(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233840
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】貝殻粉末含有石炭灰固化物
(51)【国際特許分類】
C04B 28/22 20060101AFI20171113BHJP
C04B 7/26 20060101ALI20171113BHJP
C04B 18/04 20060101ALI20171113BHJP
C04B 22/06 20060101ALI20171113BHJP
B09B 3/00 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
C04B28/22
C04B7/26ZAB
C04B18/04
C04B22/06 Z
B09B3/00 301M
B09B3/00 301Z
B09B3/00 301N
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-270541(P2013-270541)
(22)【出願日】2013年12月26日
(65)【公開番号】特開2015-124126(P2015-124126A)
(43)【公開日】2015年7月6日
【審査請求日】2016年11月29日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 一般財団法人電力中央研究所、電力中央研究所報告 研究報告:M12007、i−iii頁,第1−13頁、平成25年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000173809
【氏名又は名称】一般財団法人電力中央研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100101236
【弁理士】
【氏名又は名称】栗原 浩之
(72)【発明者】
【氏名】日恵井 佳子
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 茂男
【審査官】
田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−263210(JP,A)
【文献】
特開2005−320190(JP,A)
【文献】
特開2007−162444(JP,A)
【文献】
中国特許出願公開第101182162(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00 − 32/02
B09B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰、未焼成の貝殻粉末、石灰類を含有する材料を混練して水和反応させた貝殻粉末含有石炭灰固化物において、
前記貝殻粉末の割合が43質量%から80質量%である
ことを特徴とする貝殻粉末含有石炭灰固化物。
【請求項2】
請求項1に記載の貝殻粉末含有石炭灰固化物において、
前記石炭灰の割合が5質量%から43質量%である
ことを特徴とする貝殻粉末含有石炭灰固化物。
【請求項3】
請求項2に記載の貝殻粉末含有石炭灰固化物において、
前記石灰類の割合が11質量%である
ことを特徴とする貝殻粉末含有石炭灰固化物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭灰およびホタテやカキ貝殻などの廃棄物を用いた貝殻粉末含有石炭灰固化物に関する。
【背景技術】
【0002】
我が国の石炭灰発生量は年々増加しており、近年は、年間1000万トンを超え、これらの有効利用方法の開発が求められているのが現状である。一方、年間20〜40万トン産出されるホタテやカキの貝殻は、埋め立て地不足や埋め立てに伴う悪臭が地方自治体の抱える産廃処理問題の一つとして深刻な課題となっている。これらの理由から、石炭灰やホタテ貝殻などを大量に、かつ安価、そして安全に処理できる技術の開発が望まれる。
【0003】
