(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記単結晶製造装置として、前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルとの間に絶縁材を介するものを使用することを特徴とする請求項1に記載の単結晶の製造方法。
前記副誘導加熱コイルとして、前記副誘導加熱コイルの上下両面が絶縁材で覆われているものを使用することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の単結晶の製造方法。
前記育成する工程において、前記原料結晶棒側に設置した副誘導加熱コイルの移動量を前記原料結晶棒の溶融状態に応じて制御しつつ、前記単結晶棒を育成することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
前記育成する工程において、前記単結晶棒側に設置した副誘導加熱コイルの移動量を前記単結晶棒の成長状態に応じて制御しつつ、前記単結晶棒を育成することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
前記準備する工程において、前記副誘導加熱コイルを、前記主誘導加熱コイルに対向する面が平行になるように設置することを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
前記準備する工程において、前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルの間隔を0.1mm〜10mmとした単結晶製造装置を準備することを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1項に記載の単結晶の製造方法。
前記原料結晶棒側に設置した副誘導加熱コイルの移動量が、前記原料結晶棒の溶融状態に応じて制御されるものであることを特徴とする請求項9から請求項12のいずれか1項に記載の単結晶製造装置。
前記単結晶棒側に設置した副誘導加熱コイルの移動量が、前記単結晶棒の成長状態に応じて制御されるものであることを特徴とする請求項9から請求項13のいずれか1項に記載の単結晶製造装置。
前記副誘導加熱コイルが、前記主誘導加熱コイルに対向する面が平行になるように設置されたものであることを特徴とする請求項9から請求項14のいずれか1項に記載の単結晶製造装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、近年単結晶の大口径化が進み、単結晶引上げに必要なパワーの増加による主誘導加熱コイルの加熱の非対称性が大きくなっている。
図5は、誘導加熱コイルの概略図である。
図5に示すように、一般的なFZ単結晶製造装置には、高周波発振機との接続部130側にスリット131を切ってある主誘導加熱コイル107を使用しており、このスリット周辺における加熱が強いことから、主誘導加熱コイルによる加熱の非対称性が大きくなり、浮遊帯域の状態が非対称になっている。すなわち、原料結晶棒側の溶融ムラ及び単結晶棒側の成長ムラ(
図4に示すような、原料結晶棒の高周波発振機との接続部側(以下、単に、高周波発振機側ともいう)とその反対側での溶融高さの差120及び単結晶棒の高周波発振機側とその反対側での成長高さの差121)が発生している。原料結晶棒の溶融ムラが大きくなることで未溶融シリコン発生量が増加し、それが単結晶外周に付着することで有転位化する問題がある。それに加え、単結晶棒の成長ムラが発生し、有転位化する問題がある。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであって、FZ単結晶製造の際に、有転位化の発生に影響を与え得る浮遊帯域の状態を調整することができる単結晶の製造方法及び単結晶製造装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明では、原料結晶棒を誘導加熱コイルで加熱溶融して浮遊帯域を形成し、該浮遊帯域を移動させることで単結晶棒を育成するFZ法による単結晶の製造方法であって、
少なくとも、主誘導加熱コイルと、導電性金属からなる副誘導加熱コイルを具備し、前記副誘導加熱コイルを、前記主誘導加熱コイルの高周波発振機との接続部とは反対側において、前記主誘導加熱コイルの前記原料結晶棒側及び/又は前記単結晶棒側に設置した単結晶製造装置を準備する工程と、
