特許第6233954号(P6233954)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6233954
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】スイッチング電源装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 3/155 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   H02M3/155 H
【請求項の数】2
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2013-137766(P2013-137766)
(22)【出願日】2013年7月1日
(65)【公開番号】特開2015-12741(P2015-12741A)
(43)【公開日】2015年1月19日
【審査請求日】2016年6月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083194
【弁理士】
【氏名又は名称】長尾 常明
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 正義
(72)【発明者】
【氏名】橋本 裕史
【審査官】 佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2006/0038547(US,A1)
【文献】 特開2012−257450(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0304307(US,A1)
【文献】 特開2012−243022(JP,A)
【文献】 特開2011−083160(JP,A)
【文献】 特開2013−094015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/00,3/00,7/00
H03K 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源からインダクタにエネルギーを蓄積するようオンしているパワートランジスタに直接流れる負荷電流を検出する電流検出手段を有し、該電流検出手段で検出された前記負荷電流の値に応じて前記パワートランジスタをオンさせる駆動電圧のレベルを設定するスイッチング電源装置において、
前記電流検出手段で検出した電流に比例した電流を生成する比例電流生成手段と、該比例電流生成手段で生成された電流に対応する電圧を前記パワートランジスタのオフ直前にサンプルホールドする基準電圧変更手段とを備え、該基準電圧変更手段でサンプルホールドされた電圧に対応して基準電圧が変更されて前記駆動電圧のレベルが決められるようにしたことを特徴とするスイッチング電源装置。
【請求項2】
請求項1に記載のスイッチング電源装置において、
前記基準電圧変更手段は、前記基準電圧を発生する抵抗素子に接続されたトランジスタに対して前記サンプルホールドされた電圧に対応する電流を流すことで前記基準電圧を変更することを特徴とするスイッチング電源装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パワートランジスタの効率を高めたスイッチング電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スイッチング電源装置は、パワートランジスタにPMOSトランジスタを使用する降圧型のものでは、図8に示すように構成される。10CはICで構成されるスイッチング電源回路本体であり、入力電圧VINの入力端子11、出力端子12、接地端子13、および帰還端子14を備える。15は制御回路であり、帰還端子14に入力する帰還電圧VFBに応じたPWM(パルス幅変調)信号を生成する。16はPchドライバ回路であり、制御回路15から入力するPWM信号に基づいてパワートランジスタであるPMOSトランジスタMP1をオン/オフ駆動する。17HはPchドライバ16に駆動電圧VDRVを供給するドライバレギュレータである。出力端子12にはダイオードD1のカソードとインダクタL1の一端が接続される。インダクタL1の他端には、出力コンデンサC1と出力電圧VOUT検出用の抵抗RB1,RB2が並列接続される。
