【文献】
MIYOSHI Chika et al,すい臓がん細胞に対するアクチゲニンと既存の抗がん剤との併用効果,日本癌学会学術総会記事,2008年,Vol.67th,Page.347
【文献】
Cancer Research,2014年10月,vol.74, no.19, Supplement,p.CT213
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0029】
〔抗癌剤〕
本発明の抗癌剤は、有効成分として、アルクチゲニンと、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分とを組み合わせたものである。換言すれば、本発明の抗癌剤は、有効成分として、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分と、当該成分の腫瘍組織への薬剤送達の増強剤としてのアルクチゲニンとを組み合わせたものである。すなわち、本発明の抗癌剤は、アルクチゲニンと抗癌作用を有する成分とを併用して投与する併用剤である。
【0030】
本発明の抗癌剤は、抗癌作用を有する薬剤であり、有効成分としてアルクチゲニンを含有する。本発明の抗癌剤が有する抗癌作用は、癌細胞の増殖を抑え、もしくは数を減少させる作用だけでなく、癌幹細胞の数を減少させる作用をも含む。
【0031】
癌幹細胞は、癌細胞のうち幹細胞性を有する細胞をいい、自己複製能力と、前駆細胞を供給する能力とを備えている。癌幹細胞は、癌細胞を供給し腫瘍組織を再構築する能力を有する。本発明の抗癌剤は、癌細胞の増殖を抑制するだけでなく、癌幹細胞の数を減少させることにより、癌の発症、転移および再発の防止にも貢献することができる。
【0032】
癌幹細胞に対して、種々のマーカーが知られている。膵臓腫瘍内の癌幹細胞のうち、CD44
+、CD24
+およびCD326
+細胞(3重陽性)は、造腫瘍能に優れた癌幹細胞である。また、腫瘍内の癌幹細胞のうち、CD133
+およびCD44
+細胞(2重陽性)は、極めて転移性の高い癌幹細胞である。
【0033】
また、癌幹細胞は、低酸素および低栄養という特異な微小環境に多く存在すると考えられている。このような環境では、酸素欠乏、糖欠乏シグナルなどにより誘導された未熟な腫瘍血管が多く形成されるため、循環不全になりやすく、抗癌剤の送達性が悪くなり、抗癌剤が効きにくくなると考えられている。したがって、未熟な血管を含む欠乏領域の癌細胞を取り除き、またこれにより血管新生を抑制することで血流を正常化すれば、抗癌剤が効きやすくなると考えられる。
【0034】
本明細書において、アルクチゲニンとアルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分とを「組み合わせる」とは、これらを配合剤として提供すること、これらのそれぞれを含む薬剤をキットとして提供すること、および併用して用いることを包含する。本明細書において、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分を「併用する」とは、抗癌作用を有する成分の投与の前、投与と同時または投与の後にアルクチゲニンを投与することを意味する。アルクチゲニンとアルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分との両方を使用する限り、それらの投与順序および投与形態は限定されない。
【0035】
このような投与形態としては、たとえばアルクチゲニンと抗癌作用を有する成分とを同時に製剤化して得られる単一の製剤の投与、アルクチゲニンと抗癌作用を有する成分とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での同時投与、アルクチゲニンと抗癌作用を有する成分とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の同一投与経路での時間差をおいての投与、アルクチゲニンと抗癌作用を有する成分とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での同時投与、アルクチゲニンと抗癌作用を有する成分とを別々に製剤化して得られる2種の製剤の異なる投与経路での時間差をおいての投与が挙げられる。
【0036】
アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分は、抗癌作用を有する任意の薬剤であればよく、たとえば既存の抗癌剤を用いることができる。本発明に使用される抗癌作用を有する成分は、たとえば以下の癌に対する抗癌作用を有する:乳癌、前立腺癌、膵癌、胃癌、肺癌、結腸癌、直腸癌、大腸癌、小腸癌、食道癌、十二指腸癌、舌癌、咽頭癌、唾液腺癌、脳腫瘍、神経鞘腫、肝臓癌、腎臓癌、胆嚢癌、胆管癌、膵臓癌、肝癌、子宮内膜癌、子宮頸癌、卵巣癌、膀胱癌、尿道癌、皮膚癌、血管腫、悪性リンパ腫、悪性黒色腫、甲状腺癌、副甲状腺癌、鼻腔癌、副鼻腔癌、骨腫瘍、血管線維腫、網膜肉腫、陰茎癌、精巣腫瘍、小児固形癌、カポジ肉腫、上顎洞腫瘍、線維性組織球腫、平滑筋肉腫、横紋筋肉腫、白血病。好ましくは、抗癌作用を有する成分は、膵臓癌および大腸癌に対して抗癌作用を有する。
【0037】
抗癌作用を有する成分は、癌細胞の増殖若しくは転移抑制、癌細胞の殺傷または癌細胞の発生の抑制に寄与する化合物であれば特に限定されない。抗癌作用を有する成分は、癌細胞に直接または間接的に、いずれで作用してもよい。本発明に使用される抗癌作用を有する成分は、たとえば、癌性抗生物質、白金製剤、アルキル化剤、代謝拮抗剤、植物アルカロイド、分子標的治療剤およびホルモン剤であることができるが、これらに限定されない。本発明に併用して使用される抗癌作用を有する成分は、たとえば6-メルカプトプリン、AC-T療法、AC療法、CAF療法、CMF療法、FOLFIRINOX療法、FOLFIRI療法、FOLFOX療法、IRIS療法、L-アスパラギナーゼ、TS-1、UFT、XELOX療法、アクチノマイシン、アクラルビシン、アスパラギナーゼ、アナストロゾール、アビラテロン、アファチニブ、アフィニタック、アムルビシン 、アレクチニブ、イダルビシン、イピリマブ、イホスファミド、イブリツモマブ、イブルチニブ、イホスファミド、イマチニブ、イムノブラダ、イリノテカン、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロン-γ、エキセメスタン、エチニル、エトポシド、エノシタビン、エピルビシン、エベロリムス、エリブリン、エルロチニブ、エンザルタミド、オキサリプラチン、カバジタキセル、カペシタビン、カルフィルゾミブ、カルボコン、カルボプラチン、カルモフール、クリゾチニブ、クレスチン、クロルマジン、ゲフィチニブ、ゲムシタビン、ゲムツズマブオゾガマイシン、ゴセレリン、サリドマイド、シクロホスファミド、シスプラチン、シタラビン、ジノスタチンスチマラマー、スニチニブ、セツキシマブ、セリチニブ、ソラフェニブ、ダウノルビシン、ダカルバジン、タキモシフェン、ダサチニブ、タミバロテン、タモキシフェン、チオテパ、テガフール、デガレリスク、テムシロリムス、テモゾロミド、ドキシフルリジン、デキサメタゾン、ドキソルビシン、ドセタキセル、トラスツズマブ、トリフルリジン・チピラシル、トレチノイン、トレミフェン、ニボルマブ、ニムスチン、ニロチニブ、ネオカルチノスタチン、ネダプラチン、ノギテカン、パクリタキセル、パゾパニブ、パニツムマブ 、パルボシクリブ、バンデタニブ、ビカルタミド、ピシバニール、ヒドロキシウレア、ビノレルビン、ピラルビシン、ビンクリスチン、ビンデシン、ビンブラスチン、ブスルファン、フルオロウラシル、フルタミド、フルダラビン、フルベストラント、ブレオマイシン、プレドニドン、プレドニゾロン、プロカルバジン、ベバシズマブ、ペプレオマイシン、ペメトレキセド、ベルツズマブ、ボスチニブ、ボルテゾミブ、マイトマイシン、メトトレキサート、メルファラン、ラニムスチン、ラパチニブ、リツキシマブ、リポソーマルドキソルビシン、リュープロリド、リュープロレリン、ルキソリチニブ、レゴラフェニブ、レトロゾール、レボホリナート、レンバチニブおよびナブパクリタキセルなどであることができる。本発明の抗癌剤は、抗癌作用を有する成分として1種類のみを含んでいてもよいし、複数の抗癌作用を有する成分を含んでいてもよい。
