【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0071】
(実施例1:2’,4’−架橋型ヌクレオシドの合成(1):スピロシクロプロパンBNA−T(scpBNA−T)アミダイトブロックの合成)
【0072】
【化10】
【0073】
(1)化合物2の合成
【0074】
【化11】
【0075】
窒素気流下、化合物1(7.38g,18.5mmol)の無水ジクロロメタン溶液(100mL)に、デス−マーチンペルヨージナン(9.41g,22.2mmol)を添加し、室温で40分間撹拌した。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液と飽和重曹水(2:1(v/v))を0℃にて添加し、室温で10分間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、ジエチルエーテルを添加し、水と飽和食塩水とで洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物2(7.61g,定量的)を無色油状物質として得た。
【0076】
得られた化合物2の物性データを表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
(2)化合物3の合成
【0079】
【化12】
【0080】
上記で得られた化合物2(7.61g,19.1mmol)のアセトニトリル溶液(10mmL)に、リン酸二水素ナトリウム(0.2M水溶液, 20mL,3.82mmol)と過酸化水素水(30重量%,2.3mL,21.0mmol)を添加した。これに亜塩素酸(0.75M水溶液,38mL,28.6mmol)を10分間かけて滴下した後、室温で1時間撹拌した。次いで、反応溶液に亜硫酸ナトリウム(4.8g,19.1mmol)を0℃にて添加し、室温で10分間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して化合物3(7.61g,96%)を白色固体として得た。
【0081】
得られた化合物3の物性データを表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
(3)化合物4の合成
【0084】
【化13】
【0085】
窒素気流下、上記で得られた化合物3(7.61g,18.4mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド溶液(30mL)に、重曹(15.4g,184mmol)とヨードメタン(2.86mL,45.9mmol)と添加し、20時間撹拌した。反応終了後、これに飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液と水とを添加し、ジエチルエーテルで抽出した。水と飽和食塩水とで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して、化合物4(7.35g,93%)を白色固体として得た。
【0086】
得られた化合物4の物性データを表3に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
(4)化合物5の合成
【0089】
【化14】
【0090】
窒素気流下、上記で得られた化合物4(500mg,1.17mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(14mL)にオルトチタン酸テトライソプロピル(0.35mL,1.17mmol)とエチルマグネシウムブロミド(1Mテトラヒドロフラン溶液,5.83mL,5.83mmol)を0℃にて添加し、室温で18時間撹拌した。反応終了後、これに飽和塩化アンモニウム水溶液を添加し、10分間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。さらに無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物5(0.442g,89%)を赤色ペースト状物質として得た。
【0091】
得られた化合物5の物性データを表4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
(5)化合物6の合成
【0094】
【化15】
【0095】
窒素気流下、上記で得られた化合物5(2.55g,5.99mmol)の無水ジクロロメタン溶液(50mL)に、2,6−ルチジン(2.09mL,18.0mmol)とトリフルオロメタンスルホン酸tert−ブチルジメチルシリル(2.75mL,12.0mmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。次いで、これに飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出後、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:15(v/v)→1:5(v/v))により精製し、化合物6(2.92g,90%)を黄色油状物質として得た。
【0096】
得られた化合物6の物性データを表5に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
(6)化合物7の合成
【0099】
【化16】
【0100】
上記で得られた化合物6(8.04g,14.9mmol)の酢酸溶液)17.0mL,0.30mol)に無水酢酸(28.2mL,0.30mol)とトリフルオロ酢酸(3.20mL,44.7mmol)とを添加し、室温で5時間撹拌した。これに飽和重曹水を加え、酢酸エチルで抽出後、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物7(9.43g,粗生成物)を赤褐色油状物質として得た。この化合物7を、精製することなく即座に次の反応に用いた。
【0101】
(7)化合物8の合成
【0102】
【化17】
【0103】
窒素気流下、上記で得られた化合物7(9.43g,粗生成物)の無水アセトニトリル溶液(140mL)にチミン(5.63g,44.6mmol)、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(25%アセトニトリル溶液,18.2mL,74.3mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(4.03mL,22.3mmol)を室温で添加し、80℃で2時間撹拌した。反応終了後、これに飽和重曹水を0℃にて添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物8(8.26g)を赤褐色油状物質として得た。
【0104】
得られた化合物8の物性データを表6に示す。
【0105】
【表6】
【0106】
(8)化合物9の合成
【0107】
【化18】
【0108】
上記で得られた化合物8(8.26g,粗生成物)のテトラヒドロフラン溶液(150mL)にメチルアミン(40%水溶液,30.4mL,0.73mol)を添加し、室温で4時間撹拌した。反応終了後、テトラヒドロフランを減圧留去した。酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物9(7.50g)を黄色泡状物質として得た。
