特許第6234250号(P6234250)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6234250-ドレッシング工具 図000002
  • 特許6234250-ドレッシング工具 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234250
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】ドレッシング工具
(51)【国際特許分類】
   B24B 53/14 20060101AFI20171113BHJP
【FI】
   B24B53/14
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-13952(P2014-13952)
(22)【出願日】2014年1月29日
(65)【公開番号】特開2015-139844(P2015-139844A)
(43)【公開日】2015年8月3日
【審査請求日】2016年11月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100075384
【弁理士】
【氏名又は名称】松本 昂
(74)【代理人】
【識別番号】100172281
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 知広
(72)【発明者】
【氏名】武井 利樹
【審査官】 亀田 貴志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−015423(JP,A)
【文献】 実開平02−063964(JP,U)
【文献】 特開2006−255851(JP,A)
【文献】 特開昭59−134619(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 53/00 − 53/14
B24D 7/00
B24D 15/00
H01L 21/304
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
研削ホイールに装着された研削砥石をドレッシングするドレッシング工具であって、
該研削砥石をドレッシングするドレッシングボードと、該ドレッシングボードが上面に固定された支持プレートと、を備え、
該ドレッシングボードの表面側には、該ドレッシングボードの使用限界の厚さに対応する深さの溝部であって、該ドレッシングボードの該表面と平行な方向において所定の長さを有し、一端から他端に向けて深くなる該溝部が形成されており、
該ドレッシングボードによって該研削砥石をドレッシングした際に該ドレッシングボードの該表面側が摩耗することで該溝部が浅くなり、該溝部が識別できなくなることで該ドレッシングボードの厚さが使用限界の厚さに達したことを検知できるとともに、該ドレッシングボードが摩耗するにつれて該溝部の該長さが短くなることを特徴とするドレッシング工具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、砥石をドレッシングするためのドレッシング工具に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、小型軽量なデバイスを実現するために、シリコンやサファイア等の材料でなるウェーハを薄く研削することが求められている。ウェーハの研削は、例えば、研削用の砥石(研削砥石)を備える研削ホイールが装着された研削装置で行われる。この研削装置の保持テーブルにウェーハを保持させて、回転する研削ホイールの研削砥石をウェーハの被加工面に押し付けることでウェーハを研削できる。
【0003】
上述の研削砥石は、例えば、ビトリファイドやレジノイド等の結合材に、ダイヤモンドやCBN等の砥粒を混合して形成されている。この研削砥石でウェーハを摩擦すると、研削砥石の表面に露出した多数の砥粒がそれぞれ切れ刃として作用し、ウェーハの被加工面は削り取られる。
【0004】
一方、研削の進行と共に研削砥石も摩耗し、ウェーハの被加工面と接触する研削砥石の表面には新たな砥粒が次々に現れる。この作用(自生発刃作用等と呼ばれる)によって、砥粒の目こぼれ、目詰まり、目つぶれ等による研削性能の低下を抑制し、良好な研削加工を実現できる。
【0005】
ところで、未使用の研削砥石は、砥粒が適切に表出されておらず、また、研削砥石の表面の高さにもばらつきがある。そこで、砥粒を適切に表出させると共に、研削砥石の表面の高さを揃えるために、ドレッシングボードを研削するドレッシング工程をウェーハの研削前に実施している(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ドレッシング工程で使用されるドレッシングボードは、例えば、1mm〜5mm程度の厚みに形成されており、裏面側を樹脂製の支持プレートに接着されている。このドレッシングボードは、研削砥石との摩擦で摩耗し、ある程度まで薄くなると交換される。ドレッシングボードの交換時期は、目視等の方法で判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−142906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述した目視等の方法では、必ずしもドレッシングボードの交換時期を適切に判断することができない。そのため、限界(使用限界)まで摩耗したドレッシングボードを交換せずに使用して誤って支持プレートを研削し、研削砥石を傷めてしまう恐れがある。
