特許第6234046号(P6234046)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234046
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】吸収性物品
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20171113BHJP
   A61F 13/532 20060101ALI20171113BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   A61F13/15 320
   A61F13/15 350
   A61F13/15 390
   A61F13/532 210
   A61F13/53 300
   A61F13/15 100
【請求項の数】14
【全頁数】39
(21)【出願番号】特願2013-75536(P2013-75536)
(22)【出願日】2013年3月31日
(65)【公開番号】特開2014-200250(P2014-200250A)
(43)【公開日】2014年10月27日
【審査請求日】2016年1月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100077517
【弁理士】
【氏名又は名称】石田 敬
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(74)【代理人】
【識別番号】100093665
【弁理士】
【氏名又は名称】蛯谷 厚志
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100139022
【弁理士】
【氏名又は名称】小野田 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100172557
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 啓靖
(72)【発明者】
【氏名】宇田 匡志
(72)【発明者】
【氏名】丸山 貴史
【審査官】 ▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−135921(JP,A)
【文献】 特開2005−095481(JP,A)
【文献】 特表2005−538772(JP,A)
【文献】 特開2011−139897(JP,A)
【文献】 特開2013−027664(JP,A)
【文献】 特開2012−213480(JP,A)
【文献】 特開2002−126002(JP,A)
【文献】 特開2007−211367(JP,A)
【文献】 特開平04−146300(JP,A)
【文献】 特開2012−120707(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/105413(WO,A1)
【文献】 特表2001−518986(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液透過性層と、液不透過性層と、前記液透過性層及び前記液不透過性層の間に設けられた吸収体とを備え、前記吸収体が、複数の吸収コア部分から成る吸収コアと、前記複数の吸収コア部分を固定するための基材シートとを含む吸収性物品の製造方法であって、前記製造方法は、高吸水性ポリマー粒子、セルロース系吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含有する未圧縮状態の層状材料に加熱空気を吹き付けることにより前記層状材料中に含まれる熱可塑性樹脂繊維を溶融させて熱可塑性樹脂繊維同士、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系吸水性繊維、熱可塑性樹脂繊維と高吸水性ポリマー粒子を熱融着させた後、前記層状材料に蒸気圧力0.1〜2.0MPaの水蒸気を噴射して0.06〜0.14g/cm3の密度にすることにより前記吸収コアを形成する工程を含み、
前記複数の吸収コア部分が、互いに離間して前記基材シートに固定されており、
前記吸収コアが、高吸水性ポリマー粒子と、セルロース系吸水性繊維と、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物をモノマー成分として含む熱可塑性樹脂繊維とを含有し、そして
前記熱可塑性樹脂繊維が、前記吸水性繊維及び/又は他の熱可塑性樹脂繊維と連結している、
ことを特徴とする、前記吸収性物品の製造方法。
【請求項2】
液透過性層と、液不透過性層と、前記液透過性層及び前記液不透過性層の間に設けられた吸収体とを備え、前記吸収体が、複数の吸収コア部分から成る吸収コアと、前記複数の吸収コア部分を固定するための基材シートとを含む吸収性物品の製造方法であって、前記製造方法は、
(I)(I−a)前記複数の吸収コア部分に対応する複数の凹部部分を有するサクションドラムの前記複数の凹部部分に高吸水性ポリマー粒子、セルロース系吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維を混合状態で供給して複数の層状材料を形成する工程、
(I−b)前記複数の層状材料を、前記吸収性物品において基材シートを形成するキャリアシートであって、前記吸収性物品において前記複数の吸収コア部分を前記基剤シートに固定するための粘着剤が塗工されたキャリアシートに転写する工程、
(I−c)前記キャリアシートに転写された未圧縮状態の前記複数の層状材料に加熱空気を吹き付けることにより層状材料中に含まれる熱可塑性樹脂繊維を溶融させて熱可塑性樹脂繊維同士、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系吸水性繊維、及び熱可塑性樹脂繊維と高吸水性ポリマー粒子を熱融着させた後、蒸気圧力0.1〜2.0MPaの水蒸気を噴射して0.06〜0.14g/cm3の密度にすることにより前記複数の吸収コア部分から成る吸収コアを形成する工程、及び
(I−d)前記吸収体を前記液透過性層と前記液不透過性層の間に挟む工程、
を含むか、あるいは、
(II)(II−a)凹部を有するサクションドラムの前記凹部に高吸水性ポリマー粒子、セルロース系吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維を混合状態で供給して層状材料を形成する工程、
(II−b)工程(II−a)で形成された層状材料を、前記吸収性物品において基材シートを形成するキャリアシートであって、粘着剤が塗工されていないキャリアシートに転写する工程、
(II−c)工程(II−b)でキャリアシートに転写された未圧縮状態の前記層状材料に加熱空気を吹き付けることにより層状材料中に含まれる熱可塑性樹脂繊維を溶融させて熱可塑性樹脂繊維同士、熱可塑性樹脂繊維とセルロース系吸水性繊維、及び熱可塑性樹脂繊維と高吸水性ポリマー粒子を熱融着させた後、蒸気圧力0.1〜2.0MPaの水蒸気を噴射して0.06〜0.14g/cm3の密度にすることにより吸収コアを形成する工程、
(II−d)工程(II−c)で形成された吸収コアを複数の吸収コア部分に切断し、得られた複数の吸収コア部分を接着剤を用いてキャリアシート上の所望の位置に固定することにより吸収体を形成する工程、及び
(II−e)前記吸収体を前記液透過性層と前記液不透過性層の間に挟む工程、
を含み、
前記複数の吸収コア部分が、互いに離間して前記基材シートに固定されており、
前記吸収コアが、高吸水性ポリマー粒子と、セルロース系吸水性繊維と、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物をモノマー成分として含む熱可塑性樹脂繊維とを含有し、そして
前記熱可塑性樹脂繊維が、前記吸水性繊維及び/又は他の熱可塑性樹脂繊維と連結している、
ことを特徴とする、前記吸収性物品の製造方法。
【請求項3】
前記水蒸気の温度が、前記熱可塑性樹脂繊維の融点未満である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記吸収コアにおいて、前記吸水性繊維の、前記熱可塑性樹脂繊維に対する質量比が、1.0〜9.0である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記吸収コアが、40〜900g/m2の坪量を有する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記基材シートが、10〜100%の最大荷重時伸長率を有する、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記吸収性物品が、湿潤条件下でガーレ剛軟度を計10セット測定した場合に、170〜400mNのガーレ剛軟度(第10セット)を有し、そして77〜100%のガーレ剛軟度保持率を有し、ここで、前記ガーレ剛軟度保持率が、次の式:
ガーレ剛軟度保持率(%)
=100×第10セットのガーレ剛軟度/第1セットのガーレ剛軟度
により規定される、
請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記吸収コア部分が、20〜40%の、湿潤条件下の曲げ剛性の、乾燥条件下の曲げ剛性に対する比率を有する、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の吸収コア部分が、前記吸収性物品の平面方向において、千鳥状に配置されているか、又は前記吸収性物品の長手方向及び/若しくは幅方向と平行に配置されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記熱可塑性樹脂繊維が、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物を含むビニルモノマーをポリオレフィンにグラフト重合することにより生成した変性ポリオレフィンであるか、あるいは前記変性ポリオレフィンと他の樹脂との混合ポリマーを鞘成分とし、前記変性ポリオレフィンよりも融点が高い樹脂を芯成分とする芯鞘型複合繊維である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物が、マレイン酸又はその誘導体、無水マレイン酸又はその誘導体、あるいはそれらの混合物である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記吸収コアの前記液透過性層側の面及び/又は前記液不透過性層側の面に畝溝構造が形成されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記液透過性層側の面に形成された畝溝構造が前記吸収性物品の長手方向に延びており、前記液不透過性層側の面に形成された畝溝構造が前記吸収性物品の短手方向に延びている、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記吸収コアの繊維密度が、前記液透過性層側の面及び/又は前記液不透過性層側の面に向けて高くなっている、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
吸収性物品の吸収体として、親水性繊維(例えば、パルプ)と、コイル状に捲縮した合成樹脂繊維(例えば、潜在捲縮性の偏芯芯鞘型複合繊維が加熱によってコイル状に捲縮して収縮したもの)とを含み、必要に応じて高吸収性ポリマー粒子をさらに含む吸収体(特許文献1)や、高吸収性ポリマー粒子及びフラッフパルプからなる吸液性混合物と、熱可塑性樹脂の長繊維(例えば、ポリエチレン及びエチレン共重合体から選ばれた熱可塑性樹脂を鞘とし、鞘を形成する熱可塑性樹脂よりも高融点の熱可塑性樹脂を芯とする芯鞘型複合繊維)で構成された不織布とを含む吸収体(特許文献2)が知られている。
【0003】
一方、エアレイド不織布用の熱接着性複合繊維として、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物を含むビニルモノマーでグラフト重合された変性ポリオレフィンを鞘成分とし、変性ポリオレフィンよりも融点が高い樹脂を芯成分とする芯鞘型複合繊維が知られている(特許文献3,4)。
【0004】
さらに、複数の吸収部が互いに離間して、基盤シートに固定部を介して接合され、該固定部は平面視において前記吸収部の領域に包含されており、前記複数の吸収部は互いに液体連通化しうる状態に配列された吸収体が知られている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−159786号公報
【特許文献2】特開2008−142424号公報
【特許文献3】特許第4221849号公報
【特許文献4】特開2004−270041号公報
【特許文献5】特開2010−268919号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1,2に記載の吸収体は、型崩れ防止、クッション性向上等を目的とするものであり、十分な吸収性を有するとともに、吸収後も十分な強度を保持する新規な吸収体が求められていた。
【0007】
一方、特許文献3,4に記載の芯鞘型複合繊維について、セルロース系繊維との接着性が良好であることは知られているものの、吸収体の構成成分としての使用可能性は知られていなかった。
