)法等の蒸着法、又は塗布法により形成できる。
【0112】
次に、シリコン基板の両面にそれぞれ電極が形成される。電極の形成には通常用いられる方法を特に制限なく用いることができる。
例えば、金属粒子及びガラス粒子を含む表面電極用金属ペーストを、拡散層形成領域上に所望の形状となるよう付与し、これを熱処理(焼成)することでp型拡散層及びn型拡散層上の電極形成領域上に表面電極を形成することができる。表面電極用金属ペーストとしては、例えば、当該技術分野で常用される銀ペースト等を用いることができる。
【0113】
<太陽電池素子の製造方法>
本発明の太陽電池素子の製造方法は、上記の製造方法により得られる半導体基板のp型拡散層又はn型拡散層上に電極を形成する工程を有する。
【0114】
以下では、図面を参照しながら太陽電池素子の製造方法の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態にかかるバックコンタクト型太陽電池素子の製造方法の一例を模式的に示す工程図を断面図として示したものである。但し、この工程図は本発明をなんら制限するものではない。
【0115】
シリコン基板にn型シリコン基板を用いたときの例を
図1を用いて説明する。まず、50μm〜300μm程度の厚みを有するn型シリコン基板10を用意する。このn型シリコン基板10は、CZ法、FZ法、EFG法、鋳造法等で形成された単結晶又は多結晶のシリコンインゴット等をスライスして得られ、例えば、リン等のn型不純物を1×10
15cm
−3〜1×10
19cm
−3程度有する。次いで、n型シリコン基板10をアルカリ水溶液で洗浄することが好ましい。アルカリ水溶液で洗浄することで、n型シリコン基板10の表面に存在する有機物、パーティクル等を除去することができ、パッシベーション効果がより向上する。アルカリ水溶液による洗浄の方法としては、一般的に知られているRCA洗浄等を例示することができる。例えば、アンモニア水−過酸化水素水の混合溶液にn型シリコン基板10を浸し、60℃〜80℃で処理することで、有機物及びパーティクルを除去し洗浄することができる。洗浄時間は、10秒〜10分間であることが好ましく、30秒〜5分間であることがより好ましい。
【0116】
次いで、
図1(a)に示すn型シリコン基板10は、アルカリエッチング等により受光面(表面)にテクスチャー構造(ピラミッド形状、不図示)を形成し、受光面からの太陽光の反射を抑える。その後、
図1(b)に示すように、p型拡散層形成組成物11を受光面とは反対側の裏面の一部に付与する。
図1(c)に示すように熱拡散してp型拡散層12を形成する。このとき、p型拡散層形成組成物11は、熱拡散のための熱処理によって熱処理物11’となっている。p型拡散層形成組成物11としては、ホウ素、アルミニウム又はガリウムを含んだガラス粒子を含む拡散ペーストを用いることができる。熱拡散温度としては850℃〜1050℃とすることが好ましい。本発明に係るp型拡散層
形成組成物は、ドーパントとして揮発性の低いガラス粒子を用いており、熱拡散する高温においてドーパントが揮発し難いので、付与した部分以外にはドーパントが拡散し難い。
【0117】
図1(d)に示すように、オキシ塩化リンをバブリングしながらシリコン基板を750℃〜950℃に加熱して、リンシリケートガラス層13とn型拡散層14とを一括して形成する。p型拡散層形成組成物の熱処理物11’がマスク層となり、p型拡散層12が形成された箇所へのリンの拡散は抑えられる。
【0118】
次いで、
図1(e)に示すように、フッ酸等のエッチング液に浸漬することでp型拡散層形成組成物の熱処理物11’及びリンシリケートガラス層13を除去する。
【0119】
次いで、
図1(f)に示すように、受光面及び裏面に反射防止層兼パッシベーション層15が形成される。反射防止層兼パッシベーション層15としては、窒化ケイ素層、酸化チタン層、酸化ケイ素層、酸化アルミニウム層等が挙げられる。裏面において、反射防止層兼パッシベーション層は全面又は一部の領域に形成してもよく、電極との接触部にあたる部分をエッチングしてもよい。エッチングには、フッ化アンモニウム等の化合物を用いることができる。また、反射防止層兼パッシベーション層15が窒化ケイ素層である場合には、電極形成用ペーストとしてファイヤースルー性を有するガラス粒子を含むものを用いることで、オーミックコンタクトを取ることもできる。反射防止層兼パッシベーション層15とn型シリコン基板10との間に酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の表面保護層(図示せず)が更に存在していてもよく、部分的に反射防止層兼パッシベーション層15の組成を変えてもよい。