【0109】
得られた化合物9の物性データを表7に示す。
【0110】
【表7】
【0111】
(9)化合物10の合成
【0112】
【化19】
【0113】
窒素気流下、上記で得られた化合物9(7.50g,粗生成物)の無水ピリジン溶液(120mL)にメタンスルホニルクロリド(1.43mL,18.5mmol)を添加し、室温で4時間撹拌した。反応終了後、これに水を添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (酢酸エチル:ヘキサン=1:5(v/v))により精製し、化合物10(7.39g,4工程)を白色泡状固体として得た。
【0114】
得られた化合物10の物性データを表8に示す。
【0115】
【表8】
【0116】
(10)化合物11の合成
【0117】
【化20】
【0118】
上記で得られた化合物10(3.19g,4.64mmol)のテトラヒドロフラン−エタノール溶液(150mL,3:2(v/v)) に水酸化ナトリウム(4M,水溶液,60mL,0.23mol)を添加し、70℃で8時間撹拌した。反応終了後、塩酸で中和し、溶媒を減圧留去した。酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水と水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物11(2.71g,粗生成物)を白色固体として得た。
【0119】
得られた化合物11の物性データを表9に示す。
【0120】
【表9】
【0121】
(11)化合物12の合成
【0122】
【化21】
【0123】
窒素気流下、化合物11(2.71g,粗生成物)の無水ピリジン溶液(50mL)にトリフルオロ酢酸無水物(3.65mL,22.3mmol)を添加し、室温で12時間撹拌した。さらに、これにトリフルオロ酢酸無水物(0.73mL,4.45mmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。次いで、これに水を添加し、酢酸エチルで抽出後、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物12(4.12g,粗生成物)を褐色泡状固体として得た。この化合物12を、精製することなく即座に次の反応に用いた。
【0124】
(12)化合物13の合成(A)
【0125】
【化22】
【0126】
上記で得られた化合物12(4.12g,粗生成物)のテトラヒドロフラン溶液(250mL)にテトラブチルアンモニウムフルオリド(1Mテトラヒドロフラン溶液,13.9mL,13.9mmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=2:3(v/v))により精製し、化合物13(710mg,32%,3工程)を黄色泡状固体として得た。
【0127】
上記合成(A)で得られた化合物13の物性データを表10に示す。
【0128】
【表10】
【0129】
(12)−2 化合物13の合成(B)
【化23】
【0130】
「上記化合物13の合成(A)」に代えて、「合成(B)」として、化合物10から新たに化合物17を経由して化合物13を以下のようにして合成した。
【0131】
窒素気流下、化合物10(459mg,0.67mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(25mL)にテトラブチルアンモニウムフルオリド(1Mテトラヒドロフラン溶液,0.67mL,0.67mmol)を添加し、室温で5時間撹拌した。反応終了後、水を添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー((クロロホルム:メタノール=50:1(v/v)→20:1(v/v))により精製し、化合物17(290mg,91%)を白色固体として得た。
【0132】
得られた化合物17の物性データを表11に示す。
【0133】
【表11】
【0134】
次いで、化合物17(1.62g,3.40mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(35mL)に、炭酸カリウム(1.1g,10.2mmol)を添加し、90℃で20時間撹拌した。反応終了後、水を添加し、ジエチルエーテルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1(v/v))により精製し、化合物13(1.23g,77%)を白色固体として得た。
【0135】
上記合成(B)で得られた化合物13の物性データを表12に示す。
【0136】
【表12】
【0137】
(13)化合物14の合成
【0138】
【化24】
【0139】
水素気流下、上記で得られた化合物13(350mg,1.50mmol)のエタノール溶液(20mL)に20%水酸化パラジウム/炭素(パラジウム20%,170mg)を添加し、室温で2時間撹拌した。反応混合物をろ過した後、溶媒を減圧留去し、化合物14(230mg,粗生成物)を白色泡状固体として得た。
【0140】
得られた化合物14の物性データを表13に示す。
【0141】
【表13】
【0142】
(14)化合物15の合成
【0143】
【化25】
【0144】
窒素気流下、上記で得られた化合物14(130mg,粗生成物)の無水ピリジン溶液(15mL)に4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(892mg,2.63mmol)を添加し、室温で14時間撹拌した。これに水を添加し、ジクロロメタンで抽出後、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.5%トリエチルアミン含有クロロホルム:メタノール=50:1(v/v))により精製し、化合物15(160mg,60%)を白色泡状固体として得た。
【0145】
得られた化合物15の物性データを表14に示す。
【0146】
【表14】
【0147】
(15)化合物16の合成
【0148】
【化26】
【0149】
窒素気流下、上記で得られた化合物15(30.0mg,0.05mmol)の無水アセトニトリル溶液(1.0mL)にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(34.8μL,0.20mmol)、2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロクロリダート(22.3μL,0.10mmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.5%トリエチルアミン含有酢酸エチル:ヘキサン=2:1(v/v))により精製し、化合物16(24mg,60%(scpBNA−Tアミダイトブロック))を白色泡状固体として得た。
【0150】
得られた化合物16の物性データを表15に示す。
【0151】
【表15】
【0152】
(実施例2)オリゴヌクレオチドの合成および精製
