特許第6234428号(P6234428)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6234428
(24)【登録日】2017年11月2日
(45)【発行日】2017年11月22日
(54)【発明の名称】薄い色の難燃化ポリアミド
(51)【国際特許分類】
   C08L 77/00 20060101AFI20171113BHJP
   C08L 23/08 20060101ALI20171113BHJP
   C08K 3/02 20060101ALI20171113BHJP
   C08K 5/52 20060101ALI20171113BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20171113BHJP
   C08K 3/22 20060101ALI20171113BHJP
【FI】
   C08L77/00
   C08L23/08
   C08K3/02
   C08K5/52
   C08K5/3492
   C08K3/22
【請求項の数】10
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2015-500899(P2015-500899)
(86)(22)【出願日】2013年3月20日
(65)【公表番号】特表2015-510963(P2015-510963A)
(43)【公表日】2015年4月13日
(86)【国際出願番号】EP2013055766
(87)【国際公開番号】WO2013139827
(87)【国際公開日】20130926
【審査請求日】2016年3月17日
(31)【優先権主張番号】12160483.9
(32)【優先日】2012年3月21日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100099483
【弁理士】
【氏名又は名称】久野 琢也
(72)【発明者】
【氏名】アレクサンダー ケーニヒ
(72)【発明者】
【氏名】トアステン エアトマン
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ロート
(72)【発明者】
【氏名】クラウス ウスケ
(72)【発明者】
【氏名】ヨヘン エンゲルマン
(72)【発明者】
【氏名】アクセル エーベナウ
(72)【発明者】
【氏名】マーティン クラット
【審査官】 内田 靖恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭55−161848(JP,A)
【文献】 特開2004−269635(JP,A)
【文献】 特開平05−125283(JP,A)
【文献】 特表2009−511687(JP,A)
【文献】 特開2003−049076(JP,A)
【文献】 特開2011−256233(JP,A)
【文献】 国際公開第2010/095726(WO,A1)
【文献】 特開2003−335962(JP,A)
【文献】 特開2005−336474(JP,A)
【文献】 特開2006−052405(JP,A)
【文献】 特開昭63−043952(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 77/00 −77/12
C08L 23/08
C08K 3/02
C08K 3/22
C08K 5/3492
C08K 5/52 − 5/521
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱可塑性成形材料であって、
A)熱可塑性ポリアミド 10〜98質量%、
B)赤リン 0.1〜60質量%、
C)メラミンポリホスファート又は1,3,5−トリアジン化合物のメラミンポリリン酸塩又はそれらの混合物からなる、メラミン化合物 0.5〜20質量%、
D)ルチル型の二酸化チタン 1〜30質量%、
E)耐衝撃性改良剤 0〜40質量%、
F)更なる添加剤 0〜60質量%
を含有し、その際に成分A)〜F)の質量パーセントの合計が100%になる、
熱可塑性成形材料。
【請求項2】
A) 20〜96質量%
B) 0.5〜40質量%
C) 1〜20質量%
D) 1〜25質量%
E) 1〜30質量%
F) 0〜50質量%
を含有する、請求項1記載の熱可塑性成形材料。
【請求項3】
成分D)が、凸凹のある表面を有する、請求項1又は2記載の熱可塑性成形材料。
【請求項4】
成分D)がn=2.75の屈折率を有する(DIN 51423による)、請求項1からまでのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項5】
成分D)が、DIN ISO 9277による少なくとも5m2/gのBET表面積を有する、請求項1からまでのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項6】
成分D)が、少なくとも14m2/gのラングミュア表面積を有する(DIN 66131及び66134による)、請求項1からまでのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項7】
成分E)が、官能性モノマー0.1〜20質量%を含有するエチレンコポリマーから構成されている、請求項1からまでのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項8】
成分E)が、カルボン酸基、カルボキシル無水物基、カルボン酸アミド基、カルボン酸イミド基、アミノ基、ヒドロキシル基、エポキシ基、ウレタン基又はオキサゾリン基又はそれらの混合物の群から選択される官能基を有する官能性モノマーを含有する、請求項記載の熱可塑性成形材料。
【請求項9】
繊維、フィルム又は成形体を製造するための、請求項1からまでのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料の使用。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか1項記載の熱可塑性成形材料から得られる、繊維、フィルム又は成形体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
A)熱可塑性ポリアミド 10〜98質量%、
B)赤リン 0.1〜60質量%、
C)メラミン化合物 0.5〜20質量%、
D)ルチル型の二酸化チタン 1〜30質量%、
E)耐衝撃性改良剤 0〜40質量%、
F)更なる添加剤 0〜60質量%
を含有する熱可塑性成形材料に関し、その際に、成分A)〜F)の質量パーセントの合計は100%になる。
【0002】
更に、本発明は、繊維、フィルム(Folien)及び成形体を製造するためのこの種の成形材料並びにこの際に得ることができる、あらゆる種類の成形体、繊維及びフィルムに関する。
【0003】
