(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上述した従来技術に鑑みてなされたものであり、簡便な方法で容易にスケールを除去するための方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく、鋭意検討した結果、スケールの除去方法において、ラテックスに極性低分子化合物を配合する工程を採用することで、上記課題を解決することを見出し、この知見に基づき本発明を完成するに到った。
【0008】
上記課題を解決する本発明の要旨は以下の通りである。
〔1〕ラテックスに極性低分子化合物を配合する工程を含む、スケールの除去方法。
【0009】
〔2〕ラテックスの製造から搬出に至る工程で使用する容器に付着したスケールを除去する方法であって、
ラテックスに極性低分子化合物を配合する工程を含む、スケールの除去方法。
【0010】
〔3〕該容器が、重合容器、濃縮容器または貯蔵容器である〔2〕に記載のスケールの除去方法。
【0011】
〔4〕ラテックスを排出した後の容器に水を入れ、攪拌する工程を含む、〔2〕または〔3〕に記載のスケールの除去方法。
【0012】
〔5〕極性低分子化合物の配合量が、ラテックスの固形分100重量部に対して0.05重量部以上である〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載のスケールの除去方法。
【0013】
〔6〕極性低分子化合物の分子量が30〜1000である〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載のスケールの除去方法。
【0014】
〔7〕極性低分子化合物が尿素である〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載のスケールの除去方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るスケールの除去方法によれば、ラテックスに極性低分子化合物を配合する工程を採用することで、スケールが水に対して分散しやすくなるため、容易にスケールを除去することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ラテックスに極性低分子化合物を配合する工程
本発明に係るスケールの除去方法は、ラテックスに極性低分子化合物を配合する工程を含む。より具体的には、本発明に係るスケールの除去方法は、ラテックスの製造から搬出に至る工程で使用する容器に付着したスケールを除去する方法であって、ラテックスに極性低分子化合物を配合する工程を含むことを特徴としている。
【0017】
ラテックスに極性低分子化合物を配合することで、ラテックスの製造から搬出に至る工程で使用する容器に付着したスケールの除去が容易になる。これは、ラテックスに配合された極性低分子化合物が、スケールにも含まれる結果、水に対するスケールの分散性が向上することに起因していると考えられる。また、ラテックスに極性低分子化合物を配合することで、ラテックスの凝集を抑制し、スケールの発生を低減できる。その結果、ラテックスの生産性を向上できる。
【0018】
ラテックスの製造から搬出に至る工程で使用する容器は特に限定されず、例えば、ラテックスの製造のために用いる重合容器、ラテックスの濃縮に用いる濃縮容器、ラテックスを貯蔵するための貯蔵容器などが挙げられる。これらの容器には特にスケールが付着しやすいが、本発明に係るスケールの除去方法によれば、簡便かつ容易にスケールを除去することができる。
【0019】
(ラテックス)
本発明におけるラテックスは特に制限されず、例えば、ジエン系重合体粒子水分散液、アクリル系重合体粒子水分散液、フッ素系重合体粒子水分散液、シリコーン系重合体粒子水分散液などが挙げられる。
【0020】
ジエン系重合体粒子水分散液とは、ブタジエン、イソプレンなどの共役ジエンを重合してなる単量体単位を含む重合体(ジエン系重合体)の水分散液である。ジエン系重合体中の共役ジエンを重合してなる単量体単位の割合は、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上である。
なお、本発明において、単量体単位とは、当該単量体を重合して形成される重合体中の構造単位のことをいう。
【0021】
ジエン系重合体としては、共役ジエンの単独重合体;異なる種類の共役ジエン同士の共重合体;共役ジエンと共重合可能な他の単量体との共重合体;それらの水素添加物などが挙げられる。
【0022】
共役ジエンとしては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、2−クロル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、および2,4−ヘキサジエンなどが挙げられる。
【0023】
前記共重合可能な他の単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸類;スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有単量体; 酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類; N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物;(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸エステル化合物;β−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル基含有化合物;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのアミド系単量体などが挙げられる。なお、共役ジエン及び共重合可能な他の単量体は、それぞれ、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、本明細書では、(メタ)アクリルはアクリルおよびメタクリルの両者を包含する。
