特許第6233903号(P6233903)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233903
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】架橋型ヌクレオシドおよびヌクレオチド
(51)【国際特許分類】
   C07H 19/067 20060101AFI20171113BHJP
   C07H 19/167 20060101ALI20171113BHJP
   C07H 21/02 20060101ALI20171113BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20171113BHJP
   A61K 31/7088 20060101ALN20171113BHJP
   A61K 48/00 20060101ALN20171113BHJP
【FI】
   C07H19/067CSP
   C07H19/167
   C07H21/02
   C12N15/00 AZNA
   !A61K31/7088
   !A61K48/00
【請求項の数】7
【全頁数】67
(21)【出願番号】特願2016-504111(P2016-504111)
(86)(22)【出願日】2015年2月17日
(86)【国際出願番号】JP2015054308
(87)【国際公開番号】WO2015125783
(87)【国際公開日】20150827
【審査請求日】2016年8月18日
(31)【優先権主張番号】特願2014-28210(P2014-28210)
(32)【優先日】2014年2月18日
(33)【優先権主張国】JP
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成24年度、独立行政法人科学技術振興機構、戦略的創造研究推進事業(CREST)「新機能創出を目指した分子技術の構築/画期的な新規核酸医薬の分子技術の創出/リン原子上のキラリティー制御に資する新規な架橋型人工核酸の設計、合成、機能評価」に係る委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】504176911
【氏名又は名称】国立大学法人大阪大学
(74)【代理人】
【識別番号】100163647
【弁理士】
【氏名又は名称】進藤 卓也
(74)【代理人】
【識別番号】100182084
【弁理士】
【氏名又は名称】中道 佳博
(72)【発明者】
【氏名】小比賀 聡
(72)【発明者】
【氏名】山口 卓男
(72)【発明者】
【氏名】堀場 昌彦
(72)【発明者】
【氏名】脇 玲子
【審査官】 早川 裕之
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/006478(WO,A1)
【文献】 国際公開第98/039352(WO,A1)
【文献】 国際公開第2003/068795(WO,A1)
【文献】 国際公開第2005/021570(WO,A1)
【文献】 創薬シーズとして期待される核酸医薬品〜その展望と課題〜2.糖部架橋型核酸の医薬への応用,医薬ジャーナル,2012年,48,65−69
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07H 19/067
C07H 19/167
C07H 21/02
C12N 15/09
A61K 31/7088
A61K 48/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式Iで表される化合物またはその塩:
【化1】
(式中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基または2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、核酸合成の水酸基の保護基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から10のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいアシル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいシリル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいリン酸基、核酸合成の保護基で保護されたリン酸基、−P(R)R[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から5のアルコキシ基、炭素数1から5のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基で置換されたアミノ基を表す]を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基で置換されていてもよく、かつ分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基;であるか、あるいは
およびRは一緒になって、−(CH−[式中、nは2から5の整数である]を表し、
該核酸合成の保護基は、
分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;
分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基;
ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、バレリル基、イソバレリル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、3−メチルノナノイル基、8−メチルノナノイル基、3−エチルオクタノイル基、3,7−ジメチルオクタノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、1−メチルペンタデカノイル基、14−メチルペンタデカノイル基、13,13−ジメチルテトラデカノイル基、ヘプタデカノイル基、15−メチルヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、1−メチルヘプタデカノイル基、ノナデカノイル基、アイコサノイル基、ヘナイコサノイル基、スクシノイル基、グルタロイル基、アジポイル基、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、メトキシアセチル基、(E)−2−メチル−2−ブテノイル基、ベンゾイル基、α−ナフトイル基、β−ナフトイル基、2−ブロモベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基、2,4,6−トリメチルベンゾイル基、4−トルオイル基、4−アニソイル基、2−カルボキシベンゾイル基、3−カルボキシベンゾイル基、4−カルボキシベンゾイル基、4−ニトロベンゾイル基、2−ニトロベンゾイル基、2−(メトキシカルボニル)ベンゾイル基、または4−フェニルベンゾイル基;
テトラヒドロピラン−2−イル基、3−ブロモテトラヒドロピラン−2−イル基、4−メトキシテトラヒドロピラン−4−イル基、テトラヒドロチオピラン−4−イル基、または4−メトキシテトラヒドロチオピラン−4−イル基;
テトラヒドロフラン−2−イル基またはテトラヒドロチオフラン−2−イル基;
トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、メチルジイソプロピルシリル基、メチルジ−t−ブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ブチルジフェニルブチルシリル基、ジフェニルイソプロピルシリル基、またはフェニルジイソプロピルシリル基;
メトキシメチル基、1,1−ジメチル−1−メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イシプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、またはt−ブトキシメチル基;
2−メトキシエトキシメチル基;
2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、またはビス(2−クロロエトキシ)メチル基;
1−エトキシエチル基、または1−(イソプロポキシ)エチル基;
2,2,2−トリクロロエチル基;
ベンジル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、α−ナフチルジフェニルメチル基、または9−アンスリルメチル基;
4−メチルベンジル基、2,4,6−トリメチルベンジル基、3,4,5−トリメチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−メトキシフェニルジフェニルメチル基、4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル基、2−ニトロベンジル基、4−ニトロベンジル基、4−クロロベンジル基、4−ブロモベンジル基、または4−シアノベンジル基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、またはイソブトキシカルボニル基;
4−クロロフェニル基、2−フロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ニトロフェニル基、または2,4−ジニトロフェニル基;
2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、または2−トリメチルシリルエトキシカルボニル基;
ビニルオキシカルボニル基、またはアリールオキシカルボニル基;あるいは
ベンジルオキシカルボニル基、4−メトキシベンジルオキシカルボニル基、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、2−ニトロベンジルオキシカルボニル基、または4−ニトロベンジルオキシカルボニル基;
であり、そして
該核酸合成の水酸基の保護基は、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、p−メトキシベンゾイル基、ジメトキシトリチル基、モノメトキシトリチル基またはtert−ブチルジフェニルシリル基である)。
【請求項2】
前記式Iにおいて、前記Baseが、6−アミノプリン−9−イル基、2,6−ジアミノプリン−9−イル基、2−アミノ−6−クロロプリン−9−イル基、2−アミノ−6−フルオロプリン−9−イル基、2−アミノ−6−ブロモプリン−9−イル基、2−アミノ−6−ヒドロキシプリン−9−イル基、6−アミノ−2−メトキシプリン−9−イル基、6−アミノ−2−クロロプリン−9−イル基、6−アミノ−2−フルオロプリン−9−イル基、2,6−ジメトキシプリン−9−イル基、2,6−ジクロロプリン−9−イル基、6−メルカプトプリン−9−イル基、2−オキソ−4−アミノ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、4−アミノ−2−オキソ−5−フルオロ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、4−アミノ−2−オキソ−5−クロロ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−メトキシ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−メルカプト−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−メチル−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、または4−アミノ−5−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基である、請求項1に記載の化合物またはその塩。
【請求項3】
前記式Iにおいて、前記Baseが、以下の式:
【化2】
で表される基である、請求項1または2に記載の化合物またはその塩。
【請求項4】
前記式Iにおいて、RおよびRがともに水素原子である、請求項1から3のいずれかに記載の化合物またはその塩。
【請求項5】
以下の式IIで表されるヌクレオシド構造を少なくとも1つ含有するオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩:
【化3】
(式中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基または2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基で置換されていてもよく、かつ分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基;であるか、あるいは
およびRは一緒になって、−(CH−[式中、nは2から5の整数である]を表し、そして
該核酸合成の保護基は、
分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;
分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基;
ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、バレリル基、イソバレリル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、3−メチルノナノイル基、8−メチルノナノイル基、3−エチルオクタノイル基、3,7−ジメチルオクタノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、1−メチルペンタデカノイル基、14−メチルペンタデカノイル基、13,13−ジメチルテトラデカノイル基、ヘプタデカノイル基、15−メチルヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、1−メチルヘプタデカノイル基、ノナデカノイル基、アイコサノイル基、ヘナイコサノイル基、スクシノイル基、グルタロイル基、アジポイル基、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、メトキシアセチル基、(E)−2−メチル−2−ブテノイル基、ベンゾイル基、α−ナフトイル基、β−ナフトイル基、2−ブロモベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基、2,4,6−トリメチルベンゾイル基、4−トルオイル基、4−アニソイル基、2−カルボキシベンゾイル基、3−カルボキシベンゾイル基、4−カルボキシベンゾイル基、4−ニトロベンゾイル基、2−ニトロベンゾイル基、2−(メトキシカルボニル)ベンゾイル基、または4−フェニルベンゾイル基;
テトラヒドロピラン−2−イル基、3−ブロモテトラヒドロピラン−2−イル基、4−メトキシテトラヒドロピラン−4−イル基、テトラヒドロチオピラン−4−イル基、または4−メトキシテトラヒドロチオピラン−4−イル基;
テトラヒドロフラン−2−イル基またはテトラヒドロチオフラン−2−イル基;
トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、メチルジイソプロピルシリル基、メチルジ−t−ブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ブチルジフェニルブチルシリル基、ジフェニルイソプロピルシリル基、またはフェニルジイソプロピルシリル基;
メトキシメチル基、1,1−ジメチル−1−メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イシプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、またはt−ブトキシメチル基;
