(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6233556
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】環境発電装置及び電流制御回路
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
G05F1/56 310D
【請求項の数】12
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-545415(P2017-545415)
(86)(22)【出願日】2017年5月29日
(86)【国際出願番号】JP2017019958
【審査請求日】2017年8月25日
(31)【優先権主張番号】特願2016-110992(P2016-110992)
(32)【優先日】2016年6月2日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100150360
【弁理士】
【氏名又は名称】寺嶋 勇太
(74)【代理人】
【識別番号】100174931
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 拓郎
(72)【発明者】
【氏名】吉田 昌義
(72)【発明者】
【氏名】児島 清茂
【審査官】
麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】
実開平4−93312(JP,U)
【文献】
特開2006−309312(JP,A)
【文献】
特開昭55−33221(JP,A)
【文献】
実開昭59−37615(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2013/229844(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05F 1/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着脱可能な外部機器に電力を供給する環境発電装置であって、
外部環境に応じた電力を発電する環境発電部と、
前記環境発電部に接続された電流制御部と、
前記電流制御部への入力電圧が第1電圧以上となるように前記電流制御部を制御する第1電圧制御部と、
前記外部機器の接続の有無によらず、前記電流制御部からの出力電圧が前記第1電圧以上である第2電圧以下となるように前記電流制御部を制御する第2電圧制御部と、
を備える環境発電装置。
【請求項2】
前記第1電圧制御部は、
前記電流制御部への入力電圧と前記第1電圧との差分である第1差分を検出し、当該第1差分に対応する値を前記電流制御部に出力する第1差分検出部を含み、
前記電流制御部は、電流を制御して前記第1差分を減少させる、
請求項1に記載の環境発電装置。
【請求項3】
前記電流制御部は、前記第1差分が前記電流制御部への入力電圧が前記第1電圧未満であることを示す差分である場合、電流を低下させる、
請求項2に記載の環境発電装置。
【請求項4】
前記第2電圧制御部は、前記電流制御部からの出力電圧が前記第2電圧を超える場合に前記電流制御部からの電流を制御することで、当該出力電圧が前記第2電圧以下となるように制御する、
請求項1から3のいずれか一項に記載の環境発電装置。
【請求項5】
前記第2電圧制御部は、
前記電流制御部からの電流を電圧に変換する電流電圧変換部と、
前記変換された電圧と第3電圧との差分である第2差分を検出し、当該第2差分に対応する値を前記電流制御部に出力する第2差分検出部と、を含み、
前記電流制御部は、電流を制御して前記第2差分を減少させ、
前記第3電圧は、前記変換された電圧と等しくなったとき、前記電流制御部からの出力電圧が前記第2電圧と等しくなる電圧である、
請求項4に記載の環境発電装置。
【請求項6】
前記電流制御部は、前記第2差分が前記変換された電圧が前記第3電圧を超えることを示す差分である場合、電流を低下させる、
請求項5に記載の環境発電装置。
【請求項7】
前記環境発電部は光電変換モジュールを含む、
請求項1から6のいずれか一項に記載の環境発電装置。
【請求項8】
前記光電変換モジュールは、薄型パネル状の太陽電池モジュールであり、
前記太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルが電気的に直列に連結して通常の使用態様で両端の開放電圧が5.3V以上となる太陽電池セル群を含む、