【0120】
その後、
図1(g)に示すように、裏面側に電極形成用ペーストを付与した後に加熱処理して、p電極16及びn電極17を形成する。電極形成用ペーストとしてファイヤースルー性を有するガラス粒子を含むものを用いることで、裏面全面に反射防止層兼パッシベーション層15が形成されていても、反射防止層兼パッシベーション層15を貫通して、拡散層の上に、電極を形成してオーミックコンタクトを得ることができる。上記のようにして、太陽電池素子を得ることができる。
【0121】
図2は、本実施形態にかかる両面受光型太陽電池素子の製造方法の一例を模式的に示す工程図を断面図として示したものである。但し、この工程図は本発明をなんら制限するものではない。
図2では、シリコン基板としてn型シリコン基板を用いて説明する。
【0122】
まず、n型シリコン基板10をアルカリ水溶液で洗浄することが好ましい。アルカリ水溶液で洗浄することで、n型シリコン基板10の表面に存在する有機物、パーティクル等を除去することができ、パッシベーション効果がより向上する。アルカリ水溶液による洗浄の方法としては、一般的に知られているRCA洗浄等を例示することができる。例えば、アンモニア水−過酸化水素水の混合溶液にn型シリコン基板10を浸し、60℃〜80℃で処理することで、有機物及びパーティクルを除去し洗浄することができる。洗浄時間は、10秒〜10分間であることが好ましく、30秒〜5分間であることがより好ましい。
【0123】
次いで、
図2(a)に示すn型シリコン基板10は、アルカリエッチング等により両面にテクスチャー構造(ピラミッド形状、不図示)を形成し、太陽光の反射を抑える。その後、
図2(b)に示すように、p型拡散層形成組成物11を一方の面に付与する。次いで、
図2(c)に示すように熱拡散してp型拡散層12を形成する。このとき、p型拡散層形成組成物11は、熱拡散のための熱処理によって熱処理物11’となっている。p型拡散層形成組成物11としては、ホウ素、アルミニウム又はガリウムを含んだガラス粒子を含む拡散ペーストを用いることができる。熱拡散温度としては850℃〜1050℃とすることが好ましい。本発明に係るp型拡散層
形成組成物は、ドーパントとして揮発性の低いガラス粒子を用いており、熱拡散する高温において揮発し難いので、付与した部分以外にはドーパントが拡散し難い。
【0124】
図2(d)に示すように、オキシ塩化リンをバブリングしながらn型シリコン基板10を750℃〜950℃に加熱して、リンシリケートガラス層13とn型拡散層14とを一括して形成する。p型拡散層形成組成物の熱処理物11’がマスク層となり、p型拡散層12が形成された裏面へのリンの拡散は抑えられる。
【0125】
次いで、
図2(e)に示すように、フッ酸等のエッチング液に浸漬することでp型拡散層形成組成物の熱処理物11’及びリンシリケートガラス層13を除去する。
【0126】
次いで、
図2(f)に示すように、受光面及び裏面に反射防止層兼パッシベーション層15が形成される。反射防止層兼パッシベーション層15としては、窒化ケイ素層、酸化チタン層、酸化ケイ素層、酸化アルミニウム層等が挙げられる。反射防止層兼パッシベーション層15は受光面の全面又は一部の領域に形成してもよく、電極との接触部にあたる部分をエッチングしてもよい。エッチングには、フッ化アンモニウム等の化合物を用いることができる。また、反射防止層兼パッシベーション層15が窒化ケイ素層である場合には、電極形成用ペーストとしてファイヤースルー性を有するガラス粒子を含むものを用いることで、オーミックコンタクトを取ることもできる。反射防止層兼パッシベーション層15とn型シリコン基板10との間に酸化ケイ素、酸化アルミニウム等の表面保護層(図示せず)が更に存在していてもよく、部分的に反射防止層兼パッシベーション層15の組成を変えてもよい。
【0127】
その後、
図2(g)に示すように、受光面及び裏面のそれぞれに電極形成用ペーストを付与した後に加熱処理して、p電極16及びn電極17を形成する。電極形成用ペーストとしてファイヤースルー性を有するガラス粒子を含むものを用いることで、裏面全面に反射防止層兼パッシベーション層が形成されていても、反射防止層兼パッシベーション層を貫通して、拡散層の上に、電極を形成してオーミックコンタクトを得ることができる。上記のようにして、太陽電池素子を得ることができる。
