(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
透明パネルとパネルとの間、又は透明パネルとバックシートとの間に複数の太陽電池素子がマトリックス状に配置され互いに電気接続されてなる太陽電池素子マトリックスを樹脂封止して太陽電池モジュールを製造する太陽電池モジュールの製造方法において、
(工程1)ミラブルタイプのシリコーンゴム組成物からなり粘着性を有する未加硫のシリコーンゴムシートの両面にエンボス加工を施してエンボス凹部が溝状となった所定のパターンの凹凸を形成し、透明パネルの一面に該エンボス加工したシリコーンゴムシートを、そのいずれか一方の片面側のエンボス凸部を該透明パネルに押し当てると共にエンボス凹部を潰さないようにして貼り付けて、透明パネルの一面に上記エンボス加工した未加硫のシリコーンゴムシートが貼り付けられてなり、該シリコーンゴムシートの表面に所定のパターンの凹凸を有する第1積層体を用意する工程と、
(工程2)ミラブルタイプのシリコーンゴム組成物からなり粘着性を有する未加硫のシリコーンゴムシートの両面にエンボス加工を施してエンボス凹部が溝状となった所定のパターンの凹凸を形成し、パネル又はバックシートの一面に該エンボス加工したシリコーンゴムシートを、そのいずれか一方の片面側のエンボス凸部を該パネル又はバックシートに押し当てると共にエンボス凹部を潰さないようにして貼り付けて、パネル又はバックシートの一面に上記エンボス加工した未加硫のシリコーンゴムシートが貼り付けられてなり、該シリコーンゴムシートの表面に所定のパターンの凹凸を有する第2積層体を用意する工程と、
(工程3)上記第1積層体と第2積層体とを互いのシリコーンゴムシートの凹凸面を対向させて配置すると共に、その間に太陽電池素子マトリックスを配置し、その状態で減圧して上記シリコーンゴムシートのエンボス凹部を空気の抜ける通路として第1積層体、第2積層体それぞれのシリコーンゴムシートと太陽電池素子マトリックスとの間、第1積層体における透明パネルとシリコーンゴムシートとの間、第2積層体におけるパネル又はバックシートとシリコーンゴムシートとの間を脱気し、上記第1積層体及び第2積層体を加熱しながら押圧してシリコーンゴムシートを硬化させて上記太陽電池素子マトリックスを封止する工程と
を有することを特徴とする太陽電池モジュールの製造方法。
上記エンボス加工の後、シリコーンゴムシートのいずれか片面側の型部材を剥離してその面をエンボス構造の凹部分を潰さないように透明パネル、パネル又はバックシートに貼り付け、次いでシリコーンゴムシートの反対面側の型部材を剥離した後に、上記工程3を行うことを特徴とする請求項5〜7のいずれか1項記載の太陽電池モジュールの製造方法。
上記工程3は、上記第1積層体、又は第2積層体のシリコーンゴムシート上に太陽電池素子マトリックスを載置し、上記第1積層体と第2積層体とをシリコーンゴムシートを内側にして重ね合わせ、その状態で減圧した後、減圧下で加熱しながら押圧してシリコーンゴムシートを硬化させて上記太陽電池素子マトリックスを封止する工程である請求項1〜10のいずれか1項記載の太陽電池モジュールの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、透明パネルとパネルとの間、又は透明パネルとバックシートとの間に複数の太陽電池素子がマトリックス状に配置され互いに電気接続されてなる太陽電池素子マトリックスを樹脂封止して太陽電池モジュールを製造する太陽電池モジュールの製造方法において、
(工程1)透明パネルの一面にミラブルタイプのシリコーンゴム組成物からなる未加硫のシリコーンゴムシートが貼り付けられてなり、該シリコーンゴムシートの表面に所定のパターンの凹凸を有する第1積層体を用意する工程と、
(工程2)パネル又はバックシートの一面にミラブルタイプのシリコーンゴム組成物からなる未加硫のシリコーンゴムシートが貼り付けられてなり、該シリコーンゴムシートの表面に所定のパターンの凹凸を有する第2積層体を用意する工程と、
(工程3)上記第1積層体と第2積層体とを互いのシリコーンゴムシートの凹凸面を対向させて配置すると共に、その間に太陽電池素子マトリックスを配置し、その状態で減圧し、上記第1積層体及び第2積層体を加熱しながら押圧してシリコーンゴムシートを硬化させて上記太陽電池素子マトリックスを封止する工程と
を有することを特徴とするものである。
以下に、本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法の好適な態様について図面を参照しながら説明する。
【0014】
(第1の実施形態)
本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、第1の実施形態として、上記工程1が上記シリコーンゴム組成物からなる未加硫のシリコーンゴムシートの少なくとも片面にエンボス加工を施す工程と、透明パネルの一面に上記エンボス加工したシリコーンゴムシートを少なくとも貼り付け反対面側がエンボス加工面となるように貼り付ける工程とを有するものであり、また上記工程2が上記シリコーンゴム組成物からなる未加硫のシリコーンゴムシートの少なくとも片面にエンボス加工を施す工程と、パネル又はバックシートの一面に上記エンボス加工したシリコーンゴムシートを少なくとも貼り付け反対面側がエンボス加工面となるように貼り付ける工程とを有するものであることが好ましい。
【0015】
即ち、本実施形態における太陽電池モジュールの製造方法は、透明パネルとパネルとの間、又は透明パネルとバックシートとの間に複数の太陽電池素子がマトリックス状に配置され互いに電気接続されてなる太陽電池素子マトリックスを樹脂封止して太陽電池モジュールを製造する太陽電池モジュールの製造方法において、
(i)(A)成分として下記平均組成式(I)
R
1aSiO
(4-a)/2 (I)
(式中、R
1は同一又は異種の非置換又は置換の一価炭化水素基を示し、aは1.95〜2.05の正数である。)
で表される一分子中にアルケニル基を少なくとも2個有する重合度が100以上のオルガノポリシロキサン 100質量部、
(B)比表面積が50m
2/g以上の補強性シリカ 10〜150質量部、
(C)硬化剤 (A)成分を硬化させる有効量
を含むシリコーンゴム組成物からなる未加硫の二枚のシリコーンゴムシートそれぞれの少なくとも片面にエンボス加工を施す工程と、
(ii)透明パネルの一面に上記エンボス加工したシリコーンゴムシートの一方を少なくとも貼り付け反対面側がエンボス加工面となるように貼り付け、パネル又はバックシートの一面に上記エンボス加工したシリコーンゴムシートの他方を少なくとも貼り付け反対面側がエンボス加工面となるように貼り付ける工程と、
(iii)上記透明パネル、又はパネル又はバックシートのシリコーンゴムシート上に太陽電池素子マトリックスを配置し、上記透明パネルとパネル又はバックシートとをシリコーンゴムシートを内側にして重ね合わせ、真空下で加熱しながら押圧してシリコーンゴムシートを硬化させて上記太陽電池素子マトリックスを封止する工程と
を含むことが好ましい。
【0016】
(i)エンボス加工工程
未加硫のシリコーンゴムシート10の少なくとも片面、好ましくは両面にシート状の型部材20を押し付けてエンボス加工を施す工程である(
図1)。
【0017】
未加硫のシリコーンゴムシートは以下に示すミラブルタイプのシリコーンゴム組成物からなる。
即ち、(A)成分は下記平均組成式(I)で表される一分子中にアルケニル基を少なくとも2個有する重合度が100以上のオルガノポリシロキサンである。
R
1aSiO
(4-a)/2 (I)
(式中、R
1は同一又は異種の非置換又は置換の一価炭化水素基を示し、aは1.95〜2.05の正数である。)
【0018】
上記平均組成式(I)中、R
1は同一又は異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基を示し、通常、炭素数1〜12、特に炭素数1〜8のものが好ましく、具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基、シクロアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基、あるいはこれらの基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子もしくはシアノ基等で置換した基などが挙げられ、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、特にメチル基、ビニル基が好ましい。
【0019】
具体的には、該オルガノポリシロキサンの主鎖を構成するジオルガノシロキサン単位(R
12SiO
2/2、R
