(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
当該ホットメルト接着剤の軟化点が60〜150℃で、当該ホットメルト接着剤の、JIS K6253に規定されるショア硬度Aが、23℃において50〜99である、請求項1〜6のいずれか一項記載のホットメルト接着剤。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0017】
本実施形態のホットメルト接着剤は、接着剤組成物の成形物の表面に付着し、主親水基が陰イオン型であるアニオン性界面活性剤を含む被覆材を有する。接着剤組成物の成形物は、ホットメルト接着剤の主成分であり、エチレン−酢酸ビニル共重合体、粘着付与樹脂、及びワックスを含む。被覆材は更にポリエチレンワックスを含む。
【0018】
図1は、ホットメルト接着剤の一実施形態を示す断面図である。
図1に示すホットメルト接着剤1は、ホットメルト接着剤の主成分である接着剤組成物の成形物10と、成形物10の表面に付着している被覆材20とを有する。被覆材20は、成形物10の表面の全面を被覆する必要は必ずしもなく、成形物10の表面の一部が露出していることもあり得る。
図1にはホットメルト接着剤の1個の成形物が示されるが、実際に使用されるホットメルト接着剤は、複数の成形物の集合体であってもよい。
【0019】
図1に示される成形物10は球状の粒状体である。ただし、成形物は、何らかの形状を有する接着剤組成物であればよく、定形又は不定形の粒状体(ペレット)であってもよいし、角板状、棒状等の任意の形状であってもよい。成形物10が粒状体であるとき、その長軸径(球状体の場合は直径)は、3〜30mmであってもよい。成形物の長軸径が3mmより小さいと、球状の成形物を得ることが困難になり、ホットメルト接着剤の製造に時間がかかる傾向がある。成形物10の長軸径が30mmより大きいと、アニオン性界面活性剤及びポリエチレンワックスによって成形物を均一に被覆することが困難となる傾向がある。さらに、ホースを用いたホットメルトアプリケータでのホットメルト接着剤の搬送が困難となる可能性がある。ブロッキング抑制等の観点から、成形物は、球状であってもよい。ただし、「球状」とは、真球状に限られず、アスペクト比(長軸径/短軸径)が1〜3の範囲にある略球状の形状も含む。球状の成形物の表面に微小な凹凸が形成されていてもよい。
【0020】
ホットメルト接着剤1(又は接着剤組成物)のJIS K6253に規定される23℃でのショア硬度Aは、50〜99であってもよい。このショア硬度Aは、60〜95、又は70〜90であってもよい。ショア硬度Aが50より小さいと、硬度が低すぎ、ホットメルト接着剤が柔らかくなるため、ブロッキング抑制の効果が小さくなる傾向がある。ショア硬度Aが99より大きいと、硬度が高すぎて、接着性が相対的に低下する傾向がある。
【0021】
ホットメルト接着剤1(又は接着剤組成物)の環球法による軟化点は、60〜150℃であってもよい。軟化点が60℃より低いと、夏場のような40℃近くなる環境では、一部溶融が始まり、タックが生じるため、ブロッキング抑制の効果が小さくなる可能性がある。軟化点が150℃より高いと、ホットメルト接着剤の溶融に時間がかかり、省電力化が困難となる傾向がある。
【0022】
接着剤組成物に使用されるエチレン−酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル(VA)含有率は、エチレン−酢酸ビニル共重合体の質量を基準として、10〜50質量%であってもよい。エチレン−酢酸ビニル共重合体のメルトフローレート(MFR)は、200〜3000g/10分であってもよい。エチレン−酢酸ビニル共重合体の環球法軟化温度は、60〜120℃であってもよい。
【0023】
エチレン−酢酸ビニル共重合体のVA(酢酸ビニル)含有率が15〜35質量%であってもよいし、環球法軟化温度が75〜95℃であってもよい。1種のエチレン−酢酸ビニル(EVA)共重合体が単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0024】
