(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ヒドロキシベンゼン誘導体の含有量に対する前記フェノール樹脂の含有量の質量比(フェノール樹脂/ヒドロキシベンゼン誘導体)が、50/50〜80/20である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のフェノール樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本明細書において「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。さらに組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
【0032】
<フェノール樹脂組成物>
本発明のフェノール樹脂組成物は、(A)下記一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体、並びに下記一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造を有するフェノール樹脂(以下、「特定フェノール樹脂」ともいう。)を含むエポキシ樹脂硬化剤と、(B)エポキシ樹脂とを含有する。上記フェノール樹脂組成物は必要に応じて、充填材及びその他の成分からなる群より選ばれる少なくとも一種を更に含んでいてもよい。
【0034】
一般式(I)中、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5はそれぞれ独立に、ヒドロキシ基、水素原子、又は炭素数1〜8のアルキル基を示し、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のうち少なくとも2つはヒドロキシ基である。
一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)中、m及びnはそれぞれ独立に、正の数であり、特定フェノール樹脂におけるそれぞれの構成単位の含有数を示す。Arはそれぞれ独立に、一般式(IIIa)及び(IIIb)からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を示す。
一般式(IIIa)中、R
11は、水素原子又はヒドロキシ基を示し、R
12及びR
13はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。
一般式(IIIb)中、R
14は、水素原子又はヒドロキシ基を示す。
【0035】
本発明のフェノール樹脂組成物は、該フェノール樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂硬化剤が、(A)一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体と、一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造を有するフェノール樹脂とを含むことで、硬化後の熱伝導性に優れると共に高いガラス転移温度(Tg)を示すことができる。このような効果を奏する理由は、例えば、特定フェノール樹脂に加えて、特定構造のヒドロキシベンゼン誘導体を含む樹脂組成物を硬化すると、硬化物内部の分子配向が適切に制御された、高架橋密度を有する硬化物が形成されるためと考えることができる。
【0036】
(A)エポキシ樹脂硬化剤
本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤は、一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体の少なくとも1種と、一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造を有するフェノール樹脂(特定フェノール樹脂)の少なくとも1種とを含む。本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤は、必要に応じて、上記ヒドロキシベンゼン誘導体、及び特定フェノール樹脂以外に、その他の硬化剤を更に含んでいてもよい。
【0037】
一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体は、一般式(I)におけるR
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のうち少なくとも2つがヒドロキシ基であれば、特に制限されない。一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体は、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のうち2つがヒドロキシ基であるトリヒドロキシベンゼン誘導体、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のうち3つがヒドロキシ基であるテトラヒドロキシベンゼン誘導体、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のうち4つがヒドロキシ基であるペンタヒドロキシベンゼン誘導体、又はR
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のすべてがヒドロキシ基であるヘキサヒドロキシベンゼンのいずれであってもよい。これらの中でも、フェノール樹脂組成物の硬化後の熱伝導性及びガラス転移温度(Tg)の観点からは、一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体は、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のうち2つがヒドロキシ基であるトリヒドロキシベンゼン誘導体であることが好ましい。
【0038】
一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体において、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のうち2つがヒドロキシ基である場合、ヒドロキシ基の結合位置は特に制限されない。上記R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のうち2つがヒドロキシ基である場合におけるヒドロキシ基の結合位置は、例えば、R
1及びR
2であっても、R
1及びR
3であっても、R
2及びR
4であってもよい。また、一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体において、R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のうち3つがヒドロキシ基である場合、ヒドロキシ基の結合位置は特に制限されない。上記R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5のうち3つがヒドロキシ基である場合におけるヒドロキシ基の結合位置は、例えば、R
1、R
2及びR
3であっても、R
1、R
3及びR
4であっても、R
1、R
3及びR
5であってもよい。
【0039】
また、一般式(I)におけるR
1、R
2、R
3、R
4及びR
5がヒドロキシ基以外である場合、該R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。このような場合、フェノール樹脂組成物の硬化後の熱伝導性及びガラス転移温度(Tg)の観点から、上記R
1、R
2、R
3、R
4及びR