2−メトキシエトキシメチル基;
2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、またはビス(2−クロロエトキシ)メチル基;
1−エトキシエチル基、または1−(イソプロポキシ)エチル基;
2,2,2−トリクロロエチル基;
ベンジル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、α−ナフチルジフェニルメチル基、または9−アンスリルメチル基;
4−メチルベンジル基、2,4,6−トリメチルベンジル基、3,4,5−トリメチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−メトキシフェニルジフェニルメチル基、4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル基、2−ニトロベンジル基、4−ニトロベンジル基、4−クロロベンジル基、4−ブロモベンジル基、または4−シアノベンジル基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、またはイソブトキシカルボニル基;
4−クロロフェニル基、2−フロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ニトロフェニル基、または2,4−ジニトロフェニル基;
2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、または2−トリメチルシリルエトキシカルボニル基;
ビニルオキシカルボニル基、またはアリールオキシカルボニル基;あるいは
ベンジルオキシカルボニル基、4−メトキシベンジルオキシカルボニル基、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、2−ニトロベンジルオキシカルボニル基、または4−ニトロベンジルオキシカルボニル基;
ある)。
【請求項6】
前記式IIにおいて、RおよびRがともに水素原子である、請求項5に記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩。
【請求項7】
請求項5に記載のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩の製造方法であって、
以下の式Iで表される化合物またはその薬理学上許容される塩:
【化4】
(式中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基または2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、核酸合成の水酸基の保護基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から10のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいアシル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいシリル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいリン酸基、核酸合成の保護基で保護されたリン酸基、−P(R)R[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から5のアルコキシ基、炭素数1から5のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基で置換されたアミノ基を表す]を表し;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基で置換されていてもよく、かつ分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基;であるか、あるいは
およびRは一緒になって、−(CH−[式中、nは2から5の整数である]を表し、
該核酸合成の保護基は、
分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;
分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基;
ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、バレリル基、イソバレリル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、3−メチルノナノイル基、8−メチルノナノイル基、3−エチルオクタノイル基、3,7−ジメチルオクタノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、1−メチルペンタデカノイル基、14−メチルペンタデカノイル基、13,13−ジメチルテトラデカノイル基、ヘプタデカノイル基、15−メチルヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、1−メチルヘプタデカノイル基、ノナデカノイル基、アイコサノイル基、ヘナイコサノイル基、スクシノイル基、グルタロイル基、アジポイル基、クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基、メトキシアセチル基、(E)−2−メチル−2−ブテノイル基、ベンゾイル基、α−ナフトイル基、β−ナフトイル基、2−ブロモベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基、2,4,6−トリメチルベンゾイル基、4−トルオイル基、4−アニソイル基、2−カルボキシベンゾイル基、3−カルボキシベンゾイル基、4−カルボキシベンゾイル基、4−ニトロベンゾイル基、2−ニトロベンゾイル基、2−(メトキシカルボニル)ベンゾイル基、または4−フェニルベンゾイル基;
テトラヒドロピラン−2−イル基、3−ブロモテトラヒドロピラン−2−イル基、4−メトキシテトラヒドロピラン−4−イル基、テトラヒドロチオピラン−4−イル基、または4−メトキシテトラヒドロチオピラン−4−イル基;
テトラヒドロフラン−2−イル基またはテトラヒドロチオフラン−2−イル基;
トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、メチルジイソプロピルシリル基、メチルジ−t−ブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ブチルジフェニルブチルシリル基、ジフェニルイソプロピルシリル基、またはフェニルジイソプロピルシリル基;
メトキシメチル基、1,1−ジメチル−1−メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イシプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、またはt−ブトキシメチル基;
2−メトキシエトキシメチル基;
2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、またはビス(2−クロロエトキシ)メチル基;
1−エトキシエチル基、または1−(イソプロポキシ)エチル基;
2,2,2−トリクロロエチル基;
ベンジル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、α−ナフチルジフェニルメチル基、または9−アンスリルメチル基;
4−メチルベンジル基、2,4,6−トリメチルベンジル基、3,4,5−トリメチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−メトキシフェニルジフェニルメチル基、4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル基、2−ニトロベンジル基、4−ニトロベンジル基、4−クロロベンジル基、4−ブロモベンジル基、または4−シアノベンジル基;
メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、またはイソブトキシカルボニル基;
4−クロロフェニル基、2−フロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ニトロフェニル基、または2,4−ジニトロフェニル基;
2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、または2−トリメチルシリルエトキシカルボニル基;
ビニルオキシカルボニル基、またはアリールオキシカルボニル基;あるいは
ベンジルオキシカルボニル基、4−メトキシベンジルオキシカルボニル基、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、2−ニトロベンジルオキシカルボニル基、または4−ニトロベンジルオキシカルボニル基;
であり、そして
該核酸合成の水酸基の保護基は、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、p−メトキシベンゾイル基、ジメトキシトリチル基、モノメトキシトリチル基またはtert−ブチルジフェニルシリル基である)
を用いてオリゴヌクレオチドを合成する工程を包含する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋型ヌクレオシドおよびヌクレオチドに関する。より詳細には、一本鎖RNAに対する高い結合親和性およびヌクレアーゼに対する高い耐性を有する架橋型ヌクレオシドおよびヌクレオチドに関する。
【背景技術】
【0002】
核酸医薬による疾病の治療法として、アンチセンス法、アンチジーン法、アプタマー、siRNAなどがある。このうち、アンチセンス法は、疾病に関わるmRNAと相補的なオリゴヌクレオチド(アンチセンス鎖)を外部から導入し、二重鎖を形成させることにより、病原RNAの翻訳過程を阻害し、疾病の治療や予防を行う手法である。siRNAもこれに類似しており、生体に投与した二重鎖RNAによりmRNAからタンパク質への翻訳を阻害する。一方、アンチジーン法は、病原RNAを転写するDNA部位に対応する三重鎖形成オリゴヌクレオチドを外部から導入することによりDNAからRNAへの転写を抑制する。また、アプタマーは、短い核酸分子(オリゴヌクレオチド)であるため、疾病の原因となるタンパク質などの生体成分と結合することにより機能を発揮する。
【0003】
こうした核酸医薬の素材として、種々の人工核酸が開発されているが、未だ切札となるべき分子が存在しない。例えば、これまでに開発されてきた核酸医薬の素材として、S−オリゴ(ホスホロチオエート)、2’,4’−BNA(bridged nucleic acid)/LNA(locked nucleic acid)(特許文献1〜3および非特許文献1〜4参照)などがある。S−オリゴは、サイトメガロウイルスに対するアンチセンス医薬品として、既に米国で上市されている。これは、高いヌクレアーゼ耐性を有するものの、標的核酸鎖への結合親和性が低いという難点を有しており、改善が必要である。これまでに開発されている2’,4’−BNA/LNAは、いずれも標的核酸鎖への結合親和性が高く、これからの核酸医薬の素材として最も期待される分子である。しかし、ヌクレアーゼへの耐性が十分ではなく、生体内での安定性という点で改良の余地を残している。
【0004】
さらに、近年では、以下の式aおよび式bに示すようなヌクレオシド構造を有するオリゴヌクレオチド:
【0005】
【化1】
【0006】
についても当該素材に応用することが提案されている(特許文献4)。
【0007】
しかし、上記式aおよび式bに示すような構造のベースとなるヌクレオシド自体の製造には、非常に煩雑な工程を要する。このため、このようなオリゴヌクレオチドと同等またはそれ以上の性能を有し、かつ工業的な生産効率が一層優れたオリゴヌクレオチドの開発が所望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】国際公開第98/39352号
【特許文献2】国際公開第2005/021570号
【特許文献3】国際公開第2003/068795号
【特許文献4】国際公開第2009/006478号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】C.Wahlestedtら、Proc. Natl. Acad. Sci. USA,2000年,97巻,10号,5633-5638頁
【非特許文献2】Y.Hariら、Bioorg. Med. Chem.,2006年,14巻,1029-1038頁
【非特許文献3】K.Miyashitaら、Chem. Commun.,2007年,3765-3767頁
【非特許文献4】S.M.A.Rahmanら、J. Am. Chem. Soc.,2008年,130巻,14号,4886-4896頁
【非特許文献5】M.Kuwaharaら、Nucleic Acids Res.,2008年,36巻,13号,4257-4265頁
【非特許文献6】S.Obikaら、Bioorg. Med. Chem.,2001年,9巻,1001-1011頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題を解決するものであり、その目的とするところは、生体内でヌクレアーゼによる分解を受けにくく、標的のmRNAに対する高い結合親和性および特異性を有し、特定の遺伝子の発現を効率よく制御することのできるアンチセンス法や核酸医薬用の新規な分子であって、生産性に優れた当該分子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、以下の式Iで表される化合物またはその塩:
【0012】
【化2】
【0013】
(式中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基または2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、核酸合成の水酸基の保護基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から10のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいアシル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいシリル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいリン酸基、核酸合成の保護基で保護されたリン酸基、−P(R)R[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から5のアルコキシ基、炭素数1から5のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基で置換されたアミノ基を表す]を表し;そして
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基で置換されていてもよく、かつ分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基;であるか、あるいは
およびRは一緒になって、−(CH−[式中、nは2から5の整数である]を表す)である。
【0014】
