(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を適用した水酸化コバルト粒子及びその製造方法、並びにその水酸化コバルト粒子を用いた正極活物質及びその製造方法について詳細に説明する。なお、本発明は、特に限定がない限り、以下の詳細な説明に限定されるものではない。本発明に係る実施の形態の説明は、以下の順序で行う。
1.水酸化コバルト粒子
2.水酸化コバルト粒子の製造方法
2−1.核生成工程
2−2.粒子成長工程
3.正極活物質の製造方法
4.正極活物質
5.非水系電解質二次電池
【0022】
<1.水酸化コバルト粒子>
本発明の実施の形態に係る水酸化コバルト粒子は、非水系電解質二次電池の正極活物質の前駆体であって、特にリチウムイオン二次電池の正極活物質の前駆体となるものである。
【0023】
水酸化コバルト粒子は、一次粒子が凝集した球状の二次粒子からなり、二次粒子の平均アスペクト比が0.7以上であり、平均粒径が5〜35μmであり、粒度分布のばらつきを示す(d90−d10)/MVの値が0.6以下である。また、水酸化コバルト粒子は、二次粒子の断面観察において、二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子内で確認される最大長径が0.3μm以上の空隙の個数(N)の二次粒子の断面長径(L)に対する比(N/L)が1.0以下であり、かつ空隙の最大長径が二次粒子の断面長径の15%以下である。
【0024】
(球状の二次粒子、アスペクト比)
水酸化コバルト粒子は、一次粒子が凝集した球状の二次粒子から構成されており、二次粒子の平均アスペクト比が0.7以上である。水酸化コバルト粒子は、二次粒子の形状を球状とし、かつその平均アスペクト比を0.7以上とすることで、充填性に優れたものとなる。また、水酸化コバルト粒子は、二次粒子の形状を球状とすることで、粒子間に生じる空隙が抑制され、充填性が向上する。ここで、球状とは、楕円形や粒子表面に凹凸がある球状を含むものである。
【0025】
また、二次粒子のアスペクト比を0.7以上とすることで、粒子間に生じる空隙がさらに抑制され、充填性がより向上する。アスペクト比が0.7を下回る場合には、二次粒子の球状性が劣り、粒子間の空隙が増え、水酸化コバルト粒子の充填性が低下してしまう。
【0026】
個々の二次粒子におけるアスペクト比は、走査型電子顕微鏡による粒子外観観察における二次粒子の画像上で、粒子の外縁上の点から最大長さとなる他の外縁上の点の距離を測定粒径として、その粒子において最大の測定粒径に対する最小の測定粒径の比を計測することにより求めることができる。平均アスペクト比とは、個々の二次粒子において求めたアスペクト比の平均値であり、具体的には、走査型電子顕微鏡の外観観察から任意に20個以上の粒子を選び、その20個以上の粒子について求めたアスペクト比を個数平均することで得られる。
【0027】
(平均粒径)
水酸化コバルト粒子、即ち二次粒子の平均粒径は、5〜35μm、好ましくは15〜35μm、さらに好ましくは25〜35μmである。ここで、平均粒径とは、MV(体積平均粒径)を意味する。
【0028】
平均粒径を5〜35μmとすることで、高い充填性と、リチウム化合物と混合して焼成する際の粒子間の反応の均一化を向上させることができる。平均粒径が5μm未満の場合には、水酸化コバルト粒子の充填性が低下してしまう。平均粒径が35μmを超える場合には、水酸化コバルト粒子の粒度分布が広がり、粒子間でリチウム化合物との反応性にばらつきが大きくなってしまう。
【0029】
(粒度分布のばらつき)
「(d90−d10)/MV」とは、水酸化コバルト粒子の粒度分布の広がりを示す指標である。水酸化コバルト粒子は、(d90−d10)/MVの値が0.6以下であり、好ましくは0.59以下である。
【0030】
水酸化コバルト粒子の(d90−d10)/MVの値を0.6以下とすることで、水酸化コバルト粒子の粒度分布の広がりを抑制して粒径の均一性が高く、リチウム化合物と混合して焼成する際の粒子間の反応を均一化することが可能であり、高いクーロン効率を有する正極活物質を得ることができる。一方、(d90−d10)/MVの値が0.6を超える場合には、リチウム化合物との反応の均一化が十分に達成できないばかりか、得られる正極活物質の微細粒子の増加によるサイクル特性の悪化や、粗大粒子増加による非水系電解質二次電池内の短絡という問題を生じる原因となる。
【0031】
ここで、d90、d10は、それぞれ体積累積分布が90%、10%になる粒径である。(d90−d10)/MVは、小さいほど高い粒径の均一性が得られるが、製造上の制約などを考慮すると、(d90−d10)/MVの下限は、通常0.3程度である。なお、d90、d10及びMV(体積平均粒径)は、レーザ回折式粒度分布計を用いて、レーザ回折散乱法によって測定することができる。
【0032】
(N/L、空隙の最大長径)
水酸化コバルト粒子は、二次粒子の断面観察において、二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子内で確認される最大長径が0.3μm以上の空隙の個数(N)の二次粒子の断面長径(L)に対する比(N/L)が1.0以下であり、かつ空隙の最大長径が二次粒子の断面長径の15%以下である。
【0033】
水酸化コバルト粒子は、空隙の個数(N)の二次粒子の断面長径(L)に対する比(N/L)が1.0以下であり、かつ空隙の最大長径が二次粒子の断面長径の15%以下であることによって、緻密性の高いものとなる。N/Lが1.0を超えるか、あるいは空隙の最大長径が二次粒子の断面長径の15%を超える場合には、粒子内の空隙率が高い状態であり、水酸化コバルト粒子の緻密性が低下する。
【0034】
なお、最大長径が0.3μm未満の空隙は、正確に空隙であるか判断することが困難であると共に、粒子の緻密性に対する影響が小さいため除外する。さらに、空隙の個数あるいは大きさを計測する粒子として、断面長径が3μm未満の粒子を除外している。これは、断面長径が3μm未満の粒子は、断面観察が粒子の任意の位置での断面であるため、粒子の表面付近の断面である可能性がある。このような表面付近の断面では、粒子表面の凹みが空隙として観察され、粒子内部の空隙を正確に評価できない可能性があるためである。
【0035】
断面長径及び空隙長径は、走査型電子顕微鏡観察上における測定する粒子あるいは空隙の外縁の点から最大長さとなる他の外縁上の点の距離である。空隙の最大長径は、当該空隙における最大の空隙長径を意味する。
【0036】
さらに、空隙の最大長径が、2μm以下であることが好ましい。水酸化コバルト粒子の空隙の最大長径は、二次粒子の断面長径の15%以下であるが、粒径が大きい二次粒子では許容される空隙の最大長径も相対的に大きくなる。そのため、空隙の最大長径を2μm以下とすることで、粒径の大きな粒子においても緻密性をより高いものとすることができる。
【0037】
(タップ密度)
水酸化コバルト粒子は、タップ密度が2〜3g/mLであることが好ましい。このような充填性の高い水酸化コバルト粒子を原料とすることで、得られる正極活物質の充填性もより高いものとなり、正極活物質を用いて形成された電極もより高い充填密度を持つため好ましい。
【0038】
(水酸化コバルトの組成)
水酸化コバルトの組成としては、Co(OH)
2で表される2価の水酸化コバルトが好ましく、充填性が向上するモフォロジーの水酸化コバルト粒子となるように、容易に制御することができる。一方、Co(OH)
