特許第6233600号(P6233600)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233600
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】硬化アミノ樹脂粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 12/06 20060101AFI20171113BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20171113BHJP
   C08L 61/20 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C08G12/06
   C08K3/36
   C08L61/20
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2014-516781(P2014-516781)
(86)(22)【出願日】2013年5月17日
(86)【国際出願番号】JP2013063814
(87)【国際公開番号】WO2013176057
(87)【国際公開日】20131128
【審査請求日】2016年5月11日
(31)【優先権主張番号】特願2012-116072(P2012-116072)
(32)【優先日】2012年5月21日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068618
【弁理士】
【氏名又は名称】萼 経夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104145
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 嘉夫
(74)【代理人】
【識別番号】100104385
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 勉
(74)【代理人】
【識別番号】100163360
【弁理士】
【氏名又は名称】伴 知篤
(72)【発明者】
【氏名】川口 正剛
(72)【発明者】
【氏名】鹿内 康史
(72)【発明者】
【氏名】小山 薫
(72)【発明者】
【氏名】藤田 賢志
【審査官】 小出 直也
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−097575(JP,A)
【文献】 特開2004−083848(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 8/00−16/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
5〜70nmの平均粒子径を有するコロイダルシリカの水性懸濁下で、多官能性アミノ化合物からなる少なくとも一種のアミノ系モノマー化合物とアルデヒド化合物とを塩基性条件下で反応させ、水に可溶なアミノ系樹脂の初期縮合物の水溶液を生成させる工程、及び該水溶液に少なくとも2種の酸触媒を加えて球状の硬化アミノ樹脂粒子を析出させる工程を含み、そして
該少なくとも2種の酸触媒が、スルホン酸類から選ばれる酸と、鉱酸類、スルホン酸類、及びシュウ酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸(前記酸とは異なる)とからなる、
硬化アミノ樹脂粒子の製造方法。
【請求項2】
前記少なくとも2種の酸触媒が、スルホン酸類から選ばれる酸と、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、スルホン酸類、及びシュウ酸からなる群から選択される少なくとも1種の酸(前記酸とは異なる)とからなる、請求項1に記載の硬化アミノ樹脂粒子の製造方法。
【請求項3】
前記少なくとも2種の酸触媒が、アルキルベンゼンスルホン酸(パラトルエンスルホン酸を除く)と、硫酸、硝酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸又はそれらの混合物から選択される酸との少なくとも2種からなる、請求項2に記載の硬化アミノ樹脂粒子の製造方法。
【請求項4】
前記アミノ系モノマー化合物100質量部に対して、前記コロイダルシリカを0.5乃至100質量部存在させる、請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の硬化アミノ樹脂粒子の製造方法。
【請求項5】
前記コロイダルシリカとして水性シリカゾルを用いる、請求項1乃至請求項4の何れか一項に記載の硬化アミノ樹脂粒子の製造方法。
