【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、安全性が高く、しかも、充放電電位や充放電容量が比較的高いリチウムイオン電池用負極材料を求めて、数多くの試験研究を行った。
このような多くの候補材料の探索過程で、Li
3VO
4は、その電位がLi/Li
+に対し約1.0Vであり、炭素材料よりも金属リチウムが析出する危険性が小さく、高い安全性を確保可能であること、公知のLi
4Ti
5O
12より電位が約0.5V低くなり、Li/Li
+に対し十分高く、充放電電位をLi
4Ti
5O
12より高くできること、充放電容量もLi
4Ti
5O
12よりも高くなること等の知見を得た。
また、Li
3VO
4において、Liの一部やVの一部を他の所定の金属元素に置換しても、同様の充放電電位や充放電容量が得られることが想定された。
【0008】
なお、Li
3VO
4は、LiVO
2等の負極活物質を固相法により製造する際に、その一部として生成することが知られていた(特許文献3、4参照)。しかしながら、炭素材料よりも高容量で、かつ、炭素材料と同程度の高電位となるLiVO
2等の負極活物質に対し、Li
3VO
4は、電池性能を低下させる不純物乃至負極活物質粒の粒径拡大用助剤として認識されていただけであった。
【0009】
本発明者は、そのように不純物扱いされ、リチウムイオン電池の負極活物質の主要成分として利用することが全く想定されていなかったLi
3VO
4や、そのLiの一部やVの一部を他の所定の金属元素に置換したLi
3-XMa
XV
1-YMb
YO
4(0.0<X<3.0、0.0<Y<0.5、Maは、Na、Kから選択される1種又は2種の金属元素、Mbは、B、Si、Ge、Ga、Sn、Mg、Ca、Al、Co、Ni、Fe、Ti、Mn、Cu、Sc、及び、Crから選択される少なくとも1種の金属元素)を負極活物質の主要部として使用することにより、前述の課題が達成できることを見出したのである。
【0010】
本発明は、上述のような知見に基づいてなされたものであり、次のような特徴を有するものである。
(1)Li
3VO
4を、リチウムイオンを吸蔵・放出する負極活物質の50質量%以上として使用することを特徴とするリチウムイオン電池用負極。
(2)Li
3VO
4を、リチウムイオンを吸蔵・放出する負極活物質の50質量%以上として使用することを特徴とするリチウムイオン電池用負極材料。
(3)Li
3-XMa
XV
1-YMb
YO
4(0.0<X<3.0、0.0<Y<0.5、Maは、Na、Kから選択される1種又は2種の金属元素、Mbは、B、Si、Ge、Ga、Sn、Mg、Ca、Al、Co、Ni、Fe、Ti、Mn、Cu、Sc、及び、Crから選択される少なくとも1種の金属元素)を、リチウムイオンを吸蔵・放出する負極活物質の50質量%以上として使用することを特徴とするリチウムイオン電池用負極。
(4)Li
3-XMa
XV
1-YMb
YO
4(0.0<X<3.0、0.0<Y<0.5、Maは、Na、Kから選択される1種又は2種の金属元素、Mbは、B、Si、Ge、Ga、Sn、Mg、Ca、Al、Co、Ni、Fe、Ti、Mn、Cu、Sc、及び、Crから選択される少なくとも1種の金属元素)を、リチウムイオンを吸蔵・放出する負極活物質の50質量%以上として使用することを特徴とするリチウムイオン電池用負極材料。
(5)(1)若しくは(3)に記載の負極又は(2)若しくは(4)に記載の負極材料を具備するリチウムイオン電池。
(6)バナジウム金属又はバナジウム含有化合物とリチウム含有化合物とをモル比でLi:V=3:1となるように混合・粉砕し、得られた混合粉を空気中500〜1100℃で焼成することを特徴とするリチウムイオン電池用負極材料の製造方法。
(7)バナジウム含有化合物がV
2O
5であり、リチウム含有化合物がLi
2CO
3であることを特徴とする(6)に記載のリチウムイオン電池用負極材料の製造方法。
【0011】
本発明は、さらに、次のような実施態様を含むことができる。
(8)0.0<X<2.0、0.0<Y<0.3である(5)に記載のリチウムイオン電池。