3、CoOOHといった3価のコバルト塩では、高充填性のモフォロジーの水酸化コバルト粒子となるように制御することが困難であり、好ましくない。
【0039】
水酸化コバルト粒子には、正極活物質として電池に用いられた際に電池特性を改善し、電池特性の向上のために、通常添加される元素を含有させることができる。なお、ここでいう「モフォロジー」とは、粒子の外形、平均アスペクト比、平均粒径、粒度分布の広がりを示す指標、粒子内の空隙、タップ密度などの粒子の形態、構造に関わる特性である。
【0040】
<2.水酸化コバルト粒子の製造方法>
水酸化コバルト粒子の製造方法は、反応容器内を非酸性雰囲気に制御しながら、塩素含有コバルト塩水溶液、無機アルカリ水溶液及びアンモニウムイオン含有水溶液を反応容器に供給して反応液とし、反応液の液温25℃基準におけるpH値を10.5〜12.0となるように制御して、核生成を行う核生成工程と、核生成工程において反応液中に形成された核を含有する粒子成長用水溶液を、液温25℃基準におけるpH値が9.5〜10.5、かつ核生成工程におけるpHより低くなるように制御し粒子成長を行う粒子成長工程とを有する。水酸化コバルト粒子の製造方法では、このような核生成工程と、粒子成長工程とを有することにより、狙いのモフォロジーを有する水酸化コバルト粒子を得ることができる。
【0041】
(2−1.核生成工程)
核生成工程では、反応容器内を非酸性雰囲気に制御しながら、塩素含有コバルト塩水溶液、無機アルカリ水溶液及びアンモニウムイオン含有水溶液を用いて水酸化コバルト粒子の核を生成する。
【0042】
核生成工程では、塩素含有コバルト塩水溶液を使用すると共に反応容器内を非酸化性雰囲気に制御することにより、後の粒子成長工程で緻密性の高い二次粒子が得られる。反応液中に存在する塩素により、反応液中で生成される一次粒子のアスペクト比の低下が抑制され、一次粒子の形状を柱状、直方体または立方体に成長させ、板状粒子が発達して空隙が多く生成されることを抑制することが可能となる。
【0043】
塩素含有コバルト塩水溶液は、水酸化コバルト粒子の原材料の1つであり、塩素の含有量がコバルトの含有量に対してモル比で1〜3であることが好ましく、1.5〜3であることがより好ましい。塩素の含有量をモル比で1〜3とすることで、水酸化コバルト粒子の緻密性をより向上させることができる。
【0044】
モル比が1未満の場合には、一次粒子のアスペクト比の低下を抑制する効果が十分に得られず、緻密性が低下することがある。一方、モル比が3を超える場合には、二価のコバルトイオンに対して大過剰な塩素が存在することになり、中和に必要な無機アルカリが多くなるため、水酸化コバルト粒子に無機アルカリが過剰に残留することがある。
【0045】
塩素含有コバルト塩水溶液としては、塩化コバルトの水溶液の他、コバルトやコバルト化合物を塩酸のような塩素を含む酸に溶解させたものを用いることができる。また、塩素含有コバルト塩水溶液に塩酸などを添加することにより、塩素の含有量を調整してもよい。
【0046】
塩素含有コバルト塩水溶液の濃度は、コバルトとして1mol/L〜2.6mol/Lとすることが好ましく、さらには1.5mol/L〜2.2mol/Lとすることが好ましい。塩素含有コバルト塩水溶液の濃度が1mol/L未満では、反応容器当たりの晶析物量が少なくなるために生産性が低下して好ましくない。一方、塩素含有コバルト塩水溶液の塩濃度が2.6mol/Lを超えると、常温での飽和濃度を超えるため、結晶が再析出して設備の配管を詰まらせるなどの危険がある。
【0047】
さらに、核生成工程では、塩素を反応液中に含有させると共に、反応容器内を非酸化性雰囲気に制御することにより、一次粒子のアスペクト比の低下をさらに抑制して、一次粒子を成長させることが可能となり、緻密性に優れた水酸化コバルト粒子を得ることができる。
【0048】
非酸性雰囲気としては、酸素濃度が5容量%以下の不活性ガス混合雰囲気が好ましく、酸素濃度が2容量%以下の不活性ガス混合雰囲気がより好ましい。
【0049】
一方、反応容器内を酸化性雰囲気に制御すると、水酸化コバルト粒子の形状が板状になりやすくなると共に、一次粒子が微細化して、水酸化コバルト粒子の緻密性が低下する。また、酸化性雰囲気では、二次粒子の成長が抑制されるため、平均粒径が小さくなる。反応容器内の雰囲気の制御方法としては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガスを反応容器に導入する方法が好ましい。
【0050】
具体的に、核生成工程では、反応容器内を非酸性雰囲気に制御しながら、塩素含有コバルト塩水溶液、無機アルカリ水溶液及びアンモニウムイオン含有水溶液を反応容器に供給して反応液とする。この際、塩素含有コバルト塩水溶液に添加元素を含有させてもよく、添加元素の塩を含む水溶液を、別途供給してもよく、反応液中の金属の組成比を水酸化コバルト粒子と同様にする。
【0051】
ここで、核生成工程では、反応液の液温25℃基準におけるpH値を10.5〜12.0となるように制御して核を生成させる。反応槽内においてpHが調整されると、水酸化コバルトの微細な核が生成される。このとき、反応液のpH値は、10.5〜12.0の範囲にあるので、生成した核はほとんど成長することなく、核の生成が優先的に生じる。反応溶液のpH値は、無機アルカリ水溶液の供給量を調節することにより行うが、アンモニウムイオン含有水溶液の供給により反応液のpH値が上記範囲に調整されれば、無機アルカリ水溶液を供給しなくともよい。
【0052】
pH値が10.5未満では、核の凝集は抑制されるが、核を形成する一次粒子のアスペクト比が低下して核となる粒子の緻密性が低下し、粒子成長工程を経て得られた水酸化コバルト粒子の緻密性も低下する。また、pH値が10.5未満になると、核生成のみだけでなく、粒子成長も生じるため、水酸化コバルト粒子の粒径の均一性が低下する。
【0053】
一方、pH値が12.0を超えると、核となる粒子は、粒子間の凝集が顕著になって板状化し、粒子成長工程を経て得られた水酸化コバルト粒子の球状性が悪化する。また、核となる粒子も微細化するため、水酸化コバルト粒子の緻密性が低下する。
【0054】
核生成工程では、核生成の制御をより容易にするため、予め、pH値及びアンモニウムイオン濃度を調整した水溶液に、これらを維持しながら塩素含有コバルト塩水溶液を供給して、核を生成させてもよい。
【0055】
(2−2.粒子成長工程)
粒子成長工程は、核生成工程で生成した核を成長させて水酸化コバルト粒子を生成する。粒子成長工程では、核生成工程の終了後、核生成工程で形成された核を含有する反応液のpH値を、液温25℃基準で、9.5〜10.5で、かつ核生成工程におけるpH値より低くなるように調整して、粒子成長工程における反応液である粒子成長用水溶液を得る。具体的には、pH値の制御は、無機アルカリ水溶液の供給量を調節することにより行う。
【0056】
粒子成長工程では、粒子成長用水溶液のpH値を上記範囲とすることにより、核の生成反応よりも核の成長反応の方が優先して生じるため、粒子成長用水溶液に新たな核はほとんど生成されず、核が成長(粒子成長)して、所定の粒子径を有する水酸化コバルト粒子が形成される。
【0057】
pH値が10.5を超える場合には、新たに生成される核が多くなり、微細二次粒子が生成するため、粒径分布が良好な水酸化物粒子が得られない。また、pH値が9.5未満では、晶析が不安定になって、粒子形状が安定しない。また、pH値が9.5未満の場合には、アンモニウムイオンによる溶解度が高く、析出せずに液中に残る金属イオンが増えるため、生産効率が悪化する。