【0003】
このスイッチング電源装置は、パワートランジスタMP1がオンしたときに、入力電圧VINによって流れる電流によりインダクタL1にエネルギーを蓄積するとともに出力コンデンサC1に電荷を蓄積する。また、パワートランジスタMP1がオフしたときに、インダクタL1に発生する逆起電力をダイオードD1で整流して出力コンデンサC1に蓄積する。これらを繰り返すことにより出力電圧VOUTを生成して、負荷に供給する。
【0004】
出力電圧VOUTは、抵抗RB1,RB2によって分圧された帰還電圧VFBに変換され、制御回路15に取り込まれる。制御回路15は、取り込んだ帰還電圧VFBと内部に設定した出力基準電圧(図示せず)との誤差をオペアンプによって増幅し、これによって得られた誤差電圧を発振器で生成される三角波電圧とコンパレータで比較してPWM信号を生成する。Pchドライバ16は、そのPWM信号を増幅してパワートランジスタMP1のオン/オフを駆動する。このようにしてパワートランジスタMP1のオン/オフがPWM信号によって制御されることで、出力電圧VOUTが前記した基準電圧に対応した一定電圧となるように制御される。
【0005】
ところで、スイッチング電源回路におけるパワートランジスタMP1のゲート損失PGは、
PG=QG・VGS
=CGS・VGS2・FS (1)
で表される(例えば、非特許文献1参照)。QGはゲート入力電荷(C)、CGSはゲート・ソース間容量(F)、VGSはゲート・ソース間電圧(V)、FSはスイッチング周波数(Hz)である。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】稲葉保著、「パワーMOSFET活用の基礎と実際」、41頁、CQ出版社、2010年2月1日発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
以上のように、パワートランジスタは、ゲート・ソース間電圧VGSの二乗に比例してゲート損失が増大し、スイッチング電源回路の負荷電流が少ないときの損失は顕著となる。
【0008】
本発明の目的は、負荷電流に応じてパワートランジスタを駆動する電圧のレベルを変化させることにより、ゲート損失を低減し、パワートランジスタの効率を大幅に改善できるようにしたスイッチング電源装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1にかかる発明のスイッチング電源装置は、電源からインダクタにエネルギーを蓄積するようオンしているパワートランジスタに直接流れる負荷電流を検出する電流検出手段を有し、該電流検出手段で検出された前記負荷電流の値に応じて前記パワートランジスタをオンさせる駆動電圧のレベルを設定するスイッチング電源装置において、前記電流検出手段で検出した電流に比例した電流を生成する比例電流生成手段と、該比例電流生成手段で生成された電流に対応する電圧を前記パワートランジスタのオフ直前にサンプルホールドする基準電圧変更手段とを備え、該基準電圧変更手段でサンプルホールドされた電圧に対応して基準電圧が変更されて前記駆動電圧のレベルが決められるようにしたことを特徴とする。
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載のスイッチング電源装置において、前記基準電圧変更手段は、前記基準電圧を発生する抵抗素子に接続されたトランジスタに対して前記サンプルホールドされた電流に対応する電流を流すことで前記基準電圧を変更することを特徴とする。

【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、負荷電流の大きさに応じてパワートランジスタの駆動電圧のレベルが変化するので、パワートランジスタの効率を改善できる。特に大容量スイッチング電源装置用のゲート入力電荷の大きなパワートランジスタを利用した場合に効果的である。また、PFM(パルス周波数変調)制御に切り替えるなど制御方法を変更することなくPWM制御のままで効率を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】パワートランジスタにPMOSトランジスタを使用した本発明の実施例1の降圧型のスイッチング電源装置の回路図である。
図2A】実施例1のスイッチング電源装置において電圧監視回路の部分を具体化したスイッチング電源装置の回路図である。
