特許第6234065号(P6234065)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6234065タッチパネル絶縁膜形成用の感光性樹脂組成物、及びこれを用いて得られたタッチパネル
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  • 特許6234065-タッチパネル絶縁膜形成用の感光性樹脂組成物、及びこれを用いて得られたタッチパネル 図000014
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234065
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】タッチパネル絶縁膜形成用の感光性樹脂組成物、及びこれを用いて得られたタッチパネル
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20171113BHJP
   G03F 7/032 20060101ALI20171113BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20171113BHJP
   C08F 290/14 20060101ALI20171113BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   G03F7/004 501
   G03F7/032 502
   G03F7/075 501
   C08F290/14
   G03F7/038 501
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-108898(P2013-108898)
(22)【出願日】2013年5月23日
(65)【公開番号】特開2014-2375(P2014-2375A)
(43)【公開日】2014年1月9日
【審査請求日】2016年4月18日
(31)【優先権主張番号】特願2012-120171(P2012-120171)
(32)【優先日】2012年5月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】新日鉄住金化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132230
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 一也
(74)【代理人】
【識別番号】100082739
【弁理士】
【氏名又は名称】成瀬 勝夫
(74)【代理人】
【識別番号】100087343
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 智廣
(74)【代理人】
【識別番号】100088203
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 英一
(72)【発明者】
【氏名】滑川 崇平
(72)【発明者】
【氏名】柳本 徹也
(72)【発明者】
【氏名】本間 直人
【審査官】 本田 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−288235(JP,A)
【文献】 特開2006−003860(JP,A)
【文献】 特開2012−053180(JP,A)
【文献】 特開2011−039165(JP,A)
【文献】 特開2004−169028(JP,A)
【文献】 特開昭61−275834(JP,A)
【文献】 特開2010−217683(JP,A)
【文献】 特開2000−034328(JP,A)
【文献】 特開平10−316751(JP,A)
【文献】 特開2011−048064(JP,A)
【文献】 特開2010−201821(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/004 − 7/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i)一般式(1)で表される1分子内にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂、(ii)少なくとも1個の重合性二重結合を有する重合性化合物、(iii)一般式(3)で表される表面処理剤で処理され、表面処理度が0.5〜4質量%の範囲内である平均粒子径が10〜300nmのシリカゾル、(iv)光重合開始剤、及び(v)シランカップリング剤を必須の成分として含有するタッチパネル絶縁膜形成用の感光性樹脂組成物であり、固形分中における必須成分の含有量が、(i)アルカリ可溶性樹脂10〜70質量%、(iii)シリカゾル30〜70質量%、(v)シランカップリング剤0.1〜20質量%であると共に、(ii)重合性化合物は(i)/(ii)(質量比)=20/80〜95/5の範囲を満たし、(iv)光重合開始剤は[(iv)/〔(i)+(ii)〕](質量比)=0.005〜0.1の範囲を満たすことを特徴とするタッチパネル絶縁膜形成用感光性樹脂組成物。
【化1】
(ただし、R1、R2、R3、及びR4は、独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示し、R5は水素原子又はメチル基を示す。また、Xは-CO-、-SO2-、-C(CF3)2-、-Si(CH3)2-、-CH2-、-C(CH3)2-、-O-、9,9-フルオレニレン基又は直結合を示し、Yは4価のカルボン酸残基を示す。Zは下記一般式(2)で表される置換基を示し、nは1〜20の数を表す。)
【化2】
(但し、Lは2または3価のカルボン酸残基を示し、pは1または2である)
【化3】
(但し、R6は分子内にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示し、R7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R8はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を示し、qは1〜3である)
【請求項2】
(vi)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ化合物を、(i)成分のアルカリ可溶性樹脂と(ii)成分の重合性化合物の総和に対して[(vi)/〔(i)+(ii)〕](質量比)=0.05〜0.3の範囲で更に含有することを特徴とするタッチパネル絶縁膜形成用感光性樹脂組成物。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の感光性樹脂組成物を硬化させて得た硬化膜を絶縁膜として有するタッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定の表面処理剤(カップリング剤)で処理されたシリカゾルを必須成分とし、得られた硬化膜が光学特性、硬度、密着性、耐光性、耐薬品性等に優れて、タッチパネルの絶縁膜を形成するのに適した感光性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルター用保護膜、ハードコート材、有機デバイス用封止材等の表面保護材料には、透明性、耐光性、耐候性、耐熱性、平坦性、表面硬度、密着性、耐薬品性等が求められる。また、タッチパネルの需要拡大にみられるように、フラットパネルディスプレイの需要が続いており、これらの分野においても表面保護材料の要求特性は高まっている。
【0003】
図1には、一例として、互いに直交する方向に延びるX電極とY電極とを同一面上に形成したタッチパネルの部分断面図を示す。この形態のタッチパネルでは、裏面側にシールド層8を有してガラスやアクリル樹脂等からなる透明な基板1の上に、ITOやZnO等の透光性を有する材料からなるX電極2とY電極3とが配置されており、これらの電極を平坦化膜4が覆い、接着層5を介して保護基板6が設けられている。ここで、X電極2及びY電極3は、それぞれが複数の島状電極と、同極の島状電極同士を接続するブリッジ電極とを有しており、互いのブリッジ電極を立体的に交差させて、この交差部分に絶縁膜7を形成することで、X極とY極とが電気的に接触することなく配置される(図1では、X側の島状電極2aとブリッジ電極2b、及びY側のブリッジ電極3bを示している)。