【0058】
粒子成長工程では、粒子成長用水溶液に塩素含有コバルト塩水溶液を供給して粒子成長させるが、塩素含有コバルト塩水溶液の供給による粒子成長に伴って、粒子成長用水溶液のpH値及びアンモニウムイオンの濃度が変化する。このため、粒子成長工程では、粒子成長用水溶液にも、塩素含有コバルト塩水溶液と共に、無機アルカリ水溶液、アンモニウムイオン含有水溶液を供給して、粒子成長用水溶液のpH値が9.5〜10.5の範囲を維持するように制御する。
【0059】
その後、水酸化コバルト粒子が所定の粒径まで成長した時点で、粒子成長工程を終了する。水酸化コバルト粒子の粒径は、予備試験により核生成工程と粒子成長工程の各工程におけるそれぞれの反応液へのコバルトの供給量と得られる粒子の粒径の関係を求めておけば、各工程でのコバルトの供給量から容易に判断できる。
【0060】
また、水酸化コバルト粒子の粒径は、コバルトの供給量のみならず、核生成工程のpH値でも制御することができる。
【0061】
すなわち、核生成時のpHを高pH値側とすることにより、あるいは核生成時間を長くすることにより投入するコバルトの供給量を増やし、生成する核の数を多くする。これにより、粒子成長工程を同条件とした場合でも、水酸化コバルト粒子の粒径を小さくできる。
【0062】
一方、核生成数が少なくなるように制御すれば、得られる水酸化コバルト粒子の粒径を大きくすることができる。
【0063】
さらに、核生成工程と粒子成長工程の各工程における反応液の撹拌を調整することで核の生成量や粒子成長を調整することでも粒径を制御することができる。例えば、核生成工程中、及び粒子成長工程の初期において、反応液の撹拌を弱くして、核や成長初期の粒子を凝集させて成長する粒子としての数が少なくなるように制御する。その後の粒子成長工程では、粒子が凝集しない程度に反応液の撹拌を強くして凝集した粒子を成長させれば、大きな粒径の水酸化コバルト粒子を得ることができる。この場合、撹拌を強くして凝集を抑制した後は、成長する粒子数は変化しないので粒度分布を狭い状態に維持しながら粒径を大きくすることができる。
【0064】
上述した核生成工程及び粒子成長工程で用いるアンモニウムイオン含有水溶液としては、反応液及び粒子成長用溶液のアンモニア濃度が、所定の濃度となるように制御できれば特に限定されず、例えば、アンモニア水のほか、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウム、フッ化アンモニウムなどを含む水溶液などを適宜使用することができる。
【0065】
反応液及び粒子成長用溶液のアンモニア濃度は、好ましくは5g/L〜20g/L、より好ましくは7.5g/L〜15g/Lに調整する。アンモニア濃度を5g/L〜20g/Lに調整することにより、さらに緻密性が高い水酸化コバルト粒子を得ることができる。アンモニア濃度が5g/L未満になると、一次粒子の形状が板状になりやすくなり、緻密性が低下することがある。一方、アンモニア濃度が20g/Lを超えると、モフォロジーの制御には効果が無く、薬品費用や排水処理費用が大きくなり、コスト高になるという問題が生じる
【0066】
無機アルカリ水溶液としては、反応液及び粒子成長用溶液のpH値が、所定の数値となるように制御できれば特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどのアルカリ金属水酸化物水溶液などを適宜使用することができる。
【0067】
反応液及び粒子成長用溶液のpH値、アンモニウムイオン濃度については、それぞれ一般的なpH計、イオンメータによって測定可能である。
【0068】
反応液及び粒子成長用溶液の液温を30℃〜50℃に調整することが好ましく、30℃〜40℃に調整することがより好ましい。30℃〜50℃に調整することにより、粒度分布と緻密性が安定した水酸化コバルト粒子が得られる。反応液及び粒子成長用溶液の液温が30℃未満の場合には、晶析の安定した制御が困難となることがあり、好ましくない。一方、液温が50℃を超える場合には、粒子間の凝集の抑制が不十分となり二次粒子の球状性が低下し、また、アンモニアの錯体形成能力が低くなって粒径制御が困難となることがあるため、好ましくない。
【0069】
以上のような水酸化コバルト粒子の製造方法では、核生成工程において核生成が優先して起こり、核の成長はほとんど生じず、逆に、粒子成長工程においては核成長のみが生じ、ほとんど新しい核は生成されない。このため、核生成工程では、粒度分布の範囲が狭く均質な核を形成させることができ、また、粒子成長工程では、均質に核を成長させることができる。したがって、上述した水酸化コバルト粒子の製造方法では、粒度分布の範囲が狭く、均質な水酸化コバルト粒子を得ることができる。
【0070】
なお、上述した水酸化コバルト粒子の製造方法の場合、両工程において、コバルトイオンは、核または複合水酸化物粒子となって晶出するので、それぞれの反応液中の金属成分に対する液体成分の割合が増加する。この場合、見かけ上、供給する塩素含有コバルト塩水溶液の濃度が低下したようになり、特に粒子成長工程において、水酸化コバルト粒子が十分に成長しない可能性がある。
【0071】
したがって、液体成分の増加を抑制するため、核生成工程終了後から粒子成長工程の途中で、粒子成長用水溶液中の液体成分の一部を反応槽外に排出することが好ましい。具体的には、粒子成長用水溶液に対する塩素含有コバルト塩水溶液、無機アルカリ水溶液及びアンモニウムイオン含有水溶液の供給及び撹拌を停止して、核や水酸化コバルト粒子を沈降させて、粒子成長用水溶液の上澄み液を排出する。これにより、粒子成長用水溶液における塩素含有コバルト塩水溶液の相対的な濃度を高めることができる。粒子成長工程では、塩素含有コバルト塩水溶液の相対的な濃度が高い状態で、水酸化コバルト粒子を成長させることができるので、水酸化コバルト粒子の粒度分布をより狭めることができ、水酸化コバルト粒子の二次粒子全体としての密度も高めることができる。
【0072】
また、上述した水酸化コバルト粒子の製造方法では、核生成工程が終了した反応液のpHを調整して粒子成長用水溶液を形成して、核生成工程から引き続いて粒子成長工程を行っているので、粒子成長工程への移行を迅速に行うことができるという利点がある。さらに、核生成工程から粒子成長工程への移行は、反応液のpHを調整するだけで移行でき、pHの調整も一時的にアルカリ水溶液の供給を停止することで容易に行うことができるという利点がある。また、粒子成長工程で成長させる核の量が確保されれば、予め、pH値及びアンモニウムイオン濃度を調整した水溶液に、塩素含有コバルト塩水溶液とアンモニウムイオン含有水溶液を供給して核を生成させ、アンモニウムイオン濃度を維持しながら塩素含有コバルト塩水溶液の供給を継続し、そのまま粒子成長工程のpH値に調整することも可能である。この場合、核生成工程において無機アルカリ水溶液の供給によりpH値を一定に維持することが不要であり、核生成をより容易に行うことができる。なお、反応液のpHは、塩素含有コバルト塩水溶液に含まれる酸と同種の無機酸、例えば、塩酸を反応液に添加することでもより迅速に調整することができる。
【0073】