実施例1で得られた化合物16(アミダイトブロック)、ならびにdG(iBu)、dC(Bz)およびTのホスホロアミダイト(いずれもシグマ−アルドリッチ社製)を、それぞれ0.1Mの無水アセトニトリル溶液として調製し、nS−8 Oligonucleotides Synthesizer(株式会社ジーンデザイン製オリゴヌクレオチド合成装置)を用いて、当該分野において公知のホスホロアミダイト法に従って、オリゴヌクレオチド(5’−d(GCGTTXTTTGCT)−3’、5’−d(GCGTTXTXTGCT)−3’、5’−d(GCGTTXXTTGCT)−3’、5’−d(GCGXTXTXTGCT)−3’ 、5’−d(GCGTTXXXTGCT)−3’および5’−d(TTTTTTTTXT)−3’)の合成を行った(ここで、Xは実施例1で得られた化合物16(アミダイトブロック)に相当する)。
【0153】
当該合成において、合成スケールは0.2μmolであり、かつトリチルオン条件下で行った。活性化剤にはActivator 42(シグマ−アルドリッチ社製0.25Mアセトニトリル溶液)を用いた。縮合時間は化合物16を用いた合成では8分間、他の天然のアミダイトブロックを用いた合成では32秒間とした。合成完了後、28%のアンモニア水で室温下にて、1.5時間処理し、カラム担体からの切り出しを行い、引き続いて55℃にて12時間静置することにより、塩基部およびリン酸ジエステル部の脱保護を行った。次いで、簡易逆相カラム(ウォーターズ社製Sep−Pak(登録商標) Plus C18 Environmental Cartridges)により精製し、さらに逆相HPLCにて精製を行った。
【0154】
なお、このHPLCの条件は以下の通りであった。
【0155】
カラムにウォーターズ社製Xbridge(登録商標)MS C
18 2.5μmol(4.6mm×50mm,10mm×50mm)を用い、移動相のA液として0.1Mの酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)緩衝液(pH7.0)、およびB液として0.1MのTEAA緩衝液:アセトニトリル=1:1(v/v)を調製し、B液の濃度について6〜12%(30分間)のグラジエントを行った。分析は1mL/分で行い、分取は3mL/分で行った。検出UVは254nmであった。
【0156】
さらに、上記化合物16(アミダイトブロック)に代えて、Obikaら、Tetrahedron Lett.,1997年,38,pp.8735−8738に記載の方法を用いて合成した2’,4’−BNA/LNA(架橋結合部分の6’位にスピロシクロプロパン基を有していないこと以外は、上記実施例1で得られた化合物16と同様の構造を有する)を用い、上記と同様にしてオリゴヌクレオチドを合成した。
【0157】
また、上記化合物16(アミダイトブロック)に代えて、天然チミジン(シグマ−アルドリッチ社製)を用いて、上記と同様にしてオリゴヌクレオチドを合成した。
【0158】
(実施例3)オリゴヌクレオチドの組成の確認と定量
実施例2で得られたオリゴヌクレオチドの組成をMALDI−TOF−MASS測定により決定した。当該測定にあたり、まず、3−ヒドロキシピコリン酸水溶液(10mg/mL)とクエン酸二アンモニウム水溶液(1mg/mL)と1:1の容量比で混合したマトリックス(1μL)を測定プレート上で乾燥させ、乾燥したマトリックス上に水に溶解したオリゴヌクレオチド(50μM,1μL)を載せて乾燥させ、その後測定を行った。分子量の測定をネガティブリフレクターモードで行い、オリゴチミジル酸(7mer、15merおよび23mer)を外部標準として用いた。また、合成したオリゴヌクレオチドの定量を、吸光度測定装置(島津製作所製SHIMADZU UV−1800)を用いて260nmにおける紫外部吸収を測定することで行った。
【0159】
得られた結果を表16に示す。
【0160】
【表16】
【0161】
(実施例4)融解温度(T
m)の測定
本実施例では、5’−(AGCAAAAAACGC)−3’の配列(配列番号1)を有する一本鎖オリゴDNAおよび一本鎖オリゴRNAの標的鎖(それぞれ、実施例1と同様に、ホスホロアミダイト法に従って合成した)について、実施例2の各種オリゴヌクレオチドのハイブリッド形成能(結合親和性)を調べた。
【0162】
各種オリゴヌクレオチドと標的鎖とをアニーリング処理して二重鎖を形成させた後、T
m値を測定することにより、オリゴヌクレオチドのハイブリッド形成能を調べた。形成された二重鎖のT
m値を測定した。
【0163】
具体的には、各オリゴヌクレオチド(終濃度4μM)および塩化ナトリウム(終濃度100mM)のリン酸緩衝液(10mM,pH7.2,130μL)を沸騰水中に浴し、室温までゆっくり冷却した。測定装置は、SHIMADZU UV−1650PC、SHIMADZU UV−1800 spectrometers(株式会社島津製作所製)を用い、窒素気流下、測定溶液を5℃まで冷却し測定を開始した。0.5℃/分の速度で90℃まで昇温し、0.5℃間隔で260nmにおける吸光度をプロットした。T
m値は中線法により算出し、独立した3回の測定における平均値とした。
【0164】
表17は、一本鎖オリゴDNAを標的鎖とした場合の結果を示し、表18は、一本鎖オリゴRNAを標的鎖とした場合の結果を示す。いずれとも、二重鎖の50%が解離する温度であるT
m値、および修飾単位あたりのT
m値差(化合物16(アミダイトブロック)を用いた場合および2’,4’−BNA/LNAを用いた場合)を示す。
【0165】
【表17】
【0166】
【表18】
【0167】
表17および18から明らかなように、化合物16(アミダイトブロック)を含むオリゴヌクレオチドは、天然のオリゴヌクレオチドと比較して、一本鎖オリゴDNAおよび一本鎖オリゴRNAの両方に対してT
m値が高く、高い結合親和性を示した。特に一本鎖オリゴRNAに対しては、化合物16(アミダイトブロック)を含むオリゴヌクレオチドは、2’,4’−BNA/LNAに匹敵する高い結合親和性を示した。
【0168】
図1は、5’−d(GCGTTXTTTGCT)−3’の配列の各種オリゴヌクレオチドについて、一本鎖オリゴRNA標的鎖に対して形成した二重鎖ハイブリッドが解離するT
m曲線を示す。
図1の縦軸は、260nmの吸光度を表し、横軸は、温度(℃)を表す。
【0169】
図1からもまた、化合物16(アミダイトブロック)を含むオリゴヌクレオチドは、一本鎖オリゴRNAに対して、2’,4’−BNA/LNAに匹敵する高い結合親和性を示すことが明らかとなった。
【0170】
(実施例5)ヌクレアーゼ耐性能の評価
5’−d(TTTTTTTTXT)−3’の配列のXとして実施例1の化合物16(アミダイトブロック);2’,4’−BNA/LNA(T);および天然チミジンをそれぞれ用いた10merの各種オリゴヌクレオチドを、以下のようにして調製した。すなわち、オリゴの合成に、原料のヌクレオシドのホスホロアミダイトを0.1Mの無水アセトニトリル溶液として調整し、nS−8 Oligonucleotides Synthesizer(株式会社ジーンデザイン製オリゴヌクレオチド合成装置)を用いて通常のホスホロアミダイト法に従って行った。当該合成において、合成スケールは1.0μmolであり、かつトリチルオン条件下で行った。活性化剤にはActivator 42(シグマ−アルドリッチ社製0.25Mアセトニトリル溶液)を用いた。縮合時間は化合物16を用いた合成では10分間、他の天然のアミダイトブロックを用いた合成では40秒間とした。合成完了後、カラム担体をマイクロチューブに移し、28%のアンモニア水中で55℃にて、一晩静置し、カラム担体からの切り出しと、塩基部およびリン酸ジエステル部の脱保護とを行った。次いで、簡易逆相カラム(ウォーターズ社製Sep−Pak(登録商標) Plus C18 Environmental Cartridges)により精製し、さらに逆相HPLCにて精製を行った。HPLCの条件は、カラムにウォーターズ社製Xbridge(登録商標)MS C