【0004】
上記の例をはじめ、タッチパネルの構造は薄型化、軽量化の傾向にあり、なかでも、電極間を埋める絶縁膜には、透明性、基板への密着性、平坦性、表面硬度、耐光性、耐候性、耐熱性といった諸特性のほか、タッチパネル製造プロセスにおける要求特性を満足する必要性がある。すなわち、電極間に隙間なく、かつ正確に配するためにフォトリソグラフィによって絶縁膜を形成しようとすれば、絶縁膜を形成する材料(組成物)には現像性が求められる。また、絶縁膜上にITOを蒸着し、部分的にエッチングして電極を形成する製造プロセスを経る場合には、エッチング工程で使用される薬剤に対する耐薬品性(耐アルカリ性、耐酸性)を備えていなければならない。
【0005】
ここで、シリカ粒子や無機フィラー等の無機化合物を含有した樹脂硬化物は、フレキシブル回路基板用保護材料、層間絶縁膜、カラーフィルター用保護膜などに広く用いられている。例えば、特開2009-217037号公報には、回路基板用保護材料として使用される感光性組成物が記載されており、約30μmの細線形成能や高い冷熱衝撃耐性を具備できるとしている。しかしながら、この組成物に含有されるシリカ粒子の粒径が0.5μmと比較的に大きいことから、例えば、カラーフィルター用保護膜で高硬度要求が強い場合等のように、高透明かつ高硬度のコーティング材用途を想定してシリカ粒子を高濃度に含有させた場合には、解像度や透明性の低下が懸念される。
【0006】
また、特開2010-32916号公報には、ナノシリカ粒子を含んだ光学フィルム用の耐擦傷性層材料として使用される感光性組成物が記載されており、白化がなく、耐擦傷性に優れた防眩フィルムが得られるとしている。ところが、このフィルムを得るのに用いられる硬化性樹脂は特にアルカリ現像性を有しておらず、アルカリ現像性を利用した光加工プロセスを使用する用途には適用することができない。
【0007】
また、特開2002-179993号公報には、シリカ粒子を含んだ樹脂組成物の熱硬化性カラーフィルター用保護材料としての応用が例示されており、カラーフィルター上の異物による膜厚分布を低減できることが開示されている。しかしながら、この技術においては樹脂組成物に使用する樹脂種によっても膜厚の不均一を是正する効果を図っており、シリカ粒子が直接与える効果は限られている。
【0008】
一方、特開2010-27033号公報には、無機化合物を含有しないタッチパネルの絶縁膜用感光性樹脂組成物が開示されている。この感光性樹脂組成物によれば、透明性及びガラス基板や透明導電膜との密着性、耐擦傷性に優れていることが記載されている。しかしながら、現像性、耐薬品性及び高温高湿度下での密着性について言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009-217037号公報
【特許文献2】特開2010-32916号公報
【特許文献3】特開2002-179993号公報
【特許文献4】特開2010-27033号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明者らは、上述のような、従来のシリカ粒子や無機フィラー等の無機化合物を含有する感光性樹脂組成物における課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の表面処理剤で処理したシリカゾルを用いることにより、感光性樹脂組成物中の該シリカゾルの含有量を増やしても現像性を損なわず、しかも、透明性、耐光性、耐候性、耐熱性、平坦性、表面硬度、密着性、及び耐薬品性に優れた硬化膜を得ることができて、タッチパネルの絶縁膜を形成するのに好適であることを見出し、本発明を完成させた。
【0011】
従って、本発明の目的は、アルカリ現像性を維持したまま透明性、耐光性、耐候性、耐熱性、平坦性、表面硬度、密着性、耐薬品性等に優れて、タッチパネルの絶縁膜を形成するのに適した感光性樹脂組成物を提供することにある。
【0012】
さらに、本発明の別の目的は、光や熱による劣化、経時変色等の恐れのない絶縁膜を備えたタッチパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は、(i)一般式(1)で表される1分子内にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂、(ii)少なくとも1個の重合性二重結合を有する重合性化合物、(iii)一般式(3)で表される表面処理剤で処理された平均粒子径が10〜300nmのシリカゾル、(iv)光重合開始剤、及び(v)シランカップリング剤を必須の成分として含有するタッチパネル絶縁膜形成用の感光性樹脂組成物であり、固形分中における必須成分の含有量が、(i)アルカリ可溶性樹脂10〜70質量%、(iii)シリカゾル30〜70質量%、(v)シランカップリング剤0.1〜20質量%であると共に、(ii)重合性化合物は(i)/(ii)(質量比)=20/80〜95/5の範囲を満たし、(iv)光重合開始剤は[(iv)/〔(i)+(ii)〕](質量比)=0.005〜0.1の範囲を満たすことを特徴とするタッチパネル絶縁膜形成用感光性樹脂組成物である。
【化1】
(ただし、R1、R2、R3、及びR4は、独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示し、R5は水素原子又はメチル基を示す。また、Xは-CO-、-SO2-、-C(CF3)2-、-Si(CH3)2-、-CH2-、-C(CH3)2-、-O-、9,9-フルオレニレン基又は直結合を示し、Yは4価のカルボン酸残基を示す。Zは下記一般式(2)で表される置換基を示し、nは1〜20の数を表す。)
【化2】
(但し、Lは2または3価のカルボン酸残基を示し、pは1または2である)
【化3】
(但し、R6は分子内にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示し、R7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R8はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を示し、qは1〜3である)
【0014】
また、本発明において好ましくは、上記(i)〜(v)成分に加えて、更に、(vi)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ化合物を含むのがよく、その場合には、(i)成分のアルカリ可溶性樹脂と(ii)成分の重合性化合物の総和に対して[(vi)/〔(i)+(ii)〕](質量比)=0.05〜0.3の範囲で含有するタッチパネル絶縁膜形成用感光性樹脂組成物である。
【0015】
更に、本発明は、上記感光性樹脂組成物を硬化させて得た硬化膜を絶縁膜として有するタッチパネルである。
【発明の効果】
【0016】
本発明の感光性樹脂組成物は、特定の表面処理剤により処理したシリカゾルを含むため、従来、電子材料分野などで使用されていた樹脂組成物に比べて現像性を維持したまま透明性、耐光性、耐候性、耐熱性、平坦性、表面硬度、密着性、耐薬品性等に優れた硬化物を得ることができる。さらに本発明では、感光性樹脂組成物中の特定の表面処理剤により処理したシリカゾルの含有量を増やしても現像性を損なわれない。そのため、本発明の感光性樹脂組成物は、タッチパネルの絶縁膜を形成するのに極めて有用である。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は、タッチパネルの一例を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の感光性樹脂組成物について詳細に説明する。