通常、メルトフローレート(MFR)は、JIS K7210に準拠して190℃、荷重21.18Nの条件下にて測定された値をいう。環球法軟化温度は、JIS K6863(又はJIS K2207)に準拠して測定された値をいう。
【0025】
エチレン−酢酸ビニル共重合体の市販品としては、例えば、ウルトラセン684(VA含有率20質量%、メルトフローレート(MFR)=2000、環球法軟化温度80℃、東ソー株式会社製の商品名、「ウルトラセン」は登録商標)、ウルトラセン722(VA含有率28質量%、メルトフローレート(MFR)=400、環球法軟化温度82℃、東ソー株式会社製の商品名、「ウルトラセン」は登録商標)、ウルトラセン735(VA含有率28質量%、メルトフローレート(MFR)=1000、環球法軟化温度85℃、東ソー株式会社製の商品名、「ウルトラセン」は登録商標)が挙げられる。
【0026】
接着剤組成物におけるエチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量は、接着剤組成物(成形物10)の質量を基準として、30〜60質量%、30〜45質量%、又は33〜40質量%であってもよい。エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量が30質量%未満の場合は、低温での接着性が低下する可能性がある。エチレン−酢酸ビニル共重合体の含有量が60質量%を超えると、粘度上昇、耐クリープ性の相対的な低下などが発生する可能性がある。
【0027】
接着剤組成物に使用される粘着付与樹脂としては、特に限定されないが、例えば、脂肪族炭化水素樹脂、脂環族炭化水素樹脂、芳香族炭化水素樹脂、スチレン系樹脂、ポリテルペン系樹脂、及びロジン系樹脂などの石油樹脂、並びにこれらの変性物が挙げられる。これらを1種または2種以上組み合わせて使用することができる。石油樹脂の変性物としては、特に限定しないが、例えば、水素添加、不均化、2量化、エステル化などの変性手段を施したものが挙げられる。水添(水素添加)石油樹脂が特に好ましい。
【0028】
脂肪族炭化水素樹脂としては、特に限定されず、例えば、1−ブテン、イソブチレン、ブタジエン、ペンテン、イソプレン、ピペリジン、1,3−ペンタジエンなどのC4〜C5のモノまたはジオレフィンを主成分として含む重合体が挙げられる。
【0029】
脂環族炭化水素樹脂としては、特に限定されず、例えば、C4〜C5留分中の非環式ジエン成分を環化2量体化させ、この2量体モノマーを重合させて生成する樹脂、シクロペンタジエンなどの環化モノマーを重合させて生成する樹脂、芳香族炭化水素樹脂に水素添加して生成する樹脂が挙げられる。
【0030】
芳香族炭化水素樹脂としては、特に限定されず、例えば、ビニルトルエン、インデン、α−メチルスチレン、シクロペンタジエンなどのC9〜C10のビニル芳香族炭化水素を主成分として含む樹脂が挙げられる。
【0031】
スチレン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン、イソプロペニルトルエンの重合体が挙げられる。
【0032】
ポリテルペン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、α−ピネン重合体、β−ピネン重合体、ジペンテン重合体、テルペン−フェノール重合体、α−ピネン−フェノール重合体が挙げられる。
【0033】
ロジン系樹脂としては、特に限定されず、例えば、ガムロジン、ウッドロジン、トール油などのロジンが挙げられる。
【0034】
粘着付与樹脂としては、前記したように、水添石油樹脂が好ましく、ジシクロペンタジエン(DCPD)・芳香族共重合系の水添石油樹脂、水添C9石油樹脂、及び水添C5石油樹脂がより好ましい。ジシクロペンタジエン(DCPD)・芳香族共重合系の水添石油樹脂とは、一般的に、シクロペンタジエン化合物又はその誘導体と芳香族化合物とを共重合し、得られる共重合体に水素添加して得られる、水素添加石油樹脂である。
【0035】