1つの実施形態では、上記式Iにおいて、上記Baseは、6−アミノプリン−9−イル基、2,6−ジアミノプリン−9−イル基、2−アミノ−6−クロロプリン−9−イル基、2−アミノ−6−フルオロプリン−9−イル基、2−アミノ−6−ブロモプリン−9−イル基、2−アミノ−6−ヒドロキシプリン−9−イル基、6−アミノ−2−メトキシプリン−9−イル基、6−アミノ−2−クロロプリン−9−イル基、6−アミノ−2−フルオロプリン−9−イル基、2,6−ジメトキシプリン−9−イル基、2,6−ジクロロプリン−9−イル基、6−メルカプトプリン−9−イル基、2−オキソ−4−アミノ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、4−アミノ−2−オキソ−5−フルオロ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、4−アミノ−2−オキソ−5−クロロ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−メトキシ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−メルカプト−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−メチル−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、または4−アミノ−5−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基である。
【0015】
1つの実施形態では、上記式Iにおいて、上記Baseは、2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−メチル−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基である。
【0016】
1つ実施形態では、上記式Iにおいて、RおよびRはともに水素原子である。
【0017】
本発明はまた、以下の式IIで表されるヌクレオシド構造を少なくとも1つ含有するオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩:
【0018】
【化3】
【0019】
(式中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基または2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり、そして
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基で置換されていてもよく、かつ分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基;であるか、あるいは
およびRは一緒になって、−(CH−[式中、nは2から5の整数である]を表す)である。
【0020】
1つの実施形態では、上記式IIにおいて、RおよびRはともに水素原子である。
【0021】
本発明はまた、上記オリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩の製造方法であって、
以下の式Iで表される化合物またはその薬理学上許容される塩:
【0022】
【化4】
【0023】
(式中、
Baseは、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基または2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、核酸合成の水酸基の保護基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から10のアリール基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいアシル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいシリル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいリン酸基、核酸合成の保護基で保護されたリン酸基、−P(R)R[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から5のアルコキシ基、炭素数1から5のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基で置換されたアミノ基を表す]を表し;そして
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基で置換されていてもよく、かつ分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基;であるか、あるいは
およびRは一緒になって、−(CH−[式中、nは2から5の整数である]を表す)
を用いてオリゴヌクレオチドを合成する工程を包含する、方法である。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、新規な2’,4’−架橋型ヌクレオシドおよびヌクレオチドが提供される。この2’,4’−架橋型人工ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドは、公知の2’,4’−BNA/LNAに匹敵する一本鎖RNAに対する結合親和性と、LNAを上回るヌクレアーゼ耐性とを有する。特に、一本鎖RNAに対して、S−オリゴよりも非常に強い結合親和性を有するため、核酸医薬への応用が期待される。本発明の2’,4’−架橋型ヌクレオシドおよびヌクレオチドはまた、従来と比較して、より簡便な反応プロセスを通じて製造することができるため、工業的な生産効率を一層高めることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】5’−d(GCGTTXTTTGCT)−3’の配列の各種オリゴヌクレオチドについて、一本鎖オリゴRNA標的鎖に対して形成した二重鎖ハイブリッドが解離するT曲線を示すグラフである。
図2】5’−d(TTTTTTTTXT)−3’の配列の各種オリゴヌクレオチドを3’−エキソヌクレアーゼで処理した場合の、未反応のオリゴヌクレオチドの割合の経時変化を示すグラフである。
図3】実施例7で行ったマウスへのオリゴヌクレオチドのin vivo投与における標的mRNAのノックダウン効率の結果を示すグラフである。
図4】実施例7で行ったマウスへのオリゴヌクレオチドのin vivo投与における肝毒性の結果を示すグラフである。
図5】実施例8で行った種々の濃度のオリゴヌクレオチドを用いたNMuLi細胞における相対Pten mRNA発現レベルの結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
まず、本明細書中で用いられる用語を定義する。
【0027】
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキル基」は、炭素数1〜6の任意の直鎖アルキル基をいい、具体的にはメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、またはn−ヘキシル基をいう。
【0028】
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルコキシ基」は、炭素数1〜6の任意の直鎖アルキル基を有するアルコキシ基を包含する。例えば、メチルオキシ基、エチルオキシ基、n−プロピルオキシ基などが挙げられる。
【0029】
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基」は、炭素数1〜6の任意の直鎖アルキル基を有するアルキルチオ基を包含する。例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、n−プロピルチオ基などが挙げられる。
【0030】
本明細書において、用語「炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基」は、炭素数1〜6の任意の直鎖アルキル基を有するアルキルアミノ基を1つまたは2つ有するアルキルアミノ基を包含する。例えば、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、エチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、ジエチルアミノ基などが挙げられる。
【0031】
本明細書において、用語「分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基」は、炭素数1〜7の任意の直鎖アルキル基、炭素数3〜7の任意の分岐鎖アルキル基、および炭素数3〜7の任意の環状アルキル基を包含する。単に、「低級アルキル基」という場合もある。例えば、炭素数1〜7の任意の直鎖アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、およびn−ヘプチル基が挙げられ、炭素数3〜7の任意の分岐鎖アルキル基としては、イソプロピル基、イソブチル基、tert−ブチル基、イソペンチル基などが挙げられ、そして炭素数3〜7の任意の環状アルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基などが挙げられる。
【0032】
本明細書において、用語「分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基」は、炭素数2〜7の任意の直鎖アルケニル基、炭素数3〜7の任意の分岐鎖アルケニル基、および炭素数3〜7の任意の環状アルケニル基を包含する。単に、「低級アルケニル基」という場合もある。例えば、炭素数2〜7の任意の直鎖アルケニル基としては、エテニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、3−ペンテニル基、4−ペンテニル基、1−ヘキセニル基などが挙げられ、炭素数3〜7の任意の分岐鎖アルケニル基としては、イソプロペニル基、1−メチル−1−プロペニル基、1−メチル−2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−メチル−2−ブテニル基などが挙げられ、そして炭素数3〜7の任意の環状アルケニル基としては、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基などが挙げられる。
【0033】
本明細書において、用語「ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から10のアリール基」は、炭化水素のみで構成された、炭素数6〜10の任意のアリール基と、当アリール基の環構造を構成する少なくとも1つの炭素原子がヘテロ原子(例えば、窒素原子、酸素原子、および硫黄原子、ならびにこれらの組合せ)で置換された、炭素数3〜12の任意のヘテロアリール基とを包含する。当該炭素数6〜10のアリール基としては、フェニル基、ナフチル基、インデニル基、アズレニル基などが挙げられ、そして当該炭素数3〜12の任意のヘテロアリール基としては、ピリジル基、ピロリル基、キノリル基、インドリル基、イミダゾリル基、フリル基、チエニル基などが挙げられる。
【0034】
本明細書において、用語「ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基」の例としては、ベンジル基、フェネチル基、ナフチルメチル基、3−フェニルプロピル基、2−フェニルプロピル基、4−フェニルブチル基、2−フェニルブチル基、ピリジルメチル基、インドリルメチル基、フリルメチル基、チエニルメチル基、ピロリルメチル基、2−ピリジルエチル基、1−ピリジルエチル基、3−チエニルプロピル基などが挙げられる。
【0035】
本明細書において、用語「アシル基」の例としては、脂肪族アシル基および芳香族アシル基が挙げられる。具体的には、脂肪族アシル基の例としては、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、バレリル基、イソバレリル基、オクタノイル基、ノナノイル基、デカノイル基、3−メチルノナノイル基、8−メチルノナノイル基、3−エチルオクタノイル基、3,7−ジメチルオクタノイル基、ウンデカノイル基、ドデカノイル基、トリデカノイル基、テトラデカノイル基、ペンタデカノイル基、ヘキサデカノイル基、1−メチルペンタデカノイル基、14−メチルペンタデカノイル基、13,13−ジメチルテトラデカノイル基、ヘプタデカノイル基、15−メチルヘキサデカノイル基、オクタデカノイル基、1−メチルヘプタデカノイル基、ノナデカノイル基、アイコサノイル基およびヘナイコサノイル基のようなアルキルカルボニル基;スクシノイル基、グルタロイル基、アジポイル基のようなカルボキシ化アルキルカルボニル基;クロロアセチル基、ジクロロアセチル基、トリクロロアセチル基、トリフルオロアセチル基のようなハロゲノ低級アルキルカルボニル基;メトキシアセチル基のような低級アルコキシ低級アルキルカルボニル基;(E)−2−メチル−2−ブテノイル基のような不飽和アルキルカルボニル基が挙げられる。また、芳香族アシル基の例としては、ベンゾイル基、α−ナフトイル基、β−ナフトイル基のようなアリールカルボニル基;2−ブロモベンゾイル基、4−クロロベンゾイル基のようなハロゲノアリールカルボニル基;2,4,6−トリメチルベンゾイル基、4−トルオイル基のような低級アルキル化アリールカルボニル基;4−アニソイル基のような低級アルコキシ化アリールカルボニル基;2−カルボキシベンゾイル基、3−カルボキシベンゾイル基、4−カルボキシベンゾイル基のようなカルボキシ化アリールカルボニル基;4−ニトロベンゾイル基、2−ニトロベンゾイル基のようなニトロ化アリールカルボニル基;2−(メトキシカルボニル)ベンゾイル基のような低級アルコキシカルボニル化アリールカルボニル基;4−フェニルベンゾイル基のようなアリール化アリールカルボニル基などが挙げられる。好適には、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基、ブチリル基、イソブチリル基、ペンタノイル基、ピバロイル基、ベンゾイル基である。
【0036】
本明細書において、用語「シリル基」の例としては、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、イソプロピルジメチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、メチルジイソプロピルシリル基、メチルジ−t−ブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基のようなトリ低級アルキルシリル基;ジフェニルメチルシリル基、ブチルジフェニルブチルシリル基、ジフェニルイソプロピルシリル基、フェニルジイソプロピルシリル基のような1〜2個のアリール基で置換されたトリ低級アルキルシリル基などが挙げられる。好適には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリイソプロピルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ブチルジフェニルシリル基であり、さらに好適にはトリメチルシリル基である。
【0037】
本明細書において、用語「ハロゲン原子」としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、またはヨウ素原子が挙げられる。好適には、フッ素原子または塩素原子である。
【0038】