【0008】
また、特許文献5に記載の吸収体は、湿潤時にはその強度が不十分となり、吸収性の低下、吸収体のよれ等を生じる恐れがある。
【0009】
本発明は、乾燥時及び湿潤時の両方において、使用者の動きに追従し且つ吸収性に優れる吸収性物品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、液透過性層と、液不透過性層と、上記液透過性層及び上記液不透過性層の間に設けられた吸収体とを備えた吸収性物品であって、上記吸収体が、複数の吸収コア部分から成る吸収コアと、上記複数の吸収コア部分を固定するための基材シートとを含み、上記複数の吸収コア部分が、互いに離間して上記基材シートに固定されており、上記吸収コアが、セルロース系吸水性繊維と、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物をモノマー成分として含む熱可塑性樹脂繊維とを含有し、そして上記熱可塑性樹脂繊維が、上記吸水性繊維及び/又は他の熱可塑性樹脂繊維と連結していることを特徴とする吸収性物品を見いだした。
【発明の効果】
【0011】
本発明の吸収性物品は、乾燥時及び湿潤時の両方において、使用者の動きに追従し且つ吸収性に優れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る生理用ナプキンの部分破断平面図である。
図2図2は、図1のII−II線における端面図である。
図3図3は、本発明の第3実施形態に係る生理用ナプキンの平面図である。
図4図4は、本発明の第4実施形態に係る生理用ナプキンの平面図である。
図5図5は、本発明の第5実施形態に係る生理用ナプキンの平面図である。
図6図6は、吸収コア部分9が、トップシート2側の面に複数の畝部41及び溝部42を有する例を示す端面図である。
図7図7は、吸収コア部分9が、バックシート3側の面に複数の畝部43及び溝部44を有する例を示す端面図である。
図8図8は、吸収体及び吸収性物品の製造工程を示す図である。
図9図9は、サクションドラム151の部分展開図である。
図10図10は、実施例で使用されるSJベルトプレス機を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の吸収性物品について説明する。
本発明の吸収性物品は、複数の吸収コア部分から成る吸収コアと、上記複数の吸収コア部分を固定するための基材シートとを含み、そして上記複数の吸収コア部分は、互いに離間して基材シートに固定されている。
【0014】
本発明の吸収性物品では、吸収コアが、セルロース系吸水性繊維(以下「吸水性繊維」と略する場合がある)と、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物をモノマー成分として含む熱可塑性樹脂繊維(以下「熱可塑性樹脂繊維」と略する場合がある)とを含有する。
【0015】
本発明の吸収性物品の吸収コアにおいて、熱可塑性樹脂繊維が、吸水性繊維及び/又は他の熱可塑性樹脂繊維と連結している。
連結により、吸収コアの強度(特に、液体吸収後の湿潤時強度)が向上する。連結の例としては、例えば、(i)熱可塑性樹脂繊維間の熱融着、(ii)熱可塑性樹脂繊維−吸水性繊維間の熱融着、(iii)熱可塑性樹脂繊維間、吸水性繊維間又は熱可塑性樹脂繊維−吸水性繊維間の水素結合等が挙げられる。なお、吸収コアが、熱可塑性樹脂繊維及び吸水性繊維以外のその他の繊維を含む場合、熱可塑性樹脂繊維及び/又は吸水性繊維は、その他の繊維と連結していてもよい。
【0016】
本発明の吸収性物品の吸収コアにおいて、吸水性繊維の、熱可塑性樹脂繊維に対する質量比は、約1.0〜約9.0であることが好ましく、そして約1.5〜約4.0であることがより好ましい。上記質量比が約9.0を超えると、吸収コアの強度(特に、液体吸収後の湿潤時強度)が低下する傾向がある。上記質量比が約1.0未満であると、吸収コアの液体吸収性が低下する傾向がある。
【0017】
本発明において、吸収コアは、約0.06〜約0.14g/cm3の密度を有することが好ましい。本発明の吸収性物品において、吸収コアが、吸収性と、吸収後の強度とを両立するためである。
【0018】
吸収コアの密度は、次式に基づいて算出する。
D(g/cm3)=B(g/m2)/T(mm)×10-3
[式中、D、B及びTは、それぞれ、吸収コアの密度、坪量及び厚みを表す。]
【0019】
吸収コアの坪量(g/m2)の測定は、以下の通り、実施する。
吸収コア部分が30mm×30mm以上のサイズを有する場合には、吸収コア部分から30mm×30mmの試験片を3枚切り出し、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)における各試験片の質量を直示天秤(例えば、研精工業株式会社製 電子天秤HF−300)で測定し、3つの測定値の平均値から算出した吸収コアの単位面積当たりの質量(g/m2)を、吸収コアの坪量とする。
【0020】
吸収コア部分が30mm×30mm未満のサイズを有する場合には、延べ面積が900mm2を超えるように複数枚の吸収コア部分を準備し、それらの総面積と、総質量とを測定し、坪量を算出する。
なお、吸収コアの坪量の測定に関し、上記で特に規定しない測定条件については、ISO 9073−1又はJIS L 1913 6.2に記載の測定条件を採用する。
【0021】
吸収コアの厚み(mm)の測定は、以下の通り、実施する。
厚み計(例えば、株式会社大栄科学精器製作所製 FS−60DS,測定面44mm(直径),測定圧3g/cm2)により、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)における吸収コアの異なる5つの部位(厚み計FS−60DSを使用する場合、各部位の直径は44mm)を定圧3g/cm2で加圧し、各部位における加圧10秒後の厚みを測定し、5つの測定値の平均値を、吸収コアの厚みとする。
【0022】
本発明において、吸収コアの密度は、例えば、吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含有する混合材料の高密度化により、所望の範囲に調節することができる。吸収コアの密度を一定範囲に維持するためには、繊維の弾性回復を抑制し、吸収コアの嵩を一定範囲に維持する必要がある。この点、本発明の吸収性物品における吸収コアでは、水素結合(例えば、吸水性繊維間、熱可塑性樹脂繊維間、吸水性繊維−熱可塑性樹脂繊維間等で形成された水素結合)が、吸収コアの嵩の維持に寄与する。なお、水素結合は、吸収コアに吸収された液体により切断されるので、吸収コアに含有される吸収性材料(必須成分である吸水性繊維、任意成分である高吸水性材料)の膨潤を阻害しない。
【0023】
本発明において、吸収コアは、セルロース系吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含有する混合材料に高圧水蒸気を噴射して高密度化することにより得られたものであることが好ましい。高圧水蒸気の噴射を利用した高密度化により、吸収コアの密度が所望の範囲に調節される。混合材料に高圧水蒸気が噴射されると、混合材料の内部に水蒸気が浸透し、水素結合(例えば、吸水性繊維間、熱可塑性樹脂繊維間、吸水性繊維−熱可塑性樹脂繊維間等で形成された水素結合)が切断され、混合材料が軟化する。従って、高密度化に要する圧力が減少し、軟化した混合材料は容易に密度調整が可能である。密度調整された混合材料が乾燥して水素結合が再形成されると、繊維の弾性回復(嵩の増加)が抑制され、吸収コアの密度が一定範囲に維持される。
【0024】
高圧水蒸気の噴射を利用した高密度化は、熱可塑性樹脂繊維に不飽和カルボン酸無水物(例えば、無水マレイン酸又はその誘導体)がモノマー成分として含まれる場合に、特に好適である。熱可塑性樹脂繊維に含まれる不飽和カルボン酸無水物基が水蒸気と反応して不飽和カルボン酸となると、水素結合を形成可能な酸素原子の数が増加するので、高密度化された繊維の弾性回復(嵩の増加)が効果的に抑制される。
【0025】
高圧水蒸気の噴射を利用した高密度化において、高圧水蒸気の温度が熱可塑性樹脂繊維の融点未満であることが好ましい。吸収コアの密度の調節が容易となるためである。
【0026】
本発明において、吸収コアは、約40〜約900g/m2の坪量を有することが好ましい。上記坪量が約40g/m2未満であると、繊維量が少なく、高圧水蒸気の噴射による密度調整が困難となる場合があり、そして上記坪量が約900g/m2を越えると、繊維量が多く、水蒸気の内部浸透が困難となる場合がある。
また、上記坪量が約40g/m2未満であると、吸収コアの強度(特に、液体吸収後の湿潤時強度)が低下する傾向があり、そして上記坪量が約900g/m2を越えると、吸収コアの強度(特に、乾燥時強度)が高く、着用感に劣る傾向がある。
【0027】
本発明において、基材シートは、好ましくは約10〜約100%、より好ましくは約20〜約90%、そしてさらに好ましくは約30〜約80%の最大荷重時伸長率を有する。上記最大荷重時伸長率が約10%を下回ると、吸収体が折軸を起点に折れ曲がることが難しくなり、その結果、吸収体が使用者の体の立体的形状に添うこと、及び歩行等の運動の際の使用者の動作に追従することが難しくなる。上記最大荷重時伸長率が約100%を超えると、基材シートが破断しやすくなり、吸収体がよれる場合がある。
なお、以下、最大荷重時伸長率を、単に、伸長率と称する場合がある。
【0028】
基材シートは、吸収性物品の幅方向において、上記範囲の伸長率を有することが好ましい。吸収性物品は、その幅方向の変形の度合いが大きいからである。
また、基材シートは、吸収性物品の長手方向において、上記範囲の伸長率を有してもよい。
【0029】
最大荷重時伸長率は、以下の通り測定する。なお、記載されていない事項は、JIS L 1913:2010,一般不織布試験方法の「6.3引張強さ及び伸び率」の記載に従う。
(1)20℃60%RHの恒温恒湿室に引張試験機を準備する。
なお、上記引張試験機として、島津製作所製,AG−1kNIを用いる。
(2)試料を150mm×25mmのサイズの試料片にカットする。
なお、長辺(150mm)方向が、伸長率を測定する方向である。
【0030】
(3)試料片を、初期つかみ間隔L0(mm)でチャックに取付け、そして100mm/分の引張速度で、サンプル片が切断されるか又は塑性変形するまで張力(荷重)を加える。
なお、つかみ間隔L0は、100mmとする。
(4)荷重が最大の点におけるつかみ間隔:L1(mm)を読み取り、以下の式に従って、伸長率(%)を測定する。
伸長率(%)=100×[L1(mm)−L0(mm)]/L0(mm)
(5)測定を計5回繰り返し、その平均値を採用する。
【0031】
なお、本試験において、塑性変形とは、最大荷重を示した後、それよりも小さい荷重で伸長し続けることを意味する。記載シートが塑性変形すると、基材シートとしての機能が低下するため、本試験では、最大荷重における伸長率を評価の対象とする。
【0032】
また、測定に当たり、基材シートに異物、例えば、接着剤等が付着している場合には、基材シートを溶媒に浸漬し、接着剤を溶解させ、そして基材シートを乾燥機等で乾燥した後に測定する。
なお、上記溶媒としては、異物を溶解させるが、基材シートを溶解しないものであれば、特に制限なく用いることができ、例えば、トルエン等の芳香族系溶媒が挙げられる。
【0033】
本発明では、基材シートは、複数の吸収コア部分を固定することができるものであれば、特に制限されず、吸収コアの液不透過性層側、吸収コアの液透過性層側、又は吸収コアの液不透過性層側及び液透過性層側の両方に配置されることができる。
また、複数の吸収コア部分は、吸収コアの液不透過性層側、吸収コアの液透過性層側、又は吸収コアの液不透過性層側及び液透過性層側の両方で基材シートに固定される。
【0034】
本発明において、吸収性物品は、湿潤条件下でガーレ剛軟度を10セット測定した場合に、好ましくは約170〜約400mN、そしてより好ましくは約200〜約300mNのガーレ剛軟度(第10セット)を有する。上記ガーレ剛軟度が約170mNを下回ると、吸収性物品が湿潤時によれる場合があり、そして上記ガーレ剛軟度が約400mNを超えると、使用者が吸収性物品を固いと感じる傾向がある。
【0035】
本発明において、吸収性物品は、湿潤条件下でガーレ剛軟度を10セット測定した場合に、好ましくは約77〜約100%、そしてより好ましくは約77〜約90%のガーレ剛軟度保持率を有する。上記ガーレ剛軟度保持率が約77%を下回ると、吸収性物品が長時間使用された場合に、吸収性物品がよれる恐れがある。
【0036】
本発明では、「ガーレ剛軟度」及び「ガーレ剛軟度保持率」は、以下の通り測定する。なお、記載されていない事項は、JIS L 1096:2010の「8.22.1 A法 剛軟度(ガーレ法)」に従う。
(1)安田精機製作所社製のNo.311ガーレー式柔軟度試験機を20℃の65%RHの恒温恒湿室に準備する。
【0037】
(2)測定すべき吸収性物品を、その長手方向中心且つ幅方向中心を中心として、25mm×38mm(長手方向×幅方向)のサイズにカットし、測定試料を準備する。
(3)測定試料を、イオン交換水中に、それが自重で沈下するまで浸漬するか、又は1時間以上水中に浸漬する。
【0038】
