(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施態様について詳細に説明するが、本発明は、以下の実施態様に何ら限定されるものではなく、本発明の目的の範囲内において、適宜変更を加えて実施することができる。
【0016】
[二次電池用多孔質セパレータ]
本発明の第一の態様の二次電池用多孔質セパレータは、多孔質フィルムからなる二次電池用多孔質セパレータであって、平均孔径が100nm以上500nm以下の第一層状領域と、上記第一層状領域の平均孔径よりも大きい平均孔径を有する第二層状領域とを有し、上記第一層状領域が上記多孔質フィルムの一方の最表面に位置することを特徴とする。
【0017】
上記セパレータを構成する多孔質フィルムの二つの主面には、フィルム内部で他の孔と連通する孔の開口部が多数存在する。ここで、上記多孔質フィルムの二次電池の負極側に向けて配置される主面とその近傍にあり、最表面とその直下に層状に広がる領域を第一層状領域とする。この領域に存在する孔の平均径を、第一層状領域の平均孔径とする。これらの孔の一部は表面に開口部を有し、また、フィルム内部で他の孔と連通する。
【0018】
本発明の多孔質フィルムは、断面視して、第一層状領域が形成された最表面から、フィルムのもう一方の最表面方向に向かって一定距離離れた位置に、第一層状領域とほぼ平行にひろがる第二層状領域を有する。第二層状領域も複数の孔を有し、その平均孔径は第一層状領域の平均孔径よりも大きい。
【0019】
第一層状領域と第二層状領域とは、たがいに接していてもよいし、間に他の領域を介していてもよい。各領域間には、明確な界面があってもなくてもよい。また、第一層状領域と第二層状領域とが、ともに、多孔質フィルムの最表面に位置してもよい。
【0020】
本発明の多孔質フィルムの全体の膜厚は特に限定されるものではないが、5μm以上500μm以下であることが好ましく、10μm以上100μm以下であることがさらに好ましく、10μm以上30μm以下が特に好ましい。上記の膜厚は、例えばマイクロメータ等で複数の箇所の厚さを測定し平均することで求めることができる。他方、本発明の第一層状領域の好ましい厚さは0.3μm以上5μm以下であり、好ましくは0.4μm以上4μm以下であり、より好ましくは0.5μm以上3μm以下であり、第二層状領域の好ましい厚さは4.3μm以上500μm以下であり、好ましくは4.5μm以上99.7μm以下であり、より好ましくは5μm以上29.7μm以下である。各層状領域の厚さは、多孔質フィルム断面の第一および第二層状領域中の複数箇所を、走査型電子顕微鏡(SEM)等により観察して平均して算出することができる。
【0021】
上記多孔質フィルムの第一層状領域における平均孔径は、100nm以上500nm以下であればよく、100nm以上400nm以下であることが好ましく、100nm以上300nm以下であることがさらに好ましい。第一層状領域における平均孔径が100nm以上であれば、セパレータ内の電解液を介する金属イオンの伝導性を十分に確保でき、500nm以下であれば、電界の集中が起きずセパレータへの金属の析出が抑えられてデンドライトの発生を防止することができる。
【0022】
他方、上記第二層状領域における平均孔径は、第一層状領域における平均孔径よりも大きければ特に制限されず、1200nm以下であることが好ましく、800nm以下であることが望ましい。また、第二層状領域における平均孔径に特に下限値はないが、250nmよりも大きいことが好ましく、500nmよりも大きいことがより好ましく、600nmよりも大きいことがさらに好ましい。第二層状領域における平均孔径を、第一層状領域における平均孔径よりも大きくすることにより、多孔質セパレータを構成する多孔質フィルムの強度が向上して、その取り扱い性を改善することができる。また、第二層状領域における平均孔径が250nmよりも大きければ、特に500nmよりも大きければ、セパレータ内の孔を介した金属イオンの伝導性を十分に確保でき、1200nm以下であれば、主面に稠密な開口部を有する多孔質セパレータを製造できる。
【0023】
なお、第二層状領域の最大孔径は、2500nm以下であることが好ましく、300〜2000nmであることがより好ましく、500〜1500nmであることがさらに好ましい。第二層状領域の最大孔径と、第一層状領域の平均孔径との差は、100nm以上であることが好ましく、200〜2500nmであることがより好ましく、500〜2000nmであることがさらに好ましい。
【0024】
上記第一層状領域における平均孔径と第二層状領域における平均孔径との孔径差は、特に限定されないが、100nm以上であることが好ましく、200nm以上がさらに好ましく、350nm以上が最も好ましい。上限は特に規定されないが、例えば1000nm以下である。
【0025】
なお、本発明の他の態様として、第二層状領域が、第一層状領域の平均孔径よりも大きい最大孔径を有する層状領域を有する場合は、上記第一層状領域における平均孔径と第二層状領域における平均孔径との孔径差は、0以上〜1000nm以下であることが好ましく、0以上〜700nm以下であることがより好ましい。
【0026】
本発明の多孔質フィルムは、微粒子を含む前駆体フィルムから、上記微粒子を取り除いて製造することができる。そのため、後述のケミカルエッチング等による表面処理を行わない場合、第一層状領域の平均孔径は、前駆体フィルムの第一層状領域に対応する領域に含まれる微粒子の平均粒径と等しくなる。また、本発明の多孔質フィルムを切断した断面の第一層状領域中の複数箇所を、走査型電子顕微鏡(SEM)等により観察して孔径を測定し、平均孔径を算出してもよい。第二層状領域の孔径・最大孔径も、第一層状領域の場合と同様にして算出することができる。
【0027】
他方、ケミカルエッチング等による表面処理を行うと、多孔質フィルムの最表面に開口部を有する孔の径が拡大されるため、前駆体フィルムに含まれる微粒子の平均径よりも、領域中の平均孔径が高くなる傾向にある。この場合、断面SEM写真の画像解析により求めてもよいが、ポロシメーター(水銀圧入法)またはポロメーター(バブルポイント法)を利用することがより好ましい。ポロシメーターまたはポロメーターにより、処理前後の連通孔のサイズ変化量を求め、その変化量から実際の平均孔径を求めることができる。具体的には、連通孔の変化量から、使用した微粒子の平均粒径(平均孔径)の変化量と仮定して求め、実際の平均孔径とする。ここで、連通孔とは、前駆体フィルムにおいて互いに接触している微粒子を適切な方法を選択して除去する際に形成される孔のつなぎ目の穴を意味する。
【0028】
なお、ポロメーターを用いて連通孔のサイズを求める場合、以下の式により求めることができる。
d=Cγ/P
ここで、dは連通孔サイズ(μm)、γは液体の表面張力(mN/m)、Pは圧力(kg/cm
2)、Cは定数である。Cの定数は圧力の単位がpsiのとき、0.415となる。バブルポイント法においては、液体で濡らした多孔質セパレータに対し空気を加圧した際、孔の中の液体の毛細管張力より、加えた空気圧が大きくなったときに空気を通すことができるため、より小さい孔(例えば連通孔)ではより高い圧力が必要になる原理を利用している。同じ圧力において、濡れた多孔質セパレータと乾いた多孔質セパレータの両方の気体流量を比較することによって、多孔質セパレータにおける特定されたサイズ以上の孔を通過する流量の割合を、圧力と孔サイズの関係から計算できると同時に、圧力を少しずつ増すことにより、非常に小さい孔サイズ(約10nm程度)の増分の流量分布も差によって決定することができる。
