(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
カチオン性抗菌剤及び繊維を含む第1シートと、セルロース系繊維を含む第2シートと、カルボキシル基を有する高分子吸収剤を含む高分子吸収剤含有層とをその順で備える積層構造を含む、厚さ方向を有する吸収性物品の製造方法であって、
第1シートの一部に、前記カチオン性抗菌剤を含むカチオン性抗菌剤水溶液を塗工し、抗菌剤塗工領域を形成する抗菌剤塗工領域形成ステップ、及び
前記抗菌剤塗工領域形成ステップの後に、前記積層構造を形成する積層構造形成ステップ、
を含むことを特徴とする、前記製造方法。
前記積層構造形成ステップが、第1シートと、第2シートとを積層することにより第1積層構造を形成する第1積層構造形成ステップと、第1積層構造と、前記高分子吸収剤含有層とを積層することにより第2積層構造を形成する第2積層構造形成ステップとを含む、請求項1に記載の方法。
第1積層構造形成ステップにおいて、第1シートと、第2シートとを、第1シートの、前記カチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面と、第2シートとが向かい合うように積層する、請求項2に記載の方法。
第1積層構造形成ステップにおいて、第1シートと、第2シートとを、第1シートの、前記カチオン性抗菌剤が塗工された面と反対側の面と、第2シートとが向かい合うように積層する、請求項2に記載の方法。
前記抗菌剤塗工領域形成ステップの後且つ第1積層構造形成ステップの前に、接着剤を、第1シートの第2シートと向かい合う面又は第2シートの第1シートと向かい合う面に、前記抗菌剤塗工領域の少なくとも一部と前記厚さ方向に重複するように塗工することにより、接着剤層を形成する接着剤層形成ステップを含む、請求項3又は4に記載の方法。
前記接着剤層形成ステップにおいて、前記接着剤を、第1シートの第2シートと向かい合う面又は第2シートの第1シートと向かい合う面に、前記接着剤層の一部が、前記抗菌剤塗工領域と前記厚さ方向に重複しないように塗工する、請求項5に記載の方法。
前記抗菌剤塗工領域形成ステップの後且つ第1積層構造形成ステップの前に、第1シートの第2シートと反対側の面に、追加シートを積層する追加シート積層工程を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
第1シートと、前記追加シートとを、第1シートの前記カチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面と、前記追加シートとが向かい合うように積層する、請求項7に記載の方法。
前記吸収性物品が、吸収コア及びコアラップを含む吸収体を備え、前記高分子吸収剤含有層が、前記吸収コアを構成し、第2シートが前記コアラップを構成している、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
第1シートの、前記カチオン性抗菌剤水溶液を塗工すべき面が、第1シートの搬送方向において、2.0〜9.0μmの表面粗さ値を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[定義]
・「上方」及び「下方」
本明細書では、吸収性物品において、「上方」及び「下方」は、2つの対比すべき要素の厚さ方向の位置関係を表し、一方の要素が、他方の要素の上方にあるとは、一方の要素が、他方の要素よりも、液透過性シートの肌当接面よりにあることを意味し、そして一方の要素が、他方の要素の下方にあるとは、一方の要素が、他方の要素よりも液不透過性シートの着衣当接面よりにあることを意味する。
【0011】
本開示は以下の態様に関する。
[態様1]
カチオン性抗菌剤及び繊維を含む第1シートと、セルロース系繊維を含む第2シートと、カルボキシル基を有する高分子吸収剤を含む高分子吸収剤含有層とをその順で備える積層構造を含む、厚さ方向を有する吸収性物品の製造方法であって、
第1シートの一部に、上記カチオン性抗菌剤を含むカチオン性抗菌剤水溶液を塗工し、抗菌剤塗工領域を形成する抗菌剤塗工領域形成ステップ、及び
上記抗菌剤塗工領域形成ステップの後に、上記積層構造を形成する積層構造形成ステップ、
を含むことを特徴とする、上記製造方法。
【0012】
上記製造方法では、第1シートの一部にカチオン性抗菌剤水溶液を塗工し、抗菌剤塗工領域を形成する抗菌剤塗工領域形成ステップを実施した後、所定の積層構造形成ステップを実施する、すなわち、カチオン性抗菌剤水溶液を含む第1シートと、セルロース系繊維を含む第2シートとが隣り合うように積層するので、第1シートのカチオン性抗菌剤水溶液の水分が、第2シートのセルロース系繊維に保持されるとともに、第1シートのカチオン性抗菌剤水溶液のカチオン性抗菌剤が、第2シートのセルロース系繊維(のヒドロキシル基)に吸着される。従って、カチオン性抗菌剤水溶液が、第1シート、及び積層構造から落下しにくく、カチオン性抗菌剤水溶液が、製造設備を汚染しにくく、製造設備に錆等が発生しにくい。
【0013】
また、第1シートのカチオン性抗菌剤水溶液の水分が、第2シートのセルロース系繊維に保持されるとともに、第1シートのカチオン性抗菌剤水溶液のカチオン性抗菌剤が、第2シートのセルロース系繊維(のヒドロキシル基)に吸着されるので、第1シートに含まれるカチオン性抗菌剤及び水分が、第2シートを超えて高分子吸収剤含有層中の高分子吸収剤に到達しにくく、カルボキシル基を有する高分子吸収剤の吸収性が、カチオン性抗菌剤により阻害されにくい。
【0014】
さらに、上記製造方法は、カチオン性抗菌剤をインラインで適用する製造方法であり、カチオン性抗菌剤水溶液を、第1シートの全部ではなく、第1シートの一部に塗工することができるので、抗菌剤をオフラインで適用する製造方法と比較して、生産性に優れている。
【0015】
[態様2]
上記積層構造形成ステップが、第1シートと、第2シートとを積層することにより第1積層構造を形成する第1積層構造形成ステップと、第1積層構造と、上記高分子吸収剤含有層とを積層することにより第2積層構造を形成する第2積層構造形成ステップとを含む、請求項1に記載の方法。
【0016】
