(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
(本発明の1つの実施形態に係る蛍光体ホイール及びこの蛍光体ホイールを備えた光源装置の説明)
はじめに、
図1を用いて、本発明の1つの実施形態に係る蛍光体ホイール及びこの蛍光体ホイールを備えた光源装置について、その概要を説明する。
図1は、本発明の1つの実施形態に係る蛍光体ホイール50及びこの蛍光体ホイール50を備えた光源装置60を模式的に示す断面図である。
【0010】
図1に示すように、光源装置60は、蛍光体ホイール50と、蛍光体ホイール50に光を出射する光源52とを備える。本実施形態では、光源52として、半導体レーザ(LD)が用いられている。光源のなかでも特に半導体レーザ(LD)は光出力が大きく、蛍光体で発生する発熱量も大きくなることから、本実施形態では、半導体レーザ(LD)を用いた光源装置がとくに有効である。しかしながら、これに限られるものではなく、発光ダイオード(LED)をはじめとするその他の任意の光源を用いることはできる。また本実施形態では、光源52として、青色光を発する半導体レーザ(LD)が用いられている。
【0011】
蛍光体ホイール50は、冷媒が封入された密封筐体4を備えた回転基板2と、密封筐体4内の気化された冷媒を冷却するための冷却装置30を備える。また、回転軸40aを中心に回転基板2を回転させる駆動装置40を備えていてもよい。
【0012】
ここで、冷媒とは、蛍光体の温度上昇により液体から気体に変化し(気化)、冷却装置による冷却で気体から液体に変化する(液化)流体である。具体的には、冷媒として、水、特に純水が好ましく、温度条件や密封筐体内の圧力によっては、アルコールやアンモニアを用いることも考えられる。
冷媒の量は、液体の状態で、密封筐体4の内部の体積に対して10%(体積)以下が好ましいが、気化した冷媒によって、密封筐体4の内部圧力が高くなりすぎない程度がよい。つまりは、温度、冷却能力、内部圧力、密封筐体4の強度(漏れの防止)等を考慮して、最適な冷媒の量を定めることが好ましい。
【0013】
密封筐体4は、液化した冷媒及び気化した冷媒が外部へ漏れることのない密閉構造の筐体である。密封筐体4は、密封筐体4の全ての面が透光性を有する場合も、一部の面が透光性を有する場合も、1つの面の一部だけが透光性を有する場合もあり得る。密封筐体4は、金属材料、樹脂材料、ガラス、セラミック等の材料、またはそれらの組み合わせによって形成することができる。本実施形態では、密封筐体4は、光の入射面を形成する回転基板2と、光の出射面を形成する平面部材4aと、回転基板2及び平面部材4aを繋ぐ側面部材4bから構成されている。そして密封筐体4の回転基板2における外周側に透光性を有する領域を有しており、この透光性を有する領域によって、外部からの光が密封筐体4の内部に入射する光入射領域70が形成されている。
【0014】
回転基板2及び平面部材4aは、少なくとも光源52からの光が入射する光入射領域70及び光を出射する出射領域80において、透光性を有するようになっている。回転基板2は、例えば駆動装置40によって回転する板状の部材であって、特に円板状の形状を有するのが好ましい。回転基板2には、密封筐体4が備えられているが、この場合、回転基板2が密封筐体4の1つの面を構成する場合もあり得るし、回転基板2とは個別の密封筐体4が回転基板2に取り付けられている場合もあり得る。側面部材4bは、透光性を有する部材で構成することもできるが、光が側方から逃げるのを防ぐ観点からは、透光性を有さない部材、特に好ましくは光反射性の部材で構成するのが好ましい。なお、回転基板2及び平面部材4aは、全体が透光性を有する場合もあり得るし、光入射領域70及び出射領域80のみが透光性を有する場合もあり得る。
【0015】
本実施形態では、密封筐体4に、外部から光が入射する光入射領域70、及び密封筐体4から光が出射される出射領域80が設けられ、冷却装置30が、光入射領域70よりも回転基板2の回転軸40aに近い位置において密封筐体4に接続されている。
冷却装置30としては、放熱フィン等の放熱部材を用いることも、冷却液等を循環させる冷却装置30を用いることも、その他の既知の任意の冷却手段を用いることもできる。
【0016】
また、密封筐体4の内部には、気化した冷媒が流動可能な気体流動領域8と、液化した冷媒が流動可能な複数の微細流路を有する流動部6とを備える。この微細流路は、粒子と粒子の間の空隙によって形成され、空隙を形成する粒子として蛍光体粒子10が用いられている。これにより、
図1の矢印に示すように、光源52からの光(右向きの白抜き矢印参照)が、光入射領域70の回転基板2を透過して、光入射領域70に配置された蛍光体粒子10(微細流路を形成する粒子である)に入射し、蛍光体粒子10により波長変換された光が、光源52とは反対側の出射領域80の平面部材4aを透過して外部へ出射される(右向きの格子柄の矢印参照)。
【0017】
本実施形態では、例えば、回転基板2の円周方向において、異なる波長域の光を発する蛍光対粒子10を有する複数の密封筐体4が配置された蛍光体ホイール50を用いることができる。例えば、蛍光体ホイール50を光の出射側から見た側面図である