本発明の感光性樹脂組成物は、一般式(1)で表される1分子内にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂を含有する樹脂組成物である。
【0019】
本発明の一般式(1)で表される1分子内にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂の製造方法について詳細に説明する。
まず、ビスフェノール類から誘導される2個のグリシジルエーテル基を有するエポキシ化合物、特に好ましくは下記一般式(4)で表されるビスフェノール類から誘導されるエポキシ化合物に(メタ)アクリル酸を反応させて得ることができる。
【化4】
(ただし、R1、R2、R3、及びR4は、独立に水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子又はフェニル基を示す。また、Xは-CO-、-SO2-、-C(CF3)2-、-Si(CH3)2-、-CH2-、-C(CH3)2-、-O-、9,9-フルオレニレン基又は直結合を示す。ここで、9,9-フルオレニレン基は、下記一般式(5)で表される基をいう。)
【化5】
【0020】
このようなエポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応は、公知の方法を使用することができ、例えばエポキシ化合物1モルに対し、約2モルの(メタ)アクリル酸を使用して行う。この反応で得られる反応物は、例えば特開平4−355450号公報等に記載されている。この反応で得られる反応物は重合性二重結合を含有するジオール化合物(A)であり、下記一般式(6)で表されるようなエポキシ(メタ)アクリレート化合物である。
【化6】
【0021】
一般式(6)で表されるビスフェノール型エポキシ化合物からのエポキシ(メタ)アクリレートを与える好ましいビスフェノール類としては、例えば、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ケトン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)スルホン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)ジメチルシラン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)メタン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)プロパン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)エーテル等が挙げられる。また、Xが9,9−フルオレニル基である9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-クロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-ブロモフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3-フルオロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジクロロフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジブロモフェニル)フルオレン等も好ましく挙げられる。更には、4,4'-ビフェノール、3,3'-ビフェノール等も好ましく挙げられる。
【0022】
一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂は、上記のようなビスフェノール類から誘導されるエポキシ化合物から得ることができるが、かかるエポキシ化合物の他にフェノールノボラック型エポキシ化合物や、クレゾールノボラック型エポキシ化合物等も2個のグリシジルエーテル基を有する化合物を有意に含むものであれば使用することができる。また、ビスフェノール類をグリシジルエーテル化する際に、下記一般式(7)で表わされるオリゴマー単位が混入することになるが、この一般式(7)におけるmの平均値が0〜10、好ましくは0〜2の範囲であれば、本樹脂組成物の性能に問題はない。
【化7】
【0023】
上記一般式(6)で表されるようなエポキシ(メタ)アクリレート化合物及びそれに続く一般式(1)で表される1分子内にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂の製造において使用する溶媒、触媒等の反応条件に関しては特に制限されないが、例えば、水酸基を持たず、反応温度より高い沸点を有する溶媒を反応溶媒として用いるのがよく、このような溶媒としては、例えば、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のセロソルブ系溶媒や、ジグライム、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等の高沸点のエーテル系若しくはエステル系の溶媒や、シクロヘキサノン、ジイソブチルケトン等のケトン系溶媒等であるのがよい。また、使用する触媒としては、例えばテトラエチルアンモニウムブロマイド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド等のアンモニウム塩、トリフェニルホスフィン、トリス(2、6-ジメトキシフェニル)ホスフィン等のホスフィン類等の公知のものを使用することができる。これらについては特開平9-325494号公報に詳細に記載されている。
【0024】
次に、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸との反応で得られる重合性二重結合を含有するジオール化合物(A)と酸成分とを反応させて一般式(1)で表される1分子内にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂を得ることができる。酸成分としては、エポキシ(メタ)アクリレート化合物分子中の水酸基と反応し得るテトラカルボン酸二無水物(B)、ジカルボン酸、トリカルボン酸又はその酸一無水物(C)を使用するのがよい。この酸成分のカルボン酸残基は飽和炭化水素又は不飽和炭化水素のいずれを有していてもよい。また、これらカルボン酸残基には−O−、−S−、カルボニル基等のヘテロ元素を含む結合を含んでいてもよい。このうち、テトラカルボン酸二無水物(B)としては、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物や脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物、芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物等を使用することができ、ジカルボン酸、トリカルボン酸又はその酸一無水物(C)としては、鎖式炭化水素ジカルボン酸及びトリカルボン酸、脂環式ジカルボン酸及びトリカルボン酸、芳香族ジカルボン酸及びトリカルボン酸等を使用することができる。
【0025】
ここで、鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物としては、例えば、ブタンテトラカルボン酸、ペンタンテトラカルボン酸、ヘキサンテトラカルボン酸の酸二無水物等を挙げることができ、更には脂環式炭化水素の置換基がついた鎖式炭化水素テトラカルボン酸の酸二無水物でもよい。
【0026】