【0038】
本発明の抗癌剤は、アルクチゲニンと、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分とを組み合わせることにより、より優れた抗癌効果を得ることができるとともに、抗癌作用を有する成分による副作用を軽減させることができるという効果を有する。
【0039】
抗癌作用を有する成分による副作用は、治療の目的にそわないか、または生体に不都合な作用をいい、一般的に認識されている副作用を含む。たとえば、抗癌作用を有する成分による副作用は、皮膚炎症、粘膜炎症、脱毛、下痢、食欲不振、全身倦怠感、痛み、呼吸困難感、悪心、嘔吐、発熱、嗅覚脱失、臓器障害、間質性肺炎、臓器不全および骨髄抑制などの症状を含む。また、これらの身体的障害に伴って生じる、不安、焦燥、関心喪失、情意鈍麻、不眠、疎外感、恐怖、適応障害、うつおよびせん妄などの精神的苦痛も抗癌作用を有する成分の副作用に含まれる。本発明の抗癌剤は、特に、骨髄抑制および肝障害などの臓器障害を軽減させることができる。
【0040】
本明細書において、抗癌作用を有する成分の副作用の「軽減」とは、抗癌作用を有する成分の投与による生体への負担や苦痛を減らして軽くするこという。また、副作用の「軽減」とは、副作用を正常化の方向に向かわせることを意味する。副作用の「軽減」は、一旦発生した副作用を改善すること、および治療することだけでなく、副作用が発生する前に予防すること、抑制すること、および防止することも含む。
【0041】
本発明の抗癌剤は、アルクチゲニンを1日あたりの投与量が成人一人あたり10〜2000mgとなるように含むことができる。
【0042】
また、抗癌作用を有する成分は、抗癌作用を発揮しうる投与量となるように、抗癌剤に含まれることができる。抗癌作用を発揮しうる投与量は、抗癌作用を有する成分によって異なるものであり、適宜設定することができる。たとえば、抗癌作用を有する成分がゲムシタビンである場合、1日あたりの投与量が500〜2000mg/mm
2となるように抗癌剤に含まれてもよい。また、抗癌作用を有する成分がベバシズマブ(アバスチン等)である場合、1日あたりの投与量が5〜30mg/kgとなるように抗癌剤に含まれてもよい。
【0043】
アルクチゲニンは、特に限定されないが、週1〜7日投与されてもよい。たとえば、アルクチゲニンは、連日または週5もしくは6回投与されてもよい。また、抗癌作用を有する成分は、特に限定されないが、週0〜7日投与されてもよい。たとえば、抗癌作用を有する成分は、週1回投与されてもよい。
【0044】
たとえば、アルクチゲニンと抗癌作用を有する成分とをそれぞれ異なる製剤としてそれらを併用投与する場合、アルクチゲニンを含有する製剤と抗癌作用を有する成分を含有する製剤とを同時期に投与してもよく、抗癌作用を有する成分を含有する製剤を先に投与した後、アルクチゲニンを含有する製剤を投与してもよく、およびアルクチゲニンを含有する製剤を先に投与し、その後で抗癌作用を有する成分を含有する製剤を投与してもよい。時間差をおいて投与する場合、時間差は剤形、投与方法および抗癌作用を有する成分の種類等により異なるが、アルクチゲニンを含有する製剤を連日投与し、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分を含有する製剤を1日〜28日毎、1日〜14日毎または1日〜7日毎に投与してもよい。また、逆にアルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分を含有する製剤を先に投与してもよい。
【0045】
本発明の抗癌剤において、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分がゲムシタビンである場合、たとえば成人一人あたり1日あたり10〜2000mgのアルクチゲニンを週5〜6日投与するとともに、1日あたり500〜2000mg/mm
2のゲムシタビンを週1回投与してもよい。また、より好ましくは、1日あたり100〜500mgのアルクチゲニンを週5〜6日投与するとともに、1日あたり1000mg/mm
2以上のゲムシタビンを週1回以上投与してもよい。
【0046】
本発明の抗癌剤において、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分がベバシズマブ(アバスチン等)である場合、たとえば成人一人あたり1日あたり10〜2000mgのアルクチゲニンを週5〜6日投与するとともに、1日あたり5〜30mg/kgのベバシズマブを週1回投与してもよい。また、より好ましくは、1日あたり100〜500mgのアルクチゲニンを週5〜6日投与するとともに、1日あたり15mg/kg以上のベバシズマブを週1回以上投与してもよい。
【0047】
アルクチゲニンは、アルクチゲニンを含有する植物由来であってもよい。アルクチゲニンを含有する植物は、特に限定されないが、たとえばゴボウ(スプラウト・葉・根茎・ゴボウシ)、ベニバナ、ヤグルマギク、アメリカオニアザミ、サントリソウ(ギバナアザミ)、カルドン、ゴロツキアザミ、アニウロコアザミ、アイノコレンギョウ、チョウセンレンギョウ、レンギョウ、シナレンギョウ、ゴマ、モミジヒルガオ、シンチクヒメハギ、チョウセンテイカカズラ、テイカカズラ、ムニンテイカカズラ、ヒメテイカカズラ、トウキョウチクトウ、ケテイカカズラ、リョウカオウ、オオケタデ、ヤマザクラ、シロイヌナズナ、アマランス、クルミ、エンバク、スペルタコムギ、軟質コムギ、メキシコイトスギおよびカヤなどを含む。なかでも、ゴボウ(特にゴボウシ)およびレンギョウは、アルクチゲニン含有量が高いため好ましい。
【0048】
ゴボウシは、日局16でゴボウArctium lappa Linneの果実であると規定されている。また、ゴボウシは、銀翹散、駆風解毒湯、消風散などに処方される生薬であり、専ら医薬品として使用される成分本質に分類される。ゴボウシは、リグナン配糖体に分類されるアルクチインを約7%およびそのアグリコンであるアルクチゲニンを約0.6%含む。
【0049】
本発明において、アルクチゲニンがゴボウシ由来である場合には、後述するゴボウシ抽出物の製造方法を用いて得られるゴボウシ抽出物を用いることができる。そのため、製造時の生産性を向上させることができ、安価にかつ簡便に抗癌剤を調製することができる。また、ゴボウシ以外の植物を用いる場合にも、後述する製造方法を利用することにより、アルクチゲニンを含有する抽出物を容易に得ることが可能である。
【0050】
後述するゴボウシ抽出物の製造方法によって得られる抽出物粉末は、アルクチゲニンを高含量で含有する。したがって、このゴボウシ抽出物の製造方法によって得られる抽出物粉末を使用すれば、従来のゴボウシ抽出物と比較して、優れた効果を有する抗癌剤とすることができる。
【0051】
また、本発明の抗癌剤は、さらにアルクチインを含有してもよい。アルクチインは、アルクチインを含有する植物由来であってもよく、たとえばゴボウシ、ゴボウスプラウト、レンギョウまたはシナレンギョウ由来であってもよい。すなわち、本発明の抗癌剤は、アルクチゲニンを含有する植物からの抽出物、たとえばゴボウシから得たゴボウシ抽出物を含有することにより、このゴボウシ抽出物に含まれるアルクチインをさらに含有してもよい。
【0052】
本発明の抗癌剤は、アルクチゲニンおよびアルクチインを、アルクチゲニン/アルクチインの重量比が0.7以上となるように含有してもよい。アルクチゲニン/アルクチインの重量比は、特に限定されないが、1.3以下であってもよい。本発明の抗癌剤は、アルクチゲニンおよびアルクチインを、アルクチゲニン/アルクチイン=0.7〜1.3の重量比にて含有する植物の抽出物、たとえばゴボウシ抽出物を含有してもよい。また、本発明の抗癌剤は、アルクチゲニンを3%以上含有するゴボウシ抽出物を含有してもよい。このようなゴボウシ抽出物は、後述するゴボウシ抽出物の製造方法により得ることができる。本発明の抗癌剤は、後述するゴボウシ抽出物の製造方法により得られたゴボウシ抽出物を含有することにより、従来のゴボウシ抽出物を含有する場合よりも高い抗癌効果を提供することができる。
【0053】