熱可塑性プラスチック、とりわけ強化された又は充填されたポリアミドへの赤リンの添加が、効果的な防火をもたらすことは知られている(DE-A 1931387、DE-A 2703052、DE-A 19648503、EP-A 71788、EP-A 384232、EP-A 1626066及びWO 2007/042446)。しかしながら、赤リンは、不都合な条件下で、例えば高められた温度下、水分下、アルカリ又は酸素の存在下で、分解生成物、例えば水素化リン及び1〜5価のリンの酸を形成する傾向がある。熱可塑性プラスチック中、例えばポリアミド中へ導入された赤リンは、たいてい、該ポリマー中へ埋め込まれている結果、熱酸化に対して大幅に保護されている。
【0004】
リン含有ポリアミドの更なる欠点は、赤色ないし褐色の色傾向である。しかしながら、白色顔料の添加は、その難燃作用、特に燃焼試験の際のオーブン貯蔵後の滴下傾向を劣悪にする。
【0005】
本発明には、ゆえに、薄い固有色及び改善された難燃性(できるだけ有炎物質が滴下しない)を有する、難燃化された成形材料を提供するという課題が基礎となっていた。
【0006】
それに応じて、冒頭に定義された成形材料が見出された。好ましい実施態様は、従属請求項から読み取ることができる。
【0007】
成分A)として、本発明による成形材料は、少なくとも1種のポリアミドを10〜98質量%、好ましくは20〜96質量%及び特に30〜88質量%含有する。
【0008】
本発明による成形材料のポリアミドは一般的に、ISO 307に従い25℃で96質量%硫酸中0.5質量%の溶液中で測定される、90〜350ml/g、好ましくは110〜240ml/gの粘度数を有する。
【0009】
例えば米国特許第2 071 250号、同第2 071 251号、同第2 130 523号、同第2 130 948号、同第2 241 322号、同第2 312 966号、同第2 512 606号及び同第3 393 210号明細書に記載されているような、少なくとも5 000の分子量(質量平均値)を有する、半結晶性又は非晶性の樹脂が好ましい。
【0010】
これらの例は、7〜13個の環員を有するラクタムから誘導されるポリアミド、例えばポリカプロラクタム、ポリカプリルラクタム及びポリラウリンラクタム並びにジカルボン酸とジアミンとの反応により得られるポリアミドである。
【0011】
ジカルボン酸として、炭素原子6〜12個、特に6〜10個を有するアルカンジカルボン酸と、芳香族ジカルボン酸とが使用可能である。ここでは、単に、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸及びテレフタル酸及び/又はイソフタル酸が酸として挙げられる。
【0012】
ジアミンとして、特に、炭素原子6〜12個、特に6〜8個を有するアルカンジアミン並びにm−キシリレンジアミン(例えばBASF SE製のUltramid (登録商標)X17、MXDAとアジピン酸との1:1のモル比)、ジ−(4−アミノフェニル)メタン、ジ−(4−アミノ−シクロヘキシル)−メタン、2,2−ジ−(4−アミノフェニル)−プロパン、2,2−ジ−(4−アミノシクロヘキシル)−プロパン又は1,5−ジアミノ−2−メチルペンタンが適している。
【0013】
好ましいポリアミドは、ポリヘキサメチレンアジピン酸アミド、ポリヘキサメチレンセバシン酸アミド及びポリカプロラクタム並びにコポリアミド6/66、特にカプロラクタム単位を5〜95質量%の割合で有するもの(例えばBASF SE製のUltramid (登録商標)C31)である。更に適したポリアミドは、ω−アミノアルキルニトリル、例えばアミノカプロニトリル(PA 6)及びアジポジニトリルとヘキサメチレンジアミンと(PA 66)から、例えばDE-A 10313681、EP-A 1198491及びEP 922065に記載されたような、水の存在下でのいわゆる直接重合により、得ることができる。
【0014】
そのうえ、例えば、高められた温度下での1,4−ジアミノブタンとアジピン酸との縮合により得ることができる、ポリアミドも更に挙げられる(ポリアミド4,6)。この構造のポリアミドの製造方法は、例えば、EP-A 38 094、EP-A 38 582及びEP-A 39 524に記載されている。
【0015】
更に、前記のモノマーのうち2種以上の共重合により得ることができるポリアミド、又は複数のポリアミドの混合物が適しており、その際にその混合比は任意である。特に好ましいのは、ポリアミド66とその他のポリアミド、特にコポリアミド6/66の混合物である。
【0016】
更に、それらのトリアミン含量が0.5質量%未満、好ましくは0.3質量%未満である、半芳香族コポリアミド、例えばPA 6/6T及びPA 66/6Tが特に有利であることが判明している(EP-A 299 444を参照)。更なる耐高温性のポリアミドは、EP-A 19 94 075から知られている(PA 6T/6I/MXD6)。
【0017】
低いトリアミン含量を有する好ましい半芳香族コポリアミドの製造は、EP-A 129 195及びEP-A 129 196に記載された方法により行うことができる。
【0018】
以下のリストは、最終的なものではないが、本発明の意味での前記の並びに更なるポリアミドA)と、それに含まれるモノマーとを含む。
AB−ポリマー:
PA 4 ピロリドン
PA 6 ε−カプロラクタム
PA 7 エタノラクタム
PA 8 カプリルラクタム
PA 9 9−アミノペラルゴン酸
PA 11 11−アミノウンデカン酸
PA 12 ラウリンラクタム
AA/BB−ポリマー
PA 46 テトラメチレンジアミン、アジピン酸
PA 66 ヘキサメチレンジアミン、アジピン酸
PA 69 ヘキサメチレンジアミン、アゼライン酸
PA 610 ヘキサメチレンジアミン、セバシン酸
PA 612 ヘキサメチレンジアミン、デカンジカルボン酸
PA 613 ヘキサメチレンジアミン、ウンデカンジカルボン酸
PA 1212 1,12−ドデカンジアミン、デカンジカルボン酸
PA 1313 1,13−ジアミノトリデカン、ウンデカンジカルボン酸
PA 6T ヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA 9T 1,9−ノナンジアミン、テレフタル酸
PA MXD6 m−キシリレンジアミン、アジピン酸
PA 6I ヘキサメチレンジアミン、イソフタル酸
PA 6−3−T トリメチルヘキサメチレンジアミン、テレフタル酸
PA 6/6T (PA 6及びPA 6Tを参照)
PA 6/66 (PA 6及びPA 66を参照)
PA 6/12 (PA 6及びPA 12を参照)
PA 66/6/610 (PA 66、PA 6及びPA 610を参照)
PA 6I/6T (PA 6I及びPA 6Tを参照)
PA PACM 12 ジアミノジシクロヘキシルメタン、ラウリンラクタム
PA 6I/6T/PACM 例えばPA 6I/6T+ジアミノジシクロヘキシルメタン
PA 12/MACMI ラウリンラクタム、ジメチル−ジアミノジシクロヘキシルメタン、イソフタル酸