また、脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物としては、シクロブタンテトラカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸、シクロヘキサンテトラカルボン酸、シクロへプタンテトラカルボン酸、ノルボルナンテトラカルボン酸の酸二無水物等を挙げることができ、更には鎖式炭化水素の置換基がついた脂環式テトラカルボン酸の酸二無水物でもよい。また、芳香族テトラカルボン酸の酸二無水物としては、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸、ジフェニルスルホンテトラカルボン酸の酸二無水物等を挙げることができる。本発明における酸二無水物として好ましくはビフェニルテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸の酸二無水物であり、さらに好ましくはビフェニルテトラカルボン酸、ジフェニルエーテルテトラカルボン酸の酸二無水物である。これら酸二無水物は、2種以上を併せて使用することもできる。なお、これらについては、酸二無水物ではなく単なるテトラカルボン酸を使用してもよい。
【0027】
また、飽和鎖式炭化水素ジカルボン酸及びトリカルボン酸としては、例えば、コハク酸、アセチルコハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、シトラリンゴ酸、マロン酸、グルタル酸、クエン酸、酒石酸、オキソグルタル酸、ピメリン酸、セバシン酸、スベリン酸、ジグリコール酸等を挙げることができ、更には脂環式炭化水素基の置換基がついた飽和鎖式炭化水素ジカルボン酸及びトリカルボン酸でもよい。また、飽和脂環式炭化水素ジカルボン酸及びトリカルボン酸としては、例えば、ヘキサヒドロフタル酸、シクロブタンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、ノルボルナンジカルボン酸、ヘキサヒドロトリメリット酸等を挙げることができ、更には鎖式炭化水素の置換基がついた脂環式ジカルボン酸及びトリカルボン酸でもよい。また、不飽和ジカルボン酸及びトリカルボン酸としては、例えば、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、テトラヒドロフタル酸、メチルエンドメチレンテトラヒドロフタル酸、クロレンド酸、トリメリット酸挙げることができる。これらのなかで、好ましくはコハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸、ヘキサヒドロトリメリット酸、フタル酸、トリメリット酸であり、さらに好ましくはコハク酸、イタコン酸、テトラヒドロフタル酸である。なお、これら酸一無水物は、2種以上を併せて使用することもできる。
【0028】
上記の重合性二重結合を含有するジオール化合物(A)と酸成分(B)および(C)との反応の方法については、特に限定されるものではなく、例えば特開平9-325494号公報に記載されているように、反応温度が90〜140℃で重合性二重結合を含有するジオール化合物(A)とテトラカルボン酸二無水物(B)を反応させるような公知の方法を採用することができる。好ましくは、化合物の末端がカルボキシル基となるように、重合性二重結合を含有するジオール化合物(A)、テトラカルボン酸二無水物(B)、ジカルボン酸、トリカルボン酸又はその酸一無水物(C)とのモル比が(A):(B):(C)=1:0.2〜1.0:0.2〜1.0となるように定量的に反応させることが望ましい。この場合、重合性二重結合を含有するジオール化合物(A)に対する酸成分の総量〔(B)+(C)〕のモル比[〔(B)+(C)〕/(A)]が0.5〜1.0となるように定量的に反応させることが望ましい。モル比が0.5未満の場合は、未反応の重合性二重結合を含有するジオール化合物の含有量が増大してアルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性低下が懸念される。一方、モル比が1.0を超える場合は、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の末端が酸無水物となり、また、未反応酸二無水物の含有量が増大してアルカリ可溶性樹脂組成物の経時安定性低下が懸念される。(A)、(B)及び(C)の各成分のモル比は上記一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の酸価、分子量を調整する目的で、上述の範囲で任意に変更できる。
【0029】
また、本発明の上記一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常1000〜100000であり、2000〜20000であることが好ましい。重量平均分子量が1000未満の場合は、アルカリ現像時のパターンの密着性が低下する恐れがある。
【0030】
本発明の感光性樹脂組成物の固形分中における上記一般式(1)のアルカリ可溶性樹脂、すなわち(i)成分の含有量は10〜70質量%であり、20〜50質量%が好ましい。固形分中における(i)成分の含有量が少ないと硬化物の強度が低下する。反対に多過ぎると、本発明の感光性樹脂組成物中における、(iii)成分のシリカゾルの割合が減少し、シリカゾルによる表面硬度向上等の効果が発現しない。
【0031】
本発明の感光性樹脂組成物の樹脂成分としては、一般式(1)で表される1分子内にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂を必須成分として含めばよく、1分子内にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂以外の成分については、樹脂成分であってもよく、溶剤や充填材等の非樹脂成分であってもよい。ここで、樹脂成分とは、重合又は硬化させることにより樹脂となる成分を言い、光又は熱によって重合又は硬化するエポキシ樹脂、アクリル樹脂等が挙げられる。また、樹脂成分には、樹脂の他、オリゴマー、モノマーを含む。
【0032】
本発明において、感光性樹脂組成物としての特徴を生かすためには、下記(i)、(ii)、(iii)、(iv)及び(v)成分を必須の成分として含有する。すなわち、(i)一般式(1)で表される1分子内にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂、(ii)少なくとも1個の重合性二重結合を有する重合性化合物、(iii)一般式(3)で表される表面処理剤で処理された平均粒子径が10〜300nmのシリカゾル、(iv)光重合開始剤、及び(v)シランカップリング剤を必須の成分として含む。
【0033】
このうち、(ii)成分である少なくとも1個の重合性二重結合を有する重合性化合物としては、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等の水酸基を有するモノマーや、ペンタエリスリトールトリアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの付加物、ジペンタエリスリトールペンタアクリレートとヘキサメチレンジイソシアネートとの付加物等のウレタン(メタ)アクリレート類、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール変性ビスフェノールAジアクリレート等の多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステル類を例示することができ、その1種又は2種以上を使用することができる。
【0034】
(i)成分と、これらの(ii)成分との配合質量割合[(i)/(ii)]については、20/80〜95/5であり、好ましくは40/60〜90/10であるのが良い。(i)の1分子内にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂の配合割合が少ないと、硬化後の硬化物が脆くなるといった問題が生じる。反対に、(i)の1分子内にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂の配合割合が上記範囲より多くなると、樹脂成分に占める硬化性官能基の割合が少なく架橋構造の形成が不十分になるといった問題が生じるおそれがある。
【0035】
