特許第6234026号(P6234026)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6234026-セパレータおよびリチウム二次電池 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234026
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】セパレータおよびリチウム二次電池
(51)【国際特許分類】
   H01M 2/16 20060101AFI20171113BHJP
   H01M 10/0566 20100101ALI20171113BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20171113BHJP
【FI】
   H01M2/16 L
   H01M2/16 P
   H01M2/16 M
   H01M10/0566
   H01M10/052
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2012-272114(P2012-272114)
(22)【出願日】2012年12月13日
(65)【公開番号】特開2013-197092(P2013-197092A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年12月3日
(31)【優先権主張番号】10-2012-0029427
(32)【優先日】2012年3月22日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】590002817
【氏名又は名称】三星エスディアイ株式会社
【氏名又は名称原語表記】SAMSUNG SDI Co., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(72)【発明者】
【氏名】呂 貞沃
(72)【発明者】
【氏名】金 寅
(72)【発明者】
【氏名】朴 杉秦
(72)【発明者】
【氏名】崔 亀錫
【審査官】 ▲高▼橋 真由
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−099574(JP,A)
【文献】 特表2014−510388(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0301774(US,A1)
【文献】 特表2009−507353(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0229768(US,A1)
【文献】 特開2009−224341(JP,A)
【文献】 特表2011−504287(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 2/16
H01M 10/052
H01M 10/0566
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
多孔性基材;および
無機化合物、バインダ重合体、および有機無機結合剤を含むコーティング層を含み、
前記有機無機結合剤を媒介として前記無機化合物と前記バインダ重合体とが連結しており、
前記コーティング層は、バインダ重合体100重量部に対比して前記無機化合物70重量部以下を含み、
前記バインダ重合体は、0.01μm〜0.5μmの粒径を有する粒子である、セパレータ。
【請求項2】
前記無機化合物は、1nm〜1000nmの平均粒径を有する粒子である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項3】
前記無機化合物の粒子は、前記バインダ重合体の表面に連続的または不連続的にコーティングされる、請求項2に記載のセパレータ。
【請求項4】
前記無機化合物は、金属酸化物、半金属酸化物、および金属フッ化物からなる群より選択された1つ以上を含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項5】
前記有機無機結合剤はシラン系化合物である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項6】
前記有機無機結合剤はシランカップリング剤の加水分解物である、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項7】
前記シランカップリング剤は、アルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、ビニル基、グリシドキシ基、および水酸基からなる群より選択された1つ以上を含む、請求項6に記載のセパレータ。
【請求項8】
前記シランカップリング剤は、ビニルアルキルアルコキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン、アミノアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルアルコキシシラン、ハロゲン化アルキルアルコキシシラン、ビニルハロシラン、アルキルアシルオキシシラン、およびこれらの組み合わせより選択された1つを含む、請求項6に記載のセパレータ。
【請求項9】
前記コーティング層は、バインダ重合体100重量部に対比して前記有機無機結合剤0.05〜5重量部を含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項10】
前記バインダ重合体は架橋性官能基を含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項11】
前記架橋性官能基は、ヒドロキシ基、グリシジル基、アミノ基、N−メチロール基、ビニル基、およびこれらの組み合わせより選択された1つを含む、請求項10に記載のセパレータ。
【請求項12】
前記バインダ重合体は、スチレン−ブタジエンゴム、アクリル化スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびジアセチルセルロースからなる群より選択された1つ以上を含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項13】
前記多孔性基材は、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル、およびこれらの組み合わせより選択された1つを含む、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項14】
前記セパレータのコーティング層は、前記多孔性基材の一面または両面に形成される、請求項1に記載のセパレータ。
【請求項15】
正極活物質を含む正極、
負極活物質を含む負極、
非水電解液、および