【請求項6】
前記多官能性アミノ化合物が、メラミン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、CTUグアナミン、CMTUグアナミン、尿素、チオ尿素及びエチレン尿素からなる群から選択される、請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の硬化アミノ樹脂粒子の
製造方法。
【請求項7】
前記多官能性アミノ化合物がメラミンである、請求項6に記載の硬化アミノ樹脂粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬化アミノ樹脂粒子の製造方法に関し、詳細には、硬化アミノ樹脂を構成するアミノ系モノマー濃度を高濃度とした反応系であっても平均粒子径の小さい樹脂粒子を製造できる製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、アミノ系化合物とアルデヒド系化合物とを反応させて得られる球状の硬化アミノ樹脂粒子は、硬度や耐熱性、耐溶剤性に優れるという特性を利用し、艶消し剤、光拡散剤、研磨剤、各種フィルム用コーティング剤、或いはポリオレフィンやポリ塩化ビニル、各種ゴム、各種塗料、トナー等の充填剤、さらにはレオロジーコントロール剤や着色剤等の幅広い用途分野で用いられている。
こうした球状の硬化アミノ樹脂粒子は、種々の方法によって製造されることが知られており、例えば、アミノ系化合物とホルムアルデヒドとを反応させて得られる初期縮合物を乳化させて乳濁液とし、次いで硬化触媒を加えて硬化反応させる方法が開示されている(特許文献1乃至特許文献4等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭49−57091号公報
【特許文献2】特開昭50−45852号公報
【特許文献3】特開平4−211450号公報
【特許文献4】特開2002−327036号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述に開示される従来提案されている製造方法では、硬化アミノ樹脂粒子を構成するアミノ系モノマー濃度を高めた反応系において製造を実施すると、得られる樹脂粒子の粒子径が増大し、例えば4〜5μm程度の粒子径を有するメラミン系硬化樹脂粒子を得るには、該アミノ系モノマー濃度を反応系(反応混合物)の全質量に対して5%程度にまで低濃度とする必要があるなど、生産性に欠ける点が指摘されていた。
本発明は、上記の事情に鑑みなされたものであって、メラミン系硬化樹脂粒子等の硬化アミノ樹脂粒子の製造にあたり、反応系における樹脂粒子の原料濃度を高めた場合にあっても、平均粒子径が小さい樹脂粒子の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねた結果、硬化アミノ樹脂粒子を製造するにあたり、コロイダルシリカが存在する水性媒体中で、アミノ系モノマーとアルデヒド化合物から水に可溶なアミノ系樹脂の初期縮合物の水溶液を調製した後、2種以上の酸触媒を加えて硬化(縮重合)反応を行うことにより、アミノ系モノマーの濃度を高めた反応系においても平均粒子径の小さい樹脂粒子を効率的に製造できることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
すなわち本発明は、第1観点として、5〜70nmの平均粒子径を有するコロイダルシリカの水性懸濁下で、多官能性アミノ化合物からなる少なくとも一種のアミノ系モノマー化合物とアルデヒド化合物とを塩基性条件下で反応させ、水に可溶なアミノ系樹脂の初期縮合物の水溶液を生成させる工程、及び該水溶液に少なくとも2種の酸触媒を加えて球状の硬化アミノ樹脂粒子を析出させる工程、とを含む、硬化アミノ樹脂粒子の製造方法に関する。
第2観点として、前記少なくとも2種の酸触媒が、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸(パラトルエンスルホン酸を除く)、スルファミン酸、ギ酸、シュウ酸、安息香酸及びフタル酸からなる群から選択される少なくとも2種の酸からなる、第1観点に記載の硬化アミノ樹脂粒子の製造方法に関する。
第3観点として、前記少なくとも2種の酸触媒が、アルキルベンゼンスルホン酸(パラトルエンスルホン酸を除く)と、硫酸、硝酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸又はそれらの混合物から選択される酸との少なくとも2種からなる、第2観点に記載の硬化アミノ樹脂粒子の製造方法に関する。