また、成分(iii)において、一般式(3)で表される特定の表面処理剤(カップリング剤)で処理されたシリカゾルとしては、例えば、日産化学工業(株)製メタノールシリカ、IPA-ST、NPC-ST-30、MEK-ST、PMA-ST、MIBK-ST等のオルガノシリカゾル、アドマテックス(株)製SO-E1、SO-C1、扶桑化学工業(株)製PL-1-IPA、PL-1-PGME、PL-1-MEK等の溶剤分散シリカゾルが挙げられる。シリカゾルの平均粒子径は、動的光散乱法の測定機器を用いてキュムラント法により得られる平均粒子径であり、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させて得た硬化物の透明性を保持する目的から10〜300nm、好ましくは10〜200nm、より好ましくは20〜100nmである。また、本発明の感光性樹脂組成物の固形分中におけるシリカゾルの含有量は30〜70質量%であり、40〜70質量%が好ましい。固形分中におけるシリカゾルの含有量が少ないと、シリカゾルによる表面硬度向上等の効果が発現しない。反対に多過ぎると、本発明の感光性樹脂組成物中における、(i)成分及び(ii)成分の割合が減少し、硬化物の強度が低下する。
【0036】
また、成分(iii)のシリカゾルの表面処理に用いる一般式(3)で表される表面処理剤においてR6は分子内にヘテロ原子を含んでもよい炭素数1〜10の炭化水素基を示す。これらの炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ヘキシル基、デシル基、3-グリシドキシプロピル基、ビニル基、スチリル基、3-メタクリロイルオキシプロピル基、3-アクリロイルオキシプロピル基等が挙げられる。このうち、R6が重合性二重結合を有する炭化水素基や反応性のあるエポキシ基等である表面処理剤を用いた場合、本発明の感光性樹脂組成物を硬化させる際の硬化収縮による密着性の低下が懸念されるので、硬化収縮が小さくなるシリカゾルの含有量が多い方が有利である。しかしながら、シリカゾルの含有量が多い場合は現像時に残渣が残りやすい傾向があるので、R6が重合性二重結合を有する炭化水素基や反応性のあるエポキシ基等である表面処理剤を用いた場合には、アルカリ現像においてアルカリ性の強い(pHの大きい)現像液を使用する必要性が出てくる。密着性を重視し、現像においてアルカリ性の強い現像液を使用する必要性が生じにくいという点からすると、R6が重合性二重結合、エポキシ基などの反応性基を含まない炭化水素基が好ましい。特に好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基である。一般式(3)におけるR7はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1〜4のアルキル基を示し、R8はそれぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基を示す。これらのアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基が挙げられるが、好ましくはメチル基又はエチル基である。一般式(3)におけるqは1〜3である。
【0037】
また、一般式(3)で表される表面処理剤によるシリカゾル表面のシラノール基の処理方法は、公知の方法を使用することができ、例えば特公平3-29823号に記載されているように、シリカゾルに表面処理剤、酸触媒、水を加えて加熱撹拌することで得ることができる。一般式(3)で表される表面処理剤によるシリカゾル表面のシラノール基の処理の比率は、用いるシリカゾルとカップリング剤の仕込み比等によって変わり、シリカゾルに使用する溶剤種、本発明の感光性樹脂組成物中の各成分に合わせて任意に変更できる。
【0038】
一般式(3)で表される表面処理剤により処理したシリカゾルには、一般式(3)からR7が1個脱離したR6(OR7)(q-1)R8(3-q)Si-O-の形の官能基が形成されることになり、1H-NMR分析により、R6,R7,R8を特定することができる。ここで、R6(OR7)(q-1)R8(3-q)Si-O-の形の官能基の量は、熱重量分析(TG)の重量減少量より求めることができる。具体的には、表面処理されたシリカゾルの固形分における熱重量損失の割合を表面処理度とする。TGの測定条件について、本発明では、先ず、窒素雰囲気下、室温から150℃まで10℃/minで昇温した後に150℃で30分保持して揮発成分を除去した。次いで、空気雰囲気下、150℃から550℃まで10℃/minで昇温した後に550℃で10分保持して有機成分をすべて燃焼、揮散させた。表面処理度は表面処理剤種、本発明の感光性樹脂組成物のアルカリ現像性によって任意に変更できるが、本発明においては0.5〜4質量%の範囲内にするのがよい。表面処理度が0.5質量%未満では有機媒質中での分散安定性が失われ凝集を引き起してしまい、反対に4質量%を超えるとアルカリ現像性が失われ残渣を生じてしまうおそれがある。
【0039】
また、成分(iv)の光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、p−ジメチルアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、ジクロロアセトフェノン、トリクロロアセトフェノン、p−tert−ブチルアセトフェノン等のアセトフェノン類、ベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p'-ビスジメチルアミノベンゾフェノン等のベンゾフェノン類、ベンジル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾインエーテル類、2-(o-クロロフェニル)-4,5-フェニルビイミダゾール、2-(o-クロロフェニル)-4,5-ジ(m-メトキシフェニル)ビイミダゾール、2-(o-フルオロフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2-(o-メトキシフェニル)-4,5-ジフェニルビイミダゾール、2、4,5-トリアリールビイミダゾール等のビイミダゾール系化合物類、2-トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル-5-(p-シアノスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール、2-トリクロロメチル-5-(p-メトキシスチリル)-1,3,4-オキサジアゾール等のハロメチルチアゾール化合物類、2,4,6-トリス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-メチル−4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-フェニル-4、6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-クロロフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシフェニル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシナフチル)-4,6-ビス(トリクロロRメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(3,4,5-トリメトキシスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン、2-(4-メチルチオスチリル)-4,6-ビス(トリクロロメチル)-1,3,5-トリアジン等のハロメチル−s−トリアジン系化合物類、1,2-オクタンジオン,1-[4-(フェニルチオ)フェニル]-,2-(o-ベンゾイルオキシム)、1-(4-フェニルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-o-ベンゾアート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1,2-ジオン-2-オキシム-o-アセタート、1-(4-メチルスルファニルフェニル)ブタン-1-オンオキシム-o-アセタート等のo-アシルオキシム系化合物類、ベンジルジメチルケタール、チオキサンソン、2-クロロチオキサンソン、2,4-ジエチルチオキサンソン、2-メチルチオキサンソン、2-イソプロピルチオキサンソン等のイオウ化合物、2-エチルアントラキノン、オクタメチルアントラキノン、1,2-ベンズアントラキノン、2,3-ジフェニルアントラキノン等のアントラキノン類、アゾビスイソブチルニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、クメンパーオキシド等の有機過酸化物、2-メルカプトベンゾイミダゾール、2-メルカプトベンゾオキサゾール、2-メルカプトベンゾチアゾール等のチオール化合物、トリエタノールアミン、トリエチルアミン等の第3級アミンなどが挙げられる。これらの光重合開始剤は、その1種又は2種以上を使用することができる。