5は、水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であることが好ましく、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
【0040】
一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体の水酸基当量は特に制限されない。上記水酸基当量は、高熱伝導性及び高Tgに寄与する高架橋密度形成の観点から、好ましくは50以下であり、より好ましくは42以下である。また、上記水酸基当量の下限値は特に制限されず、例えば29である。
一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体の融点は特に制限されない。上記融点は、フェノール樹脂組成物を調製する際の作業性の観点から、好ましくは80℃〜300℃であり、より好ましくは80℃〜230℃である。
【0041】
一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体の具体例としては、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(ピロガロール)、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン(ヒドロキシハイドロキノン)、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン(フロログルシノール)、1,2,3,4−テトラヒドロキシベンゼン、1,2,3,5−テトラヒドロキシベンゼン、1,2,4,5−テトラヒドロキシベンゼン、1,2,3,4,5−ペンタヒドロキシベンゼン、ヘキサヒドロキシベンゼン等を挙げることができる。これらの中でも、フェノール樹脂組成物の硬化後の熱伝導性及びガラス転移温度(Tg)の観点から、一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体は、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン及び1,3,5−トリヒドロキシベンゼンからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0042】
本発明においては、エポキシ樹脂硬化剤における一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体の含有率は、エポキシ樹脂硬化剤の総質量に対して、5質量%〜95質量%であることが好ましく、10質量%〜80質量%であることがより好ましい。上記ヒドロキシベンゼン誘導体の含有率が5質量%以上であると、フェノール樹脂組成物の硬化後の熱伝導性がより効果的に向上する傾向がある。また、上記ヒドロキシベンゼン誘導体の含有率が95質量%以下であると、より高いガラス転移温度を示すフェノール樹脂組成物が得られる傾向がある。
【0043】
本発明におけるエポキシ樹脂硬化剤は、一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体に加えて、一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造を有するフェノール樹脂(特定フェノール樹脂)の少なくとも1種を含む。一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造を有するフェノール樹脂(特定フェノール樹脂)は、後述する製造方法によって一括して生成可能なものであり、一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも2種の部分構造を有する化合物の混合物としても生成可能である。すなわち上記特定フェノール樹脂は、一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれるいずれか1つで表される部分構造のみを有する化合物を含むものであっても、一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも2種の部分構造を有する化合物を含むものであってもよい。
【0044】
一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)において、ヒドロキシ基の結合位置は芳香環上であれば特に制限されない。一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)のそれぞれに存在するArは、すべて同一の原子団であってもよいし、2種以上の原子団を含んでいてもよい。また、一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造は、特定フェノール樹脂の主鎖骨格として含まれていてもよく、また、側鎖の一部として含まれていてもよい。さらに、一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造を構成するそれぞれの構成単位は、ランダムに含まれていてもよいし、規則的に含まれていてもよいし、ブロック状に含まれていてもよい。
【0045】
一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造において、Arは上記一般式(IIIa)及び(IIIb)からなる群より選ばれる少なくとも1つの基を表す。
一般式(IIIa)におけるR
11、及び(IIIb)におけるR
14はそれぞれ独立に、水素原子又はヒドロキシ基であり、フェノール樹脂組成物の硬化後の熱伝導性の観点からヒドロキシ基であることが好ましい。一般式(IIIa)におけるR
11、及び(IIIb)におけるR
14の結合位置は、特に制限されない。
また、一般式(IIIa)におけるR
12及びR
13はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜8のアルキル基を示す。一般式(IIIa)中、R
12及びR
13で示される炭素数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等が挙げられる。一般式(IIIa)におけるR
12及びR
13の結合位置は、特に制限されない。
【0046】
一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)におけるArは、本発明の効果、特に優れた熱伝導性を達成する観点から、ジヒドロキシベンゼンに由来する基(一般式(IIIa)において、R
11がヒドロキシ基であって、R
12及びR
13が水素原子である基)及びジヒドロキシナフタレンに由来する基(一般式(IIIb)において、R
14がヒドロキシ基である基)からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
ここで、「ジヒドロキシベンゼンに由来する基」とは、ジヒドロキシベンゼンの芳香環部分から水素原子を2つ取り除いて構成される2価の基を意味し、水素原子が取り除かれる位置は特に制限されない。また、「ジヒドロキシナフタレンに由来する基」等についても同様の意味である。
【0047】
また、フェノール樹脂組成物の生産性及び流動性の観点からは、一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)におけるArは、ジヒドロキシベンゼンに由来する基であることがより好ましく、1,2−ジヒドロキシベンゼン(カテコール)に由来する基及び1,3−ジヒドロキシベンゼン(レゾルシノール)に由来する基からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが更に好ましい。
【0048】
