(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記信号処理ICは、前記リードフレームから段差を介して形成された少なくとも2つの固定部で信号処理ICの両側が支持され、前記第一導体部分の上を跨いで配置される請求項1〜4のいずれか一項に記載の電流センサ。
さらに、封止樹脂から露出した前記信号端子となるリードフレーム、及び、封止樹脂から露出した前記導体を折り曲げて、前記信号端子及び被計測電流入出力端子を形成する工程を備える請求項14に記載の電流センサの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の電流センサを実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を図面を参照して説明する。
【0019】
なお、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の種々の変更を含む。なお、図面中、上下左右等の位置関係は、特に断らない限り、図面に示した位置関係に基づくものとする。実施形態に係る構成要素の寸法比率は図示した比率に限られるものではない。
【0020】
<実施形態1>
先ず、本実施形態の電流センサ1の構成について
図1〜
図2を参照して説明する。実施形態に係る電流センサは、ホール素子等の磁電変換素子と、被測定電流が流れる導体と、磁電変換素子からの出力を処理する信号処理ICと、信号端子を形成するリードフレームとを備え、これらの構成要素が封止された電流センサパッケージ(以下、単に「パッケージ」という。)である。
【0021】
[電流センサ1の構成]
図1は、実施形態1の電流センサ1の内部構造の一例を示す図である。
図2は、電流センサ1内部の断面図であって、(a)は
図1に示したA−A´断面、(b)は
図1に示したB−B´断面、(c)は
図1に示したC−C´断面、(d)は
図1に示したD−D´断面、を示す。また、以下の説明では、
図1の紙面手前側(正のX方向側)を上方、
図1の紙面奥側(負のX方向側)を下方と称して説明する。また、
図2(a)〜(d)において、図中の上側を上方、下側を下方と称して説明する。
【0022】
図1の電流センサ1は、磁束を検出する磁電変換素子13a,13bと、被測定電流が流れる導体10と、磁電変換素子13a,13bからの出力を処理する信号処理IC20と、信号端子41を形成するリードフレーム100と、磁電変換素子13a,13bと信号処理IC20とを電気的に接続する導線60a,60bと、磁電変換素子13a,13bを支える絶縁シート14と、を備える。導線60a,60bとして、例えば、金属線やワイヤ等が用いられる。
【0023】
導体10の両側に配置される磁電変換素子13a,13bは、被測定電流Iによって発生する磁束密度を検出し、磁束密度に応じた電気信号を信号処理IC20に出力する素子である。磁電変換素子13a,13bとしては、例えば、ホール素子、磁気抵抗素子、ホールIC、磁気抵抗IC等が挙げられる。磁電変換素子の個数は、
図1に例示した2個に限られず、3個以上であってもよい。
【0024】
導体10は、
図1に示すように、3つの導体部分、すなわち、第一導体部分10aと、第二導体部分10bと、第三導体部分10cとを有し、
図2(d)に示すように、導体10の中央部にあたる第二導体部分10bは、第一導体部分10aから段差31を介して上方に形成され、第三導体部分10cは、第二導体部分10bから段差31を介して下方に形成される。
【0025】
導体10は、
図1に一例を示すように、直線状(I字状)に形成されている。そのため、被測定電流Iが流れる電流経路の総和の長さが短くなるようになっている。これにより、導体10の抵抗値が小さくなるため電力損失を抑制でき、内部発熱も抑えられるため、高温対応が可能となる。
【0026】
図1では、第二導体部分10bの導体幅W2は、他の導体部分の導体幅W1、W3よりも狭くなるように設定されることが好ましい。この構成により、第二導体部分10bを流れる被測定電流Iが導体幅W2に集中し、その結果、第二導体部分10bの周囲の磁束密度が高められて、磁電変換素子13a,13bのS/N比が向上する。なお、各導体部分10a〜10cの形状として、
図1に示した形状に限られず、適宜変更してもよい。また、第2導体部分10bの幅は、段階的または連続的に狭くなるように形成するようにしてもよい。