【0029】
このようにして得られたデータを基に、濡らした多孔質セパレータの流量が乾燥した多孔質セパレータの流量の1/2になる圧力を求め、その時の孔径を上記式によって求め、平均の連通孔のサイズとする。また、上記連通孔の変化量は、エッチング処理前後のそれぞれの平均の連通孔サイズより求めることができる。
【0030】
第一層状領域における孔であって、表面に開口部を有するものの、開口部の平均径は50nm〜500nmが好ましく、100nm〜450nmがより好ましい。また、第一層状領域が形成された最表面でない、多孔質フィルムのもう一方の最表面の開口部の平均径は特に限定されず、50nm〜1200nm以下が好ましい。当該もう一方の最表面が第二層状領域で構成される場合(第二層状領域が最表面になる場合)、第二層状領域における孔であって、表面に開口部を有するものの、開口部の平均径は、前記第一層状領域における最表面の開口部の平均径よりも大きいことが好ましい。言い換えれば、第二層状領域が最表面になる場合、第二層状領域における孔であって、表面に開口部を有するものの、開口部の平均径は、前記第一層状領域の平均孔径よりも大きいことが好ましい。
【0031】
第二層状領域における孔であって、表面に開口部を有するものの、開口部の平均径は、1200nm以下であることが好ましく、800nm以下であることが望ましい。また、第二層状領域における最表面の開口部の平均径に特に下限値はないが、250nmよりも大きいことが好ましく、500nmよりも大きいことがより好ましく、600nmよりも大きいことがさらに好ましい。
【0032】
上記の多孔質フィルム最表面の開口部の平均径は、表面の上空から複数個所をSEM等により観察し、画像解析等を行って孔径を測定し、平均することで算出することができる。
【0033】
多孔質フィルムを構成する材質は、柔軟性と強度を兼ね備えたものであれば特に限定はされないが、製造の容易性やコストの面から樹脂を用いることが好ましい。用いることのできる樹脂としては、多孔質セパレータに通常使用されるものが、特に限定されることなく使用できる。例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−ヘキサン等を重合した単独重合体または共重合体であるポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;ABS樹脂;塩化ビニル樹脂;酢酸ビニル樹脂;アクリル樹脂:アクリロニトリル樹脂;ポリヒニリデンフルオリド等の含フッ素樹脂;酢酸セルロース等のセルロース類;芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、ポリエーテルケトン、ポリエーテルイミド等の耐熱性樹脂から選ばれる1種以上を挙げることができる。例えば、これらのうちの2以上の樹脂を選択し、混合して使用してもよいし、それぞれの樹脂を多孔質フィルムを構成する異なる樹脂層に使用してもよい。
【0034】
上記ポリオレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、ABS樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、アクリロニトリル樹脂、含フッ素樹脂等は、熱可塑性樹脂であり、溶融開始温度以上の温度で溶融する。二次電池の熱安定性を向上させるために、特に、耐熱性樹脂の使用、例えば、芳香族ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドイミド等の使用が好ましい。
【0035】
[二次電池用多孔質セパレータの製造方法]
多孔質セパレータを構成する多孔質フィルムの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、上記の樹脂、樹脂前駆体、重合体、あるいは重合可能な単量体等に、適切な樹脂微粒子または無機微粒子を分散し、この微粒子分散体を成形または成膜して前駆体フィルムを形成した後、上記前駆体フィルムに含有される上記の微粒子を、適切な方法を用いて取り除くことにより形成することができる。なお、本願では、ポリイミドに対するポリアミド酸のように、加熱等により化学変化を起こし、最終的な樹脂となる前駆体を樹脂前駆体とよび、多孔質フィルムを形成する前の、樹脂中に微粒子が分散したフィルムを前駆体フィルムという。
【0036】
多孔質フィルムの平均孔径は、上記の前駆体フィルム中に分散する樹脂微粒子または無機微粒子の平均粒径を選択することで適宜調節することができる。その際に、前駆体フィルムの層状の領域により含有される微粒子の平均粒径に差違を設け、本発明の第一の態様に示される孔径の関係を満たすようにする。
【0037】
樹脂、樹脂前駆体、重合体あるいは単量体等に、上記微粒子分散するためには、樹脂、樹脂前駆体、重合体あるいは単量体等に、微粒子を直接混合してもよいし、樹脂、樹脂前駆体、重合体あるいは単量体等に有機溶剤等の溶媒を添加したうえで微粒子を混合してもよい。その際、粘度を調節するために、加温して混合してもよい。ただし、溶媒を使用する場合は、上記微粒子が溶解しないものを選択する必要がある。
【0038】
<微粒子>
本発明で用いられる微粒子の材質は、使用する単量体または有機溶剤に不溶で、後に前駆体フィルムから除去可能なものであれば、特に限定されること無く公知のものが採用可能である。例えば、無機材料としては、シリカ(二酸化珪素)、酸化チタン、アルミナ(Al
2O
3)等の金属酸化物や炭酸カルシウム、有機材料としては、高分子量オレフィン(ポリプロピレン,ポリエチレン等)、ポリスチレン、エポキシ樹脂、セルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール、ポリエステル、ポリエーテル等の有機高分子微粒子が挙げられる。
【0039】
また、本発明で用いられる微粒子は、多孔質フィルムの連通孔の形成されやすさの点で真球率が高いこと(例えば1〜1.1)が好ましい。粒径分布指数(d25/d75)が、例えば1〜4程度であると好ましい。これらの条件を満たすことで、同時に、分散性に優れ、互いに凝集しない状態で使用することができる。
【0040】
第一層状領域に用いられる微粒子は、真球率が高く、粒径分布指数の小さいものが選択されることが特に好ましく、例えば、粒径分布指数(d25/d75)が1.5以下であることがこのましい。これらの条件を満たすことで、微粒子を取り除いて得られる多孔質膜の孔径を揃えることができるため、セパレータに印加される電界を均一化できて好ましい。
【0041】
なお、本発明の他の態様として、第二層状領域が、第一層状領域の平均孔径よりも大きい最大孔径を有する層状領域を有する場合は、上記第一層状領域における粒径分布指数(d25/d75)よりも、第二層状領域における粒径分布指数(d25/d75)が大きいことが好ましく、各層状領域の粒径分布指数の差の絶対値は、0.5以上であることが好ましく、1〜3であることがより好ましい。
【0042】
使用する微粒子の平均粒径(平均直径)としては、例えば、100〜2000nmのものを用いることができる。特に、第一層状領域に使用される微粒子の平均粒径は、100nm以上500nm以下であればよく、100nm以上400nm以下であることが好ましく、100nm以上300nm以下であることがさらに好ましい。第二層状領域に使用される微粒子の平均粒径は、特に限定されないが、2000nm以下であることが好ましく、250nm以上が好ましく、500nm超〜1200nm以下であることがより好ましい。