PA 12/MACMT ラウリンラクタム、ジメチル−ジアミノジシクロヘキシルメタン、テレフタル酸
PA PDA−T フェニレンジアミン、テレフタル酸。
【0019】
本発明による難燃剤B)は、単体の赤リンであって、特にガラス繊維強化成形材料との組合せであり、該リンは未処理の形態で使用することができる。
【0020】
しかしながら、該リンが、低分子量液状物質、例えばシリコーン油、パラフィン油又はフタル酸のエステル(特にジオクチルフタラート、EP 176 836を参照)又はアジピン酸のエステルで又はポリマー化合物若しくはオリゴマー化合物、例えばフェノール樹脂又はアミノ樹脂並びにポリウレタンで表面コーティングされている配合物が特に適している(EP-A 384 232、DE-A 196 48 503を参照)。この種のいわゆる減感剤(Phlegmatisierungsmittel)は、通例、B) 100質量%を基準として、0.05〜5質量%の量で含まれている。
【0021】
そのうえ、赤リンの濃縮物、例えばポリアミド又はエラストマー中のものが難燃剤として適している。特に、ポリオレフィンホモポリマー及びポリオレフィンコポリマーが、濃縮物ポリマーとして適している。しかしながら、該濃縮物ポリマーの割合は―ポリアミドが熱可塑性プラスチックとして使用されない場合には―本発明による成形材料中の成分A)及びB)の質量を基準として、35質量%以下であるべきである。
【0022】
好ましい濃縮物組成物は、
1)ポリアミド又はエラストマー 30〜90質量%、好ましくは45〜70質量%、
2)赤リン 10〜70質量%、好ましくは30〜55質量%
である。
【0023】
該バッチのために使用されるポリアミドは、A)とは異なっていてよく、又は好ましくはA)と同じであってよく、それゆえ不相溶性又は融点差は、該成形材料への不利な作用を有しない。
【0024】
該成形材料中に分散されたリン粒子の平均粒度(d50)は、好ましくは0.0001〜0.5mm;特に0.001〜0.2mmの範囲内である。
【0025】
本発明による成形材料中の成分B)の含量は、成分A)〜F)の合計を基準として、0.1〜60質量%、好ましくは0.5〜40質量%及び特に1〜15質量%である。
【0026】
成分C)として、本発明による熱可塑性成形材料は、メラミン化合物を0.5〜20質量%、好ましくは1〜20質量%及び特に5〜15質量%含有する。
【0027】
本発明により好ましくは適している(成分C)メラミンシアヌラートは、好ましくは等モル量の、メラミン(式I)及びシアヌル酸もしくはイソシアヌル酸(式Ia及びIb)からなる反応生成物である。
【化1】
【0028】
該反応生成物は、例えば、90〜100℃でのそれらの出発化合物の水溶液の反応により、得られる。商業的に入手可能な該反応生成物は、1.5〜7μmの平均粒度d50を有する白色粉末である。
【0029】
更に適した化合物(しばしば塩又は付加物とも呼ばれる)は、メラミン、ホウ酸メラミン、シュウ酸メラミン、リン酸1メラミン、リン酸2メラミン及びピロリン酸2メラミン、ネオペンチルグリコールホウ酸メラミン並びに高分子リン酸メラミン(CAS-No. 56386-64-2)である。
【0030】
特に好ましいメラミンポリホスファートは、BASF SE社製の商標Melapur(登録商標)で得ることができる。好ましいリン含量は、10〜15%、特に12〜14%であり、その含水量は好ましくは0.3%未満であり、並びにその相対密度は1.83〜1.86g/cm3である。
【0031】
好ましいのは、1,3,5−トリアジン化合物のメラミンポリリン酸塩であり、それらの平均縮合度の数nが20〜200であり、かつその1,3,5−トリアジン含量が、リン原子1モルあたり、メラミン、メラム、メレム、メロン、アンメリン、アンメリド、2−ウレイドメラミン、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン及びジアミノフェニルトリアジンからなる群から選択される1,3,5−トリアジン化合物1.1〜2.0モルである。好ましくは、そのような塩のn値は、一般的に40〜150であり、かつリン原子1モルあたりの1,3,5−トリアジン化合物の比は好ましくは1.2〜1.8である。更に、EP1095030B1により製造される、塩の10質量%水性スラリーのpHは、一般的に4.5超及び好ましくは少なくとも5.0になる。該pH値は通常、該塩25g及び25℃のきれいな水225gを、300mlビーカー中へ入れ、生じた水性スラリーを30分間撹拌し、次いでそのpHが測定されることによって、決定される。前記のn値、つまり数平均縮合度は、31P−固体NMRを用いて決定することができる。J. R. van Wazer, C. F. Callis, J. Shoolery及びR. Jones, J. Am. Chem. Soc, 78, 5715, 1956からは、隣接したリン酸イオン基の数が唯一の化学シフトを示し、この化学シフトが、オルトリン酸イオンと、ピロリン酸イオンと、ポリリン酸イオンとの間での明らかな区別を可能にすることが知られている。EP1095030B1には、そのうえ、20〜200のn値を有し、かつそれらの1,3,5−トリアジン含量が1,3,5−トリアジン化合物1.1〜2.0モルである1,3,5−トリアジン化合物の所望のポリリン酸塩の製造方法が記載されている。この方法は、1,3,5−トリアジン化合物をオルトリン酸と反応させてそのオルトリン酸塩を得て、引き続き脱水及び熱処理して、該オルトリン酸塩を該1,3,5−トリアジン化合物のポリリン酸塩へ変換することを含む。この熱処理は、好ましくは、少なくとも300℃の温度で、及び好ましくは少なくとも310℃で、実施される。1,3,5−トリアジン化合物のオルトリン酸塩に加えて、同じようにその他の1,3,5−トリアジンリン酸塩を、例えばオルトリン酸塩及びピロリン酸塩の混合物を含め、使用することができる。
【0032】
更なるメラミン誘導体として、メラミン縮合物であるメラム、メレム、メロン又は炭窒化物を挙げることができ、これらは同様に使用することができる。
【0033】
成分D)として、本発明による成形材料は、ルチル型の二酸化チタンを1〜30質量%、好ましくは1〜25質量%及び特に10〜20質量%含有する。Roempp Online、Version 3.12(2002年3月)によれば、ルチル型は、いわゆるルチル格子であると理解され、すなわち、その結晶系は、複正方両錐、晶族4/mmm−D4hである。それゆえ、該[Ti O6]−八面体は、稜共有によりC軸に平行に鎖状に結合されている。
【0034】
好ましいTiO2のタイプは、凹凸のある表面を示し、すなわち、該表面は、走査型電子顕微鏡法により5kVで300:1、1500:1、5000:1、20000:1及び50000:1の倍率で測定できるほど滑らかではない。
【0035】
そのチタン含量は、通例、該結晶系中へのその他の金属、例えばFe、Nb、Ta、Cr、V、Al、Zrの混在物により、94〜98%である。