【0009】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、使用限界を適切に検知できるドレッシング工具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、研削ホイールに装着された研削砥石をドレッシングするドレッシング工具であって、該研削砥石をドレッシングするドレッシングボードと、該ドレッシングボードが上面に固定された支持プレートと、を備え、該ドレッシングボードの表面側には、該ドレッシングボードの使用限界の厚さに対応する深さの溝部であって、該ドレッシングボードの該表面と平行な方向において所定の長さを有し、一端から他端に向けて深くなる該溝部が形成されており、該ドレッシングボードによって該研削砥石をドレッシングした際に該ドレッシングボードの該表面側が摩耗することで該溝部が浅くなり、該溝部が識別できなくなることで該ドレッシングボードの厚さが使用限界の厚さに達したことを検知できるとともに、該ドレッシングボードが摩耗するにつれて該溝部の該長さが短くなることを特徴とするドレッシング工具が提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明のドレッシング工具は、ドレッシングボードの表面側に、ドレッシングボードの使用限界の厚さに対応する深さの溝部又は段差部を有するので、ドレッシングボードが使用限界の厚さまで摩耗すると溝部又は段差部を識別できなくなる。そのため、溝部又は段差部の識別可否に基づいて、ドレッシングボードの使用限界を適切に検知できる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1(A)は、本実施の形態に係るドレッシング工具を模式的に示す斜視図であり、図1(B)は、ドレッシング工具を模式的に示す断面図であり、図1(C)は、図1(B)の一部を拡大して示す断面図である。
図2】ドレッシング工具の使用状態を模式的に示す斜視図である。
図3図3(A)は、第1変形例に係るドレッシング工具を模式的に示す断面図であり、図3(B)は、第2変形例に係るドレッシング工具を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。図1(A)は、本実施の形態に係るドレッシング工具を模式的に示す斜視図であり、図1(B)は、ドレッシング工具を模式的に示す断面図であり、図1(C)は、図1(B)の一部を拡大して示す断面図である。なお、図1(B)では、図1(A)のAA´断面を示し、図1(C)では、図1(B)の領域Bを拡大して示している。
【0016】
図1(A)及び図1(B)に示すように、本実施の形態に係るドレッシング工具2は、略平坦な円盤状のドレッシングボード4と、ドレッシングボード4の下方においてドレッシングボード4を支持する支持プレート6とを備えている。
【0017】
支持プレート6は、ドレッシングボード4の全体を支持できるように、樹脂等の材料でドレッシングボード4より大径の円盤状に形成されている。支持プレート6の上面6aには、ドレッシングボード4の裏面(下面)4b側が接着されている。ドレッシングボード4の表面(上面)4a側には、ドレッシングボード4の使用限界を識別するための溝(溝部)4cが設けられている。
【0018】
ドレッシング工具2と研削ホイール9(図2参照)とを回転させながら、研削砥石9b(図2参照)をドレッシングボード4の上面4aに押し付けることで、研削砥石9bをドレッシングできる。
【0019】
ドレッシングボード4は、例えば、ビトリファイド、レジノイド等の結合材にホワイトアランダム(WA)、グリーンカーボン(GC)等の砥粒が混合された混合材料を用いて形成されている。ただし、ドレッシングボード4を構成する結合材及び砥粒は、ドレッシングの対象となる研削砥石9bに応じて変更される。
【0020】
ドレッシングボード4の溝4cは、例えば、平坦なドレッシングボードに回転する切削ブレード(不図示)を切り込ませて形成される。図1(C)に示すように、溝4cは、ドレッシングボード4の使用限界の厚さTに対応する深さDを有している。具体的には、溝4cの底4dは、表面4aから深さDの位置に位置付けられると共に、裏面4bから厚さTの位置に位置付けられている。
【0021】
また、溝4cは、ドレッシングボード4の表面4aと平行な面内方向において、任意の長さ及び幅で形成される。例えば、図1では、ドレッシングボード4の中心から外周縁に至る長さで、1mm程度の幅の溝4cを形成している。ただし、溝4cは、目視や接触等の方法で識別できるように形成されていれば良く、溝4cの長さ、幅、形状等は、任意に変更できる。
【0022】
次に、本実施の形態のドレッシング工具2を使用する研削砥石9bのドレッシングについて説明する。図2は、本実施の形態に係るドレッシング工具2の使用状態を模式的に示す斜視図である。
【0023】
図2に示すように、研削装置1は、ウェーハ等の被加工物(不図示)を吸引保持する保持テーブル3を備えている。保持テーブル3の下方には、モータ等の回転機構(不図示)が設けられており、保持テーブル3は、この回転機構で鉛直方向に伸びる回転軸の周りに回転する。