請求項1〜14のうちのいずれか一項に記載のセパレータを含む、リチウム二次電池。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータおよびリチウム二次電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の非水系リチウム二次電池は、正極と負極の間に電気絶縁性の多孔質フィルムからなるセパレータが介在しており、前記フィルムの空隙内にはリチウム塩が溶解した電解液が含浸している。このような非水系リチウム二次電池は、高容量および高エネルギー密度の優れた特性を持っている。しかし、充放電サイクルによって正極および負極が収縮と膨張を繰り返すようになれば、セパレータまたは電解液が正極および負極と反応して劣化し易くなり、電池内外では短絡が起こるようになり、電池温度が急激に上昇するという問題が発生するようになる。このように電池温度が上がれば、セパレータが溶融し、急激に収縮したり破損したりすることによって再び短絡してショートが起こる。
【0003】
これを防ぐために、従来のセパレータは、シャットダウン(shutdown)特性、取扱性、および価格面において優れたポリエチレンからなる多孔質フィルムが広く使用されてきた。ここで、シャットダウン(shutdown)とは、過充電や外部または内部短絡などによって電池温度が上がり、セパレータの一部が溶融して空隙が閉鎖され、電流が遮断されることをいう。
【0004】
また、非水系リチウム二次電池の安全性を改善するために、セパレータなどの電極材料の耐熱性向上が試みられているが、特に、電池内部でセパレータが急激に収縮したり破損したりする場合にも安全性を確保できるものを得るための試みが行われている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の一実施形態は、リチウム二次電池の安全性向上を目的とし、セパレータの耐熱性を改善させる方法を提供し、さらに、セパレータの製造原価を低減させてリチウム二次電池の製造原価を節減することができる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態において、多孔性基材、および無機化合物、バインダ重合体、および有機無機結合剤を含むコーティング層を含むセパレータを提供する。
【0007】
前記コーティング層は、バインダ重合体100重量部に対比して前記無機化合物約70重量部以下を含んでもよい。
【0008】
前記無機化合物は、約1nm〜約1000nmの平均粒径を有する粒子であってもよい。
【0009】
前記無機化合物の粒子は、前記バインダ重合体の表面に連続的または不連続的にコーティングされてもよい。
【0010】
前記無機化合物は、金属酸化物、半金属酸化物、および金属フッ化物からなる群より選択された1つ以上を含んでもよい。
【0011】
前記有機無機結合剤は、シラン系化合物であってもよい。
【0012】
前記有機無機結合剤は、シランカップリング剤の加水分解物であってもよい。
【0013】
前記シランカップリング剤は、アルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、ビニル基、グリシドキシ基、および水酸基からなる群より選択された1つ以上を含んでもよい。
【0014】
前記シランカップリング剤は、ビニルアルキルアルコキシシラン、エポキシアルキルアルコキシシラン、アミノアルキルアルコキシシラン、メルカプトアルキルアルコキシシルラン、ハロゲン化アルキルアルコキシシラン、ビニルハロシラン、アルキルアシルオキシシラン、およびこれらの組み合わせより選択された1つを含んでもよい。
【0015】
前記コーティング層は、バインダ重合体100重量部に対比して前記有機無機結合剤約0.05〜約5重量部を含んでもよい。
【0016】
前記バインダ重合体は、架橋性官能基を含んでもよい。
【0017】
前記架橋性官能基は、ヒドロキシ基、グリシジル基、アミノ基、N−メチロール基、ビニル基、およびこれらの組み合わせより選択された1つを含んでもよい。
【0018】
前記バインダ重合体は、スチレン−ブタジエンゴム、アクリル化スチレン−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエンゴム、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム、アクリルゴム、ブチルゴム、フッ素ゴム、ポリテトラフルオロエチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエピクロロヒドリン、ポリホスファゼン、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、ポリスチレン、エチレンプロピレンジエン共重合体、ポリビニルピリジン、クロロスルホン化ポリエチレン、ラテックス、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびジアセチルセルロースからなる群より選択された1つ以上を含んでもよい。
【0019】
前記バインダ重合体は、約0.01μm〜約0.5μmの粒径を有する粒子であってもよい。
【0020】
前記コーティング層は、前記バインダ重合体のエマルジョン溶液に前記無機化合物の粒子および前記有機無機結合剤を混合した組成物を塗布して形成されてもよい。
【0021】
前記多孔性基材は、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリアクリロニトリル、およびこれらの組み合わせより選択された1つを含んでもよい。
【0022】
前記セパレータのコーティング層は、前記多孔性基材の一面または両面に形成されてもよい。
【0023】
本発明の他の実施形態において、正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、非水電解液、および前記セパレータを含むリチウム二次電池を提供する。
【発明の効果】
【0024】
上述したリチウム二次電池は、安全性特性に優れており、製造原価を節減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の一実施形態に係るリチウム二次電池構造を概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の実施形態を詳しく説明する。ただし、これは例示として提示されるものに過ぎず、これによって本発明が制限されることはなく、本発明は添付する請求項の範囲によってのみ定義される。
【0027】
本発明の一実施形態において、多孔性基材、および無機化合物、バインダ重合体、および有機無機結合剤を含むコーティング層を含むセパレータを提供する。
【0028】
前記有機無機結合剤は、前記無機化合物およびバインダ重合体と化学的結合を形成してもよく、前記無機化合物と有機化合物を粒子状態で複合化処理してもよい。このように、前記無機化合物とバインダ重合体が前記有機無機結合剤によって複合化処理されれば、前記バインダ重合体の表面に前記無機化合物のコーティング層が形成されるようになる。前記無機化合物の表面コーティング層は、連続的であってもよく、不連続的であってもよい。
