特許第6233788号(P6233788)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 富士フイルム株式会社の特許一覧

特許6233788光電変換素子、これを用いた太陽電池ならびに光電変換素子の製造方法
<>
  • 特許6233788-光電変換素子、これを用いた太陽電池ならびに光電変換素子の製造方法 図000041
  • 特許6233788-光電変換素子、これを用いた太陽電池ならびに光電変換素子の製造方法 図000042
  • 特許6233788-光電変換素子、これを用いた太陽電池ならびに光電変換素子の製造方法 図000043
  • 特許6233788-光電変換素子、これを用いた太陽電池ならびに光電変換素子の製造方法 図000044
  • 特許6233788-光電変換素子、これを用いた太陽電池ならびに光電変換素子の製造方法 図000045
  • 特許6233788-光電変換素子、これを用いた太陽電池ならびに光電変換素子の製造方法 図000046
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233788
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月29日
(54)【発明の名称】光電変換素子、これを用いた太陽電池ならびに光電変換素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 51/44 20060101AFI20171120BHJP
   H01L 51/46 20060101ALI20171120BHJP
   H01G 9/20 20060101ALI20171120BHJP
【FI】
   H01L31/04 112Z
   H01L31/04 160
   H01L31/04 154B
   H01L31/04 154C
   H01L31/04 154D
   H01G9/20 113Z
   H01G9/20 103
【請求項の数】14
【全頁数】53
(21)【出願番号】特願2016-514889(P2016-514889)
(86)(22)【出願日】2015年4月16日
(86)【国際出願番号】JP2015061725
(87)【国際公開番号】WO2015163233
(87)【国際公開日】20151029
【審査請求日】2016年10月17日
(31)【優先権主張番号】特願2014-92110(P2014-92110)
(32)【優先日】2014年4月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-46441(P2015-46441)
(32)【優先日】2015年3月9日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076439
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 敏三
(74)【代理人】
【識別番号】100161469
【弁理士】
【氏名又は名称】赤羽 修一
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 寛敬
(72)【発明者】
【氏名】小林 克
【審査官】 磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】 韓国公開特許第10−2014−0035284(KR,A)
【文献】 Giancarlo S. LORENA, et al.,Electronic Properties and Device Fabrication of Soluble Organic-Inorganic Copper Halide Based Perovs,応用物理学会秋季学術講演会講演予稿集,2013年 8月31日,Vol.74,p.12-055(16P-C5-12)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 51/42−51/48
Scopus
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光吸収剤を含む感光層を導電性支持体上に有する第一電極と、前記第一電極に対向する第二電極とを有する光電変換素子であって、
前記光吸収剤が、カチオン性有機基Aのカチオン、金属原子Mのカチオンおよびアニオン性原子もしくは原子団Xのアニオンを有するペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物を含み、
前記第一電極の表面に、下記式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物の層を有する光電変換素子。
【化1】
式(3)において、Gは−OR、−OYa、−SR、−SYa、−NRおよび−(NRYaからなる群より選択される基または塩を表す。R、RおよびRは各々独立に水素原子または置換基を表す。Yaは対塩を表す。Lはアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基またはシクロアルカジエン基を表す。Jは単結合または下記式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基を表す。p1は1以上の整数を表す。
式(4)において、GおよびGは各々独立に前記Gと同義である。Jは下記式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基を表す。p2は1以上の整数を表す。
式(5)において、環Cは芳香族ヘテロ環を表す。Zはヘテロ原子またはNR12を表す。mは1または2を表す。R11は置換基を表す。R12は水素原子または置換基を表す。Gは前記Gと同義である。Jは単結合または連結基を表す。n11は1以上の整数を表す。n12およびn13は各々独立に0以上の整数を表す。ただし、環Cの構成原子に窒素原子が一つもない場合、n13は1以上の整数を表す。qは1以上の整数を表す。
【化2】
式中、*は、LもしくはGとの連結部、または、前記式J−1〜式J−8のいずれかの式で表される他の連結基との連結部を表す。Dは窒素原子、N19またはCR20を表す。Dは酸素原子、硫黄原子またはNR21を表す。Mは酸素原子、硫黄原子またはNR22を表す。Zはヘテロ原子またはNR13を表す。Pは、>C=CRY1Y2、>C=Sまたは>C=Oを表す。環Pは脂肪族炭化水素環または脂肪族ヘテロ環を表す。R13〜R17、R19〜R22は各々独立に水素原子または置換基を表す。R18、RY1およびRY2は各々独立に置換基を表す。m1は0以上の整数を表す。m2は0以上の整数を表す。m3は2以上の整数を表す。m4は0以上の整数を表す。
【請求項2】
前記ペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物が、下記式(I)で表される化合物である請求項1に記載の光電変換素子。
式(I):AaMmXx
式中、Aは下記式(1)で表されるカチオン性有機基を表す。Mは金属原子を表す。Xはアニオン性原子もしくは原子団を表す。aは1または2を表し、mは1を表し、a、mおよびxはa+2m=xを満たす。
式(1):R1a−NH
式中、R1aは、置換基を表す。
【請求項3】
前記R1aが、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基または下記式(2)で表すことができる基である請求項2に記載の光電変換素子。
【化3】
式中、XはNR1c、酸素原子または硫黄原子を表す。R1bおよびR1cは各々独立に水素原子または置換基を表す。***は式(1)の窒素原子との結合を表す。
【請求項4】
前記JまたはJの基が、各々独立に、下記式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基である請求項1〜3のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【化4】
式中、*はG、G、Lもしくは環Cとの連結部、または、前記式J−1〜式J−8のいずれかの式で表される他の連結基との連結部を表す。Dは窒素原子、N19またはCR20を表す。Dは酸素原子、硫黄原子またはNR21を表す。Mは酸素原子、硫黄原子またはNR22を表す。Zはヘテロ原子またはNR13を表す。Pは、>C=CRY1Y2、>C=Sまたは>C=Oを表す。環Pは脂肪族炭化水素環または脂肪族ヘテロ環を表す。R13〜R17、R19〜R22は各々独立に水素原子または置換基を表す。R18、RY1およびRY2は各々独立に置換基を表す。m1は0以上の整数を表す。m2は0以上の整数を表す。m3は2以上の整数を表す。m4は0以上の整数を表す。
【請求項5】
前記式(3)〜(5)で表される化合物が、それぞれ、下記式(6)〜(8)で表される化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【化5】
式(6)において、Gおよびp1は前記式(3)のGおよびp1と同義である。Lは分岐アルキル基、ハロゲン原子を有するアルキル基またはシクロアルキル基を表す。Jは単結合または下記式J−7で表される連結基を表す。
式(7)において、GおよびGは各々独立に前記式(3)のGと同義である。p2は前記式(4)のp2と同義である。Jは下記式J−1および式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基を表し、Jが前記式J−1で表される連結基のみで表される場合、式J−1が有するR14およびR15のうち少なくとも一つがハロゲン原子、アルキル基またはハロゲン原子を有するアルキル基を表す。
式(8)において、Jは単結合または下記式J−1、式J−6および式J−7で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基を表す。環C、Z、m、q、R11、G、n11、n12およびn13は、それぞれ式(5)の環C、Z、m、q、R11、G、n11、n12およびn13と同義である。
【化6】
式中、*はG、G、G、G、Lもしくは環Cとの連結部または前記他の連結基との連結部を表す。Dは酸素原子、硫黄原子またはNR21を表す。Mは酸素原子、硫黄原子またはNR22を表す。Zはヘテロ原子またはNR13を表す。Pは、>C=CRY1Y2、>C=Sまたは>C=Oを表す。環Pは脂肪族炭化水素環または脂肪族ヘテロ環を表す。R13〜R15、R21およびR22は各々独立に水素原子または置換基を表す。R18、RY1およびRY2は各々独立に置換基を表す。m1は0以上の整数を表す。m2は0以上の整数を表す。m3は2以上の整数を表す。m4は0以上の整数を表す。
【請求項6】
前記n13が、1以上の整数を表す請求項1〜5のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項7】
前記G、G、GおよびGが、各々独立に、−NRまたは−(NRYaで表される請求項1〜6のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項8】
前記R11が、ハロゲン原子、分岐アルキル基、または、ハロゲン原子を有する基である請求項1〜7のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項9】
前記Mが、鉛およびスズからなる群より選択される少なくとも1種の金属原子である請求項1〜8のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項10】
前記Xが、ハロゲン原子である請求項1〜9のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項11】
前記導電性支持体と前記感光層との間に多孔質層を有する請求項1〜10のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項12】
前記第一電極と前記第二電極との間に正孔輸送層を有する請求項1〜11のいずれか1項に記載の光電変換素子。
【請求項13】
請求項1〜12のいずれか1項に記載の光電変換素子を具備する太陽電池。
【請求項14】
カチオン性有機基Aのカチオン、金属原子Mのカチオンおよびアニオン性原子もしくは原子団Xのアニオンを有するペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物が光吸収剤として含まれる感光層を導電性支持体上に有する第一電極を、下記式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含有する液に接触させて、前記第一電極の表面に該化合物の層を形成する光電変換素子の製造方法。
【化7】
式(3)において、Gは−OR、−OYa、−SR、−SYa、−NRおよび−(NRYaからなる群より選択される基または塩を表す。R、RおよびRは各々独立に水素原子または置換基を表す。Yaは対塩を表す。Lはアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基またはシクロアルカジエン基を表す。Jは単結合または下記式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基を表す。p1は1以上の整数を表す。
式(4)において、GおよびGは各々独立に前記Gと同義である。Jは下記式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基を表す。p2は1以上の整数を表す。
式(5)において、環Cは芳香族ヘテロ環を表す。Zはヘテロ原子またはNR12を表す。mは1または2を表す。R11は置換基を表す。R12は水素原子または置換基を表す。Gは前記Gと同義である。Jは単結合または連結基を表す。n11は1以上の整数を表す。n12およびn13は各々独立に0以上の整数を表す。ただし、環Cの構成原子に窒素原子が一つもない場合、n13は1以上の整数を表す。qは1以上の整数を表す。
【化8】
式中、*は、LもしくはGとの連結部、または、前記式J−1〜式J−8のいずれかの式で表される他の連結基との連結部を表す。Dは窒素原子、N19またはCR20を表す。Dは酸素原子、硫黄原子またはNR21を表す。Mは酸素原子、硫黄原子またはNR22を表す。Zはヘテロ原子またはNR13を表す。Pは、>C=CRY1Y2、>C=Sまたは>C=Oを表す。環Pは脂肪族炭化水素環または脂肪族ヘテロ環を表す。R13〜R17、R19〜R22は各々独立に水素原子または置換基を表す。R18、RY1およびRY2は各々独立に置換基を表す。m1は0以上の整数を表す。m2は0以上の整数を表す。m3は2以上の整数を表す。m4は0以上の整数を表す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電変換素子、これを用いた太陽電池ならびに光電変換素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光電変換素子は、各種の光センサー、複写機、太陽電池等に用いられている。太陽電池は、非枯渇性の太陽エネルギーを利用するものとして、その本格的な実用化が期待されている。このなかでも、増感剤として有機色素またはRuビピリジル錯体等を用いた色素増感太陽電池は、研究開発が盛んに進められ、光電変換効率が11%程度に到達している。
【0003】
その一方で、近年、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(ペロブスカイト化合物)として金属ハロゲン化物を用いた太陽電池が、比較的高い変換効率を達成できるとの研究成果が報告され、注目を集めている。
特許文献1には、CHNHMX(MはPbまたはSnを表し、Xはハロゲン原子を表す。)で表されるペロブスカイトおよび半導体微粒子層を含む光吸収層と電解液からなる電解質層とを備えた太陽電池が、記載されている。
特許文献2には、混合アニオンのペロブスカイト構造を有する光吸収剤および固体正孔輸送層を有する光電変換素子が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】韓国特許第10−1172374号公報
【特許文献2】国際公開第2013/171517号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、ペロブスカイト化合物を用いた太陽電池は、光電変換効率の向上に一定の成果が得られている。しかし、この太陽電池は、開発されて間もないため、電池性能については、まだ十分な研究、検討がされていない。
このような状況において、ペロブスカイト化合物を用いて同一の製造方法で繰り返して太陽電池を製造したところ、得られた太陽電池間の光電変換効率の変動(バラツキ)が大きく、電池性能の安定性の実現の点で、問題があることが分かった。
【0006】
したがって、本発明は、光電変換効率の変動が小さく、安定した電池性能を発揮する光電変換素子およびこれを備えた太陽電池を提供することを課題とする。
また、安定した電池性能を発揮する光電変換素子を製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、ペロブスカイト化合物を光吸収剤として用いた太陽電池(ペロブスカイト増感太陽電池ともいう)について種々検討したところ、第一電極の表面を形成する層と固体正孔輸送層との密着性(相溶性)が光電変換効率の変動に影響していることを見出し、さらに検討を進めた結果、第一電極の表面と固体正孔輸送層との間に特定の化合物を介在させると、第一電極の表面と固体正孔輸送層の密着性が増強し、さらには逆電子移動をも防止しうることを見出した。しかも、正孔輸送層に限らず、これ以外の層(他の層ともいう)を第一電極と第二電極の間に設けた太陽電池であっても、第一電極の表面に特定の化合物を設けると、第一電極の表面と他の層との密着性も増強し、さらには逆電荷移動(逆電子移動や逆正孔移動)をも防止しうることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて完成された。