第4観点として、前記アミノ系モノマー化合物100質量部に対して、前記コロイダルシリカを0.5乃至100質量部存在させる、第1観点に記載の硬化アミノ樹脂粒子の製造方法に関する。
第5観点として、前記コロイダルシリカとして水性シリカゾルを用いる、第1観点に記載の硬化アミノ樹脂粒子の製造方法に関する。
第6観点として、前記多官能性アミノ化合物は、メラミン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、CTUグアナミン、CMTUグアナミン、尿素、チオ尿素及びエチレン尿素からなる群から選択される、第1観点に記載の硬化アミノ樹脂粒子の製造方法に関する。
第7観点として、前記多官能性アミノ化合物がメラミンである、第6観点に記載の硬化アミノ樹脂粒子の製造方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によれば、硬化アミノ樹脂粒子を構成するアミノ系モノマー濃度を高めた反応系においても、該樹脂粒子の粒径の増大が起きず、平均粒子径の小さい樹脂粒子を製造することができる。
よって、本発明の方法により、硬化アミノ樹脂粒子、特に平均粒子径のより小さい樹脂粒子の量産を有利に進めることができ、その生産性が著しく向上する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は実施例1で得られた硬化メラミン樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
図2図2は比較例1で得られた硬化メラミン樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
図3図3は実施例7で得られた硬化メラミン樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
図4図4は比較例4で得られた硬化メラミン樹脂粒子の走査型電子顕微鏡写真を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の硬化アミノ樹脂粒子の製造方法は以下の(a)及び(b)工程を含む。
(a)5〜70nmの平均粒子径を有するコロイダルシリカの懸濁下でアミノ系モノマー化合物とアルデヒド化合物とを塩基性条件下で反応させ、水に可溶なメラミン系樹脂の初期縮合物の水溶液を生成させる工程。
(b)該水溶液に少なくとも2種の触媒を加えて球状の硬化アミノ樹脂粒子を析出させる工程。
【0010】
上記(a)工程において使用されるアミノ系モノマー化合物は、多官能性アミノ化合物からなる少なくとも一種のアミノ系モノマー化合物である。
ここで用いられる多官能性アミノ化合物としては、メラミン;グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等の6−置換グアナミン類;CTUグアナミン(3,9−ビス[2−(3,5−ジアミノ−2,4,6−トリアザフェニル)エチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)、CMTUグアナミン(3,9−ビス[(3,5−ジアミノ−2,4,6−卜リアザフェニル)メチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン)等のアミン置換トリアジン化合物;尿素、チオ尿素、エチレン尿素等の尿素類を挙げることができる。またメラミンのアミノ基の水素をアルキル基、アルケニル基、フェニル基で置換した置換メラミン化合物[米国特許第5,998,573号明細書(対応日本特許:特開平9−143238号公報)に記載されている。]、そしてメラミンのアミノ基の水素をヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルキルオキシアルキル基、アミノアルキル基で置換した置換メラミン化合物[米国特許第5,322,915号明細書(対応日本特許:特開平5−202157号公報)に記載されている。]なども使用できる。中でも、多官能性アミノ化合物としては、工業的に生産されており安価なメラミン、グアナミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミンが好ましく、特にメラミンが最も好ましい。
本発明において、上記アミノ系モノマー化合物は、一種又は二種以上の多官能性アミノ化合物を用いることができる。またこれら多官能性アミノ化合物に加えて、フェノール、クレゾール、アルキルフェノール、レゾルシン、ハイドロキノン、ピロガロールなどのフェノール類、アニリン等を追加して用いても良い。
【0011】