【0029】
前記無機化合物は、表面にヒドロキシ基などが存在する親水性(hydrophilic)粒子であってもよい。このような親水性粒子としての無機化合物は、バインダ重合体または有機無機結合剤に対する反応性がさらに高まる。また、前記無機化合物は、非晶質状(amorphous phase)を有してもよい。
【0030】
前記無機化合物は、金属酸化物および半金属酸化物からなる群より選択された1つ以上であってもよい。例えば、前記無機化合物は、シリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、およびフッ化マグネシウムからなる群より選択された1つ以上であってもよい。また、上述した無機化合物でなくても、リチウム二次電池内で電気化学的に安定したものであれば使用してもよい。
【0031】
前記無機化合物は、上述したように粒子形態で前記バインダ重合体と混合してもよく、前記無機化合物の粒子は、例えば、平均粒径が約1nm〜約1000nmであるものを使用してもよい。他の例としては、前記無機化合物の平均粒径が約1nm〜約100nmであってもよい。さらに他の例としては、前記無機化合物の平均粒径が約10nm〜約100nmであってもよい。上述した範囲の大きさを有する無機化合物を使用することにより、前記セパレータコーティング層に適切な強度を付与することができる。
【0032】
前記無機化合物は、コロイド状態で使用してもよい。前記コロイド状態の無機化合物は酸性、中性、またはアルカリ性を有してもよいが、例えば、pH約8.5〜約10.5であってもよい。上述したpH範囲内のコロイド溶液に含まれる無機化合物粒子を使用することにより、無機化合物の粒子間の凝集およびゲル化を防ぎながらも、優れた保存安定性を維持することができる。
【0033】
前記コーティング層は、前記バインダ重合体100重量部に対比して前記無機化合物を約70重量部以下を含んでもよく、具体的に約0.2〜約50重量部を含んでもよく、さらに具体的に約0.6〜約30重量部以下を含んでもよい。前記コーティング層は無機化合物を含み、前記コーティング層を形成したセパレータに適切な強度と耐熱性を付与するようになり、このために前記セパレータを含むリチウム二次電池の安全性を向上させる。また、前記無機化合物は、有機無機結合剤を媒介として前記バインダ重合体の表面に連結し、比較的に均一に存在し、前記セパレータのコーティング層内に均等に安定して分散して存在するため、高い含有量で使用されないという利点がある。
【0034】
前記有機無機結合剤は、シラン系化合物であってもよい。前記有機無機結合剤は、シランカップリング剤の加水分解物であってもよい。前記シランカップリング剤は、加水分解性作用基を有する有機シリコン化合物であってもよい。この有機シリコン化合物は有機結合性作用基をさらに有してもよい。前記加水分解性作用基は、加水分解後にシリカなどの無機粒子と結合可能な作用基である。例えば、前記シランカップリング剤は、アルコキシ基、ハロゲン基、アミノ基、ビニル基、グリシドキシ基、および水酸基からなる群より選択された1つ以上の加水分解性作用基を含んでもよく、イミダゾール基、アミン基、エポキシ基、ビニル基、メタクレゾール基の有機結合性作用基を含んでもよい。
【0035】
前記有機無機結合剤の具体的な例としては、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリルオキシシプロピルトリメトキシシランなどのビニルアルキルアルコキシシラン、γ−グリシジルシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシジルシプロピルメチルジエトキシシランなどのエポキシアルキルアルコキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシランなどのアミノアルキルアルコキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトアルキルアルコキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどのハロゲン化アルキルアルコキシシラン、ビニルトリクロロシランなどのビニルハロシラン、メチルトリアセトキシシランなどのアルキルアシルオキシシランなどが挙げられてもよいが、必ずしもこれに限定されることはなく、当該技術分野で使用することができるシランカップリング剤であればすべて可能である。
【0036】
前記有機無機結合剤は、有機結合性官能基も含む。前記有機結合性官能基は、後述するバインダ重合体に含まれる架橋性官能基と反応性を有する。
【0037】
前記有機無機結合剤は、有機結合性官能基を通じて前記バインダ重合体と結合してもよい。上述したように、前記有機無機結合剤を媒介として前記無機化合物と前記バインダ重合体が有機的に連結して前記コーティング層を形成するようになる。その結果、前記コーティング層は、無機化合物の含有量が少ない場合にも耐熱性が優れるようになり、前記コーティング層表面に露出したバインダ重合体の表面積が増加して電極極板との接着性を向上させることができる。前記有機無機結合剤は、前記バインダ重合体100重量部に対比して前記有機無機結合剤を約0.05〜5重量部含んでもよく、具体的に約0.3〜2重量部含んでもよい。前記有機無機結合剤の含有量が0.05重量部未満の場合、前記バインダ重合体と無機化合物の結合が不十分となり、十分な耐熱性を得ることができない。また、前記有機無機結合剤の含有量が5重量部以上である場合、未反応の有機無機結合剤が多量に残存し、リチウム二次電池の特性を低下させるようになる。前記コーティング層は上述した含有量範囲で有機無機結合剤を含み、上述したように無機化合物とバインダ重合体を適切に結合して上述した利点を実現することができ、さらに、前記コーティング層を形成したセパレータの耐熱性を向上させ、前記コーティング層を形成したセパレータを含むリチウム二次電池の安全性を改善することができる。前記バインダ重合体は特に限定されることはないが、その具体的な例としては、アクリル系重合体、ジエン系重合体、スチレン系重合体などの多様な重合体が挙げられてもよい。
【0038】