図5(a)に示すように、光源52から青色光が入射すると赤色光を出射する赤色蛍光体から少なくとも形成される微細流路を有する密封筐体4Rが設けられた赤色光出射領域と、光源52から青色光が入射すると緑色光を出射する緑色蛍光体から少なくとも形成される微細流路を有する密封筐体4Gが設けられた緑色光出射領域と、密封筐体4を備えず光源52からの青色光がそのまま透過する青色光を出射する青色光出射領域とを備える蛍光体ホイール50を例示することができる。
このような構成の蛍光体ホイール50を、例えば駆動装置40を用いて回転させれば、時分割で、赤、緑及び青色の三原色を出射する光源60を得ることができる。
【0018】
冷却装置30は、密封筐体4の光入射領域よりも回転基板2の回転軸40aに近い側の平面部材4a及び側面部材4bに接するように配置されている。冷却装置30により、密封筐体4の光入射領域よりも回転基板2の回転軸40aに近い側に流れてきた気化した冷媒を冷却することができる。なお、本実施形態では、冷却装置30が、内周側の面を有するリング状の密封筐体4の内周側の平面部材4aの上、及び密封筐体4の光入射領域よりも回転基板2の回転軸40aに近い側の回転基板2上に配置されているが、これに限られるものではなく、密封筐体4の上にだけ配置されている場合もあり得る。
【0019】
流動部6は、密封筐体4の内部の光の入射側(つまり回転基板2側)に配置されており、密封筐体4の内部の光の出射側(つまり平面部材4a側)には、気化した冷媒が流動可能な気体流動領域8(本実施形態では空間)が設けられている。複数の微細流路を有する流動部6は、冷却装置30が配置された領域及び光入射領域70を繋ぐように延びている。
【0020】
流動部6は、蛍光体粒子10同士が互いに結合されて形成され、微細流路は、蛍光体粒子10と蛍光体粒子10の間の空隙によって形成されている。なお、微細流路とは、毛細管現象が生じる大きさの流路断面を有する流路であり、粒子と粒子の間の空隙で形成される流路だけでなく、複数の溝22から形成される流路や、メッシュ状の部材24から形成される流路や、毛細管現象が生じるその他の任意の流路が含まれる。微細流路が粒子と粒子の間の空隙で形成される場合には、例えば、粒径が1μm〜1mmの粒子が互いに接触して配置されている場合の粒子及び粒子の間の隙間として規定することもできるし、流路断面を円形断面に換算した場合において、内径1μm〜1mmの流路として規定することもできる。
特に、粒子が蛍光体粒子の場合には、粒径が1μm〜50μmの粒子が互いに接触して配置されている場合の粒子及び粒子の間の隙間、または円形断面換算で内径1μm〜50μmの流路として規定することが好ましい。
【0021】
上記のように、光源52からの光が密封筐体4の光入射領域70に配置された蛍光体粒子10に入射したとき、波長変換光を出射するが、このとき、蛍光体粒子10の温度が上昇する可能性があり、蛍光体粒子10の温度が上昇すると、蛍光体粒子10の波長変換効率が低下する可能性がある。
本実施形態では、蛍光体粒子10の温度が上昇したとき、蛍光体粒子10の周囲の冷媒が気化し、その気化熱により、蛍光体粒子10を冷却することができる。そして、気化した冷媒が気体流動領域8を流動して、冷却装置30が設けられた領域に達すると、冷却装置30により冷却されて液化(凝縮)する。このとき、蛍光体粒子10から奪った熱を密封筐体4の外部へ放出する。
【0022】
図1に示すように、本実施形態では、 蛍光体粒子10と蛍光体粒子10の間の空隙によって、連続した微細流路が形成され、このような複数の連続した微細流路が、冷却装置30が配置された領域及び光入射領域70を繋ぐように延びている。よって、波長変換で高温になった蛍光体粒子10の周囲の冷媒が気化し、気化した冷媒が冷却装置30の近傍へ流れ、冷却装置30による冷却で液化(凝縮)する。液化した冷媒は、流動部6の複数の微細流路によって、再び光入射領域70へ流動し、これにより冷却サイクルが形成される。すなわち、冷媒が密封筐体内を循環することとなり、気化と液化を繰り返すこととなる。このような冷媒の流動サイクルを、
図1の密封筐体内に矢印で示す。実線の矢印が液化した冷媒の流れを示し、点線の矢印が気化した冷媒の流れを示す。以上のように、ポンプのような駆動源を用いることなく、冷媒による蛍光体粒子10の冷却サイクルを構成することができ、蛍光体粒子10の光変換効率の低下を効率的に防ぐことができる。なお、回転基板2が回転しているので、微細流路の毛細管力に加えて遠心力も液化した冷媒にかかるが、これについては、
図7を用いて追って詳細に述べる。また、気化した冷媒が流動する場合の遠心力の影響についても、
図7を用いて追って詳細に述べる。
【0023】
以上のように、本実施形態によれば、微細流路が、冷却装置30が配置された領域及び光入射領域70を繋ぐように延びているので、冷媒による蛍光体粒子10の冷却サイクルを確実に形成することができ、蛍光体の温度上昇を効果的に抑制することができる。
上記のように、本実施形態では、微細流路が密封筐体4内の一部の領域にのみ配置されていて、気化した冷媒が流動する気体流動領域8が空間となっていることにより、効果的に気化した冷媒を流すことができる。