(4)測定試料を、ガーレー式柔軟度試験機に、バックシートが振り子に触れるようにセットし、剛軟度を測定する(第1セット,1回目)。次いで、測定試料を、ガーレー式柔軟度試験機に、トップシートが振り子に触れるようにセットし、剛軟度を測定する(第1セット,2回目)。
上記2回の剛軟度の測定値の平均値を、第1セットの剛軟度として採用する。
(5)第1セット(計2回)の手順を、同一の測定試料で計10セット繰り返し、第1セット目の剛軟度と、第10セット目の剛軟度とを算出する。
【0039】
(6)吸収性物品のよれにくさの指標として、ガーレ剛軟度保持率(%)を、以下の式:
ガーレ剛軟度保持率(%)
=100×第10セットの剛軟度(mN)/第1セットの剛軟度(mN)
に従って算出する。
なお、ガーレ剛軟度保持率が100%に近いほど、湿潤時において吸収性物品の剛性が低下しにくいことを意味する。
【0040】
なお、剛軟度の具体的な測定手順は、以下の通りである。
測定試料を可動アームのチャックに取り付け、左又は右に規定の速さで回転させて、測定試料の下端が振子から離れた時の目盛を読み取り、剛軟度S(mN)を以下の式に基づいて算出する。
【0041】
S=R×(D11+D22+D33)×(L−12.7)2/b×3.375×10-5
[式中、Rは目盛板の読みであり、D1,D2,D3は振子支点からおもり取付位置までの距離(25.4mm(1in.),50.8mm(2in.),101.6mm(4in.))であり、W1,W2,W3はD1,D2,D3の孔に取り付けたおもりの質量(g)であり、Lはサンプル片の長さ(mm)であり、bはサンプル片の幅(mm)である。]
【0042】
本発明において、吸収コア部分は、好ましくは約20〜約40%、そしてより好ましくは約24〜約30%の、湿潤条件下の曲げ剛性の、乾燥条件下の曲げ剛性に対する比率を有する。上記比率が約20%を下回ると、吸収性物品が湿潤時によれる場合があり、そして上記比率が約40%を超えると、使用者が吸収性物品を固いと感じる傾向がある。
【0043】
「湿潤条件下の曲げ剛性」及び「乾燥条件下の曲げ剛性」は、以下の通り測定される。
なお、測定は、KES(Kawabata’s Evaluation System for Fabrics)に基づいて実施し、以下に記載されていない条件については、「風合いの評価の標準化と解析(第2版)」(川端季雄著,社団法人日本繊維機械学会,風合計量と規格化研究委員会発行,1980年)に記載の測定条件を採用する。
【0044】
(1)試料及び試験器具を、次の通り準備する。
吸収コアを、20mm×10mm(MD方向×CD方向)のサイズにカットし、試料を準備する。
(2)試験機器として、カトーテック(株)社製KES−FB2−AUTO−Aを準備する。
【0045】
(3)試料を、温度23±2℃、相対湿度50±5%において24時間以上保存して状態調節することにより、乾燥条件下の曲げ剛性を測定するための試料を調整する。
(4)試料を、イオン交換水中にそれが自重で沈下するまで浸漬させるか、又は1時間以上、水中に浸漬することにより、湿潤条件下の曲げ剛性を測定するための試料を調整する。
なお、測定は、温度23±2℃、相対湿度50±5%の室内で実施する。
【0046】
(5)「乾燥条件下の曲げ剛性」と、「湿潤条件下の曲げ剛性」とを、以下の手順に従って測定する。
試料を、そのMD方向に対して垂直に曲がるように試験機器に取り付け(クランプ間隔1cm)、曲率K=−2.5〜+2.5cm-1の範囲で、変形速度0.5cm-1/秒の等速度曲率の純曲げを実施し、サンプル単位長さ当りの曲げモーメントM(gf・cm/cm)を計測し、M−K曲線を作成する。M−K曲線における曲率K=0.5〜1.5の傾斜と曲率K=−0.5〜−1.5の傾斜の平均値を、サンプルの縦方向の曲げ剛性B1(gf・cm2/cm)とする。
【0047】
試料を、そのCD方向に対して垂直に曲がるように試験機器に取り付け(クランプ間隔1cm)、上記と同様にしてM−K曲線を作成し、M−K曲線における曲率K=0.5〜1.5の傾斜と曲率K=−0.5〜−1.5の傾斜の平均値を、サンプルの横方向の曲げ剛性B2(gf・cm2/cm)とする。
1とB2の平均値を算出し、試料の曲げ剛性B(N・m2/m)とする。
なお、本明細書では、湿潤条件下の試料の曲げ剛性を、BW(N・m2/m)と表記し、そして乾燥条件下の曲げ剛性を、BD(N・m2/m)と表記する。
【0048】
湿潤条件下の曲げ剛性の、乾燥条件下の曲げ剛性に対する比率(以下、単に「曲げ剛性保持率」と称する場合がある)を、次の式:
曲げ剛性保持率(%)=100×BW/BD
に従って算出する。
【0049】
本発明において、複数の吸収コア部分が、吸収性物品の平面方向において、千鳥状に配置されているか、又は上記吸収性物品の長手方向と平行及び/若しくは幅方向と平行に配置されていることができる。複数の吸収コア部分を千鳥状に配置することにより、吸収体が使用者の体の立体的形状に添いやすく、そして歩行等の運動の際の使用者の動作に追従しやすくなるが、吸収体が、局所的な折軸を有する(吸収体の全体に広がる折軸を有しない)ため、着用時に吸収体、ひいては吸収性物品が折れ曲がる等の問題が生じにくい。
【0050】
複数の吸収コア部分を、吸収性物品の長手方向及び/又は幅方向と平行に配置することにより、吸収体が、その全体に延びる複数の折軸を有し、使用者の体の立体的形状、特に湾曲した部分にフィットしやすくなる。
【0051】
本発明において、熱可塑性樹脂繊維は、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物を含むビニルモノマーをポリオレフィンにグラフト重合することにより生成した変性ポリオレフィン、あるいは上記変性ポリオレフィンと他の樹脂との混合ポリマーを鞘成分とし、変性ポリオレフィンよりも融点が高い樹脂を芯成分とする芯鞘型複合繊維であることが好ましく、そして不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物は、例えば、マレイン酸又はその誘導体、無水マレイン酸又はその誘導体、あるいはそれらの混合物であることがより好ましい。
【0052】
本発明において、吸収コアが、高吸水性材料を含有することが好ましい。吸収コアが高吸水性材料を含有することにより、吸収コアの液体吸収性が向上する。なお、水素結合は、吸収コアに吸収された液体により切断されるため、吸収コアに含有される高吸水性材料の膨潤を阻害しない。
【0053】
本発明において、吸収コアは、着色されていてもよい。吸収コアを着色することにより、吸水性繊維と熱可塑性樹脂繊維とが均一に分散されているか否かの視認が容易になる。また、吸収された液体の色をマスキングすることができる。例えば、吸収される液体が尿である場合には青色系に、経血である場合には緑色系に着色しておくことにより、使用者に清潔感を感じさせることができる。
【0054】
本発明の吸収性物品において、吸収コアの液透過性層側の面及び/又は液不透過性層側の面に畝溝構造が形成されていてもよい。吸収性物品に力が加えられて畝部が潰れても、溝部の空間が維持されるので、液体吸収性及び保持性が維持される。また、吸収コアが液透過性層と接触する面積が少なくなるので、吸収性物品に力が加えられても、吸収コアに吸収された液体が逆戻りしにくく、液透過性層からの液体の溢れ出しが防止される。
【0055】
本発明において、吸収コアは、液透過性層側の面に形成された、吸収性物品の長手方向に延びる畝溝構造と、液不透過性層側の面に形成された、吸収性物品の幅方向(短手方向)に延びる畝溝構造とを有していてもよい。
【0056】
本発明において、吸収コアは、液透過性層側の面から液不透過性層側の面に向けて高くなる繊維密度を有していてもよい。吸収コアの液透過性層側でスポット性が高くなり且つ吸収コアの液不透過性層側で拡散性が高くなるので、吸収コアの液体透過性及び保持性が向上し、液体の溢れ出しが防止されるからである。
【0057】
本発明の吸収性物品の種類及び用途は特に限定されない。吸収性物品としては、例えば、生理用ナプキン、使い捨てオムツ、パンティーライナー、失禁パッド、汗取りシート等の衛生用品及び生理用品が挙げられ、これらはヒトを対象としてもよいし、ペット等のヒト以外の動物を対象としてもよい。吸収性物品が吸収対象とする液体は特に限定されず、例えば、使用者の液状排泄物、体液等が挙げられる。
以下、生理用ナプキンを例として、本発明の吸収性物品の実施形態を説明する。
【0058】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る生理用ナプキン1は、図1及び図2に示すように、液透過性のトップシート2と、液不透過性のバックシート3と、トップシート2及びバックシート3の間に設けられた吸収体4と、一対のサイドシート5a,5bとを備える。吸収体4は、複数の吸収コア部分9から成る吸収コア8と、基材シート10とを含む。複数の吸収コア部分9は、互いに離間して、固定部15を介して、基材シート10に固定されている。
【0059】
なお、図1において、X軸方向は生理用ナプキン1の幅方向(短手方向)に、Y軸方向は生理用ナプキン1の長手方向に、X軸及びY軸方向に広がる平面の方向は生理用ナプキン1の平面方向に相当する。他の図においても同様である。
図1では、複数の吸収コア部分9は、千鳥状に配置されている。図2に示されるように、複数の吸収コア部分9は、バックシート3側に配置される基材シート10に、バックシート3側で、固定部15を介して固定されている。
【0060】
本発明の吸収性物品では、各吸収コア部分は、約5〜約40mm、好ましくは約10〜約30mm、そしてより好ましくは約15〜約25mmの吸収性物品の長手方向長さと、約3〜約30mm、好ましくは約5〜約20mm、そしてより好ましくは約7〜約15mmの吸収性物品の幅方向長さとを有することが好ましい。乾燥時の剛性と、湿潤時の剛性との両立との観点からである。
【0061】
本発明の吸収性物品では、各吸収コア部分は、約1〜約10mm、好ましくは約1〜約6mm、そしてより好ましくは約1〜約4mmのピッチを有する。上記ピッチが約1mm未満であると、吸収コア部分と、隣接する吸収コア部分との間の間隔が狭くなり、それらの間に折軸が形成されにくくなる傾向があり、そして上記ピッチが約10mmを超えると、吸収コアの絶対量が少なくなるため、残存する液体により、使用者がべたつきを感じる恐れがある。
【0062】
図1及び図2に示すように、トップシート2とバックシート3とは、長手方向の端部同士がシール部11a,11bによって接合され、本体部6を形成している。本体部6の形状は、女性の身体、下着等に適合する限り特に限定されず、例えば、略長方形、略楕円型、略瓢箪型等であってよい。本体部6の外形における長手方向の延べ寸法は、好ましくは約100〜約500mm、さらに好ましくは約150〜約350mmである。また、本体部6の外形における幅方向の延べ寸法は、好ましくは約30〜約200mm、さらに好ましくは約40〜約180mmである。
【0063】
図1及び図2に示すように、一対のサイドシート5a,5bは、トップシート2の幅方向の両側に設けられており、バックシート3とサイドシート5a,5bとは、短手方向の端部同士がシール部12a,12bによって接合され、本体部6から幅方向に延出する略矩形状のウイング部7a,7bを形成している。サイドシート5a,5bは、液状排泄物が生理用ナプキン1の幅方向外側へ漏れることを防止し得るように、疎水性又は撥水性を有することが好ましい。サイドシート5a,5bを構成する材料としては、例えば、スパンボンド不織布、SMS不織布等、エアスルー不織布等が挙げられる。
【0064】
図2に示すように、ウイング部7a,7bを形成するバックシート3の着衣側には、粘着部13a,13bが設けられており、本体部6を形成するバックシート3の着衣側には、粘着部14が設けられている。粘着部14が下着のクロッチ部に貼付されるとともに、ウイング部7a,7bが下着の外面側に折り曲げられ、粘着部13a,13bが下着のクロッチ部に貼付されることにより、生理用ナプキン1は下着に安定して固定される。
【0065】
粘着部13a,13b,14を形成しうる粘着剤としては、例えば、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−ブチレン重合体、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレン−スチレン共重合体等のスチレン系ポリマー;C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂、ロジン系石油樹脂、ポリテルペン樹脂、テルペンフェノール樹脂等の粘着付与剤;リン酸トリクレシル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル等のモノマー可塑剤;ビニル重合体、ポリエステル等のポリマー可塑剤等が挙げられる。
また、固定部15は、粘着部13a,13b,14と同様であり、上述の粘着剤と同様のものにより形成されうる。
【0066】
シール部11a,11b,12a,12bは生理用ナプキン1の周縁部に設けられており、各シール部による接合様式としては、例えば、エンボス加工、超音波、ホットメルト型接着剤等が挙げられる。接合強度を高めるために、2種以上の接合様式を組み合わせてもよい(例えば、ホットメルト型接着剤による接合後に、エンボス加工を施す等)。
【0067】