【0027】
信号処理IC20は、磁電変換素子13a,13bからの出力を増幅又は演算等を行い、電気信号として被計測電流に応じた信号を信号端子41へ出力する。信号処理IC20は、
図2(a)、
図2(c)および
図2(d)に示すように、第一導体部分10aの上方に配置されている。信号処理IC20は、例えばLSI(Large Scale Integration)で構成され、例えば、メモリ、プロセッサ、バイアス回路、補正回路および増幅回路などを備える。
【0028】
信号端子41を形成するリードフレーム100において、信号端子41は、導線50により、信号処理IC20と電気的に接続されている。導線50として、例えば、金属線やワイヤ等が用いられる。なお、信号端子41の数や形状等は
図1に限定されず、適宜変更可能である。
【0029】
図2(b)に示すように、絶縁シート14は、リードフレーム100の裏面で支持されており、磁電変換素子13a,13bがその絶縁シート14上に配置される。絶縁シート14としては、例えばポリイミドテープなどの絶縁シートが挙げられる。
【0030】
なお、磁電変換素子13a,13bを、上記絶縁シート上に配置するためのダイアタッチ材料としては、例えばダイアタッチフィルム等の絶縁材料が挙げられる。
【0031】
磁電変換素子13a,13bは、導線60a,60bを介して信号処理IC20と電気的に接続され、信号処理IC20は、導線50を介して信号端子41と電気的に接続される。
【0032】
各信号端子41は、信号処理IC20の出力(電流値や電圧値等)を取り出すように構成される。
【0033】
図1において、突出部16の各々は、第二導体部分10b以外の導体部分、すなわち第一導体部分10a及び第三導体部分10cから突出して形成される。突出部は、磁電変換素子13a,13bを囲むように突出している。なお、第一導体部分10a及び第三導体部分10bから突出した突出部同士の間にはクリアランスがある。なお、電流センサ1において、突出部16を設けないように構成することも可能である。
【0034】
上述した突出部16によって、後述する作製工程において、磁電変換素子13a,13bの表面にパッケージ応力変化を緩衝させるための低弾性材料を塗布する場合、その表面張力により突出部16と第二導体部分10bとで囲まれたエリアから、低弾性材料がはみだすことなく、磁電変換素子13a,13bの表面に低弾性材料を塗布することができる。これにより、磁電変換素子13a,13bの表面に塗布される低弾性材料の量のばらつきを抑えることが可能となる。
【0035】
図3は、信号処理IC20の一例の機能ブロック図である。この信号処理IC20は、バイアス回路201、補正回路202および増幅回路203を備える。バイアス回路201は、磁電変換素子13a,13bと接続され、磁電変換素子13a,13bに電源を供給するようになっている。換言すれば、バイアス回路201は、磁電変換素子13a,13bに励起電流を印加(流入)するための回路である。
【0036】
補正回路202は、磁電変換素子13a,13bの出力の差分に基づいて、外部で生じる磁界の影響をキャンセル(同相のノイズを相殺)して電流値を算出するようになっている。この場合、磁電変換素子13a,13bのゲイン係数をk、磁電変換素子13aの入力をs1,磁電変換素子13bの入力をs2とすると、補正回路202は、{k・(s1-s2)}の関係から、外来磁場の影響をキャンセルして電流値を算出する。
【0037】
また、補正回路202は、例えば、動作温度に基づいて、予めメモリに記憶されている温度補正係数に従い磁電変換素子13a,13bの出力値を補正するようになっている。このため、温度依存性が少なく高精度な電流検出が可能となる。
【0038】
増幅回路203は、補正回路202からの出力値を増幅するようになっている。
【0039】
図4は、電流センサ1のパッケージの外観の一例を示す図であって、(a)はパッケージ上面図、(b)はパッケージ側面図を示す。
【0040】
電流センサ1は、
図4(a)および
図4(b)に示すように、エポキシ樹脂等のモールド樹脂80で封止された四角形状のパッケージである。
【0041】
被測定電流端子12a,12bおよび信号端子41は、パッケージの4つの側面から取り出される。