【0043】
具体的に微粒子としては、例えば、コロイダルシリカ、なかでも球状シリカ粒子が好ましく、単分散球状シリカ粒子が、均一な孔を形成できるためにより好ましい。
【0044】
本発明では、樹脂、樹脂前駆体、重合体あるいは単量体中の微粒子を均一に分散することを目的に、樹脂、樹脂前駆体、重合体あるいは単量体等に、または、これらと溶媒の混合物に、微粒子とともにさらに分散剤を添加してもよい。分散剤を添加することにより、樹脂、樹脂前駆体、重合体あるいは単量体と微粒子とを一層均一に混合でき、さらには、成形または成膜した前駆体膜中の微粒子を均一に分布させることができる。その結果、最終的に得られる多孔質フィルムの第一層状領域の位置する表面に稠密な開口を設け、かつ、表裏面を効率よく連通させることが可能となり透気度が向上する。
【0045】
本発明で用いられる分散剤は、特に限定されることなく、公知のものを使用することができる。例えば、やし脂肪酸塩、ヒマシ硫酸化油塩、ラウリルサルフェート塩、ポリオキシアルキレンアリルフェニルエーテルサルフェート塩、アルキルベンゼンスルホン酸、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホサクシネート塩、イソプロピルホスフェート、ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート塩、ポリオキシエチレンアリルフェニルエーテルホスフェート塩等のアニオン界面活性剤;オレイルアミン酢酸塩、ラウリルピリジニウムクロライド、セチルピリジニウムクロライド、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のカチオン界面活性剤;ヤシアルキルジメチルアミンオキサイド、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミンオキサイド、アルキルポリアミノエチルグリシン塩酸塩、アミドベタイン型活性剤、アラニン型活性剤、ラウリルイミノジプロピオン酸等の両性界面活性剤;ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレンオレイルアミン、ポリオキシエチレンポリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレンポリスチリルフェニルエーテル等、ポリオキシアルキレン一級アルキルエーテルまたはポリオキシアルキレン二級アルキルエーテルのノニオン界面活性剤、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンラウレート、ポリオキシエチレン化ヒマシ油、ポリオキシエチレン化硬化ヒマシ油、ソルビタンラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンラウリン酸エステル、脂肪酸ジエタノールアミド等のその他のポリオキアルキレン系のノニオン界面活性剤;オクチルステアレート、トリメチロールプロパントリデカノエート等の脂肪酸アルキルエステル;ポリオキシアルキレンブチルエーテル、ポリオキシアルキレンオレイルエーテル、トリメチロールプロパントリス(ポリオキシアルキレン)エーテル等のポリエーテルポリオールが挙げられるが、これらに限定されない。また、上記分散剤は、2種以上を混合して使用することもできる。
【0046】
<前駆体フィルムの製造>
つづいて、多孔質フィルムとする前の前駆体フィルムの製造方法を、例を挙げて説明するが、本発明の多孔質フィルムの製造方法は、これらに限定されない。
【0047】
本発明における多孔質フィルムが、上記したポリオレフィン系樹脂等の熱可塑性樹脂からなる場合、熱可塑性樹脂や微粒子を混合装置、例えばロール、バンバリーミキサー、一軸押出機、二軸押出機等を用いて混合し、熱可塑性樹脂組成物を得る。上記材料を混合する際に、必要に応じて、さらに、分散剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、脂肪酸エステル、安定化剤等の添加剤を添加してもよい。
【0048】
また、熱可塑性樹脂組成物からなる前駆体フィルムの製造方法は特に限定されるものではなく、公知のインフレーション加工、カレンダー加工、Tダイ押出加工、スカイブ法等のシート成形方法により製造することができる。これらの成形加工には、熱可塑性樹脂組成物を押出機により、対応する治具等に直接導入してもよく、一旦ペレット化した熱可塑性樹脂組成物を押出機により、対応する治具等に導入してもよい。
【0049】
本発明の多孔質フィルムは、熱可塑性樹脂組成物からなる上記前駆体フィルムから、そこに含まれる微粒子を除去して得ることができる。平均孔径の異なる上記の2つの層状領域を形成するために、前駆体フィルムから含まれる微粒子を除去した後のフィルムを張り合わせて製造してもよいし、前駆体フィルムを張り合わせて複合化してから、該前駆体フィルムに含まれる微粒子を除去してもよい。前駆体フィルムとして、上記熱可塑性樹脂組成物を用いることで、加熱圧着による積層が容易となる。押出成形で、2つの層状領域を有する複合化された前駆体フィルムを成形し、該前駆体フィルムに含まれる微粒子を除去してもよい。
【0050】
また、前駆体フィルムを構成する樹脂、樹脂前駆体、重合体等が、有機溶媒中に均一に溶解する場合は、これらをワニス化して成膜することで前駆体フィルムを製造してもよい。例えば、電池の耐熱性の観点から、多孔質フィルムの材質としてポリイミドを採用する場合には、樹脂前駆体であるポリアミド酸または溶解性のポリイミド若しくはポリアミドイミドをワニス化して使用することが好ましい。
【0051】
以下に、ワニス化による製造法の例として、ポリアミド酸またはポリイミド若しくはポリアミドイミドを用いた場合を中心に説明する。その他の可溶性の熱可塑性樹脂を用いる場合は、以下に説明する製造方法に、用いる熱可塑性樹脂に応じた改変を行うことで、ワニス化による製造法が適用可能である。
【0052】
まず、ポリアミド酸またはポリイミド若しくはポリアミドイミド、微粒子および有機溶剤を含有するワニスを準備する。ワニスの調製は、所定の微粒子を予め分散した有機溶剤とポリアミド酸またはポリイミド若しくはポリアミドイミドを任意の比率で混合するか、所定の微粒子を予め分散した有機溶剤中でポリアミド酸またはポリイミド若しくはポリアミドイミドを重合して行われる。上記微粒子は、ワニスに使用する有機溶剤に不溶であり、成膜後選択的に除去可能なものなら、特に限定されること無く使用することができる。
【0053】
<ポリアミド酸>
用いるポリアミド酸は、任意のテトラカルボン酸二無水物とジアミンを重合して得られるものが、特に限定されることなく使用できる。テトラカルボン酸二無水物およびジアミンの使用量は特に限定されないが、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミンを0.50〜1.50モル用いるのが好ましく、0.60〜1.30モル用いるのがより好ましく、0.70〜1.20モル用いるのが特に好ましい。
【0054】
テトラカルボン酸二無水物は、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物を使用することが好ましい。テトラカルボン酸二無水物は、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0055】