本発明の抗癌剤は、さらに任意の成分を含むことができる。たとえば、本発明の抗癌剤は、薬学的に許容される基剤、担体、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤および着色剤などを含む形態にて提供することができる。
【0054】
抗癌剤に使用する担体および賦形剤の例には、乳糖、ブドウ糖、白糖、マンニトール、デキストリン、馬鈴薯デンプン、トウモロコシデンプン、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、硫酸カルシウムおよび結晶セルロースなどを含む。
【0055】
また、結合剤の例には、デンプン、ゼラチン、シロップ、トラガントゴム、ポリビニルアルコール、ポリビニルエーテル、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロースおよびカルボキシメチルセルロースなどを含む。
【0056】
また、崩壊剤の例には、デンプン、寒天、ゼラチン末、結晶セルロース、炭酸カルシウム、炭酸水素ナトリウム、アルギン酸ナトリウム、カルボキシメチルセルロースナトリウムおよびカルボキシメチルセルロースカルシウムなどを含む。
【0057】
また、滑沢剤の例には、ステアリン酸マグネシウム、水素添加植物油、タルクおよびマクロゴールなどを含む。また、着色剤は、医薬品に添加することが許容されている任意の着色剤を使用することができる。
【0058】
また、抗癌剤は、必要に応じて、白糖、ゼラチン、精製セラック、ゼラチン、グリセリン、ソルビトール、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ポリビニルピロリドン、フタル酸セルロースアセテート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、メチルメタクリレートおよびメタアクリル酸重合体などで一層以上の層で被膜してもよい。
【0059】
また、抗癌剤は、必要に応じて、pH調節剤、緩衝剤、安定化剤および可溶化剤などが添加されてもよい。
【0060】
また、抗癌剤は、任意の形態の製剤として提供することができる。たとえば、抗癌剤は、経口投与製剤として、糖衣錠、バッカル錠、コーティング錠およびチュアブル錠等の錠剤、トローチ剤、丸剤、散剤およびソフトカプセルを含むカプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、ドライシロップを含むシロップ剤、ならびにエリキシル剤等の液剤であることができる。
【0061】
また、抗癌剤は、非経口投与のために、静脈注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、経皮投与、経鼻投与、経肺投与、経腸投与、口腔内投与および経粘膜投与などの投与のための製剤であることができる。たとえば、注射剤、経皮吸収テープ、エアゾール剤および坐剤などであることができる。また、植物等からの抽出物を使用する場合には、抽出物が特有のえぐみを有することから、抽出物をマスキングする製剤としたり、被覆剤で被覆するフィルムコート剤としたりすることができる。
【0062】
本発明の抗癌剤は、アルクチゲニンと抗癌作用を有する成分とを混合した配合剤であってもよいし、それぞれを含む製剤を組み合わせたキットであってもよい。
【0063】
本発明の抗癌剤が配合剤である場合、アルクチゲニンと抗癌作用を有する成分とは、複数の薬剤を混合して配合剤とする通常の方法によって配合剤とすることができる。配合剤には、アルクチゲニンおよび抗癌作用を有する成分以外の任意の成分をさらに含んでもよい。任意の成分には、上述した抗癌剤に含まれ得る任意の成分を用いることができる。配合剤の形態は、液体、固体、半固形状および粉末状などの任意の形態であることができる。アルクチゲニンと抗癌作用を有する成分との配合割合は、それぞれの効果を発揮することができる適切な配合割合とすることができる。
【0064】
本発明の抗癌剤が、アルクチゲニンを含む製剤と抗癌作用を有する成分を含む製剤とのキットである場合、アルクチゲニンを含む製剤と抗癌作用を有する成分を含む製剤とは、同一の形態であってもよいし、異なる形態であってもよい。また、アルクチゲニンを含む製剤と抗癌作用を有する成分を含む製剤とは、投与方法が同じ製剤であっても異なる製剤であってもよい。たとえば、アルクチゲニンを含む製剤と抗癌作用を有する成分を含む製剤とが両方とも経口投与製剤もしくは非経口投与製剤であってもよいし、アルクチゲニンを含む製剤が経口投与製剤であり、抗癌作用を有する成分を含む製剤が非経口投与製剤であってもよい。
【0065】
アルクチゲニンを含む製剤および抗癌作用を有する成分を含む製剤には、それぞれアルクチゲニンおよび抗癌作用を有する成分以外の任意の成分をさらに含んでもよい。任意の成分には、上述した抗癌剤に含まれ得る任意の成分を用いることができる。
【0066】
後述する試験例1および2において、アルクチゲニンと既存の抗癌作用を有する成分とを併用投与した場合には、抗癌作用を有する成分を単独で投与した場合よりも癌幹細胞の腫瘍内比率を減少させることが示された。また、後述する試験例3において、アルクチゲニンと既存の抗癌作用を有する成分とを併用投与した場合には、抗癌作用を有する成分を単独で投与した場合に生じる副作用が軽減されることが示された。したがって、本発明の抗癌剤は、より高い抗癌活性を有するとともに、抗癌作用を有する成分による副作用を軽減させることができる。
【0067】
本発明の抗癌剤は、腫瘍増大を抑制させるとともに、腫瘍内の癌幹細胞比率を減少させることにより、癌を治療または改善させるための医薬として用いることができる。本発明の抗癌剤は、使用する抗癌作用を有する成分の種類に応じていかなる癌をも治療対象とすることができる。たとえば、抗癌作用を有する成分としてゲムシタビンを用いる場合には、膵臓癌を治療または改善させるための医薬とすることができ、抗癌作用を有する成分としてベバシズマブ(アバスチン等)を用いる場合には、大腸癌を治療または改善させるための医薬とすることができる。
【0068】
〔併用投与するための製剤〕
本発明は、アルクチゲニンを有効成分として含有する、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分と組み合わせて併用投与するための製剤をも包含する。本発明の製剤は、上述した抗癌剤において説明したアルクチゲニンを含む製剤と同様の構成であることができる。この製剤は、たとえば上述した抗癌剤の一部として使用することが可能である。
【0069】
本発明の製剤と組み合わせる抗癌作用を有する成分には、上述した抗癌剤において説明した抗癌作用を有する成分、たとえば既存の抗癌剤などを用いることができる。
【0070】
本発明の製剤は、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分と組み合わせて併用投与することにより、アルクチゲニンおよび抗癌作用を有する成分をそれぞれ単独で投与するよりも優れた抗癌効果を得ることができるとともに、抗癌作用を有する成分による副作用を軽減させることができる。
【0071】
本発明の製剤は、病者用食品、健康食品、機能性食品、特定保健用食品、栄養補助食品およびサプリメントなどの形態であってもよい。
【0072】
本発明の製剤は、後述するゴボウシ抽出物の製造方法によって得られた抽出物粉末を、そのままの形で使用することもできる。
【0073】
〔副作用軽減剤〕
本発明はまた、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分による副作用を軽減するための副作用軽減剤をも包含する。本発明の副作用軽減剤は、アルクチゲニンを有効成分として含有する。本発明の副作用軽減剤は、上述した抗癌剤において説明したアルクチゲニンを含む製剤と同様の製剤形態、用量および投与方法であることができる。また、本発明の副作用軽減剤は、抗癌作用を有する成分と混合されて配合剤を構成してもよい。
【0074】
本発明の副作用軽減剤は、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分と組み合わせて併用投与することにより、抗癌作用を有する成分による副作用を軽減させることができる。抗癌作用を有する成分は、上述した抗癌剤において説明したような抗癌作用を有する成分、たとえば既存の抗癌剤であることができる。副作用は、上記抗癌剤において説明したような副作用であることができ、特に、骨髄抑制および肝障害などの臓器障害であってもよい。