上記製造方法では、第1シートと、第2シートとを積層する第1積層構造形成ステップの後、第1積層構造と、上記高分子吸収剤含有層とを積層する第2積層構造形成ステップを実施する。従って、第1積層構造形成ステップにおいて、第1シートに塗工されたカチオン性抗菌剤水溶液の水分が、第2シートのセルロース系繊維に保持されるとともに、第1シートに塗工されたカチオン性抗菌剤水溶液のカチオン性抗菌剤が、第2シートのセルロース系繊維(のヒドロキシル基)に吸着された後、第2積層構造形成ステップにおいて、第1積層構造と、高分子吸収剤含有層とを積層するので、第1シートに含まれるカチオン性抗菌剤及び水分が、第2シートを超えて高分子吸収剤含有層中の高分子吸収剤に到達しにくく、カルボキシル基を有する高分子吸収剤の吸収性が、カチオン性抗菌剤により阻害されにくい。
【0017】
[態様3]
第1積層構造形成ステップにおいて、第1シートと、第2シートとを、第1シートの、上記カチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面と、第2シートとが向かい合うように積層する、請求項2に記載の方法。
【0018】
上記製造方法では、第1シートと、第2シートとを、第1シートの、カチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面と、第2シートとが向かい合うように積層する、すなわち、第1シートのカチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面を、第2シートで覆うように積層するので、カチオン性抗菌剤水溶液が、第1シート、及び積層構造から落下しにくく、カチオン性抗菌剤水溶液が、製造設備を汚染しにくく、製造設備に錆等が発生しにくい。
【0019】
[態様4]
第1積層構造形成ステップにおいて、第1シートと、第2シートとを、第1シートの、上記カチオン性抗菌剤が塗工された面と反対側の面と、第2シートとが向かい合うように積層する、請求項2に記載の方法。
【0020】
上記製造方法では、第1シートと、第2シートとを、第1シートの、カチオン性抗菌剤が塗工された面と反対側の面と、第2シートとが向かい合うように積層するので、第1シートにおいて、第2シートに近い部分のカチオン性抗菌剤水溶液の量が、第2シートから遠い部分のカチオン性抗菌剤水溶液の量よりも少なくなる傾向がある。その結果、第1シートに含まれるカチオン性抗菌剤水溶液が、第2シートを超えて高分子吸収剤含有層に到達しにくくなるので、カルボキシル基を有する高分子吸収剤の吸収性が、カチオン性抗菌剤により阻害されにくい。
【0021】
[態様5]
上記抗菌剤塗工領域形成ステップの後且つ第1積層構造形成ステップの前に、接着剤を、第1シートの第2シートと向かい合う面又は第2シートの第1シートと向かい合う面に、上記抗菌剤塗工領域の少なくとも一部と上記厚さ方向に重複するように塗工することにより、接着剤層を形成する接着剤層形成ステップを含む、請求項3又は4に記載の方法。
【0022】
上記製造方法では、抗菌剤塗工領域形成ステップの後且つ第1積層構造形成ステップの前に、所定の接着剤層形成ステップを含むので、第1シートに含まれるカチオン性抗菌剤水溶液のカチオン性抗菌剤及び水分が、接着剤層を超えて、第2シートに移行しにくくなり、ひいては、カチオン性抗菌剤水溶液のカチオン性抗菌剤及び水分が、第2シートを超えて、高分子吸収剤含有層に到達しにくくなるので、高分子吸収剤の吸収性が、カチオン性抗菌剤により阻害されにくい。
【0023】
[態様6]
上記接着剤層形成ステップにおいて、上記接着剤を、第1シートの第2シートと向かい合う面又は第2シートの第1シートと向かい合う面に、上記接着剤層の一部が、上記抗菌剤塗工領域と上記厚さ方向に重複しないように塗工する、請求項5に記載の方法。
【0024】
上記製造方法では、接着剤層形成ステップにおいて、接着剤を、接着剤層の一部が、抗菌剤塗工領域と厚さ方向に重複しないように塗工するので、接着剤層が、抗菌剤塗工領域と厚さ方向に重複しない領域において、第1シートと、第2シートとを接着させることができ、製造される吸収性物品において、液体の吸収性が阻害されにくい。
【0025】
[態様7]
上記抗菌剤塗工領域形成ステップの後且つ第1積層構造形成ステップの前に、第1シートの第2シートと反対側の面に、追加シートを積層する追加シート積層工程を含む、請求項1〜6のいずれか一項に記載の方法。
上記製造方法では、抗菌剤塗工領域形成ステップの後且つ第1積層構造形成ステップの前に、所定の追加シート積層工程を含むので、第1シートに含まれるカチオン性抗菌剤水溶液のカチオン性抗菌剤及び水分が、追加シートに保持されるため、第1シートに含まれるカチオン性抗菌剤水溶液のカチオン性抗菌剤及び水分が、第2シートに移行しにくくなり、ひいては、カチオン性抗菌剤水溶液のカチオン性抗菌剤及び水分が、第2シートを超えて、高分子吸収剤含有層に到達しにくくなるので、高分子吸収剤の吸収性が、カチオン性抗菌剤により阻害されにくい。
【0026】
[態様8]
第1シートと、上記追加シートとを、第1シートの上記カチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面と、上記追加シートとが向かい合うように積層する、請求項7に記載の方法。
上記製造方法では、追加シート積層工程において、第1シートと、追加シートとを、第1シートのカチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面と、追加シートとが向かい合うように積層する、すなわち、第1シートのカチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面を、追加シートで覆うように積層するので、カチオン性抗菌剤水溶液が、第1シート、及び積層構造から落下しにくく、カチオン性抗菌剤水溶液が、製造設備を汚染しにくく、製造設備に錆等が発生しにくい。
なお、上記製造方法は、第1シートの両面、すなわち、第2シートよりの面と、追加シートよりの面とに、カチオン性抗菌剤水溶液が塗工された場合に、特に好ましい。
【0027】
[態様9]
上記吸収性物品が、吸収コア及びコアラップを含む吸収体を備え、上記高分子吸収剤含有層が、上記吸収コアを構成し、第2シートが上記コアラップを構成している、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
上記製造方法は、高分子吸収剤含有層が吸収コアを構成し、第2シートがコアラップを構成しているので、第1シートのカチオン性抗菌剤水溶液の水分が、コアラップのセルロース系繊維に保持されるとともに、第1シートのカチオン性抗菌剤水溶液のカチオン性抗菌剤が、コアラップのセルロース系繊維(のヒドロキシル基)に吸着されるので、第1シートに含まれるカチオン性抗菌剤及び水分が、コアラップを超えて吸収コアの高分子吸収剤に到達しにくく、カルボキシル基を有する高分子吸収剤の吸収性が、カチオン性抗菌剤により阻害されにくい。
