特許第6233551号(P6233551)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許62335512液硬化型ラミネート接着剤、その硬化物、積層フィルムの製造方法、及び2液硬化型ラミネート接着剤用アミン溶液
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6233551
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】2液硬化型ラミネート接着剤、その硬化物、積層フィルムの製造方法、及び2液硬化型ラミネート接着剤用アミン溶液
(51)【国際特許分類】
   C09J 175/02 20060101AFI20171113BHJP
   C09J 163/00 20060101ALI20171113BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20171113BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20171113BHJP
   C08G 18/66 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C09J175/02
   C09J163/00
   C09J11/06
   B32B27/00 D
   C08G18/66
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-538745(P2017-538745)
(86)(22)【出願日】2017年3月9日
(86)【国際出願番号】JP2017009424
【審査請求日】2017年7月21日
(31)【優先権主張番号】特願2016-61855(P2016-61855)
(32)【優先日】2016年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002886
【氏名又は名称】DIC株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124970
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 通洋
(72)【発明者】
【氏名】島村 健一
(72)【発明者】
【氏名】岩波 秀興
【審査官】 澤村 茂実
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭62−112676(JP,A)
【文献】 特開平8−80571(JP,A)
【文献】 特開平8−291279(JP,A)
【文献】 特開2005−298812(JP,A)
【文献】 米国特許第4740539(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09J 1/00−201/10
B32B 27/00,27/38−27/40
C08G 18/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1級アミノ基を分子構造中に有するポリウレタンポリウレア樹脂(A)と、多官能エポキシ化合物(B)として鎖状脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルとを必須成分とし、且つ有機溶剤(C)を含有することを特徴とする2液硬化型ラミネート接着剤。
【請求項2】
前記1級アミノ基を分子構造中に有するポリウレタンポリウレア樹脂(A)が、アミン価3.0〜30mgKOH/gの範囲である請求項1に記載の2液硬化型ラミネート接着剤。
【請求項3】
前記1級アミノ基を分子構造中に有するポリウレタンポリウレア樹脂(A)が、ポリエーテルポリウレタンポリウレア樹脂である請求項1〜2に記載の2液硬化型ラミネート接着剤。
【請求項4】
前記ポリエーテルポリウレタンポリウレア樹脂が、該樹脂中に存在するポリエーテル構造部位の原料の分子量が100〜3,500の範囲である請求項3に記載の2液硬化型ラミネート接着剤。
【請求項5】
前記鎖状脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルのエポキシ当量が100〜300g/当量の範囲にある請求項1〜4のいずれかに記載の2液硬化型ラミネート接着剤。
【請求項6】
アミノシランカップリング剤を含有する請求項1〜のいずれかに記載の2液硬化型ラミネート接着剤。
【請求項7】
請求項1〜のいずれかに記載の2液硬化型ラミネート接着剤を硬化させてなる硬化物。
【請求項8】
請求項1〜のいずれかに記載の2液硬化型ラミネート接着剤を第一のプラスチックフィルムと第二のプラスチックフィルムの間に有することを特徴とする積層フィルム。
【請求項9】
1級アミノ基を分子構造中に有するポリウレタンポリウレア樹脂(A)と有機溶剤(C)とを、固形分濃度が30〜70質量%となる割合で有することを特徴とする2液硬化型ラミネート接着剤用アミン溶液。
【請求項10】
アミノシランカップリング剤を含有する請求項に記載の2液硬化型ラミネート接着剤用アミン溶液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は2液硬化型ラミネート接着剤、その硬化物、該接着剤を用いて各種フィルムをラミネートしてなる積層フィルム、及び2液硬化型ラミネート接着剤用アミン溶液に関する。更に詳しくは、各種プラスチックフィルム、金属蒸着フィルム、アルミニウム箔等をラミネートして、主として食品、医薬品、洗剤等の包装材料に使用する複合フィルムを製造する際に用いるラミネート用接着剤に関する。
【背景技術】
【0002】
食品包装材や医薬品、日用品の包装材料には、フィルム基材表面に接着剤を塗布後、溶剤を蒸発乾燥除去し、他の材料を加熱、圧着しながら積層する所謂ドライラミネーションによる多層フィルムが、各用途の要求特性に合わせて任意のフィルムを選択組み合わせることが可能な点から広く用いられている。
【0003】
斯かるドライラミネーションに用いられる接着剤は、主に高分子末端に水酸基を有するポリオール成分を主剤とし、他方、ポリイソシアネートを硬化剤とする二液型ポリウレタン系接着剤が主流である。ここで、前記ポリオール成分はポリエステルポリオールやポリエステルポリウレタンポリオールが使用され、他方、前記ポリイソシアネートとしてはトリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)等の各種のモノマー型ポリイソシアネートが、該硬化剤自体が反応性希釈剤として機能する点から使用されている。
【0004】