1は上記と同じ、以下同様)の繰り返し構造がジメチルシロキサン単位のみの繰り返しからなるもの、又はこの主鎖を構成するジメチルシロキサン単位の繰り返しからなるジメチルポリシロキサン構造の一部として、フェニル基、ビニル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基等を置換基として有するジフェニルシロキサン単位、メチルフェニルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位、メチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン単位等のジオルガノシロキサン単位を導入したものなどが好適である。
【0020】
なお、分子鎖両末端は、例えば、トリメチルシロキシ基、ジメチルフェニルシロキシ基、ビニルジメチルシロキシ基、ジビニルメチルシロキシ基、トリビニルシロキシ基等のトリオルガノシロキシ基(R
13SiO
1/2)やヒドロキシジメチルシロキシ基等のヒドロキシジオルガノシロキシ基(R
12(HO)SiO
1/2)などで封鎖されていることが好ましい。これらの中でも特にトリビニルシロキシ基は反応性が高く、好ましい。
【0021】
特に、(A)成分としてのオルガノポリシロキサンは、一分子中に2個以上のケイ素原子に結合したアルケニル基を有することが必要である。通常、2〜50個、特に2〜20個程度のアルケニル基を有するものが好ましく、特にビニル基を有するものであることが好ましい。この場合、全R
1中0.01〜20モル%、特に0.02〜10モル%がアルケニル基であることが好ましい。なお、このアルケニル基は、分子鎖末端でケイ素原子に結合していても、分子鎖の途中(分子鎖非末端)のケイ素原子に結合していても、その両方であってもよいが、少なくとも分子鎖末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0022】
また、aは1.95〜2.05、好ましくは1.98〜2.02、より好ましくは1.99〜2.01の正数である。また、全R
1中90モル%以上、好ましくは95モル%以上、更に好ましくはアルケニル基を除く全てのR
1がアルキル基、特にはメチル基であることが望ましい。
【0023】
このようなオルガノポリシロキサンは、例えばオルガノハロゲノシランの1種又は2種以上を(共)加水分解縮合することにより、あるいは環状ポリシロキサン(シロキサンの3量体、4量体など)をアルカリ性又は酸性の触媒を用いて開環重合することによって得ることができる。これらは基本的に直鎖状のジオルガノポリシロキサンであるが、(A)成分としては、分子量(重合度)や分子構造の異なる2種又は3種以上の混合物であってもよい。
【0024】
なお、上記オルガノポリシロキサンの重合度は100以上(通常、100〜100,000)が好ましく、より好ましくは2,000〜50,000、特に好ましくは3,000〜20,000であり、室温(25℃)において自己流動性のない、いわゆる生ゴム状(非液状)であることが好ましい。重合度が小さすぎるとコンパウンドとした際に、ロール粘着などの問題が生じ、ロール作業性が低下するおそれがある。なお、この重合度は、通常、トルエンを展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析による標準ポリスチレン換算の重量平均重合度として測定することができる(以下、同じ)。
【0025】
(B)成分の補強性シリカは、機械的強度が優れ、かつ透明性の優れたシリコーンゴム組成物を得るために添加されるものである。
【0026】
優れた機械的強度を持たせるためには比表面積(BET吸着法)が50m
2/g以上であることが必要であり、好ましくは100〜450m
2/g、より好ましくは100〜300m
2/gである。比表面積が50m
2/g未満だと、硬化物の機械的強度が低くなってしまう。また、特に硬化後のシリコーンゴムとして波長300nm以下での優れた透明性を持たせるためには、比表面積200m
2/g以上であることが好ましく、より好ましくは250m
2/g以上である。これにより、例えば上記シリコーンゴム組成物の厚さ2mmの硬化物シートの全光線透過率が90%以上であり、かつヘイズ値が10以下となる。
【0027】
このような補強性シリカとしては、例えば煙霧質シリカ(乾式シリカ又はヒュームドシリカ)、沈降シリカ(湿式シリカ)等が挙げられ、またこれらの表面をクロロシランやヘキサメチルジシラザン等で疎水化処理したものも好適に用いられる。これらの中でも動的疲労特性に優れる煙霧質シリカが好ましい。(B)成分は1種単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0028】
(B)成分の補強性シリカとしては、市販品を用いることができ、例えば、アエロジル130、アエロジル200、アエロジル300、アエロジルR−812、アエロジルR−972、アエロジルR−974などのアエロジルシリーズ(日本アエロジル(株)製)、Cabosil MS−5、MS−7(キャボット社製)、レオロシールQS−102、103、MT−10(トクヤマ社製)等の表面未処理又は表面疎水化処理された(即ち、親水性又は疎水性の)ヒュームドシリカや、トクシールUS−F(トクヤマ社製)、NIPSIL−SS、NIPSIL−LP(日本シリカ(株)製)等の表面未処理又は表面疎水化処理された沈降シリカ等が挙げられる。
【0029】
(B)成分の補強性シリカの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して10〜150質量部であり、好ましくは50〜120質量部であり、更に好ましくは70〜100質量部である。(B)成分の配合量が少なすぎる場合には補強効果が得られず、またシリコーンゴムコンパウンド硬化後の透明性が低下する。多すぎる場合にはシリコーンポリマー中へのシリカの分散が困難になると同時に加工性が悪くなり、また機械的強度も低下する。
【0030】
(C)成分の硬化剤としては、上記(A)成分を硬化させ得るものであれば特に限定されるものではないが、一般的にゴム硬化剤として公知の(a)付加反応(ヒドロシリル化反応)型硬化剤、即ちオルガノハイドロジェンポリシロキサン(架橋剤)とヒドロシリル化反応触媒との組み合わせ、又は(b)有機過酸化物が好ましい。
【0031】
上記(a)付加反応(ヒドロシリル化反応)における架橋剤としてのオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、一分子中に少なくとも2個のケイ素原子と結合した水素原子(SiH基)を含有するもので、下記平均組成式(II)で示される従来から公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンが適用可能である。
【0032】
R
2bH
cSiO
(4-b-c)/2 (II)
(式中、R
2は同一又は異種の非置換又は置換の一価炭化水素基を示し、bは0.7〜2.1、cは0.01〜1.0、かつb+cは0.8〜3.0の正数である。)
【0033】
ここで、R
2は炭素数1〜8の非置換又は置換の一価炭化水素基で、好ましくは脂肪族不飽和結合を有さないものである。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基等のアリール基、ベンジル基等のアラルキル基等の非置換の一価炭化水素基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノメチル基等の上記一価炭化水素基の水素原子の少なくとも一部がフッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子やシアノ基で置換された置換アルキル基等の置換の一価炭化水素基である。bは0.7〜2.1、cは0.01〜1.0、かつb+cは0.8〜3.0、好ましくはbは0.8〜2.0、cは0.10〜1.0、より好ましくは0.18〜1.0、更に好ましくは0.2〜1.0、かつb+cは1.0〜2.5を満足する正数で示される。
【0034】
また、オルガノハイドロジェンポリシロキサンの分子構造は、直鎖状、環状、分岐状、三次元網状のいずれの構造であってもよい。この場合、一分子中のケイ素原子の数(又は重合度)は2〜300個、特に4〜200個程度の室温(25℃)で液状のものが好適に用いられる。なお、ケイ素原子に結合する水素原子(SiH基)は分子鎖末端にあっても側鎖(分子鎖途中)にあっても、その両方にあってもよく、一分子中に少なくとも2個(通常2〜300個)、好ましくは3個以上(例えば3〜200個)、より好ましくは4〜150個程度含有するものが使用される。