18 2.5μmol(4.6mm×50mm,10mm×50mm)を用い、移動相のA液として0.1Mの酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)緩衝液(pH7.0)、およびB液として0.1MのTEAA緩衝液:アセトニトリル=1:1(v/v)を調製し、B液の濃度について6〜12%(30分間)のグラジエントを行った。分析は1mL/分で行い、分取は3mL/分で行った。検出UVは260nmであった。
【0171】
ヌクレアーゼ耐性の評価は、以下のように行った。各種オリゴヌクレオチド(終濃度4μM)および塩化マグネシウム(終濃度10mM)のトリス−塩酸緩衝液(50mM,pH8.0,100μL)に3’−エキソヌクレアーゼ(Crotalus Admanteus Venom Phosphodiesterase:CAVP,Pharmacia Biotech社製)を1μg/mLとなるように加え37℃で静置した。反応開始から2.5、5、10、20、40、80分後に反応液から20μLずつ取り、90℃下で2.5分間静置させることで酵素を失活させ、原料オリゴヌクレオチドの残量を逆相HPLCにより定量した。HPLCの条件は、カラムにWaters Xbridge(登録商標)MS C
18 2.5μmol(4.6mm×50mm)を用い、移動相のA液を0.1M 酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)緩衝液(pH7.0)、B液を0.1M TEAA緩衝液:アセトニトリル=1:1(v/v)で調製し、B液濃度6−12%(20分)のグラジエントで行った。分析を1mL/分の流速で行い、260nmのUVで検出した。
【0172】
10merと9merのオリゴヌクレオチドの残量を未反応のオリゴヌクレオチドの割合(%)として算出し、反応時間に対してプロットした。結果を
図2に示す。
【0173】
図2は、5’−d(TTTTTTTTXT)−3’の配列の各種オリゴヌクレオチドを3’−エキソヌクレアーゼで処理した場合の、未反応のオリゴヌクレオチドの割合の経時変化を示すグラフである。
図1の縦軸は、ヌクレアーゼ処理に対して未反応のオリゴヌクレオチドの割合(%)を示し、横軸は、ヌクレアーゼ処理時間(分)を示す。
図2の記号は以下を表す:菱形、実施例1の化合物16(アミダイトブロック)を含有するオリゴヌクレオチド;四角、2’,4’−BNA/LNAを含有するオリゴヌクレオチド;および三角、天然チミジンを含有するオリゴヌクレオチド。
【0174】
図2から明らかなように、化合物16(アミダイトブロック)を含有するオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ処理の80分後でも60%以上が未反応のまま残存しており、分解されにくかった。これに対し、2’,4’−BNA/LNAを含有するオリゴヌクレオチドおよび天然チミジンを含有するオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ処理の20分後にはほぼ分解された。このように、化合物16(アミダイトブロック)を含有するオリゴヌクレオチドは、2’,4’−BNA/LNAを含有するオリゴヌクレオチドに比較して、はるかに高い酵素耐性能を有することが示された。
【0175】
(実施例6:2’,4’−架橋型ヌクレオシドの合成(2):スピロシクロプロパンBNA−
mC(scpBNA−
mC)アミダイトブロックの合成)
【0176】
【化27】
【0177】
(1)化合物18の合成
【0178】
【化28】
【0179】
アルゴン気流下、実施例1で得られた化合物15(167mg,0.28mmol)の無水ピリジン溶液(2mL)にクロロトリエチルシラン(0.24mL,1.39mmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。反応終了後、飽和重曹水を0℃で添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1(v/v))で精製し、化合物18(188mg,95%)を黄色泡状固体として得た。
【0180】
得られた化合物18の物性データを表19に示す。
【0181】
【表19】
【0182】
(2)化合物19の合成
【0183】
【化29】
【0184】
アルゴン気流下、化合物18(969mg,1.36mmol)、トリエチルアミン(2.79mL,20.1mmol)、および1,2,4−トリアゾール(1.39g,20.1mmol)の無水アセトニトリル溶液(15mL)に、塩化ホスホリル(0.38mL,4.03mmol)を0℃で滴下した。室温で2時間撹拌した後、反応溶液に飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して化合物19(1.06g,77%)を得た。化合物19については精製することなく、直ちに次の反応に用いた。
【0185】
(3)化合物20の合成
【0186】
【化30】
【0187】
化合物19(1.06g)の1,4−ジオキサン溶液(10mL)に、アンモニア水溶液(28重量%,1.26mL,67.0mmol)を0℃で添加し、室温で2時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=30:1(v/v))で精製し、化合物20(958mg,98%,2工程)を白色泡状固体として得た。
【0188】
得られた化合物20の物性データを表20に示す。
【0189】
【表20】
【0190】
(4)化合物21の合成
【0191】
【化31】
【0192】
アルゴン気流下、化合物20(902mg,1.27mmol)の無水ピリジン溶液(13mL)に塩化ベンゾイル(0.22mL,1.90mmol)を0℃で添加し、室温で3時間撹拌した。反応終了後、飽和重曹水を加え、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1(v/v))で精製し、化合物21(861mg,83%)を黄色泡状固体として得た。
【0193】
得られた化合物21の物性データを表21に示す。
【0194】
【表21】
【0195】
(5)化合物22の合成
【0196】
【化32】
【0197】
化合物21(701mg,0.86mmol)のテトラヒドロフラン溶液(8mL)にテトラブチルアンモニウムフルオリド(1Mテトラヒドロフラン溶液,2.58mL,2.58mmol)を0℃で添加し、室温で10分間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1(v/v))により精製し、化合物22(528mg,88%)を白色泡状固体として得た。
【0198】
得られた化合物22の物性データを表22に示す。
【0199】
【表22】
【0200】
(6)化合物23の合成
【0201】
【化33】
【0202】