本明細書において、用語「核酸合成のアミノ基の保護基」、「核酸合成の水酸基の保護基」、「核酸合成の保護基で保護された水酸基」、「核酸合成の保護基で保護されたリン酸基」、「核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基」の「保護基」とは、核酸合成の際に安定してアミノ基、水酸基、リン酸基またはメルカプト基を保護し得るものであれば、特に制限されない。具体的には、酸性または中性条件で安定であり、加水素分解、加水分解、電気分解、および光分解のような化学的方法により開裂し得る保護基のことをいう。このような保護基としては、例えば、低級アルキル基、低級アルケニル基、アシル基、テトラヒドロピラニルまたはテトラヒドロチオピラニル基、テトラヒドロフラニルまたはテトラヒドロチオフラニル基、シリル基、低級アルコキシメチル基、低級アルコキシ化低級アルコキシメチル基、ハロゲノ低級アルコキシメチル基、低級アルコキシ化エチル基、ハロゲン化エチル基、1〜3個のアリール基で置換されたメチル基、「低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子またはシアノ基でアリール環が置換された1〜3個のアリール基で置換されたメチル基」、低級アルコキシカルボニル基、「ハロゲン原子、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されたアリール基」、「ハロゲン原子またはトリ低級アルキルシリル基で置換された低級アルコキシカルボニル基」、アルケニルオキシカルボニル基、「低級アルコキシまたはニトロ基でアリール環が置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基」などが挙げられる。
【0039】
より具体的には、テトラヒドロピラニル基またはテトラヒドロチオピラニル基としては、テトラヒドロピラン−2−イル基、3−ブロモテトラヒドロピラン−2−イル基、4−メトキシテトラヒドロピラン−4−イル基、テトラヒドロチオピラン−4−イル基、4−メトキシテトラヒドロチオピラン−4−イル基などが挙げられる。テトラヒドロフラニル基またはテトラヒドロチオフラニル基としては、テトラヒドロフラン−2−イル基、テトラヒドロチオフラン−2−イル基が挙げられる。低級アルコキシメチル基としては、メトキシメチル基、1,1−ジメチル−1−メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、イソプロポキシメチル基、ブトキシメチル基、t−ブトキシメチル基などが挙げられる。低級アルコキシ化低級アルコキシメチル基としては、2−メトキシエトキシメチル基などが挙げられる。ハロゲノ低級アルコキシメチル基としては、2,2,2−トリクロロエトキシメチル基、ビス(2−クロロエトキシ)メチル基などが挙げられる。低級アルコキシ化エチル基としては、1−エトキシエチル基、1−(イソプロポキシ)エチル基などが挙げられる。ハロゲン化エチル基としては、2,2,2−トリクロロエチル基などが挙げられる。1〜3個のアリール基で置換されたメチル基としては、ベンジル基、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、ジフェニルメチル基、トリフェニルメチル基、α−ナフチルジフェニルメチル基、9−アンスリルメチル基などが挙げられる。「低級アルキル基、低級アルコキシ基、ハロゲン原子またはシアノ基でアリール環が置換された1〜3個のアリール基で置換されたメチル基」としては、4−メチルベンジル基、2,4,6−トリメチルベンジル基、3,4,5−トリメチルベンジル基、4−メトキシベンジル基、4−メトキシフェニルジフェニルメチル基、4,4’−ジメトキシトリフェニルメチル基、2−ニトロベンジル基、4−ニトロベンジル基、4−クロロベンジル基、4−ブロモベンジル基、4−シアノベンジル基などが挙げられる。低級アルコキシカルボニル基としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、t−ブトキシカルボニル基、イソブトキシカルボニル基などが挙げられる。「ハロゲン原子、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されたアリール基」としては、4−クロロフェニル基、2−フロロフェニル基、4−メトキシフェニル基、4−ニトロフェニル基、2,4−ジニトロフェニル基などが挙げられる。「ハロゲン原子またはトリ低級アルキルシリル基で置換された低級アルコキシカルボニル基」としては、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル基、2−トリメチルシリルエトキシカルボニル基などが挙げられる。アルケニルオキシカルボニル基としては、ビニルオキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基などが挙げられる。「低級アルコキシまたはニトロ基でアリール環が置換されていてもよいアラルキルオキシカルボニル基」としては、ベンジルオキシカルボニル基、4−メトキシベンジルオキシカルボニル基、3,4−ジメトキシベンジルオキシカルボニル基、2−ニトロベンジルオキシカルボニル基、4−ニトロベンジルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0040】
「核酸合成の水酸基の保護基」としては、好適には、脂肪族アシル基、芳香族アシル基、1〜3個のアリール基で置換されたメチル基、「低級アルキル、低級アルコキシ、ハロゲン、シアノ基でアリール環が置換された1〜3個のアリール基で置換されたメチル基」、またはシリル基であり、さらに好適には、アセチル基、ベンゾイル基、ベンジル基、p−メトキシベンゾイル基、ジメトキシトリチル基、モノメトキシトリチル基またはtert−ブチルジフェニルシリル基である。「核酸合成の保護基で保護された水酸基」の保護基としては、好適には、脂肪族アシル基、芳香族アシル基、「1〜3個のアリール基で置換されたメチル基」、「ハロゲン原子、低級アルコキシ基またはニトロ基で置換されたアリール基」、低級アルキル基、または低級アルケニル基であり、さらに好適には、ベンゾイル基、ベンジル基、2−クロロフェニル基、4−クロロフェニル基または2−プロペニル基である。「核酸合成のアミノ基の保護基」としては、好適には、アシル基であり、さらに好適には、ベンゾイル基である。「核酸合成の保護基で保護されたリン酸基」の「保護基」としては、好適には、低級アルキル基、シアノ基で置換された低級アルキル基、アラルキル基、「ニトロ基またはハロゲン原子でアリール環が置換されたアラルキル基」または「低級アルキル基、ハロゲン原子、またはニトロ基で置換されたアリール基」であり、さらに好適には、2−シアノエチル基、2,2,2−トリクロロエチル基、ベンジル基、2−クロロフェニル基または4−クロロフェニル基である。「核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基」の「保護基」としては、好適には、脂肪族アシル基または芳香族アシル基であり、さらに好適には、ベンゾイル基である。
【0041】
本明細書において、−P(R)R[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から5のアルコキシ基、炭素数1から5のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基で置換されたアミノ基を表す]で表される基のうち、RがOR4aそしてRがNR5aとして表すことができる基は、「ホスホロアミダイト基」という。ホスホロアミダイト基としては、好適には、式−P(OCCN)(N(iPr))で表される基、または式−P(OCH)(N(iPr))で表される基が挙げられる。ここで、iPrはイソプロピル基を表す。
【0042】
本明細書において、用語「ヌクレオシド」および「ヌクレオシド類縁体」とは、プリンまたはピリミジン塩基と糖とが結合した「ヌクレオシド」のうち非天然型のもの、ならびに、プリンおよびピリミジン以外の芳香族複素環および芳香族炭化水素環でプリンまたはピリミジン塩基との代用が可能なものと糖が結合したものをいう。
【0043】
本明細書において、用語「人工オリゴヌクレオチド」および「オリゴヌクレオチド類縁体」とは、同一または異なる「ヌクレオシド」または「ヌクレオシド類縁体」がリン酸ジエステル結合で2〜50個結合した「オリゴヌクレオチド」の非天然型誘導体をいう。そのような類縁体としては、好適には、糖部分が修飾された糖誘導体;リン酸ジエステル部分がチオエート化されたチオエート誘導体;末端のリン酸部分がエステル化されたエステル体;プリン塩基上のアミノ基がアミド化されたアミド体が挙げられ、さらに好適には、糖部分が修飾された糖誘導体が挙げられる。
【0044】
本明細書において、用語「その塩」とは、本発明の式IまたはIIで表される化合物の塩をいう。そのような塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩などの金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N−ベンジル−フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機塩等のアミン塩;フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン原子化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;および、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩を挙げることができる。
【0045】
本明細書において、用語「その薬理学上許容される塩」としては、本発明の式IIで表されるヌクレオシド構造を少なくとも1つ含有するオリゴヌクレオチド類縁体の塩をいう。そのような塩としては、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩、リチウム塩のようなアルカリ金属塩、カルシウム塩、マグネシウム塩のようなアルカリ土類金属塩、アルミニウム塩、鉄塩、亜鉛塩、銅塩、ニッケル塩、コバルト塩などの金属塩;アンモニウム塩のような無機塩、t−オクチルアミン塩、ジベンジルアミン塩、モルホリン塩、グルコサミン塩、フェニルグリシンアルキルエステル塩、エチレンジアミン塩、N−メチルグルカミン塩、グアニジン塩、ジエチルアミン塩、トリエチルアミン塩、ジシクロヘキシルアミン塩、N,N’−ジベンジルエチレンジアミン塩、クロロプロカイン塩、プロカイン塩、ジエタノールアミン塩、N−ベンジル−フェネチルアミン塩、ピペラジン塩、テトラメチルアンモニウム塩、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン塩のような有機塩等のアミン塩;フッ化水素酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩のようなハロゲン原子化水素酸塩、硝酸塩、過塩素酸塩、硫酸塩、リン酸塩等の無機酸塩;メタンスルホン酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩のような低級アルカンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩のようなアリールスルホン酸塩、酢酸塩、リンゴ酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、クエン酸塩、酒石酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩等の有機酸塩;および、グリシン塩、リジン塩、アルギニン塩、オルニチン塩、グルタミン酸塩、アスパラギン酸塩のようなアミノ酸塩を挙げることができる。
【0046】
以下、本発明について詳述する。
【0047】
本発明の2’,4’−架橋型ヌクレオシドおよびヌクレオチドまたはその塩(好ましくは薬理学上許容される塩)(以下、特に明記しない限り、用語「2’,4’−架橋型ヌクレオシド」は、2’,4’−架橋型ヌクレオシドそれ自体、2’,4’−架橋型ヌクレオシドの塩、2’,4’−架橋型ヌクレオシドの薬理学上許容される塩を包含して言う)は、以下の式I:
【0048】
【化5】
【0049】
(式中、
「Base」は、α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいプリン−9−イル基または2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基を表し、ここで、該α群は、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、核酸合成の保護基で保護されたアミノ基、およびハロゲン原子からなり;
およびRは、それぞれ独立して、水素原子、核酸合成の水酸基の保護基、分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基、分岐または環を形成していてもよい炭素数2から7のアルケニル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から10のアリール基(好ましくは、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から9のアリール基)、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよくそしてヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいアシル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいシリル基、該α群から選択される任意の置換基を1以上有していてもよいリン酸基、核酸合成の保護基で保護されたリン酸基、−P(R)R[式中、RおよびRは、それぞれ独立して、水酸基、核酸合成の保護基で保護された水酸基、メルカプト基、核酸合成の保護基で保護されたメルカプト基、アミノ基、炭素数1から5のアルコキシ基、炭素数1から5のアルキルチオ基、炭素数1から6のシアノアルコキシ基、または炭素数1から6のアルキル基で置換されたアミノ基を表す]を表し;そして
およびRは、それぞれ独立して、水素原子;ヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール基で置換されていてもよく、かつ分岐または環を形成していてもよい炭素数1から7のアルキル基;またはヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数3から12のアリール部分を有するアラルキル基;であるか、あるいは
およびRは一緒になって、−(CH−[式中、nは2から5の整数である]を表す)で表される構造を有する。
【0050】
上記式Iにおいて、「Base」は、プリン塩基(すなわち、プリン−9−イル基)またはピリミジン塩基(すなわち、2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基)である。これらの塩基は、水酸基、炭素数1から6の直鎖アルキル基、炭素数1から6の直鎖アルコキシ基、メルカプト基、炭素数1から6の直鎖アルキルチオ基、アミノ基、炭素数1から6の直鎖アルキルアミノ基、およびハロゲン原子からなるα群より選択される任意の置換基を1以上有していてもよい。
【0051】
上記「Base」の具体例としては、6−アミノプリン−9−イル基(アデニニル基)、2,6−ジアミノプリン−9−イル基、2−アミノ−6−クロロプリン−9−イル基、2−アミノ−6−フルオロプリン−9−イル基、2−アミノ−6−ブロモプリン−9−イル基、2−アミノ−6−ヒドロキシプリン−9−イル基(グアニニル基)、6−アミノ−2−メトキシプリン−9−イル基、6−アミノ−2−クロロプリン−9−イル基、6−アミノ−2−フルオロプリン−9−イル基、2,6−ジメトキシプリン−9−イル基、2,6−ジクロロプリン−9−イル基、6−メルカプトプリン−9−イル基、2−オキソ−4−アミノ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基(シトシニル基)、4−アミノ−2−オキソ−5−フルオロ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、4−アミノ−2−オキソ−5−クロロ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−メトキシ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−メルカプト−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、2−オキソ−4−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基(ウラシリル基)、2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−メチル−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基(チミニル基)、および4−アミノ−5−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基が挙げられる。