ジアミンは、従来からポリアミド酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。ジアミンは、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族ジアミンが好ましい。これらのジアミンは、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0056】
芳香族ジアミンとしては、フェニル基が1個あるいは2〜10個程度が結合したジアミノ化合物を挙げることができる。具体的には、フェニレンジアミンおよびその誘導体、ジアミノビフェニル化合物およびその誘導体、ジアミノジフェニル化合物およびその誘導体、ジアミノトリフェニル化合物およびその誘導体、ジアミノナフタレンおよびその誘導体、アミノフェニルアミノインダンおよびその誘導体、ジアミノテトラフェニル化合物およびその誘導体、ジアミノヘキサフェニル化合物およびその誘導体、カルド型フルオレンジアミン誘導体である。
【0057】
本発明で用いられるポリアミド酸を製造する手段に特に制限はなく、例えば、有機溶剤中で酸、ジアミン成分を反応させる方法等の公知の手法を用いることができる。
【0058】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、通常、有機溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に使用される有機溶剤は、テトラカルボン酸二無水物およびジアミンを溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物およびジアミンと反応しないものであれば特に限定されない。有機溶剤は単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0059】
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる有機溶剤の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、エチルセルソルブアセテート等のエーテル類;クレゾール類等のフェノール系溶剤が挙げられる。これらの有機溶剤は単独あるいは2種以上を混合して用いることができる。有機溶剤の使用量に特に制限はないが、生成するポリアミド酸の含有量が5〜50質量%とするのが望ましい。
【0060】
これらの有機溶剤の中では、生成するポリアミド酸の溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、N,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましい。
【0061】
重合温度は一般的には−10〜120℃、好ましくは5〜30℃である。重合時間は使用する原料組成により異なるが、通常は3〜24Hr(時間)である。また、このような条件下で得られるポリアミド酸の有機溶剤溶液の固有粘度は、好ましくは1000〜10万cP(センチポアズ)、より一層好ましくは5000〜7万cPの範囲である。
【0062】
<ポリイミド>
本発明に用いるポリイミドは、本発明のワニスに使用する有機溶剤に溶解可能な可溶性ポリイミドなら、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基または焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
【0063】
有機溶剤に可溶なポリイミドとするために、主鎖に柔軟な屈曲構造を導入するためのモノマーの使用、例えば、エチレジアミン、ヘキサメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ジアミノシクロヘキサン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の脂肪族ジアミン;2−メチルー1,4−フェニレンジアミン、o−トリジン、m−トリジン、3,3’−ジメトキシベンジジン、4,4’−ジアミノベンズアニリド等の芳香族ジアミン;ポリオキシエチレンジアミン、ポリオキシプロピレンジアミン、ポリオキシブチレンジアミン等のポリオキシアルキレンジアミン;ポリシロキサンジアミン;2,3,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、3,4,3’,4’−オキシジフタル酸無水物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンジベンゾエート−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物等の使用が有効である。また、有機溶剤への溶解性を向上する官能基を有するモノマーの使用、例えば、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノビフェニル、2−トリフルオロメチル−1,4−フェニレンジアミン等のフッ素化ジアミンを使用することも有効である。さらに、上記ポリイミドの溶解性を向上するためのモノマーに加えて、溶解性を阻害しない範囲で、上記ポリアミド酸の欄に記したものと同じモノマーを併用することもできる。
【0064】
<ポリアミドイミド>
本発明に用いるポリアミドイミドは、本発明に係るワニスに使用する有機溶剤に溶解可能な可溶性ポリアミドイミドなら、その構造や分子量に限定されることなく、公知のものが使用できる。ポリアミドイミドについて、側鎖にカルボキシ基等の縮合可能な官能基または焼成時に架橋反応等を促進させる官能基を有していてもよい。
【0065】
また、本発明に用いるポリアミドイミドは、任意の無水トリメリット酸とジイソシアネートとを反応させて得られるものや、任意の無水トリメリット酸の反応性誘導体とジアミンとの反応により得られる前駆体ポリマーをイミド化して得られるものを特に限定されることなく使用できる。
【0066】
上記任意の無水トリメット酸またはその反応性誘導体としては、例えば、無水トリメリット酸、無水トリメリット酸クロライド等の無水トリメリット酸ハロゲン化物、無水トリメリット酸エステル等が挙げられる。
【0067】
上記任意のジイソシアネートとしては、例えば、メタフェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、o−トリジンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、4,4’−オキシビス(フェニルイソシアネート)、4,4’−ジイソシアネートジフェニルメタン、ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ) フェニル] スルホン、2,2′−ビス[4−(4−イソシアネートフェノキシ)フェニル] プロパン、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、3,3’−ジエチルジフェニル−4,4’−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、m−キシレンジイソシアネート、p−キシレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等が挙げられる。