図2B】実施例1のスイッチング電源装置において電圧監視回路の部分を具体化した別の例のスイッチング電源装置の回路図である。
図3A】実施例1のスイッチング電源装置の電流検出回路と電流/電圧変換回路を具体化した回路図である。
図3B】実施例1のスイッチング電源装置の電流検出回路と電流/電圧変換回路を具体化した別の例の回路図である。
図4A】実施例1のスイッチング電源装置のドライバレギュレータを具体化した回路図である。
図4B】実施例1のスイッチング電源装置のドライバレギュレータを具体化した別の例の回路図である。
図4C】実施例1のスイッチング電源装置のドライバレギュレータを具体化した別の例の回路図である。
図4D】実施例1のスイッチング電源装置のドライバレギュレータを具体化した別の例の回路図である。
図5】パワートランジスタにPMOSトランジスタを使用した本発明の実施例2のスイッチング電源装置の回路図である。
図6】実施例2のスイッチング電源装置の電流監視回路とドライバレギュレータを具体化した回路図である。
図7A】NMOSトランジスタを使用した本発明の実施例3の昇圧型のスイッチング電源装置に適用するドライバレギュレータの具体的回路図である。
図7B】実施例3のスイッチング電源装置のドライバレギュレータの別の例の具体的回路図である。
図8】パワートランジスタにPMOSトランジスタを使用した従来の降圧型のスイッチング電源装置の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
<実施例1>
図1に本発明の実施例1の降圧型のスイッチング電源装置の構成を示す。図8で説明したものと同じもにには同じ符号を付けて詳しい説明は省略する。17はPchドライバ16に可変の駆動電圧VDRVを供給するためのドライバレギュレータである。このドライバレギュレータ17から出力する電圧VDRVの値は、パワートランジスタMP1に流れる負荷電流を検出する電流検出回路18によって検出された電流値を電流監視回路19によってモニタした結果に応じて設定される。
【0013】
これによって、負荷電流が大きくなれば電圧VDRVは低く制御され、パワートランジスタMP1のゲート・ソース間電圧VGSが大きくなる。逆に、負荷電流が小さくなれば電圧VDRVは高く制御され、パワートランジスタMP1のゲート・ソース間電圧VGSが小さくなる。このように、負荷電流に応じてパワートランジスタMP1のゲート・ソース間電圧VGSが制御されることで、そのパワートランジスタMP1のゲート損失が低減される。
【0014】
図2A図1の電流監視回路19を具体化した電流監視回路19Aを有するスイッチング電源装置の構成を示す。電流監視回路19Aは、電流検出回路18で検出された電流を電圧に変換する電流/電圧変換回路191と、その電流/電圧変換回路191の出力電圧V1を、互いに異なるn個(nは2以上の正の整数)の基準電圧Vref11〜Vref1n(Vref11<Vref12<・・・<Vref1n)と比較することで、入力する電圧V1の大きさを判定するウインドコンパレータ192と、そのウインドコンパレータ192のn個の出力信号をパワートランジスタMP1のオフ時間も制御回路15からのクロックCLKによって保持し、信号P1〜Pnとして出力するラッチ回路LT1〜LTnとを備える。
【0015】
この電圧監視回路19Aは、電流/電圧変換回路191の出力電圧V1が、例えばVref11≦V1<Vref12であれば、最下位のラッチLT1の出力P1が“H”になり、残りのラッチLT2〜LTnの出力P2〜Pnは“L”となる。また、Vref12≦V1<Vref13の範囲にあれば、2番目のラッチLT2が出力P2が“H”なり、残りのラッチLT1,LT3〜LTnの出力P1,P3〜Pnは“L”となる。つまり、V1<Vref11は、負荷電流が零として検出せず、Vref11以上を示した電圧V1に対応した1個のラッチのみが、パワートランジスタMP1がオフであっても出力を“H”にして保持する。これにより、ドライバレギュレータ17Aの出力する駆動電圧VDRVは、電圧監視回路19Aの出力の数nに応じて多値(n値)で可変される。
【0016】