前記浮遊帯域の形状を観察し、前記浮遊帯域の状態に応じて前記原料結晶棒側及び/又は前記単結晶棒側の副誘導加熱コイルを前記主誘導加熱コイルに対して前後移動させながら、前記単結晶棒を育成する工程と
を有することを特徴とする単結晶の製造方法を提供する。
【0011】
このような単結晶の製造方法であれば、浮遊帯域の状態を適宜、所望の状態に調整することができる。例えば、原料結晶棒の溶融ムラを小さくすることができる。これにより、未溶融シリコンが単結晶外周に付着することで有転位化することを抑制することができる。また、例えば、単結晶棒の成長ムラを小さくすることができる。これにより、有転位化を抑制することができる。
【0012】
また、前記単結晶製造装置として、前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルとの間に絶縁材を介するものを使用することが好ましい。
【0013】
このような単結晶の製造方法であれば、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの接触による短絡及び間隔が狭いことによる火花放電を防止することができる。
【0014】
また、前記副誘導加熱コイルとして、前記副誘導加熱コイルの上下両面が絶縁材で覆われているものを使用することが好ましい。
【0015】
このような単結晶の製造方法であれば、副誘導加熱コイルと主誘導加熱コイルの短絡及び火花放電だけでなく、副誘導加熱コイルと原料結晶棒、又は副誘導加熱コイルと単結晶棒の火花放電も防止することができる。
【0016】
また、前記副誘導加熱コイルとして、電気抵抗率が1×10
−4Ωcmより小さい材料を使用することが好ましい。
【0017】
このような単結晶の製造方法であれば、効率良く副誘導加熱コイル内に誘導電流が発生し、誘導電流に起因する磁場を容易に発生させることができる。
【0018】
また、前記育成する工程において、前記原料結晶棒側に設置した副誘導加熱コイルの移動量を前記原料結晶棒の溶融状態に応じて制御しつつ、前記単結晶棒を育成することが好ましい。
【0019】
このような単結晶の製造方法であれば、溶融状態、例えば、原料結晶棒の高周波発振機側とその反対側での溶融高さの差の量に応じて原料結晶棒側に設置した副誘導加熱コイルを移動させて、当該副誘導加熱コイルと原料結晶棒との距離を変化させることにより、溶融高さの差をより小さくすることができる。
【0020】
また、前記育成する工程において、前記単結晶棒側に設置した副誘導加熱コイルの移動量を前記単結晶棒の成長状態に応じて制御しつつ、前記単結晶棒を育成することが好ましい。
【0021】
このような単結晶の製造方法であれば、成長状態、例えば、単結晶棒の高周波発振機側とその反対側での成長高さの差の量に応じて単結晶棒側に設置した副誘導加熱コイルを移動させて、当該副誘導加熱コイルと単結晶棒との距離を変化させることにより、成長高さの差をより小さくすることができる。
【0022】
また、前記準備する工程において、前記副誘導加熱コイルを、前記主誘導加熱コイルに対向する面が平行になるように設置することが好ましい。
【0023】
このような単結晶の製造方法であれば、主誘導加熱コイルから副誘導加熱コイルへ効率的に誘導を受けさせることができる。
【0024】
また、前記準備する工程において、前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルの間隔を0.1mm〜10mmとした単結晶製造装置を準備することが好ましい。
【0025】
このような単結晶の製造方法であれば、主誘導加熱コイルから副誘導加熱コイルへ効率的に誘導を受けさせることができる。
【0026】
更に、本発明では、単結晶棒と原料結晶棒との間にある浮遊帯域を囲むように設けられ、前記浮遊帯域を加熱溶融する主誘導加熱コイルを備えたFZ法による単結晶製造装置であって、
前記単結晶製造装置が、更に、導電性金属からなる副誘導加熱コイル及び前記浮遊帯域の形状を観察することができるCCDカメラを具備するものであり、
前記副誘導加熱コイルが、前記主誘導加熱コイルの高周波発振機との接続部とは反対側において、前記主誘導加熱コイルの前記原料結晶棒側及び/又は前記単結晶棒側に設置され、更に、前記主誘導加熱コイルに対して前後移動するための移動機構を具備するものであり、
前記副誘導加熱コイルの前後移動が、前記CCDカメラで捉えた前記浮遊帯域の形状の変化に対応して制御されるものであることを特徴とする単結晶製造装置を提供する。
【0027】