【0036】
その屈折率n(Brechzahl、前のBrechungsindex)は、DIN 51423により、好ましくは2.75である。
【0037】
そのBET表面積(DIN ISO 9277による)は、好ましくは少なくとも5m2/g、特に少なくとも6m2/gである。
【0038】
そのラングミュア表面積(その収着面積の最大負荷)は、DIN 66131及び66134により、好ましくは少なくとも14m2/g、特に14〜18m2/gである。
【0039】
成分E)として、該成形材料は、0〜40質量%、好ましくは1〜30質量%、特に5〜20質量%の量で、ゴム弾性ポリマー(しばしば耐衝撃性改良剤、エラストマー又はゴムとも呼ぶ)を含有する。
【0040】
かなり一般的に、それらは、好ましくは、次のモノマーのうち少なくとも2種から構成されているコポリマーである:エチレン、プロピレン、ブタジエン、イソブテン、イソプレン、クロロプレン、酢酸ビニル、スチレン、アクリロニトリル及びアルコール成分中に炭素原子1〜18個を有するアクリル酸エステルもしくはメタクリル酸エステル。
【0041】
この種のポリマーは、例えば、Houben-Weyl, Methoden der organischen Chemie, 14/1巻(Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart, 1961), p.392-406及びC.B. Bucknall, “Toughened Plastics”(Applied Science Publishers, London, 1977)のモノグラフに記載されている。
【0042】
以下に、そのようなエラストマーの幾つかの好ましい種類が示される。
【0043】
そのようなエラストマーの好ましい種類は、いわゆるエチレン−プロピレン(EPM)ゴムもしくはエチレン−プロピレン−ジエン(EPDM)ゴムである。
【0044】
EPMゴムは、一般的に、事実上二重結合をもはや有さないのに対して、EPDMゴムは、炭素原子100個につき二重結合1〜20個を有しうる。
【0045】
EPDMゴム用のジエンモノマーとして、例えば共役ジエン、例えばイソプレン及びブタジエン、炭素原子5〜25個を有する非共役ジエン、例えばペンタ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,4−ジエン、ヘキサ−1,5−ジエン、2,5−ジメチルヘキサ−1,5−ジエン及びオクタ−1,4−ジエン、環状ジエン、例えばシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、シクロオクタジエン及びジシクロペンタジエン並びにアルケニルノルボルネン、例えば5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−ブチリデン−2−ノルボルネン、2−メタリル−5−ノルボルネン、2−イソプロペニル−5−ノルボルネン及びトリシクロジエン、例えば3−メチル−トリシクロ(5.2.1.0.2.6)−3,8−デカジエン又はそれらの混合物が挙げられる。好ましくは、ヘキサ−1,5−ジエン、5−エチリデンノルボルネン及びジシクロペンタジエンである。該EPDMゴムのジエン含量は、該ゴムの全質量を基準として、好ましくは0.5〜50質量%、特に1〜8質量%である。
【0046】
EPMゴムもしくはEPDMゴムは、好ましくは、反応性カルボン酸又はそれらの誘導体でグラフトされていてもよい。ここでは、例えばアクリル酸、メタクリル酸及びそれらの誘導体、例えばグリシジル(メタ)アクリラート、並びに無水マレイン酸が挙げられる。
【0047】
好ましいゴムの更なる群は、エチレンと、アクリル酸及び/又はメタクリル酸及び/又はこれらの酸のエステルとのコポリマーである。付加的に、該ゴムは更に、ジカルボン酸、例えばマレイン酸及びフマル酸又はこれらの酸の誘導体、例えばエステル及び無水物、及び/又はエポキシ基を有するモノマーを含有することができる。これらのジカルボン酸誘導体もしくはエポキシ基を有するモノマーは、好ましくは、該モノマー混合物への一般式I又はII又はIII又はIVのジカルボン酸基もしくはエポキシ基を有するモノマーの添加により、該ゴム中へ組み込まれ、
【化2】
ここで、R1〜R9は、水素又は炭素原子1〜6個を有するアルキル基であり、かつmは0〜20の整数であり、gは0〜10の整数であり、かつpは0〜5の整数である。
【0048】
好ましくは、基R1〜R9は水素を表し、その際にmは0又は1を表し、かつgは1を表す。対応する化合物は、マレイン酸、フマル酸、無水マレイン酸、アリルグリシジルエーテル及びビニルグリシジルエーテルである。
【0049】
式I、II及びIVの好ましい化合物は、マレイン酸、無水マレイン酸及びアクリル酸及び/又はメタクリル酸のエポキシ基を有するエステル、例えばグリシジルアクリラート、グリシジルメタクリラート及び第三級アルコールとのエステル、例えばt−ブチルアクリラートである。後者は、確かに遊離カルボキシル基を有していないが、しかしそれらの挙動において該遊離酸に非常に近く、ゆえに、潜在的カルボキシル基を有するモノマーと呼ばれる。
【0050】
有利に、該コポリマーは、エチレン50〜98質量%、エポキシ基を有するモノマー及び/又はメタクリル酸及び/又は酸無水物基を有するモノマー0.1〜20質量%並びに残りの量の(メタ)アクリル酸エステルからなる。
【0051】
特に好ましくは、
エチレン 50〜98質量%、特に55〜95質量%、
グリシジルアクリラート及び/又はグリシジルメタクリラート、(メタ)アクリル酸及び/又は無水マレイン酸 0.1〜40質量%、特に0.3〜20質量%及び
n−ブチルアクリラート及び/又は2−エチルヘキシルアクリラート 1〜45質量%、特に5〜40質量%
からなるコポリマーである。
【0052】
アクリル酸及び/又はメタクリル酸の更に好ましいエステルは、メチルエステル、エチルエステル、プロピルエステル及びi−もしくはt−ブチルエステルである。
【0053】
それに加えて、ビニルエステル及びビニルエーテルをコモノマーとして使用することもできる。
【0054】
上に記載されたエチレンコポリマーは、それ自体として知られた方法により、好ましくは高い圧力及び高められた温度下でのランダム共重合により、製造することができる。対応する方法は一般的に知られている。
【0055】
好ましいエラストマーは、その製造が例えばBlackley、モノグラフ“Emulsion Polymerization”に記載されている、エマルションポリマーでもある。使用可能な乳化剤及び触媒は、それ自体として知られている。
【0056】
原則的に、均質に構成されたエラストマー又は、しかしシェル構造を有するエラストマーを使用することができる。そのシェル状の構造は、個々の該モノマーの添加順序により決定され;該ポリマーのモルホロジーも、この添加順序の影響を受ける。