【0128】
<太陽電池素子>
本発明の太陽電池素子は、上述の製造方法によって得られる。これにより、本発明の太陽電池素子は、半導体基板の不要な領域に拡散層が形成されるのが抑えられ、電池性能の向上が図られる。
太陽電池素子は、電極上にタブ線等の配線材料を配置し、この配線材料を介して複数の太陽電池素子が連結されて太陽電池モジュールを構成してもよい。さらに、太陽電池モジュールは、封止材で封止されて構成されてもよい。
【実施例】
【0129】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り、薬品は全て試薬を使用した。また「部」及び「%」は断りがない限り質量基準である。
【0130】
[実施例1]
粒子形状が略球状で、D50%が0.35μm、軟化温度が約800℃のガラス粒子(B
2O
3、SiO
2及びCaOを主成分とし、それぞれの含有率が30質量%、50質量%及び20質量%)10g、エチルセルロース6g、及びテルピネオール84gを混合してペースト化し、p型拡散層形成組成物を調製した。
【0131】
なお、ガラス粒子の形状は、(株)日立ハイテクノロジーズ、TM−1000型走査型電子顕微鏡を用いて観察して判定した。ガラスの平均粒径はベックマン・コールター(株)、LS 13 320型レーザー散乱回折法粒度分布測定装置(測定波長:632nm)を用いて算出した。ガラスの軟化点は(株)島津製作所、DTG−60H型示差熱・熱重量同時測定装置を用いて、示差熱(DTA)曲線により求めた。示差熱分析測定には、リファレンスにα−アルミナを用い、加熱速度10K/分、空気を5mL/分で流しながら測定した。得られたDTA曲線の微分曲線の第二吸熱ピークを軟化点として算出した。
【0132】
次に、n型シリコン基板(表面テクスチャ加工)の一方の面にp型拡散層形成組成物をスクリーン印刷により、ベタ状に付与し、150℃で1分間乾燥させせた。
【0133】
次に、O
2:8L/min、N
2:2L/minを流した拡散炉(光洋サーモシステム(株)、206A−M100)中にて、700℃に設定した状態でn型シリコン基板を入れ、その後、950℃まで15℃/minで昇温し、950℃で30分間熱処理してp型拡散層を形成した。次いで、830℃まで10℃/minで降温し、830℃にてO
2:0.3L/min、N
2:4.5L/min、POCl
3ガスをバブリングしたN
2:1.5L/minを流した拡散炉中にて5min処理後、POCl
3ガスをバブリングしたN
2を流すのを止めてO
2:0.3L/min、N
2:4.5L/minのガス中で、同温度にて12min熱処理して、p型拡散層
形成組成物が付与された領域以外にn型拡散層を形成した。その後、700℃まで10℃/minで降温し、拡散炉からn型シリコン基板を取り出した。
【0134】
続いて、n型シリコン基板の表面に残存したガラス層(p型拡散層形成組成物の熱処理物11’及びリンシリケートガラス層13)をフッ酸によって除去した。p型拡散層形成組成物を付与したp型拡散層領域(電極形成領域)のシート抵抗の平均値は46Ω/□、p型拡散層形成組成物を付与した面とは反対面に形成されたn型拡散層領域(電極形成領域)のシート抵抗の平均値は55Ω/□であった。
【0135】
次いで、n型シリコン基板のエッジ(側面)を80℃に加温した10質量%NaOH水溶液に1min浸し、エッジアイソレーションを行った。
【0136】
次いで、n型拡散層を形成した面に窒化珪素を蒸着することで反射防止層を形成した。また、p型拡散層を形成した面にはALD法で酸化アルミニウムを蒸着し、パッシベーション層を形成した。
【0137】
次に、印刷マスクを用いて、両面にそれぞれ、銀電極(デュポン社、PV159A)をスクリーン印刷により形成した。次いで、150℃で乾燥後、トンネル型焼成炉((株)ノリタケカンパニーリミテド)を用いて700℃で焼成して太陽電池素子を作製した。作製後の太陽電池素子ソーラシュミレータ((株)ワコム電創、XS−155S−10)を用いて発電特性を評価した。発電性能は、Jsc(短絡電流密度)、Voc(開放電圧)、F.F.(曲線因子)及びη(変換効率)について、それぞれJIS−C−8913(2005年度)及びJIS−C−8914(2005年度)に準拠して測定した。Jsc(短絡電流密度)、Voc(開放電圧)、F.F.(曲線因子)及びη(変換効率)は、それぞれ、30.93mA/cm
2、594mV、0.78及び14.3%であった。
【0138】
(マスク性能の評価)
