【実施例】
【0054】
以下、本実施形態に係る顕微鏡対物レンズOLの4つの実施例について説明する。なお、各実施例に係る図面において付した符番は、各実施例において同じ符番を付しているものもあるが、これは符番の桁数の増大による説明の煩雑化を避けるためであり、各実施例において独立して用いているものである。すなわち、各実施例に係る図面において共通の符番を付していても、それらは必ずしも共通の構成要素とは限らない。
【0055】
以下に示す表中の[全体緒元]において、fは顕微鏡対物レンズOLのd線(波長λ=587.562nm)での焦点距離(mm)、N.A.は開口数、βは倍率を示している。また、d0(W.D.)は、作動距離(ワーキングディスタンス)であり、光透過平行平面板C(カバーガラス等)の厚さを除く、物体Oから最も物体O側にある正メニスカスレンズL1の最も物体O側のレンズ面の頂点までの光軸上の距離を示している。
【0056】
また、表中の[レンズデータ]において、面番号mは物体O側から数えた光学面の順番、rは各光学面の曲率半径、dは各光学面から次の光学面までの光軸上の距離(各光学面の面間隔)、ndおよびνdはそれぞれd線(波長λ=587.6nm)に対する屈折率およびアッベ数をそれぞれ示している。空気の屈折率1.00000は省略している。また、[レンズデータ]において、「*」はその面が回折光学面Dであることを示している。
【0057】
また、表中の[回折面データ]は、回折光学素子DOEの位相関数をΦ(h)として、光軸からの高さをh、波長をλ、2次の位相係数をC2、4次の位相差係数をC4、6次の位相差係数をC6、8次の位相差係数をC8としたとき、次の式で示される。なお、[回折面データ]において、「E−n」(nは整数)は、「×10
-n」を示している。例えば、-3.0092E-04=-3.0092×10
-4である。
【0058】
Φ(h)=2π/λ×(C2h
2+C4h
4+C6h
6+C8h
8) …(8)
【0059】
なお、本実施例で示されている曲率半径r、面間隔d、その他長さの単位は、特記のない場合には一般に「mm」が使われる。しかし、光学系は、比例拡大または比例縮小しても同等の光学性能が得られるため、単位は「mm」に限られるものではない。
【0060】
回折光学面Dは、互いに異なる2つの紫外線硬化樹脂により形成されており、以下の値の屈折率を有する樹脂を用いた。なお、樹脂屈折率は樹脂硬化後の屈折率を示している。
【0061】
(表1)(樹脂屈折率)
nC nd nF ng
低屈折率 1.52330 1.52780 1.53910 1.54910
高屈折率 1.55380 1.55710 1.56500 1.57130
【0062】
ここで、それぞれの樹脂に対して、nCはC線(波長λ=656.273nm)に対する屈折率であり、ndはd線(波長λ=587.562nm)に対する屈折率、nFはF線(波長λ=486.133nm)に対する屈折率、ngはg線(波長λ=435.835nm)に対する屈折率である。これらの樹脂を用いた密着複層型回折光学素子の製造方法は、例えば、欧州特許公開第1830204号公報、および、欧州特許公開第1830205号公報に記載されている。なおこれらの樹脂は、波長350nm付近の光線での内部透過率が0.5以上であることが望ましい。
【0063】
図2等には、それぞれの実施例における諸収差(球面収差、非点収差、歪曲収差およびコマ収差)の図を示している。球面収差図およびコマ収差図においては、実線はd線、点線はC線、一点鎖線はF線、破線はg線における収差をそれぞれ示している。また、球面収差図において、縦軸は入射瞳半径の最大値を1として規格化して示した値を示し、横軸は各光線における収差の値(mm)を示している。非点収差図においては、実線はサジタル像面、破線はメリディオナル像面をそれぞれ示している。また、非点収差図において、縦軸は像高(mm)を示し、横軸は収差の値(mm)を示している。歪曲収差図(ディストーション)において、縦軸は像高(mm)を示し、横軸は収差の割合を百分率(%値)で示している。ここで示す各実施例はいずれも、物体Oと顕微鏡対物レンズOL(第1レンズ群G1)との間に置かれる光透過平行平面板C(カバーガラス等)の厚さの基準を1mm、その屈折率ndを1.52216、アッベ数νdを58.8としているものである。
【0064】
また、以下の各実施例における顕微鏡対物レンズOL1〜OL4は、無限遠補正型のものであり、
図17に示す構成および表2に示す諸元を有する結像レンズILとともに使用される。なお、この表2において、第1欄のmは物体側から数えた光学面の順番、第2欄のrは各光学面の曲率半径、第3欄のdは各光学面から次の光学面までの光軸上の距離(面間隔)、第4欄のndおよび第5欄のνdはd線に対する屈折率およびアッベ数をそれぞれ示している。空気の屈折率1.00000は省略している。