請求項7に記載の環境発電装置。
【請求項9】
前記電流制御部はトランジスタ又はFETを含む、
請求項1から8のいずれか一項に記載の環境発電装置。
【請求項10】
前記第2電圧制御部は、直列に接続されたツェナーダイオードと抵抗とを含む、
請求項1から9のいずれか一項に記載の環境発電装置。
【請求項11】
外部環境に応じた電力を発電する環境発電部と、
前記環境発電部に接続された電流制御部と、
前記電流制御部への入力電圧が第1電圧以上となるように前記電流制御部を制御する第1電圧制御部と、
前記電流制御部からの出力電圧が前記第1電圧以上である第2電圧以下となるように前記電流制御部を制御する第2電圧制御部と、
を備え、
前記第1電圧制御部は、前記電流制御部への入力電圧と前記第1電圧との差分である第1差分を検出し、当該第1差分に対応する値を前記電流制御部に出力する第1差分検出部を含み、
前記第2電圧制御部は、前記電流制御部からの電流を電圧に変換する電流電圧変換部と、前記変換された電圧と第3電圧との差分である第2差分を検出し、当該第2差分に対応する値を前記電流制御部に出力する第2差分検出部と、を含み、
前記電流制御部は、電流を制御して前記第1差分及び前記第2差分を減少させ、
前記第3電圧は、前記変換された電圧と等しくなったとき、前記電流制御部からの出力電圧が前記第2電圧と等しくなる電圧であり、
前記第1差分検出部と、前記第2差分検出部とは、共通の差動増幅器で構成される、
環境発電装置。
【請求項12】
環境発電部に接続可能な電流制御部と、
前記電流制御部への入力電圧が第1電圧以上となるように前記電流制御部を制御する第1電圧制御部と、
前記電流制御部からの出力電圧が前記第1電圧以上である第2電圧以下となるように前記電流制御部を制御する第2電圧制御部と、
を備える電流制御回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環境発電装置及び電流制御回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、商用電源を得られない外出先などでも、利用者が、スマートフォン、ノートPC(Personal Computer)、タブレットPCなどの携帯機器や、その他の外部機器を利用できるように、外部環境に応じた電力を発電する環境発電装置の需要が高まっている。このような環境発電装置としては、例えば太陽光エネルギーを用いて発電する太陽電池を備える装置や、地熱エネルギーを用いて発電する装置等が挙げられる。
【0003】
このような環境発電装置によって発電される電力の出力電力や出力電圧は、外部環境に依存して変化する。外部機器が例えばUSB(Universal Serial Bus)等の所定の規格に準拠したインタフェースを介して接続される場合、出力電圧が一定電圧未満となると電力を供給できなくなるという問題があった。
【0004】
そこで、例えば、環境発電装置として、太陽電池に接続されたフィードバック回路を備え、このフィードバック回路が太陽電池の電圧を監視することで、太陽電池の出力電圧が一定電圧となるように制御するように構成した装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−17686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1に開示された装置によると、出力電圧を一定電圧に制御することができるので、外部機器に電力が供給できなくなる可能性が低減される。ところで、環境発電装置に外部機器が接続されていないときや、接続された外部機器が何らかの理由で給電を受け付けない場合(例えば、外部機器として二次電池を用いた際に二次電池が満充電である場合)、外部機器に電力を供給できないことがある。このような場合、特許文献1に開示された装置では、電流が流れないため開放電圧が発生し、その後接続された外部機器や、既に接続されている外部機器に、許容範囲を超える電圧が印加されるおそれがあった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、上述した課題を解決し、外部機器に印加される電圧を一定範囲内に制御することができる環境発電装置及び電流制御回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の環境発電装置は、着脱可能な外部機器に電力を供給する環境発電装置であって、外部環境に応じた電力を発電する環境発電部と、前記環境発電部に接続された電流制御部と、前記電流制御部への入力電圧が第1電圧以上となるように前記電流制御部を制御する第1電圧制御部と、前記外部機器の接続の有無によらず、前記電流制御部からの出力電圧が前記第1電圧以上である第2電圧以下となるように前記電流制御部を制御する第2電圧制御部と、を備えることを特徴とする。このような構成とすることで、外部機器に印加される電圧を一定範囲内に制御することができる。