【0028】
[態様10]
上記抗菌剤塗工領域形成ステップにおいて、上記カチオン性抗菌剤水溶液を、接触型塗工機を用いて第1シートに塗工する、請求項1〜9のいずれか一項に記載の方法。
上記製造方法では、カチオン性抗菌剤水溶液を、接触型塗工機を用いて第1シートに塗工するので、カチオン性抗菌剤水溶液が飛散しにくく、カチオン性抗菌剤水溶液により製造設備が汚染されにくく、カチオン性抗菌剤水溶液により製造設備に錆等が発生しにくい。
【0029】
[態様11]
第1シートの、上記カチオン性抗菌剤水溶液を塗工すべき面が、第1シートの搬送方向において、2.0〜9.0μmの表面粗さ値を有する、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
上記製造方法では、第1シートの、上記カチオン性抗菌剤水溶液を塗工すべき面が、所定の表面粗さ値を有するので、抗菌剤塗工領域形成ステップにおいて、塗工されたカチオン性抗菌剤水溶液が、第1シートに保持されやすく、カチオン性抗菌剤水溶液により製造設備が汚染されにくく、カチオン性抗菌剤水溶液により製造設備に錆等が発生しにくい。
【0030】
本開示の製造方法は、カチオン性抗菌剤及び繊維を含む第1シートと、セルロース系繊維を含む第2シートと、カルボキシル基を有する高分子吸収剤を含む高分子吸収剤含有層とをその順で備える積層構造を含む、厚さ方向を有する吸収性物品の製造方法であり、以下のステップを含む。
(S
1)第1シートの一部に、カチオン性抗菌剤を含むカチオン性抗菌剤水溶液を塗工し、抗菌剤塗工領域を形成する抗菌剤塗工領域形成ステップ(以下、「抗菌剤塗工領域形成ステップ」と称する場合がある)
(S
2)抗菌剤塗工領域形成ステップS
1の後に、上記積層構造を形成する積層構造形成ステップ(以下、「積層構造形成ステップ」と称する場合がある)
【0031】
上記積層構造形成ステップは、以下のステップを含むことができる。
(S
2-1)第1シートと、第2シートとを積層することにより第1積層構造を形成する第1積層構造形成ステップ(以下、「第1積層構造形成ステップ」と称する場合がある)
(S
2-2)第1積層構造と、高分子吸収剤含有層とを積層することにより第2積層構造を形成する第2積層構造形成ステップ(以下、「第2積層構造形成ステップ」と称する場合がある)
【0032】
本開示の製造方法は、任意要件として、以下のステップを含む。
(S
3)抗菌剤塗工領域形成ステップS
1の後且つ第1積層構造形成ステップS
2-1の前に、接着剤を、第1シートの第2シートと向かい合う面又は第2シートの第1シートと向かい合う面に、抗菌剤塗工領域の少なくとも一部と、吸収性物品の厚さ方向に重複するように塗工することにより、接着剤層を形成する接着剤層形成ステップ(以下、「接着剤層形成ステップ」と称する場合がある)
(S
4)抗菌剤塗工領域形成ステップS
1の後且つ第1積層構造形成ステップS
2-1の前に、第1シートの第2シートと反対側の面に、追加シートを積層する追加シート積層工程(以下、「追加シート積層工程」と称する場合がある)
【0033】
本開示の吸収性物品の製造方法(以下、「本開示の製造方法」と称する場合がある)について、実施形態及び図面を用いて、以下、詳細に説明する。
[第1実施形態]
図1は、本開示の実施形態の1つ(以下、「第1実施形態」と称する)に従う吸収性物品の製造方法(以下、単に「第1実施形態に従う製造方法」と称する場合がある)に用いられる製造装置1の一部を示す模式図である。
図2は、
図1に示される製造装置1により製造された吸収性物品101の平面図である。
図3は、吸収性物品101の、
図2のIII−III端面における部分端面図である。
図4は、
図1に示される製造装置1により製造された吸収性物品101の分解斜視図である。
【0034】
第1実施形態に従う製造方法を説明する前に、第1実施形態に従う製造方法により製造される吸収性物品101の構造を説明する。
図2〜
図4に示されるように、第1実施形態に従う製造方法により製造される吸収性物品101は、お互いに直交する、長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを有し、そして液透過性シート103と、第1吸収体107(第1上方コアラップ115、吸収コア109、及び第1下方コアラップ117)と、接着剤層108と、第1吸収体107及び接着剤層108よりも下方に配置された下方布帛シート119と、第2吸収体121と、液不透過性シート105とを、その順番で備える。
【0035】
下方布帛シート119には、上方の面の抗菌剤塗工領域133に、カチオン性抗菌剤水溶液(図示せず)が塗工されており、下方布帛シート119が、カチオン性抗菌剤配置シート129を構成している。抗菌剤塗工領域133は、下方布帛シート119の全体ではなく、着用時に液透過性シート103が着用者の排泄口と当接する排泄口当接域と厚さ方向Tに重複する範囲に形成されている。また、接着剤層108は、下方布帛シート119の第1吸収体107側の面全体に、ホットメルト接着剤を間欠的に塗工することにより形成されている。換言すると、接着剤層108は、下方布帛シート119の第1吸収体107側の面全体に間欠的に配置されている。また、接着剤層108は、抗菌剤塗工領域133よりも広範囲に形成されている。具体的には、接着剤層108は、接着剤層108の一部、具体的には、接着剤層108の外縁が、抗菌剤塗工領域133と厚さ方向Tに重複しないように形成されている。
【0036】
第1吸収体107は、吸収コア109と、コアラップ、具体的には、吸収コア109の上方に配置された第1上方コアラップ115と、吸収コア109の下方に配置された第1下方コアラップ117とを備える。吸収コア109は、カルボキシル基を有する高分子吸収剤111と、パルプ繊維113とを含む。
【0037】
第2吸収体121は、高分子吸収剤層127と、高分子吸収剤層127の上方に配置された第2上方コアラップ123と、高分子吸収剤層127の下方に配置された第2下方コアラップ125とを備えている。高分子吸収剤層127は、カルボキシル基を有する高分子吸収剤111から構成されている。
【0038】