【0008】
すなわち、上記の課題は以下の手段により解決された。
<1>光吸収剤を含む感光層を導電性支持体上に有する第一電極と、第一電極に対向する第二電極とを有する光電変換素子であって、
光吸収剤が、カチオン性有機基Aのカチオン、金属原子Mのカチオンおよびアニオン性原子もしくは原子団Xのアニオンを有するペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物を含み、
第一電極の表面に、下記式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物の層を有する光電変換素子。
【0009】
【化1-1】
【0010】
式(3)において、Gは−OR、−OYa、−SR、−SYa、−NRおよび−(NRYaからなる群より選択される基または塩を表す。R、RおよびRは各々独立に水素原子または置換基を表す。Yaは対塩を表す。Lはアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基またはシクロアルカジエン基を表す。Jは単結合または下記式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基を表す。p1は1以上の整数を表す。
式(4)において、GおよびGは各々独立にGと同義である。Jは下記式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基を表す。p2は1以上の整数を表す。
式(5)において、環Cは芳香族ヘテロ環を表す。Zはヘテロ原子またはNR12を表す。mは1または2を表す。R11は置換基を表す。R12は水素原子または置換基を表す。GはGと同義である。J3は単結合または連結基を表す。n11は1以上の整数を表す。n12およびn13は各々独立に0以上の整数を表す。ただし、環Cの構成原子に窒素原子が一つもない場合、n13は1以上の整数を表す。qは1以上の整数を表す。
【化1-2】
式中、*は、LもしくはGとの連結部、または、前記式J−1〜式J−8のいずれかの式で表される他の連結基との連結部を表す。Dは窒素原子、N19またはCR20を表す。Dは酸素原子、硫黄原子またはNR21を表す。Mは酸素原子、硫黄原子またはNR22を表す。Zはヘテロ原子またはNR13を表す。Pは、>C=CRY1Y2、>C=Sまたは>C=Oを表す。環Pは脂肪族炭化水素環または脂肪族ヘテロ環を表す。R13〜R17、R19〜R22は各々独立に水素原子または置換基を表す。R18、RY1およびRY2は各々独立に置換基を表す。m1は0以上の整数を表す。m2は0以上の整数を表す。m3は2以上の整数を表す。m4は0以上の整数を表す。
【0011】
<2>ペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物が、下記式(1)で表される化合物である<1>に記載の光電変換素子。
式(I):A
式中、Aは下記式(1)で表されるカチオン性有機基を表す。Mは金属原子を表す。Xはアニオン性原子もしくは原子団を表す。aは1または2を表し、mは1を表し、a、mおよびxはa+2m=xを満たす。
式(1):R1a−NH
式中、R1aは、置換基を表す。
【0012】
<3>R1aが、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基または下記式(2)で表すことができる基である<2>に記載の光電変換素子。
【0013】
【化2】
【0014】
式中、XはNR1c、酸素原子または硫黄原子を表す。R1bおよびR1cは各々独立に水素原子または置換基を表す。***は式(1)の窒素原子との結合を表す。
【0015】
<4>JまたはJの基が、各々独立に、下記式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基である<1>〜<3>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
【0016】
【化3】
【0017】
式中、*はG、G、Lもしくは環Cとの連結部、または、式J−1〜式J−8のいずれかの式で表される他の連結基との連結部を表す。Dは窒素原子、N19またはCR20を表す。Dは酸素原子、硫黄原子またはNR21を表す。Mは酸素原子、硫黄原子またはNR22を表す。Zはヘテロ原子またはNR13を表す。Pは、>C=CRY1Y2、>C=Sまたは>C=Oを表す。環Pは脂肪族炭化水素環または脂肪族ヘテロ環を表す。R13〜R17、R19〜R22は各々独立に水素原子または置換基を表す。R18、RY1およびRY2は各々独立に置換基を表す。m1は0以上の整数を表す。m2は0以上の整数を表す。m3は2以上の整数を表す。m4は0以上の整数を表す。
【0018】
<5>式(3)〜(5)で表される化合物が、それぞれ、下記式(6)〜(8)で表される化合物である<1>〜<4>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
【0019】
【化4】
【0020】
式(6)において、Gおよびp1は式(3)のGおよびp1と同義である。Lは分岐アルキル基、ハロゲン原子を有するアルキル基またはシクロアルキル基を表す。Jは単結合または下記式J−7で表される連結基を表す。
式(7)において、GおよびGは各々独立に式(3)のGと同義である。p2は式(4)のp2と同義である。Jは下記式J−1および式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基を表し、Jが式J−1で表される連結基のみで表される場合、式J−1が有するR14およびR15のうち少なくとも一つがハロゲン原子、アルキル基またはハロゲン原子を有するアルキル基を表す。
式(8)において、Jは単結合または下記式J−1、式J−6および式J−7で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基を表す。環C、Z、m、q、R11、G、n11、n12およびn13は、それぞれ式(5)の環C、Z、m、q、R11、G、n11、n12およびn13と同義である。
【0021】
【化5】
【0022】
式中、*はG、G、G、G、Lもしくは環Cとの連結部または他の連結基との連結部を表す。Dは酸素原子、硫黄原子またはNR21を表す。Mは酸素原子、硫黄原子またはNR22を表す。Zはヘテロ原子またはNR13を表す。Pは、>C=CRY1Y2、>C=Sまたは>C=Oを表す。環Pは脂肪族炭化水素環または脂肪族ヘテロ環を表す。R13〜R15、R21およびR22は各々独立に水素原子または置換基を表す。R18、RY1およびRY2は各々独立に置換基を表す。m1は0以上の整数を表す。m2は0以上の整数を表す。m3は2以上の整数を表す。m4は0以上の整数を表す。
【0023】
<6>n13が、1以上の整数を表す<1>〜<5>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<7>G、G、GおよびGが、各々独立に、−NRまたは−(NRYaで表される<1>〜<6>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<8>R11が、ハロゲン原子、分岐アルキル基、または、ハロゲン原子を有する基である<1>〜<7>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<9>Mが、鉛およびスズからなる群より選択される少なくとも1種の金属原子である<1>〜<8>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<10>Xが、ハロゲン原子である<1>〜<9>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<11>導電性支持体と感光層との間に多孔質層を有する<1>〜<10>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<12>第一電極と第二電極との間に正孔輸送層を有する<1>〜<11>のいずれか1つに記載の光電変換素子。
<13>上記<1>〜<12>のいずれか1つに記載の光電変換素子を具備する太陽電池。
【0024】
<14>カチオン性有機基Aのカチオン、金属原子Mのカチオンおよびアニオン性原子もしくは原子団Xのアニオンを有するペロブスカイト型結晶構造を持つ化合物が光吸収剤として含まれる感光層を導電性支持体上に有する第一電極を、下記式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含有する液に接触させて、第一電極の表面に上記化合物の層を形成する光電変換素子の製造方法。
【0025】
【化6-1】
【0026】
式(3)において、Gは−OR、−OYa、−SR、−SYa、−NRおよび−(NRYaからなる群より選択される基または塩を表す。R、RおよびRは各々独立に水素原子または置換基を表す。Yaは対塩を表す。Lはアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基またはシクロアルカジエン基を表す。Jは単結合または下記式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基を表す。p1は1以上の整数を表す。
式(4)において、GおよびGは各々独立にGと同義である。Jは下記式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基を表す。p2は1以上の整数を表す。
式(5)において、環Cは芳香族ヘテロ環を表す。Zはヘテロ原子またはNR12を表す。mは1または2を表す。R11は置換基を表す。R12は水素原子または置換基を表す。G4はG1と同義である。J3は単結合または連結基を表す。n11は1以上の整数を表す。n12およびn13は各々独立に0以上の整数を表す。ただし、環Cの構成原子に窒素原子が一つもない場合、n13は1以上の整数を表す。qは1以上の整数を表す。
【化6-2】
式中、*は、LもしくはGとの連結部、または、前記式J−1〜式J−8のいずれかの式で表される他の連結基との連結部を表す。Dは窒素原子、N19またはCR20を表す。Dは酸素原子、硫黄原子またはNR21を表す。Mは酸素原子、硫黄原子またはNR22を表す。Zはヘテロ原子またはNR13を表す。Pは、>C=CRY1Y2、>C=Sまたは>C=Oを表す。環Pは脂肪族炭化水素環または脂肪族ヘテロ環を表す。R13〜R17、R19〜R22は各々独立に水素原子または置換基を表す。R18、RY1およびRY2は各々独立に置換基を表す。m1は0以上の整数を表す。m2は0以上の整数を表す。m3は2以上の整数を表す。m4は0以上の整数を表す。
【0027】
本明細書において、各式の表記は、化合物の化学構造の理解のために、一部を示性式として表記することもある。これに伴い、各式において、部分構造を、(置換)基、イオンまたは原子等と称するが、本明細書において、これらは、(置換)基、イオンまたは原子等のほかに、上記式で表される(置換)基もしくはイオンを構成する元素団、または、元素を意味することがある。
【0028】
本明細書において、化合物(錯体、色素を含む)の表示については、化合物そのもののほか、その塩、そのイオンを含む意味に用いる。また、目的の効果を奏する範囲で、構造の一部を変化させたものを含む意味である。さらに、置換または無置換を明記していない化合物については、所望の効果を奏する範囲で、任意の置換基を有していてもよい意味である。このことは置換基および連結基等(以下、置換基等という)についても同様である。
【0029】
本明細書において、特定の符号で表示された置換基等が複数あるとき、または複数の置換基等を同時に規定するときには、特段の断りがない限り、それぞれの置換基等は互いに同一でも異なっていてもよい。このことは、置換基等の数の規定についても同様である。また、複数の置換基等が近接するとき(特に、隣接するとき)には、特段の断りがない限り、それらが互いに連結して環を形成してもよい。また、環、例えば脂環、芳香族環、ヘテロ環はさらに縮環して縮合環を形成していてもよい。
【0030】
また、本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
【発明の効果】
【0031】
本発明により、製品間の光電変換効率の変動が小さく、安定した電池性能を発揮する光電変換素子およびこれを備えた太陽電池を提供することが可能となった。
また、上記のような安定した電池性能を発揮する光電変換素子を製造する方法を提供することが可能となった。
本発明の上記および他の特徴および利点は、適宜添付の図面を参照して、下記の記載からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は本発明の光電変換素子の好ましい態様について、層中の円部分の拡大図も含めて模式的に示した断面図である。
図2図2は本発明の光電変換素子の厚い感光層を有する好ましい態様について模式的に示した断面図である。
図3図3は本発明の光電変換素子の別の好ましい態様について、層中の円部分の拡大図も含めて模式的に示した断面図である。
図4図4は本発明の光電変換素子のまた別の好ましい態様について模式的に示した断面図である。
図5図5は本発明の光電変換素子のさらに別の好ましい態様について模式的に示した断面図である。
図6図6は本発明の光電変換素子のさらにまた別の好ましい態様について、層中の円部分の拡大図も含めて模式的に示した断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
<<光電変換素子>>
本発明の光電変換素子は、光吸収剤を含む感光層を導電性支持体上に有する第一電極と、第一電極に対向する第二電極とを有する。第一電極は、その表面に、上記式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物を有している。
【0034】
本発明において、導電性支持体上に感光層を有するとは、導電性支持体の表面に接して感光層を有する態様、および、導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様を含む意味である。
【0035】
導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様において、導電性支持体と感光層との間に設けられる他の層としては、太陽電池の電池性能を低下させないものであれば特に限定されない。例えば、多孔質層、ブロッキング層、電子輸送層および正孔輸送層等が挙げられる。
本発明において、導電性支持体の表面上方に他の層を介して感光層を有する態様としては、例えば、感光層が、多孔質層の表面に薄い膜状等に設けられる態様(図1参照)、多孔質層の表面に厚い膜状に設けられる態様(図2および図6参照)、ブロッキング層の表面に薄い膜状に設けられる態様、および、ブロッキング層の表面に厚い膜状に設けられる態様(図3参照)、電子輸送層の表面に薄い膜状または厚い膜状(図4参照)に設けられる態様、および、正孔輸送層の表面に薄い膜状または厚い膜状(図5参照)に設けられる態様が挙げられる。感光層は、線状または分散状に設けられてもよいが、好ましくは膜状に設けられる。
【0036】
また、本発明において、「第一電極の表面」とは、第一電極の表面を形成する層、例えば、第一電極に設けられた感光層の、第二電極側の表面を意味する。
本発明において「第一電極の表面に少なくとも1種の上記化合物を有する」とは、第一電極の表面またはその近傍に上記化合物が存在していることを意味する。上記化合物が存在する態様は、化学的結合、物理的相互作用により、上記化合物が第一電極の表面に、結合、密着、定着、担持または吸着等している場合を含む。例えば、第一電極の表面に、上記化合物が共有結合、イオン結合、配位結合している態様、物理的に吸着している態様のすべての態様が含まれる。本発明においては、上記化合物が実際に第一電極の表面にどのように存在しているかについては問題ではなく、第一電極の表面またはその近傍に上記化合物が存在していればよい。したがって、上記化合物または化合物層は、例えば多孔質層の孔内に存在してもよく、また化合物層を形成する化合物の構造の一部が感光層に取り込まれた状態でもよい。
本発明においては、上記化合物が第一電極の表面に有する状態にかかわらず、第一電極の表面に有する上記化合物の集合を、便宜上、化合物の層(化合物層)という。
上記化合物または化合物層は、第一電極の表面に存在していればよく、感光層13と同様に、膜状、線状および分散状のいずれの状態でもよく、またこれらが混在した状態でもよい。単分子膜状に設けられることが好ましい。したがって、化合物層は、必ずしも、第一電極の表面を一様に覆うような層または膜を形成していなくてもよい。
【0037】
本発明者らにより、化合物層との密着性向上および逆電荷移動防止の点で、化合物層に接して設けられる層は、特に限定されないことが見出されている。したがって、化合物層に接して設けられる層は、太陽電池を構成する層であればよく、例えば、(固体)正孔輸送層、電子輸送層または第二電極等が挙げられる。
【0038】
本発明の光電変換素子において、感光層および化合物層は、それらが設けられる層の形状、設ける光吸収剤または化合物の量等によって、種々の形態で成膜されうる。したがって、本発明において、上記のように、感光層および化合物層の形態はいずれも問わない。
【0039】
本発明の光電変換素子は、本発明で規定する構成以外の構成は特に限定されず、光電変換素子および太陽電池に関する公知の構成を採用できる。本発明の光電変換素子を構成する各層は、目的に応じて設計され、例えば、単層に形成されても、複層に形成されてもよい。例えば、多孔質層を導電性支持体と感光層との間に設けることもできる(図1図2および図6参照)。
【0040】
以下、本発明の光電変換素子の好ましい態様について説明する。