【0040】
また、本発明は、成分(iv)の光重合開始剤に加えて、更に、(vii)熱重合開始剤を併用することができる。成分(vii)の熱重合開始剤としては、例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル、ジ-t-ブチルパーオキシヘキサヒドロテレフタレート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、1,1-t-ブチルパーオキシ-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン等の有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス-4-メトキシ-2,4-ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサノン-1-カルボニトリル、アゾジベンゾイル、2,2-アゾビス(1-アセトキシ-1-フェニルエタン)等のアゾ化合物、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム等の水溶性触媒及び過酸化物あるいは過硫酸塩と還元剤の組み合わせによるレドックス触媒等、通常のラジカル重合に使用できるものはいずれも使用することができる。成分(vii)の熱重合開始剤は、本発明の感光性樹脂組成物の保存安定性、硬化物の形成条件や硬化物の透明性を考慮して選定できる。
【0041】
(iv)成分の光重合開始剤の使用量は、1分子内にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂〔(i)成分〕、少なくとも1個の重合性二重結合を有する重合性化合物〔(ii)成分〕の合計に対する成分(iv)の重量割合[(iv)/〔(i)+(ii)〕]が0.005〜0.1であり、好ましくは0.01〜0.05であるのが良い。重合開始剤の配合割合が少ないと、重合の速度が遅くなって硬化性が低下する。反対に多過ぎると、感度が強すぎてパターン線幅がパターンマスクに対して太った状態になり、マスクに対して忠実な線幅が再現できない、又は、パターンエッジががたつきシャープにならないといった問題が生じる恐れがある。
【0042】
また、(v)成分のシランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ類、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等の(メタ)アクリレート類、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン等のビニル化合物、3-イソシアナトプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアナトプロピルトリエトキシシラン等のイソシアネート類、3-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等のウレイド類等のシランカップリング剤を挙げることができる。
【0043】
(v)成分のシランカップリング剤の使用量は、本発明の光硬化性樹脂組成物の固形分中において0.1〜20質量%であり、好ましくは0.5〜10質量%であるのが良い。
【0044】
本発明の感光性樹脂組成物は、必要により溶剤に溶解させたり、各種添加剤を配合して用いることもできる。溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール類、α−若しくはβ−テルピネオール等のテルペン類等、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、N-メチル-2-ピロリドン等のケトン類、トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類、セロソルブ、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、カルビトール、メチルカルビトール、エチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、セロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート、エチルカルビトールアセテート、ブチルカルビトールアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のエステル類等が挙げられ、これらを用いて溶解、混合させることにより、均一な溶液状の組成物とすることができる。これらの溶剤は、塗布性等の必要特性とするために2種類以上を用いてもよい。
【0045】
また、本発明の感光性樹脂組成物には、必要に応じて硬化促進剤、可塑剤、レベリング剤、消泡剤等の添加剤を配合することができる。このうち、可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、リン酸トリクレジル等を挙げることができる。また、消泡剤やレベリング剤としては、例えば、シリコン系、フッ素系、アクリル系の化合物を挙げることができる。
【0046】
本発明の感光性樹脂組成物は、溶剤を除いた固形分(固形分には硬化後に固形分となるモノマーを含む)中に、(i)成分の1分子内にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂、(ii)成分の少なくとも1個の重合性二重結合を有する重合性化合物、(iii)成分の一般式(3)で表されるカップリング剤で表面処理された平均粒子径が10〜300nmのシリカゾル及び(iv)成分の光重合開始剤が合計で70質量%以上、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上含まれることが望ましい。溶剤の量は、製膜に適した目標とする溶液粘度によって変化するが、感光性樹脂組成物の全体量に対して20〜80重量%の範囲が望ましい。
【0047】
本発明の感光性樹脂組成物は、上記(i)成分の1分子内にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂および(ii)成分の少なくとも1個の重合性二重結合を有する重合性化合物以外に、熱によって重合又は硬化するその他の樹脂成分を併用してもよい。その他の樹脂成分としては、(vi)2つ以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂又はエポキシ化合物が好ましく、3,3',5,5'-テトラメチル-4,4'-ビフェノール型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールフルオレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、3,4-エポキシシクロヘキセニルメチル-3',4'-エポキシシクロヘキセンカルボキシレート、2,2-ビス(ヒドロキシメチル)-1-ブタノールの1,2-エポキシ-4-(2-オキシラニル)シクロヘキサン付加物、エポキシシリコーン樹脂等が挙げられる。