然しながら、この硬化剤として使用されるイソシアネート成分は、吸入や皮膚接触により著しい感作性を発現したり、或いは、このイソシアネート成分が容器内の水分と反応して生成する一級芳香族アミンは欧州CLP規則において発がん性物質に分類されるなど、その有害性が指摘されており、近年、イソシアネートを含まないラミネート接着剤の開発が求められている。
【0005】
斯かるイソシアネートを含まないラミネート接着剤としては、例えば、下記特許文献1には、テトラグリシジル−m−キシリレンジアミンをエポキシ化合物として用い、これに硬化剤としてアミン化合物を用いた2液硬化型のラミネート接着剤が開示されている。
【0006】
斯かる特許文献1に記載されたエポキシ/アミン硬化型の接着剤は、確かに優れた接着強度を発現するものの、エポキシ化合物自体が剛直な分子構造を有することから硬化物が固脆くなり、基材フィルムへの追随性に劣り98℃にてボイル処理した後に接着強度が著しく低下する他、外観不良を生じさせるものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第5651172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明が解決しようとする課題は、非イソシアネート系の軟包装ラミネートに適する接着剤として、ラミネート接着強度、とりわけボイル処理後のラミネート接着強度に優れる2液硬化型ラミネート接着剤、及びこれを用いたラミネートフィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者等は、前記課題を解決すべく鋭意研究した結果、アミノ基を分子構造中に有するポリウレタンポリウレア樹脂を主剤として使用し、かつ、その硬化剤として多官能エポキシ化合物を用いることにより、非イソシアネート系の軟包装ラミネート用接着剤としてラミネート強度、とりわけラミネートフィルムのボイル処理後の接着強度やラミネート外観が著しく改善されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
即ち、本発明は、1級アミノ基を分子構造中に有するポリウレタンポリウレア樹脂(A)と、鎖状脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(B)とを必須成分とする2液硬化型ラミネート接着剤に関する。
【0011】
本発明は、更に、上記2液硬化型ラミネート接着剤を硬化させてなる硬化物に関する。
【0012】
本発明は、更に、上記2液硬化型ラミネート接着剤を第一のプラスチックフィルムに塗布、次いで塗布面に第二のプラスチックフィルムを積層し、該接着剤層を硬化させることを特徴とする積層フィルムの製造方法に関する。
【0013】
1級アミノ基を分子構造中に有するポリウレタンポリウレア樹脂(A)と有機溶剤(C)とを、固形分濃度が30〜70質量%となる割合で有することを特徴とする2液硬化型ラミネート接着剤用アミン溶液に関する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、非イソシアネート系の軟包装ラミネートに適する接着剤として、ラミネート接着強度、とりわけボイル処理後のラミネート接着強度に優れる2液硬化型ラミネート接着剤、及びこれを用いたラミネートフィルムを提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明で用いるポリウレタンポリウレア樹脂(A)は、1級アミノ基を分子構造中に有するものであり、該1級アミノ基が硬化剤である鎖状脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル(B)中のエポキシ基と反応し架橋構造を形成することにより硬化物を得ることができる。ここで、ポリウレタンポリウレア樹脂(A)中の1級アミノ基の量は、該ポリウレタンポリウレア樹脂(A)のアミン価として3.0〜30mgKOH/gの範囲のものであることが、架橋密度が適度に高くかつフィルム追随性を有し、初期のラミネート強度や外観のみならず、ボイル処理後のラミネート強度とラミネート外観が良好なものとなる点から好ましい。
【0016】
ここで、アミン価とは、具体的は下記の方法にて滴定される値である。
[アミン価滴定方法]
所定量のポリウレタンポリウレア樹脂(A)にクリスタルバイオレット指示薬を加え、これを0.1mol/Lの過塩素酸(HClO)酢酸溶液で青紫色から青色へ変化(赤みが消えた点)を終点として滴定する。同様にして試験も実施し、下記(式1)によって算出される値である。
【0017】
(式1)
アミン価(KOHmg)=56.1×[(Vs−Vb)/W]×0.1×[F20/1+W:滴定に使用したポリウレタンポリウレア樹脂(A)の質量(g)
0.0011(t−20)]
Vs:滴定に要した0.1mol/Lの過塩素酸(HClO)酢酸溶液の滴定量
【0018】
Vb:空試験の滴定に要した0.1mol/Lの過塩素酸(HClO)酢酸溶液の滴定量
20:0.1mol/Lの過塩素酸(HClO)酢酸溶液の20℃における力価
t:滴定時の0.1mol/Lの過塩素酸(HClO)酢酸溶液の温度
【0019】
また、前記した1級アミノ基を分子構造中に有するポリウレタンポリウレア樹脂(A)は、その分子構造中にポリエーテル構造部位を持つポリエーテルポリウレタンポリウレア樹脂であることが、接着剤としての柔軟性に優れる点から好ましい。ここで、ポリエーテル構造部位とは、原料として用いた後述するポリエーテルポリオール(α1)に起因する構造部位であり、該ポリエーテルポリオールの分子量が100〜3,500の範囲であるものが前記した柔軟性と、接着剤硬化時のラミネート強度とのバランスに優れる点から好ましい。なお、ポリエーテルポリオールの分子量は、水酸基価(mgKOH/g)の実測値と、ポリオールの価数から計算される値である。
【0020】
前記した1級アミノ基含有ポリウレタンポリウレア樹脂(A)は、ポリオール成分(α)と多価イソシアネート化合物(β)とを反応させてウレタンプレポリマー(X)を得、次いで、該ウレタンプレポリマー(X)をアミン化合物(Y)と反応させることにより得ることができる。
【0021】
ここで、前記ポリウレタンポリウレア樹脂は、前記ポリオール成分(α)として、ポリエーテルポリオール(α1)を用いた場合には、樹脂構造中にポリエーテル構造を持つポリエーテルポリウレタンポリウレア樹脂(a1)となり、ポリエステルポリオール(α2)を用いた場合には、樹脂構造中にポリエステル構造を持つポリエステルポリウレタンポリウレア樹脂(a2)、ポリエーテルポリエステルポリオール(α3)を用いた場合には、樹脂構造中にポリエーテルポリエステル構造を持つポリエーテルポリエステルポリウレタンポリウレア樹脂(a3)となる。