図1図6において、同じ符号は同じ構成要素(部材)を意味する。
なお、図1図2および図6は、多孔質層12を形成する微粒子の大きさを強調して示してある。これらの微粒子は、好ましくは、導電性支持体11に対して水平方向および垂直方向に詰まり(堆積または密着して)、多孔質構造を形成している。
【0041】
本明細書において、単に光電変換素子10という場合は、特に断らない限り、光電変換素子10A〜10Fを意味する。このことは、システム100、第一電極1についても同様である。また、単に感光層13または化合物層5という場合は、特に断らない限り、感光層13A〜13Cまたは化合物層5A〜5Cを意味する。同様に、正孔輸送層3という場合は、特に断らない限り、正孔輸送層3Aおよび3Bを意味する。
【0042】
本発明の光電変換素子の好ましい態様として、例えば、図1に示す光電変換素子10Aが挙げられる。図1に示されるシステム100Aは、光電変換素子10Aを外部回路6で動作手段M(例えば電動モーター)に仕事をさせる電池用途に応用したシステムである。
この光電変換素子10Aは、第一電極1Aと、第一電極1Aの感光層13A上に化合物層5A(図1の拡大部参照)と第二電極2と、化合物層5Aと第二電極2の間に正孔輸送層3Aとを有している。
第一電極1Aは、支持体11aおよび透明電極11bからなる導電性支持体11と、多孔質層12と、多孔質層12上に感光層13Aとを有している。また透明電極11b上にブロッキング層14を有し、ブロッキング層14上に多孔質層12が形成される。このように多孔質層12を有する光電変換素子10Aは、感光層13Aの表面積が大きくなるため、電荷分離および電荷移動効率が向上すると推定される。
【0043】
図2に示す光電変換素子10Bは、図1に示す光電変換素子10Aの感光層13Aを厚く設けた好ましい態様を模式的に示したものである。図2において、光電変換素子10Bの化合物層は、図1に示す光電変換素子10Aの化合物層5Aと同じであるので、化合物層の拡大図を省略する。この光電変換素子10Bにおいて、正孔輸送層3Bは薄く設けられている。光電変換素子10Bは、図1で示した光電変換素子10Aに対して感光層13Bおよび正孔輸送層3Bの膜厚の点で異なるが、これらの点以外は光電変換素子10Aと同様に構成されている。
【0044】
図3に示す光電変換素子10Cは、本発明の光電変換素子の別の好ましい態様を模式的に示したものである(化合物層5Bを図3の拡大部Aに示す)。光電変換素子10Cは、図2に示す光電変換素子10Bに対して多孔質層12を設けていない点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Bと同様に構成されている。すなわち、光電変換素子10Cにおいて、感光層13Cはブロッキング層14の表面に厚い膜状に形成され、化合物層5Bは感光層13Cの表面に形成されている。光電変換素子10Cにおいて、正孔輸送層3Bは正孔輸送層3Aと同様に厚く設けることもできる。
【0045】
図4に示す光電変換素子10Dは、本発明の光電変換素子のまた別の好ましい態様を模式的に示したものである。図4において、光電変換素子10Dの化合物層は、図3に示す光電変換素子10Cの化合物層5Bと同じであるので、化合物層の拡大図を省略する。この光電変換素子10Dは、図3に示す光電変換素子10Cに対してブロッキング層14に代えて電子輸送層15を設けた点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Cと同様に構成されている。第一電極1Dは、導電性支持体11と、導電性支持体11上に順に形成された、電子輸送層15および感光層13Cとを有している。この光電変換素子10Dは、各層を有機材料で形成できる点で、好ましい。これにより、光電変換素子の生産性が向上し、しかも薄型化またはフレキシブル化が可能になる。
【0046】
図5に示す光電変換素子10Eは、本発明の光電変換素子のさらに別の好ましい態様を模式的に示したものである。図5において、光電変換素子10Eの化合物層は、その表面に正孔輸送層3Bに代えて電子輸送層4が形成されていること以外は図3に示す光電変換素子10Cの化合物層5Bと同じであるので、化合物層の拡大図を省略する。この光電変換素子10Eを含むシステム100Eは、システム100Aと同様に電池用途に応用したシステムである。
光電変換素子10Eは、第一電極1Eと、第二電極2と、第一電極1Eおよび第二電極2の間に電子輸送層4とを有している。第一電極1Eは、導電性支持体11と、導電性支持体11上に順に形成された、正孔輸送層16および感光層13Cとを有している。この光電変換素子10Eは、光電変換素子10Dと同様に、各層を有機材料で形成できる点で、好ましい。
【0047】
図6に示す光電変換素子10Fは、本発明の光電変換素子のさらにまた別の好ましい態様を模式的に示したものである(化合物層5Cを図6の拡大部Aに示す)。光電変換素子10Fは、図2に示す光電変換素子10Bに対して正孔輸送層3Bを設けていない点で異なるが、この点以外は光電変換素子10Bと同様に構成されている。
【0048】
本発明において、光電変換素子10を応用したシステム100は、以下のようにして、太陽電池として、機能する。
すなわち、光電変換素子10において、導電性支持体11を透過して、または第二電極2を透過して感光層13に入射した光は光吸収剤を励起する。励起された光吸収剤はエネルギーの高い電子を有しており、この電子を放出できる。エネルギーの高い電子を放出した光吸収剤は酸化体となる。
【0049】
光電変換素子10A〜10Dおよび10Fにおいては、光吸収剤から放出された電子は、光吸収剤間を移動して導電性支持体11に到達する。導電性支持体11に到達した電子が外部回路6で仕事をした後、第二電極2を経て(正孔輸送層3がある場合にはさらに正孔輸送層3を経由して)、感光層13に戻る。感光層13に戻った電子により光吸収剤が還元される。
一方、光電変換素子10Eにおいては、光吸収剤から放出された電子は、感光層13Cから電子輸送層4を経て第二電極2に到達し、外部回路6で仕事をした後に導電性支持体11を経て、感光層13に戻る。感光層13に戻った電子により光吸収剤が還元される。
光電変換素子10においては、このような、上記光吸収剤の励起および電子移動のサイクルを繰り返すことにより、システム100が太陽電池として機能する。
【0050】
光電変換素子10A〜10Dおよび10Fにおいて、感光層13から導電性支持体11への電子の流れ方は、多孔質層12の有無およびその種類等により、異なる。本発明の光電変換素子10においては、光吸収剤間を電子が移動する電子伝導が起こる。したがって、多孔質層12を設ける場合、多孔質層12は従来の半導体以外に絶縁体で形成することができる。多孔質層12が半導体で形成される場合、多孔質層12の半導体微粒子内部や半導体微粒子間を電子が移動する電子伝導も起こる。一方、多孔質層12が絶縁体で形成される場合、多孔質層12での電子伝導は起こらない。多孔質層12が絶縁体で形成される場合、絶縁体微粒子に酸化アルミニウム(Al)の微粒子を用いると、比較的高い起電力(Voc)が得られる。
上記他の層としてのブロッキング層14が導体または半導体により形成された場合もブロッキング層14での電子伝導が起こる。
また、電子輸送層15でも電子伝導が起こる。
【0051】
本発明の光電変換素子および太陽電池は、上記の好ましい態様に限定されず、各態様の構成等は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、各態様間で適宜組み合わせることができる。例えば、光電変換素子10Cまたは10Dにおいて、光電変換素子10Fのように、正孔輸送層3Bを設けない構成とすることもできる。
【0052】
本発明において、光電変換素子または太陽電池に用いられる材料および各部材は、本発明で規定する材料および部材を除いて、常法により調製することができる。ペロブスカイト化合物を光吸収剤として用いた光電変換素子または太陽電池については、例えば、特許文献1および2、ならびに、J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051およびScience,338,p.643(2012)を参照して行うことができる。また、色素増感太陽電池に用いられる材料および各部材についても参考にすることができる。色素増感太陽電池としては、例えば、特開2001−291534号公報、米国特許第4,927,721号明細書、米国特許第4,684,537号明細書、米国特許第5,0843,65号明細書、米国特許第5,350,644号明細書、米国特許第5,463,057号明細書、米国特許第5,525,440号明細書、特開平7−249790号公報、特開2004−220974号公報、特開2008−135197号公報を参照することができる。
以下、この太陽電池を構成する主たる部材とその機能について概略を説明する。
【0053】
<第一電極1>
第一電極1は、導電性支持体11と感光層13とを有し、光電変換素子10において作用電極として機能する。
第一電極1は、図1図6に示されるように、多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15および正孔輸送層16の少なくとも1つの層を有することが好ましい。
第一電極1は、短絡防止の点で少なくともブロッキング層14を有することが好ましく、光吸収効率の点および短絡防止の点で多孔質層12およびブロッキング層14を有していることがさらに好ましい。
また、第一電極1は、光電変換素子の生産性の向上、薄型化またはフレキシブル化の点で、有機材料で形成された、電子輸送層15または正孔輸送層16を有することが好ましい。
【0054】
− 導電性支持体11 −
導電性支持体11は、導電性を有し、感光層13等を支持できるものであれば特に限定されない。導電性支持体11は、導電性を有する材料、例えば金属で形成された構成、または、ガラスもしくはプラスチックの支持体11aとこの支持体11aの表面に形成された導電膜としての透明電極11bとを有する構成が好ましい。
【0055】
なかでも、図1図6に示されるように、ガラスまたはプラスチックの支持体11aの表面に導電性の金属酸化物を塗設して透明電極11bを成膜した導電性支持体11がさらに好ましい。プラスチックで形成された支持体11aとしては、例えば、特開2001−291534号公報の段落番号0153に記載の透明ポリマーフィルムが挙げられる。支持体11aを形成する材料としては、ガラスおよびプラスチックの他にも、セラミック(特開2005−135902号公報)、導電性樹脂(特開2001−160425号公報)を用いることができる。金属酸化物としては、スズ酸化物(TO)が好ましく、インジウム−スズ酸化物(スズドープ酸化インジウム;ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(FTO)等のフッ素ドープスズ酸化物が特に好ましい。このときの金属酸化物の塗布量は、支持体11aの表面積1m当たり0.1〜100gが好ましい。導電性支持体11を用いる場合、光は支持体11a側から入射させることが好ましい。
【0056】
導電性支持体11は、実質的に透明であることが好ましい。本発明において、「実質的に透明である」とは、光(波長300〜1200nm)の透過率が10%以上であることを意味し、50%以上が好ましく、80%以上が特に好ましい。
【0057】
支持体11aおよび導電性支持体11の厚みは、特に限定されず、適宜の厚みに設定される。例えば、0.01μm〜10mmであることが好ましく、0.1μm〜5mmであることがさらに好ましく、0.3μm〜4mmであることが特に好ましい。
透明電極11bを設ける場合、透明電極11bの膜厚は、特に限定されず、例えば、0.01〜30μmであることが好ましく、0.03〜25μmであることがさらに好ましく、0.05〜20μmであることが特に好ましい。
【0058】
導電性支持体11または支持体11aは、表面に光マネージメント機能を有してもよい。例えば、導電性支持体11または支持体11aの表面に、特開2003−123859号公報に記載の、高屈折膜および低屈折率の酸化物膜を交互に積層した反射防止膜を有してもよく、特開2002−260746号公報に記載のライトガイド機能を有してもよい。
【0059】
− ブロッキング層14 −
本発明においては、光電変換素子10A〜10Cおよび10Fのように、好ましくは、透明電極11bの表面に、すなわち、導電性支持体11と、多孔質層12、感光層13または正孔輸送層3等との間に、ブロッキング層14を有している。
光電変換素子および太陽電池において、例えば感光層13または正孔輸送層3と、透明電極11b等とが電気的に接続すると逆電流を生じる。ブロッキング層14は、この逆電流を防止する機能を果たす。ブロッキング層14は短絡防止層ともいう。
ブロッキング層14を、光吸収剤を担持する足場として機能させることもできる。
このブロッキング層14は、光電変換素子が電子輸送層を有する場合にも設けられてもよい。例えば、光電変換素子10Dの場合、導電性支持体11と電子輸送層15との間に設けられてもよく、光電変換素子10Eの場合、第二電極2と電子輸送層4との間に設けられてもよい。
【0060】
ブロッキング層14を形成する材料は、上記機能を果たすことのできる材料であれば特に限定されないが、可視光を透過する物質であって、導電性支持体11(透明電極11b)等に対する絶縁性物質であることが好ましい。「導電性支持体11(透明電極11b)に対する絶縁性物質」とは、具体的には、伝導帯のエネルギー準位が、導電性支持体11を形成する材料(透明電極11bを形成する金属酸化物)の伝導帯のエネルギー準位以上であり、かつ、多孔質層12を構成する材料の伝導帯や光吸収剤の基底状態のエネルギー準位より低い化合物(n型半導体化合物)をいう。
ブロッキング層14を形成する材料は、例えば、酸化ケイ素、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、ポリビニルアルコール、ポリウレタン等が挙げられる。また、一般的に光電変換材料に用いられる材料でもよく、例えば、酸化チタン、酸化スズ、酸化亜鉛、酸化ニオブ、酸化タングステン等も挙げられる。なかでも、酸化チタン、酸化スズ、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム等が好ましい。
ブロッキング層14の膜厚は、0.001〜10μmが好ましく、0.005〜1μmがさらに好ましく、0.01〜0.1μmが特に好ましい。
【0061】
本発明において、各層の膜厚は、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて光電変換素子10の断面を観察することにより、測定できる。
【0062】
− 多孔質層12 −
本発明においては、光電変換素子10A、10Bおよび10Fのように、好ましくは、透明電極11b上に多孔質層12を有している。ブロッキング層14を有している場合はブロッキング層14上に形成されることが好ましい。
多孔質層12は、表面に感光層13を担持する足場として機能する層である。太陽電池において、光吸収効率を高めるためには、少なくとも太陽光等の光を受ける部分の表面積を大きくすることが好ましく、多孔質層12の全体としての表面積を大きくすることが好ましい。
【0063】
多孔質層12は、多孔質層12を形成する材料の微粒子が堆積または密着してなる、細孔を有する微粒子層であることが好ましい。多孔質層12は、2種以上の微粒子が堆積してなる微粒子層であってもよい。多孔質層12が細孔を有する微粒子層であると、光吸収剤の担持量(吸着量)を増量できる。
多孔質層12の表面積を大きくするには、多孔質層12を構成する個々の微粒子の表面積を大きくすることが好ましい。本発明では、多孔質層12を形成する微粒子を導電性支持体11等に塗設した状態で、この微粒子の表面積が投影面積に対して10倍以上であることが好ましく、100倍以上であることがより好ましい。この上限には特に制限はないが、通常5000倍程度である。多孔質層12を形成する微粒子の粒径は、投影面積を円に換算したときの直径を用いた平均粒径において、1次粒子として0.001〜1μmが好ましい。微粒子の分散物を用いて多孔質層12を形成する場合、微粒子の上記平均粒径は、分散物の平均粒径として0.01〜100μmが好ましい。
【0064】
多孔質層12を形成する材料は、導電性に関しては特に限定されず、絶縁体(絶縁性の材料)であっても、導電性の材料または半導体(半導電性の材料)であってもよい。
多孔質層12を形成する材料としては、例えば、金属のカルコゲニド(例えば酸化物、硫化物、セレン化物等)、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物(光吸収剤として用いるペロブスカイト化合物を除く。)、ケイ素の酸化物(例えば、二酸化ケイ素、ゼオライト)、またはカーボンナノチューブ(カーボンナノワイヤおよびカーボンナノロッド等を含む)を用いることができる。
【0065】
金属のカルコゲニドとしては、特に限定されないが、好ましくは、チタン、スズ、亜鉛、タングステン、ジルコニウム、ハフニウム、ストロンチウム、インジウム、セリウム、イットリウム、ランタン、バナジウム、ニオブ、アルミニウムまたはタンタルの各酸化物、硫化カドミウム、セレン化カドミウム等が挙げられる。金属のカルコゲニドの結晶構造として、アナターゼ型、ブルッカイト型またはルチル型が挙げられ、アナターゼ型、ブルッカイト型が好ましい。
【0066】
ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物としては、特に限定されないが、遷移金属酸化物等が挙げられる。例えば、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム、チタン酸バリウム、チタン酸鉛、ジルコン酸バリウム、スズ酸バリウム、ジルコン酸鉛、ジルコン酸ストロンチウム、タンタル酸ストロンチウム、ニオブ酸カリウム、鉄酸ビスマス、チタン酸ストロンチウムバリウム、チタン酸バリウムランタン、チタン酸カルシウム、チタン酸ナトリウム、チタン酸ビスマスが挙げられる。なかでも、チタン酸ストロンチウム、チタン酸カルシウム等が好ましい。