例えば、イーストタックC115W(水添C5石油樹脂、イーストマンケミカル社製の商品名)、アルコンM100、アルコンP115、アルコンSM−10(水添C9石油樹脂、荒川化学工業株式会社製の商品名、「アルコン」は登録商標)、アイマーブP100、アイマーブP125、アイマーブP140、アイマーブS100、アイマーブS110(ジシクロペンタジエン(DCPD)・芳香族共重合系の水添石油樹脂、出光興産株式会社製の商品名、「アイマーブ」は登録商標)等市販の樹脂が粘着付与樹脂として使用できる。
【0036】
接着剤組成物(成形物10)における粘着付与樹脂の含有量は、接着剤組成物の質量を基準として、25〜70質量%、30〜60質量%、又は40〜50質量%であってもよい。粘着付与樹脂の含有量が25質量%未満の場合は、耐熱性又は接着性の低下が発生する傾向がある。粘着付与樹脂の含有量が70質量%を超えると、粘度低下による作業性の低下、低温での接着性の低下などが発生する傾向がある。
【0037】
接着剤組成物(成形物10)に使用されるワックスとしては、一般的に、ホットメルト接着剤に使用されるものであれば、特に限定されないが、例えば、精製パラフィンワックス、パラフィンワックス、及びマイクロクリスタリンワックスなどの石油系ワックス、並びに、ポリエチレンワックス、フィッシャートロフィックワックス、結晶性ポリエチレンワックス、結晶性ポリプロピレンワックス、アタクチックポリプロピレンワックス、及びエチレン・一酸化炭素共重合体ワックスなどの合成ワックスが挙げられる。これらの中でも特に、ポリエチレンワックス、フィッシャートロフィックワックスが好適である。これらワックス成分は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0038】
接着剤組成物(成形物10)におけるワックスの含有量は、接着剤組成物の質量を基準として、5〜30質量%、又は10〜20質量%であってもよい。ワックスの含有量が5質量%未満の場合は、粘度上昇又は固化性能の低下などが発生する傾向がある。ワックスの含有量が30質量%を超えると、相対的な接着性の低下などが発生する傾向がある。
【0039】
好ましいワックスとしては、例えば、サゾールH1(サゾール社製、フィッシャートロフィックワックス、「SaSOL(サゾール)」は登録商標)、CPW90F(千葉ファインケミカル株式会社製、ポリエチレンワックス)等の市販のものが挙げられる。
【0040】
接着剤組成物(成形物10)は、オレフィン樹脂を含んでいてもよい。接着剤組成物で使用されるオレフィン樹脂は、一般的に、エチレン(エチレン系樹脂)と炭素数3〜20のα−オレフィン(α−オレフィン系樹脂)との共重合体(オレフィン系共重合体、又はα−オレフィン共重合体樹脂ともいう)である。接着剤組成物は、少なくとも1種のオレフィン系共重合体を含んでいてもよい。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、例えば、プロピレン、イソブチレン、ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテン及び1−オクテンが挙げられる。上記オレフィン系共重合体のなかでも、エチレンと炭素数4〜8のα−オレフィンとの共重合体が好ましい。オレフィン樹脂としては、エチレンとブテンとの共重体、または、エチレンとプロピレンとの共重体がより好ましい。これらのα−オレフィン共重体は、単独で用いられてもよいし、2種類以上が併用されてもよい。
【0041】
好ましいオレフィン樹脂としては、例えば、RT2115(REXTAC,LLC社製、α−オレフィン共重体樹脂)、RT2304(REXTAC,LLC社製の商品名、α−オレフィン共重体樹脂)、アフェニティーGA1900(ダウケミカル株式会社製、「アフェニティー」は登録商標、ポリオレフィン樹脂)、タフマーP0480(三井化学株式会社製、エチレン・プロピレン共重合体、「タフマー」は登録商標)、タフマーA4070S(エチレン・ブテン共重合体、三井化学株式会社製、α−オレフィン共重体樹脂、「タフマー」は登録商標)等、市販のものが挙げられる。
【0042】