図4の例では、被測定電流端子12a,12bおよび信号端子41は、パッケージの4つの側面から取り出されているが、これに限らず、たとえば、被測定電流入出力端子がパッケージの対向する両側面に配置され、信号端子がそれと直交する方向の側面(片側のみ、又は、両側)に配置される形態、被測定電流入出力端子がパッケージの一側面に配置され、信号端子がその一側面と対向したパッケージ側面に配置される形態、被測定電流入出力端子がパッケージの一側面に配置され、信号端子がその一側面と対向したパッケージ側面に加えて他の側面にも配置される形態などにしてもよい。
【0042】
この電流センサ1では、磁電変換素子13a,13bは、リードフレーム100の裏面で支持された絶縁シート14上で、第二導体部分10bを挟んで第二導体部分10bの両側に配置される。磁電変換素子13a,13bは、導体10の両側に配置されるため、被測定電流Iが生成される磁束の向きが逆極性(負または正側のZ方向)となる。それら逆極性の信号を減算又は差分をとることで、外乱磁場をキャンセルすることができ、高いS/Nを得ることが可能となる。
【0043】
また、各磁電変換素子13a,13bは、導体10と離間して配置されており、常に被測定電流Iが流れる導体10と接触しない状態となっている。これにより、導体10と磁電変換素子13a,13bとの間は電気的に導通せず、絶縁を維持するための隙間(クリアランス)が確保される。
【0044】
信号処理IC20は、リードフレーム100の上方に段差31を有して形成された固定部30で支持されて、第一導体部分10aの上を跨いで配置される。段差31は、リードフレーム100から断面視で上方に形成される。固定部30の幅は、信号端子41よりも広くするのが強度の観点から好ましい。固定部30の幅は、信号処理IC20の幅よりも大きくする、または、信号処理IC20の幅と同じように設定するのが好ましい。なお、信号処理IC20は、
図1および
図2に示した例に限られず、複数の固定部30で支持される形態としてもよい。
【0045】
絶縁シート14は、リードフレーム100の下面(裏面)で支持されることが好ましい。本実施形態において、リードフレーム100の下面は、信号処理IC20が実装される面の裏面側に相当する。
図1および
図2(b)の例のように、絶縁シート14は、リードフレーム100の下面(裏面)で支持されるのが好ましい。
【0046】
図2(a)において、固定部30は、信号端子41を有するリードフレーム100の上方に段差31が形成されており、この固定部30によって、信号処理IC20の両側から信号処理IC20が支持されている。
図2(b)において、信号処理IC20は、第一導体部分10aの上方に配置されることになるが、
図2(a)に例示する通り、段差31により第一導体部分10aに対して断面視で離間しているため、絶縁耐圧が向上する。なお、信号処理IC20と第一導体部分10aとの間には、モールド樹脂80が充填される。
【0047】
図2(b)において、絶縁シート14は、リードフレーム100の裏面で絶縁シート14の両側が支持され、第二導体部分10bの下方に配置される。この絶縁シート14上において、
図1に示すように、磁電変換素子13a,13bは、第二導体部分10bを挟んで第二導体部分10bの両側に配置される。これにより、磁電変換素子13a,13bの感磁面の高さ位置が、リードフレーム100の底面から上面までの高さの間(つまり、導体10の厚みの間)に設定することができる。好ましくは、磁電変換素子13a,13bの感磁面の高さ位置が、リードフレーム100の底面から上面までの高さの間の中央付近に設定するようにするのがよい。これによって、磁電変換素子13a,13bの感磁面では、導体10の電流経路に流れる被測定電流Iによって発生する磁束をより多く捉えることが可能となり、その結果、電流検出感度が向上する。
【0048】
図1および
図2(d)において、導体10では、第一導体部分10aから段差31を介して上方に第二導体部分10bが形成され、第二導体部分10bから段差31を介して下方に第三導体部分10cが形成されている。第二導体部分10bは、
図2(d)に示すように、第一導体部分10aおよび第三導体部分10cよりも上方に位置し、上方向に折れ曲がった形状となっている。
【0049】
[電流センサの作製方法]
次に、電流センサ1の作製方法について、
図1および
図5を参照して説明する。
図5は、電流センサ1の作製方法の一例を示す図である。
【0050】
図5では、電流センサ1を作製する工程の一例として、(A)から(G)までの順序で実施する例を示している。なお、