【0067】
カーボンナノチューブは、炭素膜(グラフェンシート)を筒状に丸めた形状を有する。カーボンナノチューブは、1枚のグラフェンシートが円筒状に巻かれた単層カーボンナノチューブ(SWCNT)、2枚のグラフェンシートが同心円状に巻かれた2層カーボンナノチューブ(DWCNT)、複数のグラフェンシートが同心円状に巻かれた多層カーボンナノチューブ(MWCNT)に分類される。多孔質層12としては、いずれのカーボンナノチューブも特に限定されず、用いることができる。
【0068】
多孔質層12を形成する材料は、なかでも、チタン、スズ、亜鉛、ジルコニウム、アルミニウムもしくはケイ素の酸化物、またはカーボンナノチューブが好ましく、酸化チタンまたは酸化アルミニウムがさらに好ましい。
【0069】
多孔質層12は、上述の、金属のカルコゲニド、ペロブスカイト型結晶構造を有する化合物、ケイ素の酸化物およびカーボンナノチューブのうち少なくとも1種で形成されていればよく、複数種で形成されていてもよい。
【0070】
多孔質層12の膜厚は、特に限定されないが、通常0.05〜100μmの範囲であり、好ましくは0.1〜100μmの範囲である。太陽電池として用いる場合は、0.1〜50μmが好ましく、0.2〜30μmがより好ましく、0.3〜30μmがさらに好ましい。
【0071】
− 電子輸送層15−
本発明においては、光電変換素子10Dのように、好ましくは、透明電極11bの表面に電子輸送層15を有している。
電子輸送層15は、感光層13で発生した電子を導電性支持体11へと輸送する機能を有する。電子輸送層15は、この機能を発揮することができる電子輸送材料で形成される。電子輸送材料としては、特に限定されないが、有機材料(有機電子輸送材料)が好ましい。有機電子輸送材料としては、[6,6]−Phenyl−C61−Butyric Acid Methyl Ester(PC61BM)等のフラーレン化合物、ペリレンテトラカルボキシジイミド(PTCDI)等のペリレン化合物、その他、テトラシアノキノジメタン(TCNQ)等の低分子化合物、または、高分子化合物等が挙げられる。
電子輸送層15の膜厚は、特に限定されないが、0.001〜10μmが好ましく、0.01〜1μmがより好ましい。
【0072】
− 正孔輸送層16−
本発明においては、光電変換素子10Eのように、好ましくは、透明電極11bの表面に正孔輸送層16を有している。
正孔輸送層16は、形成される位置が異なること以外は、後述する正孔輸送層3と同じである。
【0073】
− 感光層(光吸収層)13 −
感光層13は、好ましくは、多孔質層12(光電変換素子10A、10Bおよび10F)、ブロッキング層14(光電変換素子10C)、電子輸送層15(光電変換素子10D)、または、正孔輸送層16(光電変換素子10E)の各層の表面(感光層13が設けられる表面が凹凸の場合の凹部内表面を含む。)に設けられる。
本発明において、光吸収剤は、後述する特定のペロブスカイト化合物を少なくとも1種含有していればよく、2種以上のペロブスカイト化合物を含有してもよい。また、光吸収剤は、ペロブスカイト化合物と併せて、ペロブスカイト化合物以外の光吸収剤を含んでいてもよい。ペロブスカイト化合物以外の光吸収剤としては、例えば金属錯体色素および有機色素が挙げられる。このとき、ペロブスカイト化合物と、それ以外の光吸収剤との割合は特に限定されない。
【0074】
感光層13は、単層であっても2層以上の積層であってもよい。感光層13が2層以上の積層構造である場合、互いに異なった光吸収剤からなる層を積層してなる積層構造でもよく、また、感光層と感光層の間に、正孔輸送材料を含む中間層を有する積層構造でもよい。
【0075】
感光層13を導電性支持体11上に有する態様は、上述した通りである。感光層13は、好ましくは、励起した電子が導電性支持体11または第二電極2に流れるように、上記各層の表面に設けられる。このとき、感光層13は、上記各層の表面全体に設けられていてもよく、その表面の一部に設けられていてもよい。
【0076】
感光層13は、その表面に下記式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物を有している。この化合物が表面に存在する態様は上述した通りである。
【0077】
感光層13の膜厚は、導電性支持体11上に感光層13を有する態様に応じて適宜に設定され、特に限定されない。例えば、0.001〜100μmが好ましく、0.01〜10μmがさらに好ましく、0.01〜5μmが特に好ましい。
多孔質層12を有する場合、多孔質層12の膜厚との合計膜厚は、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましく、0.3μm以上が特に好ましい。また、合計膜厚は、100μm以下が好ましく、50μm以下がより好ましく、30μm以下がさらに好ましい。合計膜厚は、上記値を適宜に組み合わせた範囲とすることができる。ここで、図1のように、感光層13が薄い膜状である場合に、感光層13の膜厚は、多孔質層12の表面に垂直な方向に沿う、多孔質層12との界面と後述する正孔輸送層3との界面との距離をいう。
光電変換素子10において、多孔質層12と感光層13と化合物層5と正孔輸送層3との合計膜厚は、特に限定されないが、例えば、0.01μm以上が好ましく、0.05μm以上がより好ましく、0.1μm以上がさらに好ましく、0.5μm以上が特に好ましい。また、この合計膜厚は、200μm以下が好ましく、50μm以下が好ましく、30μm以下が好ましく、5μm以下が好ましい。合計膜厚は、上記値を適宜に組み合わせた範囲とすることができる。
本発明において、感光層を厚い膜状に設ける場合(感光層13Bおよび13C)、この感光層に含まれる光吸収剤は正孔輸送材料として機能することもある。
【0078】
ペロブスカイト化合物の使用量は、第一電極1の表面の少なくとも一部を覆う量であればよく、表面全体を覆う量が好ましい。
【0079】
〔感光層の光吸収剤〕
感光層13は、光吸収剤として、「周期表第一族元素またはカチオン性有機基A」と、「周期表第一族元素以外の金属原子M」と、「アニオン性原子または原子団X」と、を有するペロブスカイト化合物(ペロブスカイト型光吸収剤ともいう)を少なくとも1種含有する。
ペロブスカイト化合物の周期表第一族元素またはカチオン性有機基A、金属原子Mおよびアニオン性原子または原子団Xは、それぞれ、ペロブスカイト型結晶構造において、カチオン(便宜上、カチオンAということがある)、金属カチオン(便宜上、カチオンMということがある)およびアニオン(便宜上、アニオンXということがある)の各構成イオンとして存在する。
本発明において、カチオン性有機基とは、ペロブスカイト型結晶構造においてカチオンになる性質を有する有機基をいい、アニオン性原子または原子団とはペロブスカイト型結晶構造においてアニオンになる性質を有する原子または原子団をいう。
【0080】
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、カチオンAは、周期表第一族元素のカチオンまたはカチオン性有機基Aからなる有機カチオンである。カチオンAは有機カチオンが好ましい。
周期表第一族元素のカチオンは、特に限定されず、例えば、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)またはセシウム(Cs)の各元素のカチオン(Li、Na、K、Cs)が挙げられ、特にセシウムのカチオン(Cs)が好ましい。
【0081】
有機カチオンは、上記性質を有する有機基のカチオンであれば特に限定されないが、下記式(1)で表されるカチオン性有機基の有機カチオンであることがさらに好ましい。
式(1):R1a−NH
式中、R1aは置換基を表す。R1aは、有機基であれば特に限定されるものではないが、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基または下記式(2)で表すことができる基が好ましい。なかでも、アルキル基、下記式(2)で表すことができる基がより好ましい。
【0082】
【化7】
【0083】
式中、XはNR1c、酸素原子または硫黄原子を表す。R1bおよびR1cは各々独立に水素原子または置換基を表す。***は式(1)の窒素原子との結合を表す。
【0084】
本発明において、カチオン性有機基Aの有機カチオンは、上記式(1)中のR1aとNHとが結合してなるアンモニウムカチオン性有機基Aからなる有機アンモニウムカチオン(R1a−NH)が好ましい。この有機アンモニウムカチオンが共鳴構造を採り得る場合、有機カチオンは有機アンモニウムカチオンに加えて共鳴構造のカチオンを含む。例えば、上記式(2)で表すことができる基においてXがNH(R1cが水素原子)である場合、有機カチオンは、上記式(2)で表すことができる基とNHとが結合してなるアンモニウムカチオン性有機基の有機アンモニウムカチオンに加えて、この有機アンモニウムカチオンの共鳴構造の1つである有機アミジニウムカチオンをも包含する。アミジニウムカチオン性有機基からなる有機アミジニウムカチオンとしては、下記式(Aam)で表されるカチオンが挙げられる。本明細書において、下記式(Aam)で表されるカチオンを便宜上、「R1bC(=NH)−NH」と表記することがある。
【0085】
【化8】
【0086】
アルキル基は、炭素数が1〜18のアルキル基が好ましく、1〜6のアルキル基がより好ましく、1〜3のアルキル基がさらに好ましい。例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、tert−ブチル、ペンチル、ヘキシルまたはデシル等が挙げられる。
シクロアルキル基は、炭素数が3〜8のシクロアルキル基が好ましく、例えば、シクロプロピル、シクロペンチルまたはシクロヘキシル等が挙げられる。
【0087】
アルケニル基は、炭素数が2〜18のアルケニル基が好ましく、2〜6のアルケニル基がより好ましい。例えば、ビニル、アリル、ブテニルまたはヘキセニル等が挙げられる。
アルキニル基は、炭素数が2〜18のアルキニル基が好ましく、2〜4のアルキニル基がより好ましい。例えば、エチニル、ブチニルまたはヘキシニル等が挙げられる。
【0088】
アリール基は、炭素数6〜14のアリール基が好ましく、炭素数6〜12のアリール基がより好ましく、例えば、フェニルが挙げられる。
ヘテロアリール基は、芳香族ヘテロ環のみからなる基と、芳香族ヘテロ環に他の環、例えば、芳香環、脂肪族環やヘテロ環が縮合した縮合ヘテロ環からなる基とを包含する。
芳香族ヘテロ環を構成する環構成ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、硫黄原子が好ましい。また、芳香族ヘテロ環の環員数としては、3〜8員環が好ましく、5員環または6員環がより好ましい。
5員環の芳香族ヘテロ環および5員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピロール環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、トリアゾール環、フラン環、チオフェン環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、ベンゾチアゾール環、インドリン環、インダゾール環の各環基が挙げられる。また、6員環の芳香族ヘテロ環および6員環の芳香族ヘテロ環を含む縮合ヘテロ環としては、例えば、ピリジン環、ピリミジン環、ピラジン環、トリアジン環、キノリン環、キナゾリン環の各環基が挙げられる。
【0089】
式(2)で表すことができる基において、XはNR1c、酸素原子または硫黄原子を表し、NR1cが好ましい。ここで、R1cは、水素原子または置換基を表し、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基またはヘテロアリール基が好ましく、水素原子がさらに好ましい。
1bは、水素原子または置換基を表し、水素原子が好ましい。R1bが採り得る置換基は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基またはアミノ基が挙げられる。
1bおよびR1cがそれぞれ採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基およびヘテロアリール基は、上記R1aの各基と同義であり、好ましいものも同じである。
【0090】
式(2)で表すことができる基としては、例えば、(チオ)アシル基、(チオ)カルバモイル基、イミドイル基またはアミジノ基が挙げられる。
(チオ)アシル基は、アシル基およびチオアシル基を包含する。アシル基は、総炭素数が1〜7のアシル基が好ましく、例えば、ホルミル、アセチル(r−34)、プロピオニル、ヘキサノイル等が挙げられる。チオアシル基は、総炭素数が1〜7のチオアシル基が好ましく、例えば、チオホルミル、チオアセチル(r−36)、チオプロピオニル等が挙げられる。
(チオ)カルバモイル基は、カルバモイル基(r−35)およびチオカルバモイル基(HNC(=S)−)を包含する。
【0091】
イミドイル基は、R1b−C(=NR1c)−で表される基であり、R1bおよびR1cはそれぞれ水素原子またはアルキル基が好ましく、アルキル基は上記R1aのアルキル基と同義であるのがより好ましい。例えば、ホルムイミドイル(r−37)、アセトイミドイル(r−39)、プロピオンイミドイル(CHCHC(=NH)−)等が挙げられる。なかでも、ホルムイミドイルが好ましい。
式(2)で表すことができる基としてのアミジノ基は、上記イミドイル基のR1bがアミノ基でR1cが水素原子である構造(r−38)を有する。
【0092】
1aが採り得る、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロアリール基および上記式(2)で表すことができる基は、いずれも、置換基を有していてもよい。R1aが有していてもよい置換基Wとしては、特に限定されないが、例えば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、ヘテロ環基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、アシル基、アルキルカルボニルオキシ基、アリールオキシ基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、カルバモイル基、スルファモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ヒドロキシ基、メルカプト基またはカルボキシ基が挙げられる。R1aが有していてもよい各置換基は、さらに置換基で置換されていてもよい。
【0093】
下記に、式(1)のR1aの具体例として下記r−1〜r−39を示すが、本発明はこれらに限定されない。下記具体例において、「*」は窒素原子との結合部を示し、「Me」はメチル基を示し、「Et」はエチル基を示す。
【0094】
【化9】
【0095】
【化10】
【0096】
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、金属カチオンMは、周期表第一族元素以外の金属原子Mのカチオンであって、ペロブスカイト型結晶構造を採り得る金属原子のカチオンであれば、特に限定されない。このような金属原子としては、例えば、カルシウム(Ca)、ストロンチウム(Sr)、カドミウム(Cd)、銅(Cu)、ニッケル(Ni)、マンガン(Mn)、鉄(Fe)、コバルト(Co)、パラジウム(Pd)、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、イッテルビウム(Yb)、ユウロピウム(Eu)、インジウム(In)等の金属原子が挙げられる。なかでも、金属原子MはPb原子またはSn原子が特に好ましい。Mは1種の金属原子であってもよく、2種以上の金属原子であってもよい。2種以上の金属原子である場合には、Pb原子およびSn原子の2種が好ましい。このときの金属原子の割合は特に限定されない。
【0097】
本発明に用いるペロブスカイト化合物において、アニオンXは、アニオン性原子または原子団Xのアニオンを表す。このアニオンは、好ましくはハロゲン原子のアニオン、または、NCS、NCO、CHCOOもしくはHCOOの、各原子団のアニオンが挙げられる。なかでも、ハロゲン原子のアニオンであることがさらに好ましい。ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子およびヨウ素原子等が挙げられる。
アニオンXは、1種のアニオン性原子または原子団のアニオンであってもよく、2種以上のアニオン性原子または原子団のアニオンであってもよい。1種のアニオン性原子または原子団のアニオンである場合には、ヨウ素原子のアニオンが好ましい。一方、2種以上のアニオン性原子または原子団のアニオンである場合には、2種のハロゲン原子のアニオン、特に塩素原子のアニオンおよびヨウ素原子のアニオンが好ましい。2種以上のアニオンの割合は特に限定されない。
【0098】
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、上記の各構成イオンを有するペロブスカイト型結晶構造を有し、下記式(I)で表されるペロブスカイト化合物が好ましい。
【0099】
式(I):A
式中、Aは周期表第一族元素またはカチオン性有機基を表す。Mは周期表第一族元素以外の金属原子を表す。Xはアニオン性原子または原子団を表す。
aは1または2を表し、mは1を表し、a、mおよびxはa+2m=xを満たす。
【0100】