このような単結晶製造装置であれば、浮遊帯域の状態を適宜、所望の状態に調整することができる。例えば、原料結晶棒の溶融ムラを小さくすることができる。これにより、未溶融シリコンが単結晶外周に付着することで有転位化することを抑制することができる。また、例えば、単結晶棒の成長ムラを小さくすることができる。これにより、有転位化を抑制することができる。
【0028】
また、前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルとの間に絶縁材を介するものであることが好ましい。
【0029】
このような単結晶製造装置であれば、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの接触による短絡及び間隔が狭いことによる火花放電を防止することができる。
【0030】
また、前記副誘導加熱コイルの上下両面が絶縁材で覆われているものであることが好ましい。
【0031】
このような単結晶製造装置であれば、副誘導加熱コイルと主誘導加熱コイルの短絡及び火花放電だけでなく、副誘導加熱コイルと原料結晶棒、又は副誘導加熱コイルと単結晶棒の火花放電も防止することができる。
【0032】
また、前記副誘導加熱コイルが、電気抵抗率が1×10
−4Ωcmより小さい材料からなるものであることが好ましい。
【0033】
このような単結晶製造装置であれば、効率良く副誘導加熱コイル内に誘導電流が発生し、誘導電流に起因する磁場を容易に発生させることができる。
【0034】
また、前記原料結晶棒側に設置した副誘導加熱コイルの移動量が、前記原料結晶棒の溶融状態に応じて制御されるものであることが好ましい。
【0035】
このような単結晶製造装置であれば、溶融状態、例えば、CCDカメラで捉えた原料結晶棒の高周波発振機側とその反対側での溶融高さの差の量に応じて原料結晶棒側に設置した副誘導加熱コイルを移動させて、当該副誘導加熱コイルと原料結晶棒との距離を変化させることにより、溶融高さの差をより小さくすることができる。
【0036】
また、前記単結晶棒側に設置した副誘導加熱コイルの移動量が、前記単結晶棒の成長状態に応じて制御されるものであることが好ましい。
【0037】
このような単結晶製造装置であれば、成長状態、例えば、CCDカメラで捉えた単結晶棒の高周波発振機側とその反対側での成長高さの差の量に応じて単結晶棒側に設置した副誘導加熱コイルを移動させて、当該副誘導加熱コイルと単結晶棒との距離を変化させることにより、成長高さの差をより小さくすることができる。
【0038】
また、前記副誘導加熱コイルが、前記主誘導加熱コイルに対向する面が平行になるように設置されたものであることが好ましい。
【0039】
このような単結晶製造装置であれば、主誘導加熱コイルから副誘導加熱コイルへ効率的に誘導を受けさせることができる。
【0040】
また、前記主誘導加熱コイルと前記副誘導加熱コイルの間隔が0.1mm〜10mmであることが好ましい。
【0041】
このような単結晶製造装置であれば、主誘導加熱コイルから副誘導加熱コイルへ効率的に誘導を受けさせることができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明の単結晶の製造方法及び単結晶製造装置であれば、浮遊帯域の状態を所望のように調整することができる。例えば、浮遊帯域の状態が対称になるようにすることができる。すなわち、上記の溶融高さの差を小さくし、原料結晶棒の溶融ムラを小さくすることができる。これにより、未溶融シリコンが単結晶外周に付着することで有転位化することを抑制することができる。また、上記の成長高さの差を小さくし、単結晶棒の成長ムラを小さくすることができる。これにより、有転位化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明をより詳細に説明する。
上記のように、浮遊帯域の状態を調整しつつFZ単結晶を製造することができ、特には、原料結晶棒の溶融ムラが大きくなることで未溶融シリコン発生量が増加し、それが単結晶外周に付着することで有転位化することや単結晶棒の成長ムラによる有転位化の発生を抑制することができる単結晶の製造方法及び単結晶製造装置が求められている。
【0045】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、単結晶棒と原料結晶棒との間にある浮遊帯域を囲むように設けられ、前記浮遊帯域を加熱溶融する主誘導加熱コイルを備えたFZ法による単結晶製造装置であって、
前記単結晶製造装置が、更に、導電性金属からなる副誘導加熱コイル及び前記浮遊帯域の形状を観察することができるCCDカメラを具備するものであり、