【0035】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、例えば、1,1,3,3−テトラメチルジシロキサン、1,3,5,7−テトラメチルシクロテトラシロキサン、メチルハイドロジェンシクロポリシロキサン、メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン環状共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)フェニルシラン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン共重合体、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジフェニルシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位とからなる共重合体、(CH
3)
2HSiO
1/2単位とSiO
4/2単位と(C
6H
5)SiO
3/2単位とからなる共重合体等や、上記各例示化合物において、メチル基の一部又は全部がエチル基、プロピル基等の他のアルキル基やフェニル基等のアリール基で置換されたもの等が挙げられる。また、このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、具体的に下記構造式の化合物を例示することができる。
【0036】
【化1】
(式中、kは2〜10の整数、s及びtはそれぞれ0〜10の整数である。)
【0037】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、25℃における粘度が0.5〜10,000mPa・s、特に1〜300mPa・sであることが好ましい。粘度は、回転粘度計により測定することができる。
【0038】
また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、(A)成分中のケイ素原子に結合したアルケニル基等の脂肪族不飽和基に対するオルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子に結合した水素原子(即ち、SiH基)のモル比(SiH基/脂肪族不飽和基)が0.5〜10モル/モル、好ましくは0.8〜6モル/モル、より好ましくは1〜5モル/モルとなる量で配合することが望ましい。0.5モル/モル未満だと架橋が十分でなく、十分な機械的強度が得られない場合があり、また10モル/モルを超えると硬化後の物理特性が低下し、特に耐熱性と耐圧縮永久歪性が著しく劣化する場合がある。
【0039】
オルガノハイドロジェンポリシロキサンの配合量は、(A)成分のオルガノポリシロキサンを硬化させる有効量であり、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.1〜30質量部であることが好ましく、より好ましくは0.1〜10質量部、更に好ましくは0.3〜10質量部である。
【0040】
また、上記(a)付加反応(ヒドロシリル化反応)における架橋反応に用いられるヒドロシリル化反応触媒は、(A)成分中の脂肪族不飽和基(例えばアルケニル基等)と、架橋剤としての上記オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のケイ素原子結合水素原子(SiH基)を付加反応させる触媒である。ヒドロシリル化反応触媒としては、白金族金属系触媒が挙げられ、白金族の金属単体とその化合物があり、これには従来、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の触媒として公知のものが使用できる。例えば、シリカ、アルミナ又はシリカゲルのような担体に吸着させた微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸6水塩のアルコール溶液、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられるが、白金又は白金化合物が好ましい。
【0041】
ヒドロシリル化反応触媒の添加量は、付加反応を促進できる、いわゆる触媒量であればよく、通常、(A)成分に対して白金系金属質量に換算して1ppm〜1質量%の範囲で使用されるが、10〜500ppmの範囲が好ましい。添加量が1ppm未満だと、付加反応が十分促進されず、硬化が不十分である場合があり、一方、1質量%を超えると、これより多く加えても、反応性に対する影響も少なく、不経済となる場合がある。
【0042】
また、上記の触媒のほかに硬化速度を調整する目的で、付加架橋制御剤を使用してもよい。具体的にはエチニルシクロヘキサノールやテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン等が挙げられる。
【0043】
一方、(b)有機過酸化物としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、p−メチルベンゾイルパーオキサイド、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、2,4−ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−ビス(2,5−t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーベンゾエート、1,6−ヘキサンジオール−ビス−t−ブチルパーオキシカーボネート等が挙げられる。
【0044】
有機過酸化物の添加量は、(A)成分100質量部に対して0.1〜15質量部、特に0.2〜10質量部が好ましい。添加量が少なすぎると架橋反応が十分に進行せず、硬度低下やゴム強度不足、圧縮永久歪増大等の物性悪化を生じる場合があり、多すぎるとコスト的に好ましくないばかりでなく、硬化剤の分解物が多く発生して、圧縮永久歪増大等の物性悪化や得られたシートの変色を増大させる場合がある。
【0045】
また、透明パネル及びパネル又はバックシートとの接着性を改善するために、常法によりシランカップリング剤を添加してもよい。
【0046】
上記(A)、(B)及び(C)成分の所定量を、2本ロール、ニーダー、バンバリーミキサー等で混練りすることによってシリコーンゴム組成物を得る。
【0047】
このようにして調製されたシリコーンゴム組成物の可塑度(JIS K6249に準ずる)は、150以上1,000以下、好ましくは200以上800以下、更に好ましくは250以上600以下である。可塑度が150より小さいとシートの粘着性が増大し、作業性に劣りまた次工程以降でエンボス加工しエンボスシートを剥離する際にも作業しにくくなる。また、シリコーンゴムシート表面に付与されるエンボス構造の凹凸形状を維持することが困難となる。一方、可塑度が1,000を超えると、シート自体が脆くなりエンボス加工しにくくなる可能性がある。
【0048】
更に、上記シリコーンゴム組成物は、カレンダー成形法、インジェクション法、プレス法などの常法によりシート化することができる。この際、シリコーンゴムシートの厚みは0.3mm以上2.0mm以下の厚みで成形するのが好ましく、0.3mm以上1.0mm以下がより好ましい。0.3mmより薄いと次工程のエンボス加工する際にシートが柔らかいために傷付く可能性があり、2.0mmより厚いと特にカレンダー成形方法では成形が困難となり、またコスト的にも劣る可能性がある。以上のようにして、粘着性があり表面が平坦な未加硫のシリコーンゴムシート10を得る。
【0049】
次に、得られた未加硫のシリコーンゴムシートの両面にエンボス加工を施す工程について説明する。本発明で行うエンボス加工は、
図1に示すように、表面に凹凸を設けたシート状の型部材(エンボスシートともいう)20のこの凹凸を設けた面(エンボス面)を上記シリコーンゴム組成物からなるシリコーンゴムシート10に押し付けて該型部材20のエンボス模様をシリコーンゴムシートに転写することによってエンボス加工を施すものである。このとき、2つの型部材20でシリコーンゴムシート10を挟むようにして、該シリコーンゴムシート10の両面にエンボス加工を施すとよい。また、型部材20をシリコーンゴムシート10に押し付けてエンボス加工する際には、常法によりゴムローラ等を用いて押し付けることができる。エンボス加工後の型部材20は両面にエンボス加工したシリコーンゴムシート(両面エンボスシート)11の保護フィルムとして機能する。
本実施形態では、これ以降シリコーンゴムシートの両面にエンボス加工を施した場合について説明する。
【0050】
また、エンボス加工を行う際には、室温で行うのがよい。温度が高いとゴムシート組成物の加硫が進行してしまう可能性があり、一方温度が低いとエンボス模様の転写が上手くいかない可能性がある。通常は非加熱の室温加工である。
【0051】
この際に用いる型部材20の材質は、シリコーンゴムシートに対して剥離性の良いものであれば特に限定されず、例えばポリエチレン製のエンボスシートを用いることができる。また、型部材20の厚みは0.08mm以上0.3mm以下であることが好ましい。0.08mmより薄いと、型部材20をシリコーンゴムシート10に押し付ける際にエンボス模様が潰れてしまう可能性があり、0.3mmより厚いとコスト高になってしまう。
【0052】