【0065】
(表2)
m r d nd νd
1 75.043 5.10 1.62280 57.0
2 -75.043 2.00 1.74950 35.2
3 1600.580 7.50
4 50.256 5.10 1.66755 42.0
5 -84.541 1.80 1.61266 44.4
6 36.911
【0066】
なお、この結像レンズILは、物体側から順に並んで配設された、両凸レンズL21および両凹レンズL22を接合してなる第1接合レンズCL31と、両凸レンズL23および両凹レンズL24を接合してなる第2接合レンズCL32とから構成されている。
【0067】
(第1実施例)
第1実施例について、
図1〜
図4および表3〜表5を用いて説明する。上述の説明で用いた
図1は、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズOL1の構成を示している。顕微鏡対物レンズOL1は、光透過平行平面板C(カバーガラス等)の下に載置された物体O(標本)を観察するための対物レンズであって、物体O(光透過平行平面板C)側から順に並んで配設された、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2とを有して構成され、第1レンズ群G1内に回折光学素子DOEが配置されている。
【0068】
第1レンズ群G1は、物体O側から順に並んで配設された、物体O側に凹面を向けた正メニスカスレンズL1と、物体O側に凹面を向けた正メニスカスレンズL2と、回折光学面Dを有する平板形状の回折光学素子DOEと、両凸レンズL7および物体O側に凹面を向けた負メニスカスレンズL8を接合した接合正レンズCL11とから構成されている。
【0069】
第2レンズ群G2は、物体O側から順に並んで配設された、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズL9および物体O側に凸面を向けた平凸レンズL10を接合した接合正レンズCL21と、両凸レンズL11および像側に曲率の強い凹面を向けた両凹レンズL12を接合した接合負レンズCL22と、物体O側に曲率の強い凹面を向けた両凹レンズL13および両凸レンズL14を接合した接合負レンズCL23とから構成されている。
【0070】
(表3)
[全体諸元]
f = 10.23
N.A.= 0.6
d0 = 10.47
β = 20X
[レンズデータ]
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
m r d nd νd
1 -20.847 3.5 1.72916 54.7
2 -12.102 0.2
3 -122.112 3.4 1.64000 60.1
4 -21.374 2.3
5 0.000 1.4 1.51633 64.1
6 0.000 0.1 1.55710 49.7
7* 0.000 0.1 1.52780 33.4
8 0.000 1.4 1.51633 64.1
9 0.000 0.2
10 29.371 7.1 1.49782 82.6
11 -17.798 1.5 1.67300 38.2
12 -29.772 d12(可変)
13 35.464 1.0 1.73800 32.3
14 13.603 4.6 1.49782 82.6
15 0.000 0.2
16 10.646 5.7 1.49782 82.6
17 -48.100 4.0 1.67300 38.2
18 6.510 4.8
19 -7.380 4.2 1.64000 60.1
20 18.604 5.2 1.67300 38.2
21 -13.645
[回折面データ]
第7面
C2=-3.0092E-04
C4=-1.4667E-07
C6= 3.5429E-09
C8=-2.0543E-11
【0071】
このような諸元の顕微鏡対物レンズOL1において、光透過平行平面板C(カバーガラス等)の厚さが0.0mm、1.0mm、2.0mmの場合における、作動距離d0(ワーキングディスタンスW.D.)と、面間隔d12(表3において可変となっている面間隔であり、第12面から第13面までの光軸上の距離)と、物体Oから顕微鏡対物レンズOL1全体のレンズ最終面までの光軸上の距離TLとの値を表4に示している。すなわち、表4には、光透過平行平面板Cの厚さが変動した場合に、焦点距離および収差補正を行うように顕微鏡対物レンズOL1全体の移動および第1レンズ群G1に対する第2レンズ群G2の相対移動を行なった場合の各面間隔d0、d12を示している。さらに、この顕微鏡対物レンズOL1における前述の条件式(1)〜(7)の値(条件対応値)は表5に示すようになっている。