【0022】
ここで、ポリエーテルポリオール(α1)としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分子量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリオキシアルキレングリコールが挙げられる。
【0023】
これらの中でも、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールが、最終的に得られるポリウレタンポリウレア樹脂を接着剤にした場合のラミネート強度に優れる点から好ましい。これらのポリオキシアルキレングリコールは、被膜密着性が良好なことから分子量が100〜3,500の範囲であることが接着剤に適度な柔軟性を付与できラミネート外観が良好なものとなる点から好ましい。ここで、ポリオキシアルキレングリコールの分子量は、前記した通り、ポリエーテルポリオールの分子量は、水酸基価(mgKOH/g)の実測値と、ポリオールの価数から計算される値である。
【0024】
また、前記ポリエーテルポリオール(α1)を使用する場合、その他のグリコール化合物(α’)を併用することができる。
【0025】
また、斯かるグリコール化合物(α’)は、ポリエーテルポリオール(α1)との合計100質量部に対して10質量部以下となる割合で使用することができ、具体的には、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3プロパンジオール、2−エチル−2ブチル−1,3プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ペンタンジオール、3−メチル−1,5ペンタンジオール、ヘキサンジオール、オクタンジオール、1,4−ブタンジオール等の脂肪族ジオールが挙げられる。
【0026】
次に、前記ポリエステルポリオール(α2)は、前記グリコール化合物(α’)と多価カルボン酸又はその無水物(α2−1)とをエステル化反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0027】
ここで使用し得る多価カルボン酸又はその無水物(α2−1)としては、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、グルタル酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;マレイン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸;フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族ポリカルボン酸;無水フタル酸、トリメリット酸無水物、ピロメリット酸無水物等の酸無水物が挙げられる。これらになかでも特に柔軟性に優れた樹脂が得られる点から脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
【0028】
ここで、前記ポリエステルポリオール(α2)は、その重量平均分子量(Mw)が400〜5,000の範囲であることがボイル処理後のラミネート強度に優れる点から好ましく、斯かる分子量範囲に調整し易い点から、前記グリコール化合物(α’)と、多価カルボン酸又はその無水物(α2−1)との反応割合は、グリコール化合物(α’)中の水酸基の当量数と、多価カルボン酸又はその無水物(α2−1)のカルボン酸としての当量数との比[(α’)/(α2−1)]が1/0.88〜1/0.95の範囲であることが好ましい。このエステル化反応は、例えばエステル化触媒の存在下、180〜260℃の温度条件下に反応を行うことが好ましい。
【0029】
ここで使用し得るエステル化触媒としては、例えば、有機スズ化合物、無機スズ化合物、有機チタン化合物、有機亜鉛化合物等が挙げられる。
【0030】
また、前記ポリエステルポリオール(α2)をポリオール成分(α)として使用する場合、ポリエステルポリオール(α2)と共に、前記ポリエーテルポリオール(α1)を併用することが好ましく、その使用割合は、接着剤のラミネート強度の点から、質量比[(α2)/(α1)]が75/25〜10/90の範囲であることが好ましい。また、これらの合計100質量部あたり、前記グリコール化合物(α’)を10質量部以下の割合で併用してもよい。
【0031】
次に、前記ポリエーテルポリエステルポリオール(α3)は、前記ポリエーテルポリオール(α1)と、前記グリコール化合物(α’)と、前記多価カルボン酸又はその無水物(α2−1)とをエステル化反応させることによって得られるものである。その重量平均分子量(Mw)は2,500〜5,000の範囲のものであることが、最終的に得られるポリウレタンポリウレア樹脂に適度な柔軟性が付与されラミネート強度や、初期のラミネート外観に優れたものとなる点から好ましい。また、前記したエステル化反応は、前記ポリエステルポリオール(α2)の合成と同様の条件にて行うことができ、前記ポリエーテルポリオール(α1)及び前記グリコール化合物(α’)の水酸基の合計と、前記多価カルボン酸又はその無水物(α2−1)のカルボン酸としての当量数の比[(OH)/(酸基)]が1/0.88〜1/0.95の範囲となることが、得られるポリエステルポリオールの分子量を前記した範囲に調整しやすい点から好ましい。
【0032】
他方、前記したポリオール成分(α)と反応させる多価イソシアネート(β)は、ポリウレタンポリウレア樹脂の製造に一般的に用いられる各種公知の芳香族ジイソシアネート、鎖状脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、及び3〜4官能のポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0033】
芳香族ジイソシアネートとしては、1,5−ナフチレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、4,4’−ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート、4,4’−ジベンジルイソシアネート、ジアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、テトラアルキルジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、1,4−フェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、m−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ビス−クロロメチル−ジフェニルメタン−ジイソシアネート、2,6−ジイソシアネート−ベンジルクロライド等が挙げられ、鎖状脂肪族ジイソシアネートとしては、ブタン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の炭素原子数1〜9のものが挙げられ、脂環式ジイソシアネートとしては、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジメチルシクロヘキシルジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート等が挙げられる。