【0075】
〔腫瘍内血管正常化剤〕
本発明はまた、腫瘍内の血管を正常化する、腫瘍内血管正常化剤をも包含する。
【0076】
本明細書において「腫瘍」または「腫瘍組織」とは、複数の腫瘍細胞が集まって構成される細胞群をいい、たとえば腫瘍細胞が増殖することによってできる組織塊などが含まれる。本明細書において「腫瘍内の血管を正常化する」とは、腫瘍組織に形成される未熟な血管の形成を抑制し、腫瘍内の血流を改善または正常化することをいう。腫瘍組織における未熟な血管は、低酸素・低栄養下で腫瘍細胞や腫瘍間質細胞などから放出される血管新生因子により誘導される血管新生によって形成される。未熟な血管が形成されることにより、腫瘍組織が循環不全に陥るため、低酸素および低栄養になるとともに、抗癌剤の送達性が悪くなる。
【0077】
本発明の腫瘍内血管正常化剤は、低酸素および低栄養環境下にある腫瘍組織を縮小させて腫瘍内の血管新生を抑制することにより、未熟な血管の形成を抑制し、腫瘍組織における血流を改善することができる。また、本発明の腫瘍内血管正常化剤は、腫瘍内の血流を改善させることにより、抗癌剤等を腫瘍内に十分に送達させることができる。
【0078】
本発明の腫瘍内血管正常化剤は、アルクチゲニンを有効成分として含有する。本発明の腫瘍内血管正常化剤は、上述した抗癌剤において説明したアルクチゲニンを含む製剤と同様の製剤形態、用量および投与方法であることができる。また、本発明の腫瘍内血管正常化剤は、抗癌作用を有する成分と混合されて配合剤を構成してもよい。
【0079】
本発明の腫瘍内血管正常化剤は、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分と組み合わせて併用投与することにより、腫瘍内の血流を改善することによって、結果として抗癌作用を有する成分の腫瘍組織への送達を増強することができる。抗癌作用を有する成分は、上述した抗癌剤において説明したような抗癌作用を有する成分、たとえば既存の抗癌剤であることができる。本発明の腫瘍内血管正常化剤を既存の抗癌剤と組み合わせて併用投与することにより、抗癌剤の抗腫瘍効果を増強させるとともに、生存率を延伸させることができる。
【0080】
〔抗癌作用を有する成分の腫瘍組織への薬剤送達の増強剤〕
本発明はまた、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分の腫瘍組織への薬剤送達の増強剤をも包含する。
【0081】
本明細書において「薬剤送達」とは、薬剤が腫瘍組織に送達、伝達または輸送されること、あるいは薬剤が腫瘍組織に取り込まれることをいう。
【0082】
本明細書において「薬剤送達を増強する」とは、送達される薬剤の量を増やすこと、または送達される速度を速めることをいう。本発明の増強剤は、未熟な血管が多く存在する低酸素・低栄養の腫瘍領域の発生を抑制もしくは消失させることで、また一方で、既存の血管から新しい血管が生じるのを抑制することで、腫瘍の血流を改善させ、腫瘍組織への薬剤の送達を増強することができる。本発明の増強剤は、薬剤と併用投与された場合、薬剤を単独で投与したときよりも多くの薬剤を腫瘍組織に送達させ、あるいは速い速度で薬剤を腫瘍組織に送達させることができる。すなわち、本発明の増強剤は、腫瘍組織への薬剤の取り込みを増強させることができる。
【0083】
本発明の増強剤は、アルクチゲニンを有効成分として含有する。本発明の増強剤は、上述した抗癌剤において説明したアルクチゲニンを含む製剤と同様の製剤形態、用量および投与方法であることができる。また、本発明の増強剤は、抗癌作用を有する成分と混合されて配合剤を構成してもよい。
【0084】
本発明の増強剤は、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分と組み合わせて併用投与することにより、抗癌作用を有する成分の腫瘍組織への送達を増強することができる。抗癌作用を有する成分は、上述した抗癌剤において説明したような抗癌作用を有する成分、たとえば既存の抗癌剤であることができる。本発明の増強剤を既存の抗癌剤と組み合わせて併用投与することにより、抗癌剤の抗腫瘍効果を増強させるとともに、生存率を延伸させることができる。
【0085】
〔方法〕
本発明はまた、癌を治療、改善または予防する方法をも包含する。本発明の癌を治療、改善または予防する方法は、アルクチゲニンの有効量と、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分の有効量とを組み合わせて対象に投与する工程を含む。
【0086】
本発明はまた、副作用を軽減する方法をも包含する。本発明の副作用を軽減する方法は、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分による副作用を軽減する方法であり、アルクチゲニンの有効量を対象に投与する工程を含む。本発明の副作用を軽減する方法における投与する工程は、アルクチゲニンの有効量と、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分の有効量とを組み合わせて対象に投与してもよい。
【0087】
本発明はまた、腫瘍内の血管を正常化する方法をも包含する。本発明の腫瘍内の血管を正常化する方法は、アルクチゲニンの有効量を対象に投与する工程を含む。本発明の腫瘍内の血管を正常化する方法における投与する工程は、アルクチゲニンの有効量と、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分の有効量とを組み合わせて対象に投与してもよい。
【0088】
本発明はまた、抗癌作用を有する成分の腫瘍組織への薬剤送達を増強する方法をも包含する。本発明の抗癌作用を有する成分の腫瘍組織への薬剤送達を増強する方法は、アルクチゲニンの有効量を対象に投与する工程を含む。本発明の抗癌作用を有する成分の腫瘍組織への薬剤送達を増強する方法において、投与する工程は、アルクチゲニンの有効量と、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分の有効量とを組み合わせて対象に投与してもよい。
【0089】
本発明の方法において、アルクチゲニンと、アルクチゲニン以外の抗癌作用を有する成分とは、配合剤であってもよい。また、本発明の方法における投与する工程は、アルクチゲニンを含む製剤と抗癌作用を有する成分を含む製剤とを別々に投与してもよい。本発明の方法において、アルクチゲニンがゴボウシ抽出物であってもよい。
【0090】
本発明の方法において、アルクチゲニンの有効量とは、投与対象の癌を治療、改善もしくは予防するために有効な量、腫瘍内の血管を正常化するために有効な量、または抗癌作用を有する成分の有効量を腫瘍組織に送達させるために有効な量をいう。また、抗癌作用を有する成分の有効量とは、投与対象の癌を治療、改善もしくは予防するために有効な量をいう。また、投与する「対象」は、ヒト、非ヒト哺乳動物および非哺乳動物を含む。
【0091】
本発明の方法において、投与の様式は、経口投与および非経口投与、たとえば静脈注射、皮下注射、腹腔内注射、筋肉内注射、経皮投与、経鼻投与、経肺投与、経腸投与、口腔内投与および経粘膜投与などであることができる。本発明の方法において、アルクチゲニンおよび抗癌作用を有する成分は、経口投与製剤として、糖衣錠、バッカル錠、コーティング錠およびチュアブル錠等の錠剤、トローチ剤、丸剤、散剤およびソフトカプセルを含むカプセル剤、顆粒剤、懸濁剤、乳剤、ドライシロップを含むシロップ剤、並びにエリキシル剤等の液剤として投与することができる。また、本発明の方法において、アルクチゲニンおよび抗癌作用を有する成分は、非経口投与剤として、たとえば注射剤、経皮吸収テープ、エアゾール剤および坐剤などによって投与することができる。
【0092】