式(I)において、周期表第一族元素またはカチオン性有機基Aは、ペロブスカイト型結晶構造の上記カチオンAを形成する。したがって、周期表第一族元素およびカチオン性有機基Aは、上記カチオンAとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる元素または基であれば、特に限定されない。周期表第一族元素またはカチオン性有機基Aは、上記カチオンAで説明した上記周期表第一族元素またはカチオン性有機基と同義であり、好ましいものも同じである。
【0101】
金属原子Mは、ペロブスカイト型結晶構造の上記金属カチオンMを形成する金属原子である。したがって、金属原子Mは、周期表第一族元素以外の原子であって、上記金属カチオンMとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる原子であれば、特に限定されない。金属原子Mは、上記金属カチオンMで説明した上記金属原子と同義であり、好ましいものも同じである。
【0102】
アニオン性原子または原子団Xは、ペロブスカイト型結晶構造の上記アニオンXを形成する。したがって、アニオン性原子または原子団Xは、上記アニオンXとなってペロブスカイト型結晶構造を構成できる原子または原子団であれば、特に限定されない。アニオン性原子または原子団Xは、上記アニオンXで説明したアニオン性原子または原子団と同義であり、好ましいものも同じである。
【0103】
式(I)で表されるペロブスカイト化合物は、aが1である場合、下記式(I−1)で表されるペロブスカイト化合物であり、aが2である場合、下記式(I−2)で表されるペロブスカイト化合物である。
式(I−1):AMX
式(I−2):AMX
式(I−1)および式(I−2)において、Aは周期表第一族元素またはカチオン性有機基を表し、上記式(I)のAと同義であり、好ましいものも同じである。
Mは、周期表第一族元素以外の金属原子を表し、上記式(I)のMと同義であり、好ましいものも同じである。
Xは、アニオン性原子または原子団を表し、上記式(I)のXと同義であり、好ましいものも同じである。
【0104】
本発明に用いるペロブスカイト化合物は、式(I−1)で表される化合物および式(I−2)で表される化合物のいずれでもよく、これらの混合物でもよい。したがって、本発明において、ペロブスカイト化合物は、光吸収剤として少なくとも1種が存在していればよく、組成式、分子式および結晶構造等により、厳密にいかなる化合物であるかを明確に区別する必要はない。
【0105】
以下に、本発明に用いうるペロブスカイト化合物の具体例を例示するが、これによって本発明が制限されるものではない。下記においては、式(I−1)で表される化合物と、式(I−2)で表される化合物とを分けて記載する。ただし、式(I−1)で表される化合物として例示した化合物であっても、合成条件等によっては、式(I−2)で表される化合物となる場合もあり、また、式(I−1)で表される化合物と式(I−2)で表される化合物との混合物となる場合もある。同様に、式(I−2)で表される化合物として例示した化合物であっても、式(I−1)で表される化合物となる場合もあり、また、式(I−1)で表される化合物と式(I−2)で表される化合物との混合物となる場合もある。
【0106】
式(I−1)で表される化合物の具体例として、例えば、CHNHPbCl、CHNHPbBr、CHNHPbI、CHNHPbBrI、CHNHPbBrI、CHNHSnBr、CHNHSnI、CH(=NH)NHPbIが挙げられる。
【0107】
式(I−2)で表される化合物の具体例として、例えば、(CNHPbI、(CH=CHNHPbI、(CH≡CNHPbI、(n−CNHPbI、(n−CNHPbI、(C1021NHPbI、(CNHPbI、(CCHCHNHPbI、(CNHPbI、(CNHPbI、(CSNHPbIが挙げられる。ここで、(CSNHPbIにおけるCSNHはアミノチオフェンである。
【0108】
ペロブスカイト化合物は、下記式(II)で表される化合物と下記式(III)で表される化合物とから合成することができる。
式(II):AX
式(III):MX
式(II)中、Aは周期表第一族元素またはカチオン性有機基を表し、式(I)のAと同義であり、好ましいものも同じである。式(II)中、Xはアニオン性原子または原子団を表し、式(I)のXと同義であり、好ましいものも同じである。
式(III)中、Mは周期表第一族元素以外の金属原子を表し、式(I)のMと同義であり、好ましいものも同じである。式(III)中、Xはアニオン性原子または原子団を表し、式(I)のXと同義であり、好ましいものも同じである。
【0109】
ペロブスカイト化合物の合成方法については、例えば、特許文献1および2に記載の方法が挙げられる。また、Akihiro Kojima, Kenjiro Teshima, Yasuo Shirai, and Tsutomu Miyasaka, “Organometal Halide Perovskites as Visible−Light Sensitizers for Photovoltaic Cells”, J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051に記載の方法も挙げられる。
【0110】
光吸収剤の使用量は、第一電極1の表面の少なくとも一部を覆う量であればよく、表面全体を覆う量が好ましい。
【0111】
感光層13中、ペロブスカイト化合物の含有量は、通常1〜100質量%である。
【0112】
<化合物層5>
本発明においては、式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物は、第一電極の表面に存在する。第一電極の表面に上記化合物を有する態様および状態は上記した通りである。本発明の光電変換素子においては、第一電極1上に、好ましくは、正孔輸送層3、電子輸送層4または第二電極2が設けられる。この場合、化合物層5は、第一電極1の表面と、第一電極1上に設けられる層との間に介在している。
【0113】
上記化合物は、第一電極の表面に存在していればよい。化合物が第一電極の表面に存在しているか否かは次のようにして確認できる。すなわち、十分な面積の第一電極の表面を、上記化合物を溶解可能な有機溶剤または水で洗う。得られた洗浄液をろ過したろ液を、必要に応じて濃縮および精製して、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)または各磁気共鳴分光法(NMR)で、分析する。これにより、第一電極の表面上における、化合物の有無を確認し、またその存在量を定量できる。
【0114】
表面に存在する上記化合物の存在量は、本発明の効果を奏する限りにおいて、特に限定されない。第一電極上の化合物の存在量は、化合物を含む液の濃度、接触させる表面積等によって、変動させることができる。化合物の存在量としては、一義的ではないが、その一例を挙げると、例えば、0.1mg/m〜100g/mである。さらには1mg/m〜1g/mを挙げることができる。
本発明においては、上記化合物が、第一電極の表面を一様に覆い、かつ化合物分子が重なり合わない(単分子膜状)ことが、光電変換特性の向上および電池性能の安定性の実現の点等から好ましい。
上記化合物が存在する態様およびその存在量は、上記化合物を含む液を第一電極の表面に接触させることにより、好ましくは第一電極の表面全面に接触させることにより、達成される。
【0115】
第一電極の表面に式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物を用いると、光電変換効率の変動を低減できる理由は、まだ定かではないが、次のように推定される。
第一電極の表面を構成する層、通常感光層(ペロブスカイト化合物)と、その上に設けられる層(上層という)、例えば固体正孔輸送層、電子輸送層または第二電極とは互いに相溶性または相互作用が弱いと考えられる。このため、第一電極の表面と上層の界面は密着安定性が一定となりにくい。その結果、上層が正孔輸送材料である場合、正孔輸送層からの電子移動を抑制し、場合によっては逆電子移動を誘発させる原因となっているものと考えられる。また、上層が電子輸送層である場合、電子輸送層からの正孔移動を抑制し、場合によっては逆正孔移動を誘発させる原因となっているものと考えられる。さらに上層が電極である場合、電極からの電子移動を抑制していると考えられる。
しかし、両層の間に式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物を介在させると、ペロブスカイト化合物と上層とを化学的または物理的に結び付けて、第一電極の表面と上層の相溶性または相互作用等を高める。これにより、これらの密着性が高まり、安定化し、正規の方向に電子移動が速やかに起こるものと考えられる。
【0116】
また、式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物が、かさ高い分岐した基やハロゲン等の疎水的な基を有する場合には、上記の効果は一層高まるものと考えられ、好ましい。さらに、式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物がヘテロ環や芳香環を部分構造として有する場合には、これらの環により、逆電子移動を抑制しつつも、第一電極の表面(第一電極と上層との界面)での本来必要な電荷輸送を妨げない効果を奏するものと考えられ、好ましい。
【0117】
化合物層は、下記化合物を少なくとも1種含有していればよく、複数種を含有していてもよい。
【0118】
以下に、式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物について説明する。
【0119】
【化11】
【0120】
式(3)で表される化合物について説明する。
は−OR、−OYa、−SR、−SYa、−NRおよび−(NRYaからなる群より選択される基または塩である。
ここで、R、RおよびRは各々独立に水素原子または置換基を表す。R、RおよびRが置換基を表す場合、置換基としては、特に限定されず、上記置換基Wが挙げられる。好ましくは炭素数1または2のアルキル基である。R、RおよびRはいずれも水素原子を表すことが特に好ましい。
対塩Yaとしては、特に限定されず、各種のカチオンまたはアニオンが挙げられる。カチオンとしては、例えば、リチウムイオン(Li)、セシウムイオン(Cs)、ナトリウムイオン(Na)、カリウムイオン(K)、銀イオン(Ag)、銅イオン(Cu)、アンモニウムイオン(NR)、ホスホニウムイオン(PR)等が挙げられる。Rは水素原子または置換基を表す。置換基の例としては置換基Wが挙げられる。アニオンとしては、ハロゲン化物イオン(フッ化物イオン(F)、ヨウ化物イオン(I)、臭素化物イオン(Br)、塩素化物イオン(Cl)等)、O2−等が挙げられる。なかでも、ハロゲン化物イオンが好ましく、ヨウ化物イオン(I)がより好ましい。
は、ペロブスカイト型結晶構造への置換容易性の観点から、好ましくは、−OR、−OYa、−NRまたは−(NRYaであり、より好ましくは、−NRまたは−(NRYaであり、さらに好ましくは−(NRYaであり、特に好ましくは−NHである。
【0121】
はアルキル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基またはシクロアルカジエン基を表す。なかでも、アルキル基またはシクロアルキル基が好ましい。
アルキル基は、炭素数1〜30であるのが好ましく、1〜10であるのがさらに好ましい。また、直鎖でも分岐鎖でもよいが、感光層および上層の相溶性、逆電荷移動の抑制の点で、分岐鎖が好ましい。直鎖アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、デシルおよびオクタデシル等が挙げられる。
分岐アルキル基としては、炭素数3〜30であるのが好ましく、3〜10であるのがより好ましく、例えば、i−プロピル、i−ブチル、t−ブチルおよび3−エチルペンチル等が挙げられる。
アルキル基は置換基を有してもよい。置換基としては、前述の置換基Wの内、上記Gの規定に当てはまらない置換基が挙げられる。好ましくは、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子)が挙げられ、感光層および上層の相溶性、逆電荷移動の抑制の点で、フッ素原子がより好ましい。フッ素原子で置換されるアルキル基の水素原子数は特に限定されず、すべての水素原子が置換されてもよい。フッ素原子が置換したアルキル基(フッ化アルキル基という)としては、上記で例示したアルキル基の水素原子をすべて置換したパーフルオロアルキル基、水素原子の一部が置換されたフルオロアルキル基(例えば、モノフルオロメチル(−CHF)、ジフルオロメチル(−CHF)、4,4,5,5,6,6,6−ヘプタフルオロヘキシル(−(CH(CFCF)、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル(−(CH(CFCF)等が挙げられる。
【0122】
シクロアルキル基は、炭素数3〜8であることが好ましく、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル等が挙げられる。
シクロアルキル基は置換基を有してもよい。置換基としては、前述の置換基Wの内、上記Gの規定に当てはまらない置換基またはオキソ基(=O)が挙げられ、好ましくはアルキル基またはオキソ基等が挙げられる。シクロアルキル基が有する置換基数は、特に限定されず、例えば、1〜3が好ましく、1がより好ましい。
置換基としてオキソ基を有するシクロアルキル基は、シクロアルカノン化合物から水素原子を1つ取り除いた基となる。置換基としてオキソ基を有するシクロアルキル基としては、特に限定されないが、例えば、シクロプロパノン、シクロブタノン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、シクロヘプタノンまたはシクロオクタノン等のシクロアルカノン化合物から水素原子を1つ取り除いた基が挙げられる。
【0123】
シクロアルケニル基は、炭素数3〜8であることが好ましく、例えば、シクロプロペニル、シクロブテニル、シクロペンテニル、シクロヘキセニル、シクロヘプテニル、シクロオクテニル等が挙げられる。
シクロアルカジエン基は、環状構造内に2つの不飽和結合(アルケニル基)を含む環状アルケニル基であり、炭素数は4〜8であることが好ましい。シクロアルカジエン基としては、例えば、シクロブタジエン、シクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン、シクロオクタジエン等が挙げられる。
【0124】
は単結合または連結基である。Jが連結基である場合には、後述する式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基であることが好ましい。ここで、式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基は、式J−1〜式J−8のいずれか1つの式で表される連結基である場合と、下記式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも2つの連結基を組み合わせてなる連結基である場合とを含む。Jは、単結合、後述する式J−7または式J−8で表される連結基が好ましく、単結合または式J−7で表される連結基がより好ましい。
p1は1以上の整数を表す。好ましくは1以上4以下の整数であり、より好ましくは1である。
【0125】
式(3)で表される化合物は、下記式(6)で表されるのが好ましい。
【0126】
【化12】
【0127】
およびp1は式(3)のGおよびp1と同義である。
は分岐アルキル基、ハロゲン原子を有するアルキル基またはシクロアルキル基を表す。分岐アルキル基、シクロアルキル基は、それぞれ、上記Lで説明した分岐アルキル基、シクロアルキル基と同義であり、好ましいものも同じである。ハロゲン原子を有するアルキル基は、上記Lで説明したアルキル基の水素原子の一部または全部がハロゲン原子で置換されたアルキル基が挙げられ、好ましくは上記フッ化アルキル基である。
は単結合または後述する式J−7で表される連結基を表す。
【0128】
上記式(3)〜式(8)で表される化合物のJ〜Jの連結基について以下に説明し、各式における連結基の好ましいものは下記式で表される化合物の説明とともに述べる。
【0129】
【化13】
【0130】
式中、*はG、G、G、G、L、もしくは環Cとの連結部または式J−1〜式J−8のいずれかの式で表される他の連結基との連結部を示す。
は窒素原子、N19またはCR20を表す。
は酸素原子、硫黄原子またはNR21を表し、NR21が好ましい。
は酸素原子、硫黄原子またはNR22を表し、酸素原子またはNR22が好ましい。
はヘテロ原子またはNR13を表す。ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子または硫黄原子が挙げられ、硫黄原子であることが好ましい。
は、P中の「>C=」を環Pの環構成原子とする基であり、この炭素原子の2つの単結合がそれぞれ環Pの環構成原子と結合して、上記炭素原子が環P中に組み込まれる。Pは、具体的には、>C=CRY1Y2、>C=Sまたは>C=Oを表し、>C=Oが好ましい。
環Pは、環を構成するのに必要な炭素原子群からなる脂肪族炭化水素環、または、環を構成するのに必要な炭素原子群とZとからなる脂肪族ヘテロ環を表す。脂肪族炭化水素環としては、3〜8員環が好ましく、5または6員環がより好ましく、シクロペンタン環、シクロヘキサン環、シクロヘキセン環、シクロヘキサジエン環、シクロオクタン環が挙げられ、シクロヘキサン環が好ましい。脂肪族ヘテロ環としては、5〜8員環が好ましく、ピロリジン、オキソラン、チオラン、ピペリジン、オキサン、チアン、ピペラジン、モルホリン、キヌクリジン、ピロリジン、アゼチジン、オキセタン、アジリジン、ジオキサン、ペンタメチレンスルフィド等が挙げられる。
【0131】