エンボス加工としては、例えば、パターニングされたエンボスロールとフラットロールとの間に、トップシート2とバックシート3とを合わせて、又はトップシート2とバックシート3とサイドシート5a,5bとを合わせて通過させることにより、吸収体4の周縁部分をエンボス加工する方法(いわゆるラウンドシールと呼ばれる方法)等が挙げられる。
【0068】
上記方法では、エンボスロール及び/又はフラットロールを加熱することで、各シートが軟化するため、シール部が明瞭になりやすい。エンボスパターンとしては、例えば、格子状パターン、千鳥状パターン、波状パターン等が挙げられる。シール部の境界で生理用ナプキン1が折り曲がりにくくなるように、エンボスパターンは間欠で細長状であることが好ましい。
【0069】
ホットメルト型接着剤としては、例えば、スチレン−エチレン−ブタジエン−スチレン(SEBS)、スチレン−ブタジエン−スチレン(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレン(SIS)等のゴム系を主体とした、又は直鎖状低密度ポリエチレン等のオレフィン系を主体とした感圧型接着剤又は感熱型接着剤;水溶性高分子(例えば、ポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース、ゼラチン等)又は水膨潤性高分子(例えば、ポリビニルアセテート、ポリアクリル酸ナトリウム等)からなる感水性接着剤等が挙げられる。接着剤の塗布方法の具体例としては、スパイラル塗工、コーター塗工、カーテンコーター塗工、サミットガン塗工等が挙げられる。
【0070】
生理用ナプキン1は、使用者の液状排泄物(例えば、経血、尿、下り物等)を吸収する目的で、使用者に着用される。この際、トップシート2が使用者の肌側に、バックシート3が使用者の着衣(下着)側に位置するように、使用者に着用される。使用者の液状排泄物は、トップシート2を通じて吸収体4に浸透し、吸収体4で吸収される。吸収体4に吸収された液状排泄物の漏れは、バックシート3によって防止される。
【0071】
トップシート2は、使用者の液状排泄物が透過し得るシートであり、使用者が生理用ナプキン1を着用したときの肌触りを向上させる目的で、使用者の肌と接触する面に設けられている。
【0072】
トップシート2は、使用者の液状排泄物が透過し得る限り特に限定されない。トップシート2としては、例えば、不織布、織布、液体透過孔が形成された合成樹脂フィルム、網目を有するネット状シート等が挙げられるが、これらのうち不織布が好ましい。
【0073】
不織布を構成する繊維としては、例えば、天然繊維(羊毛,コットン等)、再生繊維(レーヨン,アセテート等)、無機繊維(ガラス繊維,炭素繊維等)、合成樹脂繊維(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、アイオノマー樹脂等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタラート、ポリトリメチレンテレフタラート、ポリ乳酸等のポリエステル;ナイロン等のポリアミド)等が挙げられる。不織布には、芯・鞘型繊維、サイド・バイ・サイド型繊維、島/海型繊維等の複合繊維;中空タイプの繊維;扁平、Y型、C型等の異型繊維;潜在捲縮又は顕在捲縮の立体捲縮繊維;水流、熱、エンボス加工等の物理的負荷により分割する分割繊維等が混合されていてもよい。
【0074】
不織布の製造方法としては、例えば、ウェブ(フリース)を形成し、繊維同士を物理的・化学的に結合させる方法が挙げられ、ウェブの形成方法としては、例えば、スパンボンド法、乾式法(カード法、スパンボンド法、メルトブローン法、エアレイド法等)、湿式法等が挙げられ、結合方法としては、例えば、サーマルボンド法、ケミカルボンド法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法、スパンレース法等が挙げられる。このようにして製造された不織布の他、水流交絡法によりシート状に形成したスパンレースをトップシート2として使用してもよい。また、肌側の面に凹凸をつけた不織布(例えば、熱収縮繊維等を含有する下層側を収縮させることで上層側に凹凸を形成した不織布、ウェブ形成時にエアーを当てることで凹凸を形成した不織布等)をトップシート2として使用してもよい。このように肌側の面に凹凸を形成することにより、トップシート2と肌との間の接触面積を低減させることができる。
【0075】
トップシート2の厚み、坪量、密度等は、使用者の液状排泄物が透過し得る範囲で適宜調整することができる。トップシート2として不織布を使用する場合、液状排泄物の透過性、肌触り等の観点から、不織布を構成する繊維の繊度、繊維長、密度、不織布の坪量、厚み等を適宜調整することができる。
【0076】
トップシート2の隠ぺい性を高める観点から、トップシート2として使用する不織布に酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の無機フィラーを含有させてもよい。不織布の繊維が芯鞘タイプの複合繊維である場合、芯のみに無機フィラーを含有させてもよいし、鞘のみに含有させてもよい。
【0077】
バックシート3は、使用者の液状排泄物が透過し得ないシートであり、吸収体4に吸収された液状排泄物の漏れを防止する目的で、使用者の着衣(下着)と接触する面に設けられている。バックシート3は、着用時のムレを低減させるために、液不透過性に加えて、透湿性を有することが好ましい。
【0078】
バックシート3は、使用者の液状排泄物を透過し得ない限り特に限定されない。バックシート3としては、例えば、防水処理を施した不織布、合成樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート等)フィルム、不織布と合成樹脂フィルムとの複合シート(例えば、スパンボンド、スパンレース等の不織布に通気性の合成樹脂フィルムが接合された複合フィルム)、耐水性の高いメルトブローン不織布を強度の強いスパンボンド不織布で挟んだSMS不織布等が挙げられる。
【0079】
吸収体4において、吸収コア8は、セルロース系吸水性繊維と、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物をモノマー成分として含む熱可塑性樹脂繊維とを含有しており、吸水性繊維は、主として吸収コア8の液体吸収性及び保持性に関与し、熱可塑性樹脂繊維は、主として吸収コア8の強度(特に、液体吸収後の湿潤時強度)に関与する。
【0080】
吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維は、混合状態で吸収コア8に含有されている。繊維同士の交点(例えば、熱可塑性樹脂繊維同士の交点、熱可塑性樹脂繊維と吸水性繊維との交点)は、熱可塑性樹脂繊維の熱融着により連結されている。これにより、吸収コア8の強度(特に、液体吸収後の湿潤時強度)が向上する。また、繊維同士は機械的に交絡され、熱可塑性樹脂繊維間、吸水性繊維間又は熱可塑性樹脂繊維−吸水性繊維間に形成された水素結合によっても連結されている。なお、吸収コア8が、その他の繊維を含む場合、熱可塑性樹脂繊維及び/又は吸水性繊維は、その他の繊維と連結されていてもよい。
【0081】
上記熱融着は、例えば、吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含有する混合材料を熱可塑性樹脂繊維の融点以上の温度で加熱することにより実施される。加熱温度は、熱可塑性樹脂繊維の種類に応じて適宜調節することができる。熱可塑性樹脂繊維の融点以上の温度は、熱可塑性樹脂繊維の一部が融解する温度以上であればよく、例えば、熱可塑性樹脂繊維が芯鞘型複合繊維である場合、鞘成分が融解する温度以上であればよい。
【0082】
吸収コア8において、吸水性繊維の、熱可塑性樹脂繊維に対する質量比は、約1.0〜約9.0であり、この範囲で適宜変更可能であるが、好ましくは約1.5〜約4.0である。上記質量比が約9.0を超えると吸収コア8の強度(特に、液体吸収後の湿潤時強度)が低下する傾向がある。上記質量比が約1.0未満であると、吸収コア8の液体吸収性が低下する傾向がある。
【0083】
吸収コア8は、好ましくは約0.06〜約0.14g/cm3、より好ましくは約0.07〜約0.12g/cm3、そしてさらに好ましくは約0.08〜約0.1g/cm3の密度を有する。吸収コアの、液体吸収性と、吸収後の強度との観点からである。
【0084】
吸収コア8の密度は、吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含有する混合材料の高密度化により、所望の範囲に調節されている。吸収コア8の密度を一定範囲に維持するためには、繊維の弾性回復を抑制し、吸収コア8の嵩を一定範囲に維持する必要がある。この点、水素結合(例えば、吸水性繊維間、熱可塑性樹脂繊維間、吸水性繊維−熱可塑性樹脂繊維間等で形成された水素結合)が、吸収コア8の嵩の維持に寄与する。水素結合は、例えば、熱可塑性樹脂繊維の酸素原子(例えば、カルボキシル基、アシル基、エーテル結合等の酸素原子)と、セルロースの水素原子(例えば、水酸基の水素原子)との間で形成される。なお、水素結合は、吸収コア8に吸収された液体により切断されるので、吸収コア8に含有される吸収性材料(必須成分である吸水性繊維、任意成分である高吸水性材料)の膨潤を阻害しない。
【0085】
セルロース系吸水性繊維としては、例えば、針葉樹又は広葉樹を原料として得られる木材パルプ(例えば、砕木パルプ、リファイナーグランドパルプ、サーモメカニカルパルプ、ケミサーモメカニカルパルプ等の機械パルプ;クラフトパルプ、サルファイドパルプ、アルカリパルプ等の化学パルプ;半化学パルプ等);木材パルプに化学処理を施して得られるマーセル化パルプ又は架橋パルプ;バガス、ケナフ、竹、麻、綿(例えばコットンリンター)等の非木材パルプ;レーヨン繊維等の再生繊維等が挙げられる。
【0086】
不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物をモノマー成分として含む熱可塑性樹脂繊維は、強度、水素結合性、熱融着性等の点から、適宜選択することができ、特に限定されるものではない。
【0087】
熱可塑性樹脂繊維としては、例えば、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物を含むビニルモノマーをポリオレフィンとグラフト重合することにより生成された変性ポリオレフィンあるいは上記変性ポリオレフィンと他の樹脂との混合ポリマーを鞘成分とし、変性ポリオレフィンよりも融点が高い樹脂を芯成分とする芯鞘型複合繊維等が挙げられる。
【0088】
不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物としては、例えば、マレイン酸又はその誘導体、無水マレイン酸又はその誘導体、フマル酸又はその誘導体、マロン酸の不飽和誘導体、コハク酸の不飽和誘導体等のビニルモノマーが挙げられ、それ以外のビニルモノマーとしては、ラジカル重合性を有する汎用モノマー、例えば、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル等の(メタ)アクリル酸エステル類等が挙げられる。マレイン酸の誘導体又は無水マレイン酸の誘導体としては、例えば、シトラコン酸、無水シトラコン酸、無水ピロシンコン酸等が挙げられ、フマル酸の誘導体又はマロン酸の不飽和誘導体としては、例えば、3−ブテン−1、1−ジカルボン酸、ベンジリデンマロン酸、イソプロピリデンマロン酸等が挙げられ、コハク酸の不飽和誘導体としては、例えば、イタコン酸、無水イタコン酸等が挙げられる。
【0089】
変性ポリオレフィンの幹ポリマーとしては、直鎖低密度ポリエチレン(LLDPE)、低密度ポリエチレン(LDPE)、中密度ポリエチレン(MDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリプロピレン、ポリブチレン、これらを主体とした共重合体(例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−アクリル酸共重合体(EAA)、アイオノマー樹脂等)が挙げられる。
【0090】
幹ポリマーに対するビニルモノマーのグラフト重合は、例えば、ラジカル開始剤を用いて、ポリオレフィンに不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸無水物とビニルモノマーとを混合し、ランダム共重合体からなる側鎖を導入する方法、異種モノマーを順次重合し、ブロック共重合体からなる側鎖を導入する方法等の常法に従って実施することができる。
【0091】
鞘成分は、変性ポリオレフィン単独であってもよいし、変性ポリオレフィンと他の樹脂との混合ポリマーであってもよい。他の樹脂としてはポリオレフィンが好ましく、変性ポリオレフィンの幹ポリマーと同種のポリオレフィンがさらに好ましい。例えば、幹ポリマーがポリエチレンである場合、他の樹脂もポリエチレンであることが好ましい。
【0092】