【0068】
上記任意のジアミンとしては、前記ポリアミド酸の説明において例示したものと同様のものが挙げられる。
【0069】
ポリアミドイミドのワニスに用いられる有機溶剤としては、ポリアミドイミドを溶解することができ、微粒子を溶解しないものであれば、特に限定されず、テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる溶剤として例示したものが挙げられる。溶剤は、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0070】
ワニス中の全成分のうち、有機溶剤の含有量は、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは60〜85質量%となる量である。ワニスにおける固形分濃度が好ましくは5〜50質量%、より好ましくは15〜40質量%となる量である。
【0071】
<ワニス>
本発明のワニスは、予め微粒子が分散した有機溶剤とポリアミド酸またはポリイミド若しくはポリアミドイミドを任意の比率で混合するか、微粒子を予め分散した有機溶剤中でテトラカルボン酸二無水物およびジアミンを重合してポリアミド酸とするか、さらにイミド化してポリイミドとすることで製造でき、最終的に、その粘度を300〜1500cPとすることが好ましく、400〜700cPの範囲がより好ましい。ワニスの粘度がこの範囲内であれば、均一に成膜をすることが可能である。
【0072】
本発明の第一の態様の二次電池用多孔質セパレータを製造するためには、予め粒径の異なる微粒子を含有する、少なくとも2種のワニスを準備する。ひとつは、平均粒径が100nm以上500nm以下の微粒子を含有するワニスであり、これを第一のワニスという。他のひとつは、上記第一のワニスに含まれる微粒子よりも大きい平均粒径を有する微粒子を含有するワニスであり、これを第二のワニスという。
【0073】
前記第一のワニスおよび第二のワニスにおける体積比(多孔質フィルムまたは前駆体フィルムを構成する成分(樹脂、樹脂前駆体、重合体等)と微粒子との体積比)は同じであってもよいし、異なっていてもよい。前記多孔質フィルムまたは前駆体フィルムを構成する成分を(A)、微粒子を(B)とした場合、(A)と(B)との体積比は15:85〜50:50の範囲が好ましく、19:81〜40:60であることがより好ましい。なお、本明細書において、体積%および体積比は、25℃における値である。
【0074】
異なる体積比のワニスを用いる場合は、第一のワニスの体積比について、微粒子の比率を高くすることが好ましい。(A)および(B)について、第一のワニスの各成分(A1)および(B1)とし、第二のワニスの各成分を(A2)および(B2)とした場合、(A1)と(B1)との体積比は15:85〜45:65であることが好ましく、19:81〜45:65であることがより好ましい。(A2)と(B2)との体積比は20:80〜50:50が好ましい。
【0075】
上記ワニスを基板上に塗布し、常圧または真空下で0〜50℃、好ましくは常圧10〜30℃で乾燥して有機溶剤を取り除くことにより、ポリアミド酸またはポリイミド若しくはポリアミドイミドと微粒子とを含有する複合膜を形成することできる。ここで、第一のワニスから形成された膜を第一未焼成複合膜とし、第二のワニスから形成された膜を第二未焼成複合膜とする。
【0076】
例えば、ガラス基板等の基板上に、そのまま、または、予め離型層を設けた上に、第一のワニスを塗布して乾燥し、第一未焼成複合膜の形成を行う。続いて、該第一未焼成複合膜上に、第二のワニスを塗布し、同様にして乾燥を行って第二未焼成複合膜を形成する。
【0077】
続いて、上記の第一未焼成複合膜および第二未焼成複合膜からなる未焼成複合膜を焼成することにより、多孔質フィルムとする前の前駆体フィルムを得る。その際、基板に成膜した状態のまま焼成してもよいし、予め未焼成複合膜を基板から剥離しておいてから焼成してもよい。焼成温度は、未焼成複合膜の構造や縮合剤の有無によっても異なるが、120〜375℃であることが好ましく、さらに好ましくは150〜350℃である。また、微粒子に、有機材料を使用するときは、その熱分解温度よりも低い温度に設定する必要がある。焼成工程においてはイミド化を完結させることが好ましい。なお、ワニスにポリイミドまたはポリアミドイミドが用いられる場合、焼成工程は行われなくてもよい。
【0078】
焼成条件は、例えば、室温〜375℃までを3時間で昇温させた後、375℃で20分間保持させる方法や室温から50℃刻みで段階的に375℃まで昇温(各ステップ20分保持)し、最終的に375℃で20分保持させる等の段階的な乾燥−熱イミド化法を用いることもできる。基板から未焼成複合膜を一旦剥離する場合は、未焼成複合膜の端部をSUS製の型枠等に固定し変形を防ぐ方法を採ることもできる。
【0079】
<前駆体フィルムの多孔化(微粒子除去工程)>
上記で得た前駆体フィルムから、微粒子を適切な方法を選択して除去することにより、本発明の多孔質フィルムを再現性よく製造することができる。
【0080】
無機微粒子を除去には、例えば、シリカが採用される場合は、低濃度のフッ化水素水等により、炭酸カルシウムの場合は塩酸により、前駆体フィルムを処理して、当該微粒子を溶解除去することが可能である。
【0081】
また、微粒子の材質として、有機材料を選択することもできる。多孔質フィルムを構成する樹脂を溶かさず、微粒子のみ溶解する有機溶剤を用いて前駆体フィルムを処理するか、微粒子を分解させて除去することができる。後者の場合、有機材料としては、多孔質フィルムを構成する樹脂等よりも低温で分解するものであれば、特に限定されることなく使用できる。例えば、線状ポリマーや公知の解重合性ポリマーからなる樹脂微粒子を挙げることができる。通常の線状ポリマーは、熱分解時にポリマーの分子鎖がランダムに切断されるのに対し、解重合性ポリマーは、熱分解時に単量体に分解するポリマーである。いずれも、低分子量体、あるいは、CO
2まで分解することによって、前駆体フィルムから消失して孔を形成する。使用される樹脂微粒子の分解温度は200〜320℃であること多いので、多孔質フィルムを構成する樹脂としてポリイミドまたはポリアミドイミドが採用されることが好ましい。
【0082】
微粒子を除去する前に、予め、前駆体フィルムの二つの主面の両面、または、片面の樹脂部分の少なくとも一部を除去してもよい。あるいは、微粒子の除去後に、多孔質フィルムの二つの主面の両面または片面の、少なくとも一部を除去する工程を有してもよい。
【0083】
上記いずれかの方法で、多孔質フィルムの二つの主面の両面または片面の表層部の、少なくとも一部を除去することにより、除去しないものに比べて、最終的な多孔質フィルムの開口率を向上させることが可能となる。上記除去工程を微粒子の除去後に行った場合は、開口率とともに平均開口径を大きくする。また、上記の除去工程は、公知のケミカルエッチング法または物理的な方法の採用より行うことができる。
【0084】