p型拡散層形成組成物をn型シリコン基板(表面ミラー加工)に付与し、O
2:8L/min、N
2:2L/minを流した拡散炉中にて、700℃に設定した状態でn型シリコン基板を入れ、その後、950℃まで15℃/minで昇温し、950℃で30分間熱処理してp型拡散層を形成した。次いで、830℃まで10℃/minで降温し、830℃にてO
2:0.3L/min、N
2:4.5L/min、POCl
3ガスをバブリングしたN
2:1.5L/minを流した拡散炉中にて5min処理後、POCl
3ガスをバブリングしたN
2を流すのを止めてO
2:0.3L/min、N
2:4.5L/minのガス中で、同温度にて12min熱処理してp型拡散層
形成組成物の熱処理物が付与された領域以外にn型拡散層を形成した。その後、700℃まで10℃/minで降温し、拡散炉からn型シリコン基板を取り出した。
【0139】
続いて、n型シリコン基板の表面に残存したガラス層(p型拡散層形成組成物の熱処理物11’及びリンシリケートガラス層13)をフッ酸によって除去した。その後、p型拡散層形成組成物付与部における、n型シリコン基板表層のリン元素の濃度を、SIMS(二次イオン質量分析計、CAMECA社、IMS−7F)を用いて測定した。一次イオンにはCs
+を用いた。n型シリコン基板表層のリン濃度は検出限界(10
16atom/cm
3)以下であり、p型拡散層形成組成物の熱処理物によってリンの拡散を阻害していることが分かった。
【0140】
[実施例2]
粒子形状が略球状で、D50%が0.30μm、軟化温度が約810℃のガラス粒子(P
2O
5、SiO
2及びCaOを主成分とし、それぞれの含有率が30質量%、60質量%及び10質量%)10g、エチルセルロース6g、及びテルピネオール84gを混合してペースト化し、n型拡散層形成組成物を調製した。ガラス粒子の軟化点は780℃であった。
【0141】
次に、n型シリコン基板(表面テクスチャ加工)の一方の面にn型拡散層形成組成物をスクリーン印刷により、ベタ状に付与し、150℃で1分間乾燥させせた。
【0142】
次に、N
2:10L/minを流した拡散炉(光洋サーモシステム(株)、206A−M100)中にて、700℃に設定した状態でn型シリコン基板を入れ、その後、930℃まで15℃/minで昇温し、930℃になったら、N
2:19L/min、O
2:0.06L/min、BBr
3をバブリングしたN
2:0.06L/minのガスを流した状態で、930℃で30分間熱処理し、n型拡散層とp型拡散層とを一括して形成した。その後、N
2:10L/minのガスに切り替え、700℃まで10℃/minで降温し、拡散炉から基板を取り出した。
【0143】
続いて、n型シリコン基板の表面に残存したガラス層(n型拡散層形成組成物の熱処理物及びボロンシリケートガラス層)をフッ酸によって除去した。
n型拡散層形成組成物を付与したn型拡散層領域分(電極形成領域)のシート抵抗の平均値は75Ω/□、n型拡散層形成組成物を付与した面とは反対面に形成されたp型拡散層領域(電極形成領域)のシート抵抗の平均値は38Ω/□であった。
【0144】
次いで、シリコン基板のエッジ(側面)を80℃に加温した10質量%NaOH水溶液に1min浸し、エッジアイソレーションを行った。
【0145】
次いで、n型拡散層を形成した面に窒化珪素を蒸着することで反射防止層を形成した。また、p型拡散層を形成した面にはALD法で酸化アルミニウムを蒸着し、パッシベーション層を形成した。
【0146】
次に、印刷マスクを用いて、両面にそれぞれ、銀電極(デュポン社、PV159A)をスクリーン印刷により形成した。次いで、150℃で乾燥後、トンネル型焼成炉((株)ノリタケカンパニーリミテド)を用いて700℃で焼成して太陽電池素子を作製した。作製後の太陽電池素子ソーラシュミレータ((株)ワコム電創、XS−155S−10)を用いて発電特性を評価した。発電性能は、Jsc(短絡電流密度)、Voc(開放電圧)、F.F.(曲線因子)及びη(変換効率)について、それぞれJIS−C−8913(2005年度)及びJIS−C−8914(2005年度)に準拠して測定した。Jsc(短絡電流密度)、Voc(開放電圧)、F.F.(曲線因子)及びη(変換効率)は、それぞれ、30.67mA/cm
2、588mV、0.79及び14.2%であった。
【0147】
(マスク性能の評価)
n型拡散層形成組成物をn型シリコン基板(表面ミラー加工)に付与し、N