また、上述した水酸化コバルト粒子の製造方法では、核生成工程から引き続き粒子成長工程を行っているが、このことに限定されず、核生成工程が終了した反応液とは別の粒子成長用溶液を用いてもよい。具体的には、核生成工程が終了した反応液とは別に、粒子成長工程に適したpH値、アンモニウムイオン濃度に調整された成分調整水溶液を形成しておき、この成分調整水溶液に、別の反応槽で核生成工程を行って生成した核を含有する反応液(好ましくは反応液から液体成分の一部を除去したもの)を添加して粒子成長用水溶液とし、この粒子成長用水溶液を用いて粒子成長工程を行ってもよい。
【0074】
この場合には、核生成工程と粒子成長工程の分離を、より確実に行うことができるので、各工程における反応液の状態を、各工程に最適な条件とすることができる。特に、粒子成長工程の開始時点から、粒子成長用水溶液のpH値を最適な条件とすることができる。粒子成長工程で形成される水酸化コバルト粒子を、より粒度分布の範囲が狭く、かつ、均質なものとすることができる。
【0075】
また、上述した水酸化コバルト粒子の製造方法では、粒子成長工程により成長した水酸化コバルト粒子を固液分離し、水洗、乾燥する処理を行う。
【0076】
以上のような水酸化コバルト粒子の製造方法では、一次粒子が凝集した球状の二次粒子からなり、二次粒子の平均アスペクト比が0.7以上であり、平均粒径が5〜35μmであり、粒度分布のばらつきを示す(d90−d10)/MVの値が0.6以下であり、二次粒子の断面観察において、二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子内で確認される最大長径が0.3μm以上の空隙の個数(N)の該二次粒子の断面長径(L)に対する比(N/L)が1.0以下であり、かつ空隙の最大長径が該二次粒子の断面長径の15%以下である水酸化コバルト粒子を得ることができる。したがって、この水酸化コバルト粒子の製造方法では、高充填性を有し、緻密性が高く、非水系電解質二次電池の正極活物質の前駆体として好適な水酸化コバルト粒子を得ることができる。
【0077】
<3.正極活物質の製造方法>
正極活物質の製造方法では、上述した水酸化コバルト粒子を前駆体として用いて非水系電解質二次電池用の正極活物質を製造する。例えば、正極活物質の製造方法は、上述した水酸化コバルト粒子とリチウム化合物とを混合して焼成して、必要に応じて解砕することにより、正極活物質となるリチウムコバルト複合酸化物粒子を得る。
【0078】
また、正極活物質の製造方法では、リチウムコバルト複合酸化物粒子の生成を促進するため、リチウム化合物との混合前に、水酸化コバルト粒子を酸化雰囲気中で熱処理して酸化コバルト粒子を生成し、その酸化コバルト粒子とリチウム化合物を混合してもよい。
【0079】
酸化コバルト粒子の製造方法としては、水酸化コバルト粒子を300℃〜900℃の温度に加熱し、水酸化コバルト粒子に含有されている水分を除去して酸化コバルト粒子とする。熱処理を行う雰囲気は、特に制限されるものではなく、非還元性雰囲気であればよいが、簡易的に行える空気気流中において行うことが好ましい。また、熱処理時間は、特に制限されないが、1時間未満では水酸化コバルト粒子の余剰水分の除去が十分に行われない場合があるので、少なくとも1時間以上が好ましく、5〜15時間がより好ましい。
【0080】
正極活物質の製造方法においては、上述した水酸化コバルト粒子より得られた酸化コバルト粒子を原料とし、その他の製造工程や条件は、通常のリチウムコバルト複合酸化物の製造方法と同等のものとすることができる。
【0081】
具体的に、正極活物質の製造方法では、上述した水酸化コバルト粒子、あるいは水酸化コバルト粒子を熱処理して得られた酸化コバルト粒子と、リチウム化合物との混合物(以下、「リチウムコバルト混合物」という。)の焼成における雰囲気を、酸化性雰囲気、好ましくは大気雰囲気に調整する。
【0082】
リチウムコバルト混合物の焼成は、好ましくは650℃〜990℃で、より好ましくは750℃〜980℃で行う。これにより、水酸化コバルト粒子へのリチウムの拡散が十分に行われ、結晶構造を高めることができ、非水系電解質二次電池に用いられた場合に、より優れた電池特性が得られる。
【0083】
焼成温度が650℃未満の場合には、水酸化コバルト粒子へのリチウムの拡散が十分に行われず、非水系電解質二次電池に用いられた場合に十分な電池特性が得られないことがある。また、熱処理温度が990℃を超える場合には、粒子間で激しく焼結が生じると共に、異常粒成長を生じる可能性があり、このため、焼成後の粒子が粗大となって電池特性や充填性が低下する可能性がある。
【0084】
焼成後に凝集が認められた際には解砕することによって、粒径の均一性をより高いものとすることができる。
【0085】
上述した正極活物質の製造方法によれば、高い充填性及び高い緻密性を有する水酸化コバルト粒子のモフォロジーを継承し、高充填性を有し、リチウム化合物との反応が均一に行われるためクーロン効率が高いリチウムコバルト複合酸化物粒子を製造することができる。高い充填性とクーロン効率を有するリチウムコバルト複合酸化物粒子からなる正極活物質は、電池の体積当たりに充填される量が多く、非水系電解質二次電池に適用される正極活物質として好適であり、非水系電解質二次電池の正極に用いられた際に、該電池は高容量を示す。
【0086】
<4.正極活物質>
正極活物質は、上述した水酸化コバルト粒子を用いた正極活物質の製造方法によって得られる非水系電解質二次電池用の正極活物質である。正極活物質は、例えば、リチウムコバルト複合酸化物粒子からなる。リチウムコバルト複合酸化物粒子は、平均粒径が5μm〜35μm、好ましくは25μm〜35μmである。
【0087】
平均粒径を5μm〜35μmの範囲に制御することにより、高い充填性と非水系電解質二次電池に用いた場合に高い電池容量を有するようになる。平均粒径が5μm未満の場合には、充填性が低下して、非水系電解質二次電池の電極を作製した際に十分な充填密度が得られない。一方、平均粒径が35μmを超える場合には、非水系電解質二次電池の作製時にリチウムコバルト複合酸化物粒子がセパレーターを突き破って短絡を起こすという問題が生じやすくなる。さらに、非水系電解質二次電池を高出力化するための電極の薄層化に対応することが困難となる。
【0088】
正極活物質を構成するリチウムコバルト複合酸化物粒子は、原料である水酸化コバルト粒子のモフォロジーを継承している。したがって、粒度分布の広がりを示す指標である(d90−d10)/MVの値は、好ましくは0.6以下である。これにより、正極活物質の粒度分布の広がりを適正な範囲とすることができ、高い電池特性を持った正極活物質となる。
【0089】
(d90−d10)/MVが0.6を超える場合には、微細粒子の増加により、正極活物質を用いた非水系電解質二次電池のサイクル特性の悪化や、粗大粒子の増加による非水系電解質二次電池内の短絡という問題を生じることがある。
【0090】
また、正極活物質は、上述したリチウムコバルト複合酸化物からなり、その組成は、LiCoO
2として表せるものであり、非水系電解質二次電池の特性を改善するために通常添加される元素を含んでもよい。また、正極活物質は、充填性をより高いものとするため、上述した水酸化コバルト粒子と同様にして、粒子の形状は球状であることが好ましい。
【0091】
さらに、正極活物質は、リチウムコバルト複合酸化物粒子の断面観察において、リチウムコバルト複合酸化物粒子の断面長径が3μm以上の粒子内で確認される最大長径が0.3μm以上の空隙の個数(N1)のリチウムコバルト複合酸化物粒子の断面長径(L)に対する比(N1/L)が0.5以下、最大長径が0.5μm以上の空隙の個数(N2)の該粒子の断面長径(L)に対する比(N2/L)が0.2以下であり、かつ空隙の最大長径がリチウムコバルト複合酸化物粒子の断面長径の25%以下である。このような条件を満たす正極活物質は、粒子自体の緻密性が高く、高い充填性が得られる。粒度分布が狭い正極活物質においても充填性と電池特性を両立させることができる。