接着剤成物(成形物10)におけるオレフィン樹脂の含有量は、接着剤組成物の質量を基準として、0.3〜10質量%、0.5〜4質量%、又は1〜3質量%であってもよい。オレフィン樹脂の含有量が0.3質量%未満の場合、接着性向上又は糸引き抑制の効果が低下する傾向がある。オレフィン樹脂の含有量が10質量%を超えると、相溶性の低下又は熱安定性の低下などが発生する可能性がある。
【0043】
被覆材20に使用するポリエチレンワックスの、示差走査熱量測定(DSC)によって決定される融点は、80〜135℃であってもよい。被覆材20(離型剤)として使用されるポリエチレンワックスのDSCによる融点が80℃未満の場合は、日本を含むアジア圏での高温環境下でブロッキング抑制の効果が減少する可能性、及び接着剤の耐熱性が低下する可能性がある。一方、135℃を超える融点を有するポリエチレンワックスは、入手が困難である。DSCによる融点の測定は、窒素雰囲気下、昇温速度2℃/分で行われる。測定装置としては、例えばDSC6220(SII製)を用いることができる。
【0044】
ポリエチレンワックスは、エマルジョンワックスとして被覆材に配合されてもよい。エマルジョンの状態のポリエチレンワックスは、接着剤組成物の成形物10の表面への付着が特に容易である。
【0045】
被覆材に使用される界面活性剤は、ポリエチレンワックスの親和性を高めるために使用される。ポリエチレンワックス単独では、高温多湿環境での耐ブロッキング性を得るためには、高濃度で塗布する必要があり、塗布後、乾燥する際に多大な時間がかかる。また、界面活性剤単独では、高温多湿環境での十分な耐ブロッキング性が得られないことが多い。
【0046】
被覆材20のアニオン性界面活性剤は、主親水基としてスルホン酸基を有していてもよい。アニオン性界面活性剤は、一般的に、洗剤、シャンプー、ハンドクリーム、歯磨き粉等の基剤、乳化剤、分散剤、起泡剤等として広く用いられる。例えば主親水基が陰イオン型である界面活性剤としては、カルボキシルメチルセルロースナトリウム、アルキル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、スルホコハク酸モノエステル塩、スルホコハク酸ジアルキル塩、アシルサルコシン塩、カリウム石鹸、ラウリルエーテルカルボン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、リン酸モノエステル、リン酸ジエステルが挙げられる。接着剤組成物(成形物10)の表面を被覆しやすいという点で、スルホン酸基を有するアニオン性界面活性剤が望ましく、中でもアルキルベンゼンスルホン酸塩が好ましい。これらのアニオン性界面活性剤は、1種類または2種類以上を組み合わせて使用することができる。
【0047】
アニオン性界面活性剤の付着量は、小片化した接着剤組成物(接着剤組成物の成形物10)の表面積に対し、0.001〜0.5g/m
2、又は0.01〜0.06g/m
2であってもよい。この付着量(被覆量)が0.001g/m
2未満であると、ブロッキング抑制の効果が減少する傾向があり、付着量が0.5g/m
2を超えるとホットメルト接着剤の接着力が相対的に低下する傾向がある。
【0048】
アニオン性界面活性剤を含む被覆材を接着剤組成物の成形物に付着させる方法としては、小片化したホットメルト接着剤に、被覆漏れがないように、好ましくは被覆厚みを均一にできる方法であれば、特に限定されるものではない。例えば、溶融した接着剤組成物を冷却する際に使用する水槽に、ポリエチレンワックス5〜30質量%と、アニオン性界面活性剤0.3〜3質量%とを含む水溶液を入れ、その水溶液中にホットメルト接着剤を浸漬する方法により、被覆材を成形物の表面に付着させてもよい。または、溶融した接着剤組成物を裁断して小片化し、その後、前記の水溶液を小片化したホットメルト接着剤に噴霧する方法により、成形物の表面を被覆材によって被覆してもよい。あるいは、接着剤組成物のビーズ状の成形物に、前記の水溶液を噴霧して、接着剤組成物の成形物の表面を被覆材により被覆してもよい。
【0049】