【0057】
代表的なものだけであるが、ここでは、該エラストマーのゴム部分を製造するためのモノマーとして、アクリラート、例えばn−ブチルアクリラート及び2−エチルヘキシルアクリラート、対応するメタクリラート、ブタジエン及びイソプレン並びにそれらの混合物が挙げられる。これらのモノマーは、更なるモノマー、例えばスチレン、アクリロニトリル、ビニルエーテル及び更なるアクリラート又はメタクリラート、例えばメタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル及びアクリル酸プロピルと、共重合することができる。
【0058】
該エラストマーの軟質相又はゴム相(0℃未満のガラス転移温度を有する)は、コア、外殻又は中間のシェル(2よりも多いシェル構造を有するエラストマーの場合)であってよく;複数のシェルのエラストマーの場合に、複数のシェルが1種のゴム相からなっていてもよい。
【0059】
該ゴム相に加え、更に1種以上の硬質成分(20℃を超えるガラス転移温度を有する)が、該エラストマーの構造に関与している場合には、これらは、一般的に、主モノマーとしてのスチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、アクリル酸エステル及びメタクリル酸エステル、例えばアクリル酸メチル、アクリル酸エチル及びメタクリル酸メチルの重合により、製造される。それに加えて、ここでも、より少ない割合の更なるコモノマーを使用することができる。
【0060】
幾つかの場合に、表面上に反応性基を有するエマルションポリマーを使用することが有利であるとわかっている。この種の基は、例えばエポキシ基、カルボキシル基、潜在的カルボキシル基、アミノ基又はアミド基並びに一般式
【化3】
で示されるモノマーの併用により導入することができる官能基であり、
ここで、該置換基は、次の意味を有することができる:
10は、水素又はC1〜C4−アルキル基であり、
11は、水素、C1〜C8−アルキル基又はアリール基、特にフェニルであり、
12は、水素、C1〜C10−アルキル基、C6〜C12−アリール基又は−OR13であり、
13は、C1〜C8−アルキル基又はC6〜C12−アリール基であり、前記基は場合によりO又はNを有する基で置換されていてよく、
Xは、化学結合、C1〜C10−アルキレン基又はC6〜C12−アリーレン基又は
【化4】
であり、
Yは、O−Z又はNH−Zであり、かつ
Zは、C1〜C10−アルキレン基又はC6〜C12−アリーレン基である。
【0061】
EP-A 208 187に記載されたグラフトモノマーも、該表面上での反応性基の導入のために適している。
【0062】
更なる例として、更に、アクリルアミド、メタクリルアミド及びアクリル酸又はメタクリル酸の置換エステル、例えば(N−t−ブチルアミノ)−エチルメタクリラート、(N,N−ジメチルアミノ)エチルアクリラート、(N,N−ジメチルアミノ)−メチルアクリラート及び(N,N−ジエチルアミノ)エチルアクリラートが挙げられる。
【0063】
更に、該ゴム相の粒子は架橋されていてもよい。架橋剤として作用するモノマーは、例えばブタ−1,3−ジエン、ジビニルベンゼン、ジアリルフタラート及びジヒドロジシクロペンタジエニルアクリラート並びにEP-A 50 265に記載された化合物である。
【0064】
更に、いわゆるグラフト架橋性モノマー(graft-linking monomers)、すなわち、該重合の際に異なる速度で反応する、2個以上の重合可能な二重結合を有するモノマーも使用することができる。好ましくは、少なくとも1種の反応性基が、その他のモノマーとほぼ同じ速度で重合するのに対して、他方の1種(又は複数種)の反応性基が、例えば明らかによりゆっくりと重合する、化合物が使用される。異なる重合速度は、該ゴム中の特定の割合の不飽和二重結合を必然的にもたらす。引き続き、そのようなゴムに、更なる相がグラフトされる場合には、該ゴム中に存在している二重結合は少なくとも部分的に、該グラフトモノマーと、化学結合の形成下に反応し、すなわち、グラフトされる相は少なくとも部分的に、化学結合を介して、そのグラフトベースと結合している。
【0065】
そのようなグラフト架橋性モノマーの例は、アリル基を有するモノマー、特にエチレン性不飽和カルボン酸のアリルエステル、例えばアリルアクリラート、アリルメタクリラート、ジアリルマレアート、ジアリルフマラート、ジアリルイタコナート又はこれらのジカルボン酸の対応するモノアリル化合物である。それに加えて、多数の更に適したグラフト架橋性モノマーがあり;より詳しい詳細については、ここでは、例えば米国特許第4 148 846号明細書が参照される。
【0066】
一般的に、耐衝撃性の改良されたポリマー中のこれらの架橋性モノマーの割合は、該耐衝撃性の改良されたポリマーを基準として、5質量%まで、好ましくは3質量%以下である。
【0067】
以下に、幾つかの好ましいエマルションポリマーが挙げられる。まず最初に、ここでは、次の構造を有する、1つのコアと、少なくとも1つの外側のシェルとを有するグラフトポリマーを挙げることができる:
【表1】
【0068】
複数のシェル構造を有するグラフトポリマーの代わりに、ブタ−1,3−ジエン、イソプレン及びn−ブチルアクリラート又はそれらのコポリマーからなる、均質な、すなわち1つのシェルのエラストマーを使用することもできる。これらの生成物も、架橋性モノマー又は反応性基を有するモノマーの併用により、製造することができる。
【0069】
好ましいエマルションポリマーの例は、n−ブチルアクリラート/(メタ)アクリル酸コポリマー、n−ブチルアクリラート/グリシジルアクリラートコポリマー又はn−ブチルアクリラート/グリシジルメタクリラートコポリマー、n−ブチルアクリラートからなるか又はブタジエンベース上の内部コアと、上に挙げられたコポリマー及びエチレンと反応性基を与えるコモノマーとのコポリマーからなる外殻とを有するグラフトポリマーである。
【0070】
前記のエラストマーは、その他の常用の方法によっても、例えば懸濁重合により、製造することができる。
【0071】
DE-A 37 25 576、EP-A 235 690、DE-A 38 00 603及びEP-A 319 290に記載されているような、シリコーンゴムが同様に好ましい。
【0072】
特に好ましいゴムE)は、上に記載されたように、官能性モノマーを含有するエチレンコポリマーであり、その際に、該官能性モノマーは、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基、カルボン酸イミド基、アミノ基、ヒドロキシル基、エポキシ基、ウレタン基又はオキサゾリン基又はそれらの混合物の群から選択されている。
【0073】
該官能基の割合は、E) 100質量%を基準として、0.1〜20質量%、好ましくは0.2〜10質量%及び特に0.3〜7質量%である。
【0074】