【0092】
以上のような正極活物質によれば、上述した水酸化コバルト粒子の二次粒子に関するモフォロジーを継承し、高い充填性を有するので、非水系電解質二次電池における正極の充填密度を高くすることができ、好適なものである。また、上述した正極活物質は、高いクーロン効率を有するものとなる。その結果、高充填密度の正極を備えた高容量の非水系電解質二次電池を得ることができる。したがって、正極活物質は、非水系電解質二次電池の正極用として極めて有用である。
【0093】
<5.非水系電解質二次電池>
上述した正極活物質は、非水系電解質二次電池の正極活物質として好適に用いられるものである。以下、非水系電解質二次電池用として用いられる際の実施態様を例示する。
【0094】
非水系電解質二次電池は、上述した正極活物質を用いた正極を採用したものである。非水系電解質二次電池は、正極材料に上述した正極活物質を用いたこと以外は、一般的な非水系電解質二次電池と実質的に同様の構造を備えているため、簡単に説明する。
【0095】
非水系電解質二次電池は、ケースと、このケース内に収容された正極、負極、非水系電解液及びセパレーターを備えた構造を有している。
【0096】
正極は、シート状の部材であり、正極活物質を含有する正極合材ペーストを、例えば、アルミニウム箔製の集電体の表面に塗布し乾燥して形成することができる。
【0097】
正極合材ペーストは、正極合材に、溶剤を添加して混練して形成されたものである。正極合材は、上述した正極活物質と、導電材及び結着剤を混合して形成されたものである。
【0098】
導電材は、特に限定されないが、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛などの黒鉛や、アセチレンブラックやケッチェンブラックなどのカーボンブラック系材料を用いることができる。
【0099】
正極合材に使用される結着剤は、特に限定されないが、例えば、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、フッ素ゴム、エチレンプロピレンジエンゴム、スチレンブタジエン、セルロース系樹脂、ポリアクリル酸などを用いることができる。なお、正極合材には、活性炭などを添加してもよく、活性炭などを添加することによって、正極の電気二重層容量を増加させることができる。
【0100】
溶剤は、特に限定されないが、例えば、N−メチル−2−ピロリドンなどの有機溶剤を用いることができる。
【0101】
負極は、銅などの金属箔集電体の表面に、負極合材ペーストを塗布し、乾燥して形成されたシート状の部材である。
【0102】
負極活物質は、例えば、金属リチウムやリチウム合金などのリチウムを含有する物質や、リチウムイオンを吸蔵及び脱離できる吸蔵物質を採用することができる。
【0103】
吸蔵物質は、特に限定されないが、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、フェノール樹脂などの有機化合物焼成体、及びコークスなどの炭素物質の粉状体を用いることができる。
【0104】
セパレーターは、例えば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微細な孔を多数有する膜を用いることができる。なお、セパレーターの機能を有するものであれば、特に限定されない。
【0105】
非水系電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。有機溶媒としては、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、トリフルオロプロピレンカーボネートなどの環状カーボネート;ジエチルカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、ジプロピルカーボネートなどの鎖状カーボネート;テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、ジメトキシエタンなどのエーテル化合物;エチルメチルスルホンやブタンスルトンなどの硫黄化合物;リン酸トリエチルやリン酸トリオクチルなどのリン化合物などから選ばれる1種を、単独で、あるいは2種以上を混合して用いることができる。支持塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4、LiAsF
6、LiN(CF
3SO
2)
2、及びそれらの複合塩などを用いることができる。
【0106】
上述した構成を有する非水系電解質二次電池は、上述した正極活物質を用いた正極を有しているので、正極活物質の充填密度が高く、高い電極密度を得ることができる。これにより、非水系電解質二次電池では、高い初期放電容量とクーロン効率が得られ、高容量となる。また、非水系電解質二次電池は、高い体積エネルギー密度を有する。さらに、非水系電解質二次電池では、従来の正極活物質と比較して、微細粒子の混入がないため、サイクル特性に優れている。また、熱安定性が高く、安全性においても優れている。
【実施例】
【0107】
以下に、本発明の実施例及び比較例によって、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。各実施例及び各比較例における各種の評価方法を以下の通りである。
【0108】
(1)体積平均粒径及び粒度分布測定
レーザ回折式粒度分布計(商品名マイクロトラック、日機装株式会社製)を用いて測定した。
【0109】
(2)粒子の外観及び平均アスペクト比
走査型電子顕微鏡(SEM、商品名S−4700、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)により粒子の外観を観察し、任意に選択した20個の粒子を測定した値から、平均値を算出することにより求めた。
【0110】
(3)緻密性
粒子の断面を走査型電子顕微鏡(SEM、商品名S−4700、株式会社日立ハイテクノロジーズ製)を用いて1000倍で観察し、断面全体が観察可能な粒子を選択し、断面長径及び空隙の最大長径を計測することにより評価した。
【0111】
(4)金属成分の分析
試料を溶解した後、ICP発光分光法(ICP:Inductively Coupled Plasma)により分析した。
【0112】
(5)結晶構造の同定
X線回折測定装置(パナリティカル社製、X‘Pert PRO)により得られたX線回折パターンを用いて同定した。
【0113】
(6)電池評価
得られた正極活物質を用いて、2032型コイン電池を構成し、これにより初期容量についての評価を行った。具体的には、正極活物質粉末70質量%に、アセチレンブラック20質量%及びPTFE10質量%を加えて混合し、150mgを秤量してペレットを作製し、正極とした。また、負極にはリチウム金属を使用し、電解液には1MのLiClO
4を支持塩とするエチレンカーボネート(EC)とジエチルカーボネート(DEC)の等量混合溶液(富山薬品工業製)を使用し、露点が−80℃に管理されたAr雰囲気のグローブボックス中で、2032型のコイン電池を作製した。
【0114】
作製したコイン電池を24時間程度放置し、開路電圧(OCV;Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.5mA/cm