【0048】
これらのエポキシ樹脂の添加により、各用途における硬化物の必要特性を満たすための組成物の設計が可能となるが、たとえば、硬化物の表面硬度を向上しようとすると基板との密着性が低下するという一般的な傾向に対し、本発明の組成物を用いることによって、必要な表面硬度を確保した上で、十分な密着性を発揮することが可能となる。また、耐候性、耐光性、耐熱性を与える観点から、エポキシシリコーン樹脂等のシリコーン化合物が好ましいといったように、要求特性に応じた物性の設計が可能である。これらの樹脂成分との併用においては、得られた硬化物(塗膜)に濁りが発生しないよう均一に相溶することが望ましく、本発明は、上記(i)成分の1分子内にカルボキシル基及び重合性二重結合を有するアルカリ可溶性樹脂と、これらの樹脂成分との最適な混合比を見出すことで硬化物(塗膜)の濁りを抑制することが可能である。
【0049】
また、本発明の塗膜(硬化物)は、例えば、上記感光性樹脂組成物の溶液を基板等に塗布し、乾燥し、光(紫外線、放射線等を含む)を照射し、これを硬化させることにより得られる。光が当たる部分と当たらない部分とを設けて、光が当たる部分だけを硬化させ、他の部分をアルカリ溶液で溶解させれば、所望のパターンの塗膜が得られる。
【0050】
次に、感光性樹脂組成物を用いた塗膜(硬化物)形成方法について、その一例を以下で説明する。まず、基板等の表面上に、感光性樹脂組成物を塗布したのち溶剤を蒸発させる第1段のベーキングを行い、塗膜を形成する。次いで、パターンを形成する場合は、この塗膜にフォトマスクを介して露光したのち、アルカリ性現像液を用いて現像して、塗膜の未露光部を溶解除去する。その後、第2段のベーキングで熱重合反応を促進して、硬化物を形成する。
【0051】
感光性樹脂組成物を基板に塗布する際には、公知の溶液浸漬法、スプレー法の他、ローラーコーター機、ランドコーター機、スリットコーター機やスピナー機を用いる方法等の何れの方法をも採用することができる。これらの方法によって、所望の厚さに塗布した後、ベーキングで溶剤を除去し、さらに熱重合反応を促進することにより、硬化物が形成される。第1段のベーキングはオーブン、ホットプレート等による加熱、真空乾燥又はこれらを組み合わせることによって行われる。第1段のベーキングにおける加熱温度及び加熱時間は使用する溶剤に応じて適宜選択され、例えば80〜120℃の温度で1〜20分間行われる。第2段のベーキングは、例えば150〜300℃の温度で、10〜120分間行われる。
【実施例】
【0052】
以下に、一般式(1)で表されるアルカリ可溶性樹脂の合成例等に基づいて本発明を更に詳細に説明する。なお、本発明はこれらの合成例等によりその範囲を限定されるものではない。また、以下の合成例における樹脂の評価は、断りのない限り以下の通りに行った。
【0053】
[固形分濃度]
合成例中で得られた樹脂溶液1gをガラスフィルター〔重量:W0(g)〕に含浸させて秤量し〔W1(g)〕、160℃にて2hr加熱した後の重量〔W2(g)〕から次式より求めた。
固形分濃度(重量%)=100×(W2−W0)/(W1−W0)
【0054】
[エポキシ当量]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させた後に臭化テトラエチルアンモニウムの酢酸溶液を加え、電位差滴定装置(平沼製作所(株)製 商品名COM-1600)を用いて1/10N−過塩素酸溶液で滴定して求めた。
【0055】
[酸価]
樹脂溶液をジオキサンに溶解させ、電位差滴定装置(平沼製作所(株)製 商品名COM-1600)を用いて1/10N−KOH水溶液で滴定して求めた。
【0056】
[分子量]
ゲルパーミュエーションクロマトグラフィー(GPC)(東ソー(株)製HLC-8220GPC、溶媒:テトラヒドロフラン、カラム:TSKgelSuperH-2000(2本)+TSKgelSuperH-3000(1本)+TSKgelSuperH-4000(1本)+TSKgelSuper-H5000(1本)(東ソー(株)製)、温度:40℃、速度:0.6ml/min)にて測定し、標準ポリスチレン(東ソー(株)製PS−オリゴマーキット)換算値として重量平均分子量(Mw)を求めた値である。
【0057】
また、合成例及び比較合成例で使用する略号は次のとおりである。
FHPA:9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応物と、アクリル酸との等当量反応物(固形分濃度50wt%のPGMEA溶液)
BPDA:3,3',4,4'-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
BTDA:3,3',4,4'-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物
THPA:1,2,3,6-テトラヒドロフタル酸無水物
TPP:トリフェニルホスフィン
PGMEA:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0058】
[合成例1]
還留冷却器付き500ml四つ口フラスコ中にFHPAの50%PGMEA溶液を206.26g(0.17mol)、BPDAを0.085mol、THPAを0.085mol、PGMEAを26.0g及びTPPを0.45g仕込み、120〜125℃で加熱下に6hr撹拌し、アルカリ可溶性樹脂溶液(i)-1を得た。得られた樹脂溶液の固形分濃度は55.6wt%、酸価(固形分換算)は103mgKOH/g、GPC分析によるMwは2600であった。
【0059】
(実施例1〜2、比較例1)
次に、感光性樹脂組成物及びその硬化物の製造に係る実施例及び比較例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。ここで、以降の実施例及び比較例の感光性樹脂組成物及びその硬化物の製造で用いた原料及び略号は以下の通りである。
【0060】
(i)−1成分:上記合成例1で得られたアルカリ可溶性樹脂溶液
(ii)成分:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
(iii)-1成分:溶剤分散シリカゾル(日産化学社製PMA-ST、分散媒:PGMEA、固形分濃度=30.3%、動的光散乱法の測定機器(大塚電子製粒径アナライザーFPAR-1000)で求めたキュムラント法平均粒子径41nm、表面処理剤(式(3)におけるq=1、R6, R7,R8=CH3(1H-NMR))。また、シリカゾルの表面処理度は、シリカゾルをヘキサン中で沈殿させて乾燥し、示差熱・熱重量測定装置(TG-DTA)(SII(株)製 EXSTER6000)を用いて測定した熱重量損失から算出。測定条件は、窒素雰囲気下、室温から150℃まで10℃/minで昇温した後に150℃で30分保持して揮発成分を除去。次いで、空気雰囲気下、150℃から550℃まで10℃/minで昇温した後に550℃で10分保持。表面処理度は150℃から550℃までの重量減少率より評価。熱重量損失から算出された表面処理度=1.6%)
(iv)成分:オキシムエステル系光重合開始剤(BASF製、イルガキュアOXE01)
(v)成分:シランカップリング剤(3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)
(vi)成分:9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレンとクロロメチルオキシランとの反応で得られたエポキシ樹脂
溶剤-1:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
溶剤-2:乳酸エチル
溶剤-3: ジエチレングリコールメチルエチルエーテル
添加剤:界面活性剤(東レ・ダウコーニング社製、商品名FZ-2122)
【0061】
上記の配合成分を表1に示す割合で配合して、実施例1〜2及び比較例1の感光性樹脂組成物を調製した。尚、表1中の数値はすべて質量部を表す。
【0062】
【表1】
【0063】
[硬化物の作成]