特に好ましいモノマーは、エチレン性不飽和のモノカルボン酸又はジカルボン酸又はそのような酸の官能性誘導体から構成されている。
【0075】
原則的に、アクリル酸又はメタクリル酸の全ての第一級、第二級及び第三級のC1〜C18−アルキルエステルが適しており、しかし、炭素原子1〜12個、特に炭素原子2〜10個を有するエステルが好ましい。
【0076】
これらの例は、メチルアクリラート、エチルアクリラート、プロピルアクリラート、n−ブチルアクリラート、イソブチルアクリラート及びt−ブチルアクリラート、2−エチルヘキシルアクリラート、オクチルアクリラート及びデシルアクリラートもしくはメタクリル酸の対応するエステルである。これらの中では、n−ブチルアクリラート及び2−エチルヘキシルアクリラートが特に好ましい。
【0077】
該エステルの代わりに又はこれらのエステルに加えて、該オレフィンポリマー中に、酸官能性及び/又は潜在的酸官能性のモノマーであるエチレン性不飽和のモノカルボン酸又はジカルボン酸又はエポキシ基を有するモノマーが含まれていてもよい。
【0078】
モノマーの更なる例として、アクリル酸、メタクリル酸、これらの酸の第三級アルキルエステル、特にt−ブチルアクリラート及びジカルボン酸、例えばマレイン酸及びフマル酸又はこれらの酸の誘導体並びにそれらのモノエステルが挙げられる。
【0079】
潜在的酸官能性モノマーとして、該重合条件下でもしくは該成形材料中への該オレフィンポリマーの導入の際に遊離酸基を形成する化合物であると理解されるべきである。これらの例として、炭素原子20個までを有するジカルボン酸の無水物、特に無水マレイン酸及び上に挙げた酸の第三級C1〜C12−アルキルエステル、特にt−ブチルアクリラート及びt−ブチルメタクリラートが挙げられる。
【0080】
酸官能性もしくは潜在的酸官能性の該モノマー及びエポキシ基を有する該モノマーは、好ましくは、該モノマー混合物への一般式I〜IVの化合物の添加により、該オレフィンポリマー中へ組み込まれる。
【0081】
該エチレンコポリマーのメルトインデックスは、一般的に、1〜80g/10分の範囲内である(190℃及び荷重2.16kgで測定)。
【0082】
これらのエチレン−α−オレフィンコポリマーの分子量は、10000〜500000g/モル、好ましくは15000〜400000g/モルである(Mn、PS校正を用いる1,2,4−トリクロロベンゼン中のGPCにより決定)。
【0083】
特別な実施態様において、いわゆる“シングルサイト触媒”を用いて製造されるエチレン−α−オレフィンコポリマーが使用される。更なる詳細は、US 5 272 236から読み取ることができる。この場合に、該エチレン−α−オレフィンコポリマーは、ポリオレフィンについて4未満、好ましくは3.5未満の狭い分子量分布を有する。
【0084】
好ましくは使用される市販製品Bは、Exxon、Kraton及びDuPont社の、Exxelor(登録商標)VA 1801又は1803、Kraton(登録商標)G 1901 FX又はFusabond (登録商標)N NM493 D又はFusabond(登録商標)A560並びにMitsui社のTafmer(登録商標)MH 7010である。
【0085】
もちろん、上に挙げたゴムタイプの混合物も使用することができる。
【0086】
成分F)として、本発明による成形材料は、更なる添加剤を60質量%まで、好ましくは50質量%まで含有することができる。
【0087】
繊維状又は粒子形のフィラーF)[D)とは異なる]として、炭素繊維、ガラスファイバー、ガラスビーズ、無定形シリカ、ケイ酸カルシウム、メタケイ酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、白亜、粉末石英、雲母、硫酸バリウム及び長石が挙げられ、これらは1〜50質量%、特に5〜40質量%、好ましくは10〜40質量%の量で使用される。
【0088】
好ましい繊維状フィラーとして、炭素繊維、アラミド繊維及びチタン酸カリウム繊維が挙げられ、その際にE−ガラスとしてのガラスファイバーが特に好ましい。これらは、ロービング又はチョップドガラスとして市販の形態で使用することができる。
【0089】
該繊維状フィラーは、該熱可塑性プラスチックとのより良好な相溶性のために、シラン化合物で表面前処理されていてよい。
【0090】
適したシラン化合物は、一般式
【化5】
で示されるものであり、式中、置換基は次の意味を有する:
【化6】
nは2〜10、好ましくは3〜4の整数であり、
mは1〜5、好ましくは1〜2の整数であり、
kは1〜3、好ましくは1の整数である。
【0091】
好ましいシラン化合物は、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノブチルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノブチルトリエトキシシラン並びに置換基Xとしてグリシジル基を有する、対応するシランである。
【0092】
該シラン化合物は一般的に、0.01〜2質量%、好ましくは0.025〜1.0質量%及び特に0.05〜0.5質量%の量で[E)を基準として]、表面コーティングに使用される。
【0093】
針状の鉱物フィラーも適している。
【0094】
針状の鉱物フィラーは、本発明の意味で、著しく際立った針状の特徴を有する鉱物フィラーであると理解される。例として、針状ウォラストナイトが挙げられる。好ましくは、該鉱物は、8:1〜35:1、好ましくは8:1〜11:1のL/D(長さ 直径)比を有する。該鉱物フィラーは、場合により、上に挙げたシラン化合物で前処理されていてよく;しかしながら該前処理は、どうしても必要であるというわけではない。
【0095】
更なるフィラーとして、カオリン、焼成カオリン、ウォラストナイト、タルク及び白亜、並びに付加的に小板状又は針状のナノフィラーが、好ましくは0.1〜10%の量で、挙げられる。好ましくは、このためにはベーマイト、ベントナイト、モンモリロナイト、バーミキュライト、ヘクトライト及びラポナイト(Laponit)が使用される。該小板状ナノフィラーと、その有機バインダーとの良好な相溶性を得るために、該小板状ナノフィラーは、技術水準に従い有機変性される。本発明によるナノコンポジットへの該小板状又は針状のナノフィラーの添加は、その機械的な強さの更なる増加をもたらす。
【0096】
成分F)として、本発明による成形材料は、滑剤を0.05〜3質量%、好ましくは0.1〜1.5質量%及び特に0.1〜1質量%含有することができる。
【0097】
好ましいのは、炭素原子10〜44個、好ましくは炭素原子12〜44個を有する脂肪酸のAl塩、アルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩又はエステル又はアミドである。
【0098】
その金属イオンは、好ましくはアルカリ土類金属及びAlであり、その際にCa又はMgが特に好ましい。
【0099】
好ましい金属塩は、ステアリン酸Ca及びモンタン酸Ca並びにステアリン酸Alである。