2としてカットオフ電圧4.4Vまで充電して初期充電容量とし、1時間の休止後カットオフ電圧3.0Vまで放電したときの容量を初期放電容量とした。これらの値から、クーロン効率[放電電気容量/充電電気容量×100(%)]を求めた。
【0115】
(実施例1)
邪魔板を4枚取り付けた槽容積5Lの晶析反応槽に、純水1.4L、25質量%アンモニア水を90mL投入して恒温槽及び加温ジャケットにて40℃に加温し、25%質量水酸化ナトリウム水溶液を添加して、反応槽内の反応液のpHを25℃基準で11.5に調整した。反応槽内には窒素ガスを3L/分で供給し、反応槽内の酸素濃度を1容量%以下に制御した。
【0116】
核生成工程の晶析反応は、反応液をディスクタービンタイプの撹拌羽根を使用し600rpmで撹拌しつつ、定量ポンプを用いて、コバルトのモル濃度1.2mol/Lの塩化コバルト水溶液を5mL/分で供給し、併せて25質量%アンモニア水を0.8mL/分で供給しつつ、25質量%水酸化ナトリウム水溶液を断続的に添加し、25℃でのpHが11.5になるように制御して行った。規定量の反応が終了した後、35質量%塩酸を適量投入し、反応液のpHを25℃基準で10.0に調整した。
【0117】
粒子成長工程の晶析反応は、反応液(粒子成長用水溶液)をディスクタービンタイプの撹拌羽根を使用し600rpmで撹拌しつつ、定量ポンプを用いて、核生成工程と同様に塩化コバルト水溶液、アンモニア水、水酸化ナトリウム水溶液を添加し、反応液のpHが25℃で10.0になるように制御して行った。
【0118】
塩化コバルト水溶液中の塩素含有量は、コバルトに対してモル比で2.1であった。液中のアンモニア濃度は15g/Lであった。粒子成長工程を8時間行い、得られた水酸化コバルト粒子を含むスラリーを固液分離し、水洗し、乾燥して粉末状の水酸化コバルトを得た。
【0119】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子形状が球状であり、二次粒子の平均粒径が21.3μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.79、(d90−d10)/MV=0.51であった。また、結晶構造は、Co(OH)
2で表される水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、2.2g/mLであった。
【0120】
得られた水酸化コバルト粒子の外観SEM像を
図1、断面SEM像を
図2に示す。断面SEM像から二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されるN/Lが1.0以下であり、かつ該空隙の最大長径が二次粒子の断面長径の15%以下であることが確認された。空隙の最大長径は1.6μmであった。
【0121】
(実施例2)
核生成工程において、反応液のpHを25℃基準で10.8に調整した以外は、実施例1と同様にして水酸化コバルト粒子を得ると共に評価した。
【0122】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子形状が球状であり、二次粒子の平均粒径が22.4μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.77、(d90−d10)/MV=0.53であった。また、結晶構造は、Co(OH)
2で表される水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、2.0g/mLであった。
【0123】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されるN/Lが1.0以下であり、かつ該空隙の最大長径が二次粒子の断面長径の15%以下であることが確認された。
【0124】
(実施例3)
核生成工程において、反応液のpHを25℃基準で11.8に調整した以外は、実施例1と同様にして水酸化コバルト粒子を得ると共に評価した。
【0125】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子形状が球状であり、二次粒子の平均粒径が20.3μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.71、(d90−d10)/MV=0.54であった。結晶構造は、Co(OH)
2で表される水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、2.0g/mLであった。
【0126】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されるN/Lが1.0以下であり、かつ該空隙の最大長径が二次粒子の断面長径の15%以下であることが確認された。
【0127】
(実施例4)
粒子成長工程において、反応液のpHを25℃基準で9.7に調整した以外は、実施例1と同様にして水酸化コバルト粒子を得ると共に評価した。
【0128】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子形状が球状であり、二次粒子の平均粒径が23.2μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.78、(d90−d10)/MV=0.50であった。結晶構造は、Co(OH)
2で表される水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、2.0g/mLであった。
【0129】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されるN/Lが1.0以下であり、かつ該空隙の最大長径が二次粒子の断面長径の15%以下であることが確認された。
【0130】
(実施例5)
粒子成長工程において、反応液のpHを25℃基準で10.3に調整した以外は、実施例1と同様にして水酸化コバルト粒子を得ると共に評価した。
【0131】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子形状が球状であり、二次粒子の平均粒径が22.9μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.71、(d90−d10)/MV=0.58であった。結晶構造は、Co(OH)
2で表される水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、2.0g/mLであった。
【0132】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されるN/Lが1.0以下であり、かつ該空隙の最大長径が二次粒子の断面長径の15%以下であることが確認された。
【0133】
(実施例6)
コバルト原料として塩化コバルトと硫酸コバルトの混合物を使用し、コバルト水溶液中の塩素含有量をコバルトに対してモル比で0.5とした以外は、実施例1と同様にして水酸化コバルト粒子を得ると共に評価した。
【0134】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子形状が球状であり、二次粒子の平均粒径が18.2μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.73、(d90−d10)/MV=0.57であった。結晶構造は、Co(OH)