アルゴン気流下、化合物22(528mg,0.75mmol)の無水アセトニトリル溶液(7mL)にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.39mL,2.26mmol)および2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロクロリダート(0.25mL,1.13mmol)を0℃で添加し、室温で2時間撹拌した。反応終了後、飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.5%トリエチルアミン含有ヘキサン:酢酸エチル=2:1(v/v)) で精製し、化合物23(529mg,78%:scpBNA−
mCアミダイトブロック)を白色泡状固体として得た。
【0203】
得られた化合物23の物性データを表23に示す。
【0204】
【表23】
【0205】
(実施例7:動物実験)
(1)動物実験用オリゴヌクレオチドの設計および合成
標的遺伝子としてmouse phosphatase and tensin homolog (Pten) mRNAを選択し(NCBI参照番号:NM_008960.2)、全8229塩基中の60塩基目から73塩基目に相補的なオリゴヌクレオチドを合成した。なお、配列は既報配列を使用した(Molecular Therapy-Nucleic Acids, 2012, 1, e47)。
【0206】
オリゴヌクレオチドの合成に関し、まず比較のために、表24に示すようなすべてのリンケージをホスホロチオエート化した2’,4’−BNA/LNA搭載オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド1)を作製した。一方、実施例1で得られたscpBNA−Tアミダイトブロック(化合物16)および実施例6で得られたscpBNA−
mCアミダイトブロック(化合物23)を用い、scpBNA搭載オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド2)を作製した。これらのオリゴヌクレオチドの作製は、株式会社ジーンデザインによる受諾合成を通じて行った。作製したオリゴヌクレオチドは、ナトリウムフォーム化されかつエンドトキシンフリーのin vivoグレードであった。
【0207】
(2)融解温度(T
m)の測定
上記で得られたオリゴヌクレオチド1および2の相補鎖RNA(5’-agcugcagccauga-3’(配列番号2))との結合親和性を以下のようにして評価した。
【0208】
リン酸緩衝液(10mM NaH
2PO
4-10mM Na
2HPO
4, 100mM NaCl, pH7.0)に、最終濃度が2μMとなるようにオリゴヌクレオチド1およびオリゴヌクレオチド2を別々に添加し、各オリゴヌクレオチド溶液を調製した。当該溶液を、4℃〜95℃の温度域で0.5℃/分ごとに昇温させ、260nmにおける吸光度をそれぞれモニターした。T
m値を中線法により算出し、独立した3回の測定における平均値とした。結果を、オリゴヌクレオチド1およびオリゴヌクレオチド2の質量分析結果とともに、表24に示す。
【0209】
【表24】
【0210】
表24に示すように、オリゴヌクレオチド1(2’,4’−BNA/LNA搭載オリゴヌクレオチド)と、オリゴヌクレオチド2(scpBNA搭載オリゴヌクレオチド)とのT
m値には大きな相違が見られず、これらのオリゴヌクレオチド1および2における結合親和性がほぼ同等であったことがわかる。
【0211】
(3)投与実験
被験動物として7週齢のマウスC57BL/6J(雄)(日本SLC社)を購入し、1週間馴化させた。その後、これらのマウスに対して、生理食塩水に溶解したオリゴヌクレオチド1(35mg/kg)、オリゴヌクレオチド2(35mg/kg)または生理食塩水を全用量200μLにて腹腔内投与した(投与群N=4)。72時間後、マウスをイソフルラン麻酔下にて解剖し、下大静脈より採血した後、PBSで心臓灌流を行った。その後、肝臓を摘出し、RNA later(登録商標)Stabilization Solution (Thermo Fisher Scientific, AM7021) 下で4℃保存した。
【0212】
次いで、上記にて保存した肝臓から切片を一部取り出し、QuickGene RNA tissue kit SII(和光純薬工業株式会社製RT-S2)のLRT(2−メルカプトエタノール含有)500μLを添加し、ステンレス球1粒を加え、ホモジナイズした(TAITEC社製μT−12, 回転速度: 2,000rpm, 3分間)。その後、室温で12,000rpmにて3分間遠心し、上清385μLを回収した。キットのSRT175μLを添加し、ボルテックスにて15秒間混合し、スピンダウンした。その後、特級エタノール140μLを添加し、ボルテックスにてさらに1分間混合し、スピンダウンした。こうして得られた全量を、RNA自動抽出器 (和光純薬工業株式会社製QuickGene-800) にセットし、total RNAを抽出した。
【0213】
次いで、total RNA2μgに対し逆転写反応を行った。High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (Thermo Fisher Scientific, 4368813) を用い、当該製品のプロトコルに従ってcDNAを作製した。
【0214】
その後、上記cDNAを30倍に希釈してcDNA溶液を調製し、標的遺伝子Ptenに対するreal-time PCRを行った。Ptenの発現量解析は、ハウスキーピング遺伝子Gapdhの発現量に対する相対発現量として評価した。この反応には、TaqMan(登録商標)Fast Universal PCR Master Mix(Thermo Fisher Scientific, 4352042)およびTaqMan probe(Thermo Fisher Scientific, Pten: Mm00477208_m1, Gapdh: Mm99999915_g1)を用い、当該製品のプロトコルに従って行った。
【0215】
さらに、上記マウスの下大静脈から採血した血液サンプルから血清を以下のようにして分離した。
【0216】
血液凝固促進剤および血清分離剤の入ったチューブ(BD,365967)に採血した血液サンプルを添加し、5,000rpmで、4℃下にて20分間遠心した。血清を回収し、以降の血液検査に使用した。
【0217】
当該血清について、肝毒性の指標GOT(AST)値およびGPT(ALT)値をトランスアミナーゼCII−テストワコー(和光純薬工業株式会社製431-30901)を用いて算出した。基質酵素液と発色試液とを等量で混合し、基質発色液とした。基質発色液100μLを96ウェルプレートに分注し、37℃で5分間加温した。その後、当該発色液に上記で得られた血清2μLを添加し、37℃で20分間加温し、反応停止液200μLを添加し、プレートリーダー(Molecular Device社製SpectraMax M5e)を用いて555nmにおける吸光度を測定した。得られた吸光度から当該製品に付属のプロトコルに従って検量線法によりAST/ALT値を算出した。
【0218】
得られた結果を
図3および
図4に示す。
【0219】
図3に示すように、肝臓内に発現するPten mRNAの発現量を定量した結果、オリゴヌクレオチド1および2のいずれを投与しても高いノックダウン効率(60%〜70%)を示し、scpBNA搭載オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド2)は、2’,4’−LNA/BNA搭載オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド1)と同等のアンチセンス活性を示すことがわかる。