一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)におけるm及びnについては、フェノール樹脂組成物の流動性の観点から、m/n=1/5〜20/1であることが好ましく、1/3〜10/1であることがより好ましく、1/2〜5/1であることが更に好ましい。また、(m+n)は、フェノール樹脂組成物の流動性の観点から、20以下であることが好ましく、15以下であることがより好ましく、10以下であることが更に好ましい。また、(m+n)の下限値は特に制限されず、2以上であればよい。
m/nが20/1以下、又は(m+n)が20以下であると、特定フェノール樹脂の粘度上昇を抑制でき、フェノール樹脂組成物の流動性がより良好になる傾向がある。また、m/nが1/5以上であると、フェノール樹脂組成物の硬化後の熱伝導性がより向上する傾向がある。
【0049】
一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造を有する特定フェノール樹脂は、特にArが置換又は非置換のジヒドロキシベンゼン類に由来する基、及び置換又は非置換のジヒドロキシナフタレン類に由来する基の少なくともいずれか1種である場合、これらを単純にノボラック化したフェノール樹脂等と比較して、その合成が容易であり、軟化点の低いフェノール樹脂が得られる傾向にある。したがって、このような特定フェノール樹脂を含むフェノール樹脂組成物によれば、製造及び取り扱いも容易になる等の利点がある。
なお、一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造を有するフェノール樹脂は、電界脱離イオン化質量分析法:Field Desorption Ionization Mass-Spectrometry(FD−MS)によって、そのフラグメント成分として上記部分構造を容易に特定することができる。
【0050】
上記特定フェノール樹脂の分子量は特に制限されない。フェノール樹脂組成物の流動性の観点から、上記特定フェノール樹脂の数平均分子量は、2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、350以上1500以下であることが更に好ましい。
また、上記特定フェノール樹脂の重量平均分子量は、2000以下であることが好ましく、1500以下であることがより好ましく、400以上1500以下であることが更に好ましい。
上記特定フェノール樹脂の数平均分子量及び重量平均分子量は、GPCを用いた通常の方法により測定される。
【0051】
上記特定フェノール樹脂の水酸基当量は特に制限されない。耐熱性に関与する架橋密度の観点から、上記特定フェノール樹脂の水酸基当量は、平均値で60以上130以下であることが好ましく、65以上120以下であることがより好ましく、70以上110以下であることが更に好ましい。
【0052】
上記特定フェノール樹脂の融点又は軟化点は特に制限されない。フェノール樹脂組成物の生産性及び流動性の観点から、上記特定フェノール樹脂の融点又は軟化点は、40℃以上120℃以下であることが好ましく、50℃以上100℃以下であることがより好ましい。
【0053】
一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造を有する特定フェノール樹脂の製造方法は、特に限定されない。上記特定フェノール樹脂の製造方法としては、例えば、次のようなジヒドロキシアレーン類の脱水反応による分子内閉環反応を用いる方法が利用できる。すなわち、上記特定フェノール樹脂は、カテコール(1,2−ジヒドロキシベンゼン、一般式(IIIa)においてR
11がヒドロキシ基であり、R
12及びR
13が水素原子である化合物)等を20モル%〜90モル%含むフェノール類とアルデヒド類とを、一般的なノボラック樹脂と同様、シュウ酸等の酸触媒下で反応させることで製造することができる。
【0054】
反応条件は得られる特定フェノール樹脂の構造等に応じて適宜選択できる。例えば、アルデヒド類としてホルムアルデヒドを用いる場合には、100℃前後の還流条件で反応を行なう。この還流反応を1時間〜8時間行ない、その後、反応系内の水を常法により除去しながら120℃〜180℃まで昇温する。このときの雰囲気は、酸化性雰囲気(例えば、空気気流中)とすることが好ましい。その後、このような状態を2時間〜24時間続けることにより、系内には一般式(IIa)及び(IIb)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造を有する化合物が生成し、所望の特定フェノール樹脂を得ることができる。
【0055】
また、上記ジヒドロキシアレーン類の脱水反応による分子内閉環反応において、レゾルシノールとカテコールとアルデヒド類とを、同様に反応させることにより、一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造を有する化合物の混合物が生成する。さらに、レゾルシノールとアルデヒド類とを、同様に反応させることにより、一般式(IIa)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造を有する化合物の混合物が生成する。さらにまた、ハイドロキノンとカテコールとアルデヒド類とを、同様に反応させることにより、一般式(IIa)及び(IIb)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造を有する化合物の混合物が生成する。
【0056】
上記特定フェノール樹脂は、別の観点から見ると、ジヒドロキシアレーン類とアルデヒド類とを酸性触媒下で反応させて得られるフェノール樹脂であり、水酸基当量がジヒドロキシアレーン類のノボラック樹脂の理論水酸基当量(例えば、ジヒドロキシベンゼン類を用いた場合には60前後)と比較して大きいフェノール樹脂である。本発明においては、エポキシ樹脂硬化剤がこのようなフェノール樹脂を含むことにより、エポキシ樹脂の配向が助けられ、結果としてフェノール樹脂組成物の熱伝導性が高まるといった効果が得られると考えられる。上記特定フェノール樹脂の水酸基当量が理論値より大きくなる理由は、ジヒドロキシアレーン類が反応中に分子内閉環反応を行なって生成する上記一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)のような部分構造を有するためと考えられる。
【0057】
特定フェノール樹脂の製造に用いるジヒドロキシアレーン類としては、カテコール、レゾルシノール、ハイドロキノン等の単環式ジヒドロキシアレーン類、及び1,5−ジヒドロキシナフタレン、1,6−ジヒドロキシナフタレン、1,4−ジヒドロキシナフタレン等のジヒドロキシナフタレン類などの多環式ジヒドロキシアレーン類が挙げられる。これらのジヒドロキシアレーン類は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
また、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のフェノール樹脂合成に通常用いられるアルデヒド類が挙げられる。これらのアルデヒド類は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0058】
これらのジヒドロキシアレーン類とアルデヒド類とは、酸触媒の存在下で、ジヒドロキシアレーン類1モルに対して、アルデヒド類を0.3モル〜0.9モル用いて反応させることが好ましく、アルデヒド類を0.4モル〜0.8モル用いて反応させることがより好ましい。
アルデヒド類を0.3モル以上用いることで、ジベンゾキサンテン誘導体の含有率を高くすることができ、さらに未反応ジヒドロキシアレーン類の量を減少させることができ、特定フェノール樹脂の生成量を多くすることができる傾向がある。また、アルデヒド類が0.9モル以下であると、反応系中でのゲル化が抑制され、反応の制御が容易になる傾向がある。
【0059】