【0034】
また、前記3〜4官能のポリイソシアネートとしては、例えば、分子内にウレタン結合部位を有するアダクト型ポリイソシアネート、分子内にイソシアヌレート環構造を有するヌレート型ポリイソシアネートなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0035】
前記分子内にウレタン結合部位を有するアダクト型ポリイソシアネートは、例えば、ジイソシアネートモノマーと3官能以上の多価アルコールとを反応させて得られる。該反応で用いるジイソシアネートモノマーは、前記ジイソシアネートとして例示した各種のジイソシアネート挙げられ、それぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。また、該反応で用いる3官能以上の多価アルコールは、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール等が挙げられ、それぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。
【0036】
前記分子内に分子内にイソシアヌレート環構造を有するヌレート型ポリイソシアネートは、例えば、ジイソシアネートモノマーの三量体、ジイソシアネートモノマーとモノアルコール又は二価アルコールとを反応させて得られるものが挙げられる。ここで用いるジイソシアネートモノマーは、前記ジイソシアネートとして例示した各種のジイソシアネートモノマーが挙げられ、それぞれ単独で使用しても良いし、二種類以上を併用しても良い。また、該反応で用いるモノアルコールは、ヘキサノール、2−エチルヘキサノール、オクタノール、n−デカノール、n−ウンデカノール、n−ドデカノール、n−トリデカノール、n−テトラデカノール、n−ペンタデカノール、n−ヘプタデカノール、n−オクタデカノール、n−ノナデカノール、エイコサノール、5−エチル−2−ノナノール、トリメチルノニルアルコール、2−ヘキシルデカノール、3,9−ジエチル−6−トリデカノール、2−イソヘプチルイソウンデカノール、2−オクチルドデカノール、2−デシルテトラデカノール等が挙げられ、二価アルコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2,2−トリメチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジメチル−3−イソプロピル−1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、3−メチル1,5−ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタンジオール、1,4−ビス(ヒドロキシメチル)シクロヘサンが挙げられる。また、その他リジンジイソシアネート、ダイマー酸のカルボキシル基をイソシアネート基に転化したダイマージイソシアネート等も前記多価イソシアネート(β)として使用することができる。
【0037】
これらのなかでも特に、芳香族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、及びヌレート型ポリイソシアネートなどの分子構造内に環状構造を持つもの耐ボイル性に優れる接着剤となる点から好ましい。
【0038】
ウレタンプレポリマー(X)を合成する際の前記グリコール成分と多価イソシアネートとの反応割合は、当量比[OH/NCO]が、1.2〜3.0であることが好ましい。前記比が1.2より小さいときはゲル化の恐れがあり、また、3.0より大きい場合には得られるプレポリマーの溶解性が低下する傾向が認められる。
【0039】
この様にして得られるウレタンプレポリマー(X)は、イソシアネート残存率が1.00〜5.00質量%の範囲のものであることが、ラミネート強度が良好なものとなる点から好ましい。ここで、イソシアネート残存率とは、ウレタンプレポリマー(X)の一部サンプルを取り出し、これを酢酸エチルに溶解した後、所定濃度・所定量のアミン溶液を加え、次いで、指示薬を加えた後、塩酸で滴定して得られる質量基準のNCO基濃度である。
【0040】
次いで、得られたウレタンプレポリマー(X)と、アミン化合物(Y)としてジアミン、必要によりモノアミンとを反応させることにより目的とする分子末端に1級アミノ基を有するポリウレタンポリウレア樹脂(A)を得ることができる。ここで、前記ウレタンプレポリマー(X)とアミン成分(Y)との反応割合は当量比[NCO/NH]が1.00/1.01〜1/2となる割合であることがアミン価を適正範囲に調整する点から好ましい。
【0041】
なお、前記したジアミンは鎖伸長剤、モノアミンは反応停止剤として作用する。ここで、前記当量比[NCO/NH]を1/1.01〜1/2なる範囲に高めることにより、モノアミンを使用することなく末端に一級アミノ基を持つポリウレタンポリウレア樹脂(A)を得ることができるが、本発明では、接着剤としての適度なポットライフを確保しつつ架橋密度を高める点からジアミンとモノアミンとを併用することが好ましい。この場合ジアミンとモノアミンとの使用割合は質量比[ジアミン/モノアミン]が90/10〜60/40となる割合であることが好ましい。
【0042】
ここで使用し得るジアミンとしては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピルジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、(N−アミノエチル)―2−エタノールアミン、2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシピロピルエチレンジアミン、ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン等が挙げられる。
【0043】