芯成分として使用される樹脂は、変性ポリオレフィンよりも融点が高い樹脂である限り特に限定されず、例えば、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド;ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリ乳酸、ポリグリコール酸をはじめとする直鎖状又は分岐鎖状の炭素数20までのポリヒドロキシアルカン酸等のポリエステル及びこれらを主体とした共重合体、あるいはアルキレンテレフタレートを主成分として他の成分を少量共重合してなる共重合ポリエステル等が挙げられる。弾性反発性を有するのでクッション性が高いという観点、工業的に安価に得られるという経済的な観点等から、PETが好ましい。
【0093】
鞘成分と芯成分の複合比は10/90〜90/10の範囲なら紡糸可能であるが、30/70〜70/30が好ましい。鞘成分比が減少し過ぎると熱融着性が低下し、増加し過ぎると紡糸性が低下する。
【0094】
熱可塑性樹脂繊維には、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤、中和剤、造核剤、エポキシ安定剤、滑剤、抗菌剤、難燃剤、帯電防止剤、顔料、可塑剤等の添加剤を必要に応じて添加してもよい。熱可塑性樹脂繊維は、界面活性剤、親水剤等により親水化処理されていることが好ましい。
【0095】
熱可塑性樹脂繊維の繊維長は、特に限定されないが、エアレイド方式でパルプと混合する場合、好ましくは約3〜約70mm、さらに好ましくは約5〜約20mmである。この範囲を下回ると、吸水性繊維との接合点の数が減少するため、吸収コア8に対して十分な強度を付与することができない。一方、この範囲を上回ると、解繊性が著しく低下して未解繊状態のものが多数発生するため、地合ムラが発生し、吸収コア8の均一性が低下する。また、熱可塑性樹脂繊維の繊度は、好ましくは約0.5〜約10dtex、さらに好ましくは約1.5〜約5dtexである。繊度が約0.5dtex未満であると解繊性が低下し、約10dtexを超えると繊維本数が少なくなり強度が低下する。
【0096】
熱可塑性樹脂繊維には、3次元捲縮形状を付与してもよい。これにより、繊維配向が平面方向に向いた場合でも、繊維の挫屈強度が厚み方向に働くので、外圧が加えられても潰れにくくなる。3次元捲縮形状としては、例えば、ジクザク状、Ω状、スパイラル状等が挙げられ、3次元捲縮形状の付与方法としては、例えば、機械捲縮、熱収縮による形状付与等が挙げられる。機械捲縮は、紡糸後の連続で直鎖状の繊維に対し、ライン速度の周速差、熱、加圧等によって制御可能であり、単位長さ辺りの捲縮個数が多いほど外圧下に対する挫屈強度が高められる。捲縮個数は、通常約5〜約35個/インチ、好ましく約15〜約30個/インチである。熱収縮による形状付与では、例えば、融点の異なる2種以上の樹脂からなる繊維に熱を加えることにより、融点差に起因して生じる熱収縮の差を利用して、3次元捲縮が可能である。繊維断面の形状としては、例えば、芯鞘型複合繊維の偏芯タイプ、サイドバイサイドタイプが挙げられる。このような繊維の熱収縮率は、好ましくは約5〜約90%、さらに好ましくは約10〜約80%である。
【0097】
吸収コア8は、吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維に加えて、高吸水性材料(例えば、高吸水性樹脂、高吸水性繊維等)を含有することが好ましい。高吸水性材料の含有量は、吸収コア8の通常約5〜約80質量%、好ましくは約10〜約60質量%、さらに好ましくは約20〜約40質量%である。
【0098】
高吸水性材料としては、例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系の高吸水性材料が挙げられる。デンプン系又はセルロース系の高吸水性材料としては、例えば、デンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物等が挙げられ、合成ポリマー系の高吸水性材料としては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系等の高吸水性樹脂(Superabsorbent Polymer:SAP)等が挙げられるが、これらのうちポリアクリル酸塩系(特に、ポリアクリル酸ナトリウム系)の高吸水性樹脂が好ましい。高吸水性材料の形状としては、例えば、粒子状、繊維状、鱗片状等が挙げられ、粒子状である場合、粒径は、好ましくは約50〜約1000μmであり、さらに好ましくは約100〜約600μmである。
【0099】
吸収コア8は、所望の機能を有するために、銀、銅、亜鉛、シリカ、活性炭、アルミノケイ酸塩化合物、ゼオライト等を含有してもよい。これにより、消臭性、抗菌性、吸熱効果等の機能を有することができる。
【0100】
吸収コア8は、色素等により着色されていてもよい。これにより、吸水性繊維と熱可塑性樹脂繊維とが均一に分散されているか否かの視認が容易である。また、吸収された液体の色をマスキングすることができる。例えば、吸収される液体が尿である場合には青色系に、経血である場合には緑色系に着色しておくことにより、使用者に清潔感を覚えさせることができる。
【0101】
吸収コア8の厚み、坪量等は、生理用ナプキン1が備えるべき特性(例えば、吸収性、強度、軽量性等)に応じて適宜調整することができる。吸収コア8は、通常約0.1〜約15mm、好ましくは約1〜約10mm、そしてより好ましくは約2〜約5mmの厚さを有し、そして通常約20〜約1000g/m2、好ましくは約50〜約800g/m2、そしてより好ましくは約100〜約500g/m2の坪量を有する。なお、吸収コア8の厚さ、坪量等は、その全体にわたって一定であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。
【0102】
吸収コア8の繊維密度は、トップシート2側の面からバックシート3側の面に向けて高くなっていることが好ましい。このような繊維密度勾配により、吸収コア8のトップシート2側ではスポット性が高く、吸収コア8のバックシート3側では拡散性が高いので、吸収コア8が、優れた液体透過性及び保持性を有し、トップシート2からの液状排泄物の溢れ出しを防止することができる。
【0103】
吸収体4は、トップシート2と一体化されていてもよい。吸収体4がトップシート2と一体化されている場合、生理用ナプキン1に力(例えば、使用者の歩行、立ち座り等の動作による力)が加えられても、トップシート2と、吸収体4、具体的には吸収コア8との離間が防止されるため、トップシート2から吸収体4への液体移行性が維持される。これにより、トップシート2の表面ドライ性が向上し、使用者にベタツキ感やヌレ感を与えにくい。一体化方法としては、例えば、エンボス加工、加熱流体による融着、超音波、ホットメルト型接着剤等が挙げられる。
【0104】
トップシート2と吸収体4との間に、セカンドシートを設けてもよい。セカンドシートは、トップシート2と同様、使用者の液状排泄物が透過し得る限り特に限定されない。セカンドシートとしては、トップシート2と同様の具体例が挙げられる。
【0105】
基材シート10は、液透過性及び吸収体保持性を有するものである限り特に限定されないが、低コスト性及び吸収体保持性の観点からは、粉砕パルプを主材料とし湿式法で成形されるティッシュが好ましい。また、複数の吸収コア部分を保持する観点からは、基材シート10は、トップシート2に関して説明されるのと同様の不織布であることが好ましい。
また、基材シート10は、伸縮性を有することができ、伸縮性を有する基材シートとしては、例えば、特開2008−248460号に記載される伸縮性不織布が挙げられる。
【0106】
<第2実施形態>
第2実施形態では、トップシート2とバックシート3との間に、吸収コア8に代えて、吸水性繊維及び熱可塑性樹脂繊維を含有する混合材料に高圧水蒸気を噴射して高密度化することにより得られた吸収コア8'(図示せず)が設けられている。なお、吸収コア8'の構成は、高圧水蒸気の噴射を利用して密度調整されている点を除き、吸収コア8の構成と同一であり、必要がある場合を除き、説明を省略する。
【0107】
吸収コア8'の密度は、高圧水蒸気の噴射を利用した高密度化により所望の範囲に調節されている。混合材料に高圧水蒸気が噴射されると、混合材料の内部に水蒸気が浸透し、水素結合(例えば、吸水性繊維間、熱可塑性樹脂繊維間、吸水性繊維−熱可塑性樹脂繊維間等で形成された水素結合)が切断され、混合材料が軟化する。従って、高密度化に要する圧力が減少し、軟化した混合材料は容易に密度調整可能である。密度調整された混合材料が乾燥して水素結合が再形成されると、繊維の弾性回復(嵩の増加)が抑制され、吸収コア8'の密度が一定範囲に維持される。
【0108】
高圧水蒸気の噴射による高密度化は、熱可塑性樹脂繊維に不飽和カルボン酸無水物(例えば、無水マレイン酸又はその誘導体)がモノマー成分として含まれる場合に、特に好適である。熱可塑性樹脂繊維に含まれる不飽和カルボン酸無水物基が水蒸気と反応して不飽和カルボン酸となると、水素結合を形成可能な酸素原子の数が増加するので、密度調整された繊維の弾性回復(嵩の増加)が効果的に抑制される。
【0109】
高圧水蒸気の噴射による高密度化は、例えば、熱可塑性樹脂繊維を吸水性繊維と接着させた後に実施される。高圧水蒸気の温度、蒸気圧等は、求められる密度範囲等に応じて適宜調節される。高圧水蒸気の温度は、熱可塑性樹脂繊維の融点(例えば、熱可塑性樹脂繊維が芯鞘型複合繊維である場合、鞘成分の融点)未満であることが好ましい。高圧水蒸気は、単位表面積あたり約0.03kg/m2〜約1.23kg/m2で噴射することが好ましい。高圧水蒸気の蒸気圧力は、通常約0.1〜約2.0Ma、好ましくは約0.3〜約0.8Maである。
【0110】
吸収コア8'は、好ましくは約40〜約900g/m2、そしてより好ましくは約100〜約400g/m2の坪量を有する。上記坪量が約40g/m2未満であると、繊維量が少なく、高圧水蒸気の噴射による高密度化が難しくなる傾向があり、そして上記坪量が約900g/m2を越えると、繊維量が多く、水蒸気の内部浸透が難しくなる傾向がある。
【0111】
吸収コア8'の表面には、高圧水蒸気の噴射によって形成された畝部及び溝部が存在していてもよい。畝部及び溝部の数、間隔等は、高圧水蒸気を噴射するノズルの数、ピッチ等に応じて変化する。なお、高圧水蒸気が噴射される部分が溝部となる。
【0112】
高圧水蒸気は、混合材料の全体に噴射してもよいし、一部に噴射してもよい。また、噴射する高圧水蒸気の温度、蒸気圧等を混合材料の部分ごとに変化させてもよい。高圧水蒸気を混合材料に部分的に噴射することにより、又は噴射する高圧水蒸気の温度、蒸気圧等を混合材料の部分ごとに変化させることにより、吸収コア8'の密度分布を変化させることができる。
【0113】
高圧水蒸気は、混合材料をプレスしながら噴射してもよいし、プレスせずに噴射してもよい。混合材料の一部分はプレスしながら高圧水蒸気を噴射し、他の部分はプレスせずに高圧水蒸気を噴射することにより、吸収コア8'の密度分布を変化させることができる。例えば、一部が開口するメッシュコンベアベルト間を通過させながら混合材料に高圧水蒸気を噴射すると、メッシュコンベアベルトの開口部分ではプレスされることなく高圧水蒸気が直接当てられ、メッシュコンベアベルトの非開口部分ではプレスされながら高圧水蒸気が当てられるので、密度分布を変化させることができる。
【0114】
なお、高圧水蒸気の噴射により高密度化する場合、他の方法と比較して、次の点で有利である。プレスロール成形によって混合材料を高密度化する場合、繊維の反発力に勝る繊維間結合力を付与するために高圧縮が必要である。また、高圧縮により一旦は圧縮されても、繊維が弾性回復し、嵩が元に戻ってしまう。一方、プレスロールと水スプレーを組み合わせて混合材料を高密度化する場合、坪量が100g/m2以下であれば、混合材料の内部に水分を浸透させることができるが、坪量が100g/m2を超えると、混合材料の内部に水分を浸透させることが困難となり、混合材料の内部に水素結合を形成させることができない。
【0115】
また、過剰な水分を与えれば、混合材料の内部に水分を浸透させることが可能となるが、この場合、水分を蒸発させるために過剰な熱量と時間を要するため、生産性が低下する。これに対して、高圧水蒸気の噴射により高密度化する場合、混合材料の内部に水蒸気が浸透し、水素結合(例えば、吸水性繊維間、熱可塑性樹脂繊維間、吸水性繊維−熱可塑性樹脂繊維間等で形成された水素結合)が切断され、混合材料が軟化する。従って、高密度化に要する圧力が減少し、軟化した混合材料は容易に密度調整可能となる。また、水蒸気は容易に蒸発し、乾燥に要する時間が短いので、生産性が向上する。
【0116】
<第3実施形態>
第3実施形態に係る生理用ナプキンでは、複数の吸収コア部分が、長手方向(Y軸方向)と平行且つ幅方向(X軸方向)と平行に配置されている。
以下、第3実施形態に係る生理用ナプキンについて説明するが、第3実施形態に係る生理用ナプキンでは、吸収コア部分の配列を除いて第1実施形態に係る生理用ナプキン1と同一であるため、同一部分の説明は省略する。
【0117】
第3実施形態では、図3に示されるように、複数の吸収コア部分9が、長手方向(Y軸方向)と平行且つ幅方向(X軸方向)と平行に配置されている。このように配置することにより、生理用ナプキン1が、長手方向と平行である複数の折軸LFと、幅方向と平行である複数の折軸WFとを有することになり、生理用ナプキン1が、使用者の体の立体的形状に添いやすくなり、そして歩行等の運動の際の使用者の動作に追従して、長手方向と平行且つ幅方向と平行に折れ曲がりやすくなり、経血が漏れにくくなる。
【0118】