酸触媒として使用される酸としては、シュウ酸、酢酸、p−トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸等の有機酸、及び塩酸、硫酸、リン酸等の無機酸を挙げることができる。これらの酸触媒は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
酸触媒の使用量は、例えば、用いるジヒドロキシアレーン類1モルに対して、0.0001モル〜0.1モルであることが好ましく、0.001〜0.05モルであることがより好ましい。酸触媒の使用量が0.0001モル以上であると、120℃〜180℃で分子内脱水閉環を行なう工程が短時間になる傾向がある。また、酸触媒の使用量が0.1モル以下であると、触媒除去の工程がより容易になる傾向があり、半導体用途等でイオン性不純物を嫌う系への適用が容易になる。
【0060】
上記特定フェノール樹脂は、特定フェノール樹脂を構成するフェノール性化合物であるモノマーを含んでいてもよい。特定フェノール樹脂を構成するフェノール性化合物であるモノマーの含有率(以下、「モノマー含有率」ということがある)としては特に制限はないが、特定フェノール樹脂の総質量に対して、5質量%〜80質量%であることが好ましく、15質量%〜60質量%であることがより好ましく、20質量%〜50質量%であることが更に好ましい。
【0061】
モノマー含有率が20質量%以上であることで、特定フェノール樹脂の粘度上昇が抑制され、後述する充填材との密着性がより向上する。また、モノマー含有率が50質量%以下であることで、硬化の際における架橋反応により、より高密度な高次構造が形成され、優れた熱伝導性と耐熱性とが達成できる。
【0062】
上記エポキシ樹脂硬化剤における特定フェノール樹脂の含有率は、エポキシ樹脂硬化剤の総質量に対して、5質量%〜95質量%であることが好ましく、20質量%〜90質量%であることがより好ましく、50質量%〜80質量%であることが更に好ましい。エポキシ樹脂硬化剤における特定フェノール樹脂の含有率が5質量%以上であると、より高いガラス転移温度を得ることができる傾向がある。また、上記含有率が95質量%以下であると、熱伝導性をより効果的に向上させることができる傾向がある。
【0063】
上記エポキシ樹脂硬化剤における上記ヒドロキシベンゼン誘導体と、上記特定フェノール樹脂との含有比率は特に制限されない。例えば、熱伝導性及び高架橋密度の形成の観点から、上記ヒドロキシベンゼン誘導体の含有量に対する上記特定フェノール樹脂の含有量の質量比(特定フェノール樹脂/ヒドロキシベンゼン誘導体)は、5/95〜95/5であることが好ましく、20/80〜95/5であることがより好ましく、40/60〜85/15であることが更に好ましい。
【0064】
上記エポキシ樹脂硬化剤は、本発明の効果を損なわない範囲で、上記ヒドロキシベンゼン誘導体及び特定フェノール樹脂以外に、その他の硬化剤を更に含んでもよい。その他の硬化剤としては、封止用、接着用エポキシ樹脂組成物等に一般に使用される硬化剤から適宜選択することができる。その他の硬化剤として具体的には、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール等のフェノール類;α−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類;上記フェノール類及びナフトール類からなる群より選ばれる少なくとも1種と、ホルムアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック型フェノール樹脂;フェノール類及びナフトール類からなる群より選ばれる少なくとも1種と、シクロペンタジエンとから共重合により合成されるジシクロペンタジエン型フェノールノボラック樹脂、ジシクロペンタジエン型ナフトールノボラック樹脂等のジシクロペンタジエン型フェノール樹脂;テルペン変性フェノール樹脂;トリフェノールメタン型フェノール樹脂などが挙げられる。
【0065】
上記エポキシ樹脂組成物に含まれるその他の硬化剤の含有率は、本発明の効果を損なわない限り特に制限されない。例えば、熱伝導性の観点から、その他の硬化剤の含有率は、エポキシ樹脂硬化剤の総質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、10質量%以下であることがより好ましい。
【0066】
(B)エポキシ樹脂
本発明のフェノール樹脂組成物は、少なくとも1種のエポキシ樹脂を含む。該エポキシ樹脂としては特に制限はなく、封止用、接着用エポキシ樹脂組成物等に一般に使用されるエポキシ樹脂から適宜選択することができる。本発明のフェノール樹脂組成物は、下記一般式(IV)で表される部分構造を有するエポキシ樹脂の少なくとも1種を含むことが好ましい。エポキシ樹脂が一般式(IV)で表される部分構造を有することで、樹脂硬化物とした場合に、高い秩序を有する高次構造を形成することが可能となる。これにより優れた熱伝導性を実現することができる。
【0068】
一般式(IV)中、R
41、R
42、R
43、R
44、R
45、R
46、R
47及びR
48はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜10の炭化水素基、又は炭素数1〜10のアルコキシ基を示す。上記炭素数1〜10の炭化水素基は、置換基を有していてもよい飽和又は不飽和の炭化水素基であることが好ましい。炭素数1〜10の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デカニル基、ビニル基等が挙げられ、エポキシ樹脂の配向性の観点からは、炭素数1〜3のアルキル基が好ましい。上記炭素数1〜10のアルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、t−ブトキシ基等が挙げられ、エポキシ樹脂の配向性の観点からは、炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましい。
これらの中でも、一般式(IV)におけるR
41、R
42、R
43、R
44、R
45、R
46、R
47及びR
48はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜3のアルキル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましい。
【0069】
一般式(IV)で表される部分構造を有するエポキシ樹脂は、ビフェニル構造を構成する2つのベンゼン環がわずかにねじれた状態の平面的な構造をとり得る。そのため、一般式(IV)で表される部分構造を有するエポキシ樹脂は、ビフェニル構造を有しないエポキシ樹脂に比較して、z軸方向(ベンゼン環面に対して垂直方向)への樹脂骨格の配向が容易になるという特徴を有する。こうした特徴は、エポキシ樹脂組成物の硬化物における熱抵抗の低抵抗化に有利に働き、結果として硬化物の熱放散性を高め、硬化物に高い熱伝導性を与えると考えることができる。
【0070】
上記エポキシ樹脂のエポキシ当量は特に制限されない。例えば、熱伝導性の観点から、上記エポキシ樹脂のエポキシ当量は、平均値で100以上300以下であることが好ましく、150以上250以下であることがより好ましい。
【0071】
上記エポキシ樹脂の融点又は軟化点は特に制限されない。例えば、フェノール樹脂組成物の生産性及び流動性の観点から、エポキシ樹脂の融点又は軟化点は、50℃以上150℃以下であることが好ましく、75℃以上140℃以下であることがより好ましい。
【0072】
一般式(IV)で表される部分構造を有するエポキシ樹脂としては、ビフェニル型エポキシ樹脂及びビフェニレン型エポキシ樹脂を挙げることができる。具体的には、下記一般式(V)で表される化合物等が挙げられる。
【0074】
一般式(V)中、R
41、R
42、R
43、R
44、R
45、R
46、R
47及びR
48はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10の置換若しくは非置換の炭化水素基を示し、nは0〜3の整数を示す。流動性の点からは、nが0〜2であることが好ましく、nが0又は1であることがより好ましく、nが0であることが更に好ましい。炭素数1〜10の置換若しくは非置換の炭化水素基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、イソブチル基等を挙げることができる。
熱伝導性の観点からは、一般式(V)におけるR
41、R
42、R
43、R
44、R
45、R
46、R
47及びR
48はそれぞれ独立に、水素原子又はメチル基であることが好ましい。
【0075】
一般式(V)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂としては、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル又は4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂、エピクロルヒドリンと4,4’−ビフェノール又は4,4’−(3,3’,5,5’−テトラメチル)ビフェノールとを反応させて得られるエポキシ樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、一般式(V)で示されるビフェニル型エポキシ樹脂は、フェノール樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度の低下を防ぐことができる観点から、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニルを主成分とするエポキシ樹脂が好ましい。
【0076】
一般式(V)で表されるエポキシ樹脂としては、R
41、R
43、R
46及びR
48がメチル基であり、R
42、R
44、R
45及びR
47が水素原子であり、n=0である化合物を主成分とする「エピコ−ト YX4000H」(三菱化学株式会社製、商品名)や、R
41、R
43、R
46及びR
48がメチル基であり、R
42、R
44、R
45及びR
47が水素原子であり、n=0である化合物と、R
41、R
42、R
43、R
44、R
45、R
46、R
47及びR
48が水素原子であり、n=0である化合物との混合物である「エピコ−ト YL6121H」(三菱化学株式会社製、商品名)等が市場で入手可能である。
【0077】
本発明のフェノール樹脂組成物は、一般式(IV)で表される部分構造を有するエポキシ樹脂を含む場合には、該エポキシ樹脂に加えて、一般式(IV)で表される部分構造を有するエポキシ樹脂以外のその他のエポキシ樹脂を、本発明の効果を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0078】
その他のエポキシ樹脂としては、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、キシレノール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF等のフェノール類及び/又はα−ナフトール、β−ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のナフトール類と、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ベンズアルデヒド、サリチルアルデヒド等のアルデヒド基を有する化合物とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂をエポキシ化したもの、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、ビスフェノールA/D等のジグリシジルエーテル、フェノール類及び/又はナフトール類と、ジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルとから合成されるフェノール・アラルキル樹脂のエポキシ化物、スチルベン型エポキシ樹脂、ハイドロキノン型エポキシ樹脂、フタル酸、ダイマー酸等の多塩基酸と、エピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルエステル型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン、イソシアヌル酸等のポリアミンと、エピクロルヒドリンとの反応により得られるグリシジルアミン型エポキシ樹脂、シクロペンタジエンと、フェノール類との共縮合樹脂のエポキシ化物であるジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ヒドロキシナフタレン及び/又はジヒドロキシナフタレンの2量体等のエポキシ化物、トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、トリメチロールプロパン型エポキシ樹脂、テルペン変性エポキシ樹脂、オレフィン結合を過酢酸等の過酸で酸化して得られる線状脂肪族エポキシ樹脂、脂環族エポキシ樹脂、硫黄原子含有エポキシ樹脂及びこれらのエポキシ樹脂をシリコーン、アクリロニトリル、ブタジエン、イソプレン系ゴム、ポリアミド系樹脂等により変性したエポキシ樹脂などが挙げられる。これらのその他のエポキシ樹脂は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0079】
本発明のフェノール樹脂組成物の全固形分における上記その他のエポキシ樹脂の含有率としては、特に制限はない。本発明のフェノール樹脂組成物が上記その他のエポキシ樹脂を含む場合には、熱伝導性、電気絶縁性及びBステージシートの可とう性の観点から、上記その他のエポキシ樹脂の含有率は、3質量%以上10質量%以下であることが好ましく、後述する硬化物の物性の観点から、4質量%以上7質量%以下であることがより好ましい。ここで、Bステージは、JIS K 6900:1994で定義される。なお、フェノール樹脂組成物中の固形分とは、フェノール樹脂組成物を構成する成分から揮発性の成分を除去した残分を意味する。
【0080】
また、本発明のフェノール樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂における一般式(IV)で表される部分構造を有するエポキシ樹脂の含有率は、特に制限されない。本発明のフェノール樹脂組成物が一般式(IV)で表される部分構造を有するエポキシ樹脂を含む場合には、熱伝導性の観点から、一般式(IV)で表される部分構造を有するエポキシ樹脂の含有率は、エポキシ樹脂全体の60質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、より一層熱伝導性を高める観点から、80質量%以上であることが更に好ましい。
【0081】
また、上記フェノール樹脂組成物における上記エポキシ樹脂硬化剤とエポキシ樹脂との含有比率としては、熱伝導性、電気絶縁性、Bステージシートの可とう性及び可使時間の観点から、上記フェノール樹脂組成物に含まれるエポキシ樹脂の総質量に対する上記エポキシ樹脂硬化剤の総質量の含有比率が、当量基準で0.5以上2.0以下であることが好ましく、0.6以上1.5以下であることがより好ましく、成形性及び信頼性の観点から、0.8以上1.2以下であることが更に好ましい。
【0082】
ここで当量基準とは、エポキシ樹脂に含まれるエポキシ基の数と、該エポキシ基と1:1で反応するエポキシ樹脂硬化剤に含まれる水酸基の数とを基準にして、エポキシ樹脂とエポキシ樹脂硬化剤との含有比率を規定することを意味する。
したがって、上記エポキシ樹脂硬化剤がヒドロキシベンゼン誘導体及び特定フェノール樹脂のみを含む場合、上記当量基準の含有比率は、具体的には下記式(1)より算出される。