【0024】
ジエン系重合体の具体例としては、スチレン・ブタジエン共重合体(SBR)、スチレン・イソプレン共重合体(SIR)、イソブチレン・イソプレン共重合体(ブチルゴム)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体(NBR)、水素化SBR、水素化NBR等が挙げられる。これらの重合体は、1種単独または2種以上で用いることができる。
【0025】
アクリル系重合体粒子水分散液とは、一般式(1):CH
2=CR
1−COOR
2(式中、R
1は水素原子またはメチル基を、R
2はアルキル基またはシクロアルキル基を表す。)で表される化合物(以下、「(メタ)アクリル酸エステル化合物」と記載することがある。)由来の単量体単位を含む重合体(アクリル系重合体)の水分散液である。アクリル系重合体中の(メタ)アクリル酸エステル化合物由来の単量体単位の割合は、好ましくは40重量%以上、より好ましくは50重量%以上、さらに好ましくは60重量%以上である。
【0026】
(メタ)アクリル酸エステル化合物の具体例としては、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t-ブチル、(メタ)アクリル酸n−アミル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸n−ヘキシル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリルなどが挙げられる。
【0027】
アクリル系重合体としては、(メタ)アクリル酸エステル化合物の単独重合体;異なる種類の(メタ)アクリル酸エステル化合物同士の共重合体;(メタ)アクリル酸エステル化合物と共重合可能な他の単量体との共重合体などが挙げられる。
【0028】
前記共重合可能な他の単量体としては、(メタ)アクリロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−エチルアクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル化合物;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸などの不飽和カルボン酸類;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレートなどの2つ以上の炭素−炭素二重結合を有するカルボン酸エステル類;パーフルオロオクチルエチル(メタ)アクリレートなどの側鎖にフッ素を含有する不飽和エステル類;スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸などのアミド系単量体;エチレン、プロピレン等のオレフィン類;ブタジエン、イソプレン等のジエン系単量体;塩化ビニル、塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、イソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N−ビニルピロリドン、ビニルピリジン、ビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物;アリルグリシジルエーテルなどのグリシジルエーテル類;グリシジル(メタ)アクリレートなどのグリシジルエステル類などが挙げられる。なお、一般式(1)で表される化合物及び共重合可能な他の単量体は、それぞれ、1種類を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせてもよい。
【0029】
フッ素系重合体粒子水分散液とは、フッ素含有単量体を重合してなる単量体単位を含む重合体(フッ素系重合体)の水分散液である。フッ素系重合体中のフッ素含有単量体を重合してなる単量体単位の割合は、好ましくは70重量%以上、より好ましくは80重量%以上である。
【0030】
フッ素系重合体としては、フッ素含有単量体の単独重合体;異なる種類のフッ素含有単量体同士の共重合体;フッ素含有単量体と共重合可能な他の単量体との共重合体などが挙げられる。
【0031】
フッ素含有単量体としては、フッ化ビニリデン、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、三フッ化塩化ビニル、フッ化ビニル、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどが挙げられる。
【0032】
前記共重合可能な他の単量体としては、エチレン、プロピレン、1−ブテンなどのオレフィン類;スチレン、α−メチルスチレン、t−ブチルスチレン、ビニルトルエン、クロロスチレンなどの芳香族ビニル単量体;(メタ)アクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシルなどの(メタ)アクリル酸エステル化合物;(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミドなどのアミド系単量体;(メタ)アクリル酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸、マレイン酸などの不飽和カルボン酸類; アリルグリシジルエーテル、(メタ)アクリル酸グリシジルなどのエポキシ基含有不飽和化合物;(メタ)アクリルジメチルアミノエチル、(メタ)アクリル酸ジエチルアミノエチルなどのアミノ基含有不飽和化合物;スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸、(メタ)アリルスルホン酸などのスルホン酸基含有不飽和化合物;3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパン硫酸などの硫酸基含有不飽和化合物;(メタ)アクリル酸−3−クロロ−2−燐酸プロピル、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパン燐酸などの燐酸基含有不飽和化合物などが挙げられる。