ケミカルエッチング法としては、例えば、無機アルカリ溶液または有機アルカリ溶液等のケミカルエッチング液による処理が挙げられる。ケミカルエッチング法により、表裏面を効率よく連通させることが可能となり透気度が向上する。無機アルカリ溶液が好ましい。無機アルカリ溶液として例えば、ヒドラジンヒドラートとエチレンジアミンを含むヒドラジン溶液、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物の溶液、アンモニア溶液、水酸化アルカリとヒドラジンと1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンを主成分とするエッチング液等が挙げられる。有機アルカリ溶液としては、エチルアミン、n−プロピルアミン等の第一級アミン類;ジエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン等の第二級アミン類;トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三級アミン類;ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類;テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の第四級アンモニウム塩;ピロール、ピヘリジン等の環状アミン類等のアルカリ性溶液が挙げられる。
【0085】
上記の各溶液の溶媒については、純水、アルコール類を適宜選択できる。また界面活性剤を適当量添加したものを使用することもできる。アルカリ濃度は、例えば0.01〜20質量%である。
【0086】
また、物理的な方法としては、例えば、プラズマ(酸素、アルゴン等)、コロナ放電等によるドライエッチング、研磨剤(例えば、アルミナ(硬度9)等)を液体に分散し、これをフィルムの表面に30〜100m/sの速度で照射することでフィルム表面を処理する方法等が使用できる。
【0087】
本発明の多孔質フィルムは、ニッケルカドミウム、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池等の二次電池用セパレータとして使用することが可能であるが、リチウムイオン二次電池用多孔質セパレータとして使用することが特に好ましい。
【0088】
[二次電池]
本発明における二次電池は、負極と正極との間に、電解液および上記した、本発明の第1の態様の二次電池用多孔質セパレータが配置され、上記二次電池用多孔質セパレータの第一層状領域が前記負極側に配置されることを特徴とする。
【0089】
本発明の二次電池の種類や構成は、何ら限定されるものではない。正極とセパレータと負極が順に上記条件を満たすように積層された電池要素に電解液が含浸され、これが外装に封入された構造となった構成であれば、ニッケルカドミウム、ニッケル水素電池、リチウムイオン二次電池等の公知の二次電池に、特に限定されることなく使用することができる。
【0090】
本発明における二次電池の負極は、負極活物質、導電助剤およびバインダーからなる負極合剤が、集電体上に成形された構造をとることができる。例えば、負極活物質として、ニッケルカドミウム電池の場合は水酸化カドミウムを、ニッケル水素電池の場合は水素吸蔵合金を、それぞれ用いることができる。また、リチウムイオン二次電池の場合は、リチウムを電気化学的にドープすることが可能な材料が採用できる。このような、活物質として、例えば、炭素材料、シリコン、アルミニウム、スズ、ウッド合金等が挙げられる。
【0091】
負極を構成する導電助剤は、アセチレンブラック、ケッチェンブラックといった炭素材料が挙げられる。バインダーは有機高分子からなり、例えばポリフッ化ビニリデン、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。集電体には、銅箔、ステンレス箔、ニッケル箔等を用いることが可能である。
【0092】
また、正極は、正極活物質、導電助剤およびバインダーからなる正極合剤が、集電体上に成形された構造とすることができる。例えば、正極活物質としては、ニッケルカドミウム電池の場合は水酸化ニッケルを、ニッケル水素電池の場合は水酸化ニッケルやオキシ水酸化ニッケルを、それぞれ用いることができる。他方、リチウムイオン二次電池の場合、正極活物質としては、リチウム含有遷移金属酸化物等が挙げられ、具体的にはLiCoO
2、LiNiO
2、LiMn
0.5Ni
0.5O
2、LiCo
1/3Ni
1/3Mn
1/3O
2、LiMn
2O
4、LiFePO
4、LiCo
0.5Ni
0.5O
2、LiAl
0.25Ni
0.75O
2等が挙げられる。導電助剤はアセチレンブラック、ケッチェンブラックといった炭素材料が挙げられる。バインダーは有機高分子からなり、例えばポリフッ化ビニリデン等が挙げられる。集電体にはアルミ箔、ステンレス箔、チタン箔等を用いることが可能である。
【0093】
電解液としては、例えば、ニッケルカドミウム電池やニッケル水素電池の場合には、水酸化カリウム水溶液が使用される。リチウムイオン二次電池の電解液は、リチウム塩を非水系溶媒に溶解した構成とされる。リチウム塩としては、LiPF
6、LiBF
4、LiClO
4等が挙げられる。非水系溶媒としては、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチルメチルカーボネート、γ−ブチロラクトン、ビニレンカーボネート等が挙げられ、これらは単独で用いても混合して用いてもよい。
【0094】
外装材は、金属缶またはアルミラミネートパック等が挙げられる。電池の形状は角型、円筒型、コイン型等があるが、本発明の多孔質セパレータはいずれの形状においても好適に適用することが可能である。
【0095】
電池の負極側に面する多孔質セパレータの孔径は、小さく、稠密で、大きさにバラツキがないほうが、電荷の集中がないために好ましい。そのため、二次電池の負極側に、多孔質セパレータの第一層状領域ある場合、そうでない場合に比べて、二次電池の繰返し使用に伴う負極側からの金属のデンドライトの成長が抑えられる結果、二次電池のサイクル特性が向上するので好ましい。
【実施例】
【0096】
以下、実施例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
【0097】
実施例および比較例では、以下に示すテトラカルボン酸二無水物、ジアミン、ポリアミドイミド、分散剤、有機溶剤、および微粒子を用いた。
・テトラカルボン酸二無水物:ピロメリット酸二無水物
・ジアミン:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
・ポリアミドイミド:重合成分として無水トリメリット酸およびo−トリジンジイソシアネートを含むポリアミドイミド(Mw:約3万)
・分散剤:ポリオキシエチレン二級アルキルエーテル系分散剤
・有機溶剤(1):N,N−ジメチルアセトアミド
・有機溶剤(2):N−メチル−2−ピロリドン
・シリカ:(平均粒径)300nm,700nm,1000nm
【0098】
<実施例1>
[ワニスの調製−1]
(1)第一のワニス
撹拌機、撹拌羽根、還流冷却機、窒素ガス導入管を備えたセパラブルフラスコに、テトラカルボン酸二無水物6.5gと、ジアミン6.7gと、有機溶剤(1)30gとを投入した。窒素ガス導入管よりフラスコ内に窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気とした。次いで、フラスコの内容物を撹拌しながら、50℃で20時間、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させて、ポリアミド酸溶液を得た。得られたポリアミド酸溶液に、平均粒径が300nmのシリカを、75g添加し撹拌して、ポリアミド酸と微粒子との体積比を22:78(質量比は15:85)とした第一のワニスを調製した。なお、ワニス中における全有機溶剤の割合は70質量%となるように調整した。