含有比率(エポキシ樹脂硬化剤/エポキシ樹脂) = {Σ(ヒドロキシベンゼン誘導体/ヒドロキシベンゼン誘導体の水酸基当量)+Σ(特定フェノール樹脂量/特定フェノール樹脂の水酸基当量)}/Σ(エポキシ樹脂量/エポキシ樹脂のエポキシ当量)・・・式(1)
【0083】
(C)充填材
本発明のフェノール樹脂組成物は、少なくとも1種の充填材を更に含むことが好ましい。本発明においては、充填材を含むことで、高熱伝導化、吸湿性の低減、線膨張係数の低減、強度向上等の効果が得られる。充填材としては特に制限はなく、絶縁性と高熱伝導性とに優れた無機充填材から適宜選択することができる。無機充填材としては、溶融シリカ、結晶性シリカ、合成シリカ等のシリカ類、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、チタン酸カリウム、炭化ケイ素、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化ホウ素、ベリリア、ジルコニア、フォステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニアなどが挙げられる。これら無機充填材の形状は特に限定されない。これら無機充填材の形状は、例えば、粉体、これらを球形化したビーズ、又は繊維状のいずれであってもよい。これら無機充填材は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0084】
上記無機充填材は、フェノール樹脂組成物の高熱伝導化の観点から、無機充填材の一部又は全部が、結晶性シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素及び窒化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0085】
また、上記無機充填材の平均粒子径は、フェノール樹脂組成物の高熱伝導化の観点から、3μm〜30μmであることが好ましく、5μm〜20μmであることがより好ましい。
さらに、上記無機充填材は、より優れた熱伝導性の観点から、平均粒子径の異なる少なくとも2種の無機充填材を含むことが好ましい。無機充填材としては、具体的には、例えば、平均粒子径が10μm〜50μmである(C1)成分と、平均粒子径が0.5μm〜3μm程度の(C2)成分との、少なくとも2種成分を併用すると、より効果的である。
無機充填材の平均粒子径は、レーザー回折法を用いて測定され、重量累積粒度分布曲線を小粒径側から描いた場合に、重量累積が50%となる粒子径に対応する。レーザー回折法を用いた粒度分布測定は、レーザー回折散乱粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製、LS230)を用いて行なうことができる。
【0086】
流動性の観点から、上記無機充填材は、球状又はそれに類似した形状を有することが好ましい。フェノール樹脂組成物の流動性の観点から、無機充填材の一部を、結晶性シリカ、球状アルミナ、球状窒化アルミニウム、球状窒化ケイ素及び球状窒化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種とした上で、球状溶融シリカ、球状合成シリカ等を併用することが好ましい。なお、上記結晶性シリカとは、結晶化度70%以上のシリカを指す。
【0087】
本発明のフェノール樹脂組成物が充填材を更に含む場合、その含有率は特に制限されない。本発明のフェノール樹脂組成物が充填材を含む場合、フェノール樹脂組成物の流動性、信頼性等の観点から、充填材の含有率は、フェノール樹脂組成物の固形分の総質量に対して、60質量%〜97質量%であることが好ましく、65質量%〜96質量%であることがより好ましく、70質量%〜95質量%であることが更に好ましい。充填材の含有率が60質量%以上であると、吸湿特性、機械的強度等がより良好なフェノール樹脂組成物となる傾向がある。また、充填材の含有率が97質量%以下であると、フェノール樹脂組成物の流動特性がより良好になる傾向がある。
【0088】
フェノール樹脂組成物の熱伝導性とその他の信頼性とのバランスの観点からは、充填材全体の含有率を上記の範囲とした上で、結晶性シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素及び窒化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填材の含有率を、充填材の総質量に対して、10質量%以上とすることが好ましく、20質量%以上とすることがより好ましく、30質量%以上とすることが更に好ましい。結晶性シリカ、アルミナ、窒化アルミニウム、窒化ケイ素及び窒化ホウ素からなる群より選ばれる少なくとも1種の無機充填材の含有率が、充填材の総質量に対して、10質量%以上であると、硬化後のフェノール樹脂組成物の熱伝導性がより良好になる傾向がある。
【0089】
(D)その他の添加剤
本発明のフェノール樹脂組成物は、上記(A)成分及び(B)成分、並びに必要に応じて含まれる(C)成分に加え、必要に応じてその他の添加剤を更に含むことができる。その他の添加剤としては、硬化促進剤、カップリング剤、離型剤、難燃剤等を挙げることができる。
【0090】
本発明のフェノール樹脂組成物は、少なくとも1種の硬化促進剤を更に含むことが好ましい。本発明においては、硬化促進剤を含むことで、生産性をより向上させることができる。硬化促進剤としては、フェノール樹脂組成物において通常使用される硬化促進剤を、特に制限なく用いることができる。硬化促進剤としては、1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザ−ビシクロ[4.3.0]ノネン、5,6−ジブチルアミノ−1,8−ジアザ−ビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7等のシクロアミジン化合物及びこれらの化合物に、無水マレイン酸、1,4−ベンゾキノン、2,5−トルキノン、1,4−ナフトキノン、2,3−ジメチルベンゾキノン、2,6−ジメチルベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−5−メチル−1,4−ベンゾキノン、2,3−ジメトキシ−1,4−ベンゾキノン、フェニル−1,4−ベンゾキノン等のキノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合を持つ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物;ベンジルジメチルアミン、トリエタノールアミン、ジメチルアミノエタノール、トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール等の3級アミン化合物及びこれらの誘導体;2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール等のイミダゾール化合物及びこれらの誘導体;トリブチルホスフィン、メチルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス(4−メチルフェニル)ホスフィン、ジフェニルホスフィン、フェニルホスフィン等の有機ホスフィン及びこれらの有機ホスフィンに、無水マレイン酸、上記キノン化合物、ジアゾフェニルメタン、フェノール樹脂等のπ結合をもつ化合物を付加してなる分子内分極を有する化合物等の有機リン化合物;テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート、トリフェニルホスフィンテトラフェニルボレート、2−エチル−4−メチルイミダゾールテトラフェニルボレート、N−メチルモルホリンテトラフェニルボレート等のテトラフェニルボロン塩及びこれらの誘導体などが挙げられる。これらは、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。信頼性及び成形性の観点から、硬化促進剤は、有機リン化合物が好ましい。