前記バインダ重合体を得るために利用する重合性単量体は、架橋結合官能基を有する重合性単量体であってもよく、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸エチル、2−エチルヘキシル(メタ)アクリル酸、ヒドロキシエチルアクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸アルキルエステル、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリルなどのシアノ基含有エチレン性不飽和単量体、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、クロロプレンなどの共役ジエン単量体、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸などのエチレン性不飽和カルボン酸およびその塩、スチレン、アルキルスチレン、ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体、フッ素エチルビニルエーテルなどのフッ素アルキルビニルエーテル、ビニルピリジン、ビニルノルボネン、ジシクロペンタジエン、1,4−ヘキサジエンなどの非共役ジエン単量体、エチレン、プロピレンなどのα−オレフィン、(メタ)アクリルアミドなどのエチレン性不飽和アミド単量体、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸などのスルホン酸系不飽和単量体などが挙げられてもよい。
【0039】
また、前記架橋性官能基を有する重合性単量体を、前記バインダ重合体を得るために使用する重合性単量体全体中の5重量%以下、例えば、2重量%以下の含有量範囲で含んでもよい。前記架橋性官能基は、前記バインダ重合体を架橋するときに架橋点となる官能基であり、例えば、水酸基、グリシジル基、アミノ基、N−メチロール基、ビニル基などであってもよい。前記架橋性官能基を有する重合性単量体の具体的な例としては、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルなどのエチレン性不飽和カルボン酸のヒドロキシエステル、グリシジル(メタ)アクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸などのグリシジルエステル、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのエチレン性不飽和カルボン酸のアミノエステル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミドなどのメチロール基含有エチレン性不飽和アミド、エチレンジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼンなどの2以上のビニル基を有する単量体などが挙げられてもよい。
【0040】
前記架橋性官能基は、上述したように前記有機無機結合剤の有機結合性官能基と反応して化学結合を形成してもよい。
【0041】
前記バインダ重合体は、公知された乳化重合、溶液重合などの製造方法によって得られてもよい。重合において、重合温度、重合時の圧力、重合性単量体などの添加方法、使用する添加剤(重合開始剤、分子量調整剤、pH調整剤など)は、特に限定されることはない。
【0042】
前記バインダ重合体の製造時、例えば、重合開始剤としては、過硫酸塩などの水溶性開始剤、過酸化ベンゾイルなどの油溶性開始剤などを使用してもよい。例えば、分子量調整剤としては、t−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタンなどのメルカプタン類、α−メチルスチレンダイマ、ジメチルキサンテンジスルファイド、ジイソプロピルキサンテンジスルファイドなどのスルファイド類、2−メチル3−ブテンニトリル、3−ペンテンニトリルなどのニトリル化合物などが挙げられてもよく、これらは単独または2種以上で使用してもよい。例えば、乳化剤としては、陰イオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などを単独または併用して使用してもよい。乳化剤の例としては、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムなどが挙げられてもよいが、これに限定されることはない。また、反応性界面活性剤、保護コロイドなどを使用してもよい。
【0043】
前記バインダ重合体は、例えば、ガラス転移温度が約−50〜60℃であってもよく、具体的に約−40〜20℃であってもよい。
【0044】
前記バインダ重合体は、その形態によって限定されることはないが、例えば、前記バインダ重合体のエマルジョンを前記コーティング層を形成する組成物に添加して使用することにより、均一なコーティング層を得ることができるため適合する。すなわち、前記バインダ重合体のエマルジョン溶液に前記無機化合物の粒子および前記有機無機結合剤を混合した組成物を前記コーティング層形成用組成物として製造した後、これをセパレータ基材に塗布してコーティング層を形成してもよい。塗布工程を実施した後、乾燥工程をさらに実施することができ、その乾燥工程は60〜80℃で10〜20分間実施することができる。
【0045】
前記バインダ重合体のエマルジョンは、重合体の粒子直径が約0.05μm〜約0.5μm、具体的に、約0.08μm〜約0.2μmであってもよい。前記バインダ重合体のエマルジョンが上述した範囲の大きさの粒子を使用することによって適切な粘度を有するようになり、さらに、これから製造されたコーティング層を有するセパレータを含むリチウム二次電池の安全性特性を改善することができる。
【0046】
また、前記バインダ重合体のエマルジョンは、エマルジョンの安定性を維持するために、そのpHが約7〜約10.5であってもよい。pH調整剤としては、例えば、アンモニア、アルカリ金属水酸化物(水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム)などを使用してもよい。
【0047】
前記バインダ重合体のエマルジョンは、公知された乳化重合法または転相法によって得られてもよい。このような乳化重合法および転相法の製造条件は、特に限定されることはない。
【0048】
バインダ重合体、無機化合物、および有機無機結合剤を含む前記コーティング層形成用組成物は、その製造方法が特に限定されることはなく、公知された方法によって製造されてもよい。例えば、バインダ重合体に無機化合物を混合分散した後、有機無機結合剤を混合分散する方法、バインダ重合体を製造するときにバインダ重合性単量体と共に有機無機結合剤を添加して重合し、ここに無機化合物を混合分散する方法などによって得られてもよい。前記混合分散する方法は特に限定されることはなく、例えば、ヘンシェルミキサなどで混練する方法などがある。また、バインダ重合体がエマルジョンである場合は、撹拌機などで攪拌する方法などを利用してもよい。
【0049】
前記コーティング層形成用組成物は、各組成物のエマルジョンとして利用することが、電極スラリーを調製するときの取り扱いが便利となるため好ましい。
【0050】
前記セパレータのコーティング層は、前記多孔性基材の一面または両面に形成されてもよい。
【0051】