本発明の方法において投与されるアルクチゲニンおよび抗癌作用を有する成分は、任意の用量で投与することができ、たとえば漢方薬または抗癌剤として一般的に摂取される用量として、一回または複数回投与することができる。たとえば、本発明の方法に使用されるアルクチゲニンは、1日あたりの投与量が成人一人あたり10〜2000mgとなるように投与することができる。また、抗癌作用を有する成分は、抗癌作用を発揮しうる投与量において投与することができる。たとえば、抗癌作用を有する成分がゲムシタビンである場合、1日あたりの投与量が500〜2000mg/mm
2となるように投与してもよい。また、抗癌作用を有する成分がベバシズマブ(アバスチン等)である場合、1日あたりの投与量が5〜30mg/kgとなるように投与してもよい。
【0093】
〔ゴボウシ抽出物の製造方法〕
本発明の抗癌剤、製剤および副作用軽減剤に適したゴボウシ抽出物は、生薬切裁工程、抽出工程(酵素変換工程および有機溶媒による抽出工程)、固液分離工程、濃縮工程および乾燥工程を経て製造される。
【0094】
(生薬切裁工程)
生薬切裁工程では、原料とするゴボウシを抽出に適した大きさに切裁する。原料となる生薬は、植物の様々な部位や鉱物、動物など種々の大きさ、形状、固さがあり、その特質に応じた切裁が必要となる。ゴボウシは、当業者に公知の任意の手段を使用して切裁することができる。たとえば、市販の切裁機を使用することができる。
【0095】
本発明に適したゴボウシ抽出物の製造方法では、ゴボウシに内在する酵素であるβ-グルコシダーゼの活性を事前に測定し、適したゴボウシを選択することができる。β-グルコシダーゼの活性を測定する方法としては、たとえばp-ニトロフェニル-β-D-グルコピラノシド(C
12H
15NO
8:分子量301.25)(SIGMA-ALDRICH社製)を基質として、ゴボウシ粉砕品を作用させることで生成するp-ニトロフェノールを400nmの吸光度の変化を測定することにより、酵素活性を測定できる。酵素活性を表す単位として1分間に1マイクロモルのp-ニトロフェノールを生成する酵素量を1単位(U)として表すことができる。
【0096】
本発明に適したゴボウシ抽出物を得るためには、ゴボウシに内在するβ-グルコシダーゼの活性が、たとえば0.4U/g以上、好ましくは1U/g以上のゴボウシを用いることができる。0.4U/g未満の場合は、加水分解が不十分となり、アルクチゲニンの重量比が下がり、所望のゴボウシ抽出物を効率的に得られなくなる。
【0097】
また、本発明に適したゴボウシ抽出物の製造方法では、任意の粒径に切裁されたゴボウシを使用することができる。切裁されたゴボウシの粒径が小さいほど酵素変換が促進され、抽出物収率も上昇すると考えられる。その反面、粒径が小さすぎると、酵素変換が速過ぎてプロセス管理が困難になったり、後の工程において正確な固液分離に支障が生じたりすることがある。
【0098】
本発明に適したゴボウシ抽出物を得るためには、以下の実施例に示したように、ゴボウシは、9.5mm以下の粒径に、たとえば9.5mmの篩を全通するように切裁される。また、本発明に適したゴボウシ抽出物を得るためには、ゴボウシの粒径が、9.5mm篩を全量通過し、たとえば0.85mmの篩に60〜100%が分布するように、さらに好ましくは0.85mmの篩に65〜80%が分布するように切裁されることが望ましい。
【0099】
(抽出工程)
抽出工程は、生薬抽出物粉末製造工程中で、品質上最も重要な工程である。この抽出工程により、生薬抽出物粉末の品質が決まる。本発明の抗癌剤に用いるのに適したゴボウシ抽出物の製造方法では、ゴボウシ抽出物を抽出するために、酵素変換工程と有機溶媒による抽出工程の2段階に分けて抽出を行う。
【0100】
(酵素変換工程)
酵素変換工程は、本発明に適したゴボウシ抽出物の製造方法において重要な工程である。酵素変換工程は、ゴボウシに内在する酵素であるβ-グルコシダーゼにより、ゴボウシに含まれているアルクチインをアルクチゲニンに酵素変換する工程である。
【0101】
具体的には、上記工程で準備したゴボウシ切裁物を、適切な温度に保持することによりβ-グルコシダーゼを作用させて、アルクチインからアルクチゲニンへの反応を進行させる。たとえば、切裁したゴボウシに水などの任意の溶液を加えて、30℃付近の温度にて攪拌することなどにより、ゴボウシを任意の温度に保持することができる。
【0102】
本発明に適したゴボウシ抽出物を得るためには、切裁したゴボウシを30℃付近の温度、たとえば20〜50℃の間の温度に保持する。20℃未満の場合は、加水分解が不十分となり、アルクチゲニンの重量比が下がり、所望のゴボウシ抽出物を効率的に得られなくなる。一方、50℃より高温の場合は、酵素が失活し、アルクチゲニンの重量比が下がり、所望のゴボウシ抽出物を効率的に得られなくなる。
【0103】
また、保持時間は、上記温度において保持する限り特に限定されず、たとえば約30分保持させることができる。20〜50℃の間に保持することにより、保持時間にかかわらず、適切な量のアルクチインがアルクチゲニンに酵素変換され、本発明に適したゴボウシ抽出物を得ることができる。
【0104】
(有機溶媒による抽出工程)
有機溶媒による抽出工程は、任意の適切な有機溶媒を使用して、ゴボウシからアルクチゲニンおよびアルクチインを抽出する工程である。すなわち、上記の酵素変換工程によりアルクチゲニンが高含量となった状態で、適切な溶媒を添加して、ゴボウシ抽出物を抽出する工程である。たとえば、ゴボウシ抽出物に適切な溶媒を添加して、適切な時間加熱攪拌してゴボウシ抽出物を抽出する。また、加熱攪拌以外にも、加熱還流、ドリップ式抽出、浸漬式抽出または加圧式抽出法などの当業者に公知の任意の抽出法を使用して、ゴボウシ抽出物を抽出することができる。
【0105】
アルクチゲニンは水難溶性であることから、有機溶媒を添加することにより、アルクチゲニンの収率を向上させることができる。有機溶媒は、任意の有機溶媒を使用することができる。たとえば、メタノール、エタノールおよびプロパノールなどのアルコール、並びにアセトンを使用することができる。安全性の面を考慮すると、本発明に適したゴボウシ抽出物の製造方法では、有機溶媒としてエタノールを使用することが好ましい。
【0106】
加熱攪拌によってゴボウシ抽出物を抽出する場合、加熱攪拌は、任意の温度にて行うことができるが、本発明に適したゴボウシ抽出物を得るためには、80℃以上の温度、たとえば80〜90℃の間の温度に保持する。また、加熱攪拌する時間は、上記温度において加熱攪拌する限り、特に限定されず、約30分間、たとえば30〜60分間加熱攪拌することにより、溶媒中にゴボウシからアルクチゲニンおよびアルクチインを抽出させることができる。
【0107】
アルクチゲニンおよびアルクチインの收率は、加熱攪拌の時間が長いほど向上する。しかし、加熱攪拌の時間が長いと、不要な油脂類が多く溶け出し、濃縮工程の負荷が大きくなってしまう。したがって、加熱攪拌の時間は、状況に応じて適宜決定すればよい。
【0108】
また、アルクチゲニンおよびアルクチインの收率は、エタノール量が多いほどアルクチゲニンおよびアルクチインの溶解度が高くなるため、収率も向上する。しかし、エタノール量が多いと、不要な油脂類も多く溶け出し、濃縮工程の負荷が大きくなってしまう。したがって、投入量は、状況に応じて適宜決定すればよい。なおこの工程での加熱攪拌により、同時にゴボウシ抽出物を滅菌および殺菌することができる。
【0109】
(固液分離工程)
固液分離工程は、抽出の終わったゴボウシを抽出液から分離する工程である。固液分離は、当業者に公知の任意の方法を使用して行うことができる。固液分離法には、たとえば濾過法、沈降法および遠心分離法などがある。工業的には、遠心分離法が望ましい。
【0110】
(濃縮工程)
濃縮工程は、乾燥に先立ちゴボウシ抽出液から溶媒を除去する工程である。ゴボウシ抽出液からの溶媒の除去は、当業者に公知の任意の方法を使用して行うことができる。しかし、上記工程によって得られたゴボウシからの抽出液が、さらに高温に長時間曝されることがないようにすることが好ましい。たとえば、減圧濃縮法を使用することにより、高温に長時間曝されることなく、ゴボウシ抽出液を濃縮することができる。
【0111】
ゴボウシ抽出液の濃縮は、所望の濃度のゴボウシ抽出物が得ることができる濃度まで濃縮することができる。たとえば、以下の乾燥工程において乾燥を適正に行うことができる程度まで濃縮することが望ましい。また、以下の工程においてゴボウシ抽出物を乾燥させて粉末製剤にした場合に、適切な製剤特性が得られる濃度まで濃縮を行うことが望ましい。
【0112】