【0091】
本発明のフェノール樹脂組成物が硬化促進剤を更に含む場合、硬化促進剤の含有率は、硬化促進効果が達成される量であれば特に制限されるものではない。本発明のフェノール樹脂組成物が硬化促進剤を含む場合、硬化促進剤の含有率は、(B)エポキシ樹脂の総質量に対して、0.1質量%〜10質量%であることが好ましく、1質量%〜5質量%であることがより好ましい。硬化促進剤の含有率が、0.1質量%以上であると、短時間での硬化性に優れる傾向がある。硬化促進剤の含有率が、10質量%以下であると、硬化速度が速すぎることが抑制され、より良好な成形品を得ることができる傾向がある。
【0092】
本発明のフェノール樹脂組成物は、少なくとも1種のカップリング剤を更に含んでいてもよい。本発明においては、カップリング剤を含むことで、エポキシ樹脂及びエポキシ樹脂硬化剤を含む樹脂成分と充填材との接着性をより高めることができる。
カップリング剤としては、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン等の各種シランカップリング剤、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物などを挙げることができる。これらのカップリング剤は、1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。
【0093】
本発明のフェノール樹脂組成物がカップリング剤を含む場合、カップリング剤の含有率は、上記(C)充填材に対して、0.05質量%〜5質量%であることが好ましく、0.1質量%〜2.5質量%であることがより好ましい。(C)充填材に対するカップリング剤の含有率が、0.05質量%以上であると、耐湿性がより向上する傾向がある。また、(C)充填材に対するカップリング剤の含有率が、5質量%以下であると、成形性がより向上する傾向がある。
【0094】
本発明のフェノール樹脂組成物は、少なくとも1種の離型剤を更に含むことが好ましい。本発明においては、離型剤を含むことで、フェノール樹脂組成物を成形する際に金型からのより円滑な離型性を確保することができる。離型剤としては、ステアリン酸、モンタン酸等の高級脂肪酸系ワックス、ステアリン酸エステル、モンタン酸エステル等の高級脂肪酸エステル系ワックス、ポリエチレン系ワックスなどの従来公知の離型剤を使用することができる。
【0095】
本発明のフェノール樹脂組成物が離型剤を含む場合、離型剤の含有率は、フェノール樹脂組成物の生産性の観点から、エポキシ樹脂に対して、0.05質量%〜5質量%であることが好ましく、0.1質量%〜2.5質量%であることがより好ましい。
【0096】
本発明のフェノール樹脂組成物は、少なくとも1種の難燃剤を更に含んでいてもよい。難燃剤としては、臭素化エポキシ樹脂等のハロゲン系難燃剤、三酸化アンチモン、四酸化アンチモン、五酸化アンチモン等のアンチモン系難燃剤、リン酸エステル等のリン系難燃剤、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム等の金属水酸化物系難燃剤などの従来公知の難燃剤を挙げることができる。
【0097】
さらに、本発明のフェノール樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、カーボンブラック、有機染料、有機顔料、酸化チタン、鉛丹、ベンガラ等の着色剤;イミダゾール、トリアゾール、テトラゾール、トリアジン等及びこれらの誘導体、アントラニル酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、アミノフェノール、キノリン等及びこれらの誘導体、脂肪族酸アミド化合物、ジチオカルバミン酸塩、チアジアゾール誘導体などの密着促進剤;シリコーン系又は非シリコーン系の低応力化剤などを、必要に応じて含んでいてもよい。
【0098】
本発明のフェノール樹脂組成物の製造方法は、各構成成分を分散混合できるのであれば特に制限されず、いかなる手法を用いてもよい。本発明のフェノール樹脂組成物の製造方法の一般的な手法として、原材料をミキサー等によって充分混合した後、ミキシングロール、ニーダ、押出機等によって溶融混練した後、冷却、粉砕する方法を挙げることができる。本発明のフェノール樹脂組成物は、成型条件に合うような寸法及び質量でタブレット化すると使いやすい。
【0099】
また、本発明のフェノール樹脂組成物は、有機溶剤を更に含んでいてもよい。有機溶剤を含むフェノール樹脂組成物は、液状樹脂組成物として使用することができる。本発明のフェノール樹脂組成物は、液状樹脂組成物を板又はフィルム上に薄く塗布し、樹脂の硬化反応があまり進まないような条件で有機溶剤を揮発させることによって得られるシート状又はフィルム状のフェノール樹脂組成物として使用することもできる。
有機溶剤としては特に制限されず、通常用いられる有機溶剤から適宜選択して用いることができる。
【0100】
(用途)
本発明のフェノール樹脂組成物では、下記一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体、並びに下記一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)から選択される少なくとも1つの部分構造を有するフェノール樹脂を含むエポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ樹脂と、を含有するため、本発明のフェノール樹脂組成物の半硬化物及び硬化物は、熱伝導性に優れると共に高いガラス転移温度(Tg)を示す。したがって、本発明のフェノール樹脂組成物は、各種の電気機器及び電子機器の発熱性電子部品(例えば、IC(Integrated Circuit)チップ又はプリント配線基板)の熱伝導材料に好適に用いることができる。なお、熱伝導材料とは、発熱体から熱を効率的に逃がすために用いられる熱伝導性の高い材料を意味し、一般的には、発熱体と放熱材料との間に置かれて用いられる。
【実施例】
【0101】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。尚、特に断りのない限り「%」は質量基準である。
【0102】
以下、各実施例及び比較例で使用した各種原料の詳細を示す。
(A)エポキシ樹脂硬化剤
硬化剤1:1,2,3−トリヒドロキシベンゼン(一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体、別名「ピロガロール」、和光純薬工業株式会社製)。
硬化剤2:1,2,4−トリヒドロキシベンゼン(一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体、別名「ヒドロキシハイドロキノン」、東京化成工業株式会社製)。
硬化剤3:1,3,5−トリヒドロキシベンゼン(一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン誘導体、別名「フロログルシノール」、和光純薬工業株式会社製)。
硬化剤4:一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)、及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造を有するフェノール樹脂の混合物(特定フェノール樹脂)。Arが一般式(IIIa)であり、R
11=ヒドロキシ基、R
12=R
13=水素原子である1,2−ジヒドロキシベンゼン及び1,3−ジヒドロキシベンゼンに由来する部分構造を含む特定フェノール樹脂(水酸基当量65、軟化点55℃、数平均分子量400、重量平均分子量550)を含む化合物。モノマー含有率35%。