また型部材20のエンボス模様は特に限定しないが、型部材20のエンボス面のエンボス模様の凸部分(
図2(a)におけるエンボス凸部21a)が直線状かつ格子状になっていることが好ましい。つまり、次工程でエンボス加工したシリコーンゴムシート11をパネル等に貼り付けて、更に後述する減圧(真空)下ラミネートする際に、型部材20のエンボス面のエンボス凸部21aで転写されたシリコーンゴムシート11のエンボス凹部11bによって、より気泡を抜けやすくするためである。即ち、減圧の際に、エンボス凹部11bが空気の抜ける通路となり、太陽電池素子マトリックス14との間や透明パネル13a(又はパネル又はバックシート13b)との間の空間が容易に脱気され、気泡の発生を防止することができる。脱気で排出される気体は空気のみならず、空気中の水蒸気、未加硫のシリコーンゴムシートから発生する低分子のシロキサンガス及び水蒸気を含む気体として排出される総体である。代表して空気として表す。この脱気が不十分であると、太陽電池素子マトリックスと未加硫のシリコーンゴムシートの間で気泡に起因する未接着部(空隙)が生じ、太陽電池素子マトリックスの封止が不十分となり、太陽電池モジュールの屋外暴露時にその部分をつたって水蒸気が侵入しやすくなることから、太陽電池の電極の腐食が発生して長期信頼性を損なうこととなる。
【0053】
型部材20のエンボス模様(凹凸パターン)は、シリコーンゴムシート11におけるエンボス凹部11bが空気の抜ける通路となるのであれば、特に限定されず、ダイヤ型のエンボス単位が繋がったダイヤ模様、矩形のエンボス単位が繋がった格子模様、円形のエンボス単位が繋がった網目模様、亀の甲のエンボス単位が繋がった亀甲模様、波型のエンボス単位が繋がった波型模様、閉じた線形状のエンボス単位が繋がった不定形模様などいずれでもよい。また、格子状に溝を形成し、四方の溝で区画された正方形或いは方形の凸面或いは凹面の形状であっても良い。更には、方形、正方形に区分けされた領域の各中心に円筒状、或いは楕円状の凹面、凸面を設けた形状であっても良く、凹凸の形状は限定されない。
【0054】
ここで、型部材20のエンボス面のエンボスパターン例としては、
図2に示すように、ダイヤ型のエンボスパターン21が挙げられる。
図2(a)がダイヤ型のエンボスパターンの全体正面図、(b)が
図2(a)のエンボスパターンを構成するエンボス単位の正面図である。
ダイヤ型エンボスパターンの場合、ダイヤ型のエンボス単位21pの外周の一辺の長さLが2mm以上5mm以下であることが好ましい(
図2(b))。一辺Lが2mmより小さいとエンボスの模様が正確に転写できなくなる可能性があり、5mmより大きいと型部材20を未加硫のシリコーンゴムシート10に押し付ける際にエンボス模様が潰れてしまう可能性がある。また、一辺Lが2mmより小さいとシリコーンゴムシート11においてエンボス凹部21bが転写されて形成されるエンボス凸部11aが小さくなり、透明パネル13a、パネル又はバックシート13bへの貼り付け面積が小さくなることからエンボス凸部21aの幅によってはシリコーンゴムシート11が剥離する場合がある。逆に、一辺Lが5mmより大きいとシリコーンゴムシート11の貼り付け面積が大きくなるが、相対的にシリコーンゴムシート11におけるエンボス凹部11bが少なくなることから真空ラミネート工程において脱気が不十分となるおそれがある。なお、同様の理由から、エンボス単位が矩形の場合には矩形の一辺の長さが2mm以上5mm以下であることが好ましく、円形の場合には円形の半径が2mm以上5mm以下であることが好ましい。
【0055】
また、ダイヤ型のエンボス単位21pの鋭角となる角部の角度αが40度以上70度以下であることが好ましい。角度αが40度より小さいとエンボスの模様が未加硫のシリコーンゴムシートに正確に転写できなくなる可能性があり、70度より大きいと型部材20を未加硫のシリコーンゴムシート10に押し付ける際にエンボス模様が潰れてしまう可能性がある。
【0056】
更に、ダイヤ型のエンボス単位21pのエンボス凸部21aの幅wが0.2mm以上1mm以下であることが好ましい。幅wが0.2mmより小さいとエンボス凸部21aがシリコーンゴムシートに正確に転写できなくなる可能性があり、1mmより大きいとエンボス凹部21bがシリコーンゴムシートに正確に転写できなくなる可能性がある。なお、同様の理由から、エンボス単位が矩形や円形の場合にもエンボス凸部の幅は0.2mm以上1mm以下であることが好ましい。
【0057】
ダイヤ型のエンボス単位21pのエンボス凸部21aの高さ(エンボス凹部21bの深さ)は0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましい。高さが0.1mmより小さいとシリコーンゴムシート11のエンボス凸部11aの高さが低すぎて真空ラミネート工程の減圧の際に空気が抜ける通路が確保できなくなるおそれがあり、高さが0.5mmより大きいとエンボス凸部11aが高くなりすぎて真空ラミネート工程で押圧しても対象物(太陽電池素子マトリックス、透明パネル、パネル、バックシート)との間の空間が完全には埋まらない可能性がある。なお、同様の理由から、エンボス単位が矩形や円形の場合にもエンボス凸部の高さは0.1mm以上0.5mm以下であることが好ましい。
【0058】
以上のようにシリコーンゴムシート10に型部材20のエンボス面を押し付けた後、該型部材20を剥離すると、型部材20のエンボス面の凹凸パターンがほぼそのまま転写された凹凸パターンを有するシリコーンゴムシート11となる(
図3(a))。即ち、シリコーンゴムシート11のエンボス凹部11bは型部材20のエンボス凸部21aの形状及び寸法に対応したものとなり、エンボス凸部11aはエンボス凹部21bの形状及び寸法に対応したものとなる。
【0059】
(ii)シリコーンゴムシート貼り付け工程(
図3)
本工程では、透明パネルの一面に上記エンボス加工したシリコーンゴムシートの一方を少なくとも貼り付け反対面側がエンボス加工面となるように貼り付け、パネル又はバックシートの一面に上記エンボス加工したシリコーンゴムシートの他方を少なくとも貼り付け反対面側がエンボス加工面となるように貼り付ける。
【0060】
即ち、
図3に示すように、エンボス加工したシリコーンゴムシート11のいずれか片面側の型部材20を剥離し(
図3(a))、その面のエンボス凸部(エンボス構造の凸部分)11aを透明パネル13a(又はパネル又はバックシート13b)に軽く押し当てると共にエンボス凹部(エンボス構造の凹部分)11bを潰さないようにしてその面を透明パネル13a(又はパネル又はバックシート13b)に貼り付ける(
図3(b))。
【0061】
ここで、透明パネルは、太陽光を入射させる側(受光面側)となる透明部材であり、受光面パネルともいわれるものであり、透明性、耐候性、耐衝撃性をはじめとして屋外使用において長期の信頼性能を有する部材が必要である。例えば白板強化ガラス、アクリル樹脂、フッ素樹脂又はポリカーボネート樹脂等が挙げられ、特に厚さ3〜5mm程度の白板強化ガラスが好ましい。
【0062】
また、パネル又はバックシートは、透明パネルに対して対向して配置されるものであり、パネルとしては、太陽電池素子の温度を効率よく放熱することが求められ、材料として硝子材、合成樹脂材、金属材又はそれらの複合部材が挙げられる。硝子材の例としては、青板硝子、白板硝子又は強化硝子等が挙げられ、合成樹脂材としては、アクリル樹脂、ポリカーボネート(PC)樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)樹脂又はエポキシ樹脂等が挙げられる。また金属材としては、銅、アルミニウム又は鉄等が挙げられ、複合部材としては、シリカをはじめ、酸化チタン、アルミナ、窒化アルミニウムなど高い熱伝導性を有する材料を担持した合成樹脂等が挙げられる。なお、このパネルが太陽光入射の反対面のパネルとなる場合、太陽光を入射させるパネルと共に透明性を有する部材を用いることにより、太陽光の直達光及び散乱光の一部を太陽光入射の反対面側に透過させることができ、例えば草原などに設置した場合、太陽電池モジュールの入射面と反対側の、つまり本来日陰となってしまう部分にも太陽光に一部が照射されることにより植物の生育を促し、家畜の放牧等にも利用できる。
【0063】
バックシートとしては、例えばETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)フィルム、PVF(ポリフッ化ビニル)フィルム等のフッ素樹脂フィルム、またアルミ箔やPETをPVFのシートで挟み込んだりした積層シートなどを用いることができる。
【0064】
上記シリコーンゴムシートの貼り付け方法としては、例えば透明パネル13aに、上記(i)工程で得られたエンボス加工したシリコーンゴムシート11の両面に押し付けたままとなっている型部材20のうち、いずれか一方を剥離し(