これらの中でも、1−アミノ−3−アミノメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキサン、1,2−シクロヘキサンジアミン、又はジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジアミン(シクロヘキサン環を有するアミン)が好ましい。
【0044】
また、モノアミンとしては、例えば、ジ−n−ブチルアミン等のジアルキルアミン、N−メチルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、シクロヘキシルエチルアミン等の脂環炭化水素基を有する化合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノイソプロパノールアミン等のアルカノールアミンが挙げられるが、これらの中でも、N−メチルシクロヘキシルアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルアミン、シクロペンチルアミン、及び、シクロヘキシルエチルアミンからなる群からなる1種以上の化合物が、ラミネート強度が良好なものとなる点から好ましい。
【0045】
この様にして得られる1級アミノ基を有するポリウレタンポリウレア樹脂(A)は、更に接着剤の使用時における架橋密度を高めるために、多官能エポキシ樹脂で変性してもよい。ここで使用し得る多官能エポキシ樹脂としては、後述する多官能エポキシ化合物(B)が挙げられ、前記したアミン価3.0〜30mgKOH/gを保持できる範囲内で使用することが好ましい。
【0046】
以上詳述したポリウレタンポリウレア樹脂(A)は、前記した通り、その重量平均分子量(Mw)が20,000〜60,000の範囲であることが、アルコール系溶剤成分への溶解性に優れ、また、ラミネート強度にも優れる点から好ましい。
【0047】
ここで、本発明において数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)は、下記条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定される値である。
【0048】
測定装置 ;東ソー株式会社製 HLC−8220GPC
カラム ;東ソー株式会社製 TSK−GUARDCOLUMN SuperHZ−L
+東ソー株式会社製 TSK−GEL SuperHZM−M×4
検出器 ;RI(示差屈折計)
データ処理;東ソー株式会社製 マルチステーションGPC−8020modelII
測定条件 ;カラム温度 40℃
溶媒 テトラヒドロフラン
流速 0.35ml/分
標準 ;単分散ポリスチレン
試料 ;樹脂固形分換算で0.2質量%のテトラヒドロフラン溶液をマイクロフィルターでろ過したもの(100μl)
【0049】
以上詳述した1級アミノ基を分子構造中に有するポリウレタンポリウレア樹脂(A)は、接着剤の主剤成分として使用する場合、有機溶剤(C)へ溶解させた有機溶剤溶液として使用することができる。ここで使用し得る有機溶媒(C)としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、シクロヘキサノン、トルオール、キシロール、n−ヘキサン、シクロヘキサン等が挙げられる。これらの中でも溶解性の点から酢酸エチルが好ましい。
【0050】
本発明では、上記したポリウレタンポリウレア樹脂(A)と有機溶媒(C)とを必須成分とする樹脂溶液を2液硬化型ラミネート接着剤の主剤として使用することができ、この場合、固形分濃度を30〜70質量%の範囲に調整することが取扱いの点、接着剤主剤としての保存安定性に優れる点から好ましい。また、接着剤使用時には、更に前記有機溶媒(C)を加えて使用する塗工機械により適正な粘度に適宜調整して使用に供される。以上詳述した樹脂溶液は本発明の2液硬化型ラミネート接着剤用アミン溶液を構成する。
【0051】
上記した2液硬化型ラミネート接着剤用アミン溶液は、更に、アミノシランカップリング剤を含有することがラミネート包装袋に使用した場合のシーラント部分のシール強度、また、印刷面に対する接着強度が良好なものとなる点から好ましい。アミノシランカップリング剤としては、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメチルジメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等が挙げられ、その配合量は2液硬化型ラミネート接着剤用アミン溶液中0.3〜3質量%の範囲であることが好ましい。
【0052】
次に、本発明の2液硬化型ラミネート接着剤において硬化剤として使用される、多官能エポキシ化合物(B)は、鎖状脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルを必須成分とする。中でも、25℃で液状乃至半固形のエポキシ化合物であることが取扱いの点から好ましく、具体的には、エポキシ当量が100〜300g/当量の範囲にあるエポキシ化合物が好ましい。具体的には、グリセロールジグリシジルエーテル、ポリグリセロールのポリグリシジルエーテル等のグリセロール系ポリグリシジルエーテル;トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル等のトリメチロールプロパントリグリシジルエーテル;ソルビトールテトラグリシジルエーテルに代表されるソルビトールポリグリシジルエーテル;ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル等の鎖状脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルが挙げられる。中でもエポキシ当量が100〜250g/当量の範囲にあることがなお好ましく、エポキシ当量が100〜230g/当量の範囲がなお好ましく、エポキシ当量が150〜230g/当量の範囲が最も好ましい。
【0053】
これらのなかでも主剤との相溶性に優れ、かつ、架橋密度が高く耐ボイル性に優れる点から、基材フィルム表面に印刷が施されている際の接着強度に優れる点からソルビトールポリグリシジルエーテル、及びペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテルが好ましい。斯かるソルビトールポリグリシジルエーテルはそれ単体乃至重合体であってもよいが、本発明では25℃での粘度4,000〜23,000mPa・sのものが主剤への相溶性や接着剤自体の塗工性に優れる点から好ましい。
【0054】