【0100】
異なる塩の混合物を使用することもでき、その際にその混合比は任意である。
【0101】
そのカルボン酸は1又は2価であってよい。例として、ペラルゴン酸、パルミチン酸、ラウリン酸、マルガリン酸、ドデカン二酸、ベヘン酸及び特に好ましくはステアリン酸、カプリン酸並びにモンタン酸(炭素原子30〜40個を有する脂肪酸の混合物)が挙げられる。
【0102】
その脂肪族アルコールは1〜4価であってよい。アルコールの例は、n−ブタノール、n−オクタノール、ステアリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ペンタエリトリトールであり、その際にグリセリン及びペンタエリトリトールが好ましい。
【0103】
その脂肪族アミンは1〜3価であってよい。これらの例は、ステアリルアミン、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジ(6−アミノヘキシル)アミンであり、その際にエチレンジアミン及びヘキサメチレンジアミンが特に好ましい。好ましいエステル又はアミドは相応して、グリセリンジステアラート、グリセリントリステアラート、エチレンジアミンジステアラート、グリセリンモノパルミタート、グリセリントリラウラート、グリセリンモノベヘナート及びペンタエリトリトールテトラステアラートである。
【0104】
異なるエステル又はアミドあるいはエステルとアミドとの組合せでの混合物も使用することもでき、その際に、その混合比は任意である。
【0105】
成分F)として、本発明による成形材料は、0.05〜3質量%、好ましくは0.1〜1.5質量%及び特に0.1〜1質量%の、Cu安定剤、好ましくはCu(I)ハロゲン化物を、特に、アルカリ金属ハロゲン化物、好ましくはKIとの混合物で、特に1:4の比で、又はヒンダードフェノール類又はそれらの混合物を、含有することができる。
【0106】
一価の銅の塩として、好ましくは酢酸銅(I)、塩化銅(I)、臭化銅(I)及びヨウ化銅(I)が考慮に値する。付加的に、ホスフィン錯体(殊にビス−トリフェニルホスフィン−銅ヨージド)が含まれていてもよい。これらは、ポリアミドを基準として、銅5〜500ppm、好ましくは10〜250ppmの量で含まれている。
【0107】
その有利な性質は、該銅が分子分散してポリアミド中に存在する場合に、特に得られる。これは、該成形材料に、ポリアミドと、一価の銅の塩と、アルカリ金属ハロゲン化物とを均質な固溶体の形態で含有する濃縮物を添加する場合に、達成される。典型的な濃縮物は、例えば、ポリアミド79〜95質量%と、ヨウ化銅又は臭化銅及びヨウ化カリウムの混合物21〜5質量%とからなる。該均質な固溶体中の銅の濃度は、該固溶体の全質量を基準として、好ましくは0.3〜3質量%、特に0.5〜2質量%であり、かつヨウ化カリウムに対するヨウ化銅(I)のモル比は、1〜11.5、好ましくは1〜5である。
【0108】
該濃縮物に適したポリアミドは、ホモポリアミド及びコポリアミド、特にポリアミド6及びポリアミド6.6である。
【0109】
ヒンダードフェノール類F)として、フェノール環上に少なくとも1個のかさ高な基を有するフェノール系構造を有する、原則的に全ての化合物が適している。
【0110】
好ましくは、例えば、式
【化7】
で示される化合物が考慮に値し、式中、
1及びR2は、アルキル基、置換アルキル基又は置換トリアゾール基を表し、その際に、基R1及びR2は同じか又は異なっていてよく、かつR3は、アルキル基、置換アルキル基、アルコキシ基又は置換アミノ基を表す。
【0111】
前記の種類の酸化防止剤は、例えば、DE-A 27 02 661(US-4 360 617)に記載されている。
【0112】
好ましいヒンダードフェノール類の更なる群は、置換ベンゼンカルボン酸から、特に置換ベンゼンプロピオン酸から誘導される。
【0113】
この種類からの特に好ましい化合物は、式
【化8】
で示される化合物であり、ここで、R4、R5、R7及びR8は、互いに独立してC1〜C8−アルキル基を表し、該基はそしてまた置換されていてよく(それらのうち少なくとも1個がかさ高な基である)、かつR6は、炭素原子1〜10個を有する二価の脂肪族基を表し、該基はその主鎖中にC−O結合を有することもできる。
【0114】
この式に相当する、好ましい化合物は、
【化9】
(BASF SE社製のIrganox(登録商標) 245)
【化10】
(BASF SE社製のIrganox(登録商標) 259)
である。
【0115】
例示的に、次のものがヒンダードフェノール類として全体として挙げられる:
2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオナート]、ペンタエリトリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−フェニル)−プロピオナート]、ジステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホナート、2,6,7−トリオキサ−1−ホスファ−ビシクロ−[2.2.2]オクタ−4−イル−メチル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナマート、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル−3,5−ジステアリル−チオトリアジルアミン、2−(2′−ヒドロキシ−3′−ヒドロキシ−3′,5′−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2,6−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシメチルフェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−ベンゼン、4,4′−メチレン−ビス−(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル−ジメチルアミン。
【0116】
特に有効であることが判明しており、ゆえに好ましくは使用されるのは、2,2′−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオナート(Irganox(登録商標) 259)、ペンタエリトリチル−テトラキス−[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)−プロピオナート]並びにN,N′−ヘキサメチレン−ビス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド(Irganox(登録商標) 1098)及び上に記載されたBASF SE社製のIrganox(登録商標)245であり、これが特に好適である。
【0117】