図3(a))、その面をパネル13aに当てた状態で常法によりゴムローラ等で押圧してシリコーンゴムシート11を貼り付ける(
図3(b))。その際、シリコーンゴムシート11のエンボス模様のうち、エンボス凸部11aがパネル13aに当接して若干押し潰された状態となりシリコーンゴムシート11が貼り付くようになるが、エンボス凹部(凹面の溝部分)11bを潰さないようにする。エンボス凹部11bを潰してしまうと、次工程の真空ラミネート処理の際に気泡が抜けにくくなる可能性がある。透明パネルに対向配置されるパネル又はバックシート13bについても同様の方法によりシリコーンゴムシート11を貼り付ける。
【0065】
(iii)真空ラミネート処理工程
次いで、シリコーンゴムシート11の反対面側の型部材20を剥離した後に、透明パネル13a、又はパネル又はバックシート13bのシリコーンゴムシート11上に太陽電池素子マトリックス14を配置し、透明パネル13aとパネル又はバックシート13bとをシリコーンゴムシート11を内側にして重ね合わせる(
図4)。即ち、透明パネル13a、エンボス加工したシリコーンゴムシート(両面エンボスシート)11、太陽電池素子マトリックス14、エンボス加工したシリコーンゴムシート11、バックシート13bをこの順番で積層配置している。このとき、シリコーンゴムシート11は太陽電池素子マトリックス14全体を覆うように配置される。
なお、シリコーンゴムシートについて片面のみにエンボス加工を施した場合には、シリコーンゴムシートのエンボス加工面を太陽電池素子マトリックス側に向けて配置することになる。
【0066】
上記のように太陽電池モジュール構成部材を積層配置したものについて、真空ラミネータ装置(不図示)を用いて真空下で加熱しながら押圧してシリコーンゴムシートを硬化させて上記太陽電池素子マトリックスを封止する。
【0067】
ここで、太陽電池素子は、単結晶シリコン又は多結晶シリコンのうちから選ばれる1種もしくは2種のシリコン材料(シリコン基板)を用いて作製された太陽電池セルである。また、太陽電池素子マトリックス14は、複数の太陽電池セルを縦横二次元方向それぞれに複数枚配置される状態(マトリックス状)に配置し、互いに電気接続したものである。通常2〜60個の太陽電池セルが互いにタブ線等のインターコネクタで電気的に直列に接続された直線状の太陽電池素子ストリングを複数用意し、これら(太陽電池素子ストリングス)を平行に配列し、その太陽電池素子ストリング同士を直列接続して太陽電池素子マトリックス14を構成している。なお、太陽電池素子が両面受光型の場合、透明パネル13aだけでなく、透明パネル13aに対向配置されるパネル又はバックシート13bも透明なものとする。
【0068】
また、真空ラミネータ装置としては、柔軟な膜体で仕切られた、隣接する2つの減圧槽を有する汎用の太陽電池モジュール作製用のラミネータ装置を採用できる。
【0069】
この場合、例えば一方の減圧槽内に、
図4に示すように透明パネル13a及びバックシート13b等の太陽電池モジュール構成部材を仮積層した状態でセットして2つの減圧槽を減圧し、略真空状態にする。ここで、本発明で用いる未加硫のシリコーンゴムシートは粘着性があるため、平坦なシリコーンゴムシートをそのまま上記のように仮積層した場合、太陽電池素子マトリックスとの間、シリコーンゴムシート同士の間で部分的にくっついて減圧時の排気経路が閉塞されるようになり、排出されずに残った空気が結果として気泡として残り、未接着領域(空隙)が発生する。脱気で排出される気体は空気のみならず、空気中の水蒸気、未加硫のシリコーンゴムシートから発生する低分子のシロキサンガス及び水蒸気を含む気体として排出される総体であり、空気をその代表として表していることは、前記と同様である。未接着領域が発生すると太陽電池素子マトリックスの封止が不十分となり、太陽電池モジュールの屋外暴露時の水蒸気の浸入が容易となり、セルの電極の腐食を発生させ長期信頼性を損なうこととなる。太陽電池モジュールは幅1m弱、長さ約1.6mの大きなパネルであるが、その中に数個の気泡起因の未接着部分(空隙)が発生すれば完成品とならず、このような空隙の発生は製造工程上の大きな問題となる。本発明では、この真空ラミネータ装置における減圧時に、透明パネル13aとシリコーンゴムシート11との間、太陽電池素子マトリックス14とシリコーンゴムシート11との間及びシリコーンゴム11とバックシート13bとの間の空間の気体(空気)は、シリコーンゴムシート11に設けられたエンボス凹部11bで確保された空間を通じて脱気することが可能である。このときの減圧状態(真空度)の程度は、この後の圧縮時に各積層間の隙間が気泡として残らず、完全に埋まる程度とすればよい。次いで、仮積層された透明パネル13a及びバックシート13b等の太陽電池モジュールの構成部材がセットされた減圧槽内の減圧状態を維持したまま、他方の減圧槽の減圧を開放し、常圧とし又は加圧して膜体で透明パネル13a及びバックシート13bをその板厚方向に圧縮するようにする。このとき、上記のように各積層間が脱気されているので、その空間がシリコーンゴムにより隙間なく埋められるようになる。このとき、透明パネル13a及びバックシート13bを70〜150℃、好ましくは90〜130℃、更に好ましくは110〜120℃に加熱しながら、1〜30分間押圧すると、二枚の未加硫のシリコーンゴムシート11同士が融着すると共に硬化し、更に太陽電池素子マトリックス、透明パネル13a及びバックシート13bに固着するようになる。即ち、太陽電池素子マトリックス14が透明パネル13a及びバックシート13bの間で上記シリコーンゴム組成物の硬化物である封止材12で封止された状態となる(
図5)。これにより、封止材12で密封するようになり、太陽電池モジュールの端面からの水分等のガスの浸入を防止でき、耐久性の高い太陽電池モジュールを実現できる。
【0070】
このとき、70℃より加熱温度が低いと、シリコーンゴムシート11の加硫反応が完全には進まない可能性があり、150℃より温度が高いと、加硫反応速度が大きくなり、シリコーンゴムシート11の硬化が早くなり封止が完全にはできなくなり、透明パネル13aやバックシート13bとの間に空隙ができてしまう可能性がある。
【0071】
最後に、封止後の透明パネル及びパネル又はバックシートの外周端部(額縁端部)にフレーム部材を装着して、太陽電池モジュールを完成する。
フレーム部材は、衝撃、風圧又は積雪に対する強度が優れ、耐候性を有し、かつ軽量であるアルミニウム合金、ステンレス鋼等からなるものが好ましい。これらの材料で成形したフレーム部材が太陽電池素子を狭持したパネルの外周を囲うように装着され、ねじ等により固定される。
【0072】
以上のように製造された太陽電池モジュールは、太陽電池素子マトリックスがシリコーンゴム硬化物を介して平坦な透明パネル及びパネル又はバックシートに保持されるようになるため、高効率で長期信頼性を有するものとなる。また、本発明によれば、このような高性能の太陽電池モジュールの量産が容易となる。
【0073】
(第2の実施形態)
本発明に係る太陽電池モジュールの製造方法は、第2の実施形態として、上記工程1が透明パネルの一面に上記シリコーンゴム組成物からなる未加硫のシリコーンゴムシートを貼り付ける工程と、上記透明パネルに貼り付けたシリコーンゴムシート表面にエンボス加工を施す工程とを有するものであり、上記工程2がパネル又はバックシートの一面に上記シリコーンゴム組成物からなる未加硫のシリコーンゴムシートを貼り付ける工程と、上記パネル又はバックシートに貼り付けたシリコーンゴムシート表面にエンボス加工を施す工程とを有するものであることが好ましい。
以下、本実施形態における各工程について説明する。なお、本実施形態で使用するシリコーンゴムシート10、透明パネル13a、パネル又はバックシート13bは、第1の実施形態と同じものである。
【0074】
(工程1(i))シリコーンゴムシート貼り付け工程(
図6)
本工程では、シリコーンゴムシート10、即ち上述したミラブルタイプのシリコーン組成物からなる粘着性のある未加硫のシリコーンゴムシートを準備し、
図6に示す圧着ローラを有するラミネータ装置(ガラスラミネータ30)を用いてこれを透明パネル13aに貼り付ける。
【0075】
ガラスラミネータ30は、透明パネル13aを搬送ローラ31で水平に支持しながら搬送する搬送機構、シリコーンゴムシートロール10rから保護フィルム22付きシリコーンゴムシート10hを巻き出し圧着ローラ32側に供給するシート供給機構、透明パネル13aとシリコーンゴムシート10とを圧着して貼り付けるウレタンゴム製又はシリコーンゴム製の一対の圧着ローラ32,32、圧着ローラ32の出側でシリコーンゴムシート10から剥離した保護フィルム22を巻き取る巻取り機構を備えるガラスラミネータ装置である。図中右側が装置入側、図中左側が装置出側である。また、図中矢印はローラ及びロールの回転方向を示す。
【0076】