ただし、これに限られる訳ではなく、気体流動領域8に通気路の設けられた物体やポーラスな物質が存在する場合もあり得る。更に、気体流動領域8に微細流路が設けられている場合もあり得る。この場合には、毛細管現象で液状の冷媒が流動する微細流路(流動部6)と、気体の冷媒が流動する微細流路(気体流動領域8)とを有する。
【0024】
流動部6は、蛍光体粒子10同士が互いに結合された構造を有し、微細流路は、蛍光体粒子10と蛍光体粒子10の間の空隙によって形成されている。
【0025】
<流動部の形成方法の説明>
このような流動部を形成する方法の具体例としては、まず、蛍光体粒子及び酸化物粒子を有機溶剤(例えば、ブチルカルビトールアセテール)及び樹脂(例えば、エチルセルロース、アクリル系樹脂等)に混合してペーストを調製し、このペーストを筐体の内部の流動部が形成される位置に印刷法により塗布する。次に、有機溶剤及び樹脂を除去した後に、300℃以上、好ましくは400℃以上の温度で焼成を行い、樹脂をほぼ完全に除去する。これにより、蛍光体粒子の表面に複数の酸化物粒子が付着した状態となり、更にこの蛍光体粒子と酸化物粒子の表面にコーティング層を形成する。このコーティング層は、無機材料であることが好ましく、これにより、蛍光体粒子と蛍光体粒子の間の空隙を含む(つまり微細流路を含む)流動部6を得ることができる。
【0026】
特に、コーティング層としては、Al
2O
3、SiO
2等が好ましく、さらには酸化物粒子をこのコーティング層と同じ材料とすることが好ましい。またコーティング層は、原子層堆積法(ALD)、ゾルゲル法、MOCVD(有機金属化学的気相成長)法、PECVD(プラズマCVD)法、CVD法、大気圧プラズマ成膜法、スパッタ法、蒸着法等を利用することができる。
【0027】
図1に示す実施形態では、微細流路を形成する粒子の全てが蛍光体粒子10で構成されているが、これに限られるものではなく、流動部6において、少なくとも、外部から光が入射する光入射領域70に蛍光体粒子10が配置されていればよい。
本実施形態によれば、光入射領域70に蛍光体粒子10が配置されているので、入射光は波長変換され、所望の波長域の光を出力することができる。
【0028】
<蛍光体ホイール50及び光源装置60を構成する各部材の説明>
以下に、蛍光体ホイール50及び光源装置60を構成する各部材の更に詳細な説明を行う。
[光源52]
光源52として青色半導体レーザを用いる場合には、370〜500nmの波長域の光を発することが好ましく、420〜500nmの波長域の光を発することが更に好ましい。ただし、光源52として青色半導体レーザを用いる場合に限られるものではなく、その他の任意の波長域の半導体レーザを用いることもできるし、その他の種類の光源、例えば発光ダイオード(LED)を用いることもできる。
【0029】
[回転基板2]
回転基板2は、光の入射面または出射面として機能する場合には、光を透過させる透明な部材からなり、素材として、ガラス、樹脂材料、サファイア、窒化ガリウム等の透光性を有する材料を用いることができる。また、回転基板2が光の反射面として機能する場合には、光を透過しない樹脂材料や、銅、アルミニウム、ステンレススチール等の金属材料を用いることができる。回転する基板としては、光の入射面に垂直な方向に見て円形であることが好ましい(
図5参照)。
【0030】
[密封筐体4]
密封筐体4は、ヒートシンクの筐体として機能するので、熱伝導率が高い方が好ましく、それを考慮すれば、銅、アルミニウム、ステンレススチール等の金属材料を例示できる。ただし、樹脂材料、サファイア、窒化ガリウム、ガラス、セラミック材料等を用いることもできる。特に、密封筐体は透光性を有する面を有しているが、この透光性を有する面には、樹脂材料、サファイア、窒化ガリウム、ガラス等を用いる必要がある(上記のように、回転基板2が透光性を有する面を構成する場合もあり得る)。例えば、1つの面の一部だけが透光性を有する場合、光を透過しない部分を金属材料で形成し、光を透過する部分を樹脂材料またはガラスで形成することも考えられる。また、光を透過しない樹脂材料と光を透過する樹脂材料を一体成形(二色成形)した密封筐体4を用いることもできる。
【0031】
[冷却装置30]
冷却装置30として、例えば熱伝導性のよい銅などの金属の板を用いて外気と接触する面積を大きくすることや、銅などの金属の板が複数枚設けられた放熱フィン等の放熱部材を用いることも、冷却液等を循環させる冷却装置を用いることも、その他の既知の任意の冷却手段を用いることもできる。この冷却装置は、回転基板2の上に設けられている場合もあるし、回転基板2とは別の回転しない装置であって、接触や冷却流体の吹きつけ等によって密封筐体4を冷却するものも含まれる。内周側の面を有するリング状の密封筐体4の内周側の面に設けられている場合も、密封筐体4よりも更に内側の回転基板2上に設けられている場合も、
図1に示すように、密封筐体4の内周側の面上及び密封筐体4よりも更に内側の回転基板2上の両方に配置されている場合もあり得る。また、冷却装置は密封筐体に熱的に接続されていればよい。
【0032】
[駆動装置40]
駆動装置40として、例えば、ブラシレス直流駆動モータを用いることができる。駆動装置40の回転速度は、再生する動画のフレームレート(1秒当たりのフレーム数。単位は[fps])に基づく回転速度となる。例えば、60[fps]の動画を再生可能とする場合、駆動装置40(つまり蛍光体ホイール50)の回転速度は、毎秒60回転の整数倍に定めるとよい。