【0072】
(表4)
平行平板厚 d0(W.D.) d12 TL
0 10.47 0.2 61.5
1 9.75 1.1 61.7
2 9.02 2.1 62.0
【0073】
(表5)(条件式対応値)
(1) nd1 = 1.72916
(2) νd1 = 54.7
(3) d00/TL0 = 0.1702
(4) ((nd1+nd2)/2)×|fdoe/f| = 273.7
(5) |θmax| = 5.2
(6) |nd3−nd4| = 0.03300
(7) νdmax = 82.6
【0074】
表5から分かるように、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズOL1は、上記条件式(1)〜(7)を全て満たしている。また、
図2〜
図4の各収差図から分かるように、第1実施例に係る顕微鏡対物レンズOL1は、光透過平行平面板C(カバーガラス等)の厚さが0mm〜2mmのいずれの場合においても、C線〜g線の領域において諸収差が良好に補正されている。
【0075】
このように第1実施例に係る顕微鏡対物レンズOL1によれば、色収差をはじめとした諸収差が良好に補正されて優れた光学性能を有し、作動距離が十分に長く、カバーガラス等の厚さ変化(0mm〜2mm)に対応可能な対物レンズを得ることができる。
【0076】
(第2実施例)
第2実施例について、
図5〜
図8および表6〜表8を用いて説明する。
図5は、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズOL2を示している。顕微鏡対物レンズOL2は、光透過平行平面板C(カバーガラス等)の下に載置された物体O(標本)を観察するための対物レンズであって、物体O(光透過平行平面板C)側から順に並んで配設された、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2を有して構成され、第1レンズ群G1内に回折光学素子DOEが配置されている。
【0077】
第1レンズ群G1は、物体O側から順に並んで配設された、物体O側に凹面を向けた正メニスカスレンズL1と、物体O側に凹面を向けた正メニスカスレンズL2と、回折光学面Dを有する平板形状の回折光学素子DOEと、両凸レンズL7および物体O側に凹面を向けた負メニスカスレンズL8を接合した接合正レンズCL11とから構成されている。
【0078】
第2レンズ群G2は、物体O側から順に並んで配設された、両凸レンズL9および両凹レンズL10を接合した接合正レンズCL21と、像側に凹面を向けた正メニスカスレンズL11および像側に曲率の強い凹面を向けた負メニスカスレンズL12を接合した接合負レンズCL22と、物体O側に曲率の強い凹面を向けた両凹レンズL13および両凸レンズL14を接合した接合負レンズCL23とから構成されている。
【0079】
(表6)
[全体諸元]
f = 10.23
N.A. = 0.6
d0 = 10.67
β = 20X
[レンズデータ]
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
m r d nd νd
1 -18.590 3.0 1.72916 54.7
2 -11.890 0.2
3 -48.384 3.7 1.64000 60.1
4 -16.220 3.6
5 0.000 1.4 1.51633 64.1
6 0.000 0.1 1.55710 49.7
7* 0.000 0.1 1.52780 33.4
8 0.000 1.4 1.51633 64.1
9 0.000 0.2
10 31.851 7.2 1.49782 82.6
11 -17.217 1.5 1.67300 38.2
12 -26.746 d12(可変)
13 21.627 5.3 1.49782 82.6
14 -25.940 1.0 1.73800 32.3
15 32.526 1.0
16 9.356 4.9 1.49782 82.6
17 76.176 3.1 1.67300 38.2
18 6.032 6.6
19 -6.852 1.5 1.64000 60.1
20 21.683 5.0 1.67300 38.2
21 -10.611
[回折面データ]
第7面
C2=-3.2837E-04
C4= 3.3809E-07
C6= 1.4552E-09
C8=-1.2623E-11
【0080】