前記多孔性基材は、ガラス繊維、ポリエステル、テフロン(登録商標)、ポリオレフィン、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、およびこれらの組み合わせより選択された1つを含む多孔性基材を含んでもよい。例えば、前記基材は、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィンを含み、2層以上の多層膜が使用されてもよく、ポリエチレン/ポリプロピレン2層セパレータ、ポリエチレン/ポリプロピレン/ポリエチレン3層セパレータ、ポリプロピレン/ポリエチレン/ポリプロピレン3層セパレータなどのような混合多層膜が使用されてもよい。前記セパレータは、容量側面において不利である比較的に厚い多層膜基材を使用せず、断層膜基材を使用しながらも優れた耐熱性を実現することができる。
【0052】
セパレータの全体の厚さは、目標とする電池の容量に応じて決定してもよい。例えば、セパレータの厚さは約10〜約30μmであってもよい。コーティング層の厚さは、一面を基準として0.1〜5μmであってもよい。コーティング層の厚さが上述した範囲よりも小さいときには、十分な耐熱性が得られない。また、コーティング層の厚さが上述した範囲よりも大きいときには、コーティング層がセパレータの全体厚さが増加し、電池の容量が減少する。
【0053】
本発明の他の実施形態において、正極活物質を含む正極、負極活物質を含む負極、非水電解液、および上述したセパレータを含むリチウム二次電池が提供される。
【0054】
前記リチウム二次電池は、使用するセパレータと電解質の種類に応じてリチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、およびリチウムポリマー電池に分類され、形態に応じて円筒形、角型、コイン型、パウチ型などに分類されてもよく、サイズに応じてバルクタイプと薄膜タイプに分けられてもよい。これらの電池の構造と製造方法は、当分野に広く知られているため、詳細な説明は省略する。前記セパレータは、バインダ高分子を含むコーティング層を使用して結着力が向上したものであるため、特に、ラミネートフィルムなどの柔軟な包装材が利用されるパウチ型電池において、電極とセパレータの間をさらに安定的に結着させ、電極とセパレータの脱着による間隔発生を防ぎ、セパレータの位置を固定することができる。
【0055】
図1は、一実施形態に係るリチウム二次電池の分解斜視図である。図1を参照すれば、前記リチウム二次電池100は円筒形であり、負極112、正極114、および前記負極112と正極114の間に配置されたセパレータ113、前記負極112、正極114、およびセパレータ113に含浸された電解質(図示せず)、電池容器120、および前記電池容器120を封入する封入部材140を主な部分として構成している。このようなリチウム二次電池100は、負極112、セパレータ113、および正極114を順に積層した後、スピロール状に巻き取られた状態で電池容器120に収納して構成される。
【0056】
前記負極は集電体および前記集電体上に形成された負極活物質層を含み、前記負極活物質層は負極活物質を含む。
【0057】
前記負極活物質としては、リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質、リチウム金属、リチウム金属の合金、リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質、または遷移金属酸化物を含む。
【0058】
前記リチウムイオンを可逆的に挿入/脱離することができる物質としては炭素物質であり、リチウムイオン二次電池で一般的に使用される炭素系負極活物質はいずれのものを使用してもよいが、その代表的な例としては、結晶質炭素、非晶質炭素、またはこれらの組み合わせを使用してもよい。前記結晶質炭素の例としては、無定形、板状、鱗片状(flake)、球形、または繊維状の天然黒鉛または人造黒鉛のような黒鉛が挙げられてもよく、前記非晶質炭素の例としては、ソフトカーボン(soft carbon)またはハードカーボン(hard carbon)、メソフェーズピッチ炭化物、焼成されたコークスなどが挙げられてもよい。
【0059】
前記リチウム金属の合金としては、リチウムとNa、K、Rb、Cs、Fr、Be、Mg、Ca、Sr、Si、Sb、Pb、In、Zn、Ba、Ra、Ge、Al、またはSnの金属との合金が使用されてもよい。
【0060】
前記リチウムをドープおよび脱ドープすることができる物質としては、Si、SiO(0<x<2)、Si−C複合体、Si−Q合金(前記Qはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族〜16族元素、遷移金属、希土類元素、またはこれらの組み合わせであり、Siではない)、Sn、SnO、Sn−C複合体、Sn−R(前記Rはアルカリ金属、アルカリ土類金属、13族〜16族元素、遷移金属、希土類元素、またはこれらの組み合わせであり、Snではない)などが挙げられてもよい。前記QおよびRの具体的な元素としては、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、Rf、V、Nb、Ta、Db、Cr、Mo、W、Sg、Tc、Re、Bh、Fe、Pb、Ru、Os、Hs、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、B、Al、Ga、Sn、In、Ti、Ge、P、As、Sb、Bi、S、Se、Te、Po、またはこれらの組み合わせが挙げられてもよい。
【0061】
前記遷移金属酸化物としては、バナジウム酸化物、リチウムバナジウム酸化物などが挙げられてもよい。
【0062】
前記負極活物質層もバインダを含み、選択的に導電材をさらに含んでもよい。
【0063】
前記バインダは、負極活物質粒子を互いに適切に付着させ、さらに負極活物質を電流集電体に適切に付着させる役割を行う。
【0064】
前記バインダとしては、非水溶性バインダ、水溶性バインダ、またはこれらの組み合わせを使用してもよい。
【0065】
前記非水溶性バインダとしては、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化したポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアミドイミド、ポリイミド、またはこれらの組み合わせが挙げられてもよい。
【0066】
前記水溶性バインダとしては、スチレン−ブタジエンゴム、アクリル化スチレン−ブタジエンゴム、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸ナトリウム、プロピレンと炭素数が2〜8のオレフィン共重合体、(メタ)アクリル酸と(メタ)アクリル酸アルキルエステルの共重合体、またはこれらの組み合わせが挙げられてもよい。
【0067】
前記負極バインダとして水溶性バインダを使用する場合、粘性を付与することができるセルロース系化合物をさらに含んでもよい。このセルロース系化合物としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、またはこれらのアルカリ金属塩などを1種以上混合して使用してもよい。前記アルカリ金属としては、Na、K、またはLiを使用してもよい。このようなセルロース系化合物の使用含有量は、負極活物質100重量部に対して0.1〜3重量部であってもよい。