上記(a)段階において使用されるアルデヒド化合物としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド、フルフラールなどが挙げられるが、安価で先に挙げたアミノ系モノマー化合物との反応性が良いホルムアルデヒドやパラホルムアルデヒドが好ましい。アルデヒド化合物はアミノ系モノマー化合物1モルに対して有効アルデヒド基当たり1.1〜6.0モル、特に1.2〜4.0モルとなるアルデヒド化合物を使用することが好ましい。
【0012】
上記(a)段階で使用する媒体としては水が最も好ましい。また水の一部を、水に可溶する有機溶媒に置き換えた混合溶液も使用でき、この場合、前述の初期縮合物を溶解することが可能な有機溶媒を選択すると良い。好ましい有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロパノール、プロパノールなどのアルコール類;ジオキサン、テトラヒドロフラン、1,2−ジメトキシエタンなどのエーテル類;N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシドなどの極性溶媒が挙げられる。
【0013】
コロイダルシリカは、5〜70nmの平均粒子径を有するものが使用される。
【0014】
ここでコロイダルシリカの平均粒子径は、窒素吸着法(BET法)により測定して得られる比表面積径である。平均粒子径(比表面積径)(Dnm)は、窒素吸着法で測定される比表面積Sm/gから、D=2720/Sの式によって与えられる。沈降性シリカパウダー、気相法シリカパウダーなどのパウダー状のコロイダルシリカを使用することもできるが、好ましくは媒体中で一次粒子レベルまで安定分散させたコロイダルシリカのゾルを使用すると良い。コロイダルシリカのゾルとしては水性シリカゾルとオルガノシリカゾルがありどちらも適用可能であるが、メラミン樹脂の製造に水性媒体を用いる場合、コロイダルシリカのゾルの分散安定性の面から水性シリカゾルを使用することが最も好ましい。コロイダルシリカのゾル中のシリカ濃度は5〜50質量%のものが一般に市販されており、容易に入手できるので好ましい。
【0015】
コロイダルシリカの平均粒子径が70nmを超える場合は、後の(b)工程で析出する硬化アミノ樹脂粒子は球状粒子になり難くなる。硬化アミノ樹脂粒子の平均粒子径は、一般的に前記アミノ系モノマー化合物濃度が低いほど、またコロイダルシリカの平均粒子径が小さいほど小さくなる傾向にある。
【0016】
コロイダルシリカの添加量は、前記アミノ系モノマー化合物100質量部に対して0.5〜100質量部、特に1〜50質量部存在させることが好ましい。添加量が0.5質量部未満では(b)工程において硬化アミノ樹脂粒子を得ることが困難になる。また添加量が100質量部を超えても粒子は得られるが、この場合、最適な条件で得られる硬化アミノ樹脂粒子に比べ微小な、球状でない凝集粒子が副生するので好ましくない。
【0017】
上記(a)工程において、前記アミノ系モノマー化合物と前記アルデヒド化合物の反応は塩基性条件下で、すなわち、反応液のpHを7〜10に調整して反応を行うことが好ましい。塩基性触媒としては、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア水などが好適に使用できる。反応は、通常50〜100℃で行えばよく、その結果、分子量200〜700程度の水に可溶な初期縮合物の水溶液が調製される。
【0018】
上記(b)工程の硬化反応で使用する酸触媒としては、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸などの鉱酸類;メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸(パラトルエンスルホン酸を除く)、スルファミン酸などのスルホン酸類;ギ酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸などの有機酸類などが挙げられ、本発明においては上記酸触媒を少なくとも2種使用する。
これら酸触媒の少なくとも2種の好ましい組み合わせとしては、鉱酸類とスルホン酸類、スルホン酸類と有機酸類、スルホン酸類の異なる少なくとも2種類等が挙げられる。
【0019】
中でも、酸触媒として、アルキルベンゼンスルホン酸(パラトルエンスルホン酸を除く)と、上述に挙げるその他の酸、すなわち、塩酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、スルファミン酸、ギ酸、シュウ酸、安息香酸、フタル酸、又はそれらの混合物から選択される酸との少なくとも2種を使用することが好ましく、特に、アルキルベンゼンスルホン酸(パラトルエンスルホン酸を除く)と、硫酸、硝酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸又はそれらの混合物から選択される酸との少なくとも2種を使用することがより好ましい。