このような状況から、本件出願の発明者等は、有効利用技術の開発が求められている石炭灰、およびホタテやカキなどの貝殻の廃棄物を用いて、養浜用の砂礫や路盤材等に利用可能で、環境影響がほとんどない石炭灰固化物およびこれを安価に製造することができる石炭灰固化物の製造方法を提案している(特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載された技術では、環境影響がほとんどない貝殻粉末含有石炭灰固化物が得られ、貝殻粉末含を有効に使用した技術となっている。しかし、貝殻粉末の割合を特定して貝殻粉末含有石炭灰固化物の物性を把握するには至っていないのが現状であり、適用対象物の検討等のために、貝殻粉末の実用的な割合を特定する要望があるのが実情である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−263210号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記状況に鑑みてなされたもので、貝殻粉末の割合を特定した貝殻粉末含有石炭灰固化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の貝殻粉末含有石炭灰固化物は、石炭灰、
未焼成の貝殻粉末、石灰類を含有する材料を混練して水和反応させた貝殻粉末含有石炭灰固化物において、前記貝殻粉末の割合が
43質量%から80質量%であることを特徴とする。
【0008】
請求項1に係る本発明では、
未焼成の貝殻粉末の割合を
43質量%から80質量%に特定し、貝殻粉末の実用的な割合を特定することが可能になる。貝殻粉末含有石炭灰固化物は、加圧成型や型枠中での振動締め固め等で作製することができる。
【0009】
そして、請求項2に係る本発明の貝殻粉末含有石炭灰固化物は、請求項1に記載の貝殻粉末含有石炭灰固化物において、
前記石炭灰の割合が5質量%から43質量%であることを特徴とする。また、請求項3に係る本発明の貝殻粉末含有石炭灰固化物は、請求項2に記載の貝殻粉末含有石炭灰固化物において、前記石灰類の割合が
11質量%であることを特徴とする。
【0010】
請求項2に係る本発明では、
石炭灰の割合を特定することができ、請求項3に係る本発明では、石灰類の割合を特定して固化物の成分の割合を的確にすることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明の貝殻粉末含有石炭灰固化物は、貝殻粉末の割合を的確に特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図2】貝殻粉末の含有割合と圧縮強度の関係を表すグラフである。
【
図3】細孔空隙率及びかさ密度の状況を説明する表図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の貝殻粉末含有石炭灰固化物をその製造方法の一例と共に具体的に説明する。
【0014】
本願発明の貝殻粉末含有石炭灰固化物は、石炭灰、貝殻細粉(未焼成)、石灰類と、必要に応じて添加される石膏類とを含有する材料を加圧成型した状態で、各種養生として高湿養生、次いで水中養生を実施し水和反応させたものであり、表面に炭酸カルシウムなどからなる炭酸塩被膜を有するものである。つまり、本願発明の貝殻粉末含有石炭灰固化物は、石炭灰、貝殻粉末、石灰類を含む水和物の表面に、炭酸塩からなる被膜を有している。
【0015】
本願発明で用いる石炭灰は、特に組成を限定するものではなく、フライアッシュやクリンカアッシュを適用することができ、さらに、埋め立て処理されたものを再度利用してもよい。
【0016】
一方、本願発明での貝殻粉末は、ホタテ、カキ、ハマグリ、アサリなど各種の貝殻を粉末として用いたものであり、貝の種類は特に限定されない。これらの貝殻は廃棄物となるものをそのまま使用でき、焼成処理などして水和反応活性の高い生石灰(CaO)や消石灰(Ca(OH)
2)などにする必要はない。本発明において、貝殻粉末は、85質量%以下の範囲で含有させる。例えば、好ましくは、5質量%〜80質量%の範囲で含有させる。
【0017】
石灰類は、例えば、生石灰(CaO)、消石灰(Ca(OH)
2)など、および貝殻粉末を焼成したもののなかから選択されるものである。
【0018】