接着剤組成物は、さらに酸化防止剤を含んでいてもよい。使用される酸化防止剤としては、特に限定しないが、フェノール系、有機イオウ系、ヒンダードフェノール系、ヒンダードアミン系、有機リン系ヒンダートフェノール系、アミン系等が挙げられる。例えば、フェノール系酸化防止剤としてペンタエリトリイルテトラキス−3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(SONGNOX1010、SONGWON IND.製の商品名)及びn−オクタデシル−3−(3,5−ジ−ターシャリーブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(SONGNOX1076、SONGWON IND.製商品名)と、リン系酸化防止剤としてトリス(2,4−ジ−ターシャリーブチルフェニル)ホスファイト(SONGNOX1680、SONGWON IND.製の商品名)等が挙げられる。また、これらを1種または2種以上組み合わせて使用することができる。
【0050】
接着剤組成物(成形物10)における酸化防止剤の含有量は、接着剤組成物の質量を基準として0.1〜2質量%、又は0.2〜1質量%であってもよい。酸化防止剤の含有量が0.1〜2質量%の範囲内にあることにより、熱安定性等がより一層向上する。
【0051】
接着剤組成物は、必要に応じて、高級脂肪酸、高級脂肪酸金属塩等の離型剤、カップリング剤、シリコーンオイル及びシリコーンゴム粉末等の応力緩和剤、カーボンブラック等の顔料または染料、紫外線吸収剤、主成分の表面に被覆するアニオン性界面活性剤以外の界面活性剤、ノンハロゲン、ノンアンチモンの難燃剤等を適量含んでもよい。
【0052】
接着剤組成物は、難燃性をさらに高める目的で、リン及び窒素等を含む難燃剤を含んでもよい。
【0053】
接着剤組成物は、各種原材料を均一に分散混合できるのであれば、いかなる手法を用いても調製できる。一般的な手法として、所定の配合量の原材料をミキサー等によって十分混合した後、ミキシングロール、押出機、らいかい機、プラネタリミキサ等によって混合または溶融混練し、必要に応じて脱泡する方法等を挙げることができる。
【0054】
ホットメルト接着剤の主成分としての接着剤組成物の成形物10の表面を被覆する被覆材20において、ポリエチレンワックスと界面活性剤の混合割合は、特に限定されず、任意である。ポリエチレンワックスの含有量と比較し、界面活性剤の含有割合が少なくてもよい。ポリエチレンワックスの含有量は、被覆材20の質量を基準として、1〜99質量%、又は70〜99質量%であってもよい。界面活性剤の含有量は、被覆材20の質量を基準として、1〜99質量%、又は1〜30質量%であってもよい。
【0055】
接着剤組成物の成形物を得る方法は、特に限定されない。例えば、溶融後、固化した接着剤組成物をカッターにより裁断する方法が採用できる。この場合、回転刃等、連続的に裁断できるカッターを用いることができる。接着剤組成物がカッターに付着してしまうのを防止するため、カッター付近にアニオン性界面活性剤水溶液を噴霧するか、または接着剤組成物を水溶液中で裁断してもよい。
【実施例】
【0056】
次に本発明を実施例および比較例を用いて具体的に説明する。ただし、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0057】
実施例1〜6、比較例1〜4
表1に示した配合に従って、ホットメルト接着剤を調製した。表1中の配合単位は、質量%である。
検討に用いたエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)は、ウルトラセン722(東ソー株式会社製の商品名、酢酸ビニル(VA)含有率28質量%、メルトフローレート(MFR)=400、環球法軟化点82℃)と、ウルトラセン735(東ソー株式会社製の商品名、VA含有率28質量%、メルトフローレート(MFR)=1000、環球法軟化点85℃)の2種類である。
オレフィン樹脂として、タフマーP0480(三井化学株式会社製の商品名、エチレン・プロピレン系α−オレフィン共重体樹脂)を用いた。