また、吸収性物品101は、サイドシート201と、吸収性物品101の端部をシールするシール部203と、液透過性シート103、吸収性物品101を着衣に固定する固定部207とを有するが、いずれも当技術分野で公知のものであるので詳細な説明を省略する。
【0039】
なお、第1実施形態に従う製造方法により製造された吸収性物品101では、下方布帛シート119が第1シート301を構成し、第1下方コアラップ117が第2シート303を構成し、そして吸収コア109が高分子吸収剤含有層305を構成している。また、下方布帛シート119、第1下方コアラップ117及び吸収コア109が、積層構造307を構成している。
【0040】
図1に示されるように、第1上方コアラップロール3から巻き出された第1上方コアラップシート5を、搬送方向MDに搬送しながら、第1上方コアラップシート5に、接着剤塗工機7からホットメルト接着剤を塗工し、その上に、高分子吸収剤含有層を形成する吸収コア109を積み重ね、第1積層物19を形成する。
なお、吸収コア109は、当技術分野で公知の吸収コア製造装置9により製造され、吸収コア製造装置9は、材料供給部11と、サクションドラム13と、サクションドラム13の外周面に形成された凹型15と、サクション部17とを備える。
【0041】
第1下方コアラップロール21から巻き出された、第2シートを形成する第1下方コアラップシート23を搬送方向MDに搬送しながら、第1下方コアラップシート23に、接着剤塗工機27からホットメルト接着剤を塗工し、第1下方コアラップシート23のホットメルト接着剤が塗工された面が第1積層物19(吸収コア109)と向かい合うように、第1下方コアラップシート23を、第1積層物19の上に積み重ね、第1吸収体連続体29を形成する。
【0042】
続いて、下方布帛シートロール31から巻き出され、第1シートを形成する下方布帛シート連続体33を巻き出し、下方布帛シート連続体33に、抗菌剤塗工機35から、カチオン性抗菌剤水溶液を塗工し、下方布帛シート連続体33に、抗菌剤塗工領域(
図4の符号133)を形成する(抗菌剤塗工領域形成ステップS
1)。なお、抗菌剤塗工領域は、着用時に液透過性シート103が着用者の排泄口と当接する排泄口当接域と厚さ方向Tに重複する範囲に形成される。
【0043】
次いで、下方布帛シート連続体33のカチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面に、接着剤塗工機37から、ホットメルト接着剤を塗工し、接着剤層(
図3及び
図4の符号108)を形成する(接着剤層形成ステップS
3)。なお、接着剤層は、下方布帛シート連続体33のカチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面の全体(すなわち、抗菌剤塗工領域より広範囲)に、間欠的に形成される。次いで、下方布帛シート連続体33のカチオン性抗菌剤水溶液及びホットメルト接着剤が塗工された面が、第2積層物39と向かい合うように、そして接着剤層を間に挟んで、下方布帛シート連続体33を、第1吸収体連続体29に積み重ね、積層構造307を含む、第2積層物39を形成する(積層構造形成ステップS
2)。
【0044】
続いて、第2下方コアラップロール41から、第2下方コアラップシート43を巻き出し、その上に、接着剤塗工機45から、ホットメルト接着剤を塗工し、その上に、高分子吸収剤塗工機47から高分子吸収剤111を散布し、高分子吸収剤層127を形成する。次いで、第2上方コアラップロール49から、第2上方コアラップシート51を巻き出し、第2上方コアラップシート51に、接着剤塗工機53から、ホットメルト接着剤を塗工し、第2上方コアラップシート51のホットメルト接着剤が塗工された面が高分子吸収剤層127と向き合うように、第2上方コアラップシート51を、高分子吸収剤層127に積み重ね、第2吸収体連続体55を形成する。
【0045】
第2吸収体連続体55に、接着剤塗工機57からホットメルト接着剤を塗工し、第2積層物39の上に積み重ね、積層吸収体連続体58を形成する。次いで、積層吸収体連続体58を、切断装置59に通し、積層吸収体60を形成する。積層吸収体60に、液透過性シートロール61から巻き出された液透過性シート連続体63を、接着剤塗工機65から塗工されたホットメルト接着剤を間に挟んで積み重ね、第3積層物66を形成する。次いで、液不透過性シートロール67から巻き出された液不透過性シート連続体69を、接着剤塗工機71から塗工されたホットメルト接着剤を間に挟んで第3積層物66に積み重ね、吸収性物品連続体73を形成する。
吸収性物品連続体73は、当技術分野で公知の方法により加工され、
図2〜
図4に示される吸収性物品101が製造される。
【0046】
[第2実施形態]
図5は、本開示の別の実施形態(以下、「第2実施形態」と称する)に従う吸収性物品の製造方法に用いられる製造装置1の一部を示す模式図である。
図6は、第2実施形態に従う製造方法で製造された吸収性物品101を説明するための図である。具体的には、
図6は、
図2のIII−III端面における部分端面図に相当する。なお、第2実施形態に従う製造方法により製造される吸収性物品101の平面図は、
図2に示される吸収性物品101の平面図と同一であるので、必要に応じてそちらを参照されたい。
【0047】
図6に示されるように、第2実施形態に従う製造方法により製造される吸収性物品101は、お互いに直交する、長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを有し、そして液透過性シート103と、第1吸収体107よりも上方に配置された上方布帛シート131と、第1吸収体107(第1上方コアラップ115,接着剤層108’,吸収コア109及び第1下方コアラップ117)と、接着剤層108と、第1吸収体107よりも下方に配置された下方布帛シート119と、第2吸収体121と、液不透過性シート105とを、その順番で備える。
【0048】
上方布帛シート131には、下方の面の抗菌剤塗工領域(図示せず、
図4の符号133を参照)に、カチオン性抗菌剤水溶液(図示せず)が塗工されており、上方布帛シート131が、カチオン性抗菌剤配置シート129を構成している。抗菌剤塗工領域(図示せず、
図4の符号133を参照)は、着用時に排泄口当接域と当接する排泄口当接域と厚さ方向Tに重複する範囲に形成されている。また、接着剤層108'は、上方布帛シート131の下方の面全体に、ホットメルト接着剤を間欠的に塗工することにより形成されている。換言すると、接着剤層108’は、上方布帛シート131の下方の面全体に間欠的に配置されている。また、接着剤層108'は、抗菌剤塗工領域(図示せず、