2で表される水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、2.0g/mLであった。
【0135】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されるN/Lが1.0以下であり、かつ該空隙の最大長径が二次粒子の断面長径の15%以下であることが確認された。
【0136】
(実施例7)
反応液の温度を50℃に制御した以外は、実施例1と同様にして水酸化コバルト粒子を得ると共に評価した。
【0137】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子形状が球状であり、二次粒子の平均粒径が22.8μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.71、(d90−d10)/MV=0.58であった。結晶構造は、Co(OH)
2で表される水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、2.1
g/mLであった。
【0138】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されるN/Lが1.0以下であり、かつ該空隙の最大長径が二次粒子の断面長径の15%以下であることが確認された。
【0139】
(実施例8)
反応液中のアンモニウムイオン濃度を7.5g/Lに調整した以外は、実施例1と同様にして水酸化コバルト粒子を得ると共に評価した。
【0140】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子形状が球状であり、二次粒子の平均粒径が19.2μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.74、(d90−d10)/MV=0.58であった。結晶構造は、Co(OH)
2で表される水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、2.0g/mLであった。
【0141】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されるN/Lが1.0以下であり、かつ該空隙の最大長径が二次粒子の断面長径の15%以下であることが確認された。
【0142】
(実施例9)
反応液中のアンモニウムイオン濃度を18g/Lに調整した以外は、実施例1と同様にして水酸化コバルト粒子を得ると共に評価した。
【0143】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子形状が球状であり、二次粒子の平均粒径が21.5μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.81、(d90−d10)/MV=0.49であった。結晶構造は、Co(OH)
2で表される水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、2.3g/mLであった。
【0144】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されるN/Lが1.0以下であり、かつ該空隙の最大長径が二次粒子の断面長径の15%以下であることが確認された。
【0145】
(実施例10)
核生成工程間と粒子成長工程開始30分間のみ撹拌回転数を300rpmに調整した以外は、実施例1と同様にして水酸化コバルト粒子を得ると共に評価した。
【0146】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子形状が球状であり、二次粒子の平均粒径が31.1μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.74、(d90−d10)/MV=0.53であった。結晶構造は、Co(OH)
2で表される水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、2.3g/mLであった。
【0147】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されるN/Lが1.0以下であり、かつ該空隙の最大長径が二次粒子の断面長径の15%以下であることが確認された。
【0148】
(比較例1)
邪魔板を4枚取り付けた槽容積6Lのオーバーフロー式晶析反応槽に、純水3L、25質量%アンモニア水を140mL投入して恒温槽及び加温ジャケットにて60℃に加温し、25質量%水酸化ナトリウム水溶液を添加して、反応槽内の反応液のpHを25℃基準で11.4に調整した。反応槽内には窒素ガスを3L/分で供給し、反応槽内の酸素濃度を1容量%以下に制御した。
【0149】
核生成工程の晶析反応は、60℃に保持した反応液を撹拌しつつ、定量ポンプを用いて、コバルトのモル濃度1.2mol/Lの塩化コバルト水溶液を10mL/分で供給し、併せて25質量%アンモニア水を1.5mL/分で供給しつつ、25質量%水酸化ナトリウム水溶液を断続的に添加し、反応液のpHが25℃基準で11.4になるように制御して行った。塩化コバルト水溶液中の塩素含有量は、コバルトに対してモル比で2.1であった。また、反応液中のアンモニア濃度は10g/Lであった。
【0150】
生成した水酸化コバルト粒子をオーバーフローにて連続的に取り出し、これを適宜固液分離し、水洗し、乾燥して粉末状の水酸化コバルトを得た。
【0151】
反応開始から48〜72時間にかけて取り出された水酸化コバルト粒子は、二次粒子形状が球状であり、二次粒子の平均粒径が24.3μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.69、(d90−d10)/MV=0.96であった。結晶構造は、Co(OH)
2で表される水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、2.2g/mLであった。
【0152】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されるN/Lが1.0以下であり、かつ該空隙の最大長径が二次粒子の断面長径の15%以下であることが確認された。
【0153】
(比較例2)
核生成工程において、反応液のpHを25℃基準で10.3に調整した以外は、実施例1と同様にして水酸化コバルト粒子を得ると共に評価した。
【0154】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子形状が球状であり、二次粒子の平均粒径が21.8μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.79、(d90−d10)/MV=0.51であった。結晶構造は、Co(OH)
2で表される水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、1.8g/mLであった。
【0155】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されたN/Lが最大で2.1であり、空隙の最大長径は二次粒子の断面長径の23%であった。また、空隙の最大長径は4.1μmであり、粒子内に空隙が多く、緻密性が低いことが確認された。