2:10L/minを流した拡散炉(光洋サーモシステム(株)、206A−M100)中にて、700℃に設定した状態で基板を入れ、その後、930℃まで15℃/minで昇温し、930℃になったら、N
2:19L/min、O
2:0.06L/min、BBr
3をバブリングしたN
2:0.06L/minのガスを流した状態で、930℃で30分間熱処理し、n型拡散層とp型拡散層とを一括して形成した。その後、N
2:10L/minのガスに切り替え、700℃まで10℃/minで降温し、拡散炉からn型シリコン基板を取り出した。
【0148】
続いて、n型シリコン基板の表面に残存したガラス層(n型拡散層形成組成物の熱処理物及びボロンシリケートガラス層13)をフッ酸によって除去した。その後、n型拡散層形成組成物付与部における、n型シリコン基板表層のホウ素元素の濃度を、SIMS(二次イオン質量分析計、CAMECA社、IMS−7F)を用いて測定した。一次イオンにはCs
+を用いた。n型シリコン基板表層のホウ素濃度は検出限界(10
16atom/cm
3)以下であり、n型拡散層形成組成物の熱処理物によってホウ素の拡散を阻害していることが分かった。
【0149】
[実施例3]
粒子形状が略球状で、D50%が0.35μm、軟化温度が約880℃のガラス粒子(B
2O
3、SiO
2、CaO、Al
2O
3及びBaOを主成分とし、それぞれの含有率が20質量%、65質量%、5質量%、5質量%及び5質量%)10g、エチルセルロース6g、及びテルピネオール84gを混合してペースト化し、p型拡散層形成組成物2を調製した。
【0150】
p型拡散層形成組成物2をp型拡散層形成組成物の替わりに用いた以外は実施例1と同様にして評価した。
【0151】
p型拡散層形成組成物2を付与した部分のシート抵抗の平均値は43Ω/□、p型拡散層形成組成物を付与した面とは反対面に形成されたn型拡散層領域のシート抵抗の平均値は55Ω/□であった。
【0152】
発電性能は、Jsc(短絡電流密度)、Voc(開放電圧)、F.F.(曲線因子)、及びη(変換効率)について、それぞれ、30.91mA/cm
2、595mV、0.78、及び14.3%であった。
【0153】
p型拡散層形成組成物付与部における、n型シリコン基板表層のリン元素の濃度は検出限界(10
16atom/cm
3)以下であり、p型拡散層形成組成物2の熱処理物によってリンの拡散を阻害していることが分かった。
【0154】
[比較例1]
ホウ酸10g、エチルセルロース6g、及びテルピネオール84gを混合してペースト化し、p型拡散層形成組成物Cを調製した。
【0155】
p型拡散層形成組成物Cをp型拡散層形成組成物の替わりに用いた以外は実施例1と同様にして太陽電池素子を作製して評価した。発電性能は、Jsc(短絡電流密度)、Voc(開放電圧)、F.F.(曲線因子)、及びη(変換効率)について、それぞれ、27.51mA/cm
2、561mV、0.76、及び11.7%であった。
【0156】
(マスク性能の評価)
シリコン基板におけるp型拡散層形成組成物C付与部のリンの濃度を実施例1と同様に測定した。リンの濃度は10
19atom/cm
3であり、p型拡散層形成組成物C付与部にリンが拡散していることが分かった。p型拡散層形成用組成物の熱処理物にクラックが発生しており、このクラックからリンが混入したものと考えられる。以上から、p型拡散層形成組成物Cのマスク性能はp型拡散層形成組成物よりも劣ることが分かった。
【0157】
[比較例2]
リン酸二水素アンモニウム10g、エチルセルロース6g、及びテルピネオール84gを混合してペースト化し、n型拡散層形成組成物Cを調製した。
【0158】
n型拡散層形成組成物Cをn型拡散層形成組成物の替わりに用いた以外は実施例2と同様にして太陽電池素子を作製して評価した。発電性能は、Jsc(短絡電流密度)、Voc(開放電圧)、F.F.(曲線因子)、及びη(変換効率)について、それぞれ、27.11mA/cm
2、556mV、0.76、及び11.5%であった。
【0159】
(マスク性能の評価)
シリコン基板におけるn型拡散層形成組成物C付与部のホウ素の濃度を実施例2と同様に測定した。ホウ素の濃度は5×10
18atom/cm
3であり、n型拡散層形成組成物C付与部にホウ素が拡散していることが分かった。n型拡散層形成用組成物の熱処理物は多孔質状であり、シリコン基板表面をn型拡散層形成用組成物できちんと覆えていないために、ホウ素の拡散を抑制できなかったと考えられる。以上から、n型拡散層形成組成物Cのマスク性能はn型拡散層形成組成物よりも劣ることが分かった。