【0220】
これに対し、
図4に示すように、2’,4’−LNA/BNA搭載オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド1)の投与群では、AST/ALT値は100/30Karmenを超えた値となり、毒性が認められた。scpBNA搭載オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド2)の投与群では、AST/ALT値がオリゴヌクレオチド1のものと比較して、その半分程度にまで値が減少し、肝毒性は認められなかった。
【0221】
(実施例8:in vitroアンチセンス活性評価)
(1)細胞へのアンチセンス核酸の導入および細胞破砕液の作製
マウス肝臓がん由来細胞株NMuLiを96ウェルプレートに2.5×10
3cells/wellの細胞数で播種し、24時間培養した。当該プレートに付属のプロトコルに従って、実施例7で得られたオリゴヌクレオチド1または2と、Lipofectamine 2000とをOpti−MEM中でコンプレックスを形成させ、各ウェルの10% FBS/DMEM(抗生物質を含有せず)100μLに、50μLのコンプレックスを添加した。24時間後、ウェルから培地を除去し、PBSで洗浄後、Lysis Solution 49.7μLとgDNA Remover0.3μLの混合液(SuperPrep
TM, 東洋紡製, SCQ-101)50μL/ウェルを添加し、軽く振盪した後、5分間室温にてインキュベートした。次いで、Stop Solution 9.5μLおよびRNase Inhibitor 0.5μLの混合液(SuperPrep
TM, 東洋紡製, SCQ-101)10μL/ウェルを添加し、軽く振盪した後2分間室温にてインキュベートして、細胞破砕液を得た。
【0222】
その後、8μLの5×RT Master Mixと、24μLのNuclease-free Waterの混合液(SuperPrep
TM, 東洋紡製, SCQ-101)32μLに対し、上記で調製した細胞破砕液8μLを添加した。37℃にて15分→50℃にて5分→98℃にて5分→4℃にて10分の順に温度をかけて逆転写反応を行い、cDNA溶液を作製した。次いで、得られたcDNA溶液を30倍に希釈し、標的遺伝子Ptenに対するreal-time PCRを行った。Ptenの発現量解析は、ハウスキーピング遺伝子Gapdhの発現量に対する相対発現量として評価した。反応には、TaqMan(登録商標)Fast Universal PCR Master Mix(Thermo Fisher Scientific, 4352042)および、TaqMan probe(Thermo Fisher Scientific, Pten: Mm00477208_m1, Gapdh: Mm99999915_g1) を用い、当該製品のプロトコルに従って反応を行った。
【0223】
また、濃度の対数に対してPten mRNAの相対残存量をプロットし、グラフソフトウエア(株式会社ヒューリンクス製Igor Pro)を用いてフィッティングを行い(Sigmoid mode)、IC
50を算出した。
【0224】
オリゴヌクレオチド1および2を、それぞれ0.25nMから200nMまでの濃度(各濃度についてN=4)で導入した結果を
図5に示す。さらに、上記より算出したIC
50の結果を表25に示す。
【0225】
【表25】
【0226】
図5および表25から明らかなように、IC
50の値は、オリゴヌクレオチド1に比べてオリゴヌクレオチド2が幾分高い値を示していたが、NMuLi細胞におけるPten mRNA発現レベルは、オリゴヌクレオチド1および2の間で実質的な差異が見出せなかったことがわかる。このことから、scpBNA搭載オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド2)は、in vitroにおいても2’,4’−LNA/BNA搭載オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド1)と同等のアンチセンス活性を示すことがわかる。
【0227】
これまで、高いアンチセンス活性を保持する2’,4’−LNA/BNA搭載オリゴヌクレオチドを投与した場合には、肝毒性も高い値を示すケースが多く報告されてきた。しかし、上記実施例7および8の結果によれば、scpBNA搭載オリゴヌクレオチドを投与すると、高いアンチセンス活性を維持しながら、肝毒性を発現しない結果が得られており、これにより、本発明のオリゴヌクレオチドが核酸医薬品化に向けた新たな架橋型人工核酸アナログの開発に有用であることがわかる。
【0228】
(実施例9:2’,4’−架橋型ヌクレオシドの合成(3):スピロシクロプロパンBNA−A(scpBNA−A)アミダイトブロックの合成)
【0229】
【化34】
【0230】
(1)化合物24の合成
【0231】
【化35】
【0232】
窒素気流下、実施例1で得られた化合物7(6.14g)の無水アセトニトリル(70mL)溶液に、N
6−ベンゾイルアデニン(2.58g,10.8mmol)およびN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(5.65mL,23.1mmol)を0℃で添加し、10分間撹拌した。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(2.78mL,15.4mmol)を0℃で滴下し、80℃にて22時間撹拌した。反応終了後、飽和重曹水を0℃で添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1(v/v))により精製して、化合物24(2.91g,50%(2工程))を白色泡状固体として得た。
【0233】
得られた化合物24の物性データを表26に示す。
【0234】
【表26】
【0235】
(2)化合物25の合成
【0236】
【化36】
【0237】
化合物24(2.20g,2.88mmol)のメタノール(40mL)溶液に、炭酸カリウム(795mg,5.75mmol)を添加し、0℃で20分間撹拌した。反応終了後、水を0℃で添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:2(v/v))により精製し、化合物25(2.05g,99%)を白色泡状固体として得た。
【0238】
得られた化合物25の物性データを表27に示す。
【0239】
【表27】
【0240】
(3)化合物26の合成
【0241】
【化37】
【0242】
化合物25(1.08g,1.50mmol)のジクロロメタン(15mL)溶液に、ジアセトキシヨードベンゼン(724mg,2.25mmol)および2−ヒドロキシ−2−アザアダマンタン(11.5mg,0.075mmol,5mol%)を添加し、室温で6時間撹拌した。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液および飽和重曹水(2:1(v/v))添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、化合物26(1.08g)を黄色泡状固体として得た。この化合物26を精製することなく、直ちに次の反応に使用した。