【0009】
ここで、本発明の環境発電装置において、前記第1電圧制御部は、前記電流制御部への入力電圧と前記第1電圧との差分である第1差分を検出し、当該第1差分に対応する値を前記電流制御部に出力する第1差分検出部を含み、前記電流制御部は、電流を制御して前記第1差分を減少させることが好ましい。
【0010】
また、本発明の環境発電装置において、前記電流制御部は、前記第1差分が前記電流制御部への入力電圧が前記第1電圧未満であることを示す差分である場合、電流を低下させることが好ましい。
【0011】
また、本発明の環境発電装置において、前記第2電圧制御部は、前記電流制御部からの出力電圧が前記第2電圧を超える場合に前記電流制御部からの電流を制御することで、当該出力電圧が前記第2電圧以下となるように制御することが好ましい。
【0012】
また、本発明の環境発電装置において、前記第2電圧制御部は、前記電流制御部からの電流を電圧に変換する電流電圧変換部と、前記変換された電圧と第3電圧との差分である第2差分を検出し、当該第2差分位対応する値を前記電流制御部に出力する第2差分検出部と、を含み、前記電流制御部は、電流を制御して前記第2差分を減少させ、前記第3電圧は、前記変換された電圧と等しくなったとき、前記電流制御部からの出力電圧が前記第2電圧と等しくなる電圧であることが好ましい。
【0013】
また、本発明の環境発電装置において、前記電流制御部は、前記第2差分が前記変換された電圧が前記第3電圧を超えることを示す差分である場合、電流を低下させることが好ましい。
【0014】
また、本発明の環境発電装置において、前記環境発電部は光電変換モジュールを含むことが好ましい。
【0015】
また、本発明の環境発電装置において、前記光電変換モジュールは、薄型パネル状の太陽電池モジュールであり、前記太陽電池モジュールは、複数の太陽電池セルが電気的に直列に連結して通常の使用態様で両端の開放電圧が5.3V以上となる太陽電池セル群を含むことが好ましい。
【0016】
また、本発明の環境発電装置において、前記電流制御部はトランジスタ又はFETを含むことが好ましい。
【0017】
また、本発明の環境発電装置において、前記第2電圧制御部は、直列に接続されたツェナーダイオードと抵抗とを含むことが好ましい。
【0018】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の環境発電装置は、外部環境に応じた電力を発電する環境発電部と、前記環境発電部に接続された電流制御部と、前記電流制御部への入力電圧が第1電圧以上となるように前記電流制御部を制御する第1電圧制御部と、前記電流制御部からの出力電圧が前記第1電圧以上である第2電圧以下となるように前記電流制御部を制御する第2電圧制御部と、を備え、前記第1電圧制御部は、前記電流制御部への入力電圧と前記第1電圧との差分である第1差分を検出し、当該第1差分に対応する値を前記電流制御部に出力する第1差分検出部を含み、前記第2電圧制御部は、前記電流制御部からの電流を電圧に変換する電流電圧変換部と、前記変換された電圧と第3電圧との差分である第2差分を検出し、当該第2差分に対応する値を前記電流制御部に出力する第2差分検出部と、を含み、前記電流制御部は、電流を制御して前記第1差分及び前記第2差分を減少させ、前記第3電圧は、前記変換された電圧と等しくなったとき、前記電流制御部からの出力電圧が前記第2電圧と等しくなる電圧であり、前記第1差分検出部と、前記第2差分検出部とは、共通の差動増幅器で構成されることを特徴とする。このような構成とすることで、外部機器に印加される電圧を一定範囲内に制御することができ、また、回路の一部を共通化することができる。
【0019】