図4の符号133を参照)よりも広範囲に形成されている。具体的には、接着剤層108'は、接着剤層108'の一部、具体的には、接着剤層108'の外縁が、抗菌剤塗工領域(図示せず、
図4の符号133を参照)と厚さ方向Tに重複しないように形成されている。
【0049】
なお、第2実施形態に従う製造方法により製造された吸収性物品101では、上方布帛シート131が第1シート301を構成し、上方コアラップシートが第2シート303を構成し、そして吸収コア109が高分子吸収剤含有層305を構成している。また、上方布帛シート131、第1上方コアラップ115及び吸収コア109が、積層構造307を構成している。
【0050】
また、下方布帛シート119には、上方の面の抗菌剤塗工領域(図示せず、
図4の符号133を参照)に、カチオン性抗菌剤水溶液(図示せず)が塗工されており、下方布帛シート119が、カチオン性抗菌剤配置シート129を構成している。抗菌剤塗工領域(図示せず、
図4の符号133を参照)は、下方布帛シート119の全体ではなく、液透過性シート103が着用時に着用者の排泄口と当接する排泄口当接域と厚さ方向Tに重複する範囲に形成されている。また、接着剤層108は、下方布帛シート119の上方の面全体に、ホットメルト接着剤を間欠的に塗工することにより形成されている。換言すると、接着剤層108は、下方布帛シート119の上方の面全体に間欠的に配置されている。また、接着剤層108は、抗菌剤塗工領域(図示せず、
図4の符号133を参照)よりも広範囲に形成されている。具体的には、接着剤層108は、接着剤層108の一部、具体的には、接着剤層108の外縁が、抗菌剤塗工領域(図示せず、
図4の符号133を参照)と厚さ方向Tに重複しないように形成されている。
【0051】
なお、第2実施形態に従う製造方法により製造された吸収性物品101では、下方布帛シート119が第1シート301を構成し、第1下方コアラップ117が第2シート303を構成し、そして吸収コア109が高分子吸収剤含有層305を構成している。また、下方布帛シート119、第1下方コアラップ117及び吸収コア109が、積層構造307を構成している。
第2実施形態に従う製造方法により製造された吸収性物品101は、上述の部分以外は、第1実施形態に従う製造方法により製造された吸収性物品101と同様であるので、説明を省略する。
【0052】
図5に示されるように、上方布帛シートロール81から巻き出された、第1シート301を形成する上方布帛シート連続体83を搬送方向MDに搬送しながら、上方布帛シート連続体83に、抗菌剤塗工機85から、カチオン性抗菌剤水溶液を塗工し、上方布帛シート連続体83に、抗菌剤塗工領域(
図4の符号133)を形成する(抗菌剤塗工領域形成ステップS
1)。なお、抗菌剤塗工領域は、液透過性シート103が着用者の排泄口と当接する排泄口当接域と厚さ方向Tに重複する範囲に形成される。
【0053】
次いで、上方布帛シート連続体83のカチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面に、接着剤塗工機87から、ホットメルト接着剤を塗工し、接着剤層108'を形成する(接着剤層形成ステップS
3)。なお、接着剤層108'は、上方布帛シート連続体83のカチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面の全体(すなわち、抗菌剤塗工領域より広範囲)に、間欠的に形成される。次いで、第1上方コアラップロール3から巻き出された、第2シート303を形成する第1上方コアラップシート5を、搬送方向MDに搬送しながら、上方布帛シート連続体83のカチオン性抗菌剤水溶液及びホットメルト接着剤が塗工された面が、第1上方コアラップシート5と向かい合うように、そして接着剤層108'を間に挟んで、第1上方コアラップシート5を、上方布帛シート連続体83に積み重ね、上方布帛シート積層体89を形成する(第1積層構造形成ステップS
2-1)。
【0054】
次いで、上方布帛シート積層体89に、接着剤塗工機91から、ホットメルト接着剤を塗工し、その上に、高分子吸収剤含有層を形成する吸収コア109を積み重ね、第1積層物19を形成する(第2積層構造形成ステップS
2-2)。
その他の工程は、第1実施形態と同様であるので、説明を省略するが、第2実施形態では、「抗菌剤塗工領域形成ステップS
1」及び「積層構造形成ステップS
2」が、2サイクル実施される。
【0055】
[第3実施形態]
図7は、本開示の別の実施形態(以下、「第3実施形態」と称する)に従う吸収性物品の製造方法に用いられる製造装置1の一部を示す模式図である。
図8は、第3実施形態に従う製造方法で製造された吸収性物品101を説明するための図である。具体的には、
図8は、
図2のIII−III端面における端面図に相当する。なお、第3実施形態に従う製造方法により製造される吸収性物品101の平面図は、
図2に示される吸収性物品101の平面図と同一であるので、必要に応じてそちらを参照されたい。
【0056】
図8に示されるように、第3実施形態に従う製造方法により製造される吸収性物品101は、お互いに直交する、長手方向L、幅方向W及び厚さ方向Tを有し、そして液透過性シート103と、第1吸収体107よりも上方に配置された上方布帛シート131と、第1吸収体107(第1上方コアラップ115,接着剤層108,吸収コア109及び第1下方コアラップ117)と、第2吸収体121と、液不透過性シート105とを、その順番で備える。
【0057】
上方布帛シート131には、上方の面の抗菌剤塗工領域(図示せず、
図4の符号133を参照)に、カチオン性抗菌剤水溶液(図示せず)が塗工されており、上方布帛シート131が、カチオン性抗菌剤配置シート129を構成している。抗菌剤塗工領域(図示せず、
図4の符号133を参照)は、着用時に液透過性シート103が着用者の排泄口と当接する排泄口当接域と厚さ方向Tに重複する範囲に形成されている。また、接着剤層108は、上方布帛シート131の上方の面全体に、ホットメルト接着剤を間欠的に塗工することにより形成されている。換言すると、接着剤層108は、下方布帛シート119の上方の面全体に間欠的に配置されている。また、接着剤層108は、抗菌剤塗工領域(図示せず、
図4の符号133を参照)よりも広範囲に形成されている。具体的には、接着剤層108は、接着剤層108の一部、具体的には、接着剤層108の外縁が、抗菌剤塗工領域(図示せず、