アルクチゲニンおよびアルクチインは、水難溶性であるため、アルクチゲニンおよびアルクチインが以下の乾燥工程における製造装置内に付着する量が多く、最終的な収率が大幅に低下する。そこで、製造装置にアルクチゲニンおよびアルクチインが付着するのを防止するために、この濃縮工程で得られたゴボウシ抽出液にデキストリンを添加することができる。デキストリンの添加量は、たとえば濃縮液の固形分に対して15〜30%程度が望ましい。
【0113】
(乾燥工程)
上記工程によって得られたゴボウシ抽出物を粉末状に仕上げる工程である。乾燥は、当業者に公知の任意の方法を使用して行うことができる。たとえば、乾燥法として、凍結乾燥および噴霧乾燥などが知られているが、実験室レベルであれば前者、量産レベルであれば後者を用いるのが一般的である。
【0114】
以上の製造工程により、アルクチゲニンを高含量にて含有するゴボウシ抽出物を得ることができる。このゴボウシ抽出物の製造方法は、20℃〜50℃の温度で酵素変換を行う工程を含まなければならないが、その他の工程の全てを含む必要はない。
【0115】
また、以上の製造工程により、アルクチゲニンの濃度が高いゴボウシ抽出物を、安価にかつ簡便に得ることができる。したがって、この方法により得られたゴボウシ抽出物を用いることによって、本発明の抗癌剤、製剤および副作用軽減剤を安価にかつ簡便に製造することができる。
【0116】
また、以上の製造工程により得られるゴボウシ抽出物のアルクチゲニン濃度が高いため、従来のゴボウシ抽出物を用いた場合と比較して、抗癌剤、製剤および副作用軽減剤の1日当たりの全体量を少なくすることができる。したがって、患者の負担を軽減させることができる。
【実施例】
【0117】
〔実施例1〕
以下の方法により、アルクチゲニンを含有するゴボウシエキスを調製した。
【0118】
ゴボウシ(酵素活性7.82U/g)を切裁し、9.5mmの篩を全通するものをさらに0.85mmの篩に通し、75%が残ることを確認した。このゴボウシ細切80kgを30〜32℃に保温した水560Lに加えて30分間攪拌した後、エタノール253Lを加えて85℃に昇温し、さらに40分間加熱還流した。この液を遠心分離し、得られた抽出液を得た。この操作を2回繰り返して得られた抽出液を合わせて、減圧濃縮し、抽出物固形分に対してデキストリン25%を加えて、噴霧乾燥した。アルクチゲニンおよびアルクチイン含量は、それぞれ6.4%および7.2%であり、アルクチゲニン/アルクチイン(重量比)=0.89のゴボウシ抽出物粉末(デキストリン25%含有)が得られた。
【0119】
〔試験例1〕
アルクチゲニン含有ゴボウシエキス、ベバシズマブおよびゲムシタビンの反復投与による腫瘍内の血流を評価した。ベバシズマブとして、アバスチンを用いた。
【0120】
ヒト膵臓癌細胞Suit2の1×10
6細胞をBALB/cAJc1-nu/nuマウス(日本クレア)の皮下に移植した。移植21日目に、移植マウスを、(a)未治療群、(b)ゴボウシエキス投与群、(c)ベバシズマブ投与群、および(d)ゲムシタビン投与群の4つの群に分け、4週間治療を継続した。ゴボウシエキスは、実施例1のゴボウシエキスを餌に0.5%(w/w)配合したものをマウスに与えた。マウスの一日の餌の摂取量を3〜5gとして計算すると、アルクチゲニンは、15〜25mg/匹/日投与されたことになる。ベバシズマブは、アバスチン点滴静注用100mg/4ml(中外製薬)を使用して、5mg/kgを週1回、腹腔内投与した。ゲムシタビンは、点滴用ゲムシタビン製剤(イーライリリー社)を使用して、100mg/kgを週2回、腹腔内投与した。
【0121】
(腫瘍サイズ)
治療開始4週間後の各群の平均腫瘍サイズは、(a)未治療群が228mm
2、(b)ゴボウシエキス投与群が189mm
2、(c)ベバシズマブ投与群が56mm
2、および(d)ゲムシタビン投与群が68mm
2であった。
【0122】
(腫瘍組織におけるガドリニウムDTPAの取り込み)
治療開始4週間後に、各群のマウス腫瘍組織におけるガドリニウムDTPAの取り込みを評価した。ガドリニウムDTPAを急速静注した後120秒まで、9.4テスラMRI装置(BIOSPEC 94/20USR)を用いて、腫瘍のダイナミック造影T
1強調画像(時間分解能1.8-5.3秒)を撮影した。この画像から、腫瘍組織内のガドリニウムDTPAのシグナル強度を測定した。
図1は、ガドリニウムDTPA静注後0秒のシグナル強度を100としたときの、30秒ごとのシグナル強度の平均値を示すグラフである。腫瘍組織内のガドリニウムDTPAのシグナル強度の増加は、腫瘍組織内へのガドリニウムDTPAの取り込みを意味する。腫瘍組織内へのガドリニウムDTPAの取り込みの度合いは、腫瘍組織内の血流状態の指標となる。
【0123】
(治療後の腫瘍組織内の血流の評価)
図1に示すように、ガドリニウムDTPA静注後90〜120秒において、ゴボウシエキス投与群における治療後の腫瘍組織中心部のシグナル強度は、118.1 ± 13.7%まで増加した。一方、未治療群では、90〜120秒において102.6 ± 3.4%であり、増加しなかった。したがって、ゴボウシエキス投与群では、未治療群と比較して血流が良い傾向であった(P <0.05, t-test)。また、抗腫瘍効果が見られたゲムシタビン治療群では、未治療群と同様に腫瘍組織中心部のシグナル強度が増加していなかった。一方、血管新生阻害作用を持つベバシズマブ治療群では、シグナル強度が増加する傾向にあった。
【0124】
以上の結果から、アルクチゲニン含有ゴボウシエキスの投与により腫瘍組織の乏血流領域が縮小し、富血流領域が残存する可能性が示唆された。したがって、アルクチゲニンを投与することにより、腫瘍組織内に薬剤が送達されやすい環境が整うことが示唆される。そのため、抗癌剤をアルクチゲニンと併用投与することにより、抗癌剤の腫瘍組織への薬剤送達が増強され、その結果、抗癌剤の薬効が増強されることが示唆される。
【0125】
〔試験例2〕
腫瘍が増大する過程においては、増大した腫瘍組織全体にわたって栄養や酸素が血管を通して供給されていなければならない。しかしながら、多くの腫瘍においては、未熟な血管形成のため、これらが十分に供給されておらず、部分的な組織壊死を起こし、組織が潰瘍状になる部位が発生すると考えられている。そこで、前述のゴボウシエキスの腫瘍内血流正常化効果を組織状態から検証するため、それぞれの治療後の腫瘍組織における潰瘍形成を観察した。
【0126】
(潰瘍形成)
5週間にわたり、腫瘍組織に対し、ゴボウシエキスの単独投与、ベバシズマブの単独投与およびゴボウシエキスとベバシズマブの併用投与を実施した。未治療群(Control)およびそれぞれの投与群について、腫瘍に潰瘍を生じたマウスの比率(%)を
図2に示す。
図2に示すように、50%潰瘍形成率は、未治療群が8日、ゴボウシエキス投与群が20日、ベバシズマブ投与群が10日、併用投与群が24日であった。したがって、ゴボウシエキス投与群および併用投与群では、未治療群およびベバシズマブ投与群と比較して、腫瘍における潰瘍形成の抑制効果が認められた。ベバシズマブ投与群では、未治療群と比較して潰瘍形成の抑制効果が認められたが、一過性であった。この効果は、ベバシズマブの持つ血管新生阻害作用による効果と考えられる。一方、ベバシズマブに加えてゴボウシエキスを併用投与した場合、潰瘍形成の阻害が増強された。これは、ベバシズマブ単剤での腫瘍に対する血流改善効果に対して、ゴボウシエキス治療による低酸素・低栄養領域の形成抑制と血管新生抑制による血流改善効果が、併用増強されたためであると考えられる。このように、アルクチゲニンとの併用投与により、低酸素および低栄養状態にある領域を顕著に縮小することができるため、癌の悪性化を抑制することが期待される。
【0127】
(併用による延命効果)
上述した治療を5週間継続した後に、治療を中止し、生存期間の追跡を実施した。各群における生存率を
図3に示した。その結果、50%生存期間は、
図3に示すように未治療群が103日、ゴボウシエキス投与群が114日、ベバシズマブ投与群が107日、併用投与群が137日であった。したがって、併用投与群では、未治療群および単独投与群と比較して、それぞれ33%および20-28%の生存期間延長効果が認められた。
【0128】
〔試験例3〕
ゴボウシエキスおよびゲムシタビンの併用投与による抗腫瘍効果を調べた。