図2B図1の電流監視回路19を具体化した別の例の電流監視回路19Bを有するスイッチング電源装置の構成を示す。図2Aの電圧監視回路19Aと異なるところは、ウインドコンパレータ192を、n個の個別のコンパレータCP1〜CPnに置き換えた点である。これによって、電圧監視回路19Bは、サーモメータ信号を出力する。例えばVref13≦V1<Vref14の範囲にあれば、コンパレータCP1〜CP3の出力が“H”となり、残りのコンパレータCP4〜CPnの出力が“L”となる。このサーモメータ信号はラッチ回路LT1〜LTnによってパワートランジスタMP1がオフであっても保持され、信号Q1〜Qnとして、ドライバレギュレータ17Bに入力する。これにより、ドライバレギュレータ17B(又は17C,17D)の出力する駆動電圧VDRVは、電圧監視回路19Bの出力の数nに応じて多値(n値)で可変される。
【0017】
図3Aに電流検出回路18と電流/電圧変換回路191の具体例を示す。電流検出回路18は、検出抵抗R1と、その検出抵抗R1を介して入力電圧VINがソースに印加する検出PMOSトランジスタMP2とで構成され、そのトランジスタMP2はパワートランジスタMP1とゲートおよびドレインが共通接続されている。
【0018】
また、電流/電圧変換回路191は、ソースに抵抗R2を介して入力電圧VINが印加し、ドレインが抵抗R3を介して接地に接続されたPMOSトランジスタMP3と、トランジスタMP2のソースの電圧V2とトランジスタMP3のソースの電圧V3の差分に応じてトランジスタMP3のゲートを制御するオペアンプOP1とで構成され、電圧V3が電圧V3に等しくなるようにトランジスタMP3に流れる電流が制御されることで、そのトランジスタMP3のドレインにパワートランジスタMP1に流れる負荷電流に比例した電圧V1が生成される。
【0019】
図3Bにパワートランジスタを内蔵しないスイッチング電源回路本体10Aに外付けされるパワートランジスタMP1Aを使用する場合の電流検出回路18Aと電流監視回路191の具体例を示す。ここでは、負荷電流を検出する電流検出回路18Aとして、そのパワートランジスタMP1Aのソースに接続した検出抵抗R4を使用し、そのトランジスタMP1Aのソースに生じる電圧V2’を電流検出端子20から取り込み、オペアンプOP1において電圧V3と比較することにより、図3Aと同様な制御により、トランジスタMP3のドレインにパワートランジスタMP1Aに流れる負荷電流に比例した電圧V1が生成される。なお、パワートランジスタMP1Aは、Pchドライバ16の出力側が接続される駆動端子21に、ゲートが接続される。
【0020】
図4Aにドライバレギュレータ17Aの具体的回路を示す。このドライバレギュレータ17Aは、n個の基準電圧Vref21〜Vref2n(Vref21<Vref22<・・・<Vref2n)の内から前記した図2Aの電流監視回路19Aから出力する信号P1〜Pnによって選択された1つの基準電圧が非反転入力端子に入力するオペアンプOP2と、そのオペアンプOP2の出力電圧に応じて抵抗R4の非接地側の電圧V4がオペアンプOP2の非反転端子の電圧と同じになるように制御されるNMOSトランジスタMN1と、そのトランジスタMN1のドレインと抵抗R5との共通接続点の電圧V5が非反転入力端子に入力されるオペアンプOP3と、抵抗R6とR7の共通接続点の電圧V6が電圧V5と同じになるように動作するPMOSトランジスタMP4と、そのトランジスタMP4のドレインと抵抗R8の共通接続点の電圧V7に応じてドレイン電流を流すMOSトランジスタMN2とを備える。Pchドライバ16に出力する駆動電圧VDRVは、トランジスタMN2のドレインから取り出される。
【0021】
ここで、抵抗R5に発生する電圧をVa(=VIN−V5)、抵抗R6,R7の直列回路に発生する電圧をVb(=VIN−VDRV)とすると、
Vb=Va×(1+R7/R6) (2)
で与えられる。また、電圧Vaは抵抗R5とそこに流れる電流I5によって発生し、
Va=R5×I5 (3)
となる。また、
I5=V4/R4 (4)
であるので、
Vb=R5×I5×(1+R7/R6)
=R5×(V4/R4)×(1+R7/R6) (5)
となる。よって、電圧Vb、つまり駆動電圧VDRVを変化させるには、電圧V4、抵抗R4〜R7を変化させればよい。図4Aは電圧V4を変化させる例、後記する図4Bは抵抗R4を変化させる例、図4Cは抵抗R5を変化させる例、図4Dは抵抗R6を変化させる例である。
【0022】