なお、図3では、説明のため、トップシート及びサイドシートが省略されている。また、図3では、折軸は、便宜上、その一部のみ記載されている。
【0119】
<第4実施形態>
第4実施形態に係る生理用ナプキンでは、複数の吸収コア部分が、サイズの異なる2種の吸収コア部分を含む。
以下、第4実施形態に係る生理用ナプキンについて説明するが、第4実施形態に係る生理用ナプキンでは、吸収コア部分のサイズを除いて第1実施形態に係る生理用ナプキン1と同一であるため、同一部分の説明は省略する。
【0120】
第4実施形態では、図4に示されるように、複数の吸収コア部分9が、複数の第1吸収コア部分9aと、第1吸収コア部分9aよりも生理用ナプキン1の平面方向のサイズが小さい複数の第2吸収コア部分9bとから成り、第1吸収コア部分9aが、生理用ナプキン1の長手方向中央領域に配置されており、そして第2吸収コア部分9bが、生理用ナプキン1の長手方向両端領域に配置されている。
【0121】
このように配置することにより、生理用ナプキン1の長手方向中央領域、すなわち、排泄口当接域では、経血の吸収性及び保持性、並びに体圧等の外圧に対する形態保持性に優れる。また、このように配置することにより、その長手方向両端領域では、使用者の体の立体的形状に添いやすく、そして歩行等の運動に追従しやすくなり、使用者と生理用ナプキン1との間に隙間が生じにくく、フィット性に優れる。
なお、図4では、説明のため、トップシート及びサイドシートが省略されている。
【0122】
第4実施形態に用いられる複数種の吸収コア部分は、2回以上に分けて製造された、サイズの異なる2種の吸収コア部分を、所望の配置に配列されることにより製造することができ、あるいはサクションドラムの凹部の形状、具体的には凹部の長さ及び幅を変えることにより、サイズの異なるウェブを形成し、次いで高圧水蒸気を噴射しながらプレスすることにより、一括して製造することができる。詳細な製法は、後述する。
【0123】
<第5実施形態>
第5実施形態に係る生理用ナプキンでは、複数の吸収コア部分が、密度の異なる2種の吸収コア部分を含む。
以下、第5実施形態に係る生理用ナプキンについて説明するが、第5実施形態に係る生理用ナプキンでは、吸収コア部分の密度を除いて第1実施形態に係る生理用ナプキン1と同一であるため、同一部分の説明は省略する。
【0124】
第5実施形態では、図5に示されるように、複数の吸収コア部分9が、複数の低密度吸収コア部分9cと、低密度吸収コア部分9cよりも密度が高い、複数の高密度吸収コア部分9dとから成り、低密度吸収コア部分9cが、生理用ナプキン1の中央領域に配置されており、そして高密度吸収コア部分9dが、生理用ナプキン1の周縁領域に配置されている。
【0125】
このように配置することにより、生理用ナプキン1の中央領域、すなわち、排泄口当接域では、経血の吸収性及び保持性、並びにクッション性に優れ、そして生理用ナプキン1の周縁領域では、使用者の体の立体的形状、及び歩行等の運動に追従し、そして使用者と生理用ナプキン1との間に隙間が生じにくく、フィット性に優れる。
なお、図4では、説明のため、トップシート及びサイドシートが省略されている。
【0126】
第5実施形態に用いられる複数種の吸収コア部分は、2回以上に分けて製造された、密度の異なる2種の吸収コア部分を、所望の配置に配列されることにより製造することができ、あるいはサクションドラムの凹部の形状、具体的には凹部の深さを変えることにより、坪量(高さ)の異なるウェブを形成し、次いで高圧水蒸気を噴射しながら同一の高さにプレスすることにより、一括して製造することができる。詳細な製法は、後述する。
【0127】
第1実施形態から第5実施形態の生理用ナプキンにおいて、吸収コア部分は、生理用ナプキンの平面方向において、長方形の形状を有する。しかし、本発明の吸収性物品では、吸収コア部分の、吸収性物品の平面方向における形状は長方形に制限されない。本発明の吸収性物品において、吸収コア部分の、吸収性物品の平面方向における形状としては、例えば、略円形、略楕円形、略三角形、略四角形、例えば、略正方形及び略長方形、略菱形、略多角形、例えば、略五角形及び略六角形、及び一又は複数の頂角が180°超である多角形が挙げられる。
【0128】
第1実施形態から第5実施形態の生理用ナプキンにおいて、吸収コア部分は、生理用ナプキンの幅方向において、長方形の断面形状を有する。しかし、本発明の吸収性物品では、吸収コア部分の、吸収性物品の幅方向における断面形状は長方形に限定されない。本発明の吸収性物品において、吸収コア部分の、吸収性物品の幅方向及び/又は長手方向における断面形状としては、例えば、略四角形、例えば、略正方形及び略長方形、及び略台形が挙げられる。
【0129】
第1実施形態から第5実施形態の生理用ナプキン1において、吸収コア部分の、トップシート側の面は平面である。しかし、本発明の吸収性物品では、吸収コア部分の、液透過性層側の面は、平面以外の構造、例えば、畝溝構造を有していてもよい。
例えば、図6に示されるように、吸収コア部分9が、トップシート2側の面に複数の畝部41及び溝部42を有することができる。
なお、図6は、図1のII−II線における端面図に相当する。
【0130】
第1実施形態から第5実施形態の生理用ナプキン1において、吸収コア部分の、液不透過性層側の面は平面である。しかし、本発明の吸収性物品では、吸収コア部分の、液不透過性層側の面は、平面以外の構造、例えば、畝溝構造を有していてもよい。
例えば、図7に示されるように、吸収コア部分9が、バックシート3側の面に複数の畝部43及び溝部44を有することができる。
なお、図7は、図1のII−II線における端面図に相当する。
【0131】
第1実施形態〜第5実施形態に係る生理用ナプキンの製造工程の具体例を図8に基づいて説明する。
[第1工程(I)]
機械方向MDへ回転するサクションドラム151の周面151aには、吸収コア材料を詰める型として凹部153が周方向に所要のピッチで形成されている。サクションドラム151が回転して凹部153が材料供給部152へ進入すると、サクション部156が凹部に作用し、材料供給部152から供給された吸収コア材料は凹部153に真空吸引される。
【0132】
フード付きの材料供給部152は、サクションドラム151を覆うように形成されており、材料供給部152は、セルロース系吸水性繊維と熱可塑性樹脂繊維との混合材料21を空気搬送により凹部153に対して供給する。また、材料供給部152は、高吸水性ポリマー粒子22を供給する粒子供給部158を備えており、凹部153に対して高吸水性ポリマー粒子22を供給する。セルロース系吸水性繊維と熱可塑性樹脂繊維と高吸水性ポリマー粒子とは、混合状態で凹部153に供給され、凹部153には層状材料224が形成される。凹部153に形成された層状材料224は、機械方向MDに向かって進み、塗工機159から塗工された粘着剤をその上に有するキャリアシート150上に転写される。
なお、キャリアシート150は、後に吸収コアの基材シートを形成する。
【0133】
図9は、サクションドラム151の部分展開図である。図8に示されるように、サクションドラム151は、その周面151aに、凹部153を有し、凹部153は、複数の凹部部分153aを有する。各凹部部分153aは、他の凹部部分から独立しており、そして各凹部部分153aが、吸収コアの吸収コア部分に対応している。
このような構成を有することにより、カッター等の切断手段を用いることなく、複数の吸収コア部分を簡易に製造することができる。
【0134】
また、各凹部部分の深さを変化させることにより、形成される吸収コア部分の密度を変化させることができる。例えば、図5に示されるような、複数の低密度吸収コア部分9cと、複数の高密度吸収コア部分9dとから成る吸収コア部分9は、凹部153の中央領域の凹部部分の深さを、周縁領域の凹部部分の深さよりも浅くすることにより形成することができる。凹部部分153aの深さを浅くすることにより、形成される層状材料224の高さが低く、すなわち坪量が低くなり、第3工程において、メッシュコンベアベルト171,172で圧縮することにより、密度の低い低密度吸収コア部分を形成することができる。
【0135】
また、各凹部部分のサイズ(サクションドラムの周面上のサイズ)を変化させることにより、形成される吸収コア部分のサイズ(吸収性物品の平面方向のサイズ)を変更することができる。例えば、図4に示されるような、複数の第1吸収コア部分9aと、複数の第2吸収コア部分9bとから成る吸収コア部分9は、凹部153の長手方向中央領域の凹部部分153aのサイズを大きくすることにより形成することができる。
【0136】
さらに、各凹部部分の形状を変化させることによりことにより、形成される吸収コア部分の形状を変更することができる。例えば、各凹部部分の形状を、下底がサクションドラムの周面上にあり且つ上底がサクションドラムの中心よりにある錐台、例えば、円錐台、四角錐台等の形状とすることにより、吸収コア部分の形状を、錐台、例えば、円錐台、四角錐台等の形状とすることができる。
【0137】
[第2工程(II)]
キャリアシート150上に転写された層状材料224は、サクションドラム151の周面151aから離れて機械方向MDへ走行する。キャリアシート150には、未圧縮の状態にある層状材料224が機械方向MDにおいて間欠的に並んでいる。加熱部103は、層状材料224の上面に対して、加熱部104は、層状材料224の下面に対して、135℃に加熱された空気を風速5m/秒で吹き付ける。これにより、層状材料224中に含まれる熱可塑性樹脂繊維が溶融し、熱可塑性樹脂繊維同士、熱可塑性樹脂繊維−パルプ、熱可塑性樹脂繊維−高吸水性ポリマー粒子が結合(熱融着)した層状材料225が形成される。層状材料224に対して吹き付けられる加熱空気の条件(温度、風速、加熱時間)は、生産速度等に応じて適宜に制御される。
【0138】
[第3工程(III)]
一対を成すように上下に配置されている通気性のメッシュコンベアベルト171,172を、キャリアシート150上の層状材料225を圧縮しつつ機械方向MDへ走行させる。平行走行部175における上下方向dの寸法(メッシュコンベアベルト171,172間の距離)は、機械方向MDへ回転する上流側上ロール176と上流側下ロール177との間隙、及び下流側上ロール178と下流側下ロール179との間隙を調整することによって所要の値に設定されており、層状材料225はメッシュコンベアベアベルト171,172によって所要の厚さにまで圧縮される。図7において水平に延びる平行走行部175には、メッシュコンベアベルト171,172を挟んで対向するように蒸気噴射部173と蒸気サクション部174とが配置されている。
【0139】
蒸気噴射部173には、例えば約0.1〜約2mmの口径のノズル(図示せず)が約0.5〜約10mm、好ましくは約0.5〜約5mm、さらに好ましくは約0.5〜約3mmのピッチで層状材料225を横断するように、機械方向MDと上下方向TDとに直交する交差方向CD(図示せず)に配置されており、各ノズルには、蒸気ボイラー180で発生した水の沸点以上の温度の水蒸気が、圧力制御弁181で例えば0.1〜2.0MPaの蒸気圧に調整された高圧水蒸気となって配管182を介して供給される。各ノズルからは、メッシュコンベアベルト171,172によって圧縮された状態にある層状材料225に対して、メッシュコンベアベルト171を介して高圧水蒸気が噴射される。
【0140】
層状材料225に対して噴射される高圧水蒸気量は、メッシュコンベアベルト171,172の走行速度に応じて調整され、メッシュコンベアベルト171,172が約5〜約500m/分で走行しているとき、メッシュコンベアベルト171と向かい合っている層状材料225の表面積に対して約1.23kg/m2〜約0.03kg/m2の範囲で噴射されることが好ましい。水蒸気は、層状材料225の厚さ方向において、メッシュコンベアベルト171と、層状材料225と、メッシュコンベアベルト172とを順に通過して蒸気サクション部174による真空圧のサクション作用で回収される。高圧水蒸気を噴射された層状材料225は、機械方向MDへ進んでメッシュコンベアベルト171,172から分離され、第4工程に向かう。
【0141】
蒸気噴射部173のノズルの数、ピッチ等を調節することにより、高圧水蒸気が噴射された層状材料225の表面に、畝部及び溝部を形成することができる。なお、高圧水蒸気が噴射された部分は溝部となる。
【0142】
第3工程では、メッシュコンベアベルト171,172によって層状材料225が局部的に圧縮されないようにするために、メッシュコンベアベルト171,172の少なくとも一方に対しては、上下方向TDへ容易に変形し得る程度の可撓性を有するものが使用される。メッシュコンベアベルト171,172には、ステンレス合金や青銅等で形成された金属製線材のメッシュベルト、ポリエステル繊維、アラミド繊維等で形成されたプラスチック製のメッシュベルトを使用することができ、開孔金属プレートで形成された金属製のベルトをメッシュベルトに代えて使用してもよい。
【0143】
層状材料225が金属粉の混入を極度に嫌う場合には、プラスチック製のメッシュベルトを使用することが好ましい。また、プラスチック製のメッシュベルトであって高い耐熱性が求められる場合には、ポリフェニレンサルファイド樹脂製のメッシュベルトを使用することが好ましい。ポリフェニレンサルファイド樹脂を使用した10〜75メッシュの平織りメッシュベルトは、可撓性を有し、メッシュコンベアベルト171にもメッシュコンベアベルト172にも使用できる特に好ましいメッシュベルトの一例である。蒸気噴射部173や配管182には、適宜の保温対策を施したり、ドレン排出機構を設けたりすることが好ましい。そのようにすることによって、蒸気噴射部173等に生じたドレンがノズルから噴出されて層状材料225に水分を過剰に含ませることを防ぐことができる。