前記副誘導加熱コイルが、前記主誘導加熱コイルの高周波発振機との接続部とは反対側において、前記主誘導加熱コイルの前記原料結晶棒側及び/又は前記単結晶棒側に設置され、更に、前記主誘導加熱コイルに対して前後移動するための移動機構を具備するものであり、
前記副誘導加熱コイルの前後移動が、前記CCDカメラで捉えた前記浮遊帯域の形状の変化に対応して制御されるものであることを特徴とする単結晶製造装置、並びに、このような単結晶製造装置等を使用して単結晶棒を育成するFZ法による単結晶の製造方法が、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0046】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図1は、本発明の単結晶製造装置60の一例を示す概略図である。
図1に示すように、チャンバー11内に、上軸3が回転可能に設置されており、上軸3の上部保持治具4に原料結晶棒1が保持されている。一方、下軸5が回転可能に設置されており、下軸5の下部保持治具6に種結晶8、絞り部9を介して単結晶棒2が保持されている。そして、
図1に示すように、本発明の単結晶製造装置60は、単結晶棒2と原料結晶棒1との間にある浮遊帯域10を囲むように設けられ、浮遊帯域10を加熱溶融する主誘導加熱コイル7と、導電性金属からなる副誘導加熱コイル40、41と、該副誘導加熱コイル40、41を主誘導加熱コイル7に対して前後移動させるための移動機構50、51と、浮遊帯域の形状を観察することができるCCDカメラ13を具備するものである。尚、副誘導加熱コイル40、41は、例えば、冷却用の水を流通させた構造、若しくは窒素ガス等の不活性ガスを使用した空冷の構造とすることが好ましい。主誘導加熱コイル7は、例えば、銅及び銀並びにこれらの複合材料のいずれかからなるものであることが好ましく、冷却用の水を流通させた構造とすることが好ましい。
【0047】
[本発明の単結晶製造装置の各構成について]
図2は、
図1の単結晶製造装置における浮遊帯域付近の拡大図である。また、
図3は、本発明の原料結晶棒側の副誘導加熱コイルの形状例及び配置例を示す上面図及び断面図である。尚、この断面図は、0°−180°の断面図である。また、位置関係等を示すため、主誘導加熱コイルも併せて図示してある。
図2、
図3に示すように、副誘導加熱コイル40は、主誘導加熱コイル7の高周波発振機12との接続部30とは反対側に設置されている。ここで、反対側とは、例えば、主誘導加熱コイル7の中心に対して反対側のことである。スリット31の反対側に配置することで、主誘導加熱コイルによる加熱の非対称性を緩和しやすい。
【0048】
形状例としては、例えば、
図3に示すように、主誘導加熱コイル7の高周波発振機12との接続部30側に設けられたスリット31の位置を0°としたときに、副誘導加熱コイルは、135°〜225°の範囲にわたるものとすることができる。また、
図3に示すように、例えば、直胴部を形成する際には、副誘導加熱コイルは、内径空間32を塞がないように、即ち、内径空間32の外側に設置することができる。これにより、
図2に示すような、原料結晶棒の高周波発振機側とその反対側での溶融高さの差20及び単結晶棒の高周波発振機側とその反対側での成長高さの差21をより小さくすることができる。
【0049】
また、
図2に示すように、副誘導加熱コイルは上記の接続部30とは反対側であれば、副誘導加熱コイル40のように、主誘導加熱コイル7の原料結晶棒1側(上側)に設置されていても、副誘導加熱コイル41のように、主誘導加熱コイル7の単結晶棒2側(下側)に設置されていてもよい。また、原料結晶棒1側と単結晶棒2側の両方に設置されていてもよい。特に、両方に設置されていることが好ましい。
【0050】
副誘導加熱コイル40、41は、それぞれ、主誘導加熱コイル7に対して前後移動するための移動機構50、51を具備する。このような移動機構を具備することによって、可動式の副誘導加熱コイルとなる。このように可動式とすることでより精度よく浮遊帯域10の状態を調整でき、例えば、溶融高さの差20及び成長高さの差21を小さくすることができる。
【0051】
この前後移動は、CCDカメラ13で捉えた浮遊帯域10の形状の変化に対応して制御されるものである。例えば、
図2に示す溶融高さの差20及び成長高さの差21が生じた場合、副誘導加熱コイルを前後移動することで、主誘導加熱コイルによる加熱の非対称性を減少させ、これらの差を小さくすることができる。