【0068】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において化学変化を起こさずに電子伝導性材料であればいずれのものでも使用が可能であるが、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維などの炭素系物質、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末または金属繊維などの金属系物質、ポリフェニレン誘導体などの導電性ポリマー、またはこれらの混合物を含む導電性材料を使用してもよい。
【0069】
前記集電体としては、銅箔、ニッケル箔、ステレンス鋼箔、チタニウム箔、ニッケル発泡体(foam)、銅発泡体、伝導性金属がコーティングされたポリマー基材、またはこれらの組み合わせを使用してもよい。
【0070】
前記正極は、電流集電体およびこの電流集電体に形成される正極活物質層を含む。
【0071】
前記正極活物質としては、リチウムの可逆的な挿入および脱離が可能な化合物(リチエイテッドインターカレーション化合物)を使用してもよい。具体的には、コバルト、マンガン、ニッケル、またはこれらの組み合わせの金属とリチウムとの複合酸化物のうちの1種以上を使用してもよい。その具体的な例としては、下記の化学式のうちのいずれか1つで表現される化合物を使用してもよい。Li1−b(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5)、Li1−b2−c(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05)、LiE2−b4−c(0≦b≦0.5、0≦c≦0.05)、LiNi1−b−cCoα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2)、LiNi1−b−cCo2−αα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2)、LiNi1−b−cCo2−α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2)、LiNi1−b−cMnα(0.90≦a≦1.8、≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α≦2)、LiNi1−b−cMn2−αα(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2)、LiNi1−b−cMn2−α(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.5、0≦c≦0.05、0<α<2)、LiNi(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.90≦c≦0.5、0.001≦d≦0.1)、LiNiCoMn(0.90≦a≦1.8、0≦b≦0.90≦c≦0.5、0≦d≦0.5、0.001≦e≦0.1)、LiNiG(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1)、LiCoG(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1)、LiMnG(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1)、LiMn(0.90≦a≦1.8、0.001≦b≦0.1)、QO、QS、LiQS、V、LiV、LiTO、LiNiVO、Li(3−f)(PO(0≦f≦2)、Li(3−f)Fe(PO(0≦f≦2)、およびLiFePO
【0072】
前記化学式において、AはNi、Co、Mn、またはこれらの組み合わせであり、RはAl、Ni、Co、Mn、Cr、Fe、Mg、Sr、V、希土類元素、またはこれらの組み合わせであり、DはO、F、S、P、またはこれらの組み合わせであり、EはCo、Mn、またはこれらの組み合わせであり、ZはF、S、P、またはこれらの組み合わせであり、GはAl、Cr、Mn、Fe、Mg、La、Ce、Sr、V、またはこれらの組み合わせであり、QはTi、Mo、Mn、またはこれらの組み合わせであり、TはCr、V、Fe、Sc、Y、またはこれらの組み合わせであり、JはV、Cr、Mn、Co、Ni、Cu、またはこれらの組み合わせである。
【0073】
もちろん、この化合物の表面にコーティング層を有するものを使用してもよく、または前記化合物とコーティング層を有する化合物を混合して使用してもよい。前記コーティング層はコーティング元素化合物であり、コーティング元素のオキシド、コーティング元素のヒドロキシド、コーティング元素のオキシヒドロキシド、コーティング元素のオキシカーボネート、またはコーティング元素のヒドロキシカーボネートを含んでもよい。これらのコーティング層をなす化合物は、非晶質または結晶質であってもよい。前記コーティング層に含まれるコーティング元素としては、Mg、Al、Co、K、Na、Ca、Si、Ti、V、Sn、Ge、Ga、B、As、Zr、またはこれらの混合物を使用してもよい。コーティング層形成工程は、前記化合物にこのような元素を使用し、正極活物質の物性に悪影響を与えない方法(例えば、スプレーコーティングや浸漬法)などによってコーティングすることができればいかなるコーティング方法を使用しても問題なく、これについては当該分野に従事する者が理解できる内容であるため、詳しい説明は省略する。
【0074】
前記正極活物質層も、バインダおよび導電材を含む。
【0075】
前記バインダは、正極活物質粒子を互いに適切に付着させ、さらに正極活物質を電流集電体に適切に付着させる役割を行うが、その代表的な例としては、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ジアセチルセルロース、ポリ塩化ビニル、カルボキシル化したポリ塩化ビニル、ポリビニルフルオライド、エチレンオキシドを含むポリマー、ポリビニルピロリドン、ポリウレタン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、ポリエチレン、ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンゴム、アクリル化スチレン−ブタジエンゴム、エポキシ樹脂、ナイロンなどを使用してもよいが、これに限定されることはない。
【0076】