14〜R17、R19およびR20は各々独立に水素原子または置換基を表す。R18、RY1およびRY2は置換基を表す。R14〜R17、R19およびR20が置換基を表す場合の置換基およびR18、RY1およびRY2の置換基としては、置換基Wが挙げられる。なかでも、アルキル基、ハロゲン原子が好ましく、ハロゲン原子がより好ましい。アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30の置換または無置換の直鎖または分岐アルキル基である。アルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、特に限定されないが、置換基Wが好ましく、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)がより好ましい。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、オクタデシルが挙げられる。R14〜R17、R19およびR20は、各々独立に、ハロゲン原子、水素原子であることがさらに好ましい。
Y1およびRY2は互いに結合して環を形成してもよい。RY1およびRY2が形成する環は、特に限定されず、上記環Pと同じ環であってもよい。
【0132】
13、R21およびR22は各々独立に水素原子または置換基を表す。R13、R21およびR22が置換基を表す場合、置換基としては前述の置換基Wが挙げられる。なかでも、アルキル基が好ましい。アルキル基としては、好ましくは炭素数1〜30の置換または無置換の直鎖または分岐アルキル基である。このアルキル基が置換基を有する場合の置換基としては、特に限定されないが、置換基Wが好ましく、ハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)がより好ましい。アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、デシル、オクタデシルが挙げられる。R13、R21およびR22は各々独立に、アルキル基または水素原子であることがさらに好ましく、水素原子であることが特に好ましい。
【0133】
m1は0以上の整数を表し、0〜5の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましい。
m2は0以上の整数を表し、0〜3の整数であることが好ましく、0または1であることがより好ましく、0であることがさらに好ましい。
m3は2以上の整数を表し、好ましくは2である。
m4は、0以上の整数を表し、環Pの芳香族性の有無等によって、1以上の整数をとる場合がある。m4は、好ましくは0〜3の整数を表し、より好ましくは0または1であり、さらに好ましくは0である。
【0134】
式J−4はトランス体として表されているが、シス体であってもよい。
【0135】
本発明において、上記式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される2以上の連結基を組み合わせてなる連結基は、上記式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物を形成するのに必要な結合箇所を有していれば、上記式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される2以上の連結基が連結して環構造を形成するものも包含する。
【0136】
式(3)〜(5)において、G、G、G、GまたはLで表される基と理解できる基については連結基には含めないものとする。例えば、後述する化合物T3−1の場合、Lがペンチル基で、Jが式J−1で表されるメチレン基と考えることもできるが、本発明においては、Lが最大の基となるように解釈する。この場合、Lがヘキシル基で、Jが単結合とする。
【0137】
式(3)で表される化合物における上記連結基JとLそれぞれの鎖長、式(4)で表される化合物における上記連結基Jの鎖長、式(5)で表される化合物における上記連結基Jの鎖長は、その鎖を形成する原子数として1〜30であるのが好ましく、1〜15であるのがより好ましい。ここで、鎖長は、鎖の長さ対象とする鎖を形成する原子の最大数とし、該当する鎖が2以上ある場合は最大の原子数とする。
【0138】
式J−1〜式J−8で表される連結基を組み合わせる場合、次の組み合わせが好ましい。
複数個の、好ましくは2〜30個、より好ましくは2〜10個、さらに好ましくは2〜5個、特に好ましくは2〜4個の式J−1で表される連結基同士の組み合わせ;
1個以上(上限は特に限定されないが、30個、好ましくは10個)の式J−1で表される連結基と1個以上(上限は特に限定されないが、30個、好ましくは10個)の式J−6で表される連結基の組み合わせ;
1個以上(上限は特に限定されないが、30個、好ましくは10個)の式J−6で表される連結基と1個以上(上限は特に限定されないが、30個、好ましくは10個)の式J−7で表される連結基の組み合わせ;
1個以上(上限は特に限定されないが、15個、好ましくは5個)の式J−4で表される連結基と1個以上(上限は特に限定されないが、30個、好ましくは10個)の式J−7で表される連結基の組み合わせ;
1個以上(上限は特に限定されないが、30個、好ましくは10個)の式J−1で表される連結基と、1個以上(上限は同様に例えば15個、好ましくは5個)の式J−5で表される連結基と1個以上(上限は特に限定されないが、30個、好ましくは10個)の式J−7で表される連結基との組み合わせ;
1個以上(上限は特に限定されないが、30個、好ましくは10個)の式J−1で表される連結基と1個以上(上限は特に限定されないが、30個、好ましくは10個)の式J−7で表される連結基との組み合わせ。
【0139】
上記式J−1〜式J−8で表される連結基を組み合わせてなる連結基は、例えば以下のような構造のものが好適に挙げられる。下記の各連結基はさらに置換基Wを有していてもよい。
【0140】
【化14】
【0141】
式中、*はG、G、G、G、Lまたは環Cとの連結部を表す。
【0142】
以下に、本発明の式(3)で表される化合物の具体例を示すが、これによって本発明がこれらに限定されるものではない。
【0143】
【化15】
【0144】
【化16】
【0145】
式(4)で表される化合物について説明する。
【0146】
【化17】
【0147】
およびGは式(3)のGと同義であり、好ましいものも同じである。GとGとの組み合わせは特に限定されないが、同種の基または塩であるのが好ましく、それらが−NRおよび−(NRYaから選ばれることがより好ましい。
p2は1以上の整数を表す。好ましくは1である。
【0148】
は連結基である。Jは、式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基であることが好ましい。式J−1〜式J−8で表される連結基を2つ以上組み合わせてなる場合、上記の組み合わせが好ましい。Jは、式J−1で表される連結基、式J−1で表される連結基2〜30個(好ましくは2〜10個、さらに好ましくは2〜5個)を組み合わせてなる連結基、式J−1で表される連結基2個と式J−6で表される連結基1個と式J−1で表される連結基2個とを組み合わせてなる連結基、式J−7で表される連結基、式J−4で表される連結基1個と式J−7で表される連結基2個を組み合わせてなる連結基、式J−1で表される連結基1個と式J−5で表される連結基1個と式J−7で表される連結基1個とを組み合わせてなる連結基、式J−8で表される連結基がさらに好ましく、式J−1で表される連結基、式J−1で表される連結基2または4個を組み合わせてなる連結基、式J−7で表される連結基、式J−8で表される連結基が特に好ましい。なかでも、式J−1および式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基がより好ましい。
【0149】
式(4)で表される化合物は、下記式(7)で表されるのが好ましい。
【0150】
【化18】
【0151】
式(7)において、GおよびGは、各々独立に、式(3)のGと同義であり、好ましいものも同じである。GとGとの組み合わせは上記の通りである。
p2は式(4)のp2と同義であり、好ましいものも同じである。
は上記式J−1および式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基である。式(7)において、Jは、式J−1で表される連結基、式J−1で表される連結基2〜30個(好ましくは2〜10個、さらに好ましくは2〜5個)を組み合わせてなる連結基、式J−8で表される連結基がさらに好ましく、式J−1で表される連結基、式J−1で表される連結基2または4個を組み合わせてなる連結基が特に好ましい。
また、Jが式J−1で表される連結基のみからなる連結基である場合(複数の式J−1で表される連結基を組み合わせてなる連結基の場合を含む)、式J−1が有するR14およびR15のうち少なくとも一つがハロゲン原子(フッ素原子、塩素原子、臭素原子等)、アルキル基、またはハロゲン原子を置換基として有するアルキル基(ハロゲン化アルキル基)を表すことが好ましく、ハロゲン原子、炭素数1〜15のアルキル基または炭素数1〜15のハロゲン化アルキル基(特にフッ化アルキル基、塩化アルキル基)であることがより好ましく、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のハロゲン化アルキル基がさらに好ましく、フッ素原子、炭素数1〜6のアルキル基が特に好ましい。
【0152】
以下に、本発明の式(4)で表される化合物の具体例を示すが、これによって本発明がこれらに限定されるものではない。
【0153】
【化19】
【0154】
【化20】
【0155】
式(5)で表される化合物について説明する。
【0156】
【化21】
【0157】
環Cは、環を構成するのに必要な炭素原子群からなる芳香族炭化水素環または上記炭素原子群とZとからなる芳香族ヘテロ環を表し、Zはヘテロ原子またはNR12を表す。
芳香族炭化水素環としては、ベンゼン環、多ベンゼン縮環(例えば、ナフタレン環、フェナントレン環)が挙げられる。これらの環に芳香環でない炭化水素環、例えば、3〜7員のシクロアルカン、5〜7員のシクロアルケンが縮環していてもよい。環Cが表す芳香族炭化水素環としてはベンゼン環が好ましい。
芳香族ヘテロ環としては、5〜7員環が好ましく、5または6員環がより好ましい。また、これらの環に、芳香族炭化水素環、芳香族以外の脂肪族炭化水素環(例えば、シクロアルカン、シクロアルケン)または芳香族ヘテロ環を含むヘテロ環が縮環していてもよい。Zが表すヘテロ原子は、窒素原子、酸素原子または硫黄原子であることが好ましく、窒素原子または硫黄原子であることがより好ましい。R12は水素原子または置換基を表す。R12が置換基を表す場合、置換基としては前述の置換基Wが挙げられる。なかでも、炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、炭素数1〜15のアルキル基がより好ましい。R12は水素原子であることがさらに好ましい。また、mは0以上の整数を表し、mが2以上のとき、複数のZは互いに異なっていてもよい。mは好ましくは、0〜2の整数である。環Cが芳香族へテロ環を表す場合、mは好ましくは1または2であり、より好ましくは、1である。
このような芳香族ヘテロ環としては、例えば、ピロール環、チオフェン環、フラン環、イミダゾール環、ピラゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、イミダゾール環、オキサゾール環、チアゾール環、オキサジアゾール環、チアジアゾール環、イソオキサゾール環、イソチアゾール環、トリアゾール環およびピラゾール環が挙げられる。また縮環構造のものとしては、ベンゾチアゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾオキサゾール環、インドリン環、インダゾール環、ベンゾイミダゾール環、ベンゾチアゾール環等が挙げられる。より好ましくは、ピリジン環、ピラジン環、ピリミジン環、ピリダジン環、トリアジン環、チアゾール環、チオフェン環であり、さらに好ましくはピリジン環またはチオフェン環である。
【0158】
11は置換基を表す。R11が表す置換基としては前述の置換基Wの内、後述のGに相当する基以外の置換基、ニトロ基が挙げられる。なかでも、ハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基、ヘテロアリール基、ニトロ基、シアノ基が挙げられる。また、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリール基またはヘテロアリール基の各置換基の少なくとも1つの水素原子がさらにハロゲン原子で置換され、ハロゲン原子を有する基となっている場合(「ハロゲン原子を有する基」という)も好ましい。ハロゲン原子を有する基は、ハロゲン原子が置換したアルキル基が好ましく、フッ素原子が置換したアルキル基がより好ましい。
11で表されるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。好ましくはフッ素原子である。
アルキル基は上記Lで説明したものと同義であることが好ましく、アルキル基の好ましいものもLの好ましいものと同じである。
【0159】
アルケニル基は、炭素数2〜20の直鎖アルケニル基または分岐アルケニル基であることが好ましく、例えば、エテニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、4−ペンテニルおよびブタジエンであることが好ましい。アルケニル基において、シス−トランス異性は特に限定されない。
【0160】
アルキニル基は、炭素数2〜20の直鎖アルキニル基または分岐アルキニル基であることが好ましく、例えば、エチニルおよびブチニルが挙げられる。
【0161】
アルコキシ基、および、アルキルチオ基のアルキル部分は、上記Lで説明したアルキル基と同義であるのが好ましい。このアルコキシ基は置換されていてもよい。置換基としては置換基Wが挙げられる。置換アルコキシ基としては、2−メトキシエチルオキシ基が好ましい。
アリール基およびヘテロアリール基としては、環Cで説明した芳香族炭化水素環および芳香族ヘテロ環と同義であり、好ましくは、ベンゼン環、ピリジン環、チオフェン環である。
11として、好ましくは、アルキル基、分岐アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有する基であり、より好ましくは、分岐アルキル基、ハロゲン原子、ハロゲン原子を有する基であり、さらに好ましくは、分岐アルキル基、ハロゲン原子が置換したアルキル基である。
【0162】
は式(3)のGと同義であり、好ましいものも同じである。
は各々独立に単結合または連結基である。Jが連結基である場合には、前述の式J−1〜式J−8で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基が好ましい。Jは、単結合、または、式J−1、式J−6および式J−7で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基が好ましい。Jが連結基である場合、好ましいものは上記組み合わせのうち、式J−1、式J−6または式J−7を含む組み合わせが挙げられる。Jの連結基は、より好ましくは、単結合、式J−1で表される連結基、式J−7で表される連結基、式J−1で表される連結基を2個組み合わせてなる連結基、式J−6で表される連結基1個と式J−7で表される連結基1個を組み合わせてなる連結基である。
式(5)において、「−J−(Gn11」基を有する場合、環Cの結合位置は、特に限定されない。環Cが芳香族ヘテロ環である場合、少なくとも1つの「−J−(Gn11」基の結合位置は(ヘテロ原子を1位とした場合)環Cの2位(ヘテロ原子に隣接原子)であるのが好ましい。
n11は1以上の整数を表す。好ましくは1〜3であり、1または2がより好ましく、1がさらに好ましい。
n12は0以上の整数を表す。n12は好ましくは0〜2の整数であり、より好ましくは0または1であり、さらに好ましくは1である。
n13は0以上の整数を表し、好ましくは0〜4であり、より好ましくは1〜4であり、さらに好ましくは1または2である。ただし、環C上に窒素原子が一つもない場合、n13は1以上の整数を表し、1または2が好ましい。
qは1以上の整数を表す。qは1〜3の整数であることが好ましく、1であることがより好ましい。
【0163】
式(5)で表される化合物は、下記式(8)で表されるのが好ましい。
【0164】
【化22】
【0165】
式(8)において、Jは単結合または式J−1、式J−6および式J−7で表される連結基からなる群より選択される少なくとも1つの連結基を表す。Jの連結基はJの連結基と同義であり、好ましいものも同じである。
環C、Z、m、q、R11、G、n11、n12およびn13は、それぞれ式(5)の環C、Z、m、q、R11、G、n11、n12およびn13と同義であり、好ましいものも同じである。
式(8)において、R11が分岐アルキル基、ハロゲン原子またはハロゲン原子を有する基であることが好ましく、分岐アルキル基、ハロゲン原子が置換したアルキル基がより好ましい。
【0166】
以下に、本発明の式(5)で表される化合物の具体例を示すが、これによって本発明がこれらに限定されるものではない。
【0167】
【化23】
【0168】
【化24】
【0169】
【化25】
【0170】
【化26】
【0171】
上記各式で表される化合物のなかでも、式(3)または式(5)で表される化合物が好ましく、式(5)で表される化合物がより好ましく、式(5)で表される化合物のなかでも、2つ以上のGを有するもの(n11およびn13の積が2以上であるもの)、または、GおよびR11を有するもの(n12およびn13がともに1以上の整数であるもの)がさらに好ましく、式(5)で表される化合物のなかでも環Cが芳香族ヘテロ環であるのが特に好ましい。
【0172】