【0052】
このように副誘導加熱コイルが設置された単結晶製造装置を用いることによって、原料結晶棒の溶融ムラを緩和し、未溶融シリコン発生量を減少させることができる。また、主誘導加熱コイルの加熱の非対称性を減少させることができ、単結晶成長のムラを緩和することができる。更に、単結晶の熱せん断応力を減少させ、単結晶の有転位化率を抑制することができる。
【0053】
また、原料結晶棒側の加熱が弱い部分へ副誘導加熱コイルを設置、又は、単結晶棒側の加熱が弱い部分へ副誘導加熱コイルを設置することで原料の溶融の補助及び単結晶側への加熱の補助を行うことができる。
【0054】
副誘導加熱コイルは、誘導加熱の原理を利用して、加熱の補助を行うことができる。この誘導加熱の原理について、以下に示す。まず、主誘導加熱コイルから発生した磁場により副誘導加熱コイルに誘導を受けさせる。次に、誘導を受けた副誘導加熱コイルは誘導加熱コイルと逆向きの新たな磁場を作り出す。この新たな磁場により、原料結晶棒及び単結晶棒の誘導加熱を行うことができる。
【0055】
副誘導加熱コイルは主誘導加熱コイルよりも、原料結晶棒及び単結晶棒により近い位置にあることから、効率的に誘導加熱を行うことができる。これにより副誘導加熱コイルは、補助加熱のような役割を効率的に果たすことができる。
【0056】
また、副誘導加熱コイルは磁場の分布を調整することができる。例えば、主誘導加熱コイルの磁場分布の非対称性を減少させるように、磁場の分布を変化させることができる。このように、本発明で規定した位置に副誘導加熱コイルを前後移動可能に設置することによって、補助加熱及び磁場の分布の調整を自在に行うことができる。その結果、原料結晶棒側及び単結晶側の溶融状態を、特には均一に、すなわち水平に近付けることができるようになる。
【0057】
副誘導加熱コイルの形状は特に限定されないが、例えば、
図3の上面図に示すように、上から見た場合、略扇形状であることが好ましい。この扇形の半径は、内径空間32の半径よりも大きいことが好ましい。また、
図3の断面図に示すように、側面から見た場合、三角形状等の、原料結晶棒1又は単結晶棒2の溶融面に対し角度を持った形状であることが好ましい。
【0058】
また、副誘導加熱コイル40、41が、主誘導加熱コイルに対向する面が平行になるように設置されたものであることが好ましい。副誘導加熱コイルが上記のような形状を有し、上記のように設置されており、互いに対向する面同士が平行であるならば、主誘導加熱コイルから副誘導加熱コイルへ効率的に誘導を受けさせることができる。
【0059】
この場合、副誘導加熱コイル40を主誘導加熱コイル7の対向する面に対して平行移動させ、原料結晶棒1と副誘導加熱コイル40との距離を変えることが好ましい。これにより、原料結晶棒1の溶融状態を所望の状態に変化させることができる。また、副誘導加熱コイル41を主誘導加熱コイル7の対向する面に対して平行移動させ、単結晶棒2と副誘導加熱コイル41との距離を変えることが好ましい。これにより、単結晶棒2の成長状態を所望の状態に変化させることができる。
【0060】
CCDカメラ13は、単結晶棒の育成中に、浮遊帯域10及びその付近を撮像できるものである。CCDカメラによって、浮遊帯域10の形状の変化、特に、
図2に示す溶融高さの差20及び成長高さの差21を観察することができる。この溶融高さの差及び成長高さの差の量に応じて、副誘導加熱コイルを移動させることができる。その結果、副誘導加熱コイルと原料結晶棒及び単結晶棒との距離を変化させることができ、加熱の強弱をコントロールすることができる。なお、予め設定しておいたプログラムによってCCDカメラの画像データに応じて、所望の浮遊帯域の状態が得られるように、自動的に副誘導加熱コイルを移動させることができる。また、作業員がCCDカメラの画像データを基にして副誘導加熱コイルの移動を適宜制御することもできる。
【0061】
この場合、特に、原料結晶棒側に設置した副誘導加熱コイル40の移動量が、原料結晶棒の溶融状態(溶融高さの差20等)に応じて制御されるものであることが好ましい。このように、高周波発振機側と反対側の原料結晶棒側に設置した副誘導加熱コイル40の移動量を、例えば、上記の溶融高さの差を小さくするように制御することによって、原料結晶棒の溶融ムラを小さくすることができる。これにより、未溶融シリコンの発生を抑制することができる。
【0062】