【0033】
フッ素系重合体の具体例としては、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ化ビニリデン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体、テトラフルオロエチレンーヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリフッ化ビニル、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体などが挙げられる。これらの重合体は、1種単独または2種以上で用いることができる。
【0034】
シリコーン系重合体粒子水分散液とは、シリコーンゴム、フルオロシリコーンラバー、ポリイミドシリコーンなどのシリコーン系重合体の水分散液である。
【0035】
本発明におけるラテックスは、例えば、上記単量体の混合物を水中で乳化重合することにより製造できる。単量体の混合方法は特に限定されず、例えば、撹拌式、振とう式、および回転式などの混合装置を使用した方法が挙げられる。また、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル、プラネタリーミキサーおよび遊星式混練機などの分散混練装置を使用した方法が挙げられる。乳化重合の方法としては特に限定されず、従来公知の乳化重合法を採用すればよい。
【0036】
乳化重合に使用する重合開始剤としては、たとえば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;t−ブチルパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物等が挙げられる。これらの重合開始剤は、それぞれ単独でまたは2種類以上を組み合わせて使用することができる。また、過酸化物開始剤は、重亜硫酸ナトリウム等の還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することもできる。
【0037】
また、乳化重合時に連鎖移動剤を使用してもよい。連鎖移動剤としては、たとえば、n−ヘキシルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−ステアリルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;ジメチルキサントゲンジサルファイド、ジイソプロピルキサントゲンジサルファイド等のキサントゲン化合物;ターピノレンや、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド等のチウラム系化合物;2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、スチレン化フェノール等のフェノール系化合物;アリルアルコール等のアリル化合物;ジクロルメタン、ジブロモメタン、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素化合物;チオグリコール酸、チオリンゴ酸、2−エチルヘキシルチオグリコレート、ジフェニルエチレン、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。これらの連鎖移動剤は、単独または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0038】
乳化重合に使用する界面活性剤は、特に限定されず、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤及びカチオン性界面活性剤のいずれでもよい。これらの界面活性剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0039】
アニオン性界面活性剤の具体例としては、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム、オレイン酸ナトリウム、リノレン酸カリウム等の脂肪酸塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩;アルキルスルホコハク酸塩;ロジン酸塩等を挙げることができる。
【0040】
非イオン性界面活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等を挙げることができる。
【0041】
カチオン性界面活性剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。
【0042】
ラテックスには、公知の分散剤、増粘剤、老化防止剤、消泡剤、防腐剤、抗菌剤、ブリスター防止剤などを必要に応じて添加することもできる。
【0043】
ラテックスの固形分濃度は、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは30〜55重量%である。
【0044】
極性低分子化合物
本発明における極性低分子化合物は、極性基を有する低分子化合物であれば特に限定されない。
極性低分子化合物としては、極性低分子有機化合物が好ましい。
また、極性低分子有機化合物としては、水溶性極性低分子有機化合物が好ましい。