また前記多官能エポキシ化合物(B)は、他の多官能エポキシ化合物を本発明の効果を損なわない範囲で併用してもよく、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、これらの水素添加型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−(3,4−エポキシ)シクロヘキサンカルボキシレート、ビニルシクロヘキセンジオキサイド、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロアリファティックジエステルジエポキシドなどの脂環式エポキシ化合物;ひまし油ポリグリシジルエーテル、トール油脂肪酸、リノレン酸、リノール酸等からなるダイマー酸のジグリシジルエステル;エポキシ化ポリブタジエン;大豆油のエポキシ化物、亜麻仁油のエポキシ化物等の植物油由来のエポキシ樹脂を使用することができる。
【0055】
以上詳述した多官能エポキシ化合物(B)は前記した有機溶剤(C)へ溶解させた樹脂溶液として使用してもよいが、25℃で液状のエポキシ化合物を用いる場合には、そのまま使用時に、主剤に配合して用いることができる。
【0056】
本発明の接着剤は、上記した1級アミノ基を分子構造中に有するポリウレタンポリウレア樹脂(A)と、多官能エポキシ化合物(B)として鎖状脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルとを必須成分とするものであり、これらの配合割合は、固形分でポリウレタンポリウレア樹脂(A)の固形分100質量部に対して前記鎖状脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルの固形分が2〜20質量部、特に3〜15質量部となる割合であることが耐ボイル性の点から好ましい。
【0057】
本発明の接着剤は、必要に応じて、顔料を併用してもよい。この場合使用可能な顔料としては、特に限定されるものではなく、例えば、塗料原料便覧1970年度版(日本塗料工業会編)に記載されている体質顔料、白顔料、黒顔料、灰色顔料、赤色顔料、茶色顔料、緑色顔料、青顔料、金属粉顔料、発光顔料、真珠色顔料等の有機顔料や無機顔料、さらにはプラスチック顔料などが挙げられる。これら着色剤の具体例としては種々のものが掲げられ、有機顔料としては、例えば、ベンチジンエロー、ハンザエロー、レーキッド4R等の、各種の不溶性アゾ顔料;レーキッドC、カーミン6B、ボルドー10等の溶性アゾ顔料;フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の各種(銅)フタロシアニン系顔料;ローダミンレーキ、メチルバイオレットレーキ等の各種の塩素性染め付けレーキ;キノリンレーキ、ファストスカイブルー等の各種の媒染染料系顔料;アンスラキノン系顔料、チオインジゴ系顔料、ペリノン系顔料等の各種の建染染料系顔料;シンカシアレッドB等の各種のキナクリドン系顔料;ヂオキサジンバイオレット等の各種のヂオキサジン系顔料;クロモフタール等の各種の縮合アゾ顔料;アニリンブラックなどが挙げられる。
【0058】
無機顔料としては、例えば、黄鉛、ジンククロメート、モリブデートオレンジ等の如き、各種のクロム酸塩;紺青等の各種のフェロシアン化合物;酸化チタン、亜鉛華、マピコエロー、酸化鉄、ベンガラ、酸化クロームグリーン、酸化ジルコニウム等の各種の金属酸化物;カドミウムエロー、カドミウムレッド、硫化水銀等の各種の硫化物ないしはセレン化物;硫酸バリウム、硫酸鉛等の各種の硫酸塩;ケイ酸カルシウム、群青等の各種のケイ酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム等の各種の炭酸塩;コバルトバイオレット、マンガン紫等の各種の燐酸塩;アルミニウム粉、金粉、銀粉、銅粉、ブロンズ粉、真鍮粉等の各種の金属粉末顔料;これら金属のフレーク顔料、マイカ・フレーク顔料;金属酸化物を被覆した形のマイカ・フレーク顔料、雲母状酸化鉄顔料等のメタリック顔料やパール顔料;黒鉛、カーボンブラック等が挙げられる。
【0059】
体質顔料としては、例えば、沈降性硫酸バリウム、ご粉、沈降炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、寒水石、アルミナ白、シリカ、含水微粉シリカ(ホワイトカーボン)、超微粉無水シリカ(アエロジル)、珪砂(シリカサンド)、タルク、沈降性炭酸マグネシウム、ベントナイト、クレー、カオリン、黄土などが挙げられる。
【0060】
さらに、プラスチック顔料としては、例えば、DIC(株)製「グランドールPP−1000」、「PP−2000S」等が挙げられる。
【0061】
本発明で用いる顔料としては、耐久性、耐侯性、意匠性に優れることから、白色顔料としての酸化チタン、亜鉛華等の無機酸化物、黒色顔料としてのカーボンブラックがより好ましい。
【0062】
本発明で用いる顔料の質量割合は、前記ポリウレタンポリウレア樹脂(A)と、前記鎖状脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルとの合成質量(固形分)100質量部に対して、1〜400質量部、中でも10〜300質量部とすることが、接着性、耐ブロッキング性などに優れることからより好ましい。
【0063】
本発明の接着剤には、必要であれば、前記以外のその他の添加剤を含有させてもよい。添加剤としては、例えば、レベリング剤;コロイド状シリカ、アルミナゾルなどの無機微粒子;ポリメチルメタクリレート系の有機微粒子;消泡剤;タレ性防止剤;湿潤分散剤;粘性調整剤;紫外線吸収剤;金属不活性化剤;過酸化物分解剤;難燃剤;補強剤;可塑剤;潤滑剤;防錆剤;蛍光性増白剤;無機系熱線吸収剤;防炎剤;帯電防止剤;脱水剤などが挙げられる。
【0064】
これらの顔料、接着促進剤、添加剤は、前記した2液硬化型ラミネート接着剤用アミン溶液、又は、前記鎖状脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルの有機溶剤(C)の溶液のどちらか一方の成分に混合させるか、或いは、第3成分として塗工時に配合して使用することができる。
【0065】
本発明の積層フィルムは、前記2液硬化型ラミネート接着剤を第一のプラスチックフィルムと第二のプラスチックフィルムの間に有する積層フィルムであり、具体的には、前記2液硬化型ラミネート接着剤の硬化物を第一のプラスチックフィルムと第二のプラスチックフィルムの間に有する積層フィルムであり、その製造方法は、前記2液硬化型ラミネート接着剤を第一のプラスチックフィルムに塗布、次いで塗布面に第二のプラスチックフィルムを積層し、該接着剤層を硬化させる方法である。
【0066】