図4Aのドライバレギュレータ17Aでは、パワートランジスタMP1に流れる負荷電流が最大のときは、電流監視回路19Aの出力は信号Pnが“H”で、残りのP1〜Pn−1が“L”になるので、最も高い基準電圧Vref2nが選択される。これにより、電圧V4=Vref2nと最大となり、これに応じて電圧V5が最低値となり、Pchドライバ16の駆動電圧VDRVが最低値となる。この結果、パワートランジスタMP1をオンさせるときのゲート電圧VGが最低値となり、そのゲート・ソース間電圧VGSが最大値となる。このように、パワートランジスタMP1に流れる負荷電流が大きいときは、パワートランジスタMP1のゲート・ソース間電圧VGSが最大値となる。
【0023】
一方、パワートランジスタMP1に流れる負荷電流が最小のときは、電流監視回路19Aの出力は信号P1が“H”で、残りのP2〜Pnが“L”になるので、最も低い基準電圧Vref21が選択される。これにより、電圧V4=Vref21と最小となり、これに応じて電圧V5,V6が最大値になり、Pchドライバ16の駆動電圧VDRVが最大値となる。この結果、パワートランジスタMP1をオンさせるときのゲート電圧VGが最大値となり、そのゲート・ソース間電圧VGSが最小値となる。このように、パワートランジスタMP1に流れる負荷電流が小さいときは、パワートランジスタMP1のゲート・ソース間電圧VGSが小さくなり、ゲート損失が軽減される。
【0024】
図4Bに別の例のドライバレギュレータ17Bの具体的回路を示す。ここでは、図4Aのドライバレギュレータ17Aにおける抵抗R4をn個の抵抗R41〜R4nで構成し、それらの内、図2Bの電流監視回路19Bの出力信号Q1〜Qnの内の“H”になった信号に対応する抵抗が並列接続されるようにしている。オペアンプOP2に入力する基準電圧を図4Aのドライバレギュレータ17の最低の基準電圧Vref21に設定し、全部の抵抗R41〜R4nが並列接続されたときの合計抵抗値が図4Aの抵抗値R4に等しくなるよう設定しておく。
【0025】
これにより、パワートランジスタMP1に流れる負荷電流が最大のときは、電流監視回路19Bの出力信号Q1〜Qnがすべて“H”となるので、全部の抵抗R41〜R4nが並列接続され、電圧V4=Vref21となり、抵抗R5を流れる電流I5が最大になり、これにより電圧V5,V6は図4Aにおける最低値と同じになり、Pchドライバ16に供給する駆動電圧VDRVが最低値となり、パワートランジスタMP1のゲート・ソース間電圧VGSが大きな電圧に制御される。
【0026】
一方、パワートランジスタMP1に流れる負荷電流が最小のときは、電流監視回路19Bの出力信号Q1が“H”で残りが“L”となるので、抵抗R41のみが接続され、電圧V4=Vref21となるが、抵抗R5を流れる電流は最小となるので、電圧V5,V6が最高値となり、Pchドライバ16に供給する駆動電圧VDRVが最高値となり、パワートランジスタMP1のゲート・ソース間電圧VGSが小さな電圧に制御され、ゲート損失が軽減される。
【0027】
図4Cに別の例のドライバレギュレータ17Cの具体的回路を示す。ここでは、図4Aのドライバレギュレータ17Aにおける抵抗R5を抵抗R51〜R5nを直列接続して構成し、それらのいずれか1又は2以上を図2Bの電流監視回路19Bの出力信号Q1〜Qnの反転信号XQ1〜XQnによって短絡するようにしている。オペアンプOP2に入力する基準電圧として、図4Aのドライバレギュレータ17Aの最低の基準電圧Vref21に設定し、全部の抵抗R51〜R5nが直列接続されたときの合計抵抗値が、図4Aの抵抗値R5に等しくなるよう設定しておく。
【0028】
これにより、パワートランジスタMP1に流れる負荷電流が最大のときは、電流監視回路19Bの出力信号Q1〜Qnがすべて“H”となるので、その反転信号XQ1〜XQnはすべて“L”となり、全部の抵抗R51〜R5nが直列接続される。このため、電圧V5は最低値となり、これにより電圧V6も最低値となり、Pchドライバ16に供給する駆動電圧VDRVが最低値となり、パワートランジスタMP1のゲート・ソース間電圧VGSが大きな電圧に制御される。
【0029】