図4の符号133を参照)と厚さ方向Tに重複しないように形成されている。
【0058】
なお、第3実施形態に従う製造方法により製造された吸収性物品101では、液透過性シート103が、追加シート309を構成し、上方布帛シート131が、第1シート301を構成し、第1上方コアラップ115が、第2シート303を構成し、そして吸収コア109が、高分子吸収剤を含む高分子吸収剤含有層305を構成する。また、上方布帛シート131、第1上方コアラップ115及び吸収コア109が、積層構造307を構成する。
第3実施形態に従う製造方法により製造された吸収性物品101は、上述の部分以外は、第1実施形態に従う製造方法により製造された吸収性物品101と同様であるので、説明を省略する。
【0059】
図7に示されるように、第3実施形態では、第1吸収体連続体29を形成する工程までは、第1実施形態と同様であるので、説明を省略する。
第1実施形態と同様の工程により形成された第2吸収体連続体55に、接着剤塗工機57からホットメルト接着剤を塗工し、次いで、第2吸収体連続体55を、第1実施形態と同様の工程により形成された第1吸収体連続体29の上に積み重ね、積層吸収体連続体58を形成する。次いで、積層吸収体連続体58を、切断装置59に通し、積層吸収体60を形成する。
【0060】
上方布帛シートロール81から巻き出した、第1シート301を形成する上方布帛シート連続体83に、抗菌剤塗工機85から、カチオン性抗菌剤水溶液を塗工し、上方布帛シート連続体83に、抗菌剤塗工領域(
図4の符号133)を形成する(抗菌剤塗工領域形成ステップS
1)。なお、抗菌剤塗工領域は、液透過性シート103が着用者の排泄口と当接する排泄口当接域と厚さ方向Tに重複する範囲に形成される。
【0061】
次いで、上方布帛シート連続体83のカチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面に、接着剤塗工機87から、ホットメルト接着剤を塗工する。次いで、上方布帛シート連続体83の、カチオン性抗菌剤水溶液及びホットメルト接着剤が塗工された面が、液透過性シート連続体63と向かい合うように、上方布帛シート連続体83を、液透過性シートロール61から巻き出された、追加シート309を形成する液透過性シート連続体63に積み重ねることにより、液透過性シート積層体93を形成する。
【0062】
液透過性シート積層体93の上方布帛シート連続体83のカチオン性抗菌剤水溶液が塗工されていない面に、接着剤塗工機65からホットメルト接着剤を塗工し、接着剤層108を形成する(接着剤層形成ステップS
3)。なお、接着剤層108は、上方布帛シート連続体83のカチオン性抗菌剤水溶液が塗工されていない面の全体(すなわち、抗菌剤塗工領域より広範囲)に、間欠的に形成される。次いで、液透過性シート積層体93と、積層吸収体60とを、接着剤層108を間に挟んで積み重ね、第3積層物66を形成する(積層構造形成ステップS
2)。
【0063】
次いで、液不透過性シートロール67から巻き出された液不透過性シート連続体69を、接着剤塗工機71から塗工されたホットメルト接着剤を間に挟んで第3積層物66に積み重ね、吸収性物品連続体73を形成する。
吸収性物品連続体73は、当技術分野で公知の方法により加工され、
図8に示される吸収性物品101が製造される。
【0064】
本開示の製造方法では、カチオン性抗菌剤水溶液としては、製造設備を汚染しうるものであれば、特に制限されず、公知のカチオン性抗菌剤を含む水溶液が含まれうる。
上記カチオン性抗菌剤としては、例えば、第4級アンモニウム塩、グアニジン系抗菌剤(例えば、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン)、ビグアナイド系抗菌剤、金属イオン担持物、ヘキセチジン、メタロニダゾール等が挙げられる。製造設備を汚染する恐れが高い観点からは、上記カチオン性抗菌剤として、第4級アンモニウム塩が挙げられる。
【0065】
第4級アンモニウム塩は、第4級アンモニウム塩構造を分子内に有していれば、特に限定されるものではないが、例えば、アルキルトリメチルアンモニウム塩、ポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩等が挙げられ、下記式(1)〜(4)で示される第4級アンモニウム塩が挙げられる。
[R(CH
3)
3N
+]
lX 式(1)
[R(CH
3)N
+(CH
2CH
2O)
mH[(CH
2CH
2O)
nH]]
lX 式(2)
[R(CH
3)
2N
+CH
2C
6H
5]
lX 式(3)
[RPy
+]
lX 式(4)
(式中、Rは、それぞれ独立して、アルキル基を表し、Xは、それぞれ独立して、1価または2価の陰イオンを表す。lは、それぞれ独立して、1又は2の整数を表し、m及びnは、それぞれ独立して、2〜40の整数を表し、Pyはピリジン環を表す。)
【0066】
上記アルキル基は、長鎖アルキル基であることができ、炭素数8〜18の飽和炭化水素基であることができ、オクチル基、ラウリル基、ミリスチル基、及びセチル基であることができ、そしてラウリル基であることができる。製造設備を汚染する恐れの高さの観点からである。
第4級アンモニウム塩は、F
-、Cl
-、Br
-、I
-等のハロゲン化物イオン、NO
-、およびSO
42-等との塩であることができ、そして電気陰性度が高いCl
-等との塩であることができる。
製造設備を汚染する恐れの高さの観点から、第4級アンモニウム塩の具体例としては、塩化ベンザルコニウム、塩化セチルピリジニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化デカリニウム等が挙げられる。
【0067】
上記ビグアナイド系抗菌剤としては、ポリアミノプロピルビグアナイド及びその塩、例えば、塩酸塩、ステアリン酸塩、リン酸塩等、グルコン酸クロルヘキシジン、塩酸クロルヘキシジン、ポリヘキサメチレングアニジン塩酸塩、ポリヘキサメチレングアニジンリン酸塩、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩酸塩、ポリヘキサメチレンビグアナイドステアリン酸塩、ポリ[オキシエチレン(ジメチルイミニオ)エチレン(ジメチルイミニオ)エチレンジクロリド]、並びにそれらの任意の組み合わせが挙げられる。
【0068】