また、単結晶棒側に設置した副誘導加熱コイル41の移動量が、単結晶棒の成長状態(成長高さの差21等)に応じて制御されるものであることが好ましい。このように、単結晶棒側に設置した副誘導加熱コイル41の移動量を、例えば、上記の成長高さの差を小さくするように制御することによって、単結晶棒の成長ムラを小さくすることができる。これにより、有転位化の発生を抑制することができる。
【0063】
また、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルとの間に絶縁材を介するものであることが好ましい。これにより、副誘導加熱コイルと主誘導加熱コイルの短絡及び火花放電を防止することができる。
【0064】
また、副誘導加熱コイルの上下両面が絶縁材で覆われているものであることが好ましい。これにより、副誘導加熱コイルと主誘導加熱コイルの短絡及び火花放電だけでなく、副誘導加熱コイルと原料結晶棒又は副誘導加熱コイルと単結晶棒の火花放電も防止することができる。これらの絶縁材としては石英や窒化珪素を用いることができる。
【0065】
また、副誘導加熱コイルが、電気抵抗率が1×10
−4Ωcmより小さい材料からなるものであることが好ましい。例えば銅及び銀並びにこれらの複合材料のいずれかを用いることができる。これにより、効率良く副誘導加熱コイル内に誘導電流が発生し、誘導電流に起因する磁場を容易に発生させることができる。
【0066】
また、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの間隔が0.1mm〜10mmであることが好ましい。これにより、主誘導加熱コイルから副誘導加熱コイルへ効率的に誘導を受けさせることができる。
【0067】
本発明の単結晶製造装置は、以上のような構成を有するものであるため、浮遊帯域の状態を所望のように調整できる。特に、上記CCDカメラや移動機構を備えているので、本発明の単結晶製造装置は、コーン成長中、直胴成長中に副誘導加熱コイルによる誘導加熱の補助を極めて有効に発揮することができる。すなわち、CCDカメラによって得られた原料結晶棒の高周波発振機側とその反対側での溶融高さの差及び単結晶棒の高周波発振機側とその反対側での成長高さの差の量に応じて副誘導加熱コイルを移動させ、副誘導加熱コイルと原料結晶棒及び単結晶棒との距離を変化させることで加熱の強弱をコントロールして、高周波発振器側と反対側の溶融高さの差を小さくし、原料結晶棒の溶融ムラを小さくすることで未溶融シリコンの発生を抑制し、単結晶棒側の成長ムラを小さくすることで有転位化の発生を抑制することができる。
【0068】
[単結晶の製造方法]
本発明の単結晶の製造方法は、原料結晶棒を誘導加熱コイルで加熱溶融して浮遊帯域を形成し、該浮遊帯域を移動させることで単結晶棒を育成するFZ法による単結晶の製造方法であって、
少なくとも、主誘導加熱コイルと、導電性金属からなる副誘導加熱コイルを具備し、前記副誘導加熱コイルを、前記主誘導加熱コイルの高周波発振機との接続部とは反対側において、前記主誘導加熱コイルの前記原料結晶棒側及び/又は前記単結晶棒側に設置した単結晶製造装置を準備する工程と、
前記浮遊帯域の形状を観察し、前記浮遊帯域の状態に応じて前記原料結晶棒側及び/又は前記単結晶棒側の副誘導加熱コイルを前記主誘導加熱コイルに対して前後移動させながら、前記単結晶棒を育成する工程と
を有することを特徴とする単結晶の製造方法である。
【0069】
以下、本発明の単結晶の製造方法として、
図1〜3に示す単結晶製造装置を用いる方法を中心に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0070】
[単結晶製造装置を準備する工程]
まず、
図1に示すように、主誘導加熱コイル7と、導電性金属からなる副誘導加熱コイル40、41を具備する単結晶製造装置を準備する。副誘導加熱コイルは、
図2、
図3に示すように、加熱の弱い部分である側、すなわち、主誘導加熱コイルの高周波発振機12との接続部30と反対側に設置する。副誘導加熱コイルは、上記の接続部と反対側であれば、原料結晶棒側(上側)と単結晶棒側(下側)の少なくともどちらか一方に設置すれば良い。特に、上下両方に設置することが好ましい。
【0071】
この準備する工程では、特に、以下に示す単結晶製造装置を準備することが好ましい。
【0072】
例えば、単結晶製造装置として、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルとの間に絶縁材を介するものを使用することが好ましい。特に、副誘導加熱コイルの上下両面が絶縁材で覆われているものを使用することが好ましい。これにより、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイル間の接触による短絡及び間隔が狭いことによる火花放電だけでなく、副誘導加熱コイルと原料結晶棒、又は副誘導加熱コイルと単結晶棒の火花放電を避けることができる。