このような諸元の顕微鏡対物レンズOL2において、光透過平行平面板C(カバーガラス等)の厚さが0.0mm、1.0mm、2.0mmの場合における、作動距離d0(ワーキングディスタンスW.D.)と、面間隔d12(表6において可変となっている面間隔であり、第12面から第13面までの光軸上の距離)と、物体Oから顕微鏡対物レンズOL2全体のレンズ最終面までの光軸上の距離TLとの値を表7に示している。すなわち、表7には、光透過平行平面板Cの厚さが変動した場合に、焦点距離および収差補正を行うように顕微鏡対物レンズOL2全体の移動および第1レンズ群G1に対する第2レンズ群G2の相対移動を行なった場合の各面間隔d0、d12を示している。さらに、この顕微鏡対物レンズOL2における前述の条件式(1)〜(7)の値(条件対応値)は表8に示すようになっている。
【0081】
(表7)
平行平板厚 d0(W.D.) d12 TL
0 10.67 0.2 61.7
1 9.93 1.1 61.8
2 9.19 2.2 62.0
【0082】
(表8)(条件式対応値)
(1) nd1 = 1.72916
(2) νd1 = 54.7
(3) d00/TL0 = 0.1730
(4) ((nd1+nd2)/2)×|fdoe/f| = 250.6
(5) |θmax| = 5.1
(6) |nd3−nd4| = 0.03300
(7) νdmax = 82.6
【0083】
表8から分かるように、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズOL2は、上記条件式(1)〜(7)を全て満たしている。また、
図6〜
図8の各収差図から分かるように、第2実施例に係る顕微鏡対物レンズOL2は、光透過平行平面板C(カバーガラス等)の厚さが0mm〜2mmのいずれの場合においても、C線〜g線の領域において諸収差が良好に補正されている。
【0084】
このように第2実施例に係る顕微鏡対物レンズOL2によれば、色収差をはじめとした諸収差が良好に補正されて優れた光学性能を有し、作動距離が十分に長く、カバーガラス等の厚さ変化(0mm〜2mm)に対応可能な対物レンズを得ることができる。
【0085】
(第3実施例)
第3実施例について、
図9〜
図12および表9〜表11を用いて説明する。
図9は、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズOL3を示している。顕微鏡対物レンズOL3は、光透過平行平面板C(カバーガラス等)の下に載置された物体O(標本)を観察するための対物レンズであって、物体O(光透過平行平面板C)側から順に並んで配設された、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2とを有して構成され、第1レンズ群G1内に回折光学素子DOEが配置されている。
【0086】
第1レンズ群G1は、物体O側から順に並んで配設された、物体O側に凹面を向けた正メニスカスレンズL1と、物体O側に凹面を向けた正メニスカスレンズL2と、回折光学面Dを有する平板形状の回折光学素子DOEと、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズL7および両凸レンズL8を接合した接合正レンズCL11と、両凸レンズL9とから構成されている。
【0087】
第2レンズ群G2は、物体O側から順に並んで配設された、両凹レンズL10および両凸レンズL11を接合した接合負レンズCL21と、像側に平面を向けた平凸レンズL12および物体O側が平面で像側に曲率の強い凹面を向けた平凹レンズL13を接合した接合負レンズCL22と、物体O側に曲率の強い凹面を向けた両凹レンズL14および両凸レンズL15を接合した接合負レンズCL23とから構成されている。
【0088】
(表9)
[全体諸元]
f = 10.22
N.A. = 0.6
d0 = 9.77
β = 20X
(レンズデータ)
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
m r d nd νd
1 -22.635 3.2 1.72916 54.7
2 -13.399 0.2
3 -200.000 3.5 1.72916 54.7
4 -20.498 0.2
5 0.000 1.4 1.51633 64.1
6 0.000 0.1 1.55710 49.7
7* 0.000 0.1 1.52780 33.4
8 0.000 1.4 1.51633 64.1
9 0.000 0.2
10 46.706 1.0 1.67300 38.2
11 17.146 6.1 1.49782 82.6