【0156】
(比較例3)
核生成工程において、反応液のpHを25℃基準で12.5に調整した以外は、実施例1と同様にして水酸化コバルト粒子を得ると共に評価した。
【0157】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子が不定形であり、二次粒子の平均粒径が20.5μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.59、(d90−d10)/MV=0.71であった。結晶構造は、Co(OH)
2で表される水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、1.7g/mLであった。
【0158】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されたN/Lが最大で1.3であり、空隙の最大長径は二次粒子の断面長径の19%であった。また、空隙の最大長径は2.6μmであり、粒子内に空隙が多く、緻密性が低いことが確認された。
【0159】
(比較例4)
粒子成長工程において、反応液のpHを25℃基準で9.0に調整した以外は、実施例1と同様にして水酸化コバルト粒子を得ると共に評価した。
【0160】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子が不定形であり、二次粒子の平均粒径が10.8μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.50、(d90−d10)/MV=0.89であった。結晶構造は、Co(OH)
2で表される水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、1.4g/mLであった。
【0161】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されたN/Lが最大で1.2であり、空隙の最大長径は二次粒子の断面長径の18%であった。また、空隙の最大長径は2.8μmであり、粒子内に空隙が多く、緻密性が低いことが確認された。
【0162】
(比較例5)
粒子成長工程において、反応液のpHを25℃基準で11.0に調整した以外は、実施例1と同様にして水酸化コバルト粒子を得ると共に評価した。
【0163】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子が不定形であり、二次粒子の平均粒径が17.5μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.49、(d90−d10)/MV=0.91であった。結晶構造は、Co(OH)
2で表される水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、1.6g/mLであった。
【0164】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されたN/Lが最大で1.1であり、空隙の最大長径は二次粒子の断面長径の17%であった。また、空隙の最大長径は2.3μmであり、粒子内に空隙が多く、緻密性が低いことが確認された。
【0165】
(比較例6)
コバルト塩として硫酸コバルトを使用し、コバルト水溶液中の塩素含有量を0とした以外は、実施例1と同様にして水酸化コバルト粒子を得ると共に評価した。
【0166】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子が不定形であり、二次粒子の平均粒径が18.4μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.54、(d90−d10)/MV=0.73であった。結晶構造は、Co(OH)
2で表される水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、1.8g/mLであった。
【0167】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されたN/Lが最大で3.8であり、空隙の最大長径は二次粒子の断面長径の22%であった。また、空隙の最大長径は3.1μmであり、粒子内に空隙が多く、緻密性が低いことが確認された。
【0168】
(比較例7)
反応液中のアンモニア濃度を3g/Lに調整した以外は実施例1と同様にして水酸化コバルト粒子を得た。
【0169】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子が球状であり、平均二次粒子径が18.3μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.61、(d90−d10)/MV=0.52であった。結晶構造は、Co(OH)
2で表されることが確認された。タップ密度を測定したところ、1.8g/mLであった。
【0170】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されたN/Lが最大で3.1であり、空隙の最大長径は二次粒子の断面長径の21%であった。また、空隙の最大長径は2.9μmであり、粒子内に空隙が多く、緻密性が低いことが確認された。
【0171】
(比較例8)
反応槽内に窒素ガスを供給しなかった以外は、実施例1と同様にして水酸化コバルト粒子を得ると共に評価した。
【0172】
得られた水酸化コバルト粒子は、二次粒子が不定形であり、二次粒子の平均粒径が12.3μm、二次粒子の平均アスペクト比が0.49、(d90−d10)/MV=1.27であった。結晶構造は、CoOOHで表されるコバルトが3価のオキシ水酸化コバルトであることが確認された。タップ密度を測定したところ、1.1g/mLであった。
【0173】
さらに、二次粒子の緻密性を評価したところ、断面全体が観察され二次粒子の断面長径が3μm以上の粒子において、観察した粒子内で確認されたN/Lが最大で4.5であり、空隙の最大長径は二次粒子の断面長径の36%であった。また、空隙の最大長径は3.7μmであり、粒子内に空隙が多く、緻密性が低いことが確認された。
【0174】
次に、以上の実施例1〜9及び比較例1〜8でそれぞれ得られた水酸化コバルト粒子を用いて正極活物質及び電池を作製して評価を行った。水酸化コバルト粒子をコバルトに対するリチウムのモル比(Li/Co)が1.010となるように炭酸リチウムと混合し、空気気流中にて、1000℃で10時間焼成した。冷却した後、解砕して正極活物質を得た。全てのサンプルにおいて、得られた正極活物質の結晶構造は、LiCoO
2で表される層状化合物であることが確認された。それぞれの粒子のタップ密度を測定した。また、得られた非水系電解質二次電池用正極活物質の評価として、コイン型電池を作製し、初期放電容量及びクーロン効率を測定した。なお、実施例1の水酸化コバルト粒子を用いて得られた正極活物質の断面SEM像を
図3に示す。
【0175】
以下の表1に、水酸化コバルト粒子、正極活物質、電池の評価結果を示す。
【0176】
【表1】
【0177】
表1に示す結果から、実施例1〜10に示すように、本発明を適用した水酸化コバルト粒子を用いて得られた正極活物質は、充填性が高く、初期放電容量及びクーロン効率が高いことが確認された。一方、比較例1〜8は、充填性、初期放電容量及びクーロン効率のうち少なくとも何れかが劣っていた。