このとき、シリコーンゴムシート10は粘着性を有することから太陽電池モジュールの大きさ(例えば、幅1m弱×長さ約1.6m)に対応したシリコーンゴムシート10をそのままの状態で扱うことは困難である。そこで、シリコーンゴムシート10の一方の面又は両面に保護フィルム22を貼り付けてその取り扱いが容易となるようにすることが好ましい。この保護フィルム22は、シリコーンゴムシート10の疵付き防止、汚染防止及び粘着性の保持が可能で、かつシリコーンゴムシート10から容易に剥離可能であればどのようなフィルムでもよいが、例えばポリエチレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)に代表されるポリエステルなどからなり可撓性を有する平坦な(エンボス加工のない)フィルム、あるいはこのようなフィルムに
図2(a)に示すようなエンボスパターンのエンボス加工を施したエンボスフィルムが挙げられる。本工程では、シリコーンゴムシート10の片面に保護フィルム22を貼り付けた後に、ロール状に巻いたもの(シリコーンゴムシートロール10r)を本工程用の材料として用意する。
【0077】
本工程では、まず
図6に示すガラスラミネータ30において、透明パネル13aを搬送ローラ31によって図中右側から左側方向へ搬送すると共に、装置入側かつ上方に配置されたシリコーンゴムシートロール10rから保護フィルム22付きシリコーンゴムシート10hを保護フィルム22貼り付け面側が上面、シリコーンゴムシート10露出面が下面となるように巻き出し、透明パネル13aの上面に供給する。次いで、圧着ローラ32,32間に透明パネル13a及び保護フィルム22付きシリコーンゴムシート10hを重ねるように挿入し、透明パネル13aと保護フィルム22付きシリコーンゴムシート10hとをこの圧着ローラ32,32で圧着し、貼り合わせる。このとき、圧着ローラ32は加熱されておらず、貼り付けは室温で行われる。圧着ローラ32の出側では貼り合わされた積層体から保護フィルム22が剥離され保護フィルムロール22rとして巻き取られ、透明パネル13aにシリコーンゴムシート10が貼り付けられた積層体130aが得られる。積層体130aでは、透明パネル13aとシリコーンゴムシート10とが隙間なく、即ち気泡を取り込むことなく密着した状態で貼り合わされている。
【0078】
なお、以上の貼り付け処理は大気圧下で行ってもよいが、差動排気により減圧した状態で行うと、透明パネル13aとシリコーンゴムシート10との間に気泡が巻き込まれるのを防止しやすくなるため好ましい。また、パネルサイズの小さいものについては、回転駆動する上記圧着ローラ32,32のユニットに、手作業で透明パネル13aとシリコーンゴムシート10hを重ねて挿入して貼り合わせた後、保護フィルム22を剥離させて積層体130aを得るようにしてもよい。
【0079】
(工程1(ii))エンボス加工工程(
図7)
本工程では、
図7に示すように、上記のようにして得られた積層体130aのシリコーンゴムシート10の表面にエンボス加工を施す。
図7において、51は平坦な定盤、52はローラ状の型部材であるエンボス加工ローラである。
【0080】
ここで、エンボス加工ローラ52は、ステンレス鋼などの金属、ポリエチレンやPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)などの硬質プラスチックからなることが好ましく、シリコーンゴムシートに対して剥離性のよいものであればより好ましい。また、エンボス加工ローラ52のローラ外周面には第1の実施形態で述べたものと同じエンボス模様(凹凸パターン)が設けられている。
【0081】
図7では、まず平坦な定盤51上に積層体130aをシリコーンゴムシート10が上方を向くように載置し、このシリコーンゴムシート10の表面にエンボス加工ローラ52のローラ外周面を押し付けながら回転移動させて該シリコーンゴムシート10表面にエンボス模様(凹凸パターン)を転写させる。これにより、シリコーンゴムシートの片面全面に所定の凹凸パターンが付与され、透明パネル13aの一面に所定のパターンの凹凸を有するシリコーンゴムシート11’が貼り付けられた第1積層体131が得られる。
【0082】
なお、エンボス加工はこの方法に限定されるものではなく、例えば第1の実施形態で示したように型部材20を積層体130aのシリコーンゴムシート10に押し付けてエンボス模様を転写するようにしてもよい。
【0083】
(工程2(i))シリコーンゴムシート貼り付け工程(
図8)
本工程では、シリコーンゴムシート10、即ち上述したミラブルタイプのシリコーン組成物からなる粘着性のある未加硫のシリコーンゴムシートを準備し、
図8に示す圧着ローラを有するラミネータ装置(フィルムラミネータ40)を用いてこれをバックシート13bに貼り付ける。
【0084】
フィルムラミネータ40は、バックシートロール13brからバックシート13bを巻き出し支持ローラ41で支持しながら圧着ローラ42側に供給する第1シート供給機構、シリコーンゴムシートロール10rから保護フィルム22付きシリコーンゴムシート10hを巻き出し支持ローラ41で支持しながら圧着ローラ42側に供給する第2シート供給機構、バックシート13bとシリコーンゴムシート10とを圧着して貼り付けるウレタンゴム製又はシリコーンゴム製の一対の圧着ローラ42,42、圧着ローラ42の出側でシリコーンゴムシート10から剥離した保護フィルム22を巻き取る巻取り機構を備えるフィルムラミネータ装置である。図中右側が装置入側、図中左側が装置出側である。また、図中矢印はローラ及びロールの回転方向を示す。
【0085】
本工程では、まず
図8に示すフィルムラミネータ40において、装置入側かつ下方に配置されたバックシートロール13brから第1シート供給機構によりバックシート13bを巻き出し供給すると共に、装置入側かつ上方に配置されたシリコーンゴムシートロール10rから第2シート供給機構により保護フィルム22付きシリコーンゴムシート10hを保護フィルム22貼り付け面側が上面、シリコーンゴムシート10露出面が下面となるように巻き出し、バックシート13bの上面に供給する。次いで、圧着ローラ42,42間にバックシート13b及び保護フィルム22付きシリコーンゴムシート10hを重ねるように挿入し、バックシート13bと保護フィルム22付きシリコーンゴムシート10hとをこの圧着ローラ42,42で圧着し、貼り合わせる。このとき、圧着ローラ42は加熱されておらず、貼り付けは室温で行われる。圧着ローラ42の出側では貼り合わされた積層体から保護フィルム22が剥離され保護フィルムロール22rとして巻き取られ、バックシート13bにシリコーンゴムシート10が貼り付けられた積層体130bが積層体ロール130brとして巻き取られる。積層体130bでは、バックシート13bとシリコーンゴムシート10とが隙間なく、即ち気泡を取り込むことなく密着した状態で貼り合わされている。
【0086】
なお、圧着ローラ42,42で圧着する部分には、バックシート13b及びシリコーンゴムシート10hに対してバックシートロール13br及びシリコーンゴムシートロール10r側にバックテンションをかけながら、該バックシート13b及びシリコーンゴムシート10hの圧着方向に垂直となる面が互いに等速となるように供給すると、バックシート13bとシリコーンゴムシート10とが隙間なく、即ち気泡を取り込むことなく密着した状態で貼り合わされるため好ましい。
【0087】
また、以上の貼り付け処理は大気圧下で行ってもよいが、差動排気により減圧した状態で行うと、バックシート13bとシリコーンゴムシート10との間に気泡が取り込まれるのを防止しやすくなるため好ましい。
【0088】
(工程2(ii))エンボス加工工程(
図9)
本工程では、
図9に示すように、上記のようにして得られた積層体130bのシリコーンゴムシート10の表面にエンボス加工を施す。
図9において、61は支持ローラ、62はローラ状の型部材であるエンボス加工ローラである。エンボス加工ローラ62は、上述したエンボス加工ローラ52と同じものでよいが、ここでは支持ローラ61との間で積層体130bを挟んで押圧するものとして固定配置される。図中矢印はローラ及びロールの回転方向を示す。
【0089】
図9では、まず図中右側に配置された積層体ロール130brから積層体130bをシリコーンゴムシート10が上方を向くように巻き出し、エンボス加工ローラ62、支持ローラ61間に供給し、エンボス加工ローラ62が積層体130bの通過速度と等速で回転しながら、積層体130bのシリコーンゴムシート10の表面にエンボス加工ローラ62のローラ外周面を押し付けることで該シリコーンゴムシート10表面にエンボス模様(凹凸パターン)を転写させる。これにより、シリコーンゴムシートの片面全面に所定の凹凸パターンが付与され、バックシート13bの一面に所定のパターンの凹凸を有するシリコーンゴムシート11’が貼り付けられた第2積層体132が得られる。ここでは、第2積層体132が巻き取られて第2積層体ロール132rとなるが、最終的に次工程の真空ラミネート処理用として所定の寸法のシート状の第2積層体132として切り出す。