【0033】
[蛍光体粒子10]
蛍光体粒子10として、上述のように光源から青色光が入射した場合に、赤色光を出力する赤色蛍光体粒子、緑色光を出力する緑色蛍光体粒子、黄色光を出力する黄色蛍光体粒子を例示することができる。
赤色光を出力する赤色蛍光体粒子では、約600〜800nmの波長帯域の赤色の蛍光を発生させることが好ましい。具体的な材料の一例としては、(Sr,Ca)AlSiN
3:Eu、CaAlSiN
3:Eu、SrAlSiN
3:Eu、K
2SiF
6:Mn等を挙げることができる。
緑色光を出力する蛍光体粒子では、約500〜560nmの波長帯域の緑色の蛍光を発生させることが好ましい。具体的な材料の一例としては、β−Si
6−ZAl
ZO
ZN
8−Z:Eu、Lu
3Al
5O
12:Ce、Ca
8MgSi
4O
16C
l2:Eu、Ba
3Si
6O
12N
2:Eu、(Sr,Ba,Ca)Si
2O
2N
2:Eu等を挙げることができる。
黄色光を出力する蛍光体粒子では、約540〜700nmの波長帯域の黄色〜赤色の蛍光を発生させることが好ましい。材料の一例としては、セリウムで付活されたイットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体をベースとした蛍光体を挙げることができ、更に具体的には、YAlO
3:Ce、Y
3Al
5O
12:Ce(YAG:Ce)やY
4Al
2O
9:Ce、更にはこれらの混合物等が挙げられる。イットリウム・アルミニウム酸化物系蛍光体にBa、Sr、Mg、Ca、Znの少なくとも一種が含有されていてもよい。また、Siを含有させることによって、結晶成長の反応を抑制し蛍光体の粒子を揃えることができる。
【0034】
[フィルタ]
回転基板2や密封筐体4の光入射領域70及び出射領域80において、誘電体多層膜の蒸着によりフィルタを備えることができる。このフィルタは、用途や透過または反射する光の波長域に応じて、ショートパスフィルタ、バンドパスフィルタ、ロングパスフィルタを適宜用いることができる。また、輝度ムラ及び色度ムラを改善するために、散乱体、例えばSiO
2やTiO
2、Ba
2SO
4等の粒子を塗布することもできる。
このようなフィルタにより、回転基板2の光入射領域70において、光源52からの光が反射する抑止し、密封筐体4の出射領域80において、所定の波長域の光のみを出射することができるので、性能の高い光源装置60を実現できる。
【0035】
以上のように、
図1に示す本実施形態によれば、蛍光体粒子10の温度が上昇したとき、蛍光体粒子10の周囲の冷媒が気化して、気化熱で蛍光体粒子10を冷却し、気化した冷媒が気体流動領域8を流れて、冷却装置30が配置された領域に達すると、冷却装置30で冷却されて液化する。このとき冷媒は蛍光体粒子10から奪った熱を密封筐体4の外部に放出する。さらに液化した冷媒は、流動部6の複数の微細流路によって再び光入射領域70に流動する。このような冷却サイクルにより、ポンプ等を有する大がかりな冷却装置を用いることなく、蛍光体粒子10を冷却して、蛍光体粒子10の光変換効率の低下を効率的に防ぐことができる。
よって、本実施形態では、駆動源を有さずに蛍光体粒子10を効率的に冷却可能で、稼働時におけるエネルギ消費が少ない蛍光体ホイール50及び光源装置60を提供することができる。また、蛍光体ホイール50は、優れた冷却機能を有しながらも小型化が実現でき、製造コストの低い蛍光体ホイール50を得ることができる。
【0036】
また、本実施形態に係る光源装置60は、上記の実施態様に係る蛍光体ホイール50が奏する作用効果を得ることができ、駆動源を有さずに蛍光体を効率的に冷却可能で稼働時におけるエネルギ消費が少ない光源装置60を提供することができる。
なお、本実施形態に係る光源装置60は、プロジェクタの光源装置をはじめとする、異なる波長域の光を時分割に用いる任意の用途に適用することができる。
【0037】
(本発明のその他の実施形態(その1)に係る蛍光体ホイール及びこの蛍光体ホイールを備えた光源装置の説明)
次に、
図2を用いて、本発明のその他の実施形態(その1)に係る蛍光体ホイール50及びこの蛍光体ホイールを備えた光源装置60の説明を行う。
図2は、本発明のその他の実施形態(その1)に係る蛍光体ホイール50及びこの蛍光体ホイールを備えた光源装置60を模式的に示す断面図である。
図2に示す本実施形態と、
図1に示す実施形態とを比較すると、流動部6の構成が異なり、その他の部分については同一である。よって、ここでは、
図1に示す実施形態と異なる点についてのみ説明を行い、
図1に示す実施形態と同一の部分についての説明は省略する。
【0038】
図2において、流動部6は、密閉筐体4の光入射領域70及びその近傍領域、並びにそれよりも回転基板2の回転軸40aに近い側における密閉筐体4のその他の領域(冷却装置30が配置された領域を含む)の2つの領域において、異なる構成を有している。つまり、流動部6の光入射領域70及びその近傍領域に蛍光体粒子10が配置され、その他の領域には、光拡散材粒子12が配置されている。なお、光拡散材粒子12としては、SiO
2やTiO
2、Ba
2SO
4等の粒子を例示することができるが、これに限られるものではない。