前記導電材は、電極に導電性を付与するために使用されるものであり、構成される電池において化学変化を起こさずに電子伝導性材料であればいずれのものでも使用が可能であるが、その例として、天然黒鉛、人造黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック、炭素繊維、銅、ニッケル、アルミニウム、銀などの金属粉末、金属繊維などを使用してもよく、さらに、ポリフェニレン誘導体などの導電性材料を1種または1種以上混合して使用してもよい。
【0077】
前記電流集電体としてはAlを使用してもよいが、これに限定されることはない。
【0078】
前記負極と前記正極はそれぞれ、活物質、導電材、および結着剤を溶媒中で混合して活物質組成物を製造し、この組成物を電流集電体に塗布して製造する。このような電極製造方法は、当該分野に広く知られた内容であるため、本明細書において詳細な説明は省略する。前記溶媒としてはN−メチルピロリドンなどを使用してもよいが、これに限定されることはない。負極に水溶性バインダを使用する場合には、溶媒として水を使用してもよい。
【0079】
前記電解質は、非水性有機溶媒とリチウム塩を含む。
【0080】
前記非水性有機溶媒は、電池の電気化学的反応に関与するイオンが移動することができる媒質役割を行う。
【0081】
前記非水性有機溶媒としては、カーボネート系、エステル系、エーテル系、ケトン系、アルコール系、または非プロトン性溶媒を使用してもよい。前記カーボネート系溶媒としては、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)などが使用されてもよく、前記エステル系溶媒としては、メチルアセテート、エチルアセテート、n−プロピルアセテート、1,1−ジメチルエチルアセテート、メチルプロピオン酸塩、エチルプロピオン酸塩、γ−ブチロラクトン、デカノライド(decanolide)、バレロラクトン、メバルロノラクトン(mevalonolactone)、カプロラクトン(caprolactone)などが使用されてもよい。前記エーテル系溶媒としては、ジブチルエーテル、テトラグライム、ジグライム、ジメトキシエタン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロフランなどが使用されてもよく、前記ケトン系溶媒としてはシクロヘキサノンなどが使用されてもよい。また、前記アルコール系溶媒としては、エチルアルコール、イソプロピルアルコールなどが使用されてもよく、前記非プロトン性溶媒としては、R−CN(RはC2〜C20の直鎖状、分枝状、または環構造の炭化水素基であり、二重結合芳香環またはエーテル結合を含んでもよい)などのニトリル類ジメチルホルムアミドなどのアミド類、1,3−ジオキソランなどのジオキソラン類スルホラン(sulfolane)類などが使用されてもよい。
【0082】
前記非水性有機溶媒は、単独または1つ以上を混合して使用してもよく、1つ以上を混合して使用する場合の混合比率は、目的とする電池性能に応じて適切に調節してもよいが、これは当該分野に従事する者であれば広く理解できるであろう。
【0083】
また、前記カーボネート系溶媒の場合、環状(cyclic)カーボネートと鎖状(chain)カーボネートを混合して使用することが好ましい。この場合、環状カーボネートと鎖状カーボネートを約1:1〜約1:9の体積比で混合して使用することが、電解液の性能が優れて現れる。
【0084】
前記非水性有機溶媒は、前記カーボネート系溶媒に前記芳香族炭化水素系有機溶媒をさらに含んでもよい。このとき、前記カーボネート系溶媒と前記芳香族炭化水素系有機溶媒は、約1:1〜約30.1の体積比で混合してもよい。
【0085】
前記芳香族炭化水素系有機溶媒としては、下記化学式(1)の芳香族炭化水素系化合物が使用されてもよい。
【0086】
【化1】
【0087】
前記化学式(1)において、R〜Rはそれぞれ独立的に、水素、ハロゲン、C1〜C10のアルキル基、C1〜C10のハロアルキル基、またはこれらの組み合わせである。
前記芳香族炭化水素系有機溶媒は、ベンゼン、フルオロベンゼン、1,2−ジフルオロベンゼン、1,3−ジフルオロベンゼン、1,4−ジフルオロベンゼン、1,2,3−トリフルオロベンゼン、1,2,4−トリフルオロベンゼン、クロロベンゼン、1,2−ジクロロベンゼン、1,3−ジクロロベンゼン、1,4−ジクロロベンゼン、1,2,3−トリクロロベンゼン、1,2,4−トリクロロベンゼン、アイオドベンゼン、1,2−ジアイオドベンゼン、1,3−ジアイオドベンゼン、1,4−ジアイオドベンゼン、1,2,3−トリアイオドベンゼン、1,2,4−トリアイオドベンゼン、トルエン、フルオロトルエン、1,2−ジフルオロトルエン、1,3−ジフルオロトルエン、1,4−ジフルオロトルエン、1,2,3−トリフルオロトルエン、1,2,4−トリフルオロトルエン、クロロトルエン、1,2−ジクロロトルエン、1,3−ジクロロトルエン、1,4−ジクロロトルエン、1,2,3−トリクロロトルエン、1,2,4−トリクロロトルエン、アイオドトルエン、1,2−ジアイオドトルエン、1,3−ジアイオドトルエン、1,4−ジアイオドトルエン、1,2,3−トリアイオドトルエン、1,2,4−トリアイオドトルエン、キシレン、またはこれらの組み合わせを使用してもよい。
【0088】
前記電解質は、電池寿命を向上させるためにビニレンカーボネートまたは下記化学式(2)のエチレンカーボネート系化合物をさらに含んでもよい。
【0089】
【化2】
【0090】
前記化学式(2)において、RおよびRはそれぞれ独立的に、水素、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)、またはC1〜C5のフルオロアルキル基であり、前記RとRのうちの少なくとも1つは、ハロゲン基、シアノ基(CN)、ニトロ基(NO)、またはC1〜C5のフルオロアルキル基である。
【0091】
前記エチレンカーボネート系化合物の代表的な例としては、ジフルオロエチレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、ジクロロエチレンカーボネート、ブロモエチレンカーボネート、ジブロモエチレンカーボネート、ニトロエチレンカーボネート、シアノエチレンカーボネート、フルオロエチレンカーボネートなどが挙げられてもよい。前記ビニレンカーボネートまたは前記エチレンカーボネート系化合物をさらに使用する場合、その使用量を適切に調節して寿命を向上させてもよい。
【0092】
前記リチウム塩は、前記非水性有機溶媒に溶解し、電池内でリチウムイオンの供給源として作用し、基本的なリチウム二次電池の作動を可能にし、正極と負極の間のリチウムイオンの移動を促進する役割を行う物質である。前記リチウム塩の代表的な例としては、LiPF、LiBF、LiSbF、LiAsF、LiCSO、LiClO、LiAlO、LiAlCl、LiN(C2x+1SO)(C2y+1SO)(ここで、xおよびyは自然数である)、LiCl、LiI、LiB(C(リチウムビスオキサレートボレート(lithium bis(oxalato)borate:LiBOB)、またはこれらの組み合わせが挙げられてもよく、これらを支持(supporting)電解塩として含む。前記リチウム塩の濃度は、0.1〜2.0Mの範囲内で使用することが好ましい。リチウム塩の濃度が上述した範囲に含まれれば、電解質が適切な導電度および粘度を有するため優れた電解質性能が現れ、リチウムイオンが効果的に移動することができる。