具体的には、本発明の2液硬化型ラミネート接着剤を、例えば、グラビアコーター、ダイコーター若しくはリップコーターにて第一のプラスチックフィルムに塗布し、次いで、乾燥後、他の基材を貼り合わせる方法が挙げられる。このダイコーターおよびリップコーターは、ダイまたはリップ部分の両端に付設されたディッケルによって塗工幅を自在に調整することができるものである。塗工条件は、通常のロールコーターでは、25℃〜120℃程度まで加熱した状態で、500〜2500mPa・s程度が好ましい。また塗布量は、0.5〜5g/mが好ましく、より好ましくは、1.5〜4g/m程度で使用するのがよい。
【0067】
また、本発明の2液硬化型ラミネート接着剤を用いた場合、ラミネート後、35〜55℃で3日〜7日間エージングさせることにより接着剤が硬化し、実用物性を発現させることができる。
【0068】
ここで用いる、第一のプラスチックフィルムとしては、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、ナイロンフィルム、OPP(2軸延伸ポリプロピレン)フィルム、各種蒸着フィルム等のベースフィルムやアルミ箔等が挙げられ、また、前記他の基材としては、CPP(無延伸ポリプロピレン)フィルム、LLDPE(直鎖低密度ポリエチレン)フィルム等のシーラントフィルムが挙げられる。
【0069】
本発明の積層フィルムは、食品、洗剤、薬剤、化粧品やトイレタリー業界の包装材料として使用することができる。特にボイル処理後のラミネート接着強度に優れることからレトルト殺菌処理を要求されるような食品用包装材料として特に有用である。また前記包装材料からなる容器を包装する2次包装体にも使用できる。
もちろんその他の用途、例えば防壁材、屋根材、太陽電池パネル材、電池用包装材、窓材、屋外フローリング材、照明保護材、自動車部材、看板、ステッカー等の屋外産業用途、射出成形同時加飾方法等に使用する加飾用シート等として、好適に使用することができる。
【0070】
本発明の積層フィルムは、内容物の充填時はもとより、充填後の時間経過後も、デラミネーション等のラミネート構成体の剥離を発生させず、優れた接着性、内容物耐性を有する。
【実施例】
【0071】
以下に、本発明の内容および効果を実施例により更に詳細に説明する。また、各実施例及び比較例で原料として用いた原料ポリオールを以下に示す。
【0072】
実施例1(ポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Aの調製)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、分子量約3000のポリプロピレングリコール(三井化学社製 アクトコール「PPG3000」、分子量3024(水酸基価37.1mgKOH/g、官能基数2としての計算値))と、1,3−ブタンジオールの混合物(重量比=97/3)192.7質量部とイソフォロンジイソシアネート47.29質量部を仕込み、窒素気流下に90℃で5時間反応させ、遊離イソシアネート価(イソシアネート基含有率)3.07質量%のプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル60質量部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、イソホロンジアミン14.88質量部、シクロヘキシルアミン1.25質量部、酢酸エチル2.9質量部およびエタノール146.7質量部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Aを得た。得られたポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Aは、樹脂固形分濃度が55質量%、樹脂のアミン価3.82mgKOH/g、B型回転粘度計(東機産業株式会社社製「TVB−10M」)を用いて測定した粘度が800mPa・s(25℃)、樹脂固形分の重量平均分子量(Mw)が52,000であった。
【0073】
実施例2(ポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Bの調製)
実施例1の1,3-ブタンジオールを1,4-ブタンに変更した以外は同じ製造法で行った。得られたポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Bとした。得られたポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Bは、樹脂固形分濃度が55質量%、樹脂のアミン価3.82mgKOH/g、B型回転粘度計(東機産業株式会社社製「TVB−10M」)を用いて測定した粘度が1,000mPa・s(25℃)、樹脂固形分の重量平均分子量(Mw)が53,000であった。
【0074】
実施例3(ポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Cの調製)
攪拌機、温度計、環流冷却器および窒素ガス導入管を備えた4つ口フラスコに、分子量約1000のポリプロピレングリコール(三井化学社製「アクトコール PPG1,000」、分子量1001(水酸基価112.0mgKOH/g、官能基数2としての計算値))と、分子量2015(水酸基価からの計算値)のポリプロピレングリコール(三井化学社製「アクトコール PPG2000」、分子量2015(水酸基価55.7mgKOH/g、官能基数2としての計算値))の混合物(重量比=95/5)185.2質量部とトルエンジイソシアネート62.92質量部を仕込み、窒素気流下に90℃で5時間反応させ、遊離イソシアネート価(イソシアネート基含有率)6.07質量%のプレポリマーを製造した後、これに酢酸エチル62.03質量部を加えてウレタンプレポリマーの均一溶液とした。次いで、2−(2−アミノエチルアミノ)エタノール24.12質量部、モノエタノールアミン0.2質量部、酢酸エチル4.9質量部およびエタノール156.0質量部からなる混合物に、前記ウレタンプレポリマー溶液を添加し、45℃で5時間攪拌反応させて、ポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Cを得た。得られたポリウレタンポリ尿素樹脂溶液Cは、樹脂固形分濃度が55質量%、樹脂のアミン価23mgKOH/g、B型回転粘度計(東機産業株式会社社製「TVB−10M」)を用いて測定した粘度が800mPa・s(25℃)、樹脂固形分の重量平均分子量(Mw)が32,000であった。
【0075】
実施例4〜15及び比較例1〜3
下記の方法にて接着剤及びラミネートフィルムを製造し、各種評価を行った。結果を表1〜表3に示す。
【0076】
[評価用ラミネートシートの作成1 PET/LLDPE]