【0039】
蛍光体粒子10と蛍光体粒子10の間の空隙、光拡散材粒子12と光拡散材粒子12の間の空隙、及び蛍光体粒子10と光拡散材粒子12の間の空隙によって、連続した微細流路を形成することができる。このような複数の連続した微細流路が、冷却装置30が配置された領域及び光入射領域70を繋ぐように延びている。
よって、上記と同様に、波長変換で高温になった蛍光体粒子10の周囲の冷媒が気化し、気化した冷媒が冷却装置30の近傍へ流れ、冷却装置30による冷却で液化した冷媒は、流動部6の複数の微細流路によって、再び光入射領域70へ流動し、これにより冷却サイクルが形成される。このような冷媒の流動サイクルを、
図2の密封筐体内に矢印で示す。実線の矢印が液化した冷媒の流れを示し、点線の矢印が気化した冷媒の流れを示す。以上のように、ポンプのような駆動源を用いることなく、冷媒による蛍光体粒子10の冷却サイクルを構成することができ、蛍光体粒子10の光変換効率の低下を効率的に防ぐことができる。
【0040】
本実施形態では、光入射領域70及びその近傍領域に蛍光体粒子10が配置され、その他の領域に光拡散材粒子12が配置されているので、光拡散材粒子12の粒径を蛍光体粒子10の粒径よりも大きくしたり、小さくしたりすることができる。例えば、粒径を、光拡散材粒子12のほうが蛍光体粒子10より大きくすることにより、光拡散材粒子が設けられた領域の空隙を比較的大きく設けることができ、光拡散材粒子12が設けられた領域での冷媒の移動を早くすることができたりする。
【0041】
(本発明のその他の実施形態(その2)に係る蛍光体ホイール及びこの蛍光体ホイールを備えた光源装置の説明)
次に、
図3を用いて、本発明のその他の実施形態(その2)に係る蛍光体ホイール50及びこの蛍光体ホイール50を備えた光源装置60の説明を行う。
図3は、本発明のその他の実施形態(その2)に係る蛍光体ホイール50及びこの蛍光体ホイール50を備えた光源装置60を模式的に示す断面図である。
図3に示す本実施形態と、
図1及び
図2に示す実施形態とを比較すると、流動部6の構成が異なり、その他の部分については同一である。よって、ここでは、
図1及び
図2に示す実施形態と異なる点についてのみ説明を行い、
図1及び
図2に示す実施形態と同一の部分についての説明は省略する。
【0042】
図3において、流動部6は、密閉筐体4の光入射領域70及びその近傍領域、その隣接領域、並びに密閉筐体4の光入射領域よりも回転基板2の回転軸40aに近い側の領域(つまり冷却装置30が配置された領域)の3つの領域において、異なる構成を有している。つまり、流動部6の光入射領域70及びその近傍領域に蛍光体粒子10が配置され、その隣接領域に光拡散材粒子12が配置され、密閉筐体4の光入射領域よりも回転基板2の回転軸40aに近い側の領域には、メッシュ状の部材24が配置されている。
メッシュ状の部材24は、ヒートシンクのウイックと称する毛細管構造体であり、銅、アルミニウム、ステンレス鋼といった金属材料や、合金材料、または多孔質の非金属材料で形成することができる。
【0043】
密閉筐体4の光入射領域よりも回転基板2の回転軸40aに近い側の領域の領域には、メッシュ状の部材24による連続した微細流路が形成され、それよりも外周側には、上記のように、蛍光体粒子10と蛍光体粒子10の間の空隙、光拡散材粒子12と光拡散材粒子12の間の空隙、及び蛍光体粒子10と光拡散材粒子12の間の空隙によって、連続した微細流路を形成することができる。よって、メッシュ状の部材24、光拡散材粒子12及び蛍光体粒子10によって形成された複数の連続した微細流路が、冷却装置30が配置された領域及び光入射領域70を繋ぐように延びている。
【0044】
よって、上記と同様に、波長変換で高温になった蛍光体粒子10の周囲の冷媒が気化し、気化した冷媒が冷却装置30の近傍へ流れ、冷却装置30による冷却で液化した冷媒は、流動部6の複数の微細流路によって、再び光入射領域70へ流動し、これにより冷却サイクルが形成される。このような冷媒の流動サイクルを、
図3の密封筐体内に矢印で示す。実線の矢印が液化した冷媒の流れを示し、点線の矢印が気化した冷媒の流れを示す。以上のように、ポンプのような駆動源を用いることなく、冷媒による蛍光体粒子10の冷却サイクルを構成することができ、蛍光体粒子10の光変換効率の低下を効率的に防ぐことができる。
【0045】
本実施形態によれば、流動部6の微細流路の一部が、メッシュ状の部材24によって形成されるので、粒子と粒子の間の空隙によって形成された微細流路とともに、より多くの液状の冷媒を効果的に流動させることができる。
【0046】
(本発明のその他の実施形態(その3)に係る蛍光体ホイール及びこの蛍光体ホイールを備えた光源装置の説明)
次に、
図4を用いて、本発明のその他の実施形態(その3)に係る蛍光体ホイール50及びこの蛍光体ホイール50を備えた光源装置60の説明を行う。
図4は、本発明のその他の実施形態(その3)に係る蛍光体ホイール50及びこの蛍光体ホイール50を備えた光源装置60を模式的に示す断面図である。
図4に示す本実施形態と、
図1、
図2及び
図3に示す実施形態とを比較すると、流動部6の構成が異なり、その他の部分については同一である。よって、ここでは、
図1、