【0052】
中でも、「Base」は、核酸医薬への導入という観点から、以下の構造式:
【0053】
【化6】
【0054】
でそれぞれ表される、2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−メチル−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基(チミニル基)、2−オキソ−4−アミノ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基(シトシニル基)、6−アミノプリン−9−イル基(アデニニル基)、2−アミノ−6−ヒドロキシプリン−9−イル基(グアニニル基)、4−アミノ−5−メチル−2−オキソ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基、および2−オキソ−4−ヒドロキシ−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基(ウラシリル基)が好適であり、特に、2−オキソ−4−ヒドロキシ−5−メチル−1,2−ジヒドロピリミジン−1−イル基(チミニル基)が好適である。また、オリゴヌクレオチドの合成の際には、水酸基が保護基により保護されていることが好ましい。
【0055】
さらに上記式(I)において、RおよびRの組合せの1つの例としては、RおよびRがともに水素原子である場合が挙げられる。あるいは、RおよびRの組合せの他の例としては、クリンコビッチ反応で用いる直鎖または分岐鎖状のグリニャール試薬の種類や添加するアルケンの種類に応じて作成可能なものであって、例えば、式(I)が以下:
【0056】
【化7】
【0057】
;ならびに
【0058】
【化8】
【0059】
で表すことのできる組合せが挙げられる。
【0060】
本発明の2’,4’−架橋型ヌクレオシドは、従来の2’,4’−BNA/LNAの架橋構造の6’位に、例えば、スピロシクロプロパン基が導入されていることにより、後述するオリゴヌクレオチドにおける酵素耐性能が向上する。また、このようなシクロプロパン基における環のひずみは、糖部のコンホメーションに直接的に影響を及ぼすものである。このため、本発明の2’,4’−架橋型ヌクレオシドは、得られたオリゴヌクレオチドに対し、当該影響によるssRNAとの結合親和性をも一層向上させ得る。さらに、本発明の2’,4’−架橋型ヌクレオシドは、その合成において、架橋構造の6’位へのスピロシクロプロパン基の導入に、公知の反応(クリンコビッチ反応)が容易に利用され得る。スピロシクロプロパン基の少なくとも1部が置換された、本発明の2’,4’−架橋型ヌクレオシドも同様である。このため、本発明の2’,4’−架橋型ヌクレオシドは、6’位にメチル基、メトキシメチル基などの他の置換基を導入する従来の2’,4’−BNA/LNAと比較しても一層効率的に合成することができる。
【0061】
本発明において、オリゴヌクレオチド(2’,4’−架橋型人工ヌクレオチド)は、このような2’,4’−架橋型ヌクレオシドを用いて調製することができる。例えば、三リン酸化は、非特許文献5に記載の方法に従って容易に行われ得る。
【0062】
本発明のオリゴヌクレオチドまたはその薬理学上許容される塩は、以下の式IIで表されるヌクレオシド構造を少なくとも1つ含む:
【0063】
【化9】
【0064】
(式中、「Base」、R、およびRは、上記式Iで定義されるものと同様である)。
【0065】
本発明のオリゴヌクレオチドは、上記ヌクレオシド構造を、任意の位置に少なくとも1つ有する。その位置および数は、特に限定されず、目的に応じて適宜設計され得る。
【0066】
このようなヌクレオシド構造を含むオリゴヌクレオチド類縁体(アンチセンス分子)は、従来の2’,4’−BNA/LNAを用いる場合と比較して、酵素耐性能が飛躍的に向上する。また、公知の2’,4’−BNA/LNAに匹敵するssRNA結合親和性を有する。
【0067】
これらのことから、本発明の2’,4’−架橋型ヌクレオシドを用いて合成されたオリゴヌクレオチド類縁体は、抗腫瘍剤、抗ウイルス剤をはじめとした、特定の遺伝子の働きを阻害して疾病を治療する医薬品(アンチセンス分子)としての有用性が期待される。
【0068】
特に、アンチセンス法では、相補センス鎖RNAに対する結合親和性および生体内DNA分解酵素への耐性の両方が必要とされる。一般的に、核酸は、一本鎖状態では、糖部の構造が絶えずDNA二重鎖に近い形と、DNA−RNA二重鎖やRNA二重鎖に近い形との間で揺らいでいることが知られている。一本鎖核酸が相補的なRNA鎖と二重鎖を形成する場合、その糖部構造は固定される。そこで、本発明の2’,4’−架橋型ヌクレオシドでは、糖部を予め二重鎖を形成する場合の状態に固定されているため、目的のRNA鎖と二重鎖を形成しやすく、安定に存在させることができる。また、核酸二重鎖は、水分子のネットワークと呼ばれる鎖のようにつながった水和水により安定化されていることも知られている。
【0069】
本発明のオリゴヌクレオチド類縁体は、例えば、賦形剤、結合剤、防腐剤、酸化安定剤、崩壊剤、滑沢剤、矯味剤などの医薬の製剤技術分野において通常用いられる補助剤を配合して、非経口投与製剤またはリポソーム製剤とすることができる。また、例えば、当該技術分野で通常用いられる医薬用担体を配合して、液剤、クリーム剤、軟膏剤などの局所用の製剤を調製することができる。
【実施例】
【0070】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0071】
(実施例1:2’,4’−架橋型ヌクレオシドの合成(1):スピロシクロプロパンBNA−T(scpBNA−T)アミダイトブロックの合成)
【0072】
【化10】
【0073】
(1)化合物2の合成
【0074】
【化11】
【0075】
窒素気流下、化合物1(7.38g,18.5mmol)の無水ジクロロメタン溶液(100mL)に、デス−マーチンペルヨージナン(9.41g,22.2mmol)を添加し、室温で40分間撹拌した。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液と飽和重曹水(2:1(v/v))を0℃にて添加し、室温で10分間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、ジエチルエーテルを添加し、水と飽和食塩水とで洗浄した。次いで、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物2(7.61g,定量的)を無色油状物質として得た。
【0076】
得られた化合物2の物性データを表1に示す。
【0077】
【表1】
【0078】
(2)化合物3の合成
【0079】
【化12】
【0080】
上記で得られた化合物2(7.61g,19.1mmol)のアセトニトリル溶液(10mmL)に、リン酸二水素ナトリウム(0.2M水溶液, 20mL,3.82mmol)と過酸化水素水(30重量%,2.3mL,21.0mmol)を添加した。これに亜塩素酸(0.75M水溶液,38mL,28.6mmol)を10分間かけて滴下した後、室温で1時間撹拌した。次いで、反応溶液に亜硫酸ナトリウム(4.8g,19.1mmol)を0℃にて添加し、室温で10分間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して化合物3(7.61g,96%)を白色固体として得た。
【0081】
得られた化合物3の物性データを表2に示す。
【0082】
【表2】
【0083】
(3)化合物4の合成
【0084】
【化13】
【0085】
窒素気流下、上記で得られた化合物3(7.61g,18.4mmol)の無水N,N−ジメチルホルムアミド溶液(30mL)に、重曹(15.4g,184mmol)とヨードメタン(2.86mL,45.9mmol)と添加し、20時間撹拌した。反応終了後、これに飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液と水とを添加し、ジエチルエーテルで抽出した。水と飽和食塩水とで洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去して、化合物4(7.35g,93%)を白色固体として得た。
【0086】
得られた化合物4の物性データを表3に示す。
【0087】
【表3】
【0088】
(4)化合物5の合成
【0089】
【化14】
【0090】
窒素気流下、上記で得られた化合物4(500mg,1.17mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(14mL)にオルトチタン酸テトライソプロピル(0.35mL,1.17mmol)とエチルマグネシウムブロミド(1Mテトラヒドロフラン溶液,5.83mL,5.83mmol)を0℃にて添加し、室温で18時間撹拌した。反応終了後、これに飽和塩化アンモニウム水溶液を添加し、10分間撹拌した。溶媒を減圧留去した後、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。さらに無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物5(0.442g,89%)を赤色ペースト状物質として得た。
【0091】
得られた化合物5の物性データを表4に示す。
【0092】
【表4】
【0093】
(5)化合物6の合成
【0094】
【化15】
【0095】
窒素気流下、上記で得られた化合物5(2.55g,5.99mmol)の無水ジクロロメタン溶液(50mL)に、2,6−ルチジン(2.09mL,18.0mmol)とトリフルオロメタンスルホン酸tert−ブチルジメチルシリル(2.75mL,12.0mmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。次いで、これに飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出後、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:15(v/v)→1:5(v/v))により精製し、化合物6(2.92g,90%)を黄色油状物質として得た。
【0096】
得られた化合物6の物性データを表5に示す。
【0097】
【表5】
【0098】
(6)化合物7の合成
【0099】
【化16】
【0100】
上記で得られた化合物6(8.04g,14.9mmol)の酢酸溶液)17.0mL,0.30mol)に無水酢酸(28.2mL,0.30mol)とトリフルオロ酢酸(3.20mL,44.7mmol)とを添加し、室温で5時間撹拌した。これに飽和重曹水を加え、酢酸エチルで抽出後、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物7(9.43g,粗生成物)を赤褐色油状物質として得た。この化合物7を、精製することなく即座に次の反応に用いた。
【0101】
(7)化合物8の合成
【0102】
【化17】
【0103】
窒素気流下、上記で得られた化合物7(9.43g,粗生成物)の無水アセトニトリル溶液(140mL)にチミン(5.63g,44.6mmol)、N,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(25%アセトニトリル溶液,18.2mL,74.3mmol)、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(4.03mL,22.3mmol)を室温で添加し、80℃で2時間撹拌した。反応終了後、これに飽和重曹水を0℃にて添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物8(8.26g)を赤褐色油状物質として得た。
【0104】
得られた化合物8の物性データを表6に示す。
【0105】
【表6】
【0106】
(8)化合物9の合成
【0107】
【化18】
【0108】
上記で得られた化合物8(8.26g,粗生成物)のテトラヒドロフラン溶液(150mL)にメチルアミン(40%水溶液,30.4mL,0.73mol)を添加し、室温で4時間撹拌した。反応終了後、テトラヒドロフランを減圧留去した。酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物9(7.50g)を黄色泡状物質として得た。
【0109】
得られた化合物9の物性データを表7に示す。
【0110】
【表7】
【0111】
(9)化合物10の合成
【0112】
【化19】
【0113】
窒素気流下、上記で得られた化合物9(7.50g,粗生成物)の無水ピリジン溶液(120mL)にメタンスルホニルクロリド(1.43mL,18.5mmol)を添加し、室温で4時間撹拌した。反応終了後、これに水を添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー (酢酸エチル:ヘキサン=1:5(v/v))により精製し、化合物10(7.39g,4工程)を白色泡状固体として得た。
【0114】
得られた化合物10の物性データを表8に示す。
【0115】
【表8】
【0116】
(10)化合物11の合成
【0117】
【化20】
【0118】
上記で得られた化合物10(3.19g,4.64mmol)のテトラヒドロフラン−エタノール溶液(150mL,3:2(v/v)) に水酸化ナトリウム(4M,水溶液,60mL,0.23mol)を添加し、70℃で8時間撹拌した。反応終了後、塩酸で中和し、溶媒を減圧留去した。酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水と水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物11(2.71g,粗生成物)を白色固体として得た。
【0119】
得られた化合物11の物性データを表9に示す。
【0120】
【表9】
【0121】
(11)化合物12の合成
【0122】
【化21】
【0123】
窒素気流下、化合物11(2.71g,粗生成物)の無水ピリジン溶液(50mL)にトリフルオロ酢酸無水物(3.65mL,22.3mmol)を添加し、室温で12時間撹拌した。さらに、これにトリフルオロ酢酸無水物(0.73mL,4.45mmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。次いで、これに水を添加し、酢酸エチルで抽出後、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去し、化合物12(4.12g,粗生成物)を褐色泡状固体として得た。この化合物12を、精製することなく即座に次の反応に用いた。
【0124】
(12)化合物13の合成(A)
【0125】
【化22】
【0126】
上記で得られた化合物12(4.12g,粗生成物)のテトラヒドロフラン溶液(250mL)にテトラブチルアンモニウムフルオリド(1Mテトラヒドロフラン溶液,13.9mL,13.9mmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=2:3(v/v))により精製し、化合物13(710mg,32%,3工程)を黄色泡状固体として得た。
【0127】
上記合成(A)で得られた化合物13の物性データを表10に示す。