表1に示した感光性樹脂組成物を、予め低圧水銀灯で波長254nmの照度1000 mJ/cm2の紫外線を照射して表面を洗浄した、50mm×50mmのガラス基板(コーニング社製EAGLE XG)(以下「UV洗浄ガラス基板」という)、インジウム−スズ酸化物蒸着ガラス基板(UV洗浄ITO基板)、及びモリブデン−アルミニウム合金蒸着基板(UV洗浄MAM基板)上に第2段のベーキング後の膜厚が1.3〜1.7μmとなるようにスピンコーターを用いて塗布し、熱風乾燥機を用いて90℃で1分間第1段のベーキングをして塗布板を作成した。次いで、波長365nmの照度が500W/cm2の高圧水銀ランプで60mJ/cm2の紫外線を照射して光硬化反応を行った。その後、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間第2段のベーキングを行って、実施例1〜2、及び比較例1に係る硬化物(塗膜)を得た。
【0064】
上記で得られた実施例1〜2、及び比較例1の感光性樹脂組成物からなる硬化物(塗膜)について、以下の項目について評価した結果を表2に示す。これらの評価方法は以下の通りに行った。なお、密着性については、UV洗浄ガラス基板上の硬化物のみでなく、UV洗浄ITO基板及びUV洗浄MAM基板上に作成した硬化物に対しても評価し、また、耐薬品性(耐酸性、耐塩基性)に関してもUV洗浄ガラス基板、UV洗浄ITO基板、及びUV洗浄MAM基板上に作成した硬化物に対して評価を行った。
【0065】
膜厚:
触針式段差形状測定装置(ケーエルエー・テンコール(株)製 商品名P-10)を用いて測定した。
【0066】
密着性:
UV洗浄ガラス基板、UV洗浄ITO基板、及びUV洗浄MAM基板上に作成した硬化物を、温度121℃、湿度100%、気圧2atmの条件下に5時間放置した。更に、放置した硬化物を、太佑機材株式会社製 Super Cutter Guideを使用して1mm×1mmの正方形のマス目が100個形成されるように切込みを入れ、マス目の上にセロハンテープ(ニチバン製)を貼ってから剥がすテープ剥離試験を行なった。マス目の中の硬化物が全く剥離していない場合は○、マス目の中の硬化物の1/3未満が剥離している場合は△、1/3以上が剥離している場合は×とした。
【0067】
塗膜硬度1:
ガラス基板上に作成した硬化物を、JIS-K5400の試験法に準じて、鉛筆硬度試験機を用いて荷重1kgをかけた際の塗膜にキズが付かない最も高い鉛筆硬度をもって表示した。使用した鉛筆は「三菱ハイユニ」である。ここで本評価は、塗膜表面の横方向の力(引っかき)に対する耐性の指標として実施した。
【0068】
塗膜硬度2:
ガラス基板上に作成した硬化物を、微小膜硬度計(フィッシャー・インスツルメンツ製 HM2000)を用いて測定した。圧子はビッカース圧子を用いて5mN/μm2の荷重を負荷速度0.25mN/secで負荷し、1秒間保持後に荷重を取り除いてマルテンス硬さ(ISO 14577に準拠)を測定した。ここでいうマルテンス硬さとは、荷重―進入深さ曲線より算出される硬さのことで、マルテンス硬さが65N/mm2以上の場合に○、65N/mm2未満〜60N/mm2以上の場合に△、60N/mm2未満の場合に×と評価した。ここで本評価は、塗膜表面の縦方向の力(押し込み)に対する耐性の指標として実施した。
【0069】
透過率:
ガラス基板(コーニング社製EAGLE XG)上に作成した硬化物を、透過率計(日本電色工業製 商品名SPECTRO PHOTOMETER SD5000)を用いて透過率を測定し、波長400nmでの透過率が95%以上の場合に○、95%未満〜90%以上の場合に△、90%未満の場合は×と評価した。
【0070】
発ガス性:
ガラス基板(コーニング社製EAGLE XG)上に作成した硬化物をスクレイパー等で削り、得られた粉末状の硬化物4〜6mgの熱重量損失を示差熱熱重量測定装置(TG/ DTA)(SII(株)製 EXSTER6000)を用いて測定した。測定条件は、大気下、120℃で30分間の前処理を行った後、230℃で2時間保持とした。発ガス性は重量減少率より評価し、重量減少率が小さいほど低発ガス性が良好であるとした。重量減少率は230℃での加熱前後の重量減少から算出し、重量減少率が5%未満の場合は◎、5以上〜10%未満の場合に○、10以上〜15%未満の場合に△、15%以上の場合は×とした。
【0071】
アルカリ現像性:
表1に示した感光性樹脂組成物を、スピンコーターを用いて125mm×125mmのUV洗浄ガラス基板上に第2段のベーキング後の膜厚が1.3〜1.7μmとなるように塗布し、熱風乾燥機を用いて80℃で1分間第1段のベーキングをして塗布板を作成した。次いで、波長365nmの照度が500W/cm2の高圧水銀ランプで100mJ/cm2の紫外線を照射し感光部分の光硬化反応を行った。次に、この露光済み塗板を23℃の0.04wt%水酸化カリウム水溶液または0.5wt%炭酸ナトリウム水溶液中、ディップ現像にて1分間現像を行い、さらに水洗を行い、塗膜の未露光部を除去した。その後、熱風乾燥機を用いて230℃、30分間第2段のベーキングを行って、実施例1〜2、及び比較例1に係るパターンを得た。アルカリ現像性は、得られたパターンにおける未露光部の塗膜の有無によって評価し、未露光部の塗膜が全て除去されている場合は○、パターンの端面から2μm未満の範囲に塗膜が残っている場合は△、パターンの端面から2μm以上の範囲に塗膜が残っている場合は×とした。
【0072】
耐酸性:
UV洗浄ガラス基板、UV洗浄ITO基板、UV洗浄MAM基板上に作成した硬化物を、王水の入ったシャーレに室温で2分間浸漬した後、純水で洗浄し、水分を拭き取る。更に、太佑機材株式会社製 Super Cutter Guideを使用して1mm×1mmの正方形のマス目が100個形成されるように切込みを入れ、マス目の上にセロハンテープ(ニチバン製)を貼ってから剥がすテープ剥離試験を行なった。マス目の中の硬化物が全く剥離していない場合は○、マス目の中の硬化物の1/3未満が剥離している場合は△、1/3以上が剥離している場合は×とした。
【0073】
耐塩基性:
UV洗浄ガラス基板、UV洗浄ITO基板、UV洗浄MAM基板上に作成した硬化物を、4wt%の水酸化カリウム水溶液の入ったシャーレに40℃で3分間浸漬した後、純水で洗浄し、水分を拭き取る。更に、太佑機材株式会社製 Super Cutter Guideを使用して1mm×1mmの正方形のマス目が100個形成されるように切込みを入れ、マス目の上にセロハンテープ(ニチバン製)を貼ってから剥がすテープ剥離試験を行なった。マス目の中の硬化物が全く剥離していない場合は○、マス目の中の硬化物の1/3未満が剥離している場合は△、1/3以上が剥離している場合は×とした。
【0074】
【表2】
【0075】
上記表2の結果から明らかなように、実施例1〜2に係る硬化物は各性能に優れており、特に、比較例1と比較して密着性及び塗膜硬度を両立し、更に、高い透過率を有する硬化物を形成できる。また、金属および金属酸化物膜表面においても高い密着性、耐薬品性を示す。すなわち、透明性、耐光性、耐候性、耐熱性、表面硬度、密着性、低発ガス性を有するタッチパネル絶縁膜としての要求特性を満たす硬化膜を提供できることが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明の感光性樹脂組成物は、シリカゾルを含有してもアルカリ現像性を損なわず、透明性、耐光性、耐候性、耐熱性、平坦性、表面硬度、密着性、耐薬品性等に優れた硬化物を形成することができる。そのため、タッチパネル絶縁膜用として好適である。それ以外にも、例えば、カラー液晶表示装置、カラーファクシミリ、イメージセンサー等の各種の表示素子や、カラーフィルター保護膜材料、あるいは、有機半導体等の有機デバイス等の保護層、封止材、接着剤、絶縁膜として好適に使用することができる。
【符号の説明】
【0077】
1:基板
2:X電極
2a:島状電極(X側)
2b:ブリッジ電極(X側)
3:Y電極
3b:ブリッジ電極(Y側)
4:平坦化膜
5:接着層
6:保護基板
7:絶縁膜
8:シールド層(導電膜)
図1