【0024】
保持テーブル3の表面(上面)は、被加工物を吸引保持する保持面となっている。この保持面には、保持テーブル3の内部に形成された吸引路(不図示)を通じて吸引源(不図示)の負圧が作用し、被加工物を吸引する吸引力が発生する。
【0025】
保持テーブル3の上方には研削機構が配置されている。研削機構は、モータ等の回転機構(不図示)と連結され、昇降機構(不図示)に支持されたスピンドル5を備えている。このスピンドル5は、回転機構から伝達される回転力で鉛直方向に伸びる回転軸の周りに回転すると共に、昇降機構で昇降する。
【0026】
スピンドル5の下端側には、円盤状のホイールマウント7が固定されており、このホイールマウント7には、研削ホイール9が装着されている。研削ホイール9は、アルミニウム、ステンレス等の金属材料で形成されたホイール基台9aを備えている。ホイール基台9aの円環状の下面には、全周にわたって複数の研削砥石9bが固定されている。
【0027】
研削砥石9bをドレッシングする際には、保持テーブル3の表面に支持プレート6の下面6b側を吸引保持させた状態で、研削ホイール9と保持テーブル3とを回転させ、スピンドル5を下降させる。ドレッシングボード4の表面4aに研削砥石9bの下面を押し付けるようにスピンドル5の下降量を調節すれば、研削砥石9bをドレッシングできる。
【0028】
上述したドレッシングによってドレッシングボード4の表面4a側が摩耗し、ドレッシングボード4が薄くなると、ドレッシングボード4に形成された溝4cも浅くなる。上述のように、溝4cは、ドレッシングボード4の使用限界の厚さTに対応する深さDで形成されている。そのため、ドレッシングボード4が使用限界の厚さT程度まで薄くなると、溝4cは殆ど失われ、目視や接触等の方法で溝4cを識別できなくなる。
【0029】
以上のように、本実施の形態のドレッシング工具2は、ドレッシングボード4の表面4a側に、ドレッシングボード4の使用限界の厚さTに対応する深さDの溝(溝部)4cを有するので、ドレッシングボード4が使用限界の厚さTまで摩耗すると溝4cを識別できなくなる。そのため、溝4cの識別可否に基づいて、ドレッシングボード4の使用限界を適切に検知できる。
【0030】
なお、本発明は上記実施の形態の記載に限定されず、種々変更して実施可能である。例えば、上記実施の形態では、表面4aからの深さが略一定の溝4cを形成しているが、溝4cは、少なくとも一部がドレッシングボード4の使用限界の厚さTに対応する深さDで形成されていれば良い。すなわち、溝4cは略一定の深さで形成されていなくても良い。
【0031】
図3(A)は、第1変形例に係るドレッシング工具2を模式的に示す断面図である。第1変形例に係るドレッシング工具2のドレッシングボード4には、上記実施の形態とは異なる溝4cが形成されている。具体的には、第1変形例では、ドレッシングボード4の表面4aと平行な方向において一端4eから他端4fに向けて深くなるような溝4cが形成されている。
【0032】
このような溝4cを有するドレッシングボード4が摩耗すると、表面4aと平行な方向において、溝4cの長さは短くなる。そのため、この溝4cの長さに基づいて、ドレッシング工具2の状態を確認できる。例えば、溝4cが十分に短くなった場合には、ドレッシングボード4の使用限界が近いと判断できるので、交換用の新たなドレッシング工具2を用意しておくことで、研削装置1の稼働率の低下を防ぐことができる。
【0033】
また、上記実施の形態及び変形例では、ドレッシングボード4の使用限界を検知するために溝4cを設けているが、ドレッシングボード4の使用限界を検知するための構造は、必ずしも溝4cでなくて良い。
【0034】
図3(B)は、第2変形例に係るドレッシング工具2を模式的に示す断面図である。第2変形例に係るドレッシング工具2のドレッシングボード4には、上記実施の形態の溝4cの代わりに段差(段差部)4gが形成されている。段差4gは、表面4a側の外周縁において、ドレッシングボード4の使用限界の厚さTに対応する深さDで形成されている。
【0035】
この段差4gは、例えば、平坦なドレッシングボードの外周縁を研削装置1で研削し、又は、切削ブレード(不図示)で切削して形成される。なお、段差4gの深さは略一定でなくて良い。具体的には、段差4gの少なくとも一部がドレッシングボード4の使用限界の厚さTに対応する深さDで形成されていれば良い。
【0036】
上述したドレッシング工具2は、研削砥石9bの整形を目的に使用されても良いし、研削砥石9bの目立てを目的に使用されても良い。研削砥石9bの整形の用途には、比較的大きなサイズの砥粒を含むドレッシングボード4を用い、研削砥石9bの目立ての用途には、比較的小さなサイズの砥粒を含むドレッシングボード4を用いることが好ましい。
【0037】
その他、上記実施の形態に係る構成、方法などは、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施できる。
【符号の説明】
【0038】
2 ドレッシング工具
4 ドレッシングボード
4a 表面(上面)
4b 裏面(下面)
4c 溝(溝部)
4d 底
4e 一端
4f 他端
4g 段差(段差部)
6 支持プレート
6a 上面
6b 下面
1 研削装置
3 保持テーブル
5 スピンドル
7 ホイールマウント
9 研削ホイール
9a ホイール基台
9b 研削砥石
D 深さ
T 厚さ
図1
図2
図3