本発明に用いる式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物は、常法に準じて合成することができる。例えば、後述する、化合物T5B−35およびT5C−17の各合成方法に準拠して、合成することができる。
【0173】
<正孔輸送層3>
本発明の光電変換素子は、光電変換素子10A〜10Dのように、第一電極1と第二電極2との間に正孔輸送層3を有することが好ましい態様の1つである。正孔輸送層3は、好ましくは第一電極1の感光層13と第二電極2の間に設けられ、化合物層5と接触(積層)している。
正孔輸送層3は、光吸収剤の酸化体に電子を補充する機能を有し、好ましくは固体状の層(固体正孔輸送層)である。
【0174】
正孔輸送層3を形成する正孔輸送材料は、特に限定されないが、例えば、CuI、CuNCS等の無機材料、および、特開2001−291534号公報の段落番号0209〜0212に記載の有機正孔輸送材料等が挙げられる。正孔輸送材料としては、好ましくは、上記化合物との相溶性の点で有機正孔輸送材料である。有機正孔輸送材料としては、好ましくは、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリピロールおよびポリシラン等の導電性高分子、2個の環がC、Siなど四面体構造をとる中心原子を共有するスピロ化合物、トリアリールアミン等の芳香族アミン化合物、トリフェニレン化合物、含窒素複素環化合物または液晶性シアノ化合物が挙げられる。
正孔輸送材料は、溶液塗布可能で固体状になる有機正孔輸送材料が好ましく、具体的には、2,2’,7,7’−テトラキス−(N,N−ジ−p−メトキシフェニルアミン)−9,9−スピロビフルオレン(Spiro−OMeTADともいう)、ポリ(3−ヘキシルチオフェン−2,5−ジイル)、4−(ジエチルアミノ)ベンゾアルデヒド ジフェニルヒドラゾン、ポリエチレンジオキシチオフェン(PEDOT)等が挙げられる。
正孔輸送層3の膜厚は、特に限定されないが、50μm以下が好ましく、1nm〜10μmがより好ましく、5nm〜5μmがさらに好ましく、10nm〜1μmが特に好ましい。
正孔輸送層3の膜厚は、第二電極2と化合物層5の表面または第一電極1の表面との平均距離に相当し、走査型電子顕微鏡(SEM)等を用いて光電変換素子10の断面を観察することにより、測定できる。
【0175】
<電子輸送層4>
本発明の光電変換素子は、光電変換素子10Eのように、第一電極1と第二電極2との間に電子輸送層4を有することも好ましい態様の1つである。この態様において、電子輸送層4は、化合物層5と接触(積層)していることが好ましい。
電子輸送層4は、電子の輸送先が第二電極である点、および、形成される位置が異なること以外は、上記電子輸送層15と同じである。
【0176】
<第二電極2>
第二電極2は、太陽電池において正極として機能する。第二電極2は、導電性を有していれば特に限定されず、通常、導電性支持体11と同じ構成とすることができる。強度が十分に保たれる場合は、支持体11aは必ずしも必要ではない。
第二電極2の構造としては、集電効果が高い構造が好ましい。感光層13に光が到達するためには、導電性支持体11と第二電極2との少なくとも一方は実質的に透明でなければならない。本発明の太陽電池においては、導電性支持体11が透明であって太陽光を支持体11a側から入射させるのが好ましい。この場合、第二電極2は光を反射する性質を有することがさらに好ましい。
【0177】
第二電極2を形成する材料としては、例えば、白金(Pt)、金(Au)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、銀(Ag)、インジウム(In)、ルテニウム(Ru)、パラジウム(Pd)、ロジウム(Rh)、イリジウム(Ir)、オスニウム(Os)、アルミニウム(Al)等の金属、上述の導電性の金属酸化物、炭素材料および伝導性高分子等が挙げられる。炭素材料としては、炭素原子同士が結合してなる、導電性を有する材料であればよく、例えば、フラーレン、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン等が挙げられる。
第二電極2としては、金属もしくは導電性の金属酸化物の薄膜(蒸着してなる薄膜を含む)、または、この薄膜を有するガラス基板もしくはプラスチック基板が好ましい。ガラス基板もしくはプラスチック基板としては、金もしくは白金の薄膜を有するガラス、または、白金を蒸着したガラスが好ましい。
【0178】
第二電極2の膜厚は、特に限定されず、0.01〜100μmが好ましく、0.01〜10μmがさらに好ましく、0.01〜1μmが特に好ましい。
【0179】
<その他の構成>
本発明においては、第一電極1と第二電極2との接触を防ぐために、ブロッキング層14に代えて、または、ブロッキング層14とともに、スペーサーやセパレータを用いることもできる。
また、第二電極2と正孔輸送層3の間に正孔ブロッキング層を設けてもよい。
【0180】
<<太陽電池>>
本発明の太陽電池は、本発明の光電変換素子を用いて構成される。例えば図1図6に示されるように、外部回路6に対して仕事させるように構成した光電変換素子10を太陽電池として用いることができる。第一電極1(導電性支持体11)および第二電極2に接続される外部回路6は、公知のものを特に制限されることなく、用いることができる。
本発明は、例えば、特許文献1および2、J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051およびScience,338,p.643(2012)に記載の太陽電池に適用することができる。
本発明の太陽電池は、構成物の劣化および蒸散等を防止するために、側面をポリマーや接着剤等で密封することが好ましい。
【0181】
上述したように、本発明の光電変換素子および太陽電池は、上記式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物を表面に有する第一電極を備えており、光電変換効率の個体間差が小さく、安定した電池性能を発揮する。
【0182】
<<光電変換素子および太陽電池の製造方法>>
本発明の光電変換素子および太陽電池は、公知の製造方法、例えば特許文献1および2、J.Am.Chem.Soc.,2009,131(17),p.6050−6051、Science,338,p.643(2012)等に記載の方法によって製造できる。
【0183】
以下に、本発明の光電変換素子および太陽電池の製造方法を簡単に説明する。
本発明の光電変換素子および太陽電池の製造方法(以下、本発明の製造方法という)は、上記カチオンおよびアニオンを有するペロブスカイト化合物を含む感光層を有する第一電極を、上記式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物から選択される少なくとも1種の化合物を含有する液に接触させる工程を有していれば、その他の工程等は特に限定されない。
【0184】
本発明の製造方法においては、まず、導電性支持体11の表面に、所望によりブロッキング層14、多孔質層12、電子輸送層15および正孔輸送層16の少なくとも一つを形成する。
【0185】
ブロッキング層14は、例えば、上記絶縁性物質またはその前駆体化合物等を含有する分散物を導電性支持体11の表面に塗布し、焼成する方法またはスプレー熱分解法等によって、形成できる。
【0186】
多孔質層12を形成する材料は、好ましくは微粒子として用いられ、さらに好ましくは微粒子を含有する分散物として用いられる。
多孔質層12を形成する方法としては、特に限定されず、例えば、湿式法、乾式法、その他の方法(例えば、Chemical Review,第110巻,6595頁(2010年刊)に記載の方法)が挙げられる。これらの方法において、導電性支持体11の表面またはブロッキング層14の表面に分散物(ペースト)を塗布した後に、100〜800℃の温度で10分〜10時間、例えば空気中で焼成することが好ましい。これにより、微粒子同士を密着させることができる。
焼成を複数回行う場合、最後の焼成以外の焼成の温度(最後以外の焼成温度)を、最後の焼成の温度(最後の焼成温度)よりも低い温度で行うのがよい。例えば、酸化チタンペーストを用いる場合、最後以外の焼成温度を50〜300℃の範囲内に設定することができる。また、最後の焼成温度を、100〜600℃の範囲内において、最後以外の焼成温度よりも高くなるように、設定することができる。支持体11aとしてガラス支持体を用いる場合、焼成温度は60〜500℃が好ましい。
多孔質層12を形成するときの、多孔質材料の塗布量は、多孔質層12の膜厚および塗布回数等に応じて適宜に設定され、特に限定されない。導電性支持体11の表面積1m当たりの、多孔質材料の塗布量は、例えば、0.5〜500gが好ましく、さらには5〜100gが好ましい。
【0187】
電子輸送層15または正孔輸送層16を設ける場合、それぞれ、後述する正孔輸送層3または電子輸送層4と同様にして、形成することができる。
【0188】
次いで、感光層13を設ける。
感光層13を設ける方法は、湿式法および乾式法が挙げられ、特に限定されない。本発明においては、湿式法が好ましく、例えば、ペロブスカイト型光吸収剤を含有する光吸収剤溶液に接触させる方法が好ましい。この方法においては、まず、感光層を形成するための光吸収剤溶液を調製する。光吸収剤溶液は、上記ペロブスカイト化合物の原料であるMXとAXとを含有する。ここで、A、MおよびXは上記式(I)のA、MおよびXと同義である。この光吸収剤溶液において、MXとAXとのモル比は目的に応じて適宜に調整される。光吸収剤としてペロブスカイト化合物を形成する場合、AXとMXとのモル比は、1:1〜10:1であることが好ましい。この光吸収剤溶液は、MXとAXとを所定のモル比で混合した後に加熱することにより、調製できる。この形成液は通常溶液であるが、懸濁液でもよい。加熱する条件は、特に限定されないが、加熱温度は30〜200℃が好ましく、70〜150℃がさらに好ましい。加熱時間は0.5〜100時間が好ましく、1〜3時間がさらに好ましい。溶媒または分散媒は後述するものを用いることができる。
次いで、調製した光吸収剤溶液を、その表面に感光層13を形成する層(光電変換素子10においては、多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15または正孔輸送層16のいずれかの層)の表面に接触させる。具体的には、光吸収剤溶液を塗布または浸漬することが好ましい。接触させる温度は5〜100℃であることが好ましく、浸漬時間は5秒〜24時間であるのが好ましく、20秒〜1時間がより好ましい。塗布した光吸収剤溶液を乾燥させる場合、乾燥は熱による乾燥が好ましく、通常は、20〜300℃、好ましくは50〜170℃に加熱することで乾燥させる。
また、上記ペロブスカイト化合物の合成方法に準じて感光層を形成することもできる。
【0189】
さらに、上記AXを含有するAX溶液と、上記MXを含有するMX溶液とを、別々に塗布(浸漬法を含む)し、必要により乾燥する方法も挙げられる。この方法では、いずれの溶液を先に塗布してもよいが、好ましくはMX溶液を先に塗布する。この方法におけるAXとMXとのモル比、塗布条件および乾燥条件は、上記方法と同じである。この方法では、上記AX溶液および上記MX溶液の塗布に代えて、AXまたはMXを、蒸着させることもできる。
【0190】
さらに他の方法として、上記光吸収剤溶液の溶剤を除去した化合物または混合物を用いた、真空蒸着等の乾式法が挙げられる。例えば、上記AXおよび上記MXを、同時または順次、蒸着させる方法も挙げられる。
これらの方法等により、ペロブスカイト化合物が多孔質層12、ブロッキング層14、電子輸送層15または正孔輸送層16の表面に感光層として形成される。
【0191】
本発明の製造方法においては、次いで、式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物を第一電極の表面に設ける。
上記化合物を第一電極の表面に設けるには、上記化合物を含有する液を用いる。この液は、液状の上記化合物そのものでもよく、また溶液でも懸濁液(分散液)でもよい。溶媒または分散媒は、特に限定されず、例えば、後述する溶媒または分散媒が挙げられ、イソプロパノールが好ましい。上記化合物の液中の濃度は、特に限定されないが、例えば、0.001〜100質量%が好ましく、0.01〜100質量%がより好ましい。
調製した液を第一電極の表面に接触させる方法は、特に限定されず、例えば、第一電極の表面に液を塗布する方法または第一電極を液中に浸漬する方法等の湿式法が挙げられる。また、他の方法として、上記液の溶剤を除去した混合物を用いた、真空蒸着等の乾式法が挙げられる。好ましくは湿式法が挙げられる。塗布方法は、後述する各種方法が挙げられる。
塗布または浸漬の温度は、5〜100℃であることが好ましい。この範囲内であれば、ペロブスカイト層の構造を維持することができると考えられる。
浸漬時間は、0.1秒〜24時間が好ましく、5秒〜24時間がより好ましく、20秒〜1時間がさらに好ましい。
塗布または浸漬後は、液を乾燥することが好ましい。乾燥条件は、特に限定されない。乾燥温度は、例えば、5〜300℃が好ましく、20〜150℃がより好ましい。乾燥時間は、例えば、例えば、1秒〜48時間が好ましく、1分〜5時間がより好ましい。
【0192】
この工程における、式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物の塗布量としては、これら化合物の種類等に応じて適宜に決定され、特に限定されない。本発明においては、第一電極の表面の少なくとも一部が上記存在量の化合物(化合物層5)で覆われるように、決定される。逆電荷移動防止の点では、好ましくは、第一電極の表面が一様に覆われ、かつ式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物分子が重なり合わないことが、逆電荷移動防止の観点から好ましい。
【0193】
このようにして形成した化合物層5上に、好ましくは、正孔輸送層3または電子輸送層4を形成する。
正孔輸送層3は、正孔輸送材料を含有する正孔輸送材料溶液を塗布し、乾燥して、形成することができる。正孔輸送材料溶液は、塗布性に優れる点、および多孔質層12を有する場合は多孔質層12の孔内部まで侵入しやすい点で、正孔輸送材料の濃度が0.1〜1.0M(モル/L)であるのが好ましい。
電子輸送層4は、電子輸送材料を含有する電子輸送材料溶液を塗布し、乾燥して、形成することができる。
【0194】
正孔輸送層3または電子輸送層4を形成した後に、第二電極2を形成して、光電変換素子が製造される。
【0195】
各層の膜厚は、各分散液または溶液の濃度、塗布回数を適宜に変更して、調整できる。例えば、膜厚が厚い感光層13Bおよび13Cを設ける場合には、光吸収剤溶液を複数回塗布、乾燥すればよい。
【0196】
上述の各分散液および溶液は、それぞれ、必要に応じて、分散助剤、界面活性剤等の添加剤を含有していてもよい。
【0197】
太陽電池の製造方法に使用する溶媒または分散媒としては、特開2001−291534号公報に記載の溶媒が挙げられるが、特にこれに限定されない。本発明においては、有機溶媒が好ましく、さらに、アルコール溶媒、アミド溶媒、ニトリル溶媒、炭化水素溶媒、ラクトン溶媒、ハロゲン溶媒、および、これらの2種以上の混合溶媒が好ましい。混合溶媒としては、アルコール溶媒と、アミド溶媒、ニトリル溶媒または炭化水素溶媒から選ばれる溶媒との混合溶媒が好ましい。具体的には、メタノール、エタノール、イソプロパノール、γ−ブチロラクトン、クロロベンゼン、アセトニトリル、N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルアセトアミド、または、これらの混合溶媒が好ましい。
【0198】
各層を形成する溶液または分散剤の塗布方法は、特に限定されず、スピンコート、エクストルージョンダイコート、ブレードコート、バーコート、スクリーン印刷、ステンシル印刷、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ディップコート、インクジェット印刷法、浸漬法等、公知の塗布方法を用いることができる。なかでも、スピンコート、スクリーン印刷等が好ましい。
【0199】
本発明の光電変換素子は、必要に応じて、アニール、ライトソーキング、酸素雰囲気下での放置等の効率安定化処理を行ってもよい。
【0200】
上記のようにして作製した光電変換素子は、第一電極1および第二電極2に外部回路6を接続して、太陽電池として用いることができる。
【実施例】
【0201】
以下に実施例に基づき本発明についてさらに詳細に説明するが、本発明は下記実施例に限定されない。
【0202】
合成例
下記合成例1および2に準拠して下記実施例に用いる化合物を合成した。
【0203】
(合成例1:化合物T5B−35の合成)
下記スキームに従って化合物T5B−35を合成した。
【0204】
【化27】
【0205】
化合物T5B−35cの合成
DIPA(ジイソプロピルアミン)(9g)とTHF(テトラヒドロフラン)(50mL)を混合し、−50℃に冷却した後、1.6M n−BuLi(ヘキサン溶液、13.1mL)を滴下し、30分間攪拌した。続けてT5B−35a(3.0g)を添加し、1時間攪拌した後、化合物T5B−35b(3.5g)を滴下し、2時間攪拌した。反応混合物を室温に戻し、さらに1時間攪拌した。攪拌後、反応混合物に水と酢酸エチルを加え、分液し、有機相を濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物T5B−35c(3.1g)を得た。
化合物T5B−35dの合成
化合物T5B−35c(2.0g)、CuO(60mg)、28%アンモニア水(6mL)、炭酸カリウム(220mg)およびジメチルエチレンジアミン(2mL)をエチレングリコール(20mL)中で混合し、60℃で10時間攪拌した。冷却後、反応混合物に酢酸エチルと水を加え、分液し、有機相を濃縮し、カラムクロマトグラフィーで精製して、化合物T5B−35d(1.1g)を得た。
【0206】