【0129】
(ヒト膵臓癌細胞を移植したマウスの作製)
ヒト膵臓癌細胞Miapaca-2(ATCC CRL 1420)5×10
6 Cells/200μlを、BALB/cAJcl nu/nuマウス(日本クレア)の脇下皮下に移植した。その後、約2〜3週間飼育し、100mm
3程度になったものを選別し、治療対象マウスとした。
【0130】
(膵臓癌に対する治療試験)
治療対象マウスを、(a)未治療群、(b)ゲムシタビン投与群、(c)ゴボウシエキス投与群、並びに(d)ゴボウシエキスおよびゲムシタビンを併用して投与する群(併用投与群)、の4つの群に分け、4週間治療を継続した。ゴボウシエキスは、実施例1のゴボウシエキスの250mg/kg(アルクチゲニンとして25mg/kg以上)を連日(週5回)、経口投与した。ゲムシタビンは、点滴用ゲムシタビン製剤(イーライリリー社)を使用して、150mg/kgを週2回、腹腔内投与した。
【0131】
(腫瘍重量)
治療試験後、各投与群について腫瘍重量を測定した。その結果、治療試験後の腫瘍重量は、未治療群では2.05g、ゲムシタビン投与群では1.24g、ゴボウシエキス投与群では0.98g、および併用投与群では0.82gであった。したがって、ゲムシタビン投与群、ゴボウシエキス投与群および併用投与群のいずれにおいても、未治療群と比較して、40〜60%程度の腫瘍重量の抑制が認められた。
【0132】
(腫瘍内の癌幹細胞比率)
治療試験後の腫瘍組織から癌細胞を回収し、CD24、CD44およびESA(CD326)の3重陽性マーカー並びにCD133およびCD44の2重陽性マーカーを使用して、治療試験後の腫瘍内のCD44
+, CD24
+, CD326
+細胞(3重陽性)およびCD133
+, CD44
+細胞(2重陽性)の比率を評価した。評価には、FACS ARIA IIフローサイトメーター(BD bioscience)を用いた。CD44
+, CD24
+, CD326
+細胞(3重陽性)は、腫瘍内の癌幹細胞のうち、造腫瘍能に優れた癌幹細胞であり、CD133
+, CD44
+細胞(2重陽性)は、極めて転移性の高い癌幹細胞である。比率は、腫瘍内に存在する細胞をTruStain fcX(mouse, biolegend)で処理後、死細胞をSytox-Red(Invitrogen)で除き、また、マウス由来の細胞をmouse lineage cocktail(biolegend), anti-H2-Kd(biolegend)で除き、残った2.5X10
4の膵臓癌細胞における比率とした。
【0133】
治療試験後の腫瘍内のCD44
+, CD24
+, CD326
+細胞(3重陽性)比率を評価した結果を
図4に示した。
図4の下の表には、4検体における各比率およびそれらの平均を示した。その結果、CD44
+, CD24
+, CD326
+細胞(3重陽性)比率は、未治療群では1.4%、ゲムシタビン投与群では1.6%、ゴボウシエキス投与群では1.0%、および併用投与群では0.4%であった。したがって、ゴボウシエキスおよびゲムシタビンの併用投与群では、未治療群および単独投与群と比較して、3重陽性癌幹細胞の腫瘍内比率の有意な減少が認められた。
【0134】
また、治療試験後の腫瘍内のCD133
+, CD44
+細胞(2重陽性)比率を評価した結果、未治療群では2.3%、ゲムシタビン投与群では3.5%、ゴボウシエキス投与群では1.7%、および併用投与群では0.5%であった。したがって、2重陽性癌幹細胞についても、併用投与群では、未治療群および単独投与群と比較して、腫瘍内比率の減少が認められた。
【0135】
これらの結果から、ゴボウシエキスおよびゲムシタビンを併用することによって、腫瘍増大を抑制させるとともに、腫瘍の再発、遠隔転移および抗癌剤耐性の出現の原因となりうる膵臓癌幹細胞の腫瘍内比率を減少させることができることが示された。したがって、ゴボウシエキスおよびゲムシタビンの併用剤は、これらをそれぞれ単独で投与したときの効果から予想されるより顕著に高い抗癌活性を有することが示された。
【0136】
〔試験例4〕
膵臓癌の診断後の5年生存率は2013年時点で5%を切っており、またその平均生存時間は、4-6ヶ月に止まっている。これは他の癌に比べて極端に低い数値であり、有効な対策が求められている。上述した実施例3において、膵臓腫瘍移植モデルに対するアルクチゲニン高含有ゴボウシエキスとゲムシタビンとの併用治療により、単剤治療に比べて腫瘍の増大抑制傾向が認められた。そこで、より実際の病巣に近いモデルとして、マウス膵臓への膵臓癌同所移植モデルを作製し、ゲムシタビンおよびゴボウシエキスによる併用治療が生存率に与える影響を評価した。
【0137】
(膵臓癌同所移植モデルの作製)
ヒト膵臓癌細胞Miapaca-2細胞を5×10
6cells/50μlにて高濃度マトリゲル溶液(BD bioscience)に懸濁した。8週齢、メスのBALB/cAJcl-nu/nu(日本クレア)を麻酔下に開腹し、上記細胞懸濁液を膵臓組織へ注入および固化させた後、縫合・閉腹した。
【0138】
(治療)
移植後のマウスを、未治療群(Non treat)、10%アルクチゲニンを含むゴボウシエキス(クラシエ製薬、GBS-01)250mg/kgを連日経口投与する群(GBS-01)、150mg/kgのゲムシタビン(イーライリリー社)を週2回腹腔投与する群(Gemcitabine)、およびこれらを併用投与する群(Combination)の4群各7匹に分け、マウスがすべて死亡するまで治療を継続した。
【0139】
(生存率の解析)
生存率は、Kaplan-Mayer法を使って生存率曲線および生存率中央値MSTを計算および描出することにより算出した(GraphPad-PRISM 6.2, MDF社)。有意差は、Logrank(Mantel-COX)およびGehan-Breslow-Wilcoxon検定で評価した。算出した結果を
図5の上のグラフに示した。
【0140】
図5に示すように、生存期間中央値(MST)は、未治療群(Non treat)では65日、ゲムシタビン投与群(Gemcitabine)では86日(32.3%伸び)、ゴボウシエキス投与群(GBS-01)では88日(35.4%伸び)、併用治療(Combination)では117日(80%伸び)であった。また、有意差は、Gehan-Breslow-WilcoxonおよびLog-RANK(Mantel-Cox)検定とも、治療群と未治療群との間に有意差が存在していた。
【0141】
この結果、膵臓癌同所移植モデルにおいては、
図5に示すように、未治療群と比較して、ゴボウシエキス投与群(GBS-01)とゲムシタビン投与群(Gemcitabine)は、ほぼ同程度の延命効果を示した。一方、これらの薬剤を併用した併用投与群(Combination)では、未治療群および単独投与群と比較して顕著な延命効果を示した。したがって、抗癌剤とアルクチゲニンとを併用投与することにより、生存期間を進展することが困難な膵臓癌においても、大きく生存率を伸ばすことができることが示された。
【0142】
〔試験例5〕
癌細胞に対して様々な機序で傷害作用を持つ種々の薬剤について、ゴボウシ由来のアルクチゲニンと併用投与したときの、薬剤の殺傷効果の増強作用を検討した。
【0143】
膵臓癌細胞であるPANC-1(ATCC No. CRL-1469)細胞を、グルコースを含まない培地(DMEM(SIGMA) +5% 透析済み牛胎児血清 +4mM Glutamine +10mM HEPES)において、下記表1に示す種々の薬剤、アルクチゲニン(精製品、ロット:AG-STD1, クラシエ製薬)およびこれらの組み合わせ(Combination)により処理した。種々の薬剤は、それぞれ50%細胞死濃度(LD
50)の1/4濃度(殺傷率15%未満)を用いた。アルクチゲニンは、1nM-3000nMまでの希釈列にて用いた。18〜24時間処理を行った後に、Cell Counting Kit (同仁化学)にて生存細胞数を測定した。
【0144】
下記表1は、種々の薬剤をアルクチゲニンと併用処理した場合における、アルクチゲニン単独処理に対するLD
50低下倍率を示す。各薬剤について、アルクチゲニンと併用処理した場合に、アルクチゲニン単独処理および薬剤単独処理と比較して、LD
50の低下が認められた。