また、必要に応じて添加される石膏類を添加することも可能である。石膏類は、石炭灰、貝殻(未焼成)、石灰類との混合物の総カルシウム含有量の不足分を補うために添加するものであり、排脱石膏(脱硫石膏)、化学石膏、廃石膏ボード粉末、天然石膏などを挙げることができる。
【0019】
本発明の貝殻粉末含有石炭灰固化物を製造するには、まず、石炭灰と、石灰類と、必要に応じて添加される貝殻細粉及び/又は石膏類とを湿式混合して混練物を得る。ここで、湿式混合は、例えば、ミキサー、ボールミルなど従来から周知の方法で行えばよい。湿式混合は、各原料がほぼ均一に混合されるように行えばよく、また、湿式混合は水を用いて行えばよく、混練物が、後工程で加圧成型するのに適した以上の水分含有量となるように行えばよい。
【0020】
次に、このようにして得た混練物を加圧成型する。加圧成型する方法は特に限定されず、圧縮成型、押し出し成型(一軸圧成型)などを行えばよい。一軸圧押し出し成型を行う場合には、水分含有量が20質量%程度とするのが好ましい。尚、振動締め固めにより混練物を成型することも可能である。
【0021】
ここで、加圧成型して成型物とするのは、材料同士を密着させた状態で、次の工程での反応を効率的に行わせるためである。加圧荷重は任意であり、0.6MPa以上の荷重で加圧成型するのが好ましく、0.6MPa未満の荷重で加圧成形することも可能である。
【0022】
次に、このようにして加圧成型した成型物を高湿環境下に保持して水和反応させて水和反応物とする(高湿養生)。この高湿環境下では、成型物の水和反応を促進して貝殻粉末含有石炭灰固化物の表面に炭酸カルシウムなどからなる緻密な表面被膜(表面骨格)を作る。かかる工程の高湿環境下とは、相対湿度が85%RH以上の環境である。高湿保持する期間は、水和反応に耐え得る表面骨格が形成される期間(短期間)であればよい。相対湿度85%、室温の環境では3日間以上保持すればよい。
【0023】
続いて、高湿保持した成型品を水中養生(室温)して水和反応させる。水中養生においては、貝殻粉末含有石炭灰固化物の表面に炭酸カルシウムなどからなる緻密な表面被膜が形成されるとともに、固化物内部の水和反応を促進する。かかる水中養生は、養生水を交換することなく行えばよい。
【0024】
勿論、通常のセメント成型品などの水中養生のように養生水を循環して新鮮な水を導入したり、定期的に交換したりしてもよいが、この必要はなく、炭酸塩被膜は養生水を交換しない方がより良好に形成される。
【0025】
よって、エネルギーをできるだけ使用せず、環境保護を考慮すれば、養生水を交換することなく、常温の養生水で行えばよい。水中養生の期間は炭酸塩被膜が十分に形成されるまでとすればよく、例えば、3日程度行えばよい。
【0026】
水中養生した水中養生物は、大気中で養生(室温)して貝殻粉末含有石炭灰固化物とする。この大気中での養生は大気中に放置しておけばよく、養生水をゆるやかに乾燥させれば十分である。この大気中での養生により、表面の炭酸塩被膜が完全に完成し、高密度、高強度の貝殻粉末含有石炭灰固化物となる。
【0027】
尚、高湿養生に続いて水中養生を行っているが、場合によっては、水中養生を省略することも可能である。
【0028】
以下具体的に説明する。
図1には製造フローを示してある。
【0029】
参考例1
酸化鉄、酸化カルシウムの含有量が比較的多く、水和反応性の高い石炭灰(組成:SiO
2:Al
2O
3:Fe
2O
3:CaO=52:29:9:5)80質量%、ホタテの貝殻粉末(貝殻細分)5質量%、消石灰11質量%、脱硫石膏4質量%となるように、原料をミキサーで水を用いて湿式混合し、粘土状の混練物(水分含有量約20質量%から25質量%)とし、これを一軸圧成型してペレット状の成型物を得た。
【0030】
これを脱型した後、室温、相対湿度85%RH以上の高湿環境下に7日間保持し、その後、養生水を交換することなく、7日間水中で養生した。そして、水中養生物を大気中に14日間放置して乾燥し、
参考例1の貝殻粉末含有石炭灰固化物を得た。
【0031】
参考例2
石炭灰70質量%、ホタテの貝殻粉末(貝殻砕粉)15質量%、消石灰11質量%、脱硫石膏4質量%となるように、原料をミキサーで水を用いて湿式混合した。その他は
参考例1と同様に
参考例2の貝殻粉末含有石炭灰固化物を得た。
【0032】
実施例1