(9)0.0<X<1.0、0.0<Y<0.2である(5)に記載のリチウムイオン電池。
(10)0.0<X<0.5、0.0<Y<0.1である(5)に記載のリチウムイオン電池。
(11)充放電開始電位が1.0V vs Li/Li
+ になるLi
3VO
4を負極活物質の50質量%以上として使用するリチウムイオン電池。
(12)0.2-3.0V vs Li/Li
+範囲で充放電容量が280mAh/g以上になるLi
3VO
4を負極活物質の50質量%以上として使用するリチウムイオン電池。
(13)0.5-3.0V vs Li/Li
+範囲で充放電容量が180mAh/g以上になるLi
3VO
4を負極活物質の50質量%以上として使用するリチウムイオン電池。
(14)Li
3VO
4を、負極活物質の50質量%以上として使用するリチウムイオン電池用負極又はリチウムイオン電池用負極材料。
(15)Li
3VO
4を、負極活物質の85質量%以上として使用するリチウムイオン電池用負極又はリチウムイオン電池用負極材料。
(16)Li
3VO
4を、負極活物質の95質量%以上として使用するリチウムイオン電池用負極又はリチウムイオン電池用負極材料。
(17)Li
3VO
4を、負極活物質の全て(100質量%)として使用するリチウムイオン電池用負極又はリチウムイオン電池用負極材料。
(18)Li
3-XMa
XV
1-YMb
YO
4(0.0<X<3.0、0.0<Y<0.5、Maは、Na、Kから選択される1種又は2種の金属元素、Mbは、B、Si、Ge、Ga、Sn、Mg、Ca、Al、Co、Ni、Fe、Ti、Mn、Cu、Sc、及び、Crから選択される少なくとも1種の金属元素)を、負極活物質の50質量%以上として使用するリチウムイオン電池用負極又はリチウムイオン電池用負極材料。
(19)Li
3-XMa
XV
1-YMb
YO
4(0.0<X<3.0、0.0<Y<0.5、Maは、Na、Kから選択される1種又は2種の金属元素、Mbは、B、Si、Ge、Ga、Sn、Mg、Ca、Al、Co、Ni、Fe、Ti、Mn、Cu、Sc、及び、Crから選択される少なくとも1種の金属元素)を、負極活物質の85質量%以上として使用するリチウムイオン電池用負極又はリチウムイオン電池用負極材料。
(20)Li
3-XMa
XV
1-YMb
YO
4(0.0<X<3.0、0.0<Y<0.5、Maは、Na、Kから選択される1種又は2種の金属元素、Mbは、B、Si、Ge、Ga、Sn、Mg、Ca、Al、Co、Ni、Fe、Ti、Mn、Cu、Sc、及び、Crから選択される少なくとも1種の金属元素)を、負極活物質の95質量%以上として使用するリチウムイオン電池用負極又はリチウムイオン電池用負極材料。
(21)Li
3-XMa
XV
1-YMb
YO
4(0.0<X<3.0、0.0<Y<0.5、Maは、Na、Kから選択される1種又は2種の金属元素、Mbは、B、Si、Ge、Ga、Sn、Mg、Ca、Al、Co、Ni、Fe、Ti、Mn、Cu、Sc、及び、Crから選択される少なくとも1種の金属元素)を、負極活物質の全て(100質量%)として使用するリチウムイオン電池用負極又はリチウムイオン電池用負極材料。
(22)上記(14)〜(21)のいずれか1項に記載の負極又は負極材料を具備するリチウムイオン電池。
(23)バナジウム含有化合物が、酸化バナジウム、オキシ三塩化バナジウム、四塩化バナジウム、三塩化バナジウム、メタバナジン酸塩、ポリバナジン酸塩からなる群より選ばれる1種又は2種以上であり、リチウム含有化合物が、炭酸リチウム、水酸化リチウム、硝酸リチウム、硫酸リチウム、亜硫酸リチウム、酢酸リチウム、弗化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム、沃化リチウム、酪酸リチウム、リチウムアルコキシドからなる群より選ばれる1種又は2種以上であることを特徴とする(4)に記載のリチウムイオン電池用負極材料の製造方法。
(24)バナジウム含有化合物が、酸化バナジウムから選ばれる1種又は2種以上であり、リチウム含有化合物が、炭酸リチウム、水酸化リチウムから選ばれる1種又は2種であることを特徴とする(6)又は(23)に記載のリチウムイオン電池用負極材料の製造方法。