12 -38.701 0.2
13 28.341 4.6 1.59240 68.3
14 -41.620 d14(可変)
15 -30.000 1.0 1.67300 38.2
16 24.232 5.0 1.49782 82.6
17 -25.653 0.2
18 10.736 5.5 1.49782 82.6
19 0.000 2.3 1.67300 38.2
20 6.019 4.1
21 -7.521 6.5 1.61340 44.3
22 23.233 5.4 1.73800 32.3
23 -18.750
[回折面データ]
第7面
C2=-3.0972E-04
C4= 6.4786E-09
C6= 6.1382E-09
C8=-3.6132E-11
【0089】
このような諸元の顕微鏡対物レンズOL3において、光透過平行平面板C(カバーガラス等)の厚さが0.0mm、1.0mm、2.0mmの場合における、作動距離d0(ワーキングディスタンスW.D.)と、面間隔d14(表9において可変となっている面間隔であり、第14面から第15面までの光軸上の距離)と、物体Oから顕微鏡対物レンズOL3全体のレンズ最終面までの光軸上の距離TLとの値を表10に示している。すなわち、表10には、光透過平行平面板Cの厚さが変動した場合に、焦点距離および収差補正を行うように顕微鏡対物レンズOL3全体の移動および第1レンズ群G1に対する第2レンズ群G2の相対移動を行なった場合の各面間隔d0、d14を示している。さらに、この顕微鏡対物レンズOL3における前述の条件式(1)〜(7)の値(条件対応値)は表11に示すようになっている。
【0090】
(表10)
平行平板厚 d0(W.D.) d14 TL
0 9.77 0.4 62.4
1 9.00 0.8 62.0
2 8.23 1.2 61.6
【0091】
(表11)(条件式対応値)
(1) nd1 = 1.72916
(2) νd1 = 54.7
(3) d00/TL0 = 0.1565
(4) ((nd1+nd2)/2)×|fdoe/f| = 273.1
(5) |θmax| = 5.1
(6) |nd3−nd4| = 0.12460
(7) νdmax = 82.6
【0092】
表11から分かるように、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズOL3は、上記条件式(1)〜(7)を全て満たしている。また、
図10〜
図12の各収差図から分かるように、第3実施例に係る顕微鏡対物レンズOL3は、光透過平行平面板C(カバーガラス等)の厚さが0mm〜2mmのいずれの場合においても、C線〜g線の領域において諸収差が良好に補正されている。
【0093】
このように第3実施例に係る顕微鏡対物レンズOL3によれば、色収差をはじめとした諸収差が良好に補正されて優れた光学性能を有し、作動距離が十分に長く、カバーガラス等の厚さ変化(0mm〜2mm)に対応可能な対物レンズを得ることができる。また、顕微鏡対物レンズOL3では、第1レンズ群G1において正単レンズL9を追加して構成されているため、顕微鏡対物レンズOL3を構成する正レンズのパワーを分担させることができる。そのため、球面収差をより良好に補正することができ、開口数を大きくすることができる。
【0094】
(第4実施例)
第4実施例について、
図13〜
図16および表12〜表14を用いて説明する。
図13は、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズOL4を示している。顕微鏡対物レンズOL4は、光透過平行平面板Cの下に載置された物体O(標本)を観察するための対物レンズであって、物体O(光透過平行平面板C)側から順に並んで配設された、正の屈折力を有する第1レンズ群G1と、負の屈折力を有する第2レンズ群G2とを有して構成され、第1レンズ群G1内に回折光学素子DOEが配置されている。
【0095】
第1レンズ群G1は、物体O(光透過平行平面板C)側から順に並んで配設された、物体O側に凹面を向けた正メニスカスレンズL1と、物体O側に凹面を向けた正メニスカスレンズL2と、回折光学面Dを有する平板形状の回折光学素子DOEと、像側に凹面を向けた負メニスカスレンズL7および両凸レンズL8を接合した接合正レンズCL11と、両凸レンズL9とから構成されている。
【0096】
第2レンズ群G2は、物体O側から順に並んで配設された、両凹レンズL10および両凸レンズL11を接合した接合負レンズCL21と、像側が平面の平凸レンズL12および物体O側が平面で像側に曲率の強い凹面を向けた平凹レンズL13を接合した接合負レンズCL22と、物体O側に曲率の強い凹面を向けた両凹レンズL14および両凸レンズL15を接合した接合負レンズCL23とから構成されている。