一方、パワートランジスタMP1に流れる負荷電流が最小のときは、電流監視回路19Bの出力信号Q1のみが“H”となり、残りが“L”となるので、反転信号XQ1が“L”で残りが“H”となり、抵抗R51が接続され、抵抗R52〜R5nが短絡される。このため、電圧V5は最高値となり、これにより電圧V6も最高値となり、Pchドライバ16に供給する駆動電圧VDRVが最高値となり、パワートランジスタMP1のゲート・ソース間電圧VGSが小さな電圧に制御され、ゲート損失が軽減される。
【0030】
図4Dに別の例のドライバレギュレータ17Dの具体的回路を示す。ここでは、図4Aのドライバレギュレータ17Aにおける抵抗R6を1個の抵抗R60とn個の抵抗R61〜R6nで構成し、それらを図2Bの電流監視回路19Bの出力信号Q1〜Qnによって並列接続するようにしている。オペアンプOP2に入力する基準電圧を図4のドライバレギュレータ17の最低の基準電圧Vref21に設定し、抵抗R60〜R6nが並列接続されたときの合計抵抗値が、図4Aの抵抗値R6に等しくなるよう設定しておく。
【0031】
これにより、パワートランジスタMP1に流れる負荷電流が最大のときは、電流監視回路19Bの出力信号Q1〜Qnがすべて“H”となるので、すべての抵抗R60〜R6nが接続され、最小抵抗値を示す。電圧V6は電圧V5と等しいため、Pchドライバ16に供給する駆動電圧VDRVが最低値となり、パワートランジスタMP1のゲート・ソース間電圧VGSが大きな電圧に制御される。
【0032】
一方、パワートランジスタMP1に流れる負荷電流が最小のときは、電流監視回路19Bの出力信号Q1が“H”を示し残りのQ2〜Qnが“L”を示すので、抵抗R60,R61が接続され、最大抵抗値を示す。電圧V6は電圧V5と等しいため、これによりPchドライバ16に供給する駆動電圧VDRVが最高値となり、パワートランジスタMP1のゲート・ソース間電圧VGSが小さな電圧に制御され、ゲート損失が軽減される。
【0033】
<実施例2>
図5に本発明の実施例2のスイッチング電源装置の構成を示す。10BはICで構成されるスイッチング電源装置本体である。以上説明した実図4A図4Dでは、ドライバレギュレータ17A〜17Dに出力する電圧VDRVを、n値に変更する例で説明したが、本実施例2では、ドライバレギュレータ17に出力する電圧VDRVを、リニアに変更する例である。ここでは、電流監視回路19を、負荷電流に比例する電流を生成する比例電流生成回路193と、その比例電流生成回路193の出力信号によって電圧V5を変更する基準電圧変更回路194とで構成している。電圧V5は基準電圧Vref2nに連動する電圧であるので、基準電圧(請求項では第2の基準電圧と記載)として扱うことができる。
【0034】
図6にその具体的回路を示す。比例電流生成回路193は、PMOSトランジスタMP5のソースの電圧V8が、電流検出回路18から出力する電圧V2と等しくなるように制御するオペアンプOP4、トランジスタMP5および抵抗R9で構成され、トランジスタMP5のドレインに電圧V2に比例した電流Iaを出力する。基準電圧変更回路194は、PMOSトランジスタMP6,MP7で構成されたカレントミラー回路と、そのトランジスタMP6のドレイン電圧をサンプルホールドしてトランジスタMP7のゲートに入力させるサンプルホールド回路195とで構成されている。そして、トランジスタMP5とMP6のドレインは電流源I1に共通接続されている。
【0035】
トランジスタMP5のドレイン電流Iaは、
Ia=(VIN−V2)/R9 (6)
によって与えられるので、トランジスタMP6のドレイン電流Ibは、
Ib=I1−Ia (7)
となる。電流Iaが電流I1を超えると、電流Ibは流れなくなる。また、パワートランジスタMP1がオフしたときは負荷電流が流れないので、電圧V2は発生せず電流Iaが流れなくなるが、サンプルホールド回路195によって直前のトランジスタMP6のドレイン電圧を保持しておくことにより、トランジスタMP7はドレイン電流Ibを継続して流す。
【0036】
よって、パワートランジスタMP1の負荷電流が大きくなるほど、電流Iaが大きくなるので、基準電圧変更回路194の出力電流Ibが少なくなり、電圧V5が低下する。このため、Pchドライバ16に出力される駆動電圧VDRVも低下し、パワートランジスタMP1のゲート・ソース間電圧VGSが大きな電圧に制御される。
【0037】
一方、パワートランジスタMP1の負荷電流が小さくなると、電流Iaが小さくなるので基準電圧変更回路194の出力電流Ibが大きくなり、電圧V5が上昇する。このため、Pchドライバ16に出力される電圧VDRVも上昇し、パワートランジスタMP1のゲート・ソース間電圧VGSが小さな電圧に制御され、ゲート損失が軽減される。