図5(A)〜(G)の左側には上方からみた上面図、右側には側方からみた断面図または側面図を示している。断面図または側面図は、対応する断面または側面の箇所(A−A´等)を
図5の右側に示している。
【0051】
図5(A)は、リードフレームの形成工程を示している。この工程では、リードフレーム100をパンチング加工またはエッチング加工によって、磁電変換素子13a,13bが配置される領域(ギャップ)23が形成され、平面視で所定の形状を有する導体10が形成される。また、固定部30にあたるリードフレーム100の幅広部分及び絶縁シートを張り付ける幅広部分も併せて形成される。
【0052】
さらに、信号端子41となる部分についてもこの工程時に形成する。
図5(A)では、パッケージの両側において、入出力端子である被計測電流端子12a,12bと直交する方向に信号端子41を形成する。
【0053】
図5(B)は、リードフレームの曲げ工程を示している。この工程では、リードフレームの曲げ加工を行い、第二導体部分10bを上方に折り曲げることによって、第一導体部分10a及び第三導体部分10cよりも段差31を介して上方に形成される。さらに、リードフレーム100の幅広部分を上方に折り曲げることにより、段差31を介して導体10から離間してその両側に固定部30を形成する。
【0054】
なお、曲げ加工以外にも潰し加工によって、第二導体部分10bを、段差31を介して第一導体部分10a及び第三導体部分10cよりも上方に形成してもよい。
【0055】
図5(C)は、絶縁シートの形成工程を示している。この工程では、リードフレーム100の下面に、絶縁シート14として、例えば絶縁テープを貼り付ける。前述の工程(A)において形成されたリードフレームの幅広部分の裏面に絶縁シート14を張り付けることで、第二導体部分の下方で、後述する磁電変換素子を載置するための絶縁シート14が固定される。
【0056】
図5(D)は、ダイボンディング工程を示している。この工程では、ダイボンディングにより、絶縁シート14としての絶縁テープの上に、絶縁材としての例えばダイアタッチフィルムを介して、磁電変換素子13a,13bを固着する。
【0057】
また、ダイボンディングにより、第一導体部分10aの上方で、固定部30により信号処理IC20を固定する。この場合、固定部30の上に絶縁シートを張り付けたり、絶縁ペーストを塗布したりすることもできる。
【0058】
なお、絶縁性を高めるために、第一導体部分10aの上に絶縁テープ等の絶縁部材を配置するようにしてもよい。
【0059】
図5(E)は、ワイヤボンディング工程を示している。この工程では、ワイヤボンディングにより、信号端子41側のリードフレーム100と信号処理IC20とをワイヤ50で接続する。また、ワイヤボンディングにより、磁電変換素子13a,13bと信号処理IC20とをワイヤ60a,60bで接続する。
【0060】
図5(F)は、モールド工程を示している。この工程では、モールディングにより、導体10、磁電変換素子13a,13b、信号処理IC20およびワイヤ50,60a,60bをモールド樹脂80で封止して覆う。
【0061】
図5(G)は、リードフォーミング工程を示している。この工程では、リードフォーミング、つまり、リード端子をカットした後に曲げ加工することで被測定電流端子12a,12bおよび信号端子41を形成するこれにより、電流センサ1のパッケージが完成する。
【0062】
以上説明したように、本実施形態の電流センサ1によれば、導体10及びリードフレーム100に上述した段差31を設けることで、
図2(a)の通り、断面視で、磁電変換素子13a,13bと第二導体部分10bとの間に所定距離の隙間を設けることができる。
【0063】
本実施形態の段差31によって、信号処理IC20と第一導体部分10との間にも所定距離の隙間を設けることができる。
【0064】
これにより電流センサ1の絶縁耐圧を向上させることができる。
【0065】
特に、段差31によって、信号処理IC20と、被計測電流が流れる導体10との間の隙間の距離を適宜調整することにより、信号処理IC20と導体10との間の距離に応じた所望の絶縁性能が実現できる。
【0066】
また、信号処理IC20と導体10との間に隙間を設けることにより、信号処理IC20と導体10との間の沿面ができなくなるため、例えば、導体10に絶縁シートを搭載する絶縁方式よりも本実施形態の電流センサ1の絶縁耐圧が向上する。また、段差31が存在することで、磁電変換素子13a,13bと導体10との沿面も排除することができるため、電流センサ1の絶縁耐圧が向上する。