【0099】
(2)第二のワニス
得られたポリアミド酸溶液に、平均粒径が700nmのシリカを53g添加するほかは、(1)と同様にしてポリアミド酸と微粒子との体積比を28:72(質量比は20:80)とした第二のワニスを調製した。
【0100】
[前駆体フィルム(ポリイミド−微粒子複合膜)の成膜]
上記ワニスの調製−1で製造した第一のワニスを、剥離剤を塗布したガラス板にアプリケーターを用い成膜した。この層(約1μm)が、第一層状領域を形成する。続いて、さらに、同じくワニスの調製−1で製造した第二のワニスを、第一層状領域上にアプリケーターを用い成膜した。この層が、第二層状領域を形成する。70℃で5分間プリベークして、膜厚20μmの未焼成複合膜を形成した。
【0101】
基材から上記未焼成複合膜を剥離後、エタノールで剥離剤を除去し、320℃で15分間熱処理を施し、イミド化を完結させ前駆体フィルム(ポリイミド−微粒子複合膜)とした。
【0102】
[多孔質フィルム(多孔質ポリイミド膜)の形成]
上記前駆体フィルム(ポリイミド−微粒子複合膜)を、10%HF溶液中に10分間浸漬することで、膜中に含まれる微粒子を除去した。得られた多孔質フィルムの透気度は、63秒であった。
【0103】
[ケミカルエッチング]
テトラメチルアンモニウムヒドロキシド(TMAH)の2.38質量%水溶液をメタノール50質量%水溶液で1.04%となるように希釈して、アルカリ性のエッチング液を作成した。このエッチング液に、多孔質ポリイミド膜を浸漬してポリイミド表面の一部を除去した。
【0104】
<実施例2>
ワニスの調製の際に、シリカ100重量部に対して10重量部の分散剤を使用したほかは、実施例1と同様にして多孔質フィルムを形成した。
【0105】
<実施例3>
ケミカルエッチングしなかったこと以外は、実施例1と同様にして多孔質フィルムを形成した。
【0106】
<実施例4>
ワニスの調製の際に、シリカ100重量部に対して10重量部の分散剤を使用したほかは、実施例3と同様にして多孔質フィルムを形成した。
【0107】
<実施例5>
ワニスの調製の際に、第二のワニスのポリアミド酸と微粒子(平均粒径が700nm)との体積比を22:78(質量比は15:85)にしたほかは、実施例1と同様にして多孔質フィルムを形成した。
【0108】
<実施例6>
[ワニスの調製−2]
(1)第一のワニス
ポリアミドイミド15質量部、平均粒径が300nmのシリカ85質量部、分散剤(シリカに対して0.5質量%)、および有機溶剤(1)と(2)とを混合・撹拌して第一のワニス(2)を調製した。なお、ワニス中における全有機溶剤の割合は70質量%となるように調整し、各溶剤の質量比は有機溶剤(1):(2)=30:70とした。該第一のワニス(2)におけるポリアミドイミドとシリカとの体積比はおよそ22:78である。
【0109】
(2)第二のワニス
ポリアミドイミド20質量部、平均粒径が700nmのシリカ80質量部、分散剤(シリカに対して0.5質量%)、および有機溶剤(1)と(2)とを混合・撹拌して第二のワニス(2)を調製した。なお、ワニス中における全有機溶剤の割合は70質量%となるように調整し、各溶剤の質量比は有機溶剤(1):(2)=30:70とした。当該第二のワニス(2)におけるポリアミドイミドとシリカとの体積比はおよそ28:72である。
【0110】
[ポリアミドイミド−微粒子複合膜の成膜]
上記ワニスの調製−2で製造した第一のワニス(2)を、PETフィルム上にアプリケーターを用い成膜した。この層(約1μm)が、第一層状領域を形成する。続いて、さらに、同じくワニスの調製−2で製造した第二のワニス(2)を、第一層状領域上にアプリケーターを用い成膜した。この層が、第二層状領域を形成する。70℃で5分間プリベークして、その後、さらに280℃で15分間熱処理を施し、膜厚約20μmのポリアミドイミド−微粒子複合膜を形成した。
【0111】
[多孔質フィルム(多孔質ポリアミドイミド膜)の形成]
上記で得たポリアミドイミド−微粒子複合膜を、10%HF溶液中に10分間浸漬することで、膜中に含まれる微粒子を除去した後水洗および乾燥を行い、多孔質ポリアミドイミド膜(1)を得た。
【0112】
<比較例1>
ワニスの調製−1で製造した第二のワニスのみを用いて単層の前駆体フィルム形成し、ケミカルエッチングしなかったこと以外は、実施例1と同様にして多孔質フィルムを形成した。この多孔質フィルムの表裏面の平均孔径は、いずれも同じ値となる。得られた多孔質フィルムは、非常に脆い状態で、ハンドリング性が不良だった。
【0113】
<比較例2>
ワニスの調製−1で製造した第一のワニスを用いたこと以外は、比較例1と同様にして多孔質フィルムを形成した。
【0114】
<比較例3>
実施例1と同条件でケミカルエッチングしたこと以外は、比較例1と同様にして多孔質フィルムを形成した。
【0115】
<比較例4>
ワニスの調製−1で製造した第一のワニスに平均粒径が700nmのシリカを、同じくワニスの調製−1で製造した第二のワニスに平均粒径が1000nmのシリカを添加したことおよびケミカルエッチングを行わなかったこと以外は、実施例1と同様にして多孔質フィルムを形成した。
【0116】
上記で得られた多孔質フィルム(多孔質ポリイミド膜)の膜特性を評価し、表1にまとめて示した。
[透気度]
厚さ約25μm(そのうち第一層状領域は約1μmである)の多孔質フィルムサンプルを、5cm角に切り出した。ガーレー式デンソメーター(東洋精機製)を用いて、JIS P 8117に準じて、100mlの空気が上記サンプルを通過する時間を測定した。
【0117】
[引張強度]
多孔質フィルムの強度の評価として、多孔質フィルムの引張強度を測定した。
上記実施例1〜
6および比較例1〜
4の多孔質フィルムのそれぞれについて、1cm×5cmの大きさに切り出して短冊状のサンプルを得た。このサンプルの破断時の応力(MPa)を、RTC−1210A TENSILON(ORIENTEC社製)を用いて評価した。
【0118】
[平均孔径]
表1中、ケミカルエッチング処理のないものは使用した微粒子の平均粒径を平均孔径とした。ケミカルエッチング処理を行ったものはポロメーターにより平均の連通孔のサイズ変化量を求め、その値から実際の平均孔径を求めた。
【0119】
[開口径]
上空SEM写真の画像解析より求めた。
【0120】
【表1】
【0121】
第一および第二層状領域の平均孔径の大きい比較例1の多孔質フィルムの透気度が低い一方、膜の強度が低下して取り扱い性が困難となった。第一および第二層状領域の平均孔径の小さくした比較例2の多孔質フィルムは、透気度の値が小さく、膜の強度も向上して取り扱い性がよい。
【0122】
なお、実施例1〜
6及び比較例1,3,4の第二層状領域の最大径はいずれも、およそ2000nmであった。比較例2の第二層状領域の最大径は、およそ300nmであった。
【0123】
これに対し、第一および第二層状領域の平均孔径を本発明の条件を満たすように設定した、実施例1〜6の多孔質フィルムは、大きな平均孔径の第二層状領域を有するにもかかわらず、膜の強度が改善されて取り扱い性に優れるとともに、その透気度は、平均孔径の大きい比較例1および平均孔径の小さい比較例2の中間となった。分散剤を用いた実施例4と用いていない実施例3とを比較すると、その透気度は分散剤を用いた実施例4のほうが優れ、ケミカルエッチングを行った実施例1等と同等にまで向上した。
【0124】
<評価用コイン電池の作製>