また、この発明は、上記課題を有利に解決することを目的とするものであり、本発明の電流制御回路は、環境発電部に接続可能な電流制御部と、前記電流制御部への入力電圧が第1電圧以上となるように前記電流制御部を制御する第1電圧制御部と、前記電流制御部からの出力電圧が前記第1電圧以上である第2電圧以下となるように前記電流制御部を制御する第2電圧制御部と、を備えることを特徴とする。このような構成とすることで、外部機器に印加される電圧を一定範囲内に制御することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、外部機器に印加される電圧を一定範囲内に制御することができる環境発電装置及び電流制御回路を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る環境発電装置の概略構成を示すブロック図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る環境発電部の構成例を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係る環境発電部による発電電力の電流電圧特性を示す図である。
【
図4】所定の負荷の接続時における異なる照度条件での電流と電圧の関係を示す図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る環境発電装置によって実行される電流制御(その1)を示すフローチャートである。
【
図6】本発明の一実施形態に係る環境発電装置によって実行される電流制御(その2)を示すフローチャートである。
【
図7】本発明の一実施形態に係る電流制御回路の構成例を示す図である。
【
図8】ツェナーダイオードの電流電圧特性を示す図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る環境発電装置によって得られた電流電圧特性の測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る環境発電装置1の概略構成を示すブロック図である。
【0023】
図1に示すように、本実施形態に係る環境発電装置1は、環境発電部10と、電流制御部20と、第1電圧制御部30と、第2電圧制御部40と、出力部50とを備える。ここで、電流制御部20、第1電圧制御部30、第2電圧制御部40及び出力部50は、電流制御回路2を構成する。
【0024】
環境発電部10は、電流制御部20に接続され、外部環境に応じた電力を発電する。すなわち、環境発電部10によって発電される電力は、外部環境に依存して変化する。なお、環境発電部10は、電流制御回路2と着脱可能な構成としてもよい。
【0025】
電流制御部20は、環境発電部10に接続され、電流制御部20に流れる電流を制御するデバイスである。電流制御部20は、例えばトランジスタやFET等によって構成される。電流制御部20は、後述する第1差分検出部31や第2差分検出部42から差分が入力されると、入力された差分を減少させるように電流を制御する。なお、電流制御部20は、環境発電部10が電流制御回路2と着脱可能な構成である場合、環境発電部10に接続可能である。
【0026】
第1電圧制御部30は、電流制御部20への入力電圧を取得し、電流制御部20への入力電圧が第1電圧以上となるように電流制御部20を制御するデバイスである。ここで、第1電圧とは、ある一定の電圧であり、出力部50が所定の給電の規格に準拠する場合、その規格に定められた下限又は下限より大きい電圧であることが好ましい。例えば、出力部50がUSB給電の規格に準拠する場合、下限電圧は4.75Vであり(Battery Charging Specification, Rev 1.2 (December 7,2010) P43 Table 5-1 Voltages 「Charging Port Output Voltage」(BC規格)参照)、第1電圧は4.75V〜5Vであることが好ましい。第1電圧制御部30は第1差分検出部31を含む。第1差分検出部31は、電流制御部20への入力電圧と第1電圧との差分(以下、適宜「第1差分」と記載する)を検出して、その第1差分に対応する値を電流制御部20に出力するデバイスである。
【0027】
第2電圧制御部40は、電流制御部20からの出力電圧を取得し、電流制御部20からの出力電圧が第2電圧を超える場合に、電流制御部20からの電流を通電させることで、電流制御部20からの出力電圧が第2電圧以下となるように制御するデバイスである。ここで、第2電圧とは、第1電圧以上のある一定の電圧であり、例えば、出力部50が所定の給電の規格に準拠する場合、その規格に定められた上限又は上限より小さい電圧であることが好ましい。例えば、出力部50がUSB給電の規格に準拠する場合、上限電圧は5.25Vであり(同BC規格参照)、第2電圧は5V〜5.25Vであることが好ましい。