【0128】
【表10】
【0129】
(12)−2 化合物13の合成(B)
【化23】
【0130】
「上記化合物13の合成(A)」に代えて、「合成(B)」として、化合物10から新たに化合物17を経由して化合物13を以下のようにして合成した。
【0131】
窒素気流下、化合物10(459mg,0.67mmol)の無水テトラヒドロフラン溶液(25mL)にテトラブチルアンモニウムフルオリド(1Mテトラヒドロフラン溶液,0.67mL,0.67mmol)を添加し、室温で5時間撹拌した。反応終了後、水を添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー((クロロホルム:メタノール=50:1(v/v)→20:1(v/v))により精製し、化合物17(290mg,91%)を白色固体として得た。
【0132】
得られた化合物17の物性データを表11に示す。
【0133】
【表11】
【0134】
次いで、化合物17(1.62g,3.40mmol)のN,N−ジメチルホルムアミド溶液(35mL)に、炭酸カリウム(1.1g,10.2mmol)を添加し、90℃で20時間撹拌した。反応終了後、水を添加し、ジエチルエーテルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1(v/v))により精製し、化合物13(1.23g,77%)を白色固体として得た。
【0135】
上記合成(B)で得られた化合物13の物性データを表12に示す。
【0136】
【表12】
【0137】
(13)化合物14の合成
【0138】
【化24】
【0139】
水素気流下、上記で得られた化合物13(350mg,1.50mmol)のエタノール溶液(20mL)に20%水酸化パラジウム/炭素(パラジウム20%,170mg)を添加し、室温で2時間撹拌した。反応混合物をろ過した後、溶媒を減圧留去し、化合物14(230mg,粗生成物)を白色泡状固体として得た。
【0140】
得られた化合物14の物性データを表13に示す。
【0141】
【表13】
【0142】
(14)化合物15の合成
【0143】
【化25】
【0144】
窒素気流下、上記で得られた化合物14(130mg,粗生成物)の無水ピリジン溶液(15mL)に4,4’−ジメトキシトリチルクロリド(892mg,2.63mmol)を添加し、室温で14時間撹拌した。これに水を添加し、ジクロロメタンで抽出後、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.5%トリエチルアミン含有クロロホルム:メタノール=50:1(v/v))により精製し、化合物15(160mg,60%)を白色泡状固体として得た。
【0145】
得られた化合物15の物性データを表14に示す。
【0146】
【表14】
【0147】
(15)化合物16の合成
【0148】
【化26】
【0149】
窒素気流下、上記で得られた化合物15(30.0mg,0.05mmol)の無水アセトニトリル溶液(1.0mL)にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(34.8μL,0.20mmol)、2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロクロリダート(22.3μL,0.10mmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。溶媒を減圧留去し、得られた粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.5%トリエチルアミン含有酢酸エチル:ヘキサン=2:1(v/v))により精製し、化合物16(24mg,60%(scpBNA−Tアミダイトブロック))を白色泡状固体として得た。
【0150】
得られた化合物16の物性データを表15に示す。
【0151】
【表15】
【0152】
(実施例2)オリゴヌクレオチドの合成および精製
実施例1で得られた化合物16(アミダイトブロック)、ならびにdG(iBu)、dC(Bz)およびTのホスホロアミダイト(いずれもシグマ−アルドリッチ社製)を、それぞれ0.1Mの無水アセトニトリル溶液として調製し、nS−8 Oligonucleotides Synthesizer(株式会社ジーンデザイン製オリゴヌクレオチド合成装置)を用いて、当該分野において公知のホスホロアミダイト法に従って、オリゴヌクレオチド(5’−d(GCGTTXTTTGCT)−3’、5’−d(GCGTTXTXTGCT)−3’、5’−d(GCGTTXXTTGCT)−3’、5’−d(GCGXTXTXTGCT)−3’ 、5’−d(GCGTTXXXTGCT)−3’および5’−d(TTTTTTTTXT)−3’)の合成を行った(ここで、Xは実施例1で得られた化合物16(アミダイトブロック)に相当する)。
【0153】
当該合成において、合成スケールは0.2μmolであり、かつトリチルオン条件下で行った。活性化剤にはActivator 42(シグマ−アルドリッチ社製0.25Mアセトニトリル溶液)を用いた。縮合時間は化合物16を用いた合成では8分間、他の天然のアミダイトブロックを用いた合成では32秒間とした。合成完了後、28%のアンモニア水で室温下にて、1.5時間処理し、カラム担体からの切り出しを行い、引き続いて55℃にて12時間静置することにより、塩基部およびリン酸ジエステル部の脱保護を行った。次いで、簡易逆相カラム(ウォーターズ社製Sep−Pak(登録商標) Plus C18 Environmental Cartridges)により精製し、さらに逆相HPLCにて精製を行った。
【0154】
なお、このHPLCの条件は以下の通りであった。
【0155】
カラムにウォーターズ社製Xbridge(登録商標)MS C18 2.5μmol(4.6mm×50mm,10mm×50mm)を用い、移動相のA液として0.1Mの酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)緩衝液(pH7.0)、およびB液として0.1MのTEAA緩衝液:アセトニトリル=1:1(v/v)を調製し、B液の濃度について6〜12%(30分間)のグラジエントを行った。分析は1mL/分で行い、分取は3mL/分で行った。検出UVは254nmであった。
【0156】
さらに、上記化合物16(アミダイトブロック)に代えて、Obikaら、Tetrahedron Lett.,1997年,38,pp.8735−8738に記載の方法を用いて合成した2’,4’−BNA/LNA(架橋結合部分の6’位にスピロシクロプロパン基を有していないこと以外は、上記実施例1で得られた化合物16と同様の構造を有する)を用い、上記と同様にしてオリゴヌクレオチドを合成した。
【0157】
また、上記化合物16(アミダイトブロック)に代えて、天然チミジン(シグマ−アルドリッチ社製)を用いて、上記と同様にしてオリゴヌクレオチドを合成した。
【0158】
(実施例3)オリゴヌクレオチドの組成の確認と定量
実施例2で得られたオリゴヌクレオチドの組成をMALDI−TOF−MASS測定により決定した。当該測定にあたり、まず、3−ヒドロキシピコリン酸水溶液(10mg/mL)とクエン酸二アンモニウム水溶液(1mg/mL)と1:1の容量比で混合したマトリックス(1μL)を測定プレート上で乾燥させ、乾燥したマトリックス上に水に溶解したオリゴヌクレオチド(50μM,1μL)を載せて乾燥させ、その後測定を行った。分子量の測定をネガティブリフレクターモードで行い、オリゴチミジル酸(7mer、15merおよび23mer)を外部標準として用いた。また、合成したオリゴヌクレオチドの定量を、吸光度測定装置(島津製作所製SHIMADZU UV−1800)を用いて260nmにおける紫外部吸収を測定することで行った。
【0159】
得られた結果を表16に示す。
【0160】
【表16】
【0161】
(実施例4)融解温度(T)の測定
本実施例では、5’−(AGCAAAAAACGC)−3’の配列(配列番号1)を有する一本鎖オリゴDNAおよび一本鎖オリゴRNAの標的鎖(それぞれ、実施例1と同様に、ホスホロアミダイト法に従って合成した)について、実施例2の各種オリゴヌクレオチドのハイブリッド形成能(結合親和性)を調べた。
【0162】
各種オリゴヌクレオチドと標的鎖とをアニーリング処理して二重鎖を形成させた後、T値を測定することにより、オリゴヌクレオチドのハイブリッド形成能を調べた。形成された二重鎖のT値を測定した。
【0163】
具体的には、各オリゴヌクレオチド(終濃度4μM)および塩化ナトリウム(終濃度100mM)のリン酸緩衝液(10mM,pH7.2,130μL)を沸騰水中に浴し、室温までゆっくり冷却した。測定装置は、SHIMADZU UV−1650PC、SHIMADZU UV−1800 spectrometers(株式会社島津製作所製)を用い、窒素気流下、測定溶液を5℃まで冷却し測定を開始した。0.5℃/分の速度で90℃まで昇温し、0.5℃間隔で260nmにおける吸光度をプロットした。T値は中線法により算出し、独立した3回の測定における平均値とした。
【0164】
表17は、一本鎖オリゴDNAを標的鎖とした場合の結果を示し、表18は、一本鎖オリゴRNAを標的鎖とした場合の結果を示す。いずれとも、二重鎖の50%が解離する温度であるT値、および修飾単位あたりのT値差(化合物16(アミダイトブロック)を用いた場合および2’,4’−BNA/LNAを用いた場合)を示す。
【0165】
【表17】
【0166】
【表18】
【0167】
表17および18から明らかなように、化合物16(アミダイトブロック)を含むオリゴヌクレオチドは、天然のオリゴヌクレオチドと比較して、一本鎖オリゴDNAおよび一本鎖オリゴRNAの両方に対してT値が高く、高い結合親和性を示した。特に一本鎖オリゴRNAに対しては、化合物16(アミダイトブロック)を含むオリゴヌクレオチドは、2’,4’−BNA/LNAに匹敵する高い結合親和性を示した。
【0168】
図1は、5’−d(GCGTTXTTTGCT)−3’の配列の各種オリゴヌクレオチドについて、一本鎖オリゴRNA標的鎖に対して形成した二重鎖ハイブリッドが解離するT曲線を示す。図1の縦軸は、260nmの吸光度を表し、横軸は、温度(℃)を表す。
【0169】
図1からもまた、化合物16(アミダイトブロック)を含むオリゴヌクレオチドは、一本鎖オリゴRNAに対して、2’,4’−BNA/LNAに匹敵する高い結合親和性を示すことが明らかとなった。
【0170】
(実施例5)ヌクレアーゼ耐性能の評価
5’−d(TTTTTTTTXT)−3’の配列のXとして実施例1の化合物16(アミダイトブロック);2’,4’−BNA/LNA(T);および天然チミジンをそれぞれ用いた10merの各種オリゴヌクレオチドを、以下のようにして調製した。すなわち、オリゴの合成に、原料のヌクレオシドのホスホロアミダイトを0.1Mの無水アセトニトリル溶液として調整し、nS−8 Oligonucleotides Synthesizer(株式会社ジーンデザイン製オリゴヌクレオチド合成装置)を用いて通常のホスホロアミダイト法に従って行った。当該合成において、合成スケールは1.0μmolであり、かつトリチルオン条件下で行った。活性化剤にはActivator 42(シグマ−アルドリッチ社製0.25Mアセトニトリル溶液)を用いた。縮合時間は化合物16を用いた合成では10分間、他の天然のアミダイトブロックを用いた合成では40秒間とした。合成完了後、カラム担体をマイクロチューブに移し、28%のアンモニア水中で55℃にて、一晩静置し、カラム担体からの切り出しと、塩基部およびリン酸ジエステル部の脱保護とを行った。次いで、簡易逆相カラム(ウォーターズ社製Sep−Pak(登録商標) Plus C18 Environmental Cartridges)により精製し、さらに逆相HPLCにて精製を行った。HPLCの条件は、カラムにウォーターズ社製Xbridge(登録商標)MS C18 2.5μmol(4.6mm×50mm,10mm×50mm)を用い、移動相のA液として0.1Mの酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)緩衝液(pH7.0)、およびB液として0.1MのTEAA緩衝液:アセトニトリル=1:1(v/v)を調製し、B液の濃度について6〜12%(30分間)のグラジエントを行った。分析は1mL/分で行い、分取は3mL/分で行った。検出UVは260nmであった。
【0171】
ヌクレアーゼ耐性の評価は、以下のように行った。各種オリゴヌクレオチド(終濃度4μM)および塩化マグネシウム(終濃度10mM)のトリス−塩酸緩衝液(50mM,pH8.0,100μL)に3’−エキソヌクレアーゼ(Crotalus Admanteus Venom Phosphodiesterase:CAVP,Pharmacia Biotech社製)を1μg/mLとなるように加え37℃で静置した。反応開始から2.5、5、10、20、40、80分後に反応液から20μLずつ取り、90℃下で2.5分間静置させることで酵素を失活させ、原料オリゴヌクレオチドの残量を逆相HPLCにより定量した。HPLCの条件は、カラムにWaters Xbridge(登録商標)MS C18 2.5μmol(4.6mm×50mm)を用い、移動相のA液を0.1M 酢酸トリエチルアンモニウム(TEAA)緩衝液(pH7.0)、B液を0.1M TEAA緩衝液:アセトニトリル=1:1(v/v)で調製し、B液濃度6−12%(20分)のグラジエントで行った。分析を1mL/分の流速で行い、260nmのUVで検出した。
【0172】
10merと9merのオリゴヌクレオチドの残量を未反応のオリゴヌクレオチドの割合(%)として算出し、反応時間に対してプロットした。結果を図2に示す。
【0173】
図2は、5’−d(TTTTTTTTXT)−3’の配列の各種オリゴヌクレオチドを3’−エキソヌクレアーゼで処理した場合の、未反応のオリゴヌクレオチドの割合の経時変化を示すグラフである。図1の縦軸は、ヌクレアーゼ処理に対して未反応のオリゴヌクレオチドの割合(%)を示し、横軸は、ヌクレアーゼ処理時間(分)を示す。図2の記号は以下を表す:菱形、実施例1の化合物16(アミダイトブロック)を含有するオリゴヌクレオチド;四角、2’,4’−BNA/LNAを含有するオリゴヌクレオチド;および三角、天然チミジンを含有するオリゴヌクレオチド。
【0174】
図2から明らかなように、化合物16(アミダイトブロック)を含有するオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ処理の80分後でも60%以上が未反応のまま残存しており、分解されにくかった。これに対し、2’,4’−BNA/LNAを含有するオリゴヌクレオチドおよび天然チミジンを含有するオリゴヌクレオチドは、ヌクレアーゼ処理の20分後にはほぼ分解された。このように、化合物16(アミダイトブロック)を含有するオリゴヌクレオチドは、2’,4’−BNA/LNAを含有するオリゴヌクレオチドに比較して、はるかに高い酵素耐性能を有することが示された。
【0175】
(実施例6:2’,4’−架橋型ヌクレオシドの合成(2):スピロシクロプロパンBNA−C(scpBNA−C)アミダイトブロックの合成)
【0176】
【化27】
【0177】
(1)化合物18の合成
【0178】
【化28】
【0179】
アルゴン気流下、実施例1で得られた化合物15(167mg,0.28mmol)の無水ピリジン溶液(2mL)にクロロトリエチルシラン(0.24mL,1.39mmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。反応終了後、飽和重曹水を0℃で添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1(v/v))で精製し、化合物18(188mg,95%)を黄色泡状固体として得た。
【0180】
得られた化合物18の物性データを表19に示す。
【0181】
【表19】
【0182】
(2)化合物19の合成
【0183】
【化29】
【0184】