【0073】
また、副誘導加熱コイルを、主誘導加熱コイルに対向する面が平行になるように設置することが好ましい。また、主誘導加熱コイルと副誘導加熱コイルの間隔を0.1mm〜10mmとした単結晶製造装置を準備することが好ましい。これらにより、主誘導加熱コイルから副誘導加熱コイルへ効率的に誘導を受けさせることができる。
【0074】
また、副誘導加熱コイルとして、電気抵抗率が1×10
−4Ωcmより小さい材料を使用することが好ましい。これにより、効率良く副誘導加熱コイル内に誘導電流が発生し、誘導電流に起因する磁場を容易に発生させることができる。
【0075】
特に、上記構成を具備する単結晶製造装置として、上記本発明の単結晶製造装置、例えば、
図1〜3に示す単結晶製造装置を準備することが好ましい。
【0076】
[単結晶棒を育成する工程]
次に、浮遊帯域10の形状を観察し、浮遊帯域の状態に応じて原料結晶棒側の副誘導加熱コイル40及び/又は単結晶棒側の副誘導加熱コイル41を主誘導加熱コイルの中心に向かって前後移動させながら、単結晶棒2を育成する。
【0077】
原料結晶棒1としては、例えば、CZシリコン単結晶を用いることができるが、これに限定されない。多結晶シリコン棒やFZ法による結晶を用いることもできる。
【0078】
以下、本発明の単結晶の製造方法における単結晶棒を育成する方法の詳細について、説明するが、単結晶棒の育成方法はこれらに限定されない。
【0079】
まず、シリコン等の原料結晶棒1の溶融を開始する部分をコーン形状に加工し、加工歪みを除去するために表面のエッチングを行う。上述のように、チャンバー11内にあらかじめ本発明の副誘導加熱コイルを原料結晶棒側または単結晶棒側、もしくは両側に設置してある機構を有する単結晶製造装置、例えば、
図1〜3に示す単結晶製造装置を使用する。尚、副誘導加熱コイルは冷却用の水を流通させた構造、若しくは窒素ガス等の不活性ガスを使用した空冷の構造とすることが好ましい。
【0080】
図1に示すように、FZ法による単結晶製造装置60のチャンバー11内に原料結晶棒1を収容し、チャンバー11内に設置された上軸3の上部保持治具4にネジ等で固定する。一方、下軸5の下部保持治具6には種結晶8を取り付ける。高周波発振機の電極に主誘導加熱コイル7の接続部30を固定する。原料結晶棒側の副誘導加熱コイル40及び単結晶棒側の副誘導加熱コイル41は任意の位置に合わせておく。
【0081】
次に原料結晶棒1のコーン部分の下端をカーボンリング(不図示)で予備加熱する。その後、チャンバー11に不活性ガスを供給し、加圧の状態とする。そして、原料結晶棒1を主誘導加熱コイル7で加熱溶融した後、コーン部先端を種結晶8に融着させ、絞り部9により無転位化し、不図示の回転機構で上軸3と下軸5を回転させながら原料結晶棒1と育成単結晶棒2を例えば1〜5mm/minの速度で下降させることで浮遊帯域10を原料結晶棒1の上端まで移動させてゾーニングし、単結晶棒2を成長させる。
また、N型FZ単結晶またはP型FZ単結晶を製造するために、ドープノズル(不図示)により、製造する導電型、抵抗率に応じた量の不活性ガスベースのPH
3又はB
2H
6を流すことができる。
【0082】
このとき、原料結晶棒1を育成する際に回転中心となる上軸3と、単結晶化の際に育成する単結晶棒2の回転中心となる下軸5をずらして(偏芯させて)単結晶を育成することが好ましい。このように両中心軸をずらすことにより単結晶化の際に溶融部を撹拌させ、製造する単結晶の品質を均一化させることができる。偏芯量は単結晶の直径に応じて設定すればよい。
【0083】
この際、浮遊帯域10の形状を観察し、浮遊帯域の状態に応じて原料結晶棒側の副誘導加熱コイル40及び/又は単結晶棒側の副誘導加熱コイル41を前後移動させながら、単結晶棒2を育成する。上記観察は、例えば、CCDカメラ13等の撮像手段を用いることによって行うことができる。
【0084】
例えば、育成する工程において、原料結晶棒側に設置した副誘導加熱コイル40の移動量を原料結晶棒の溶融状態に応じて制御しつつ、単結晶棒を育成することが好ましい。例えば、
図2に示すように、原料結晶棒1と副誘導加熱コイル40の距離を、溶融高さの差20が小さくなるようにコントロールすることが好ましい。このような制御によって、原料結晶棒側の溶融ムラを抑制でき、未溶融シリコンによる有転位化の発生を効果的に防ぐことができる。