【0067】
さらに、本実施形態の電流センサ1では、信号処理IC20が導体10の上方に配置されることとなるため、パッケージを小型化することができる。
【0068】
<実施形態2>
以下、本発明の電流センサの実施形態2について説明する。
【0069】
本実施形態の電流センサが実施形態1と異なるのは、前述した第二導体部分10bの形状と前述した固定部30であるため、その点を中心に以下説明する。
【0070】
本実施形態の第二導体部分は、平面視における前述の第二導体部分10bの形状と異なる。
【0071】
[電流センサの構成]
本実施形態の電流センサの構成について
図6および
図7を参照して説明する。
図6は、本実施形態に係る電流センサ1Aの内部構造の一例を示す図である。
図7は、電流センサ内部の断面の一例を示す図であって、(a)は
図6に示したE−E´断面、(b)は
図6に示したF−F´断面、(c)は
図6に示したG−G´断面、(d)は
図6に示したH−H´断面、を示す。
【0072】
図6の第二導体部分10bは、平面視において、第一の磁電変換素子13aを囲む第一の屈曲部分111と、第二の磁電変換素子13bを囲む第二の屈曲部分112とを有する。本実施形態の第二導体部分10bは、例えば、S字形状(またはZ字形状)となっている。
【0073】
図6の導体10でも、実施形態1で示したものと同様に、
図7(a)〜(d)の断面視で示すように、第二導体部分10bは、第一導体部分10aから段差31を介して上方に形成され、第三導体部分10cは、第二導体部分10bから段差31を介して下方に形成されている。第二導体部分10bは、
図7(d)に示すように、第一導体部分10aおよび第三導体部分10cよりも上方に位置し、上下方向に折れ曲がった形状となっている。
【0074】
第一の屈曲部分111は、
図6に示した形態に限られず、平面視において、第一の磁電変換素子13aを少なくとも2辺の直線(3辺の直線も含む。)で囲む形態としてもよい。また、第二の屈曲部分112は、第二の磁電変換素子13bを少なくとも2辺の直線(3辺の直線も含む。)で囲む形態としてもよい。
【0075】
なお、本実施形態において、屈曲部分は、平面視において、導体10を流れる被測定電流の経路が屈曲していることを意味する。屈曲部分は、同一平面上で磁電変換素子を囲むような形態だけではなく、同一平面上でなくとも平面視において、磁電変換素子を囲むような形態も含む。つまり、屈曲部分は、電流センサ1Aの断面方向とは関係がなく、平面視において磁電変換素子を囲むような形態であることを意味する。
【0076】
屈曲部分についてさらに説明すると、屈曲部分は、被測定電流の経路中を流れる電流の方向が変わる部分に相当する。第一の磁電変換素子13aを2辺の直線で囲む形態(つまり、電流の流れる方向が一方向から別の方向に変わる形態)や、3辺の直線で囲む形態(つまり、電流の流れる方向が一方向から別の方向に変わり、さらに、方向が変わる形態)、曲線で囲む形態(つまり、電流の流れる方向が一方向から連続的に方向が変わる形態)、及び、直線と曲線とを組み合わせた形態も含む。
【0077】
また、本実施形態において、S字形状は、直線、曲線、又はそれらの組み合わせによる形状であり、S字、又は、S字を左右反転した形状である。また、Z字形状は、直線、曲線、又はそれらの組み合わせによる形状であり、Z字、又は、Z字を左右反転した形状である。
【0078】
また、
図6の固定部30aは、実施形態1に示した固定部30とは異なり、1つの幅広部分からなる固定部で両側から信号処理ICチップを支持する形態ではなく、複数の固定部で両側から信号処理ICチップを支持する形態である。平面視における固定部の形状や、固定部の個数は特に限定されない。
【0079】
本実施形態の電流センサ1Aのように構成しても、実施形態1と同様の効果が得られるほか、第二導体部分10bによって、各磁電変換素子13a,13bが、屈曲する前の電流経路を流れる電流が生成する磁束と、屈曲した後の電流経路を流れる電流が生成する磁束とを足し合わせた磁束を出力することができるので、感度が向上する。
【0080】
<実施形態3>
次に、実施形態3の電流センサ1Bについて
図8〜