【0090】
なお、積層体130bが小さなパネルサイズのものである場合、回転駆動する上記支持ローラ61、エンボス加工ローラ62のユニットに、手作業で積層体130bを挿入してシリコーンゴムシート10にエンボス加工を施すようにしてもよい。
【0091】
また、ここではロール状のバックシートを連続的に処理する方法を示したが、これに限定されるものではなく、切板状のバックシートやパネルを処理するようにしてもよい。その場合は、上述した透明パネル13aの処理(工程1(i)、(ii))と同様の処理を行うとよい。
【0092】
(工程3)真空ラミネート処理工程
次いで、上記のようにして得られた第1積層体131と第2積層体132とを互いのシリコーンゴムシート11’の凹凸面を対向させて配置すると共に、その間に太陽電池素子マトリックス14を配置して積層する(
図10)。即ち、透明パネル13a、エンボス加工したシリコーンゴムシート(片面エンボスシート)11’、太陽電池素子マトリックス14、エンボス加工したシリコーンゴムシート11’、バックシート13bをこの順番で積層配置している。
【0093】
上記のように太陽電池モジュール構成部材を積層配置したものについて、第1の実施形態と同様に真空ラミネータ装置を用いて真空下で加熱しながら押圧してシリコーンゴムシートを硬化させて上記太陽電池素子マトリックスを封止する。
【0094】
この場合、例えば真空ラミネータ装置の一方の減圧槽内に、
図10に示すように透明パネル13a及びバックシート13b等の太陽電池モジュール構成部材を仮積層した状態でセットして2つの減圧槽を減圧し、略真空状態にする。このとき、透明パネル13a側のシリコーンゴムシート11’と太陽電池素子マトリックス14との間、太陽電池素子マトリックス14とバックシート13b側のシリコーンゴムシート11’との間の空間の気体(空気)は、シリコーンゴムシート11’に設けられたエンボス凹部11bで確保された空間を通じて脱気される。次いで、仮積層された透明パネル13a及びバックシート13b等の太陽電池モジュールの構成部材がセットされた減圧槽内の減圧状態を維持したまま、他方の減圧槽の減圧を開放し、常圧とし又は加圧して膜体で透明パネル13a及びバックシート13bをその板厚方向に圧縮するようにする。このとき、上記のように各積層間が脱気されているので、その空間がシリコーンゴムにより隙間なく埋められるようになる。なお、透明パネル13aとシリコーンゴムシート11’との間、バックシート13bとシリコーンゴムシート11’との間は、上記貼り付け工程で隙間なく密着しているため、気泡の取り込みなく埋められる。このとき、透明パネル13a及びバックシート13bを70〜150℃、好ましくは90〜130℃、更に好ましくは110〜120℃に加熱しながら、1〜30分間押圧すると、二枚の未加硫のシリコーンゴムシート11’同士が融着すると共に硬化し、更に太陽電池素子マトリックス、透明パネル13a及びバックシート13bに固着するようになる。即ち、太陽電池素子マトリックス14が透明パネル13a及びバックシート13bの間で上記シリコーンゴム組成物の硬化物である封止材12で封止された状態となる(
図5)。これにより、封止材12で密封するようになり、太陽電池モジュールの端面からの水分等のガスの浸入を防止でき、耐久性の高い太陽電池モジュールを実現できる。
【0095】
最後に、封止後の透明パネル及びパネル又はバックシートの外周端部(額縁端部)にフレーム部材を装着して、太陽電池モジュールを完成する。
【0096】
以上のように製造された太陽電池モジュールは、太陽電池素子マトリックスがシリコーンゴム硬化物を介して平坦な透明パネル及びパネル又はバックシートに保持されるようになるため、高効率で長期信頼性を有するものとなる。また、本発明によれば、このような高性能の太陽電池モジュールの量産が容易となる。
【実施例】
【0097】
以下、実施例、比較例及び参考例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例で部は質量部を示す。また、室温は25℃を示す。また、質量平均重合度は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算値である。
【0098】
[実施例1]
以下の条件で太陽電池モジュールを作製した。
まず、ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000であるオルガノポリシロキサン100部、BET比表面積200m
2/gの乾式シリカ(アエロジル(Arosil)200(日本アエロジル(株)製))80部、両末端にシラノール基を有し、粘度29mPa・s(25℃)のジメチルポリシロキサン5部をニーダーで配合し、180℃で2時間熱処理し、ベースゴムコンパウンドを作製した。
次いで、付加硬化剤としてC−25A(白金触媒)0.5部及びC−25B(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)2.0部(ともに信越化学工業(株)製)を2本ロールミルにて添加混合し、5mm厚のシリコーンゴムシートを作製した。なお、得られたシリコーンゴム組成物の可塑度をJIS K6249に準じて測定したところ、430であった。
次に、得られた5mm厚のシリコーンゴムシートを室温にて日本ロール(株)製カレンダー成形機にて1mm厚のシリコーンゴムシートに成形した後、同じく室温にてこのシリコーンゴムシートの両面に、
図2に示すダイヤ型エンボスパターンを有するシート状の型部材としてダイヤエンボスフィルム(石島化学工業(株)製、エンボスNEFタイプ;厚さ0.15mm)をそのエンボス面をゴムローラにて押し付けて、2枚のシリコーンゴムシートの両面にエンボス加工を施した(以後、このシリコーンゴムシートを両面エンボスシートという)。なお、この型部材のエンボス単位21pの寸法としては、外周一辺の長さLが3.2mm、鋭角となる角部の角度αが56度、エンボス凸部21aのwが0.45mmである。
次に、上記両面エンボスシートの片面の型部材(エンボスフィルム)を剥離した後、そのエンボス加工面を受光面側の透明パネルである厚さ3.2mm、縦横寸法340mm×360mmの白板強化ガラス基板(以下、ガラス基板)に当接させ、ゴムローラにて該両面エンボスシートのエンボス凹部が潰れないように貼り付けた。
更に、裏面の封止状態を判別するために単層の透明PETフィルム(厚さ0.25mm)をバックシートとして用い、上記と同様にしてその片面に、もう一枚の上記両面エンボスシートの片面の型部材(エンボスフィルム)を剥離した後、そのエンボス加工面を当接させ、ゴムローラにて該両面エンボスシートのエンボス凹部が潰れないように貼り付けた。
次いで、
図11に示すように太陽電池モジュールの構成部材を積層配置した。即ち、上記ガラス基板上に貼り付けた両面エンボスシートのもう片面の型部材(エンボスフィルム)を剥離した後、その上に太陽電池素子を縦横方向に2行2列に接続した合計4直の単結晶シリコン太陽電池素子マトリックスを載置し、更に上記バックシート上に貼り付けた両面エンボスシートのもう片面の型部材(エンボスフィルム)を剥離した後、その剥離面(エンボス加工面)を下にして太陽電池素子マトリックス上に載置した。
次に、
図11に示す積層体を、真空ラミネータ装置内に載置し減圧真空下、110℃で15分間、大気圧で圧着することにより太陽電池モジュールAを製造した。
【0099】
[比較例1]
実施例1において、二枚のシリコーンゴムシートについていずれも両面のエンボス加工を施さないで両面フラットなものを用いた以外は実施例1と同様に行い太陽電池モジュールBを製造した。なお、そのときの真空ラミネート処理前の太陽電池モジュール構成部材の積層配置状態を
図12に示す。
【0100】
[比較例2]
実施例1において、シリコーンゴム組成物について、(B)成分として、アエロジル200を160部用いた以外は実施例1と同様にしてベースゴムコンパウンド及び5mm厚のシリコーンゴムシートを作製した。しかし、得られた5mm厚のシリコーンゴムシートは大変脆く、室温にて日本ロール(株)製カレンダー成形機にて1mm厚のシートに成形しようとしたがシートにならず、それ以降の処理が行えなかった。
【0101】
[参考例1]
実施例1において、二枚のシリコーンゴムシートのうち、一枚を片側面にのみ実施例1と同様のエンボス加工を施し、もう片面はエンボス加工を施さないで表面はフラットな状態とし(以後、このシリコーンゴムシートを片面エンボスシートという)、もう一枚は実施例1と同様の両面エンボスシートとした。上記片面エンボスシート11’を太陽電池素子マトリックス14と透明パネル13aとの間に配置し、そのエンボス加工面を太陽電池素子マトリックス14側に向け、非エンボス加工面(フラットな面)を透明パネル13a側に向けて積層した以外は実施例1と同様に行い太陽電池モジュールCを製造した。そのときの真空ラミネート処理前の太陽電池モジュール構成部材の積層配置状態を