【0085】
また、育成する工程において、単結晶棒側に設置した副誘導加熱コイル41の移動量を単結晶棒の成長状態に応じて制御しつつ、単結晶棒を育成することが好ましい。例えば、
図2に示すように、単結晶棒2と副誘導加熱コイル41の距離を、成長高さの差21が小さくなるようにコントロールすることが好ましい。このような制御により、単結晶棒側の成長ムラによる有転位化の発生を効果的に防止できる。
【0086】
なお、所望の浮遊帯域の状態を得るためのこれら副誘導加熱コイル40、41の適切な移動量は、例えば、予備試験やシミュレーション等を用いて算出してその都度決定することができる。
【0087】
副誘導加熱コイルは、原料結晶棒又は単結晶棒の溶融面に対し角度を持った形状であることが好ましい。この場合、副誘導加熱コイル40、41を主誘導加熱コイルの対向する面に対して平行移動させ、原料結晶棒1と副誘導加熱コイル40の距離や単結晶棒2と副誘導加熱コイル41との距離を変えることで原料結晶棒1の溶融状態や単結晶棒2の成長状態を所望の状態に変化させることができる。
【実施例】
【0088】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をより具体的に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0089】
(実施例)
図1〜3に示す本発明の単結晶製造装置を用い、1000Ωcm以上のCZシリコン単結晶を原料結晶棒として、FZ法によりゾーニングを行い、10本の直径6インチ(150mm)のシリコン単結晶を製造した。
【0090】
このシリコン単結晶の製造の際には
図2に示すように可動式の原料結晶棒側の副誘導加熱コイル40及び単結晶棒側の副誘導加熱コイル41を設置した。それぞれの副誘導加熱コイルは銅製とし、主誘導加熱コイル、原料結晶棒、単結晶棒との火花放電防止のために石英で覆った。それぞれの副誘導加熱コイルは効率良く誘導を受けさせるために、主誘導加熱コイル側において主誘導加熱コイルに平行した面を持つ形状とし、主誘導加熱コイルに対向する面が平行になるように設置した。主誘導加熱コイルとそれぞれの副誘導加熱コイルとの距離は1mmとした。
【0091】
副誘導加熱コイル40、41のうち、原料結晶棒の溶融状態、すなわちCCDカメラにより得られた原料結晶棒の高周波発振機側とその反対側での溶融高さの差を縮めるように原料結晶棒側の副誘導加熱コイル40の主誘導加熱コイルの中心への前後方向の移動量をコントロールしながら製造を行った。それに加えて、CCDカメラにより得られた単結晶棒の高周波発振機側とその反対側での成長高さの差を縮めるように、単結晶棒側の副誘導加熱コイル41の主誘導加熱コイルの中心への前後方向の移動量をコントロールしながら製造を行った。
【0092】
チャンバー内に不活性ガスを流し、炉内圧は加圧とし、成長速度を2.0mm/min前後、主誘導加熱コイルの中心に対して下軸5を偏芯させ、抵抗率面内分布を均質にするために、下軸5を交互回転させる製法とした。
【0093】
ドープはドープノズルにより不活性ガスベースのPH
3を浮遊帯域に吹き掛け、N型のシリコン単結晶の製造を行った。
【0094】
(比較例)
図4で示すような主誘導加熱コイルのみを備えた従来の単結晶製造装置を用い、1000Ωcm以上のCZシリコン単結晶を原料結晶棒として、FZ法によりゾーニングを行い、10本の直径6インチ(150mm)のシリコン単結晶を製造した。
【0095】
チャンバー内に不活性ガスを流し、炉内圧は加圧とし、成長速度を2.0mm/min前後、主誘導加熱コイルの中心に対して下軸105を偏芯させ、抵抗率面内分布を均質にするために、下軸105を交互回転させる製法とした。
【0096】
ドープはドープノズルにより不活性ガスベースのPH
3を浮遊帯域に吹き掛け、N型のシリコン単結晶の製造を行った。
【0097】
実施例では、副誘導加熱コイル40、41の移動制御によって、浮遊帯域の状態を調整することができ、原料結晶棒の高周波発振機側とその反対側での溶融高さの差が小さくなり、比較例に比べ溶融高さの差が約70%改善した。また、単結晶棒の高周波発振機側とその反対側での成長高さの差が小さくなり、比較例に比べ成長高さの差が約80%改善した。これらの効果で比較例に比べ、実施例では有転位化率が半減した。
【0098】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。