【0144】
層状材料225に向かって噴射される水蒸気には、水分である液分を含まない乾き蒸気である場合と、飽和蒸気である場合と、液分を含む湿り蒸気である場合とがある。水蒸気が湿り蒸気または飽和蒸気である場合には、パルプを容易に湿潤状態にして変形させることができる。乾き蒸気は、パルプに含まれる水分を気化させることができ、気化させた水分でパルプの変形を容易にすることが可能である。また、パルプが熱可塑性合成繊維であれば、乾き蒸気が持つ熱によってその熱可塑性合成繊維の変形を容易にすることができる。
【0145】
蒸気噴射部173は、それに加熱機構を設けておいて水蒸気を過熱水蒸気に変えて噴射することもできる。蒸気サクション部174は、吸引した高圧水蒸気が気水分離装置を通過した後に排気ブロワ(図示せず)へ向かうような配管を有するものであることが好ましい。なお、蒸気噴射部173と蒸気サクション部174との位置を入れ替えて、すなわち、蒸気噴射部173が下側となり、蒸気サクション部174が上側となる態様で実施することもできる。また、高圧水蒸気の回収が必要ではないときには、蒸気サクション174を配置することなく実施することもできる。
【0146】
[第4工程(IV)]
第4工程は、一般的な生理用ナプキンを製造する工程の例である。一対のロール300,301は第3工程で得られた吸収体226を所定の形状に切り抜く工程である。ロール302からトップシートが供給され、高圧搾部低圧搾部を有する加熱エンボス303,304でシールされ、トップシートと吸収体226が一体化される。その後、バックシート305が供給され、吸収体226がトップシートとバックシートに挟まれた状態で製品周縁部を加熱エンボスによりシールする工程306,307を通過し、最後に工程308,309により製品形状に切り取られる。
【0147】
なお、複数の吸収コア部分に分かれていない吸収コアを、第3工程と、第4工程の間で、複数の吸収コア部分に切断し、所望の位置に配置することもできる。
例えば、第1工程において、単一の凹部から形成された層状材料224を、粘着剤が塗工されていないキャリアシート150に転写し、第2工程及び第3工程を経た後、第4工程の前に、所望の吸収コア部分にカットし、キャリアシート上の所望の位置に接着剤を用いて固定することができる。
【実施例】
【0148】
以下、実施例に基づいて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲は実施例に限定されるものではない。
【0149】
[実施例1]
(1)吸収コア材料No.1〜No.5の調製
パルプ(ウエアーハウザー社製,NB416)と熱融着性複合繊維A(以下「複合繊維A」という)とを、5:5(No.1)、6.5:3.5(No.2)、8:2(No.3)、9:1(No.4)、10:0(No.5)の質量比で混綿し、吸収体材料No.1〜No.5(坪量200g/m2)を調製した。
【0150】
複合繊維Aは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を芯成分とし、無水マレイン酸を含むビニルポリマーでグラフト重合された高密度ポリエチレン(HDPE)を鞘成分とする芯鞘型複合繊維である。複合繊維Aの芯鞘比は50:50(質量比)、芯成分中の酸化チタン量は0.7質量%、繊度は2.2dtex、繊維長は6mmであった。
【0151】
吸収コア材料No.1〜No.5を、一般的なスルーエアー法によってボンディングし、複合繊維Aを加熱融着させ、吸収コアNo.1〜No.5を調製した。この際、加熱温度は135℃、風量は5m/秒、加熱時間は20秒に設定し、厚さを2.8mmに調整した。
【0152】
(2)吸収体No.1〜No.10の製造
吸収コアNo.1〜No.5を、20mm×10mm(長手方向×幅方向)のサイズにカットし、粘着剤を塗工した伸縮性不織布の上に、図1に示されるように、長手方向ピッチ及び幅方向ピッチを、それぞれ、2mm及び2mmとして千鳥状に配置し、吸収体No.1〜No.5を製造した。
【0153】
なお、上記伸縮性不織布は、特開2008−248460号の実施例1に従って製造された。上記伸縮性不織布は、ポリプロピレン(PP)繊維と、ポリウレタン(TPU)繊維とから構成され、坪量が27g/m2、ポリウレタン繊維(TPU)の混率が50質量%であった。
【0154】
また、20mm×10mm(長手方向×幅方向)のサイズにカットされた吸収コアNo.1〜No.5を、図3に示されるように、長手方向と平行且つ幅方向と平行に配置し、そして長手方向ピッチを2.2mmに変更した以外は、吸収体No.1〜No.5と同様にして、吸収体No.6〜No.10を製造した。
【0155】
(3)吸収性物品No.1〜No.10の製造
粘着剤を塗工したバックシートの上に、吸収体No.1〜No.10のいずれかを積み重ね、その上に粘着剤を間に挟んでセカンドシートを積層し、そしてその上に粘着剤を間に挟んでトップシートを積み重ねることにより、吸収性物品No.1〜No.10を製造した。
【0156】
トップシートは、上層及び下層の2層構造を有する不織布であり、上層は、PET/HDPE芯鞘型複合繊維(繊度:2.6dtex,繊維長:51mm)と、PET/HDPE芯鞘型複合繊維(繊度:2.8dtex,繊維長:51mm)とを6:4の質量比で含むエアスルー不織布であり、そして下層は、PET/HDPE芯鞘型複合繊維(繊度:3.3dtex,繊維長:38mm)のエアスルー不織布から構成され、そして不織布全体の坪量は25g/m2であった。
【0157】
セカンドシートは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を芯成分とし、高密度ポリエチレン(HDPE)を鞘成分とする芯鞘型複合繊維(繊度:2.8dtex,繊維長:38mm)から形成されたエアスルー不織布であり、坪量は25g/m2であった。
バックシートは、坪量25g/m2の低密度ポリエチレン(LDPE)と、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)とを主成分とするフィルムであった。
【0158】
(4)「ガーレ剛軟度」及び「ガーレ剛軟度保持率」の測定
吸収性物品No.1〜10のガーレ剛軟度及びガーレ剛軟度保持率を、本明細書に規定の方法に従って測定した。結果を、併せて表1に示す。
【0159】
【表1】
【0160】
表1に基づく考察は、以下の通りである。
複合繊維Aを含む吸収性物品は、吸収コア部分を千鳥状に配置したもの(吸収性物品No.1〜4)、及び平行に配置したもの(吸収性物品No.6〜9)の両方とも、ガーレ剛軟度(10回目)及びガーレ剛軟度保持率が高い。
【0161】
以上より、本発明の吸収性物品は、乾燥時のみならず、湿潤時においても、その剛性を保持できることは明らかである。
なお、千鳥状に配置された吸収コア部分を含む吸収性物品(吸収性物品No.1〜4)が、平行に配置したもの(吸収性物品No.6〜9)よりも高い剛性を有する理由は、千鳥状に配置された吸収コア部分を含む吸収性物品が、その全体に延びる折軸を有しないためである。
【0162】
(5)曲げ剛性
吸収性物品No.1〜5の湿潤条件下の試料の曲げ剛性(BW)、乾燥条件下の曲げ剛性(BD)、及び曲げ剛性保持率(100×BW/BD)を、本明細書に規定の方法に従って測定した。結果を、下記表2に示す。
【0163】
【表2】
【0164】
表2に基づく考察は、以下の通りである。
複合繊維Aを含む吸収性物品No.1〜4は、高い湿潤条件下の試料の曲げ剛性(BW)と、曲げ剛性保持率(100×BW/BD)とを有する。
以上より、本発明の吸収性物品は、乾燥時のみならず、湿潤時においても、その剛性を保持できることは明らかである。
以下、吸収コアが、複数の吸収コア部分を含む例ではないが、吸収コアそのものの性能を評価するために、以下の実施例2〜実施例4を行った。
【0165】
[実施例2]
(1)吸収コア材料A(A1〜A7)の調製
パルプ(ウエアーハウザー社製,NB416)と熱融着性複合繊維A(以下「複合繊維A」という)とを、9:1(A1)、8:2(A2)、6.5:3.5(A3)、5:5(A4)、3.5:6.5(A5)、2:8(A6)、0:10(A7)の質量比で混綿し、吸収コア材料A1〜A7(坪量200g/m2)を調製した。
【0166】
複合繊維Aは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を芯成分とし、無水マレイン酸を含むビニルポリマーでグラフト重合された高密度ポリエチレン(HDPE)を鞘成分とする芯鞘型複合繊維である。複合繊維Aの芯鞘比は50:50(質量比)、芯成分中の酸化チタン量は0.7重量%、繊度は2.2dtex、繊維長は6mmである。
【0167】
(2)吸収コア材料B(B1〜B9)の調製
パルプ(ウエアーハウザー社製,NB416)と熱融着性複合繊維B(以下「複合繊維B」という)とを、9:1(B1)、8.5:1.5(B2)、8:2(B3)、6.5:3.5(B4)、5:5(B5)、3.5:6.5(B6)、2:8(B7)、0:10(B8)、10:0(B9)の質量比で混綿し、吸収コア材料B1〜B9(坪量200g/m2)を調製した。
【0168】
複合繊維Bは、ポリエチレンテレフタレート(PET)を芯成分とし、一般的な高密度ポリエチレン(HDPE)を鞘成分とする芯鞘型複合繊維である。複合繊維Bの芯鞘比は50:50(質量比)、芯成分中の酸化チタン量は0.7重量%、繊度は2.2dtex、繊維長は6mmである。
【0169】
(3)吸収コアサンプルA(A1〜A7),B(B1〜B9)の製造
吸収コア材料A1〜A7,B1〜B9を、一般的なスルーエアー法によってボンディングし、複合繊維A,Bを加熱融着し、吸収コアサンプルA1〜A7,B1〜B9を調製した。この際、加熱温度は135℃、風量は5m/秒、加熱時間は20秒に設定した。
【0170】
(4)最大引張強度の測定
[乾燥時の最大引張強度(N/25mm)]
標準時(温度20℃,湿度60%)のサンプル片(長さ150mm×幅25mm,5個)を、引張試験機(島津製作所,AG−1kNI)につかみ間隔100mmで取り付け、100mm/分の引張速度でサンプル片が切断されるまで荷重(最大点荷重)を加え、サンプル片の長さ方向(MD方向)における幅25mmあたりの最大引張強度を測定した。
【0171】
[湿潤時の最大引張強度(N/25mm)]
サンプル片(長さ150mm×幅25mm)をイオン交換水中にそれが自重で沈下するまで浸漬した後、又はサンプル片を1時間以上水中に沈めた後、上記と同様に、サンプル片の長さ方向(MD方向)における幅25mmあたりの最大引張強度を測定した(ISO 9073−3,JIS L 1913 6.3)。
なお、他の実施例における乾燥時及び湿潤時の最大引張強度の測定も、上記と同様にして実施した。
【0172】
(5)吸収コアサンプルの坪量、厚み及び密度の測定
吸収コアサンプルの密度は、次式に基づいて算出した。
D(g/cm3)=B(g/m2)/T(mm)×10-3
[式中、D、B及びTは、それぞれ、吸収コアサンプルの密度、坪量及び厚みを表す。]
【0173】
吸収コアサンプルの坪量(g/m2)の測定は、以下の通り、実施した。
吸収コアサンプルから100mm×100mmの試験片を3枚切り出し、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)における各試験片の質量を直示天秤(研精工業株式会社製 電子天秤HF−300)で測定し、3つの測定値の平均値から算出した吸収コアサンプルの単位面積当たりの質量(g/m2)を、吸収コアサンプルの坪量とした。
なお、吸収コアサンプルの坪量の測定に関し、上記で特に規定しない測定条件については、ISO 9073−1又はJIS L 1913 6.2に記載の測定条件を採用した。
【0174】
吸収コアサンプルの厚み(mm)の測定は、以下の通り、実施した。
厚み計(株式会社大栄科学精器製作所製 FS−60DS,測定面44mm(直径),測定圧3g/cm2)により、標準状態(温度23±2℃,相対湿度50±5%)における吸収コアサンプルの異なる5つの部位(各部位の直径は44mm)を定圧3g/cm2で加圧し、各部位における加圧10秒後の厚みを測定し、5つの測定値の平均値を、吸収コアサンプルの厚みとした。
なお、他の実施例における吸収コアサンプルの坪量、厚み及び密度の測定も、上記と同様にして実施した。
【0175】
(6)結果及び考察
測定結果を表3に示す。
【0176】
【表3】
【0177】
表3に基づく考察は次の通りである。
吸収コアサンプルAにおいて、パルプに対する複合繊維Aの混合比(質量比)が1/9未満であると、湿潤時の最大引張強度が2N/25mm未満となると予想される。従って、湿潤時の強度を考慮すると、吸収コアサンプルAでは、強度保持の観点から、パルプに対する複合繊維Aの混合比(質量比)が1/9以上であることが好ましい。
【0178】