【0028】
また、第2電圧制御部40は、電流電圧変換部41と、第2差分検出部42とを含む。電流電圧変換部41は、電流制御部20からの電流を電圧に変換するデバイスである。ここで、電流電圧変換部41によって変換される前の電流と、変換された後の電圧とは、比例関係にある。また、第2差分検出部42は、電流電圧変換部41によって変換された電圧と第3電圧との差分(以下、適宜「第2差分]と記載する)を検出して、その第2差分に対応する値を電流制御部20に出力するデバイスである。ここで、第3電圧とは、電流電圧変換部41によって変換された電圧と等しくなったとき、電流制御部20からの出力電圧が第2電圧と等しくなる電圧である。
【0029】
出力部50は、電流制御部20に接続され、外部機器に電力を供給する出力端子等のインタフェースである。出力部50は、所定の給電の規格に準拠していることが好ましく、例えば、USBの規格に準拠している。ここで、出力部50が電力を供給する外部機器としては、スマートフォン、ノートPC、タブレットPC等の携帯機器や、鉛蓄電池、リチウムイオン電池等の充放電可能な二次電池等が挙げられる。出力部50は、これらの外部機器と着脱可能に接続して、例えば外部機器からの給電要求を受けて外部機器に電力を供給する。
【0030】
図2は、環境発電部10の構成の一例を示す図である。
図2に示すように、環境発電部10は、例えば、光電変換モジュールとしての太陽電池モジュール11を含む。ここで、
図2には3つの太陽電池モジュール11を示したが、太陽電池モジュール11は1つ又は2つでもよいし、4つ以上でもよい。太陽電池モジュール11は、薄型パネル状であり、複数の太陽電池セル13が電気的に直列に連結した太陽電池セル群12を含む。太陽電池セル13は、太陽光、室内光などの入射光を光電変換して電力を出力する太陽電池で構成された部材である。また、太陽電池モジュール11は、互いに連結部を介して連結し、例えば連結部を境として折り畳むことが可能な構成であってもよい。
【0031】
太陽電池セル13を構成する太陽電池の種類としては、大別して、無機系材料を用いた無機系太陽電池と、有機系材料を用いた有機系太陽電池とが挙げられる。無機系太陽電池としては、シリコン(Si)を用いたSi系、化合物を用いた化合物系などが挙げられる。また、有機系太陽電池としては、有機顔料を用いた低分子蒸着系、導電性高分子を用いた高分子塗布系、変換型半導体を用いた塗布変換系などの薄膜系、チタニア、有機色素および電解質から成る色素増感系などが挙げられる。また、太陽電池セル13を構成する太陽電池には、有機無機ハイブリッド太陽電池、ペロブスカイト系化合物を用いた太陽電池も含めることができる。本発明においては、薄型パネル状の太陽電池セル13が用いられ、プラスチックフィルム等に作製された色素増感太陽電池が好適である。なお、太陽電池セル13は、上記プラスチックフィルム等に作製されたものに限定されるものでなく、同様の薄型であれば方式を問わないことは言うまでもない。
【0032】
太陽電池セル群12は、通常の使用態様で両端の開放電圧が5.3V以上となるのに十分な数の太陽電池セル13が直列に連結して構成される。ここで、通常の使用態様とは、太陽電池セル群12に部分影が発生せず、極端な悪天候ではない昼間の屋外で使用される態様をいう。ここで、
図2では、太陽電池モジュール11が、1つの太陽電池セル群12を含む例を示したが、複数の太陽電池セル群12を含んでもよい。太陽電池モジュール11は、複数の太陽電池セル群12を含む場合、複数の太陽電池セル群12が互いに電気的に並列に接続されるように配置する。また、環境発電部10は、複数の太陽電池モジュール11を含む場合、各太陽電池モジュール11に含まれる太陽電池セル群12が互いに電気的に並列に接続されるように配置する。すなわち、太陽電池セル群12は、互いに電気的に並列に接続されている。
【0033】
図3は、環境発電部10による発電電力の電流電圧特性を示す図である。ここで、短絡電流I
scは、環境発電部10が短絡状態にあるとき、すなわち電圧がゼロのときの電流であり、最大電流値をとる。また、開放電圧V
ocは、環境発電部10が開放状態にあるとき、すなわち電流がゼロのときの電圧であり、最大電圧値をとる。また、最大出力P