【0038】
<実施例3>
図7Aに本発明の実施例3のスイッチング電源装置の具体的なドライバレギュレータ17Fを示す。本実施例3は、昇圧型のスイッチング電源装置(具体的構成は省略する)に適用したものである。このスイッチング電源回路では、パワートランジスタとしてNMOSトランジスタを使用するので、ドライバレギュレータ17Fの出力電圧VDRVが高くなるとパワートランジスタのVGSが増大し、低くなると減少する。
【0039】
図7Aにおいて、このドライバレギュレータ17Fは、n個の基準電圧Vref31〜Vref3n(Vref31<Vref32<・・・<Vref3n)の内から、前記した図2Aの電流監視回路19Aから出力する信号P1〜Pnによって選択された1つの基準電圧が非反転入力端子に入力するオペアンプOP11と、そのオペアンプOP11の出力電圧に応じて抵抗R12,R13の共通接続点の電圧V11がオペアンプOP11の非反転端子の電圧と同じになるように制御されるNMOSトランジスタMN11,MN12と、抵抗R11とを備える。Nchドライバ(図示せず)に出力する駆動電圧VDRVは、トランジスタMN12のソースから取り出される。この電圧VDRVは、
VDRV=V11×(1+R12/R13) (8)
となる。
【0040】
これにより、NMOSのパワートランジスタに流れる負荷電流が最大のときは、図2Aの電流監視回路19Aの出力信号Pnが“H”で残りが“L”となるので、最大の基準電圧Vref3nが接続される。このため、電圧V11は最高値となり、これによりNchドライバに供給する駆動電圧VDRVが最高値となり、NMOSパワートランジスタのゲート・ソース間電圧VGSが大きな電圧に制御される。
【0041】
一方、NMOSのパワートランジスタに流れる負荷電流が最小のときは、電流監視回路19Aの出力信号P1が“H”で残りが“L”となるので、最低の基準電圧Vref31が接続される。このため、電圧V11は最低値となり、これによりNchドライバに供給する駆動電圧VDRVが最低値となり、NMOSパワートランジスタのゲート・ソース間電圧VGSが小さな電圧に制御され、ゲート損失が軽減される。
【0042】
図7Bに本発明の実施例3のスイッチング電源装置の別の例の具体的なドライバレギュレータ17Gを示す。本実施例3は、オペアンプOP11の基準電圧として図7Aの最大の基準電圧Vref3nが接続されている。そして、図7Aにおける抵抗R12を抵抗R120とn個の抵抗R121〜R12nを直列接続して構成し、そのいずれか1つ以上を前記した図2Bの電流監視回路19Bから出力する信号Q1〜Qnの反転信号XQ1〜XQnによって選択するようにしたものである。
【0043】
これにより、NMOSのパワートランジスタに流れる負荷電流が最大のときは、図2Bの電流監視回路19Bの出力信号Q1〜Qnのすべてが“H”となり、その反転信号XQ1〜XQnが“L”となるので、抵抗R120〜R12nのすべてが接続され、合計抵抗値が最大になる。このため、Nchドライバに出力する駆動電圧VDRVが最大値に設定される。よって、NMOSパワートランジスタのゲート・ソース間電圧VGSが大きな電圧に制御される。
【0044】
一方、NMOSのパワートランジスタに流れる負荷電流が最小のときは、図2の電流監視回路19Bの出力信号の反転信号XQ1が“L”で残りの反転信号XQ2〜XQnが“H”となるので、抵抗R120,R121が接続されるが残りの抵抗RR120,122〜R12nは短絡され、合計抵抗値が最小になる。このため、Nchドライバに供給する駆動電圧VDRVが最低値となり、NMOSパワートランジスタのゲート・ソース間電圧VGSが小さな電圧に制御され、ゲート損失が軽減される。
【符号の説明】
【0045】
10,10A,10B,10C:スイッチング電源装置、11:入力端子、12:出力端子、13:接地端子、14:帰還端子、15:制御回路、16:Pchドライバ、17,17A,17B、17C,17D,17E,17F,17G,17H:ドライバレギュレータ、18:電流検出回路、19,19A,19B:電流監視回路、20:電流検出端子、21:駆動端子
図1
図2A
図2B
図3A
図3B
図4A
図4B
図4C
図4D
図5
図6
図7A
図7B
図8