【0093】
前記セパレータ113は、負極112と正極114を分離してリチウムイオンの移動通路を提供するものであり、詳しい説明は上述したものと同じである。
【0094】
以下、本発明の実施例および比較例を記載する。このような実施例は本発明の一例に過ぎず、本発明が後述する実施例に限定されることはない。後述する実施例において、重量部はモノマー100重量部を基準とする。
【0095】
(実施例)
製造例1:バインダ重合体の合成
コンデンサ、温度計、単量体乳化液導入管、窒素ガス導入管、および撹拌機を装着したフラスコ反応器の内部に窒素を置換した後、蒸溜水60重量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ソジウム塩1.5重量部を添加し、80℃に温度を上昇させた。次に、スチレン2重量部を反応器に添加して5分間攪拌した後、過硫酸アンモニウム5%水溶液10重量部を反応器に添加して反応を開始させた。1時間後、2−エチルヘキシルアクリレート30重量部、スチレン68重量部、アクリル酸2重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソジウム塩0.5重量部、および蒸溜水40重量部からなる単量体乳化液を3時間に渡って反応器に滴下した。これと同時に、過硫酸アンモニウム5%水溶液6重量部を3時間に渡って反応器に滴下した。単量体乳化液の滴下が終了した後、反応を2時間追加で行った後、20℃に冷却した後に減圧して残留単量体を除去した後、高分子エマルジョンを収得した。エマルジョンに分散した高分子粒子の粒径は100〜200nmであった。
【0096】
製造例2:
10Lのオートクレーブ(autoclave)反応機内部に窒素を置換した後、蒸溜水60重量部およびドデシルベンゼンスルホン酸ソジウム塩1.5重量部を添加し、70℃に温度を上昇させた。次に、スチレン2重量部を反応器に添加して5分間攪拌した後、過硫酸カリウム2%水溶液10重量部を反応器に添加して反応を開始させた。1時間後、ブタジエン40重量部、スチレン46重量部、メチルメタクリレート10重量部、イタコン酸3重量部、ヒドロキシエチルアクリレート1重量部、ドデシルベンゼンスルホン酸ソジウム塩0.5重量部、蒸溜水40重量部からなる単量体乳化液を4時間に渡って反応器に滴下した。これと同時に、過硫酸カリウムの2%水溶液10重量部を3時間に渡って滴下した。単量体乳化液の滴下が終了した後、反応を3時間追加で行った後、20℃に冷却した後に減圧して残留単量体を除去した後、高分子エマルジョンを得た
【0097】
実施例1
(セパレータ)
無機化合物としてコロイダルシリカ(表面にヒドロキシ基を有する、スノーテックス0:日産化学社製、固形分20重量%、平均粒径:600nm)を水酸化リチウムによってpH8に調整して得られたコロイダルシリカ5重量部を製造例1で製造されたバインダ重合体のエマルジョン(a)100重量部に添加して10分間攪拌し、次に有機無機結合剤(γ−グリシジルシプロピルトリメトキシシラン)0.2重量部を添加して20分間攪拌し、コーティング層形成用組成物を得た。
このように得られたコーティング層形成用組成物を、16μmの厚さのポリエチレンセパレータ基材の両面にグラビア印刷し、70℃で20分間乾燥した。前記コーティング層の厚さは、一面を基準として3μmであった。
【0098】
実施例2
製造例2で製造されたバインダ重合体を使用したことを除いては、実施例1と同じ方法によってセパレータを製造した。
【0099】
比較例1
前記製造例1で製造されたバインダ重合体をそのままポリエチレンセパレータ基材にコーティングした。
【0100】
比較例2
有機無機結合剤を使用しなかったことを除いては、前記実施例1と同じ方法によってセパレータを製造した。
【0101】
比較例3
前記実施例1、2および比較例1、2で使用されたポリエチレンセパレータをそのまま使用した。
【0102】
(正極)
正極活物質としてLiCoO、バインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)、および導電材としてカーボンを92:4:4の重量比で混合した後、N−メチル2−ピロリドンに分散させて正極スラリーを製造した。このスラリーを厚さ20μmのアルミニウム箔にコーティングした後、乾燥、圧延して正極を製造した。
【0103】
(負極)
負極活物質として人造黒鉛、バインダとしてスチレン−ブタジエンゴム、および増粘剤としてカルボキシメチルセルロースを96:2:2の重量比で混合した後、水に分散させて負極活物質スラリーを製造した。このスラリーを厚さ15μmの銅箔にコーティングした後、乾燥、圧延して負極を製造した。
【0104】
(電極の製造)
前記製造された正極、負極、およびセパレータを使用してパウチ型電池を製造した。電解液は1.3M濃度のLiPFを含むEC(エチルカーボネート)/EMC(エチルメチルカーボネート)/DEC(ジエチルカーボネート)(3/5/2、体積比)混合溶液を使用した。
【0105】
評価例1:熱収縮率試験
実施例1、2のセパレータおよび比較例1〜3のセパレータをそれぞれ製造した。前記セパレータをコンベクションオーブン内にて130℃で10分間に渡って熱処理した後、オーブンから取り出し、常温で冷却させて収縮率を測定した。
【0106】
表1に示すように、実施例1、2のセパレータは、比較例1〜3のセパレータに比べて収縮率が著しく改善された。
【0107】
評価例2:充放電特性評価
前記実施例1、2および比較例1〜3のセパレータを使用して製造されたパウチセルを25℃で0.2Cで電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流が0.01Cになるまで定電圧充電した。次に、放電時に電圧が3.05Vに達するまで0.2Cの定電流で放電した。(化成段階)
【0108】
前記化成段階を経たリチウム電池を25℃で0.5Cの電流で電圧が4.2Vに達するまで定電流充電し、4.2Vを維持しながら電流が0.01Cになるまで定電圧充電した。次に、放電時に電圧が3.0Vに達するまで0.5Cの定電流で放電するサイクルを30回繰り返した。
【0109】
前記充放電実験の結果のうち、実施例1および2と比較例1〜3の結果を下記表1に示した。
【0110】
【表1】
【0111】
前記表1に示すように、実施例1〜2のリチウム電池は、比較例1〜3のリチウム電池に比べて同等あるいは向上した充放電効率および寿命特性を現した。また、熱収縮率が著しく改善され、電池の熱的安全性が改善されるものと期待される。
【符号の説明】
【0112】
100:リチウム二次電池
112:負極
113:セパレータ
114:正極
120:電池容器
140:封入部材
図1