吸収コアサンプルBにおいて、パルプに対する複合繊維Bの混合比(質量比)が1.5/8.5以下であると、湿潤時の最大引張強度が2N/25mm未満となる。従って、湿潤時の強度を考慮すると、吸収コアサンプルBでは、パルプに対する複合繊維Bの混合比(質量比)が1.5/8.5を上回ることが好ましい。
【0179】
パルプと複合繊維A,Bの混合比(質量比)が同一である吸収コアサンプル同士(例えば、吸収コアサンプルA1と吸収コアサンプルB1)を比較すると、最大引張強度(乾燥時及び湿潤時)は、いずれの混合比(質量比)においても、吸収コアサンプルAの方が吸収コアサンプルBよりも大きい。また、パルプと複合繊維A,Bとの混合比(質量比)が9:1〜3.5:6.5の範囲にあると(吸収コアサンプルA1〜A5,B1〜B6)、乾燥時の最大引張強度と湿潤時の最大引張強度との差(乾燥時の最大引張強度−湿潤時の最大引張強度)は、吸収コアサンプルAの方が吸収コアサンプルBよりも大きい。
【0180】
このような強度の差は、吸収コアサンプルAでは、無水マレイン酸が有するアシル基及びエーテル結合の酸素原子と、セルロースのOH基との間に水素結合が生じているが、吸収コアサンプルBでは、このような水素結合は生じていない点に起因すると考えられる。
【0181】
このことは、ウェブ状態のサンプルの最大引張強度からも裏付けられる。すなわち、ウェブ状態のサンプルの最大引張強度を測定したところ、いずれのサンプルでも0.4N/25mm未満であり(表3参照)、強度の差が、絡合の程度の差に起因するものではなく、水素結合の形成の有無に起因することを示唆している。なお、ウェブ状態のサンプルは、吸収コア材料を基材に積層させた後、何の処理もしていないサンプルであり、ニードルパンチ等の絡合処理、熱風、エンボス、エネルギー波等による加熱処理、接着剤による処理等のいずれの処理も施されていない。
【0182】
また、下記表4に示すように、複合繊維Aは複合繊維Bよりも融解熱熱量が大きいことから、複合繊維Aは複合繊維Bよりも結晶化度が高く、強度の差は、複合繊維A,B間の結晶化度(繊維自体の接合強度)の差にも起因すると考えられる。
【0183】
【表4-1】
【0184】
【表4-2】
【0185】
なお、特開2004−270041号公報には、無水マレイン酸がグラフト重合された変性ポリオレフィンは、無水マレイン酸の無水カルボン酸基が開裂してセルロース繊維表面の水酸基と共有結合するため、セルロース繊維との接着性が良好であることが記載されているが、本結果では、共有結合の形成に起因する強度増加は観察されなかった。
【0186】
[実施例3]
(1)吸収コアサンプルC(C1〜C7),D(D1〜D9)の製造
キャリアシート(UCKN社製,ティッシュ坪量:14g/m2)に吸収コア材料A1〜A7(実施例2参照)を載置し、一般的なスルーエアー法によってボンディングし、複合繊維Aを加熱融着(加熱温度:135℃,風量:5m/秒,加熱時間:20秒)した後、スチームジェット(SJ)ベルトプレス機にて密度を約0.08g/cm3(0.0793〜0.0817g/cm3)に調整し、吸収コアサンプルC1〜C7(120mm×120mm,各3枚)を製造した。
吸収コア材料B1〜B9(実施例2参照)を使用して同様に吸収コアサンプルD1〜D9(120mm×120mm,各3枚)を製造した。
【0187】
使用したSJベルトプレス機の構成を図10に示す。
図10(a)に示すように、SJベルトプレス機9は、メッシュコンベアベルト91a,91bと、蒸気ノズル92と、サクションボックス93とを備えており、互いに対向する蒸気ノズル92及びサクションボックス93の間に、一対のメッシュコンベアベルト91a,91bで挟持された吸収コアを搬送し、蒸気ノズル92より吸収コアに向かって高圧水蒸気を噴出し、吸収コアを圧縮する。吸収コアを通過した水蒸気はサクションボックス93で吸引されて排気される。吸収コアの厚みの調整は、一対のメッシュコンベアベルト91a,91bの間隔の調整により可能である。
【0188】
メッシュコンベアベルト91a,91bは、ポリフェニレンサルファイド製平織りメッシュコンベア(日本フィルコン社製)であり、縦横方向線径は0.37mm、縦線は34本/インチ、横線は32本/インチである。メッシュコンベアベルト91a,91b間の距離は、1mm又は0.2mmに調整されており、ライン速度は200m/秒である。
【0189】
蒸気ノズル92には、図10(b)に示すように、口径0.5mmの開孔部が開孔ピッチ2mm,5mmで形成されており、そこから噴出する水蒸気の蒸気圧は0.7MPaであり、水蒸気処理量は単位面積あたり1.27kg/m2である。
【0190】
(2)吸収性(浸透時間,液ハケ時間)の測定
各吸収コアサンプル片に、表面シート(商品名ソフィ はだおもいの表面シートを使用)を載せ、その上に穴あきアクリル板(中央に40mm×10mmの穴、200mm(長さ)×100mm(幅))を重ねた。オートビュレット(柴田化学器械工業(株),マルチドジマットE725−1型)を使用して、アクリル板の穴に向けて、人工経血(イオン交換水1Lに対して、グリセリン80g,カルボキシメチルセルロースナトリウム8g,塩化ナトリウム10g,炭酸水素ナトリウム4g,赤色102号8g、赤色2号2g,黄色5号2gを加えて十分に攪拌したものを使用)を90ml/分で3mlを注入した。注入開始後、アクリル板の穴に滞留する人工経血が無くなるまでの時間を浸透時間(秒)、注入開始後、表面シート内から人工経血が無くなるまでの時間をハケ時間(秒)とした。
【0191】
(3)乾燥時及び湿潤時の最大引張強度の測定
各吸収コアサンプル片の乾燥時及び湿潤時の最大引張強度を実施例2と同様に測定した。
【0192】
(4)結果及び考察
測定結果を表5に示す。
【0193】
【表5】
【0194】
表5に示すように、パルプと複合繊維Aとの混合比(質量比)が9:1〜5:5の範囲にあると(吸収コアサンプルC1〜C4)、吸収コアサンプルの吸収性が高かった。一方、パルプと複合繊維Aとの混合比(質量比)が3.5:6.5〜0:10の範囲にあると(吸収コアサンプルC5〜C7)、吸収コアサンプルの吸収性は低下する傾向にあった。
【0195】
表5に示すように、吸収コアサンプルCにおいて、パルプに対する複合繊維Aの混合比(質量比)が1/9未満であると、湿潤時の最大引張強度が2N/25mm未満となると予想される。従って、湿潤時の強度を考慮すると、吸収コアサンプルCでは、強度保持の観点から、パルプに対する複合繊維Aの混合比(質量比)が1/9以上であることが好ましい。
【0196】
表5に示すように、吸収コアサンプルDにおいて、パルプに対する複合繊維Bの混合比(質量比)が1.5/8.5以下であると、湿潤時の最大引張強度が2N/25mm未満となる。従って、湿潤時の強度を考慮すると、吸収コアサンプルDでは、強度保持の観点から、パルプに対する複合繊維Bの混合比(質量比)が1.5/8.5を上回ることが好ましい。
【0197】
表5に示す結果から、吸収コアの密度が約0.08g/cm3(0.0793〜0.0817g/cm3)であり且つパルプと複合繊維Aとの混合比(質量比)が9:1〜5:5の範囲にあると、吸収コアが、特に高い強度と吸収性とを有していた。これは、複合繊維Aが、複合繊維Bよりも少量で(従って、吸収性を阻害することなく)、吸収コアの強度を担保できるからである。
【0198】
[実施例4]
実施例3において、密度を約0.08g/cm3(0.0793〜0.0817g/cm3)に固定した系において、強度及び吸収性の観点から、パルプと複合繊維Aの混合比(質量比)の最適範囲を検討した。
本実施例では、吸収性の観点から、密度の最適範囲を検討した。
【0199】
パルプ(ウエアーハウザー社製,NB416)と複合繊維Aとを表6に示す混合比(質量比)で混綿したもの(坪量200g/m2)を使用して、実施例3と同様にして、様々な密度(0.05,0.06,0.07,0.08,0.09,0.1,0.12,0.13,0.14g/cm3)の吸収コアサンプルE1〜E9を製造し、吸収性(液ハケ時間)測定した。
測定結果を表6に示す。
【0200】
【表6】
【0201】
表6に示す測定結果から、次のことが明らかとなった。
パルプと複合繊維Aとの混合比(質量比)が9:1〜5:5の範囲にあり、吸収コアの密度が0.06〜0.14g/cm3の範囲にある場合に、特に高い液ハケ性能(具体的には、人工経血3cc滴下後の液ハケ時間が90秒以内)が得られた。
【0202】
本発明は、以下のJ1〜J16に関する。
[J1]
液透過性層と、液不透過性層と、上記液透過性層及び上記液不透過性層の間に設けられた吸収体とを備えた吸収性物品であって、
上記吸収体が、複数の吸収コア部分から成る吸収コアと、上記複数の吸収コア部分を固定するための基材シートとを含み、
上記複数の吸収コア部分が、互いに離間して上記基材シートに固定されており、
上記吸収コアが、セルロース系吸水性繊維と、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物をモノマー成分として含む熱可塑性樹脂繊維とを含有し、そして
上記熱可塑性樹脂繊維が、上記吸水性繊維及び/又は他の熱可塑性樹脂繊維と連結している、
ことを特徴とする、上記吸収性物品。
【0203】
[J2]
上記吸収コアにおいて、上記吸水性繊維の、上記熱可塑性樹脂繊維に対する質量比が、1.0〜9.0である、J1に記載の吸収性物品。
[J3]
上記吸収コアが、0.06〜0.14g/cm3の密度を有する、J1又はJ2に記載の吸収性物品。
【0204】
[J4]
上記吸収コアが、40〜900g/m2の坪量を有する、J1〜J3のいずれか一項に記載の吸収性物品。
[J5]
上記基材シートが、10〜100%の最大荷重時伸長率を有する、J1〜J4のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0205】
[J6]
上記吸収性物品が、湿潤条件下でガーレ剛軟度を計10セット測定した場合に、170〜400mNのガーレ剛軟度(第10セット)を有し、そして77〜100%のガーレ剛軟度保持率を有し、ここで、上記ガーレ剛軟度保持率が、次の式:
ガーレ剛軟度保持率(%)
=100×第10セットのガーレ剛軟度/第1セットのガーレ剛軟度
により規定される、
J1〜J5のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0206】
[J7]
上記吸収コア部分が、20〜40%の、湿潤条件下の曲げ剛性の、乾燥条件下の曲げ剛性に対する比率を有する、J1〜J6のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0207】
[J8]
上記複数の吸収コア部分が、上記吸収性物品の平面方向において、千鳥状に配置されているか、又は上記吸収性物品の長手方向及び/若しくは幅方向と平行に配置されている、J1〜J7のいずれか一項に記載の吸収性物品。
[J9]
上記吸収コアが、上記セルロース系吸水性繊維及び上記熱可塑性樹脂繊維を含有する混合材料に高圧水蒸気を噴射して高密度化することにより得られた、J1〜J8のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0208】
[J10]
上記高圧水蒸気の温度が、上記熱可塑性樹脂繊維の融点未満である、J9に記載の吸収性物品。
[J11]
上記熱可塑性樹脂繊維が、不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物を含むビニルモノマーをポリオレフィンにグラフト重合することにより生成した変性ポリオレフィンであるか、あるいは上記変性ポリオレフィンと他の樹脂との混合ポリマーを鞘成分とし、上記変性ポリオレフィンよりも融点が高い樹脂を芯成分とする芯鞘型複合繊維である、J1〜J10のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0209】
[J12]
上記不飽和カルボン酸、不飽和カルボン酸無水物又はそれらの混合物が、マレイン酸又はその誘導体、無水マレイン酸又はその誘導体、あるいはそれらの混合物である、J1〜J11のいずれか一項に記載の吸収性物品。
[J13]
高吸水性材料を含有する、J1〜J12のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【0210】
[J14]
上記吸収コアの上記液透過性層側の面及び/又は上記液不透過性層側の面に畝溝構造が形成されている、J1〜J13のいずれか一項に記載の吸収性物品。
[J15]
上記液透過性層側の面に形成された畝溝構造が上記吸収性物品の長手方向に延びており、上記液不透過性層側の面に形成された畝溝構造が上記吸収性物品の短手方向に延びている、J14記載の吸収性物品。
【0211】
[J16]
上記吸収コアの繊維密度が、上記液透過性層側の面及び/又は上記液不透過性層側の面に向けて高くなっている、J1〜J15のいずれか一項に記載の吸収性物品。
【符号の説明】
【0212】
1 生理用ナプキン(吸収性物品)
2 トップシート(液透過性シート)
3 バックシート(液不透過性シート)
4 吸収体
5a,5b サイドシート
6 本体部
7a,7b ウイング部
8 吸収コア
9 吸収コア部分
10 基材シート
11a,11b,12a,12b シール部
13a,13b,14 粘着部
15 固定部
41,43 畝部
42,44 溝部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10