個々に又は混合物として使用することができる、酸化防止剤F)は、成形材料A)〜F)の全質量を基準として、0.05〜3質量%まで、好ましくは0.1〜1.5質量%、特に0.1〜1質量%の量で含まれている。
【0118】
かなりの場合に、フェノール性ヒドロキシ基に対してo−位の1個以下のヒンダード基を有するヒンダードフェノール類が特に有利であることが判明している;特に、より長い期間にわたって拡散光中で貯蔵する際にその色安定性を評価する場合。
【0119】
成分F)として、本発明による成形材料は、ニグロシンを0.05〜5質量%、好ましくは0.1〜2質量%及び特に0.25〜1.5質量%含有することができる。
【0120】
ニグロシンは、一般的に、多様な形態(水溶性、脂溶性、アルコール溶性)の、インジュリン類に似た黒色又は灰色のフェナジン染料(アジン染料)の群であると理解され、これらは、羊毛の染色及び捺染の際に、絹の黒色染色の際に、革、靴クリーム、ワニス、プラスチック、焼付けラッカー、インキ等の着色のため、並びに顕微鏡用染色剤として使用される。
【0121】
該ニグロシンはニトロベンゼン、アニリン及び塩酸アニリンと、金属、鉄及びFeCl3との加熱により工業的に取得される(ラテン語のniger=黒に由来する名前)。
【0122】
成分F)は、遊離塩基として又は塩(例えば塩酸塩)としても使用することができる。
【0123】
ニグロシンについての更なる詳細は、例えば、電子百科事典Roempp Online, Version 2.8, Thieme-Verlag Stuttgart, 2006, キーワード“Nigrosin”から読み取ることができる。
【0124】
成分F)として、本発明による熱可塑性成形材料は、常用の加工助剤、例えば安定剤、酸化遅延剤、熱分解及び紫外線による分解に対する薬剤、滑剤、離型剤、着色剤、例えば染料及び顔料、成核剤、可塑剤等を含有することができる。
【0125】
酸化遅延剤及び熱安定剤の例として、該熱可塑性成形材料の質量を基準として1質量%までの濃度の、ヒンダードフェノール類及び/又はホスフィット類及びアミン類(例えばTAD)、ヒドロキノン類、芳香族第二級アミン、例えばジフェニルアミン、これらの群の多様な置換されたもの及びそれらの混合物が、挙げられている。
【0126】
該成形材料を基準として、一般的に2質量%までの量で使用されるUV安定剤として、多様な置換されたレソルシノール、サリチラート、ベンゾトリアゾール及びベンゾフェノン並びにヒンダードP含有化合物、ヒンダードアミン、カルボジイミドが挙げられる。
【0127】
無機顔料、例えば二酸化チタン、群青、酸化鉄、ZnO、ベーマイトAlO(OH)及びカーボンブラック、更に有機顔料、例えばフタロシアニン、キナクリドン、ペリレン並びに染料、例えばアントラキノンを着色剤として添加することができる。
【0128】
成核剤として、フェニルホスフィン酸ナトリウム、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素並びに好ましくはタルクを使用することができる。
【0129】
本発明による熱可塑性成形材料は、それ自体として知られた方法により、該出発成分を、常用の混合装置、例えばスクリュー押出機、ブラベンダーミル又はバンバリーミル中で混合し、引き続き押し出すことによって、製造することができる。その押出し後に、該押出物は冷却及び粉砕することができる。個々の成分も予備混合することができ、次いで、残りの出発物質を、個々に及び/又は同様に混合して、添加することができる。その混合温度は、通例230〜320℃である。
【0130】
更なる好ましい作業様式により、成分B)及びC)、D)並びに場合によりF)及びE)を、プレポリマーと混合し、配合し(konfektioniert)、かつ粒状化することができる。得られた粒状物は、固相中で、引き続き不活性ガス下で連続的に又は不連続に、成分A)の融点を下回る温度で、所望の粘度まで縮合される。
【0131】
本発明による熱可塑性成形材料は、良好な難燃性及び薄い固有色により傑出している。ゆえに、これらは、あらゆる種類の繊維、フィルム及び成形体の製造に適している。以下に、幾つかの例が挙げられている:プラグコネクタ、プラグ、プラグ部品、ケーブルハーネス部品、回路取付台(Schaltungstraeger)、回路取付台部品、三次元射出成形回路部品(dreidimensional spritzgegossene Schaltungstraeger,MID)、電気接続要素及びメカトロニクス部品。
【0132】
本発明によれば該熱可塑性成形材料から製造されうる成形品又は半製品は、例えば自動車産業、電気産業、電子産業、電気通信産業、情報技術産業、娯楽産業、コンピュータ産業において、車両及びその他の移動手段において、船舶、宇宙船において、家庭において、事務機器において、スポーツにおいて、医学において並びに一般的に、高められた防火を必要とする物品及び建築物の部分において使用することができる。
【0133】
台所分野及び家庭分野のためには、厨房機器、例えば電気フライヤー用の部品、アイロン、つまみの製造のため、並びにガーデン及びレジャー分野における用途のための、流動性の改良されたポリアミドの使用が可能である。
【実施例】
【0134】
次の成分を使用した:
成分A:
ISO 307に従い25℃で96質量%の硫酸中の0.5質量%溶液として測定される、150ml/gの粘度数VZを有するポリアミド66(これはBASF SE製のUltramid(登録商標) A24を使用した)。
【0135】
成分B:
赤リン
成分C:
メラミンポリホスファート(BASF SE製のMelapur(登録商標) M200/70)
成分D:
【表2】
【0136】
成分E:
エチレンコポリマー:
エチレン59.8質量%
n−ブチルアクリラート35質量%
アクリル酸4.5質量%
無水マレイン酸0.7質量%
成分F/1:
ポリアミド用の標準チョップドガラスファイバー、長さ=4.5mm、直径=10μm。
【0137】
成分F/2:
N,N′−ヘキサメチレン−ビス−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシヒドロシンナムアミド(Irganox(登録商標) 1098)
成分F/3:
ステアリン酸Ca
成分F/4:
酸化亜鉛。
【0138】
本発明により記載される改善を証明するするために、コンパウンディングにより、相応するプラスチック成形材料を調製した。個々の成分を、このために、二軸スクリュー押出機ZSK 25(Berstorff社)中で15kg/hの処理量及び約290℃でフラットな温度プロフィールで混合し、ストランドとして排出し、粒状化可能になるまで冷却し、粒状化した。
【0139】
その防火試験を、次のように決定した:
空気下での2d/23℃又は7d(日)/70℃の貯蔵後のUL 94。
【0140】
該成形材料の組成及び該測定の結果は、次の表から読み取ることができる。
F/2 / F/3及びF4の含量は合計でそれぞれ1.5質量%であった。
【0141】
【表3】