図10を参照して説明する。本実施形態が実施形態1と異なるのは、リードフレーム及び信号端子の形状又は配置であるため、これらを中心に以下説明する。
【0081】
図8は、本実施形態に係る電流センサ1Bの内部構造の一例を示す図である。
図9は、電流センサ1B内部の断面の一例を示す図であって、(a)は
図8に示したI−I´断面、(b)は
図8に示したJ−J´断面、(c)は
図8に示したK−K´断面、を示す。
図10は、電流センサ1Bのパッケージ外観の一例を示す図である。
【0082】
図8に示す電流センサ1Bは、
図1に示したものと異なり、パッケージの側面の片側(
図8の紙面右側)に信号端子41が配置され、被測定電流端子12a,12bは、パッケージの上側又は下側の側面の左寄り(
図8の紙面左側)に配置されている。
【0083】
被測定電流端子12a,12bと接続される導体10は、パッケージの片側からその反対側に被計測電流が流れるように形成されている(
図8)。
【0084】
図9(a)において、固定部30によって、信号処理IC20は、第一導体部分10aを跨いで第一導体部分10aの上方に配置される。
図9(a)および
図9(c)の例では、信号処理IC20の下面には、接着材60として例えばダイアタッチフィルムがつけられている。
【0085】
図9(b)において、
図2(b)に示したものと同様に、信号処理IC20は、第一導体部分10aの上方に配置されることになるが、段差31により第1導体部分10aと離間しているため、絶縁耐圧が向上する。
【0086】
図1に示したものと同様に、磁電変換素子13a,13bは、
図8に示すように、第二導体部分10bを挟んで第二導体部分10bの両側に配置される。そして、パッケージの右側に配置された信号端子を有するリードフレームと、パッケージの左側に配置された信号端子がないリードフレームとで支持された絶縁シート上に載置されている。
【0087】
電流センサ1Bにおいても、
図4(a)および
図4(b)に示したものと同様に、
図10(a)および
図10(b)に示すように、エポキシ樹脂等のモールド樹脂80で封止されて、同一のパッケージとして形成される。
【0088】
被測定電流端子12a,12bおよび信号端子41は、パッケージの一側面から取り出される。
図10の例では、被測定電流端子12a,12bおよび信号端子41は、パッケージの3つの側面から取り出されている。
【0089】
本実施形態の電流センサ1Bのように構成しても、実施形態1と同様の効果を得られる。
【0090】
[変形例]
上述した各実施形態の電流センサ1,1A,1Bは例示に過ぎず、変更するようにしてもよい。
【0091】
実施形態1の突出部16の形状は、
図1に示した例に限らず、変更することもできる。例えば
図11は、磁電変換素子13a,13bが配置される領域を囲むように、第一導体部分10aから第三導体部分10c側に向かって突出する突出部16aの形態を例示している。
図12では、磁電変換素子13a,13bが配置される領域を囲むように、第三導体部分10cから第一導体部分10a側に向かって突出する突出部16bの形態を例示している。なお、突出部の数は変更可能である。
【0092】
例えば、段差31の高さは、変更するようにしてもよい。また、第二導体部分10bと第三導体部分10cとの段差31は、第一導体部分10aと第二導体部分10bとの段差よりも小さくなるようにしてもよいし、大きくなるようにしてもよいし、同等としてもよい。
【0093】
また、導体10に形成される段差31と、リードフレーム100に形成される段差は、違う高さであっても、同等であってもよい。
【0094】
段差31は、少なくとも第一導体部分10aと第三導体部分10cとの間に設けるようにすればよく、第二導体部分10bと第三導体部分10cとの間は段差を設けないようにすることもできる。
【0095】
また、上述した各実施形態において、第一導体部分10a、第二導体部分10bおよび第三導体部分10cについて説明したが、これらの導体部分の形態は変更するようにしてもよい。例えば、各導体部分10a〜10cは、各実施形態および変形例で示したものに別の導体部分を有する構成としてもよい。また、その各導体部分の形態において、さらに各実施形態および変形例で示したものとは別の段差を有する形態としてもよい。
【0096】
段差31は、一段の段差を有するだけでなく、複数の段差を有して構成されていてもよい。また、段差31は、垂直に立ち上がる段差だけでなく、傾斜をつけて形成された段差でもよく、あるいは、曲線状に形成された段差であっても、それら形状を組み合わせた形態であってもよい。