【0097】
(表12)
[全体諸元]
f = 10.20
N.A. = 0.7
d0 = 7.73
β = 20X
[レンズデータ]
面番号 曲率半径 面間隔 屈折率 アッベ数
m r d nd νd
1 -17.092 3.2 1.72916 54.7
2 -11.137 0.2
3 -100.000 3.7 1.72916 54.7
4 -18.366 0.2
5 0.000 1.4 1.51633 64.1
6 0.000 0.1 1.55710 49.7
7* 0.000 0.1 1.52780 33.4
8 0.000 1.4 1.51633 64.1
9 0.000 0.2
10 181.144 1.0 1.67300 38.2
11 20.601 7.7 1.49782 82.6
12 -23.081 0.2
13 31.770 5.4 1.59240 68.4
14 -37.432 d14(可変)
15 -30.000 1.0 1.67300 38.2
16 34.642 5.2 1.49782 82.6
17 -29.363 0.2
18 11.510 5.6 1.49782 82.6
19 0.000 2.6 1.67300 38.2
20 6.940 5.2
21 -8.250 4.6 1.61340 44.3
22 26.357 4.9 1.73800 32.3
23 -17.294
[回折面データ]
第7面
C2=-3.2148E-04
C4=-3.1555E-07
C6= 9.7481E-09
C8=-5.5669E-11
【0098】
このような諸元の顕微鏡対物レンズOL4において、光透過平行平面板C(カバーガラス等)の厚さが0.0mm、1.0mm、2.0mmの場合における、作動距離d0(ワーキングディスタンスW.D.)と、面間隔d14(表12において可変となっている面間隔であり、第14面から第15面までの光軸上の距離)と、物体Oから顕微鏡対物レンズOL4全体のレンズ最終面までの光軸上の距離TLとの値を表13に示している。すなわち、表13には、光透過平行平面板Cの厚さが変動した場合に、焦点距離および収差補正を行うように顕微鏡対物レンズOL4全体の移動および第1レンズ群G1に対する第2レンズ群G2の相対移動を行なった場合の各面間隔d0、d14を示している。さらに、この顕微鏡対物レンズOL4における前述の条件式(1)〜(7)の値(条件対応値)は表14に示すようになっている。
【0099】
(表13)
平行平板厚 d0(W.D.) d14 TL
0 7.73 0.4 62.2
1 6.96 0.9 62.0
2 6.17 1.6 61.8
【0100】
(表14)(条件式対応値)
(1) nd1 = 1.72916
(2) νd1 = 54.7
(3) d00/TL0 = 0.1243
(4) ((nd1+nd2)/2)×|fdoe/f| = 263.6
(5) |θmax| = 7.6
(6) |nd3−nd4| = 0.12460
(7) νdmax = 82.6
【0101】
表14から分かるように、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズOL4は、上記条件式(1)〜(7)を全て満たしている。また、
図14〜
図16の各収差図から分かるように、第4実施例に係る顕微鏡対物レンズOL4は、光透過平行平面板C(カバーガラス等)の厚さが0mm〜2mmのいずれの場合においても、C線〜g線の領域において諸収差が良好に補正されている。
【0102】
このように第4実施例に係る顕微鏡対物レンズOL4によれば、色収差をはじめとした諸収差が良好に補正されて優れた光学性能を有し、作動距離が十分に長く、カバーガラス等の厚さ変化(0mm〜2mm)に対応可能な対物レンズを得ることができる。また、顕微鏡対物レンズOL4では、第1レンズ群G1において正単レンズL9を追加して構成されているため、顕微鏡対物レンズOL4を構成する正レンズのパワーを分担させることができる。そのため、球面収差をより良好に補正することができ、開口数を大きくすることができる。
【0103】
これまで本実施形態に係る実施例について説明してきたが、本発明の範囲は上述の実施例に示したものに限定されない。例えば、上述の実施例では、第1レンズ群G1を構成する正メニスカスレンズL1の像側に隣接した正レンズL2が、物体O側に凹面を向けた正メニスカスレンズにより構成されているが、これに限定されるものではなく、物体O側が平面の平凸レンズや両凸レンズ等の正レンズにより構成されていればよい。