図2及び
図3に示す実施形態と異なる点についてのみ説明を行い、
図1、
図2及び
図3に示す実施形態と同一の部分についての説明は省略する。
【0047】
図4(a)において、流動部6は、光入射領域70及びその近傍領域、並びにそれよりも内側のその他の領域(冷却装置30が配置された領域を含む)の2つの領域において異なる構成を有している。つまり、流動部6の光入射領域70及びその近傍領域に、蛍光体粒子である黄色蛍光体粒子10a及び赤色蛍光体粒子10bと、光拡散材粒子12とが配置され、その他の領域には、光拡散材粒子12のみが配置されている。
【0048】
光入射領域70及びその近傍領域では、光源52に近い側から、光拡散材粒子12、黄色蛍光体粒子10a、赤色蛍光体粒子10bの順に積層されている。これにより、光源52からの光(右向きの白抜き矢印参照)を、光拡散材粒子12で拡散させて、光強度を均等にして、黄色蛍光体粒子10a及び赤色蛍光体粒子10bで波長変換を行って、出射領域80から出射する(右向きの格子柄の矢印参照)。黄色蛍光体及び赤色蛍光体を用いることにより、演色性の高い赤色光を出射することができる。
【0049】
本実施形態では、
図4の上側に示す黄色蛍光体粒子10a及び赤色蛍光体粒子10bを有する密封筐体4Rだけでなく、
図4の下側に示すように、緑色蛍光体粒子10cを有して、光源52からの光が入射すると、緑色光を出射する密封筐体4Gを備える。なお、密封筐体4Gでは、流動部6の光入射領域70及びその近傍領域に緑色蛍光体粒子10cが配置され、それよりも内側の領域には、光拡散材粒子12が配置されている。
【0050】
このような密封筐体4R、4Gの配置を、
図4(a)の矢視A−Aから見た側面図、つまり蛍光体ホイール50を光の出射側から見た側面図である
図5(a)を用いて説明する。
図5(a)に示すように、回転基板2の円周方向において、赤色光を出射する密封筐体4Rが設けられた赤色光出射領域と、緑色光を出射する密封筐体4Gが設けられた緑色光出射領域と、密封筐体4を備えず光源52からの青色光がそのまま透過して青色光を出射する青色光出射領域とを備えている。このような構成の蛍光体ホイール50を駆動装置40により回転させることによって、
図5(a)に示す光が透過する領域から、赤、緑及び青色の三原色の光を、時分割で出射することができる。
【0051】
よって、本実施形態によれば、流動部6において、光入射領域70及び近傍領域に、種類の異なる粒子で形成された複数の層が形成されているので、用途に応じた最適な波長変換光を出射することができる。なお、種類の異なる粒子で形成された単一の層が形成されている場合もあり得る。種類の異なる粒子とは、蛍光体粒子10及び蛍光体粒子以外の粒子の場合もあるし、異なる種類の蛍光体粒子10の場合もあり得るし、異なる種類の蛍光体粒子10及び蛍光体粒子以外の粒子の場合もあり得る。
【0052】
更に、本実施形態では、微細流路の一部として、密封筐体4の内面に設けられた複数の溝22によって、溝領域20が形成されている。
図4(a)の矢視B−Bの断面図である
図4(b)に示すように、密封筐体4の内面となる回転基板2の面に、複数の微細な溝22が形成された溝領域20が設けられており、液化した冷媒は、毛細管現象により微細な溝22内を流動することができる。つまり、溝22が微細流路に該当する。
【0053】
複数の微細な溝22が形成された溝領域20について、
図5(b)を用いて、更に詳細に説明する。
図5(b)は、密封筐体4の内面となる回転基板2の面、つまり、
図5(a)の側面図から密封筐体4R、4Gを取り除いた場合の面を示している。
図5(b)は、回転基板2の面に設けられた複数の溝22によって形成された微細流路の一例を示している。
図5(a)では、回転基板2の面に設けられた複数の溝22が、回転基板2の円の中心領域から放射状に直線的に延びている。そして、円の外周側に光入射領域70及び出射領域80が設けられ、円の内側に冷却装置30が設けられる(
図5(a)参照)。
以上のように、各粒子間の隙間で形成された微細流路、及び複数の溝22による溝領域20からなる微細流路によって、密封筐体4の回転基板2における回転軸40a側から外周側に向けて、効果的に液化した冷媒を流動させることができる。
【0054】
図4の上側に示す密封筐体4Rでは、流動部6の微細流路は、各粒子の間の隙間で形成された領域と、その下側に配置された溝領域20から構成されている。そして各粒子の間の隙間で形成され領域は、光入射領域70及びその近傍領域において、黄色蛍光体粒子10a、赤色蛍光体粒子10b及び光拡散材粒子12で形成され、その他の領域において、光拡散材粒子12で形成されている。
黄色蛍光体粒子10a、赤色蛍光体粒子10b及び光拡散材粒子12の各粒子の間の空隙によって、連続した微細流路を形成することができる。よって、各粒子によって形成された複数の連続した微細流路が、冷却装置30が配置された領域及び光入射領域70を繋ぐように延びている。
【0055】
よって、本実施形態によれば、微細流路の一部が、密封筐体4の内面に設けられた複数の溝22によって形成されるので、粒子と粒子の間の空隙によって形成された微細流路とともに、より多くの液状の冷媒を効果的に流動させることができる。
なお、
図4の下側に示す密封筐体4Gでも同様である。