前述のアルキルベンゼンスルホン酸(パラトルエンスルホン酸を除く)としては、炭素原子数が10以上のアルキル基を有するアルキルベンゼンスルホン酸が好ましく、例えばデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸、ヘキサデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、及びこれらの混合物等を例示することが出来る。
【0020】
アルキルベンゼンスルホン酸(パラトルエンスルホン酸を除く)と、硫酸、硝酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸又はそれらの混合物から選択される酸との混合モル比は、99.9/0.1乃至0.1/99.9、好ましくは90/10乃至0.1/99.9、より好ましくは50/50乃至0.1/99.9、特に好ましくは30/70乃至1/99、例えば10/90、6/94、5/95、3/97、1/99である。
【0021】
これら酸触媒の好ましい組み合わせの中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸とパラトルエンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸と硝酸、ドデシルベンゼンスルホン酸と硫酸、そしてドデシルベンゼンスルホン酸とシュウ酸が最も好ましい。
【0022】
(b)工程において、前記(a)工程で得られた初期縮合物の水溶液に少なくとも2種の酸触媒を加えて硬化(縮重合)反応を行うが、通常は酸触媒添加後、数分で硬化アミノ樹脂粒子が析出する。硬化反応は、反応液のpHを酸触媒により3〜7に調整して、70〜100℃で行うことが好ましい。
【0023】
以上の(a)及び(b)工程を経て得られる硬化アミノ樹脂粒子は、コロイダルシリカが粒子表面付近に偏在した粒子となり、一般的な濾過又は遠心分離した固形分を乾燥したり、又は樹脂粒子の水分散スラリーを直接噴霧乾燥することにより、粉末状の粒子として得ることができる。乾燥された粉末状の粒子が粒子間凝集している場合は、ホモミキサー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサーなどの剪断力を有する混合機や、ピンディスクミル、パルベライザー、イノマイザー、カウンタージェットミル、インペラーミルなどの粉砕機で適切に処理すれば、球状粒子を破壊することなく粒子間凝集をほぐすことができる。
【0024】
このようにして得られる硬化アミノ樹脂粒子は、平均粒子径が0.05〜100μmの粒子であり、ここで平均粒子径(μm)とは、SEM像から50個の粒子を無作為に抽出し測定した直径の平均値である。
【0025】
以上に記した本発明の製造方法においては、前記アミノ系モノマー化合物の反応混合物に対する濃度、すなわち、(a)工程及び(b)工程で使用する全成分(前記アミノ系モノマー化合物、前記アルデヒド化合物、水や有機溶媒等の媒体、コロイダルシリカ(水性シリカゾル)、塩基性触媒、酸触媒)の総質量に対する前記アミノ系モノマー化合物の割合が5質量%以上、例えば9〜12質量%であっても、平均粒子径が4μm前後と粒子径の非常に小さい樹脂粒子を製造できる。
【実施例】
【0026】
以下に実施例を掲げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0027】
(1)走査型電子顕微鏡(SEM)
装置:日本電子(株)製 JSM−7400F
【0028】
DBSA:ドデシルベンゼンスルホン酸
PTSA:パラトルエンスルホン酸
【0029】
[実施例1]
撹拌機、還流コンデンサー及び温度計を装備した反応フラスコに、メラミン100質量部、37質量%ホルマリン193質量部(メラミンに対して3モル倍)、20質量%水性シリカゾル[日産化学工業(株)製、スノーテックス(登録商標)ST−N、平均粒子径12nm、pH9.5、以下同じ]19質量部、水722質量部及び25質量%アンモニア水1.4質量部を仕込んだ。このとき該混合物のpHは8であった。この混合物を撹拌しながら昇温し、70℃で30分間反応させてメラミン樹脂の初期縮合物の水溶液を調製した。次にこの水溶液を70℃に維持したまま、酸触媒として、18質量%PTSA水溶液17質量部及び10質量%DBSA水溶液1.8質量部を添加した(PTSA/DBSAのモル比97/3、プロトン供与数比97/3)。このとき該水溶液のpHは5〜6であった。その後、90℃まで昇温して3時間硬化反応を続けた。冷却後、析出している樹脂粒子を濾別、乾燥して、白色の硬化メラミン樹脂粒子134質量部を得た。