極性基として、好ましくは水酸基、アミノ基またはアミド基などが挙げられ、より好ましくはアミノ基である。また、極性低分子化合物の分子量は、好ましくは30〜1000、より好ましくは40〜500、さらに好ましくは50〜200である。このような極性低分子化合物をラテックスに配合することで、生成するスケールにも極性低分子化合物が含まれ、水に対するスケールの分散性が向上し、スケールの除去が容易になる。
【0045】
極性低分子化合物の具体例としては、尿素、モノエチレングリコール、ジエチレングリコール、テトラエチレングリコール等が特に好ましく、最も好ましくは尿素である。
【0046】
極性低分子化合物の配合量は、ラテックスの固形分100重量部に対して、好ましくは0.05重量部以上、より好ましくは0.05〜20重量部、さらに好ましくは0.5〜15重量部、特に好ましくは2〜15重量部である。極性低分子化合物の配合量を上記範囲とすることで、スケールの除去率や最終的に得られるゴムの引張強度を向上させることができる。スケールの除去率やゴムの引張強度は、実施例に記載の方法により測定できる。
【0047】
ラテックスに極性低分子化合物を配合する方法は特に限定されず、例えば、撹拌式、振とう式、および回転式などの混合装置を使用した方法や、ホモジナイザー、ボールミル、サンドミル、ロールミル、プラネタリーミキサーおよび遊星式混練機などの分散混練装置を使用した方法が挙げられる。また、重合容器に極性低分子化合物を添加する場合には、極性低分子化合物の全量を予め容器に加えてもよく、逐次的に添加してもよい。
【0048】
ラテックスを排出した後の容器に水を入れ、攪拌する工程
本発明に係るスケールの除去方法は、上記の工程の他に、ラテックスを排出した後の容器に水を入れ、攪拌する工程を含むことが好ましい。ラテックスに極性低分子化合物を配合することにより、スケールにも極性低分子化合物が微分散されるため、スケールが水に対して分散しやすくなる。その結果、ラテックスを排出した後の容器に水を入れ、攪拌するという簡便な工程で、容易にスケールを除去することができる。そのため、高圧洗浄等の工程によりスケールを除去する方法と比較して簡便な工程でスケールを除去することができ、ラテックスの生産性を向上させることができる。
【0049】
攪拌に要する時間や温度は特に制限されず、攪拌方法や水の量に応じて任意に選択できるが、撹拌時間は、好ましくは10〜300分間、より好ましくは30〜180分間であり、温度は、好ましくは10〜90℃、より好ましくは20〜80℃である。
【0050】
攪拌方法は特に制限されず、例えば、攪拌機などの装置を用いることができる。
【実施例】
【0051】
以下に実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。なお、本実施例における部および%は、特記しない限り重量基準である。実施例および比較例において、以下の評価を行った。以下の評価において、ラテックス混合物とは、ラテックスと極性低分子化合物との混合物をいう。比較例においてはラテックスに極性低分子化合物を配合していないため、ラテックスを用いて以下の評価を行った。
【0052】
<付着ゴムの除去率>
ステンレス製2L容器に、ゴム量換算で8gに相当するラテックス混合物を試験体として入れた。その後、ラテックス混合物を、20℃、相対湿度60%の恒温恒湿下で固形分濃度が95%以上になるまで放置して乾燥させ、容器にゴムを付着させた。
【0053】
容器に、脱イオン水を1L添加し、攪拌機を用いて1時間攪拌した。
【0054】
上記の脱イオン水と容器から除去された付着ゴムとの混合物を325メッシュの金網でろ過し、その後金網を100℃にて3時間乾燥し、金網上の乾燥ゴムの重量を測定した。
【0055】
付着ゴム(スケール)の除去率は以下の計算式で算出した。
付着ゴムの除去率[%]=(乾燥ゴムの重量/試験体の全ゴム量(8g))×100
【0056】
<引張強度>
(1)試験片の作製
厚みが1mmになるように、ラテックス混合物を20℃、相対湿度60%の恒温恒湿下で固形分濃度が95%以上となるまで乾燥し、次いで、100℃、10分間の熱処理を行った。
【0057】
その後、上記で得られたラテックス混合物の乾燥体(ゴム)を、JIS K−6251−2(L=60)に準拠してダンベル型に打ち抜き、試験片を作製した。
【0058】
(2)破断強度(TB)の測定方法
上記の試験片をインストロンジャパンカンパニイリミテッド社製 INSTRON 3343を用いて引張速度500mm/分で引張り、破断強度(TB)を測定し、ゴムの引張強度とした。なお、引張強度は高い程好ましく、ラテックスの種類ごとに比較例を100として標準化した。
【0059】
(実施例1〜15および比較例1〜3)
ラテックスとして、SBRラテックス(日本ゼオン製 Nipol 2518FSH、固形分濃度40.5%)、NBRラテックス(日本ゼオン製 Nipol LX552、固形分濃度43.2%)、アクリル系重合体ラテックス(日本ゼオン製 Nipol LX811H、固形分濃度50.0%)を用意した。
【0060】
以下の表1〜3に記載のラテックスの固形分100部に対して、極性低分子化合物として尿素を表1〜3に記載の配合量で添加し、次いで、脱イオン水を添加して、固形分濃度を40%に調整し、凝集物が発生しないように攪拌機を用いて混合し、ラテックス混合物を得た。
得られたラテックス混合物について上記の評価を行った。
【0061】
【表1】
【0062】
【表2】
【0063】
【表3】
【0064】
上記の表1〜3より、ラテックスに極性低分子化合物を配合しない場合(比較例1〜3)と比較して、ラテックスに極性低分子化合物を配合する工程を有するスケールの除去方法(実施例1〜15)は、付着ゴム(スケール)の除去率に優れることが分かる。そのため、簡便な方法でラテックスの生産性を向上できることが分かる。