【0056】
以上のように、波長変換で高温になった蛍光体粒子10の周囲の冷媒が気化し、気化した冷媒が冷却装置30の近傍へ流れ、冷却装置30による冷却で液化した冷媒は、流動部6の粒子と粒子の間の空隙によって形成された複数の微細流路、及び密封筐体4の内面に設けられた溝22からなる複数の微細流路によって、再び光入射領域70へ流動し、これにより冷却サイクルが形成される。このような冷媒の流動サイクルを、
図4(a)の密封筐体内に矢印で示す。実線の矢印が液化した冷媒の流れを示し、点線の矢印が気化した冷媒の流れを示す。以上のように、ポンプのような駆動源を用いることなく、冷媒による蛍光体粒子10の冷却サイクルを構成することができ、蛍光体粒子10の光変換効率の低下を効率的に防ぐことができる。
【0057】
(本発明のその他の実施形態(その4)に係る蛍光体ホイール及びこの蛍光体ホイールを備えた光源装置の説明)
次に、
図6を用いて、本発明のその他の実施形態(その4)に係る蛍光体ホイール50及びこの蛍光体ホイール50を備えた光源装置60の説明を行う。
図6は、本発明のその他の実施形態(その4)に係る蛍光体ホイール50及びこの蛍光体ホイール50を備えた光源装置60を模式的に示す断面図である。
【0058】
図6に示す本実施形態と、
図1及び
図2〜
図4に示す実施形態とを比較すると、
図1及び
図2〜
図4に示す実施形態では、回転基板における一方の側から他方の側に透過する透過型の光源装置60が示されているが、
図6に示す実施形態では、一方の側から入射し、同じ側に反射する反射型の光源装置60が示されている。
具体的な構成では、
図1に示す実施形態と比べて、密閉筐体4の面部の構成が異なり、その他の部分については同一である。よって、ここでは、
図1に示す実施形態と異なる点についてのみ説明を行い、
図1に示す実施形態と同一の部分についての説明は省略する。
【0059】
図1に示す密閉筐体4では、回転基板2からなる入射面、及び平面部材4aからなる出射面が共に透光性を有するが、
図6に示す実施形態では、回転基板2は透光性を有するが、平面部材4aは透光性を有さない点で異なる。例えば、回転基板2を透明なガラスまたは樹脂材料で形成し、平面部材4aを金属材料で形成することで実現できる。この場合には、密閉筐体4の一部に、熱電伝導率の高い金属材料を用いることができるので、蛍光体粒子10の冷却効率を高めることができる。特に、冷却装置30と接する領域を金属材料で形成できるので、気化した冷媒の冷却を強化することができる。ただし、これに限られるものではなく、平面部材4aを樹脂材料等で形成することもできる。
なお、透光性を有さない密閉筐体4の平面部材4aの内面は、光を反射する反射膜が設けられた反射面18になっている。
【0060】
図6に示す本実施形態に係る光源装置60では、光源52と、蛍光体ホイール50との間に光学部材54が設置されている。光学部材54は、光源52からの光と同じ波長域の光は透過するが、その他の波長域の光は反射するようになっており、ダイクロイックミラーの機能を果たしている。
つまり、光源52から出射された光は、光学部材54を透過して、蛍光体ホイール50へ入射し(右向きの白抜きの矢印参照)、蛍光体粒子10で波長変換される。さらに密閉筐体4の光源52から離れた側の反射面18で反射されて、再び蛍光体ホイール50から出射され(左向きの格子状の矢印参照)、光学部材54によって直交する方向へ反射される(上向きの格子状の矢印参照)。
【0061】
(本発明のその他の実施形態(その5)に係る蛍光体ホイール及びこの蛍光体ホイールを備えた光源装置の説明)
次に、
図7を用いて、本発明のその他の実施形態(その5)に係る蛍光体ホイール50及びこの蛍光体ホイールを備えた光源装置60の説明を行う。
図7は、本発明のその他の実施形態(その5)に係る蛍光体ホイール50及びこの蛍光体ホイールを備えた光源装置60を模式的に示す断面図である。
【0062】
図7に示す本実施形態と、
図1〜
図6に示す上記の各実施形態とを比較すると、上記の各実施形態では、密封筐体4の中に、液状の冷媒を流動可能な複数の微細流路を回転軸から外周に向かう方向のすべてに有する流動部6を備えているが、本実施形態では、微細流路を入射領域に有し、その他の領域には有しておらず、液化した冷媒が流動する流動部6及び気化した冷媒が流動する気体流動領域8が共に空間になっている点で異なる。つまり、蛍光体が光入射領域70を含む一部の領域のみに設けられている。
図7では、流動部6及び気体流動領域8が仕切り板26で仕切られているが、仕切り板26がない場合もあり得る。
【0063】
本実施形態に係る蛍光体ホイール50は、冷媒が封入された密封筐体4を備えた回転基板2と、気化された冷媒を冷却するための冷却装置30と、を備える。さらに、密封筐体4の回転基板2における外周側に、外部から光が入射する光入射領域70が配置され、密封筐体4の光入射領域よりも回転基板2の回転軸40aに近い側に、冷却装置30が配置され、光入射領域70に蛍光体粒子10を有する。つまり、ただし、本実施形態の蛍光体粒子10は、粒子間に微細流路を形成するための空隙を有する必要は無い。また本実施形態にかかる蛍光体ホイールは50は、回転基板2を回転させる駆動装置40を備えてもよい。