直径20mmのステンレス製コイン外装容器に、炭素負極電極、直径14mmの円形に切断した上記実施例1〜5および比較例1〜4のセパレータ、直径14mmの円形に切断した金属リチウム、さらにスペーサとして直径14mmの円形に切断した厚さ200μmの銅箔をこの順番に重ね合わせ、電解液(1mol・dm
−3のLiPF
6:エチレンカーボネート/ジエチルカーボネート=1/1混合溶液(体積比))を溢れない程度に数滴垂らし、ポリプロピレン製のパッキンを介して、ステンレス製のキャップを被せ、コイン電池作製用のかしめ器で密封してセパレータ評価用電池を作製した。製造に際して、セパレータは、第一のワニスを使用して製造した面側を負極に接するようにして使用した。それぞれの電池を、実施例B1〜B5および比較例B1〜B4とする。
【0125】
<コイン電池の充放電特性の評価>
充放電特性は、上記各評価用コイン電池を、恒温槽内で、充電は4.1Vまで2,2mAh(1C)の電流密度にて行った(CC−CV操作)後、放電を2.5Vまで2,2mAh(1C)、3Cの電流密度にて行った(CC操作)。表2にその結果を示す。表1()内の値は、レート3Cにおける静電容量の、1C容量を100%としたとき容量維持率(%)である。
【0126】
<評価用単層ラミネートセル電池の作製>
アルミラミネート外装に20mm×20mmの正極、20mm×20mmの上記実施例のセパレータを順に入れ、電解液(溶媒:エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=3:7、電解質塩:LiPF
6 1mol/l)を添加した。さらに、20mm×20mmの負極を入れて電池ケースを密閉し、実施例B1〜B5および比較例B1〜B4のリチウムイオン二次電池を得た。ここで、電極としては、ニッケル・コバルト・マンガン三元系の正極と、人造黒鉛系の負極を使用し、負極側に第1層が接するように配置した。
【0127】
さらに、市販のポリエチレン(PE)系およびセルロース系セパレータを利用し、上記と同様にして単層ラミネートセル電池を得た。これを、比較例B5およびB6とする。使用したPE系セパレータの平均孔径は80nm、膜厚は20μm、透気度は270秒、空孔率は42%であり、セルロース系セパレータの平均孔径は3000nm、膜厚は25μm、透気度は135秒、空孔率は70%であった。これらは、表裏両面に同じ平均孔径を有する。
【0128】
<単層ラミネートセル電池の充放電特性>
作製したリチウムイオン二次電池を用い、充放電測定装置でリチウム吸蔵による電位変化を測定した。温度25℃、充電速度0.2Cで4.2Vになるまで充電し、10分間休止したのち、放電速度2Cで電圧範囲2.7Vまで放電した。放電後は、10分間休止した。その際の、電池のAh利用率およびWh利用率(エネルギー維持率)を評価した。
【0129】
<セパレータの耐熱性>
各例の電池に使用するセパレータについて、約250℃のはんだごてを用いて以下の基準により耐熱性評価を行った。
○: はんだごての先端をフィルムの中央におしつけてもあとはつくが破れなかった
×: はんだごての先端をフィルムの中央におしつけると突き抜けた
【0130】
<単層ラミネートセル電池の圧壊試験>
圧壊試験としては、単層ラミネートセル電池を電圧4.2Vで充電を行った後、電池を寝かせた状態で長さ方向に対し垂直方向に直径15.8mmの丸棒で圧縮し、電圧が降下した時点で電池の内部短絡が生じたと判断し、その圧力で評価した。また、電圧が降下した時点から5秒後における電圧の降下量をΔV(V)とした。上記圧力は高い値を示すほど好ましく、電圧の降下量は低いほど好ましい。
【0131】
【表2】
【0132】
<単層ラミネートセル電池の充放電特性−低温・充電速度増加−>
実施例1、比較例B5、B6で作製したリチウムイオン二次電池を用い、充放電測定装置でリチウム吸蔵による電位変化を測定した。温度0℃、充電速度1Cで、充電CCCV:4.2V、CV:1時間、放電:2.7Vとして、5サイクル目のAh効率と容量維持率(1サイクル目の放電容量に対する割合)を求めた。その結果を、表3に示す。
【0133】
<充放電特性評価後の負極表面の観察>
上記充放電特性評価試験終了後の電池から、負極を取り出して、その表面を観察した。表3に、負極面上のデンドライトの発生状況を示す。また、実施例B1、比較例B5および比較例B6の負極面表面を、光学顕微鏡により500倍に拡大して観察した。その結果を、
図1〜3に示す。
【0134】
【表3】
【0135】
コイン電池の評価より、本発明の実施例のセパレータを用いたリチウムイオン二次電池は、正または負極に接する第一層状領域における平均孔径が同じである比較例B1〜3、B5、B6に比べて、高レートでの容量維持率が高く、電気特性に優れることが分かった。一方、セパレータの負極面側の第一層状領域の平均孔径が、正極面側の第二層状領域の平均孔径よりも小さい場合でも、負極面側表面の平均孔径が500nmを越えて大きい比較例B4の場合には、本発明の実施例のセパレータを用いた電池と比べて電気特性に劣る。また、本発明のセパレータを使用した電池の耐熱性および圧壊試験の性能は、市販のセパレータを用いたものと比べて優れることを確認した。
【0136】
図1〜3は、上記の充放電特性評価試験終了後の実施例B1および比較例B5、B6の電池から取り出した、負極の表面の写真である。それぞれ、リチウムデンドライトの発生に基づく白い輝点が観察された。
図1から、実施例B1の電池において、負極の表面上の輝点はわずかで、充放電によるリチウムデンドライトの発生が効果的に抑えられていることが分かる。これに対し、比較例B5またはB6から取り出した負極面の輝点は大きく、かつ数も多い。すなわち、市販のポリエチレン(PE)系やセルロース系のセパレータを用いた比較例の電池(比較例B5、B6)において、リチウムデンドライトの発生が、本発明のセパレータを用いた場合と比べて多発することが分かる。
【0137】
また、表3および
図1〜3より、本発明の実施例のセパレータを用いた電池では負極面のリチウムデンドライト発生量を抑制することができ、低温時の容量維持率も良好なことから、セパレータに印加される電界を均一化できていることが示唆される。
【0138】
<評価用コイン電池の作製−2>
直径20mmのステンレス製コイン外装容器に、炭素負極電極、直径19mmの円形に切断した実施例4および実施例6の各セパレータ、直径16mmの円形に切断したLCO正極、さらにスペーサとして直径14mmの円形に切断した厚さ200μmの銅箔をこの順番に重ね合わせ、電解液(1mol・dm
−3のLiPF
6:エチレンカーボネート/エチルメチルカーボネート=1/1混合溶液(体積比))を溢れない程度に数滴垂らし、ポリプロピレン製のパッキンを介して、ステンレス製のキャップを被せ、コイン電池作製用のかしめ器で密封してコイン電池を作製した。それぞれの電池を、実施例B6、B7とする。
【0139】
<コイン電池の充放電特性の評価>
充放電特性は、上記各評価用コイン電池を、恒温槽内で、充電は4.2Vまで0.6mAh(0.2C)の電流密度にて行った(CC−CV操作)後、放電を2.7Vまで0.6mAh(0.2C)の電流密度にて行った(CC操作)。実施例2のセパレータを用いた実施例B6の電池の場合は、放電容量は2.82mAhであった。一方、実施例6のセパレータを用いた実施例B7の電池の場合は2.75mAhであり、セパレータとしてポリアミドイミド多孔質膜を使用した場合でも、ポリイミド多孔質膜と同等の特性が得られることを確認できた。