【0097】
固定部30,30aは、幅広部分からなる固定部で信号処理IC20を両側から支持する形態であっても、複数の固定部で信号処理IC20を支持する形態であっても、それらを組み合わせた形態であってもよい。
【0098】
また、固定部30,30aは、必ずしも信号端子41に接続されている必要はなく、リードフレームにおいて、信号端子41として外部接続されていない部分を固定部とし、この固定部に対して段差を有するように加工された形態であってもよい。
【0099】
導体10の中央部とは、磁電変換素子が隣接して配置される導体部分周辺のことである。被計測電流は、被計測電流入力端子12a、導体10の幅広い部分である被計測電流入力部、段差31を有して上方に形成された中央部、導体10の幅広い部分である被計測電流出力部、被計測電流出力端子12bの順に流れる。なお、被計測電流は、前述の方向と逆方向に流れるように構成されてもよい。具体的には、被計測電流入力端子12bから被計測電流出力端子12a方向へ流れるように構成してもよい。
【0100】
例えば、各導体部分10a〜10cの大きさや形状は、電流センサの仕様に応じて変更するようにしてもよい。
【0101】
また、各実施形態の電流センサ1,1A,1Bは、半導体パッケージを例にとって説明したが、基板上に上述の導体、磁電変換素子および信号処理ICを備えたモジュール形態としてもよい。
【0102】
また、磁電変換素子の感磁面の上に、例えば磁性体メッキによって磁性材料を形成してもよい。磁性材料の構成例として、フェライトなどの磁性体チップであってもよい。これにより、導体10に被測定電流Iが流れると、被測定電流Iによって生じる磁束が磁電変換素子の感磁部に収束されやすくなる。したがって、電流センサ1,1A,1Bの電流検出感度が向上する。
【0103】
また、各実施形態の中で個別に述べてきた電流センサ1,1A,1Bを組み合わせて電流センサを実施することができる。
【0104】
<本実施形態のまとめ>
本実施形態の電流センサは、磁束を検出する磁電変換素子と、被測定電流が流れる導体と、磁電変換素子からの出力を処理する信号処理ICと、信号端子を形成するリードフレームと、がパッケージに封止された電流センサである。
【0105】
導体は、第一導体部分と、第一導体部分から段差を有して形成された第二導体部分と、を有する。段差の方向は、上方に形成され、後述する絶縁シートと接触させない方向、つまり、絶縁シートと離す方向に形成される。
【0106】
また、磁電変換素子は、リードフレームで支持された絶縁シート上であって、第二導体部分を挟んで両側に配置される。絶縁シートはリードフレームの下面で支持されることが好ましく、下面とは信号処理ICが実装される面の裏面側のことである。
【0107】
信号処理ICは、リードフレームの段差が形成された固定部で支持されて、第一導体部分の上を跨いで配置される。段差は、リードフレームから断面視で上方に形成される。
【0108】
本実施形態において、磁電変換素子は導体の両側に配置されるため、被測定電流が生成する磁束の向きが逆極性となる。それら逆極性の信号を減算することで、外乱磁場をキャンセルすることができる。
【0109】
また、本実施形態では、導体及びリードフレームに段差を有するため、断面視で、磁電変換素子と第二導体部分の距離を設けることができ、また、信号処理ICも第一導体部分との距離を設けることができ、絶縁耐圧を向上させることができる。
【0110】
特に、段差により、信号処理ICと被計測電流が流れる導体との距離を適宜調整することで、その信号処理ICと導体の距離に応じた所望の絶縁性能が実現できる。また、両者の沿面を一切排除できるため、例えば、導体に絶縁シートを搭載する絶縁方式よりも絶縁耐圧が向上する。また、段差があることで、磁電変換素子と導体との沿面も排除できるため、絶縁耐圧が向上する。
【0111】
さらに、信号処理ICは、導体の上方に配置されることとなるため、パッケージを小型化することができる。
【0112】
なお、本実施形態において、「S字形状」とは、直線、曲線、又はそれらの組み合わせによる形状であり、S字、又は、S字を左右反転した形状である。
なお、本実施形態において、「Z字形状」とは、直線、曲線、又はそれらの組み合わせによる形状であり、Z字、又は、Z字を左右反転した形状である