化合物T5B−35の合成
化合物T5B−35dと57質量%のヨウ化水素の水溶液をメタノールで希釈し、フラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮して化合物T5B−35の粗体を得た。得られたT5B−35の粗体をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルで再結晶し、得られた結晶をろ取し、60℃で5時間減圧乾燥して、精製T5B−35を得た。
化合物T5B−35の同定
化合物T5B−35の構造は質量分析法(MS)により確認した。
MS−ESI m/z= 179.2 (M+H)
【0207】
(合成例2:化合物T5C−17の合成)
下記スキームに従って化合物T5C−17を合成した。
【0208】
【化28】
【0209】
化合物T5C−17の合成
2.2gのT5C−17aと4.4gのT5C−17bを700mLの水中で2時間、95℃で攪拌した後、4℃まで冷却し、生じた結晶をろ取した。得られた結晶をEtOH(エタノール)で再結晶することでT5C−17を1.5g得た。
化合物T5C−17の同定
化合物T5C−17の構造は質量分析法(MS)により確認した。
MS−ESI m/z= 151.1 (M+H)
【0210】
実施例1
(光電変換素子および太陽電池(試料番号101)の製造)
以下に示す手順により、図1に示される光電変換素子10Aおよび太陽電池を製造した。感光層13の膜厚が大きい場合は、図2に示される光電変換素子10Bおよび太陽電池に対応することになる。
【0211】
チタニウム ジイソプロポキシド ビス(アセチルアセトナート)の15質量%イソプロパノール溶液(アルドリッチ社製)を1−エタノールで希釈して、0.02Mブロッキング層用溶液を調製した。
【0212】
ガラス支持体11a(厚さ2mm)上にフッ素ドープされたSnO導電膜(透明電極11b、膜厚300nm)を成膜した導電性支持体11を準備した。
上記の0.02Mブロッキング層用溶液を用いて、スプレー熱分解法により、450℃にて、SnO導電膜上にブロッキング層14(膜厚50nm)を成膜した。
【0213】
酸化チタン(TiO、アナターゼ、平均粒径20nm)のエタノール分散液に、エチルセルロース、ラウリン酸およびテルピネオールを加えて、酸化チタンペーストを調製した。
ブロッキング層14の上に、調製した酸化チタンペーストをスクリーン印刷法で塗布し、空気中、500℃で3時間焼成した。その後、得られた酸化チタンの焼成体を、40mMのTiCl水溶液に浸し、60℃で1時間、続けて500℃で30分間加熱し、TiOからなる多孔質層12(膜厚0.25μm)を成膜した。
【0214】
メチルアミンの40%メタノール溶液(27.86mL)と57質量%のヨウ化水素の水溶液(ヨウ化水素酸、30mL)をフラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮して、CHNHIの粗体を得た。得られたCHNHIの粗体をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルで再結晶し、得られた結晶をろ取し、60℃で5時間減圧乾燥して、精製CHNHIを得た。
次いで、精製CHNHIとPbIとをモル比1:1でDMF中、60℃で12時間攪拌混合した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、40質量%の光吸収剤溶液Aを調製した。
【0215】
導電性支持体11上に成膜した多孔質層12上に、調製した光吸収剤溶液Aを、スピンコート法(2000rpmで60秒、続けて3000rpmで60秒)により塗布した後、ホットプレートにより100℃で60分間乾燥し、CHNHPbIのペロブスカイト化合物からなる感光層13A(膜厚300nm(多孔質層12の膜厚250nmを含む))を設けて、第一電極1を作製した。
こうして第一電極1Aを作製した。
【0216】
第一電極1Aを、下記表1に示す化合物T3−1の0.1Mイソプロパノール溶液に10秒浸漬させたのち、ホットプレートにより100℃で30分間乾燥させて、化合物層5Aを形成した。化合物層5Aは、感光層13Aの表面に膜状に形成されていた。化合物T3−1を含有するイソプロパノール溶液を塗布した第一電極1Aの表面を上記のようにして上記GPC法にて確認したところ、化合物T3−1の存在量は5mg/mであった。
【0217】
正孔輸送材料としてのspiro−OMeTAD(180mg)をクロロベンゼン(1mL)に溶解させた。このクロロベンゼン溶液に、リチウム−ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(170mg)をアセトニトリル(1mL)に溶解させたアセトニトリル溶液37.5μLと、t−ブチルピリジン(TBP、17.5μL)とを加えて混合し、正孔輸送層用溶液を調製した。
次いで、第一電極1Aの表面上に形成した化合物層5A上に調製した正孔輸送層用溶液をスピンコート法により塗布、乾燥して、固体正孔輸送層3A(膜厚100nm)を成膜した。
【0218】
固体正孔輸送層3A上に蒸着法により金を蒸着し、第二電極2(膜厚100nm)を作製した。
こうして、光電変換素子および太陽電池(試料番号101)を製造した。
各膜厚は、上記方法に従って、SEMにより観察して、測定した。
【0219】
(光電変換素子および太陽電池(試料番号102〜117、120〜128、130〜132およびc101)の製造)
光電変換素子および太陽電池(試料番号101)の製造において、上記化合物T3−1に代えて表1に記載の化合物にそれぞれ変更し、または、化合物T3−1を使用しなかった(試料番号c101)こと以外は、光電変換素子および太陽電池(試料番号101)の製造と同様にして、本発明の光電変換素子および太陽電池(試料番号102〜117、120〜128および130〜132)、ならびに、比較のための光電変換素子および太陽電池(試料c101)をそれぞれ製造した。
各化合物層の存在量は1〜50mg/mであった。
【0220】
(光電変換素子および太陽電池(試料番号118)の製造)
光電変換素子および太陽電池(試料番号117)の製造において、光吸収剤溶液Aに代えて下記光吸収剤溶液Bを用いたこと以外は光電変換素子および太陽電池(試料番号117)の製造と同様にして本発明の光電変換素子および太陽電池(試料番号118)を製造した。
化合物T7−3の存在量は1.3mg/mであった。
<光吸収剤溶液Bの調製>
メチルアミンの40%メタノール溶液(27.86mL)と57質量%のヨウ化水素の水溶液(ヨウ化水素酸、30mL)をフラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮して、CHNHIの粗体を得た。得られたCHNHIの粗体をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルで再結晶し、得られた結晶をろ取し、60℃で5時間減圧乾燥して、精製CHNHIを得た。次いで、精製CHNHIとPbClとPbIをモル比1:0.50:0.50でイソプロパノール中、60℃で12時間攪拌混合した後、PTFEシリンジフィルターでろ過して、40質量%の光吸収剤溶液Bを調製した。
【0221】
(光電変換素子および太陽電池(試料番号119)の製造)
光電変換素子および太陽電池(試料番号117)の製造において、光吸収剤溶液Aに代えて下記光吸収剤溶液Cを用いたこと以外は光電変換素子および太陽電池(試料番号117)の製造と同様にして本発明の光電変換素子および太陽電池(試料番号119)を製造した。
化合物T7−3の存在量は1.3mg/mであった。
<光吸収剤溶液Cの調製>
メチルアミンの40%メタノール溶液(27.86mL)と57質量%の臭化水素の水溶液(臭化水素酸、30mL)をフラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮して、CHNHBrの粗体を得た。得られたCHNHBrの粗体をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルで再結晶し、得られた結晶をろ取し、60℃で24時間減圧乾燥して、精製CHNHBrを得た。次いで、精製CHNHBrとPbBrとをモル比1:1でイソプロパノール中、60℃で12時間攪拌混合した後、PTFEシリンジフィルターでろ過して、40質量%の光吸収剤溶液Cを調製した。
【0222】
(光電変換素子および太陽電池(試料番号129)の製造)
光電変換素子および太陽電池(試料番号101)の製造において、第一電極1を、化合物T3−1の0.1Mイソプロパノール溶液に浸漬させることに代えてスピンコート法(5000rpmで60秒)により塗布したこと以外は、光電変換素子および太陽電池(試料番号101)の製造と同様にして、本発明の光電変換素子および太陽電池(試料番号129)を製造した。
化合物T3−1の存在量は1.9mg/mであった。
【0223】
(光電変換素子および太陽電池(試料番号133)の製造)
光電変換素子および太陽電池(試料番号102)の製造において、光吸収剤溶液Aに代えて下記光吸収剤溶液Dを用い、また化合物T6−1を含むイソプロパノール溶液(化合物T6−1の濃度0.01M)をスピンコート法(5000rpmで30秒)で塗布したこと以外は、光電変換素子および太陽電池(試料番号102)の製造と同様にして、本発明の光電変換素子および太陽電池(試料番号133)をそれぞれ製造した。
感光層3Aは、(CHCHNHPbIのペロブスカイト化合物からなり、膜厚300nm(多孔質層12の膜厚250nmを含む))であった。また、化合物T6−1の存在量は3.5mg/mであった。
<光吸収剤溶液Dの調製>
エチルアミンの40%エタノール溶液(36g)と57質量%のヨウ化水素の水溶液(ヨウ化水素酸、72g)とを、フラスコ中、0℃で2時間攪拌した後、濃縮して、CHCHNHIの粗体を得た。得られたCHCHNHIの粗体をエタノールに溶解し、ジエチルエーテルで再結晶した。析出した結晶をろ取し、60℃で12時間減圧乾燥して、精製CHCHNHIを得た。次いで、精製CHCHNHIとPbIを、モル比で2:1とし、DMF中、60℃で5時間攪拌して混合した後、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)シリンジフィルターでろ過して、40質量%の光吸収剤溶液Dを調製した。
【0224】
(光電変換素子および太陽電池(試料番号134〜136)の製造)
光電変換素子および太陽電池(試料番号103、106または112)の製造において、光吸収剤溶液Aに代えて上記光吸収剤溶液Dを用い、各化合物0.1Mイソプロパノール溶液に浸漬させることに代えて0.01Mイソプロパノール溶液をスピンコート法(5000rpmで60秒)により塗布したこと以外は光電変換素子および太陽電池(試料番号103、106または112)の製造と同様にして、本発明の光電変換素子および太陽電池(試料番号134〜136)をそれぞれ製造した。各試料番号の光電変換素子において、各化合物の存在量は、試料番号133の光電変換素子と同程度であった。
【0225】
(光電変換素子および太陽電池(試料番号c102)の製造)
光電変換素子および太陽電池(試料番号c101)の製造において、光吸収剤溶液Aに代えて上記光吸収剤溶液Dを用いたこと以外は光電変換素子および太陽電池(試料番号c101)の製造と同様にして、比較例のための光電変換素子および太陽電池(試料番号c102)を製造した。
【0226】
実施例2
(光電変換素子および太陽電池(試料番号201の製造)
以下に示す手順により、図5に示される光電変換素子10Eおよび太陽電池を製造した。
ガラス支持体11a(厚さ1mm)上にスズドープされたIn導電膜(透明電極11b、膜厚300nm)を成膜した導電性支持体11に、ポリエチレンジオキシチオフェン:ポリスチレンスルホン酸(PEDOT:PSS)の1.5質量%水溶液を、スピンコート法(2000rpmで30秒)により塗布した後、ホットプレートにより120℃、10分で乾燥させた。こうして正孔輸送層16を形成した。
【0227】
次いで、実施例1で得た精製CHNHIとPbIとをモル比3:1でγ―ブチロラクトン中、60℃で12時間攪拌混合した後、PTFEシリンジフィルターでろ過して、40質量%の光吸収剤溶液Eを調製した。
正孔輸送層16上に、調製した光吸収剤溶液Eを、スピンコート法(3500rpmで60秒)により塗布した後、ホットプレートにより90℃で90分間乾燥し、CHNHPbIのペロブスカイト化合物からなる感光層13C(膜厚200nm)を設けて、第一電極1Eを作製した。
【0228】
次いで、実施例1の光電変換素子および太陽電池(試料番号129)の製造と同様にして、感光層13Cの表面に化合物層を形成した。化合物T3−1の存在量は2.5mg/mであった。
【0229】
PC61BMの1質量%クロロベンゼン溶液を調製し、この溶液を化合物層上にスピンコート法(1000rpmで60秒)により塗布した。塗布した溶液をホットプレートにより60℃、5分で乾燥させた。こうして電子輸送層4を形成した。
さらに、電子輸送層4上に蒸着法によりアルミナを蒸着し、第二電極2(膜厚100nm)を作製した。
こうして、光電変換素子10Eおよび太陽電池(試料番号201)を製造した。
【0230】
実施例3
(光電変換素子および太陽電池(試料番号301の製造)
以下に示す手順により、正孔輸送層を備えていない光電変換素子(図6に示す光電変換素子10F参照)および太陽電池を製造した。
光電変換素子および太陽電池(試料番号101)の製造において、正孔輸送層3Aを形成することなく、化合物層5C上に蒸着法により金を蒸着し、第二電極2(膜厚0.1μm)を作製したこと以外は、光電変換素子および太陽電池(試料番号101)の製造と同様にして、本発明の光電変換素子および太陽電池(試料番号301)を製造した。
【0231】
(光電変換効率のばらつき評価)
太陽電池の試料番号ごとに光電変換効率のばらつきを以下のようにして評価した。
すなわち、各試料番号の太陽電池を同様にして10検体製造し、電池特性試験を行い、光電変換効率(η/%)を測定した。電池特性試験は、ソーラーシミュレーター「WXS−85H」(WACOM社製)を用いて、AM1.5フィルタを通したキセノンランプから1000W/mの疑似太陽光を照射することにより行った。I−Vテスターを用いて電流−電圧特性を測定し、光電変換効率(η/%)を求めた。
試料番号ごとに、10検体の光電変換効率の平均値を算出して、平均値を「1」に設定した。この基準「1」に対する太陽電池10検体それぞれの光電変換効率(相対値)を求め、この光電変換効率(相対値)と基準との差分(絶対値)の最大値が含まれる範囲を下記基準により分級して、光電変換効率のばらつきを評価した。この際、差分(絶対値)の最大値が平均値(基準「1」)よりも大きいか小さいかは区別しない。
【0232】
A:0以上0.18以下
B:0.18を越え0.21以下
:0.21を越え0.24以下
C:0.24を越え0.27以下
D:0.27越え0.30以下
E:0.30を超える
【0233】
上記光電変換効率のばらつき評価において、本発明の各太陽電池の光電変換効率は、太陽電池として十分に機能するものであった。
【0234】
【表1】
【0235】
表1に示されるように、第一電極の表面に式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物を有する本発明の太陽電池は、いずれも、光電変換効率のばらつきが低減されていた。光電変換効率のばらつき低減効果は、式(4)で表される化合物、式(3)で表される化合物、式(5)で表される化合物の順で、高まることが分かった。
【0236】
式(3)で表される化合物において、Lが分岐アルキル基またはハロゲン原子を有するアルキル基であると、光電変換効率のばらつき低減効果が高くなることが分かる。
式(4)で表される化合物において、連結基Jが、置換基Wとしてアルキル基またはフッ素原子を有すると、またGおよびGがアミノ基であると、光電変換効率のばらつき低減効果が高くなることが分かる。
式(5)で表される化合物において、光電変換効率のばらつき低減効果は、置換基R11が分岐アルキル基またはフッ素原子が置換したアルキル基であると、またn13が1以上であると、さらには環Cが芳香族ヘテロ環基であると、向上することが分かる。
【0237】
式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物による光電変換効率のばらつき低減効果は、感光層の形成方法(光吸収剤溶液との接触方法の相違、ペロブスカイト化合物の結晶構造(式(I−1)または式(I−2))が相違しても、また太陽電池の層構成が相違しても、同様に奏されることが分かる。
【0238】
これに対して、上記式(3)〜(5)のいずれかの式で表される化合物を第一電極の表面に有していない太陽電池(試料番号c101およびc102)は、いずれも、光電変換効率のばらつきが大きかった。
【0239】
本発明をその実施態様とともに説明したが、我々は特に指定しない限り我々の発明を説明のどの細部においても限定しようとするものではなく、添付の請求の範囲に示した発明の精神と範囲に反することなく幅広く解釈されるべきであると考える。
【0240】
本願は、2014年4月25日に日本国で特許出願された特願2014−092110および、2015年3月9日に日本国で特許出願された特願2015−046441に基づく優先権を主張するものであり、これらはいずれもここに参照してその内容を本明細書の記載の一部として取り込む。
【符号の説明】
【0241】
1A〜1F 第一電極
11 導電性支持体
11a 支持体
11b 透明電極
12 多孔質層
13A〜13C 感光層
14 ブロッキング層
2 第二電極
3A、3B、16 正孔輸送層
4、15 電子輸送層
5A〜5C 化合物層
6 外部回路(リード)
10A〜10F 光電変換素子
100A〜100F 太陽電池を利用したシステム
M 電動モーター
図1
図2
図3
図4
図5
図6