得られた硬化メラミン樹脂粒子をSEMで観察したところ、該粒子は真球状であり、その平均粒子径は3.7μmであった。SEM像を図1に示す。なお、平均粒子径については、SEM像から50個の粒子を無作為に抽出し、その直径の平均を求めた。
【0030】
[実施例2]
酸触媒を、18質量%PTSA水溶液16質量部及び10質量%DBSA水溶液6.1質量部(PTSA/DBSAのモル比90/10、プロトン供与数比90/10)に変更した以外は実施例1と同様に操作して、白色の硬化メラミン樹脂粒子131質量部を得た。
得られた硬化メラミン樹脂粒子をSEMで観察したところ、該粒子は真球状であり、その平均粒子径は4.4μmであった。
【0031】
[実施例3]
酸触媒を、65質量%硝酸水溶液1.8質量部及び10質量%DBSA水溶液1.9質量部(硝酸/DBSAのモル比97/3、プロトン供与数比97/3)に変更した以外は実施例1と同様に操作して、白色の硬化メラミン樹脂粒子138質量部を得た。
得られた硬化メラミン樹脂粒子をSEMで観察したところ、該粒子は真球状であり、その平均粒子径は3.8μmであった。
【0032】
[実施例4]
酸触媒を、96質量%硫酸水溶液1質量部及び10質量%DBSA水溶液1.9質量部(硫酸/DBSAのモル比94/6、プロトン供与数比97/3)に変更した以外は実施例1と同様に操作して、白色の硬化メラミン樹脂粒子133質量部を得た。
得られた硬化メラミン樹脂粒子をSEMで観察したところ、該粒子は真球状であり、その平均粒子径は4.1μmであった。
【0033】
[実施例5]
酸触媒を、シュウ酸1.7質量部及び10質量%DBSA水溶液1.9質量部(シュウ酸/DBSAのモル比97/3、プロトン供与数比97/3)に変更した以外は実施例1と同様に操作して、白色の硬化メラミン樹脂粒子138質量部を得た。
得られた硬化メラミン樹脂粒子をSEMで観察したところ、該粒子は真球状であり、その平均粒子径は3.7μmであった。
【0034】
[実施例6]
撹拌機、還流コンデンサー及び温度計を装備した反応フラスコに、メラミン100質量部、37質量%ホルマリン129質量部(メラミンに対して2モル倍)、20質量%水性シリカゾル28質量部、水541質量部及び25質量%アンモニア水1質量部を仕込んだ。このとき該混合物のpHは8であった。この混合物を撹拌しながら昇温し、70℃で30分間反応させてメラミン樹脂の初期縮合物の水溶液を調製した。次にこの水溶液を70℃に維持したまま、酸触媒として、18質量%PTSA水溶液13質量部及び10質量%DBSA水溶液1.4質量部を添加した(PTSA/DBSAのモル比97/3、プロトン供与数比97/3)。このとき該水溶液のpHは5〜6であった。その後、90℃まで昇温して3時間硬化反応を続けた。冷却後、析出している樹脂粒子を濾別、乾燥して、白色の硬化メラミン樹脂粒子126質量部を得た。
得られた硬化メラミン樹脂粒子をSEMで観察したところ、該粒子は真球状であり、その平均粒子径は4.1μmであった。
【0035】
[比較例1]
撹拌機、還流コンデンサー及び温度計を装備した反応フラスコに、メラミン100質量部、37質量%ホルマリン193質量部(メラミンに対して3モル倍)、20質量%水性シリカゾル26質量部、水1300質量部及び25質量%アンモニア水1.2質量部を仕込んだ。このとき該混合物のpHは8であった。この混合物を撹拌しながら昇温し、70℃で30分間反応させてメラミン樹脂の初期縮合物の水溶液を調製した。次にこの水溶液を70℃に維持したまま、酸触媒として、18質量%PTSA水溶液18質量部を添加した。このとき該水溶液のpHは5〜6であった。その後、90℃まで昇温して3時間硬化反応を続けた。冷却後、析出している樹脂粒子を濾別、乾燥して、白色の硬化メラミン樹脂粒子127質量部を得た。
得られた硬化メラミン樹脂粒子をSEMで観察したところ、該粒子は真球状であり、その平均粒子径は3.9μmであった。SEM像を図2に示す。
【0036】
[比較例2]
メラミンの使用量を200質量部に、37質量%ホルマリンの使用量を386質量部(メラミンに対して3モル倍)にそれぞれ変更した以外は比較例1と同様に操作して、白色の硬化メラミン樹脂粒子266質量部を得た。
得られた硬化メラミン樹脂粒子をSEMで観察したところ、該粒子は真球状であり、その平均粒子径は8.1μmであった。
【0037】
[比較例3]