硬化剤5:水酸基当量105、融点85℃であるノボラック化フェノール樹脂。
【0103】
(B)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂1:エポキシ当量172、融点130℃のビフェニル型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、商品名「エピコート YL6121H」)。
【0104】
(C)充填材
充填材1:一次粒子径18μmの球状アルミナ(住友化学株式会社製、商品名「アドバンストアルミナ AA−18」)。
【0105】
(その他の添加剤)
硬化促進剤:トリフェニルホスフィン(北興化学株式会社製、商品名「P−1」)。
離型剤:モンタル酸エステル(クラリアントジャパン株式会社、商品名「リコワックスE」)。
【0106】
なお、硬化剤4及び硬化剤5は、それぞれ以下の方法により合成した。
<硬化剤4>
撹拌機、冷却器、及び温度計を備えた2Lのセパラブルフラスコに、レゾルシン627g、カテコール33g、37%ホルマリン182.5g、シュウ酸2.0g、及び水400gを入れ、オイルバスで加温しながら100℃に昇温した。102℃前後で還流し、還流温度で3時間反応を続けた。その後、水を留去しながらフラスコ内の温度を150℃に昇温した。150℃を保持しながら12時間反応を続けた。反応後、減圧下20分間濃縮を行ない、系内の水等を除去して目的の硬化剤4を得た。合成時における、重量平均分子量の変化を
図1に、単量体(Monomer)、2量体(dimer)、3量体(trimer)及びその他(4量体以上、other)の含有率(分子の核体数)の変化を
図2に示した。得られたフェノール樹脂のGPCチャートを
図3に、また、FD−MSチャートを
図4に示した。
なお、
図2の含有率の変化は、一定時間毎に生成物を取り出し、GPC測定して得られる
図3のようなチャートから求めたもので、単量体、2量体、3量体及び4量体以上の含有率は、
図3に示すGPCチャートの横軸の保持時間において、最後のピークを単量体、最後から2番目のピークを2量体、最後から3番目のピークを3量体、それ以前を4量体以上として、ピーク面積から求めたものである。よって、2量体、3量体と言っても全て同じ成分というわけではなく、それぞれもフェノール樹脂混合物と考えられる。
反応が進むと
図1の通り重量平均分子量が低下している点、
図2の通り安定な2量体及び3量体が生成している点、水酸基当量が理論値(約60)に対して65と大きい点、並びに
図4に示すFD−MSのスペクトルチャートに、以下に構造式及び分子量(FW.)を示すキサンテン誘導体構造の分子量ピークが明確に示された点等から、一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造を有するフェノール樹脂が得られていることが分かる。
【0107】
【化9】
【0108】
<硬化剤5>
撹拌機、冷却器、及び温度計を備えた1Lのセパラブルフラスコに、フェノール94g、37%ホルマリン48.7g、及びシュウ酸2.5gを入れ、オイルバスで加温しながら100℃に昇温した。100℃前後で還流し、還流温度で5時間反応を続けた。その後、水を留去しながらフラスコ内の温度を150℃に昇温した。150℃を保持しながら12時間反応を続けた。反応後、減圧下20分間濃縮を行ない、系内の水、未反応物等を除去して目的の硬化剤5を得た。
【0109】
なお、上記で得られた硬化剤の物性値測定は次のように行った。
数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、株式会社日立製作所製の高速液体クロマトグラフィL6000及び株式会社島津製作所製のデータ解析装置C−R4Aを用いて行なった。分析用GPCカラムは、東ソー株式会社製のG2000HXL及びG3000HXLを使用した。検出器には、日立製作所製のRI検出器L-3300を使用した。試料濃度を0.2%とし、移動相にテトラヒドロフランを用い、流速1.0mL/minで測定を行なった。ポリスチレン標準サンプルを用いて検量線を作成し、該検量線を用いてポリスチレン換算値で数平均分子量及び重量平均分子量を計算した。
【0110】
水酸基当量は、塩化アセチル−水酸化カリウム滴定法により測定した。なお、滴定終点は、溶液の色が暗色のため、指示薬による呈色法ではなく、電位差滴定によって判別した。水酸基当量の測定は、具体的には、測定樹脂のヒドロキシ基をピリジン溶液中塩化アセチル化した後、その過剰の試薬を水で分解し、生成した酢酸を水酸化カリウム/メタノール溶液で滴定することにより行なった。
【0111】
FD−MS分析(電界脱離イオン化質量分析法)は、日本電子株式会社製のFD−MSユニット付きJMS−700型二重収束質量分析装置を用いて行なった。特定フェノール樹脂をアセトンに溶かしてカーボンエミッタに塗布し、以下の条件で測定した。
イオン化法:FD(+)
加速電圧:8kV
スキャン範囲:m/z 10〜2000
【0112】
<実施例1〜9及び比較例1〜3>
上述した(A)エポキシ樹脂硬化剤、(B)エポキシ樹脂、(C)充填材、及びその他の添加剤を、表1に示した組成となるように配合し、混練温度80℃、混練時間10分の条件下でロール混練を行なって、実施例1〜9及び比較例1〜3のフェノール樹脂組成物をそれぞれ調製した。ここで(C)充填材は、充填材1のアルミナをフェノール樹脂組成物の70体積%となるように配合した。また、硬化促進剤及び離型剤は、(B)エポキシ樹脂100質量部に対して1質量部になるように配合した。なお、表1における配合の単位は「質量部」であり、「−」は未配合であることを示す。
【0113】
上記で得られたフェノール樹脂組成物を、圧縮成型機により金型温度180℃、成型圧力9.8MPa、硬化時間10分の条件で成型した。得られた成型品を、190℃で2時間、220℃で4時間の条件で後硬化し、実施例1〜9及び比較例1〜3に対応するフェノール樹脂組成物の硬化物をそれぞれ作製した。
【0114】
得られたフェノール樹脂組成物の硬化物について、熱伝導率及びガラス転移温度(Tg)を評価した。評価結果を表1に示す。また、各フェノール樹脂組成物の特性は、以下の試験法で測定した。
【0115】
(熱伝導率)
熱伝導率は、NETZSCH製のLFEA4447型Nanoflash装置を用いたキセノン(Xe)−フラッシュレーザー法により測定した。10mm×10mm×2mmに加工した試験片の比熱容量、試験片密度及び熱拡散を乗じた値を、熱伝導率(W/m・K)とした。
【0116】
(ガラス転移温度)
ガラス転移温度は、株式会社ユービーエム社製のDIVE−V4を用いた広域動的粘弾性測定法(DVE)により測定した。1.6mm×3mm×20mmに加工した試験片を周波数10Hz、昇温速度5℃/分で測定し、得られた損失正接(tanδ)の最大値となるピーク温度をガラス転移温度(Tg)とした。
【0117】
【表1】
【0118】
一般式(I)で表されるヒドロキシベンゼン類、並びに一般式(IIa)、(IIb)、(IIc)、及び(IId)からなる群より選ばれる少なくとも1つの部分構造を有するフェノール樹脂を含むエポキシ樹脂硬化剤と、エポキシ樹脂とを併用して作製した本発明のフェノール樹脂組成物から得られた硬化物は、比較例のフェノール樹脂組成物から得られた硬化物よりも、熱伝導率及びガラス転移温度(Tg)においてそれぞれ優れていることが分かる。
【0119】
日本出願2012−151657の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び技術規格は、個々の文献、特許出願、及び技術規格が参照により取り込まれることが具体的に、且つ、個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。