アルゴン気流下、化合物18(969mg,1.36mmol)、トリエチルアミン(2.79mL,20.1mmol)、および1,2,4−トリアゾール(1.39g,20.1mmol)の無水アセトニトリル溶液(15mL)に、塩化ホスホリル(0.38mL,4.03mmol)を0℃で滴下した。室温で2時間撹拌した後、反応溶液に飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去して化合物19(1.06g,77%)を得た。化合物19については精製することなく、直ちに次の反応に用いた。
【0185】
(3)化合物20の合成
【0186】
【化30】
【0187】
化合物19(1.06g)の1,4−ジオキサン溶液(10mL)に、アンモニア水溶液(28重量%,1.26mL,67.0mmol)を0℃で添加し、室温で2時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=30:1(v/v))で精製し、化合物20(958mg,98%,2工程)を白色泡状固体として得た。
【0188】
得られた化合物20の物性データを表20に示す。
【0189】
【表20】
【0190】
(4)化合物21の合成
【0191】
【化31】
【0192】
アルゴン気流下、化合物20(902mg,1.27mmol)の無水ピリジン溶液(13mL)に塩化ベンゾイル(0.22mL,1.90mmol)を0℃で添加し、室温で3時間撹拌した。反応終了後、飽和重曹水を加え、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1(v/v))で精製し、化合物21(861mg,83%)を黄色泡状固体として得た。
【0193】
得られた化合物21の物性データを表21に示す。
【0194】
【表21】
【0195】
(5)化合物22の合成
【0196】
【化32】
【0197】
化合物21(701mg,0.86mmol)のテトラヒドロフラン溶液(8mL)にテトラブチルアンモニウムフルオリド(1Mテトラヒドロフラン溶液,2.58mL,2.58mmol)を0℃で添加し、室温で10分間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1(v/v))により精製し、化合物22(528mg,88%)を白色泡状固体として得た。
【0198】
得られた化合物22の物性データを表22に示す。
【0199】
【表22】
【0200】
(6)化合物23の合成
【0201】
【化33】
【0202】
アルゴン気流下、化合物22(528mg,0.75mmol)の無水アセトニトリル溶液(7mL)にN,N−ジイソプロピルエチルアミン(0.39mL,2.26mmol)および2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロクロリダート(0.25mL,1.13mmol)を0℃で添加し、室温で2時間撹拌した。反応終了後、飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.5%トリエチルアミン含有ヘキサン:酢酸エチル=2:1(v/v)) で精製し、化合物23(529mg,78%:scpBNA−Cアミダイトブロック)を白色泡状固体として得た。
【0203】
得られた化合物23の物性データを表23に示す。
【0204】
【表23】
【0205】
(実施例7:動物実験)
(1)動物実験用オリゴヌクレオチドの設計および合成
標的遺伝子としてmouse phosphatase and tensin homolog (Pten) mRNAを選択し(NCBI参照番号:NM_008960.2)、全8229塩基中の60塩基目から73塩基目に相補的なオリゴヌクレオチドを合成した。なお、配列は既報配列を使用した(Molecular Therapy-Nucleic Acids, 2012, 1, e47)。
【0206】
オリゴヌクレオチドの合成に関し、まず比較のために、表24に示すようなすべてのリンケージをホスホロチオエート化した2’,4’−BNA/LNA搭載オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド1)を作製した。一方、実施例1で得られたscpBNA−Tアミダイトブロック(化合物16)および実施例6で得られたscpBNA−Cアミダイトブロック(化合物23)を用い、scpBNA搭載オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド2)を作製した。これらのオリゴヌクレオチドの作製は、株式会社ジーンデザインによる受諾合成を通じて行った。作製したオリゴヌクレオチドは、ナトリウムフォーム化されかつエンドトキシンフリーのin vivoグレードであった。
【0207】
(2)融解温度(T)の測定
上記で得られたオリゴヌクレオチド1および2の相補鎖RNA(5’-agcugcagccauga-3’(配列番号2))との結合親和性を以下のようにして評価した。
【0208】
リン酸緩衝液(10mM NaH2PO4-10mM Na2HPO4, 100mM NaCl, pH7.0)に、最終濃度が2μMとなるようにオリゴヌクレオチド1およびオリゴヌクレオチド2を別々に添加し、各オリゴヌクレオチド溶液を調製した。当該溶液を、4℃〜95℃の温度域で0.5℃/分ごとに昇温させ、260nmにおける吸光度をそれぞれモニターした。T値を中線法により算出し、独立した3回の測定における平均値とした。結果を、オリゴヌクレオチド1およびオリゴヌクレオチド2の質量分析結果とともに、表24に示す。
【0209】
【表24】
【0210】
表24に示すように、オリゴヌクレオチド1(2’,4’−BNA/LNA搭載オリゴヌクレオチド)と、オリゴヌクレオチド2(scpBNA搭載オリゴヌクレオチド)とのT値には大きな相違が見られず、これらのオリゴヌクレオチド1および2における結合親和性がほぼ同等であったことがわかる。
【0211】
(3)投与実験
被験動物として7週齢のマウスC57BL/6J(雄)(日本SLC社)を購入し、1週間馴化させた。その後、これらのマウスに対して、生理食塩水に溶解したオリゴヌクレオチド1(35mg/kg)、オリゴヌクレオチド2(35mg/kg)または生理食塩水を全用量200μLにて腹腔内投与した(投与群N=4)。72時間後、マウスをイソフルラン麻酔下にて解剖し、下大静脈より採血した後、PBSで心臓灌流を行った。その後、肝臓を摘出し、RNA later(登録商標)Stabilization Solution (Thermo Fisher Scientific, AM7021) 下で4℃保存した。
【0212】
次いで、上記にて保存した肝臓から切片を一部取り出し、QuickGene RNA tissue kit SII(和光純薬工業株式会社製RT-S2)のLRT(2−メルカプトエタノール含有)500μLを添加し、ステンレス球1粒を加え、ホモジナイズした(TAITEC社製μT−12, 回転速度: 2,000rpm, 3分間)。その後、室温で12,000rpmにて3分間遠心し、上清385μLを回収した。キットのSRT175μLを添加し、ボルテックスにて15秒間混合し、スピンダウンした。その後、特級エタノール140μLを添加し、ボルテックスにてさらに1分間混合し、スピンダウンした。こうして得られた全量を、RNA自動抽出器 (和光純薬工業株式会社製QuickGene-800) にセットし、total RNAを抽出した。
【0213】
次いで、total RNA2μgに対し逆転写反応を行った。High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit (Thermo Fisher Scientific, 4368813) を用い、当該製品のプロトコルに従ってcDNAを作製した。
【0214】
その後、上記cDNAを30倍に希釈してcDNA溶液を調製し、標的遺伝子Ptenに対するreal-time PCRを行った。Ptenの発現量解析は、ハウスキーピング遺伝子Gapdhの発現量に対する相対発現量として評価した。この反応には、TaqMan(登録商標)Fast Universal PCR Master Mix(Thermo Fisher Scientific, 4352042)およびTaqMan probe(Thermo Fisher Scientific, Pten: Mm00477208_m1, Gapdh: Mm99999915_g1)を用い、当該製品のプロトコルに従って行った。
【0215】
さらに、上記マウスの下大静脈から採血した血液サンプルから血清を以下のようにして分離した。
【0216】
血液凝固促進剤および血清分離剤の入ったチューブ(BD,365967)に採血した血液サンプルを添加し、5,000rpmで、4℃下にて20分間遠心した。血清を回収し、以降の血液検査に使用した。
【0217】
当該血清について、肝毒性の指標GOT(AST)値およびGPT(ALT)値をトランスアミナーゼCII−テストワコー(和光純薬工業株式会社製431-30901)を用いて算出した。基質酵素液と発色試液とを等量で混合し、基質発色液とした。基質発色液100μLを96ウェルプレートに分注し、37℃で5分間加温した。その後、当該発色液に上記で得られた血清2μLを添加し、37℃で20分間加温し、反応停止液200μLを添加し、プレートリーダー(Molecular Device社製SpectraMax M5e)を用いて555nmにおける吸光度を測定した。得られた吸光度から当該製品に付属のプロトコルに従って検量線法によりAST/ALT値を算出した。
【0218】
得られた結果を図3および図4に示す。
【0219】
図3に示すように、肝臓内に発現するPten mRNAの発現量を定量した結果、オリゴヌクレオチド1および2のいずれを投与しても高いノックダウン効率(60%〜70%)を示し、scpBNA搭載オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド2)は、2’,4’−LNA/BNA搭載オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド1)と同等のアンチセンス活性を示すことがわかる。
【0220】
これに対し、図4に示すように、2’,4’−LNA/BNA搭載オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド1)の投与群では、AST/ALT値は100/30Karmenを超えた値となり、毒性が認められた。scpBNA搭載オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド2)の投与群では、AST/ALT値がオリゴヌクレオチド1のものと比較して、その半分程度にまで値が減少し、肝毒性は認められなかった。
【0221】
(実施例8:in vitroアンチセンス活性評価)
(1)細胞へのアンチセンス核酸の導入および細胞破砕液の作製
マウス肝臓がん由来細胞株NMuLiを96ウェルプレートに2.5×10cells/wellの細胞数で播種し、24時間培養した。当該プレートに付属のプロトコルに従って、実施例7で得られたオリゴヌクレオチド1または2と、Lipofectamine 2000とをOpti−MEM中でコンプレックスを形成させ、各ウェルの10% FBS/DMEM(抗生物質を含有せず)100μLに、50μLのコンプレックスを添加した。24時間後、ウェルから培地を除去し、PBSで洗浄後、Lysis Solution 49.7μLとgDNA Remover0.3μLの混合液(SuperPrepTM, 東洋紡製, SCQ-101)50μL/ウェルを添加し、軽く振盪した後、5分間室温にてインキュベートした。次いで、Stop Solution 9.5μLおよびRNase Inhibitor 0.5μLの混合液(SuperPrepTM, 東洋紡製, SCQ-101)10μL/ウェルを添加し、軽く振盪した後2分間室温にてインキュベートして、細胞破砕液を得た。
【0222】
その後、8μLの5×RT Master Mixと、24μLのNuclease-free Waterの混合液(SuperPrepTM, 東洋紡製, SCQ-101)32μLに対し、上記で調製した細胞破砕液8μLを添加した。37℃にて15分→50℃にて5分→98℃にて5分→4℃にて10分の順に温度をかけて逆転写反応を行い、cDNA溶液を作製した。次いで、得られたcDNA溶液を30倍に希釈し、標的遺伝子Ptenに対するreal-time PCRを行った。Ptenの発現量解析は、ハウスキーピング遺伝子Gapdhの発現量に対する相対発現量として評価した。反応には、TaqMan(登録商標)Fast Universal PCR Master Mix(Thermo Fisher Scientific, 4352042)および、TaqMan probe(Thermo Fisher Scientific, Pten: Mm00477208_m1, Gapdh: Mm99999915_g1) を用い、当該製品のプロトコルに従って反応を行った。
【0223】
また、濃度の対数に対してPten mRNAの相対残存量をプロットし、グラフソフトウエア(株式会社ヒューリンクス製Igor Pro)を用いてフィッティングを行い(Sigmoid mode)、IC50を算出した。
【0224】
オリゴヌクレオチド1および2を、それぞれ0.25nMから200nMまでの濃度(各濃度についてN=4)で導入した結果を図5に示す。さらに、上記より算出したIC50の結果を表25に示す。
【0225】
【表25】
【0226】
図5および表25から明らかなように、IC50の値は、オリゴヌクレオチド1に比べてオリゴヌクレオチド2が幾分高い値を示していたが、NMuLi細胞におけるPten mRNA発現レベルは、オリゴヌクレオチド1および2の間で実質的な差異が見出せなかったことがわかる。このことから、scpBNA搭載オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド2)は、in vitroにおいても2’,4’−LNA/BNA搭載オリゴヌクレオチド(オリゴヌクレオチド1)と同等のアンチセンス活性を示すことがわかる。
【0227】
これまで、高いアンチセンス活性を保持する2’,4’−LNA/BNA搭載オリゴヌクレオチドを投与した場合には、肝毒性も高い値を示すケースが多く報告されてきた。しかし、上記実施例7および8の結果によれば、scpBNA搭載オリゴヌクレオチドを投与すると、高いアンチセンス活性を維持しながら、肝毒性を発現しない結果が得られており、これにより、本発明のオリゴヌクレオチドが核酸医薬品化に向けた新たな架橋型人工核酸アナログの開発に有用であることがわかる。
【0228】
(実施例9:2’,4’−架橋型ヌクレオシドの合成(3):スピロシクロプロパンBNA−A(scpBNA−A)アミダイトブロックの合成)
【0229】
【化34】
【0230】
(1)化合物24の合成
【0231】
【化35】
【0232】
窒素気流下、実施例1で得られた化合物7(6.14g)の無水アセトニトリル(70mL)溶液に、N−ベンゾイルアデニン(2.58g,10.8mmol)およびN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(5.65mL,23.1mmol)を0℃で添加し、10分間撹拌した。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(2.78mL,15.4mmol)を0℃で滴下し、80℃にて22時間撹拌した。反応終了後、飽和重曹水を0℃で添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1(v/v))により精製して、化合物24(2.91g,50%(2工程))を白色泡状固体として得た。
【0233】
得られた化合物24の物性データを表26に示す。
【0234】
【表26】
【0235】
(2)化合物25の合成
【0236】
【化36】
【0237】