図13に示す。
【0102】
[参考例2]
実施例1において、二枚のシリコーンゴムシートのうち、一枚を片面エンボスシート11’とし、もう一枚を実施例1と同様な両面エンボスシート11とし、上記片面エンボスシート11’を太陽電池素子マトリックス14と透明パネル13aの間に配置し、その非エンボス加工面(フラット面)を太陽電池素子マトリックス14側に向け、エンボス加工面を透明パネル13a側に向けて積層した以外は実施例1と同様に行い太陽電池モジュールDを製造した。そのときの真空ラミネート処理前の太陽電池モジュール構成部材の積層配置状態を
図14に示す。
【0103】
[参考例3]
実施例1において、二枚のシリコーンゴムシートのうち、一枚を片面エンボスシート11’とし、もう一枚を実施例1と同様な両面エンボスシート11とし、上記片面エンボスシート11’を太陽電池素子マトリックス14とバックシート13bの間に配置し、そのエンボス加工面を太陽電池素子マトリックス14側に向け、非エンボス加工面(フラット面)をバックシート13b側に向けて積層した以外は実施例1と同様に行い太陽電池モジュールEを製造した。そのときの真空ラミネート処理前の太陽電池モジュール構成部材の積層配置状態を
図15に示す。
【0104】
[参考例4]
実施例1において、二枚のシリコーンゴムシートのうち、一枚を片面エンボスシート11’とし、もう一枚を実施例1と同様な両面エンボスシート11とし、上記片面エンボスシート11’を太陽電池素子マトリックス14とバックシート13bの間に配置し、その非エンボス加工面(フラット面)を太陽電池素子マトリックス14側に向け、エンボス加工面をバックシート13b側に向けて積層した以外は実施例1と同様に行い太陽電池モジュールFを製造した。そのときの真空ラミネート処理前の太陽電池モジュール構成部材の積層配置状態を
図16に示す。
【0105】
実施例1、比較例1及び参考例1〜4において、各太陽電池モジュールのシリコーンゴム硬化物による封止状態を観察した。
表1にそれらの評価観察結果を示す。なお、封止評価においては、太陽電池モジュールの透明パネル13a及びバックシート13bを外側から目視で観察し、それぞれの面の面積全体における気泡によって生じた未封止部分(空隙)の面積の割合が、1%未満である状態を「○」、1%以上5%未満である状態を「△」、及び5%以上である状態を「×」と判定した。
【0106】
【表1】
【0107】
[
参考例5]
ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000であるオルガノポリシロキサン100部、BET比表面積200m
2/gの乾式シリカ Arosil200(日本エアロジル(株)製)80部、両末端にシラノール基を有し、粘度29mPa・s(25℃)のジメチルポリシロキサン5部をニーダーで配合し、180℃で2時間熱処理し、ベースゴムコンパウンドを作製した。
次いで、付加硬化剤としてC−25A(白金触媒)0.5部及びC−25B(オルガノハイドロジェンポリシロキサン)2.0部(ともに信越化学工業(株)製)を2本ロールミルにて添加混合し、5mm厚のゴムコンパウンドシートを作製した。
次に、得られた5mm厚のゴムコンパウンドシートを室温にて日本ロール株式会社製カレンダー成形機にて1mm厚のシートに成形した後、同じく室温にてシートの両面に石島化学工業株式会社製のダイヤエンボスフィルム(エンボスNEFタイプ;厚さ0.15mm)を保護フィルムとしてそのエンボスロール面で挟み未加硫のシリコーンゴムシート10を両面で保護した。
次に、上記未加硫のシリコーンゴムシートの片面のエンボスフィルムを剥離した後、厚み3.2mm、340mm×360mmの白板強化ガラス基板(以下、透明パネル13a)上にシリコーンゴムシート露出面がガラス板に向き合うように重ね合わせた状態で、一対のシリコーンゴムローラ(圧着ローラ)で圧着し、隙間なくガラス基板に未加硫のシリコーンゴムシート10hを貼り付けた。その後、残るエンボスフィルムを未加硫のシリコーンゴムシート10の表面から剥し、積層体130aを得た。
更に、裏面の封止状況を判別するために厚み0.3mm、340mm×360mmの単層の透明PETフィルムをバックシート13bとして用い、上記と同様にしてその片面に、上記エンボスフィルムで保護された未加硫のシリコーンゴムシートの片面のエンボスフィルムを剥離した後、透明PETフィルム上にシリコーンゴムシート露出面が透明PETフィルムに向き合うように重ね合わせた状態で、一対のシリコーンゴムローラ(圧着ローラ)で、隙間なく、透明PETフィルム(バックシート13b)にシリコーンゴムシート10hを貼り付けた。その後、残るエンボスフィルムを未加硫のシリコーンゴムシート10から剥し、積層体130bを得た。
次いで、
図7に示すように、上記積層体130aを定盤51上にシリコーンゴムシート10が上となるように載置し、このシリコーンゴムシート10の表面にエンボス加工ローラ52のローラ外周面を押し付けながら回転移動させて該シリコーンゴムシート10表面にエンボス模様(凹凸パターン)を転写させて、透明パネル13aの一面に所定のパターンの凹凸を有するシリコーンゴムシート11’が貼り付けられた第1積層体131を得た。なお、エンボス加工ローラ52は、直径40mm、長さ400mmのステンレス製のローラであって、その外周面に
図2(a)に示すダイヤ型のエンボスパターンであってその溝の高低差を0.3mmとした凹凸パターンを形成したものである。
また、直径40mm、長さ400mmのシリコーンゴム製の支持ローラと、上記エンボス加工ローラ52とを両者の離間距離1.15mmとして対向して配置し、エンボス加工ローラ52を回転駆動させながら、上記積層体130bをシリコーンゴムシート10がエンボス加工ローラ52側となるように支持ローラ−エンボス加工ローラ52間に挿入して該シリコーンゴムシート10表面にエンボス模様(凹凸パターン)を転写させて、バックシート13bの一面に所定のパターンの凹凸を有するシリコーンゴムシート11’が貼り付けられた第2積層体132を得た。
上記第1積層体131のシリコーンゴムシート11’の表面に、太陽電池素子を縦横方向に2行2列に直列接続した合計4直の単結晶シリコン太陽電池素子マトリックスを載置し、更に上記第2積層体132をそのシリコーンゴムシート11’が太陽電池素子マトリックスを覆うように載置した。
次に、上記積層体(
図10)を、真空ラミネータ装置内に載置し、減圧真空下、110℃で3分間真空引きを行い、大気圧下で12分間圧着することにより太陽電池モジュールGを製造した。
【0108】
[比較例
3]
参考例5において、1mm厚のシリコーンゴムシート10を340mm×360mmの白板強化ガラス基板(透明パネル13a)に貼り付け処理することなく載置し、次いでこのシリコーンゴムシート10の表面に、太陽電池素子を縦横方向に2行2列に直列接続した合計4直の単結晶シリコン太陽電池素子マトリックスを載置し、更に1mm厚のシリコーンゴムシート10を該太陽電池素子マトリックスを覆うように載置し、最後にこのシリコーンゴムシート10上に厚み0.3mm、340mm×360mmの単層の透明PETフィルム(バックシート13b)を載置した。
次に、この仮積層体を、真空ラミネータ装置内に載置し、減圧真空下、110℃で3分間真空引きを行い、大気圧下で12分間圧着することにより太陽電池モジュールHを製造した。
【0109】
参考例5、比較例
3において、各太陽電池モジュールのシリコーンゴムシート硬化物による封止状態を観察した。
表2にそれらの評価観察結果を示す。なお、封止評価においては、太陽電池モジュールを外側から目視で観察し、透明パネル13aと表面側シリコーンゴムシート硬化物との間、表面側シリコーンゴムシート硬化物と太陽電池素子マトリックスとの間、太陽電池素子マトリックスと裏面側シリコーンゴムシート硬化物との間、裏面側シリコーンゴムシート硬化物とバックシート13bとの間それぞれにおける空隙の有無及び空隙がある場合にはその大きさ(空隙を球形として見た場合の最大の径)を観察した。ここで、空隙がない場合は「○」、空隙がある場合であってその大きさ(最大の径)が5mm未満のものしかない場合には”ややあり”として「△」、空隙の大きさ(最大の径)が5mm以上のものがある場合には”あり”として「×」と判定した。
【0110】
【表2】
【0111】
参考例5では、真空ラミネート処理前にシリコーンゴムシートを透明パネル及びバックシートに隙間なく密着して貼り付けておくことで空隙の発生なく硬化させることができる。また、
参考例5では、シリコーンゴムシートの太陽電池素子マトリックスに対向する面にエンボス加工を施すことで、真空ラミネート処理において短時間の真空引きでシリコーンゴムシート硬化物と太陽電池素子マトリックスとの間に空隙の発生なく硬化させることが可能である。
【0112】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。