粘着付与樹脂として、石油樹脂のアルコンP100(荒川化学工業株式会社製の商品名、水添C9石油樹脂、軟化点100℃)とアルコンP125(荒川化学工業株式会社製の商品名、水添C9石油樹脂、軟化点125℃)の2種を用いた。
ワックスとして、サゾールH1(サゾール社製の商品名、フィッシャートロピックスワックス)を用いた。
ポリエチレンワックスとして、AQACER1547(ビックケミージャパン株式会社製の商品名、酸化高密度ポリエチレンワックスエマルジョン、融点125℃、不揮発分35%)と、HORDMERPE03(ビックケミージャパン株式会社製の商品名、ポリエチレンワックスエマルジョン、融点95℃、不揮発分40%)と、AQUAMAT208(ビックケミージャパン3式会社製の商品名、酸化高密度ポリエチレンワックスエマルジョン、融点135℃、不揮発分35%)の3種を用いた。ポリプロプレンワックスとして、CERAFLOUR970(ビックケミージャパン株式会社製の商品名、ポリプロピレンワックス、融点160℃)を用いた。ポリエチレンワックス及びポリプロピレンワックスの融点は、SII製のDSC6220を用い、窒素雰囲気下、昇温速度2℃/分の条件で測定した。
界面活性剤として、モノゲンY100(第一工業製薬株式会社の商品名、高級アルコール硫酸エステルナトリウム(ラウリル硫酸ナトリウム)、アニオン性界面活性剤)と、コータミン24P(花王株式会社の商品名、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、カチオン性界面活性剤)を用いた。
【0058】
エチレン−酢酸ビニル共重合体、オレフィン樹脂、粘着付与樹脂及びワックスを180℃に設定した加熱ニーダーに投入し、十分に溶融させた。溶融した混合物を、均一になるまで混練し、その後成形して、ビーズ状の(ホットメルト)接着剤組成物の成形物を得た。接着剤組成物の成形物に、ポリエチレンワックスまたはポリプロピレンワックスを12質量%の濃度で、界面活性剤を3質量%の濃度で含む水溶液を、スプレーを用いて塗布した。次いで40℃の温風を当てて塗布された水溶液を乾燥させ、被覆材が付着しているホットメルト接着剤を得た。
【0059】
【表1】
【0060】
得られたホットメルト接着剤について、粘度、軟化点、耐ブロッキング性、はく離接着強さ、耐クリープ性、熱安定性を下記に示す方法により評価した。結果を表2に示した。
【0061】
粘度
JIS K6862に準拠し、各ホットメルト接着剤の180℃での粘度を、BH型回転粘度計にて2号ロータを用いて回転速度10rpmにて測定した。
【0062】
軟化点
JIS K6863に準拠し、環球法にて、各ホットメルト接着剤の軟化点を測定した。
【0063】
耐ブロッキング性
スプレーによる方法に代えて、被覆材を含む水溶液に接着剤組成物の成形物を浸漬させる方法により、被覆材を成形物に付着させた。その後、接着剤組成物の成形物をメッシュ(80メッシュ:目開き180μm)でろ過してから、40℃で30分間乾燥させた。被覆材が付着した接着剤組成物の成形物(ホットメルト接着剤)をカップに入れ、58.8N(6kgf)の荷重をかけながら、40℃、90%RHの高温多湿環境下に12時間以上放置した。
その後、カップを逆さまにして、落下したホットメルト接着剤の質量を測定した。次式より、耐ブロッキング性を評価した。数字が大きいほど、耐ブロッキング性が高いことを示す。
耐ブロッキング性[%] = {落下したホットメルト接着剤の質量/ホットメルト接着剤の全質量}×100
【0064】
はく離接着強さ
180℃に加熱して溶融したホットメルト接着剤を、カートン紙の表面に約0.07g/25mmのビード状に塗布し、オープンタイム約2秒でカートン紙の裏面を貼り合せ、約2秒間圧着して、カートン紙がホットメルト接着剤によって接着された試験片を作製した。この試験片を用いて、オートグラフによって180°はく離試験を測定した(引張速度:100mm/分、試料温度:23℃)。測定後の試験片の接着剤を目視観察し、破壊状況を確認した。記号Aは被着体(カートン紙)と接着剤界面での破壊、記号Bはカートン紙の破壊(材質破壊)を示す。
【0065】
耐クリープ性