【0243】
(4)化合物27の合成
【0244】
【化38】
【0245】
化合物26(1.08g)のエタノール(15mL)溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(79.4mg,2.10mmol)を添加し、室温で20分間撹拌した。反応終了後、水を添加し、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水と水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1(v/v))により精製し、化合物27(773mg,70%,2工程,R:S=2.6:1)を黄色泡状固体として得た。得られた化合物27はジアステレオマーの分離が困難な混合物であったため、当該混合物のまま次の反応に使用した。
【0246】
(5)化合物28の合成
【0247】
【化39】
【0248】
窒素気流下、化合物27(773mg,1.07mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、4−ジメチルアミノピリジン(653mg,5.35mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.22mL,1.39mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。反応終了後、飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出し、飽和塩化アンモニウム水溶液、水、および飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、化合物28(869mg,R:S=2.6:1)を黄色泡状固体として得た。この化合物28を精製することなく、直ちに次の反応に使用した。
【0249】
(6)化合物29の合成
【0250】
【化40】
【0251】
化合物28(869mg)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液に、テトラブチルアンモニウムフルオリド(1Mテトラヒドロフラン溶液,3.21mL,3.21mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1(v/v))により精製し、化合物29(90mg,14%,2工程)を白色泡状固体として得た。
【0252】
得られた化合物29の物性データを表28に示す。
【0253】
【表28】
【0254】
(7)化合物30の合成
【0255】
【化41】
【0256】
化合物29(60mg,0.102mmol)のテトラヒドロフラン(1mL)溶液に、メチルアミン水溶液(40重量%,0.42mL,5.09mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=3:1(v/v))により精製し、化合物30(41mg,83%)を白色泡状固体として得た。
【0257】
得られた化合物30の物性データを表29に示す。
【0258】
【表29】
【0259】
(8)化合物31の合成
【0260】
【化42】
【0261】
化合物30(450mg,0.927mmol)のエタノール−酢酸(30.9mL,100:3(v/v))溶液に、20%水酸化パラジウム/炭素(パラジウム20%,198mg)およびギ酸アンモニウム(3.5g,55.6mmmol)を添加し、還流下で5時間加熱した。反応溶液を、ひだ折り濾紙でろ過した後、溶媒を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1(v/v))により精製し、化合物31(130mg,46%)を白色泡状固体として得た。
【0262】
得られた化合物31の物性データを表30に示す。
【0263】
【表30】
【0264】
(9)化合物32の合成
【0265】
【化43】
【0266】
窒素気流下、化合物31(81.0mg,0.265mmol)の無水ピリジン(2mL)溶液に、クロロトリメチルシラン(67.0μL,0.531mmol)を添加し、0℃で40分間撹拌した。次いで、塩化ベンゾイル(92.0μL,0.795mmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。さらに、アンモニア水溶液(28重量%,1.2mL,18.6mmol)を添加し、0℃で3時間撹拌した。反応溶液を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=30:1(v/v)→10:1(v/v))により精製し、化合物32(66mg,61%)を白色泡状固体として得た。
【0267】
得られた化合物32の物性データを表31に示す。
【0268】
【表31】
【0269】
(10)化合物33の合成
【0270】
【化44】
【0271】
窒素気流下、化合物32(16mg,39.0μmol)の無水ピリジン(0.5mL)溶液に、4,4’−ジメトキシクロリド(19.9mg,59.0μmol)を添加し、室温で15時間撹拌した。その後、4,4’−ジメトキシクロリド(23mg,67.9μmol)を添加し、室温で4時間撹拌した。さらに、4,4’−ジメトキシクロリド(223mg,0.18mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水と水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))により精製し、化合物33(20mg,72%)を白色泡状固体として得た。
【0272】
得られた化合物33の物性データを表32に示す。
【0273】
【表32】
【0274】
(11)化合物34の合成
【0275】
【化45】
【0276】
窒素気流下、化合物33(52mg,73.1μmol)の無水アセトニトリル(1mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(38μL,21.9μmol)および2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロクロリダート(24μL,11.0μmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。その後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(76μL,43.8μmol)、2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロクロリダート(24μL,11.0μmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。さらに、2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロクロリダート(24μL,11.0μmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水と水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.5%トリエチルアミン含有酢酸エチル:ヘキサン=2:1(v/v))により精製し、化合物34(45mg,67%:scpBNA−Aアミダイトブロック)を白色泡状固体として得た。