化合物24(2.20g,2.88mmol)のメタノール(40mL)溶液に、炭酸カリウム(795mg,5.75mmol)を添加し、0℃で20分間撹拌した。反応終了後、水を0℃で添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=3:2(v/v))により精製し、化合物25(2.05g,99%)を白色泡状固体として得た。
【0238】
得られた化合物25の物性データを表27に示す。
【0239】
【表27】
【0240】
(3)化合物26の合成
【0241】
【化37】
【0242】
化合物25(1.08g,1.50mmol)のジクロロメタン(15mL)溶液に、ジアセトキシヨードベンゼン(724mg,2.25mmol)および2−ヒドロキシ−2−アザアダマンタン(11.5mg,0.075mmol,5mol%)を添加し、室温で6時間撹拌した。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液および飽和重曹水(2:1(v/v))添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、化合物26(1.08g)を黄色泡状固体として得た。この化合物26を精製することなく、直ちに次の反応に使用した。
【0243】
(4)化合物27の合成
【0244】
【化38】
【0245】
化合物26(1.08g)のエタノール(15mL)溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(79.4mg,2.10mmol)を添加し、室温で20分間撹拌した。反応終了後、水を添加し、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水と水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1(v/v))により精製し、化合物27(773mg,70%,2工程,R:S=2.6:1)を黄色泡状固体として得た。得られた化合物27はジアステレオマーの分離が困難な混合物であったため、当該混合物のまま次の反応に使用した。
【0246】
(5)化合物28の合成
【0247】
【化39】
【0248】
窒素気流下、化合物27(773mg,1.07mmol)のジクロロメタン(10mL)溶液に、4−ジメチルアミノピリジン(653mg,5.35mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸無水物(0.22mL,1.39mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。反応終了後、飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出し、飽和塩化アンモニウム水溶液、水、および飽和食塩水で洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、化合物28(869mg,R:S=2.6:1)を黄色泡状固体として得た。この化合物28を精製することなく、直ちに次の反応に使用した。
【0249】
(6)化合物29の合成
【0250】
【化40】
【0251】
化合物28(869mg)のテトラヒドロフラン(10mL)溶液に、テトラブチルアンモニウムフルオリド(1Mテトラヒドロフラン溶液,3.21mL,3.21mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=1:1(v/v))により精製し、化合物29(90mg,14%,2工程)を白色泡状固体として得た。
【0252】
得られた化合物29の物性データを表28に示す。
【0253】
【表28】
【0254】
(7)化合物30の合成
【0255】
【化41】
【0256】
化合物29(60mg,0.102mmol)のテトラヒドロフラン(1mL)溶液に、メチルアミン水溶液(40重量%,0.42mL,5.09mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=3:1(v/v))により精製し、化合物30(41mg,83%)を白色泡状固体として得た。
【0257】
得られた化合物30の物性データを表29に示す。
【0258】
【表29】
【0259】
(8)化合物31の合成
【0260】
【化42】
【0261】
化合物30(450mg,0.927mmol)のエタノール−酢酸(30.9mL,100:3(v/v))溶液に、20%水酸化パラジウム/炭素(パラジウム20%,198mg)およびギ酸アンモニウム(3.5g,55.6mmmol)を添加し、還流下で5時間加熱した。反応溶液を、ひだ折り濾紙でろ過した後、溶媒を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=10:1(v/v))により精製し、化合物31(130mg,46%)を白色泡状固体として得た。
【0262】
得られた化合物31の物性データを表30に示す。
【0263】
【表30】
【0264】
(9)化合物32の合成
【0265】
【化43】
【0266】
窒素気流下、化合物31(81.0mg,0.265mmol)の無水ピリジン(2mL)溶液に、クロロトリメチルシラン(67.0μL,0.531mmol)を添加し、0℃で40分間撹拌した。次いで、塩化ベンゾイル(92.0μL,0.795mmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。さらに、アンモニア水溶液(28重量%,1.2mL,18.6mmol)を添加し、0℃で3時間撹拌した。反応溶液を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=30:1(v/v)→10:1(v/v))により精製し、化合物32(66mg,61%)を白色泡状固体として得た。
【0267】
得られた化合物32の物性データを表31に示す。
【0268】
【表31】
【0269】
(10)化合物33の合成
【0270】
【化44】
【0271】
窒素気流下、化合物32(16mg,39.0μmol)の無水ピリジン(0.5mL)溶液に、4,4’−ジメトキシクロリド(19.9mg,59.0μmol)を添加し、室温で15時間撹拌した。その後、4,4’−ジメトキシクロリド(23mg,67.9μmol)を添加し、室温で4時間撹拌した。さらに、4,4’−ジメトキシクロリド(223mg,0.18mmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水と水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=1:1(v/v))により精製し、化合物33(20mg,72%)を白色泡状固体として得た。
【0272】
得られた化合物33の物性データを表32に示す。
【0273】
【表32】
【0274】
(11)化合物34の合成
【0275】
【化45】
【0276】
窒素気流下、化合物33(52mg,73.1μmol)の無水アセトニトリル(1mL)溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(38μL,21.9μmol)および2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロクロリダート(24μL,11.0μmol)を添加し、室温で2時間撹拌した。その後、N,N−ジイソプロピルエチルアミン(76μL,43.8μmol)、2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロクロリダート(24μL,11.0μmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。さらに、2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロクロリダート(24μL,11.0μmol)を添加し、室温で1時間撹拌した。飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水と水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.5%トリエチルアミン含有酢酸エチル:ヘキサン=2:1(v/v))により精製し、化合物34(45mg,67%:scpBNA−Aアミダイトブロック)を白色泡状固体として得た。
【0277】
得られた化合物34の物性データを表33に示す。
【0278】
【表33】
【0279】
(実施例10:2’,4’−架橋型ヌクレオシドの合成(4):スピロシクロプロパンBNA−G(scpBNA−G)アミダイトブロックの合成)
【0280】
【化46】
【0281】
(1)化合物35の合成
【0282】
【化47】
【0283】
窒素気流下、実施例1で得られた化合物7(77mg,0.132mmol)の無水アセトニトリル(1.5mL)溶液に、N−イソブチリルグアニン(41mg,0.184mmol)およびN,O−ビス(トリメチルシリル)アセトアミド(97.0μL,0.395mmol)を80℃で添加し、20分間撹拌した。次いで、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリル(48.0μL,0.263mmol)を0℃で添加し、80℃で18時間撹拌した。反応終了後、飽和重曹水を0℃で添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン:メタノール=2:10:1(v/v/v)により精製し、化合物35(48mg,49%)を白色泡状固体として得た。
【0284】
得られた化合物35の物性データを表34に示す。
【0285】
【表34】
【0286】
(2)化合物36の合成
【0287】
【化48】
【0288】
化合物35(48mg,65.6mmol)のメタノール(1.5mL)溶液に、炭酸カリウム(27mg,0.197mmol)を添加し、0℃で1時間撹拌した。反応終了後、水を0℃で添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン=2:1(v/v))により精製し、化合物36(44mg,95%)を白色泡状固体として得た。
【0289】
得られた化合物36の物性データを表35に示す。
【0290】
【表35】
【0291】
(3)化合物37の合成
【0292】
【化49】
【0293】
化合物36(6.5g,9.23mmol)のジクロロメタン(100mL)溶液に、ジアセトキシヨードベンゼン(4.46g,13.8mmol)および2−ヒドロキシ−2−アザアダマンタン(71mg,0.462mmol,5mol%)を添加し、室温で7時間撹拌した。反応終了後、飽和チオ硫酸ナトリウム水溶液および飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、化合物37(7.0g)を黄色泡状固体として得た。この化合物37を精製することなく、直ちに次の反応に使用した。
【0294】
(4)化合物38の合成
【0295】
【化50】
【0296】
化合物37(7.0g)のメタノール−ジクロロメタン(90mL,1:2(v/v))溶液に、水素化ホウ素ナトリウム(489mg,12.9mmol)を添加し、0℃で1時間撹拌した。反応終了後、飽和塩化アンモニウム水溶液を添加し、酢酸エチルで抽出し、飽和食塩水と水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去した。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール=30:1(v/v))により精製し、化合物38(5.2g,80%,2工程、R:S=2:1)を黄色泡状固体として得た。得られた化合物38はジアステレオマーの分離が困難な混合物であったため、当該混合物のまま次の反応に使用した。
【0297】
(5)化合物39の合成
【0298】
【化51】
【0299】
窒素気流下、化合物38(300mg,0.43mmol)の無水ジクロロメタン(5mL)溶液に、4−ジメチルアミノピリジン(156mg,1.28mmol)およびトリフルオロメタンスルホン酸無水物(90μL,0.55mmol)を添加し、0℃で1時間撹拌した。反応終了後、飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出し、水と飽和食塩水とで洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥した後、溶媒を減圧留去し、化合物39(408mg)を黄色泡状固体として得た。この化合物39を精製することなく、直ちに次の反応に使用した。
【0300】
(6)化合物40の合成
【0301】
【化52】
【0302】
化合物39(408mg)のテトラヒドロフラン(4mL)溶液に、テトラブチルアンモニウムフルオリド(1Mテトラヒドロフラン溶液,1.28mL,1.28mmol)を添加し、室温で30分間撹拌した。反応終了後、溶媒を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン:メタノール=2:7:1)により精製し、化合物40(9mg,4%(2工程))を白色泡状固体として得た。
【0303】
得られた化合物40の物性データを表36に示す。
【0304】
【表36】
【0305】
(7)化合物41の合成
【0306】
【化53】
【0307】
化合物40の酢酸エチル溶液に、20%水酸化パラジウム/炭素(パラジウム20%)を添加し、水素気流下で5時間撹拌する。反応溶液を、ひだ折り濾紙でろ過した後、溶媒を減圧留去し、得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(クロロホルム:メタノール)により精製し、化合物41を適切な収率で得る。
【0308】
(8)化合物42の合成
【0309】
【化54】
【0310】
窒素気流下、化合物41の無水ピリジン溶液に、4,4’−ジメトキシクロリドを添加し、室温で19時間撹拌する。飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水と水とで洗浄する。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去する。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(酢酸エチル:ヘキサン)により精製し、化合物42を適切な収率で得る。
【0311】
(9)化合物43の合成
【0312】
【化55】
【0313】
窒素気流下、化合物42の無水アセトニトリル溶液に、N,N−ジイソプロピルエチルアミンおよび2−シアノエチル−N,N−ジイソプロピルホスホロクロリダートを添加し、室温で2時間撹拌する。飽和重曹水を添加し、酢酸エチルで抽出後、飽和食塩水と水とで洗浄する。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を減圧留去する。得られた粗成績体をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(0.5%トリエチルアミン含有酢酸エチル:ヘキサン)により精製し、化合物43(scpBNA−Gアミダイトブロック)を適切な収率で得る。
【産業上の利用可能性】
【0314】
本発明によれば、6’位にスピロシクロプロパン基を有する新規な2’,4’−架橋型ヌクレオシドおよびヌクレオチドが提供される。この2’,4’−架橋型人工ヌクレオチドを含むオリゴヌクレオチドは、公知の2’,4’−BNA/LNAに匹敵する一本鎖RNAに対する結合親和性と、LNAを上回るヌクレアーゼ耐性とを有する。本発明のオリゴヌクレオチドは、例えば、核酸医薬への素材として有用である。
図1
図2
図3
図4
図5
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]