撹拌機、還流コンデンサー及び温度計を装備した反応フラスコに、メラミン100質量部、37質量%ホルマリン193質量部(メラミンに対して3モル倍)、20質量%水性シリカゾル15質量部、水589質量部及び25質量%アンモニア水1.1質量部を仕込んだ。このとき該混合物のpHは8であった。この混合物を撹拌しながら昇温し、70℃で30分間反応させてメラミン樹脂の初期縮合物の水溶液を調製した。次にこの水溶液を70℃に維持したまま、酸触媒として、10質量%DBSA水溶液50質量部を添加した。このとき該水溶液のpHは5〜6であった。その後、90℃まで昇温して3時間硬化反応を続けたが、撹拌翼及び反応フラスコ内壁面に多量の塊状のゲル化物が付着し、硬化メラミン樹脂粒子は得られなかった。
【0038】
実施例1〜6及び比較例1〜3で製造した硬化メラミン樹脂粒子の平均粒子径、製造時のメラミン濃度(反応混合物の総質量に対するメラミン仕込量の質量%)、及び製造効率(反応混合物1t当りに換算した硬化メラミン樹脂粒子の得量)を表1に併せて示す。
【0039】
【表1】
【0040】
表1に示したように、酸触媒を二種併用した本発明の方法で製造した硬化メラミン樹脂粒子は、何れもメラミン濃度が9〜12質量%の条件で、平均粒子径が4μm程度と小さな粒子径を有する樹脂粒子を製造できた(実施例1〜6)。
これに対し、酸触媒を一種のみ(PTSA)使用した場合では、メラミン濃度が10質量%の場合には平均粒子径が8μm程度と実施例に比べて大きな粒子となり(比較例2)、平均粒子径が4μm程度の粒子を得るためには、メラミン濃度を6質量%とその濃度を低くしなければならなかった(比較例1)。さらに、酸触媒としてDBSAのみを使用した場合では、硬化メラミン樹脂粒子は得られなかった(比較例3)。
【0041】
[実施例7]
撹拌機、還流コンデンサー及び温度計を装備した反応フラスコに、メラミン100質量部、37質量%ホルマリン129質量部(メラミンに対して2モル倍)、20質量%水性シリカゾル68質量部、水904質量部及び25質量%アンモニア水1.6質量部を仕込んだ。このとき該混合物のpHは8であった。この混合物を撹拌しながら昇温し、70℃で30分間反応させてメラミン樹脂の初期縮合物の水溶液を調製した。次にこの水溶液を70℃に維持したまま、酸触媒として、18質量%PTSA水溶液21質量部及び10質量%DBSA水溶液2.2質量部を添加した(PTSA/DBSAのモル比97/3、プロトン供与数比97/3)。このとき該水溶液のpHは5〜6であった。その後、90℃まで昇温して3時間硬化反応を続けた。冷却後、析出している樹脂粒子を濾別、乾燥して、白色の硬化メラミン樹脂粒子128質量部を得た。
得られた硬化メラミン樹脂粒子をSEMで観察したところ、該粒子は真球状であり、その平均粒子径は1.6μmであった。SEM像を図3に示す。
【0042】
[比較例4]
撹拌機、還流コンデンサー及び温度計を装備した反応フラスコに、メラミン100質量部、37質量%ホルマリン192質量部(メラミンに対して3モル倍)、20質量%水性シリカゾル[日産化学工業(株)製、スノーテックス(登録商標)ST−NXS、平均粒子径5nm、pH9.5]88質量部、水2549質量部及び25質量%アンモニア水1.1質量部を仕込んだ。このとき該混合物のpHは8であった。この混合物を撹拌しながら昇温し、70℃で30分間反応させてメラミン樹脂の初期縮合物の水溶液を調製した。次にこの水溶液を70℃に維持したまま、酸触媒として、18質量%PTSA水溶液15質量部を添加した。このとき該水溶液のpHは5〜6であった。その後、90℃まで昇温して3時間硬化反応を続けた。冷却後、析出している樹脂粒子を濾別、乾燥して、白色の硬化メラミン樹脂粒子124質量部を得た。
得られた硬化メラミン樹脂粒子をSEMで観察したところ、該粒子は真球状であり、その平均粒子径は1.5μmであった。SEM像を図4に示す。
【0043】
実施例7及び比較例4で製造した硬化メラミン樹脂粒子の平均粒子径、製造時のメラミン濃度(反応混合物の総質量に対するメラミン仕込量の質量%)、及び製造効率(反応混合物1t当りに換算した硬化メラミン樹脂粒子の得量)を表2に併せて示す。
【0044】
【表2】
【0045】
表2に示したように、酸触媒を二種併用した本発明の方法で製造した硬化メラミン樹脂粒子は、メラミン濃度が8質量%の条件で、平均粒子径が1.6μmと小さな粒子径を有する樹脂粒子を製造できた(実施例7)。
これに対し、酸触媒を一種のみ(PTSA)使用した場合では、平均粒子径が1.6μm程度の粒子を得るためには、メラミン濃度を3質量%とその濃度を低くしなければならなかった(比較例4)。
【0046】
以上のことより、本発明の製造方法によれば、得られる硬化メラミン樹脂粒子の平均粒子径を増大させることなく、反応時のメラミン濃度を上げる(使用溶媒量を削減、すなわち同一容積での製造量を増加する)ことが可能となり、製造時の効率を1.6〜2.5倍に向上することができる。
図1
図2
図3
図4