maxは、電流と電圧の積が最大となるときの電力であり、環境発電部10の発電電力が最大となる値である。
【0034】
図4は、所定の負荷の接続時における異なる照度条件下での環境発電部10による発電電力の電流と電圧の関係を示す図である。
図4に示すように、環境発電部10への入射光の照度がαのとき、外部機器として所定の負荷を接続した際の電流はIαであり、電圧は5Vとなっている。一方、環境発電部10への入射光の照度がαよりも小さいβのとき、所定の負荷を接続した際の電流はIαよりも小さいIβであり、電圧は5Vよりも小さいVβとなっている。
【0035】
ここで、本実施形態に係る環境発電装置1によって実行される電流制御(その1)について、
図5のフローチャートを参照して説明する。
【0036】
第1電圧制御部30は、電流制御部20への入力電圧を取得すると(ステップS101)、第1差分検出部31によって、電流制御部20への入力電圧と第1電圧との差分(第1差分)を検出して、その第1差分に対応する値を電流制御部20に出力する(ステップS102)。電流制御部20は、第1差分に対応する値が入力されると、第1差分を減少させるように電流を制御する(ステップS103)。
【0037】
ここで、ステップS103の処理について詳述する。なお、第1電圧は5Vであり、外部機器として
図4に示した所定の負荷が接続されているとする。このとき、入力電圧が5Vである場合(照度がα)、第1差分はゼロであるので、電流制御部20は入力電圧5Vに対応する電流Iαのまま変化させない。一方、入力電圧が5Vより小さいVβである場合(照度がβ)、第1差分は入力電圧が第1電圧5V未満であることを示す差分となる。電流制御部20は、第1差分を減少させるために、
図4に示した照度がβのときの電流電圧特性の曲線に沿って、電流を低下させる。すなわち、入力電圧が第1電圧と等しい5Vになる電流Iβ’まで、電流を低下させる。
【0038】
このように、環境発電装置1によると、環境発電部10によって高い電力が得られない場合であっても、電流を低下させることにより、所定の電圧まで昇圧させることで外部機器に電力を供給することができる。
【0039】
次に、本実施形態に係る環境発電装置1によって実行される電流制御(その2)について、
図6のフローチャートを参照して説明する。
【0040】
第2電圧制御部40は、電流制御部20からの出力電圧が第2電圧を超えると、電流制御部20からの電流を導通させる(ステップS201)。次に、電流電圧変換部41が、電流制御部20からの電流を、電圧に変換する(ステップS202)。次に、第2差分検出部42が、変換された電圧と第3電圧との差分(第2差分)を検出して、その第2差分に対応する値を電流制御部20に出力する(ステップS203)。そして、電流制御部20は、第2差分が入力されると、その第2差分を減少させるように電流を制御する(ステップS204)。
【0041】
このように、環境発電装置1によると、出力電圧が第2電圧を超えると、第2電圧制御部40によって電流を制御することで出力電圧を第2電圧以下に低下させることができる。これにより、開放電圧等の高い電圧が出力されることを抑制することができる。また、電流制御部20から出力される電流を電圧に変換し、変換した電圧を第3電圧まで低下させるように電流を低下させることで、出力電圧が第2電圧を超えない範囲で、電流を低下させることができる。これにより、外部機器に電力を供給しない時点での電流を低く抑えることができる。
【0042】
図7は、電流制御回路2の構成例を示す図である。なお、
図7では出力部50の図示を省略している。
図7に示す構成例では、電流制御部20をトランジスタで構成している。また、第1電圧制御部30は、抵抗R
1の第1抵抗32と、抵抗R
2の接地された第2抵抗33と、抵抗R
3の第3抵抗34と、降下電圧V
Dの接地されたダイオード35と、差動増幅器Xとを含む。また、第2電圧制御部40は、ツェナー電圧V
Zのツェナーダイオード(定電圧ダイオード)43と、抵抗R
4の接地された第4抵抗44と、S(ソース)が接地されたFET(電界効果トランジスタ)45と、差動増幅器Xとを含む。なお、差動増幅器Xは、第1差分検出部31及び第2差分検出部42として機能し、例えばRail−to−Rail動作のオペアンプによって構成される。換言すると、第1差分検出部31及び第2差分検出部42は、共通の差動増幅器Xで構成される。
【0043】