図7に示す実施形態では、透過型の蛍光体ホイールを示しているが、これに限られるものではなく、反射型の蛍光体ホイールの場合もあり得る。
【0064】
密封筐体4の光入射領域70及びその近傍領域において、光の入射で蛍光体粒子10の温度が上昇したとき、蛍光体粒子10の周囲の冷媒が気化し、その気化熱により、蛍光体粒子10を冷却することができる。そして、気化した冷媒は、密封筐体4内を冷却装置30が配置された光入射領域70よりも回転基板2の回転軸40aに近い位置に流れて、冷却装置30によって冷却されて液化(凝縮)する。このとき、蛍光体粒子10から奪った熱を密封筐体4の外部へ放出する。液化した冷媒は、回転する回転基板2の遠心力によって、再び蛍光体粒子10のいる光入射領域70に流動し、これにより冷却サイクルが形成される。このような冷媒の流動サイクルを、
図7の密封筐体内に矢印で示す。実線の矢印が液化した冷媒の流れを示し、点線の矢印が気化した冷媒の流れを示す。
【0065】
よって、ポンプのような駆動源を用いることなく、冷媒による蛍光体粒子の冷却サイクルを構成することができ、蛍光体の光変換効率の低下を効率的に防ぐことができる。
なお、気化した冷媒が、冷却装置30が配置された光入射領域よりも回転基板2の回転軸40aに近い位置に流れる場合、回転する回転基板2の遠心力は流れを妨げる方向にかかる。しかし、気体及び液体の体積比は非常に大きいので、気化する外周側及び液化(凝縮)する側(光入射領域よりも回転基板2の回転軸40aに近い側)の間の気圧差は大きく、気化した冷媒は、遠心力に抗して、外周側から光入射領域よりも前記回転基板2の回転軸40aに近い位置、つまり光入射領域70から冷却装置30の方へ流れる。この気化した冷媒が、遠心力に抗して流動する点に関しては、上記の
図1〜
図6に示す実施形態の場合においても同様である。
気化した冷媒が流動する領域は、本実施形態では空間となっているが、これに限られるものではなく、例えば、通気路の設けられた物体やポーラスな物質が存在する場合もあり得る。
【0066】
以上のように、本実施形態によれば、蛍光体粒子10の温度が上昇したとき、蛍光体粒子10近傍の冷媒が気化する。気化した冷媒が冷却装置30の方へ流れて、冷却装置30で冷却されて液化すると、回転する回転基板2の遠心力によって、液状の冷媒を再び温度が上昇した蛍光体粒子10の領域へ流動させることができる。このような冷却サイクルにより、ポンプ等を有する大がかりな冷却装置を用いることなく、蛍光体粒子を冷却して、蛍光体粒子の光変換効率の低下を効率的に防ぐことができる。
よって、本実施形態では、駆動源を有さずに蛍光体を効率的に冷却可能で稼働時におけるエネルギ消費が少ない蛍光体ホイール50を提供することができる。
本実施形態に係る光源装置60は、上記の実施形態に係る蛍光体ホイール50が奏する作用効果を全て得ることができ、駆動源を有さずに蛍光体を効率的に冷却可能で稼働時におけるエネルギ消費が少ない光源装置60を提供することができる。
【0067】
なお、
図1〜
図6に示す実施形態では、複数の微細流路を有する流動部6を備えているので、上記の遠心力だけでなく、毛細管力による流動力が加わっているので、より確実に液化した冷媒を、光入射領域よりも回転基板2の回転軸40aに近い位置の冷却装置30の位置から外周側の蛍光体粒子10のいる光入射領域70へ流動させることができる。また、微細流路によって、確実に液化した冷媒を蛍光体粒子10のいる光入射領域70へ導くことができる。
【0068】
(本発明のプロジェクタの説明)
次に、
図8を用いて、上述の実施形態で示した光源装置60を、いわゆる1チップ方式のDLPプロジェクタにおける光源装置として用いる場合を説明する。なお、
図8は、上述の実施形態で示した光源装置60を備えたプロジェクタ90の構成を示すための模式図であって、光源装置60やプロジェクタ90を上から見た模式的な平面図である。
【0069】
図8において、光源装置60のから出射された光は、光学系を介して、光空間変調器であるDMD(Digital Micromirror Device)素子(光変調手段)92に入射する。そして、DMD素子92で反射され、投射手段である投射レンズ94によって集光されて、スクリーン96に投影される。DMD素子92は、スクリーンに投影された画像の各画素に相当する微細なミラーをマトリックス状に配列したものであり、各ミラーの角度を変化させてスクリーンへ出射する光を、マイクロ秒単位でオン/オフすることができる。
また、各ミラーをオンにしている時間とオフにしている時間の比率によって、投射レンズへ入射する光の階調を変化させることにより、投影する画像の画像データに基づいた階調表示が可能になる。
【0070】
なお、本実施形態では、光変調手段としてDMD素子を用いているが、これに限られるものではなく、用途に応じて、その他任意の光変調素子を用いることができる。また、本発明に係る光源装置60及びこの光源装置60を用いたプロジェクタ90は、上述した実施形態に限られるものではなく、その他の様々な実施形態が本発明に含まれる。
【0071】
本発明の実施の形態、実施の態様を説明したが、開示内容は構成の細部において変化してもよく、実施の形態、実施の態様における要素の組合せや順序の変化等は請求された本発明の範囲および思想を逸脱することなく実現し得るものである。