上記金属イオン担持物としては、金属イオンを放出しうるもの、例えば、金属塩が挙げられる。上記金属イオンとしては、例えば、銀イオン、亜鉛イオン、アルミニウムイオン、コバルトイオン、ジルコニウムイオン、セリウムイオン、鉄イオン、銅イオン、ニッケルイオン、白金イオン等が挙げられ、銀イオンが好ましい。
上記金属塩しては、例えば、硝酸塩、例えば、硝酸銀、硝酸アルミニウム、硝酸コバルト、硝酸ジルコニウム、硝酸セリウム、硝酸鉄、硝酸銅、硝酸ニッケル、酢酸塩、例えば、酢酸銀、塩酸塩、例えば、塩化セリウム、塩化鉄、塩化亜鉛、塩化銅、硫酸塩、例えば、硫酸銀、硫酸アルミニウム、硫酸銅、硫酸亜鉛等が挙げられる。
【0069】
本開示の製造方法では、第1シートは、繊維を含むものであれば、特に制限されず、カチオン性抗菌剤を保持できる観点から、例えば、布帛、例えば、不織布、織布、編物等が挙げられる。上記繊維は、カチオン性抗菌剤水溶液が塗工された際に、強度を保持できる観点から、合成樹脂系繊維であることが好ましい。
第1シートとしては、例えば、液透過性シート、液透過性シートと、吸収体との間に配置される布帛シート(セカンドシートとも称される)、吸収体と、液不透過性シートとの間に配置される布帛シート等が挙げられる。
【0070】
本開示の製造方法では、第2シートは、セルロース系繊維を含むものであれば、特に制限されず、例えば、布帛、例えば、不織布、織布、編物等が挙げられる。
上記セルロース系繊維としては、カチオン性抗菌剤を吸着させる観点から、ヒドロキシル基を有するものが好ましく、そして上記セルロース系繊維として、例えば、例えば、天然セルロース繊維、再生セルロース繊維、精製セルロース繊維及び半合成セルロース繊維が挙げられる。
上記天然セルロース繊維としては、植物繊維、例えば、パルプ繊維(例えば、木材パルプ、非木材パルプ)、種子毛繊維(例えば、コットン)、じん皮繊維(例えば、麻)、葉脈繊維(例えば、マニラ麻)、果実繊維(例えば、やし)が挙げられる。
【0071】
上記再生セルロース繊維としては、レーヨン、例えば、ビスコースから得られるビスコースレーヨン、ポリノジック及びモダール、セルロースの銅アンモニア塩溶液から得られる銅アンモニアレーヨン(「キュプラ」とも称される)等の繊維が挙げられる。
【0072】
上記精製セルロース繊維としては、リヨセル、具体的には、パルプを、N−メチルモルホリンN−オキシドの水溶液に溶解させて紡糸原液(ドープ)とし、N−メチルモルホリンN−オキシドの希薄溶液中に押出して繊維としたものが挙げられる。上記精製セルロースは、例えば、テンセル(商標)として市販されている。
上記半合成繊維としては、半合成セルロース、例えば、アセテート繊維、例えば、トリアセテート及びジアセテート等の繊維が挙げられる。
第2シートとしては、例えば、吸収体のコアラップを構成するティッシュが挙げられる。
【0073】
本開示の製造方法では、高分子吸収剤含有層としては、カルボキシル基を有する高分子吸収剤を含む層であれば、特に制限されない。
上記カルボキシル基を有する高分子吸収剤としては、当技術分野で公知の、カルボキシル基を有するものが含まれ、例えば、デンプン系、セルロース系、合成ポリマー系の高分子吸収剤が挙げられる。デンプン系又はセルロース系の高分子吸収剤としては、例えば、デンプン−アクリル酸(塩)グラフト共重合体、デンプン−アクリロニトリル共重合体のケン化物、ナトリウムカルボキシメチルセルロースの架橋物等が挙げられ、合成ポリマー系の高分子吸収剤としては、例えば、ポリアクリル酸塩系、ポリスルホン酸塩系、無水マレイン酸塩系、ポリアクリルアミド系、ポリビニルアルコール系、ポリエチレンオキシド系、ポリアスパラギン酸塩系、ポリグルタミン酸塩系、ポリアルギン酸塩系、デンプン系、セルロース系等の高吸水性ポリマー(SAP,Super absorbent Polymer)等が挙げられ、本開示の効果の観点からは、ポリアクリル酸塩系(特に、ポリアクリル酸ナトリウム系)の高分子吸収剤が好ましい。
なお、本願発明者が確認したところ、カルボキシル基を有する高分子吸収剤には、カチオン性抗菌剤が吸着され、カチオン性抗菌剤により、カルボキシル基を有する高分子吸収剤の吸液性が阻害される傾向があることを見出された。
【0074】
本開示の製造方法では、第1積層構造形成ステップにおいて、第1シートと、第2シートとを、第1シートの、カチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面と、第2シートとが向かい合うように積層することができる。そうすることにより、第1シートのカチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面を、第2シートで覆うように積層することになるので、カチオン性抗菌剤水溶液が、第1シート、及び積層構造から落下しにくく、カチオン性抗菌剤水溶液が、製造設備を汚染しにくく、製造設備に錆等が発生しにくい。
【0075】
本開示の製造方法では、第1積層構造形成ステップにおいて、第1シートと、第2シートとを、第1シートの、カチオン性抗菌剤が塗工された面と反対側の面と、第2シートとが向かい合うように積層することができる。そうすることにより、第1シートにおいて、第2シートに近い部分のカチオン性抗菌剤水溶液の量が、第2シートから遠い部分のカチオン性抗菌剤水溶液の量よりも少なくなる傾向がある。その結果、第1シートに含まれるカチオン性抗菌剤水溶液が、第2シートを超えて高分子吸収剤含有層に到達しにくくなる。
【0076】
本開示の製造方法では、接着剤層形成ステップにおいて、接着剤を、第1シートの第2シートと向かい合う面又は第2シートの第1シートと向かい合う面に、抗菌剤塗工領域の少なくとも一部と、吸収性物品の厚さ方向に重複するように塗工することが好ましい。そうすることにより、第1シートに含まれるカチオン性抗菌剤水溶液のカチオン性抗菌剤及び水分が、接着剤層を超えて、第2シートに移行しにくくなり、ひいては、カチオン性抗菌剤水溶液のカチオン性抗菌剤及び水分が、第2シートを超えて、高分子吸収剤含有層に到達しにくくなる。
【0077】
なお、本開示の製造方法では、接着剤層形成ステップにおいて、接着剤を、第1シートの第2シートと向かい合う面又は第2シートの第1シートと向かい合う面に、抗菌剤塗工領域と、吸収性物品の厚さ方向に重複しないように塗工してもよい。
【0078】
本開示の製造方法が接着剤層形成ステップを含む場合には、接着剤層形成ステップにおいて、第1シートの第2シートと向かい合う面又は第2シートの第1シートと向かい合う面に、接着剤を、吸収性物品において接着剤層の一部が、抗菌剤塗工領域と、吸収性物品の厚さ方向に重複しないように塗工することが好ましい。そうすることにより、接着剤層が、抗菌剤塗工領域と厚さ方向に重複しない領域において、第1シートと、第2シートとを接着させることができ、製造される吸収性物品において、液体の吸収性が阻害されにくい。