【0277】
得られた化合物34の物性データを表33に示す。
【0278】
【表33】
【0279】
(実施例10:2’,4’−架橋型ヌクレオシドの合成(4):スピロシクロプロパンBNA−G(scpBNA−G)アミダイトブロックの合成)
【0280】
【化46】
【0281】
(1)化合物35の合成
【0282】
【化47】
【0283】
窒素気流下、実施例1で得られた化合物7(77mg,0.132mmol)の無水アセトニトリル(1.5mL)溶液に、N
2−イソブチリルグアニン(41mg,0.184mmol)およびN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(97.0μL,0.395mmol)を80℃で添加し、20分間撹拌した。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(48.0μL,0.263mmol)を0℃で添加し、80℃で18時間撹拌した。反応終了後、飽和重曹水を0℃で添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン:メタノール=2:10:1(v/v/v)により精製し、化合物35(48mg,49%)を白色泡状固体として得た。
【0284】
得られた化合物35の物性データを表34に示す。
【0285】
【表34】
【0286】
(2)化合物36の合成
【0287】
【化48】
【0288】
化合物35(48mg,65.6mmol)のメタノール(1.5mL)溶液に、炭酸カリウム(27mg,0.197mmol)を添加し、0℃で1時間撹拌した。反応終了後、水を0℃で添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=2:1(v/v))により精製し、化合物36(44mg,95%)を白色泡状固体として得た。
【0289】
得られた化合物36の物性データを表35に示す。
【0290】
【表35】
【0291】
(3)化合物37の合成
【0292】
【化49】
【0293】
化合物36(6.5g,9.23mmol)のジクロロメタン(100mL)溶液に、ジアセトキシヨードベンゼン(4.46g,13.8mmol)および2−ヒドロキシ−2−アザアダマンタン(71mg,0.462mmol,5mol%)を添加し、室温で7時間撹拌した。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液および飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、化合物37(7.0g)を黄色泡状固体として得た。この化合物37を精製することなく、直ちに次の反応に使用した。
【0294】
(4)化合物38の合成
【0295】
【化50】
【0296】
化合物37(7.0g)のメタノール−ジクロロメタン(90mL,1:2(v/v))溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(489mg,12.9mmol)を添加し、0℃で1時間撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を添加し、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水と水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=30:1(v/v))により精製し、化合物38(5.2g,80%,2工程、R:S=2:1)を黄色泡状固体として得た。得られた化合物38はジアステレオマーの分離が困難な混合物であったため、当該混合物のまま次の反応に使用した。
【0297】
(5)化合物39の合成
【0298】
【化51】
【0299】
窒素気流下、化合物38(300mg,0.43mmol)の無水ジクロロメタン(5mL)溶液に、4−ジメチルアミノピリジン(156mg,1.28mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸無水物(90μL,0.55mmol)を添加し、0℃で1時間撹拌した。反応終了後、飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、化合物39(408mg)を黄色泡状固体として得た。この化合物39を精製することなく、直ちに次の反応に使用した。
【0300】
(6)化合物40の合成
【0301】
【化52】
【0302】
化合物39(408mg)のテトラヒドロフラン(4mL)溶液に、テトラブチルアンモニウムフルオリド(1Mテトラヒドロフラン溶液,1.28mL,1.28mmol)を添加し、室温で30分間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン:メタノール=2:7:1)により精製し、化合物40(9mg,4%(2工程))を白色泡状固体として得た。
【0303】
得られた化合物40の物性データを表36に示す。
【0304】
【表36】
【0305】
(7)化合物41の合成
【0306】
【化53】
【0307】
化合物40の酢酸エチル溶液に、20%水酸化パラジウム/炭素(パラジウム20%)を添加し、水素気流下で5時間撹拌する。反応溶液を、ひだ折り濾紙でろ過した後、溶媒を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール)により精製し、化合物41を適切な収率で得る。
【0308】
(8)化合物42の合成
【0309】
【化54】
【0310】
窒素気流下、化合物41の無水ピリジン溶液に、4,4’−ジメトキシクロリドを添加し、室温で19時間撹拌する。飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水と水とで洗浄する。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去する。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン)により精製し、化合物42を適切な収率で得る。
【0311】
(9)化合物43の合成
【0312】
【化55】
【0313】
窒素気流下、化合物42の無水アセトニトリル溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミンおよび2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロクロリダートを添加し、室温で2時間撹拌する。飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水と水とで洗浄する。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去する。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.5%トリエチルアミン含有酢酸エチル:ヘキサン)により精製し、化合物43(scpBNA−Gアミダイトブロック)を適切な収率で得る。