まず、第1電圧制御部30の動作について説明する。電流制御部20への入力電圧を電圧V
Aとすると、FET45がオフである場合、第1抵抗32を通って差動増幅器Xの負の入力端子に入力される電圧V
-は、{R
2/(R
1+R
2)}V
Aとなる。また、第3抵抗34を通って差動増幅器Xの正の入力端子に入力される電圧V
+は、V
Dとなる。ここで、V
-がV
+より小さいとき、差動増幅器XはイマジナリーショートによってV
-=V
+となるように作用するので、V
+が固定値であることから、V
-がV
+と等しくなるように電流制御部20に作用する。すなわち、電流制御部20は、V
Aが{(R
1+R
2)/R
2}V
Dまで上昇するまで、電流制御部20の電流を低下させる。ここで、{(R
1+R
2)/R
2}V
Dは第1電圧として機能する。
【0044】
次に、第2電圧制御部40の動作について説明する。ツェナーダイオード43は、電流制御部20の出力側から逆方向に接続されている。ここで、ツェナーダイオード43は、
図8に示すような電流電圧特性を示す。すなわち、ツェナーダイオード43は、逆方向に一定のツェナー電圧V
Zが印加されると電流を通す性質を有する。電流制御部20からの出力電圧V
Bは、ツェナーダイオード43のツェナー電圧V
Zより大きくなると、第2電圧制御部40に電流制御部20からの電流I
Bが流れる。ツェナーダイオード43には接地された第4抵抗44が直列に接続されているので、V
Bは、ツェナー電圧V
Zと、R
4とI
Bとの積との和と等しい(すなわち、V
B=V
Z+I
BR
4となる)。
【0045】
ここで、FET45のG(ゲート)に入力される電圧はI
BR
4であり、これは、電流I
Bに比例し、電流I
Bが電圧に変換されたものとなっている。FET45のGに入力される電圧I
BR
4がゲート閾値電圧を超えると、FET45がオンとなるので、第1抵抗32を通って差動増幅器Xの負の入力端子に入力される電圧V
-が低下してV
+より小さくなる。差動増幅器Xは、上記同様にV
-がV
+と等しくなるように電流制御部20に作用するので、電流制御部20の電流が低下し、I
Bも低下する。I
BR
4がゲート閾値電圧以下となると、FET45がオフとなり、電流制御部20の電流の低下が終了する。ここで、FET45のゲート閾値電圧は、第3電圧として機能する。
【0046】
具体的には、第2電圧を5Vとしたい場合、I
B=1μAでのV
Zが4Vであるとすると、R
4はI
B=1μAでの第4抵抗44の両端の電圧が1Vとなるように設定することができ、R
4=1MΩとなる。この場合、電流制御部20は、I
B=1μAとなるように電流を低下させる。
【0047】
図9は、環境発電装置1によって得られた電流電圧特性の測定結果(実施例)を示す図である。ここで比較例として、本実施形態に係る電流制御回路2を用いずに、環境発電部10に相当する構成の発電デバイスから直接負荷に電力供給した場合の測定結果を示す。
図9に示すように、本実施形態に係る環境発電装置1によると、外部機器に印加される電圧が、比較例よりも一定の範囲内に制御されることが分かる。
【0048】
前述したところは本発明の一実施形態を示したにすぎず、特許請求の範囲において、種々の変更を加えてもよいことは言うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明によれば、外部機器に印加される電圧を一定範囲内に制御することができる環境発電装置及び電流制御回路を提供することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 環境発電装置
2 電流制御回路
10 環境発電部
11 太陽電池モジュール
12 太陽電池セル群
13 太陽電池セル
20 電流制御部
30 第1電圧制御部
31 第1差分検出部
32 第1抵抗
33 第2抵抗
34 第3抵抗
35 ダイオード
40 第2電圧制御部
41 電流電圧変換部
42 第2差分検出部
43 ツェナーダイオード
44 第4抵抗
45 FET
50 出力部
X 差動増幅器
【要約】
本発明は、外部機器に印加される電圧を一定範囲内に制御することを目的とする。本発明によれば、電流制御部と、前記電流制御部への入力電圧が第1電圧以上となるように前記電流制御部を制御する第1電圧制御部と、前記電流制御部からの出力電圧が前記第1電圧以上である第2電圧以下となるように前記電流制御部を制御する第2電圧制御部と、を備える環境発電装置及び電流制御回路が得られる。