表1、表3の配合に従い、接着剤を製造した後、PETフィルム(東洋紡社製「E5100」厚さ12μm)に、塗布量が固形分3.0g/m程度となるように塗布し、ラミネーターでこのフィルムの塗布面と直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井東セロ社製LLDPE「TUX−HC60μm」)と貼合し、ラミネートフィルムを作製した。このラミネートフィルムを40℃の恒温槽に3日間のエージングを実施した。
【0077】
[評価用ラミネートシートの作成2 ナイロン/LLDPE]
表1、表3の配合に従い、接着剤を製造した後、ナイロン製フィルム(厚さ15μm)に、塗布量が固形分3.0g/m程度となるように塗布し、ラミネーターでこのフィルムの塗布面と直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井東セロ社製LLDPE「TUX−HC60μm」)と貼合し、ラミネートフィルムを作製した。このラミネートフィルムを40℃の恒温槽に3日間のエージングを実施した。
【0078】
[評価用ラミネートシートの作成3 2色印刷PET/LLDPE]
表2の配合に従い、各樹脂溶液とアミノシランカップリング剤とを配合して主剤成分を調整し、次いで、エポキシ化合物及び酢酸エチルを配合することによって接着剤を製造した後、印刷インキ(サンケミカル社製「Duralam PF」)で青、白の順にフレキソ印刷されたPETフィルム(東洋紡社製「E5100」厚さ12μm)に、塗布量が固形分3.0g/m程度となるように塗布し、ラミネーターでこのフィルムの塗布面と直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井東セロ社製LLDPE「TUX−HC60μm」)と貼合し、ラミネートフィルムを作製した。このラミネートフィルムを40℃の恒温槽に3日間のエージングを実施した。
【0079】
[評価用ラミネートシートの作成4 2色印刷ナイロン/LLDPE]
表2の配合に従い、各樹脂溶液とアミノシランカップリング剤とを配合して主剤成分を調整し、次いで、エポキシ化合物及び酢酸エチルを配合することによって接着剤を製造した後、印刷インキ(サンケミカル社製「Duralam PF」)で青、白の順にフレキソ印刷されたナイロンフィルム(厚さ15μm)に、塗布量が固形分3.0g/m程度となるように塗布し、ラミネーターでこのフィルムの塗布面と直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井東セロ社製LLDPE「TUX−HC60μm」)と貼合し、ラミネートフィルムを作製した。このラミネートフィルムを40℃の恒温槽に3日間のエージングを実施した。
【0080】
(ボイル処理前のピール強度)
前記した各ラミネートフィルムから15mm幅で切り出したサンプルのピール強度を、雰囲気温度25℃で引張り試験機を用いて、剥離速度を300mm/分に設定し、T型の剥離方法で引張り試験による接着強度(N/15mm)を測定した。
【0081】
(ボイル処理後のピール強度)
前記した各ラミネートフィルムをLLDPEが内側になるように折り曲げ、1atm、180℃、1秒間でヒートシールして内容物の接触部分が200cmとなるパウチを作製し、食品疑似溶液内容物[食用酢:ミートソース:サラダ油(質量比)=1:1:1の溶液]の50mlを充填した。
充填したパウチを98℃の高温水で60分間浸漬し、取り出し、内容物を除去したパウチのラミネートフィルム部から15mm幅で切り出したサンプルのピール強度を、雰囲気温度25℃で引張り試験機を用いて、剥離速度を300mm/分に設定し、T型の剥離方法で測定した際の引張り試験による接着強度(N/15mm)を測定した。
【0082】
(初期の外観)
エージング処理して得られたラミネートフィルムの状態を目視にて観察し、トンネリング等のラミネート外観が良好なものを「良好」とした。
【0083】
(ボイル処理後の外観評価)
ボイル処理後のパウチの外観を評価した。
○:デラミネーションなし
×:デラミネーションあり
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【0087】
上記各表1〜表3中、「破断」とは接着強度に優れる為に接着層での剥離が生じず、基材フィルムが破断してしまう状態を表す。例えば、実施例4のボイル処理後のPET/LLDPEにおける「PETで破断」とは、接着層で剥離が生じる前にPETが破断してしまう状態を示す。また、基材フィルムが破断に至る強度は大よそ、ナイロンフィルムで12N/15mm、PETフィルムで7N/15mmである。
なお、表1〜表3中に記載された各原料及び基材フィルムの詳細は以下のとおりである。
アミノシランカップリング剤:エボニック社製「Dynasylan AMEO」
ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル:ペンタエリスリトールのポリグリシジルエーテル(3〜4官能、エポキシ当量229g/eq.)
TMP系ポリグリシジルエーテル:トリメチロールプロパンのポリグリシジルエーテル(2〜3官能、エポキシ当量134g/eq.)
BPA系ポリグリシジルエーテル:ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(DIC(株)製「EPICLON850」エポキシ当量188g/eq.)
ソルビトール系ポリグリシジルエーテル:ソルビトールのポリグリシジルエーテル(3〜4官能、エポキシ当量173g/eq.、粘度5,000mPa・s)
N,N,N’,N’−テトラグリシジル−1,3−ベンゼンジ(メタンアミン):三菱瓦斯化学社製「TETRAD−X」(粘度1600−3000mPa・s)
N,N,N’,N’−テトラキス(2,3−エポキシプロピル)シクロヘキサン−1,3−ジメチルアミン:三菱瓦斯化学社製「TETRAD−C」(粘度1600−3000mPa・s)
Ny:ナイロンフィルム(ユニチカ社製「エンブレムON」厚さ15μm)
PET:PETフィルム(東洋紡社製「E5100」厚さ12μm)
LLDPE:直鎖状低密度ポリエチレンフィルム(三井東セロ社製「TUX−HC」厚さ60μm)
【要約】
1級アミノ基を分子構造中に有するポリウレタンポリウレア樹脂(A)と、多官能エポキシ化合物(B)として鎖状脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテルとを必須成分とすることを特徴とする2液硬化型ラミネート接着剤、その硬化物、前記2液硬化型ラミネート接着剤を第一のプラスチックフィルムと第二のプラスチックフィルムの間に有するこ積層フィルム、及び1級アミノ基を分子構造中に有するポリウレタンポリウレア樹脂(A)と有機溶剤(C)とを、固形分濃度が30〜70質量%となる割合で有する2液硬化型ラミネート接着剤用アミン溶液。