石炭灰43質量%、ホタテの貝殻粉末(貝殻砕粉)43質量%、消石灰11質量%、脱硫石膏4質量%となるように、原料をミキサーで水を用いて湿式混合した。その他は
参考例1と同様に
実施例1の貝殻粉末含有石炭灰固化物を得た。
【0033】
実施例2
石炭灰15質量%、ホタテの貝殻粉末(貝殻砕粉)70質量%、消石灰11質量%、脱硫石膏4質量%となるように、原料をミキサーで水を用いて湿式混合した。その他は
参考例1と同様に
実施例2の貝殻粉末含有石炭灰固化物を得た。
【0034】
実施例3
石炭灰5質量%、ホタテの貝殻粉末(貝殻砕粉)80質量%、消石灰11質量%、脱硫石膏4質量%となるように、原料をミキサーで水を用いて湿式混合した。その他は
参考例1と同様に
実施例3の貝殻粉末含有石炭灰固化物を得た。
【0035】
貝殻粉末の含有割合に対する圧縮強度の関係を
図2に示してある。
【0036】
貝殻粉末の含有割合が5質量%である
参考例1では、約50N/mm
2の強度を有し、貝殻粉末の含有割合が15質量%である
参考例2では、約55N/mm
2の強度を有し、貝殻粉末の含有割合が43質量%である
実施例1では、約65N/mm
2の強度を有していることが確認された。
【0037】
また、貝殻粉末の含有割合が
70質量%である
実施例2では、約80N/mm
2の大きな強度を有し、貝殻粉末の含有割合が80質量%である
実施例3では、約90N/mm
2の大きな強度を有していることが確認された。
【0038】
更に、図には省略したが、貝殻粉末の含有割合が85質量%である例では、90N/mm
2を超える大きな強度を有していることが確認された。ただし、消石灰、脱硫石膏は、固化物中の結合材として不可欠であるため、貝殻粉末の含有割合が85質量%になると、消石灰、脱硫石膏を減らすことになり、球形の石炭灰による流動性や、球状物の転動効果が得られずに、一軸圧成型からの離型が困難になる虞がある。
【0039】
上述したように、貝殻粉末の含有割合を5質量%から85質量%にすることで、軽量骨材として必要とされる強度である50N/mm
2以上の強度が得られる。つまり、貝殻粉末の含有割合を5質量%から85質量%にすることで、貝殻粉末の含有割合を広い範囲に設定することができ、約50N/mm
2からで約90N/mm
2の強度を有する貝殻粉末含有石炭灰固化物を得ることができ、例えば、骨材として利用できる十分な強度を有することが確認できた。
【0040】
各参考例、各実施例の貝殻粉末含有石炭灰固化物の細孔空隙率、及び、かさ密度の状況を
図3に示してある。
【0041】
参考例1の貝殻粉末含有石炭灰固化物の細孔空隙率は25(%)であり、
参考例2の貝殻粉末含有石炭灰固化物の細孔空隙率は25(%)であり、
実施例1の貝殻粉末含有石炭灰固化物の細孔空隙率は22(%)であることが確認できた。
【0042】
また、
実施例2の貝殻粉末含有石炭灰固化物の細孔空隙率は21(%)であり、
実施例3の貝殻粉末含有石炭灰固化物の細孔空隙率は17(%)であることが確認できた。
【0043】
参考例1の貝殻粉末含有石炭灰固化物のかさ密度は1.8(g/cm
3)であり、
参考例2の貝殻粉末含有石炭灰固化物のかさ密度は1.9(g/cm
3)であり、
実施例1の貝殻粉末含有石炭灰固化物のかさ密度は1.9(g/cm
3)であることが確認できた。
【0044】
また、
実施例2の貝殻粉末含有石炭灰固化物のかさ密度は2.0(g/cm
3)であり、
実施例3の貝殻粉末含有石炭灰固化物のかさ密度は2.2(g/cm
3)であることが確認できた。
【0045】
上述したように、貝殻粉末の含有割合を5質量%から85質量%にすることで、貝殻粉末の含有割合を広い範囲に設定することができ、緻密でかつ高強度な多孔体となり、例えば、骨材として利用できることが確認できた。
【0046】
貝殻粉末の含有割合を5質量%から85質量%にした貝殻粉末含有石炭灰固化物の溶出液のpHは、石炭灰の原粉のpHに比べて低い値を示していることが確認されている。このため、アルカリの溶出に対して影響を及ぼすことなく、高密度、高強度の貝殻粉末含有石炭灰固化物が得られていることがわかる。
【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明は、貝殻粉末含有石炭灰固化物の産業分野で利用することができる。