カートン紙(2×25×100mm)に、180℃に加熱して溶融したホットメルト接着剤を、直径4mmのビード状でカートン紙の幅方向に25mmの長さにわたって塗布した。2秒間放置した後、塗布された接着剤にもう一方の段ボールを重ね合わせ、9.8×10
4Paで5秒の条件で圧締した。貼り合わせ後、室温(25℃)に1日放置してから、50℃の雰囲気中で0.5N(50gf)/25mmの荷重を加え、段ボールが落下するまでの時間(hr)を耐クリープ性の指標として測定した。
【0066】
熱安定性
ホットメルト接着剤を250mlのサンプル瓶に150g取り、加熱しながら180℃で336時間放置した。放置後の状態の変化を観察して、以下の判断基準に従って、ホットメルト接着剤の熱安定性を評価した。
「A」:状態の変化なし
「B」:わずかに分離がみられるが、実用上許容される範囲である
「C」:ゲル化物、炭化物などの発生あり
【0067】
【表2】
【0068】
表2に示したように、被覆材中に界面活性剤を含まない比較例1及び、被覆材中にポリエチレンワックスを含まない比較例2のホットメルト接着剤は、耐ブロッキング性の点で劣っていた。
比較例3で用いた、160℃の融点を有するポリプロピレンワックスは、アニオン性界面活性剤と混合できなかった。そのため、主材であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む接着剤組成物の成形物に被覆材を付着させることができず、ホットメルト接着剤としての評価はできなかった。加えて、被覆材の界面活性剤としてカチオン性界面活性剤を用いた比較例4の場合、接着剤組成物の成形物に被覆材を付着させることはできたものの、耐ブロッキング性が5%と劣り、はく離接着強さも4.0N/25mmと低かった。
それに対し、実施例1〜6の場合、耐ブロッキング性が90%以上で、はく離接着強さの測定では材質破壊が起こった。また、接着性の指標であるはく離接着強さは4.0N以上で、耐クリープ性は10hrであった。熱安定性も良好であった。
以上の実験結果から、本発明によれば、高温多湿環境でもブロッキングが十分に抑制され、カートン紙への接着性に優れたホットメルト接着剤が提供できることが確認された。
【0069】
実施例7〜10、比較例5〜8
表3に示した配合に従って、実施例1等と同様にして、球状のホットメルト接着剤を作製した。表3中の配合単位は、質量%である。
オレフィン樹脂として、RT2585A(REXTAC,LLC社製の商品名、エチレン・プロピレン系α−オレフィン共重体樹脂)を用いた。その他の成分として、実施例1等と同様の材料を用いた。
【0070】
【表3】
【0071】
得られたホットメルト接着剤について、軟化点、耐ブロッキング性、ショア硬度を評価した。ショア硬度は下記に示す方法により評価した。他の評価は実施例1等と同様の方法により行った。結果を表4に示した。
【0072】
ショア硬度
JIS Aショア硬度に準拠し、各ホットメルト接着剤の23℃のショア硬度を測定した。
【0073】
【表4】
【0074】
表4に示したように、エチレン−酢酸ビニル共重合体を含まない比較例5のホットメルト接着剤の場合、ショア硬度Aが30より小さく、耐ブロッキング性に劣っていた。また、被覆材がポリエチレンワックスを含まない比較例6のホットメルト接着剤も、耐ブロッキング性に劣っていた。
比較例7で用いた融点が160℃のポリプロピレンワックスは、アニオン性界面活性剤と混合できなかった。そのため、主材であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を含む接着剤組成物の成形物に被覆材を付着させることができず、ホットメルト接着剤としての評価はできなかった。加えて、被覆材の界面活性剤としてカチオン性界面活性剤を用いた比較例8の場合、接着剤組成物の成形物に被覆材を付着させることはできたものの、耐ブロッキング性が5%と劣っていた。
それに対し、実施例7〜10は、耐ブロッキング性が90%以上と良好であった。本発明によって、高温多湿環境でもブロッキングが十分に抑制されるホットメルト接着剤が得られることが確認された。