【0079】
なお、本開示の製造方法が接着剤層形成ステップを含む場合には、接着剤層形成ステップにより形成される接着剤層は、吸収性物品の平面方向において、間欠的に配置されることが好ましい。カチオン性抗菌剤水溶液が吸収性物品の厚さ方向に移動することを抑制しつつ、吸収した体液等の液体を、吸収性物品の厚さ方向に移動させるためである。
【0080】
本開示の製造方法は、上述の追加シート積層工程を含むことができる。そうすることにより、第1シートに含まれるカチオン性抗菌剤水溶液のカチオン性抗菌剤及び水分が、追加シートに保持されるため、第1シートに含まれるカチオン性抗菌剤水溶液のカチオン性抗菌剤及び水分が、第2シートに移行しにくくなり、ひいては、カチオン性抗菌剤水溶液のカチオン性抗菌剤及び水分が、第2シートを超えて、高分子吸収剤含有層に到達しにくくなる。
上記追加シートは、布帛、例えば、不織布、織布、編物等であることが好ましい。
上記追加シートとしては、例えば、液透過性シートが挙げられる。
【0081】
本開示の製造方法が追加シート積層工程を含む場合には、追加シート積層工程において第1シートと、追加シートとを、第1シートのカチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面と、追加シートとが向かい合うように積層してもよく、又は第1シートと、追加シートとを、第1シートのカチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面と、追加シートとが向かい合わないように積層してもよく、そして第1シートと、追加シートとを、第1シートのカチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面と、追加シートとが向かい合うように積層することが好ましい。第1シートのカチオン性抗菌剤水溶液が塗工された面を、追加シートで覆うように積層することにより、カチオン性抗菌剤水溶液が、第1シート、及び積層構造から落下しにくくなり、カチオン性抗菌剤水溶液が、製造設備を汚染しにくくなるからである。
【0082】
本開示の製造方法では、抗菌剤塗工領域形成ステップにおいて、任意の塗装機、例えば、ロール型塗工機、カーテン型塗工機、スリット型塗工機、スプレー型塗工機、ディップ型塗工機、ビード型塗工機、フレキソ型塗工機、グラビア型塗工機等を用いて、カチオン性抗菌剤水溶液を第1シートに塗工することができる。
【0083】
抗菌剤塗工領域形成ステップはまた、塗装機の塗出口が第1シートと接触しない非接触型塗工機を用いて、そして塗工機の塗出口が第1シートと接触する接触型塗工機を用いて、カチオン性抗菌剤水溶液を第1シートに塗工することができ、そして製造設備を汚染しにくい観点からは、接触型塗工機を用いて、カチオン性抗菌剤水溶液を第1シートに塗工することが好ましい。
上記接触型塗工機としては、ロール型塗工機、スリット型塗工機、ディップ型塗工機、ビード型塗工機、フレキソ型塗工機、グラビア型塗工機が挙げられる。
【0084】
本開示の製造方法では、第1シートの、カチオン性抗菌剤水溶液を塗工すべき面が、第1シートの搬送方向において、好ましくは2.0〜9.0μm、より好ましくは2.5〜8.0μm、そしてさらに好ましくは2.8〜7.5μmの表面粗さ値を有する。表面粗さ値が上述の範囲にあることにより、塗工されたカチオン性抗菌剤水溶液が、第1シートからはじかれることなく、そして第1シートの内部に保持されやすくなり、カチオン性抗菌剤水溶液が製造設備を汚染しにくくなる。
【0085】
上記表面粗さ値は、以下の通り測定される。
(1)恒温恒湿室(温度25±5℃,相対湿度65±5%)に、カトーテック株式会社製の「KES−FB4 AUTO−A」を準備する。
(2)測定すべき試料を、上記恒温恒湿室で、24時間静置する。
(3)測定すべき試料の、吸収性物品の製造時に搬送方向を向く方向に沿って、SMD値を測定する。なお、摩擦子には0.5mm径のピアノ線を10本並列するように束ねて5mm幅に構成されたものが使用される。また、摩擦子の荷重は10gfであり、摩擦子を、測定すべき試料の、搬送方向を構成すべき方向に、1mm/sの速度で移動させる。
(4)異なる試料で、SMD値を10回測定し、その平均値を表面粗さ値として採用する。
【0086】
本開示の製造方法では、抗菌剤塗工領域形成ステップの後、第1シートを加温せず、塗工されたカチオン性抗菌剤水溶液の水分を強制乾燥させるステップを実施しなくともよい。例えば、抗菌剤塗工領域形成ステップの後、第1シートが第2シート又は追加シートと積層される前に、第1シートを加温せず、塗工されたカチオン性抗菌剤水溶液の水分を強制乾燥させるステップを実施しなくともよい。
【0087】
本開示の製造方法では、第1シートにカチオン性抗菌剤水溶液を塗工した後、第1シートに、セルロース系繊維を含む第2シート又は追加シートを積層するため、塗工されたカチオン性抗菌剤水溶液の水分を強制乾燥させるステップを省略しても、カチオン性抗菌剤水溶液が製造設備を汚染しにくい。また、塗工されたカチオン性抗菌剤水溶液の水分を強制乾燥させるステップを省略することにより、吸収性物品の生産性に優れる。
【0088】
なお、本開示の製造方法では、抗菌剤塗工領域形成ステップの後、第1シートを加温し、塗工されたカチオン性抗菌剤水溶液の水分を強制乾燥させるステップを実施してもよい。例えば、抗菌剤塗工領域形成ステップの後、第1シートが第2シート又は追加シートと積層される前に、第1シートを加温し、塗工されたカチオン性抗菌剤水溶液の水分を強制乾燥させるステップを実施してもよい。
【課題】カルボキシル基を有する高分子吸収剤の吸収性を阻害しにくく、製造設備を汚染しにくく、生産性に優れる、カチオン性抗菌剤を含む吸収性物品の製造方法を提供すること。
【解決手段】カチオン性抗菌剤及び繊維を含む第1シート301と、セルロース系繊維を含む第2シート303と、カルボキシル基を有する高分子吸収剤111を含む高分子吸収剤含有層305とをその順で備える積層構造307を含む、厚さ方向Tを有する吸収性物品101の製造方法であって、第1シート301の一部に、上記カチオン性抗菌剤を含むカチオン性抗菌剤水溶液を塗工し、抗菌剤塗工領域133を形成する抗菌剤塗工領域形成ステップS