【0145】
【表1】
【0146】
これらの結果から、アルクチゲニンは、膵臓癌を代表とする腫瘍内部が飢餓状態になりやすいタイプの癌の治療において、様々な機序で癌細胞に傷害作用を持つ薬剤に対して、広い増強効果を有することが示された。
【0147】
〔試験例6〕
膵臓癌移植モデルを用いて、既存の各種抗癌剤、アルクチゲニン高含有ゴボウシエキスおよびこれらの組み合わせによる治療を行い、腫瘍サイズの変動を評価した。
【0148】
(膵臓癌移植モデルの作製)
5×10
6 Cells/200μlのMiapaca-2細胞をBALB/cAJcl-nu/nuマウス(日本クレア)の脇下皮下に移植し、約2週間飼育後、約100mm
3または約600mm
3程度のサイズになったものを、治療対象マウスとした。
【0149】
(治療)
作製した移植マウスを、未治療群、各種の抗癌作用を有する成分である既存抗癌剤投与群、ゴボウシエキス投与群およびこれらの併用投与群の各群に分け、各群の5〜6腫瘍に対して、約4週間程度にわたって治療を継続した。既存抗癌剤としては、カルボプラチン(CBDCA、Bristol-Myers、60mg/kgを週1回腹腔投与)、ドキソルビシン(Doxorubicin、協和発酵、10mg/kgを週2回腹腔投与)、オキサリプラチン(Oxaliplatin、ヤクルト、8mg/kgを週1回腹腔投与)、エベロリムス(Everolimus、ノバルティス、5mg/kgを週5回経口投与)、ボルテゾミブ(Bortezomib、ヤンセンファーマ、1mg/kgを週2回腹腔投与)、イリノテカン(Irinotecan、ヤクルト、25mg/kgを週2回腹腔投与)およびヒドロキシクロロキン(Hydroxychloroquine、サノフィー、100mg/kgを週5回腹腔投与)を用いた。ゴボウシエキスは、10%アルクチゲニンを含むゴボウシエキス(クラシエ製薬、GBS-01)を用い、750mg/kgを週5日経口投与した。
【0150】
(腫瘍サイズの測定)
治療開始後、3-4日毎に、マウスを保定して精密デジタルノギスで腫瘍の長径(L)、短径(W)および高さ(H)を測定し、腫瘍サイズ= 4/3 * pi * L/2 * H/2 * W/2 (pi=3.14)の式を用いてサイズを求めた。また、高さが測定できない場合は、簡易的に、腫瘍サイズ = 4/3 * pi * L/2 * (W/2)
2を使用した。測定結果を
図6に示した。
【0151】
既存抗癌剤とゴボウシエキスとの併用治療の結果、カルボプラチンおよびオキサリプラチンでは、ゴボウシエキス単剤に比較して2.3〜2.1倍(P<0.05)および抗癌剤単剤に比較して1.8〜1.9倍(P<0.05)の腫瘍サイズの低下が認められた。また、イリノテカンでは、ゴボウシエキス単剤に比較して2.1倍(P<0.05)および抗癌剤単剤に比較して1.5倍の腫瘍サイズの低下が認められた。ドキソルビシンでは、ゴボウシエキス単剤に比較して1.4倍および抗癌剤単剤に比較して1.5倍(P<0.05)程度の腫瘍サイズの低下が認められた。エベロリムスでは、ゴボウシエキス単剤に比較して2.1倍(P>0.05)および抗癌剤単剤に比較して1.4倍の腫瘍サイズの低下が認められた。ボルテゾミブでは、ゴボウシエキス単剤に比較して1.8倍(P<0.05)および抗癌剤単剤に比較して1.4倍の腫瘍サイズの低下が認められた。マラリアや自己免疫疾患などの治療薬であるハイドロキクロロキンでは、ゴボウシエキス単剤に比較して1.9倍および抗癌剤単剤に比較して2.5倍(P<0.05)の腫瘍サイズの低下が認められた(
図6参照)。
【0152】
以上の結果から、アルクチゲニン高含有ゴボウシエキスは、様々な薬効機序を持った既存の抗癌剤と組み合わせることで、強い抗腫瘍効果を期待できる薬剤であることが示された。
【0153】
〔試験例7〕
アルクチゲニン高含有ゴボウシエキスおよびベバシズマブの併用治療による大腸癌に対する効果を調べた。ベバシズマブとして、アバスチンを用いた。
【0154】
ベバシズマブは、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)の働きを阻害することにより、血管新生を抑え、また腫瘍の増殖および転移を抑える作用を持つ。ベバシズマブ投与により、腫瘍の血管新生を阻害するとともに低酸素・低栄養環境を作ることができ、さらにアルクチゲニンを併用することにより、低酸素・低栄養環境の腫瘍に対してアルクチゲニンが抗腫瘍効果を発揮することが考えられた。
【0155】
アルクチゲニンは、マウス個体レベルにおいて、低酸素・低栄養に耐性がある膵臓腫瘍内癌幹細胞に対して顕著な効果を示すことが明らかになってきている。試験例1で示したように、アルクチゲニンは、ゲムシタビンとの併用により癌幹細胞の減少を増強させうることが示された。
【0156】
大腸癌は、膵臓癌と同様に低酸素・低栄養に耐性があることが報告されており、患者数も多いことから、ベバシズマブとゴボウシエキスとの併用による大腸腫瘍内癌幹細胞への作用の評価を行うこととした。
【0157】
(移植マウスの作製および治療試験)
ヒト大腸癌細胞LS174T(ATCC. CL-188)の5×10
5細胞をBALB/cAJc1-nu/nuマウス(日本クレア)の皮下に移植した。移植14日目に、移植マウスを、(a)未治療群、(b)ベバシズマブ投与群、(c)ゴボウシエキス投与群、並びに(d)ゴボウシエキスおよびベバシズマブを併用して投与する群(併用投与群)、の4つの群に分け、4週間治療を継続した。ゴボウシエキスを投与する場合は、実施例1のゴボウシエキスの250mg/kg(アルクチゲニンとして25mg/kg)を週6回、経口投与した。ベバシズマブは、アバスチン点滴静注用100mg/4ml(中外製薬)を使用して、5mg/kgを週1回、腹腔内投与した。
【0158】
(腫瘍重量)
治療試験後、各投与群について腫瘍重量を測定した。その結果、治療試験後の腫瘍重量は、未治療群では2.51g、ベバシズマブ投与群では1.33g、ゴボウシエキス投与群では1.25g、および併用投与群では0.68gであった。したがって、ベバシズマブ投与群、ゴボウシエキス投与群および併用投与群のいずれにおいても、未治療群と比較して、腫瘍重量増大の抑制が認められた。また、併用投与群では、単独で投与した場合と比較して、腫瘍重量増大がより強く抑制された。
【0159】
(腫瘍内の癌幹細胞比率)
次いで、腫瘍組織から癌細胞を回収し、CD133およびCD44の2重陽性マーカーを使用して、治療試験後の腫瘍内のCD133
+, CD44
+細胞の比率をFACS ARIA IIフローサイトメーター(BD bioscience)を使用して評価した。また、比率は、腫瘍内に存在する細胞をTruStain fcX(mouse, biolegend)で処理後、死細胞をSytox-Red(Invitrogen)で除き、また、マウス由来の細胞をmouse lineage cocktail(biolegend), anti-H2-Kd(biolegend)で除き、残った2.5X10
4の膵臓癌細胞における比率とした。
【0160】
その結果、治療試験後の腫瘍内のCD133
+, CD44
+細胞(2重陽性)の比率は、未治療群では0.16%、ベバシズマブ投与群では0.552%、ゴボウシエキス投与群では0.304%、および併用投与群では0.056%であった。したがって、併用投与群では、未治療群および単独投与群と比較して、腫瘍内の癌幹細胞比率の減少が認められた。
【0161】
これらの結果から、ゴボウシエキスおよびベバシズマブを併用することによって、腫瘍増大を抑制させるとともに、腫瘍の再発、遠隔転移および抗癌剤耐性の出現の原因となりうる大腸癌幹細胞の腫瘍内比率を減少させることができることが示された。また、上述した試験例2において、ゴボウシおよびベバシズマブの併用によって延命効果が示された。したがって、ゴボウシエキスおよびベバシズマブの併用剤は、これらをそれぞれ単独で投与したときの効果から予想されるより顕著に高い抗癌活性を有することが示された。
【0162】
〔試験例8〕
ゴボウシエキスおよびゲムシタビンの併用反復投与による毒性試験を行った。
【0163】
SCR-ICRマウス(6週齢メス)(SLC社)を、(a)未治療群、(b)ゲムシタビン投与群、(c)ゴボウシエキス投与群、並びに(d)ゴボウシエキスおよびゲムシタビンを併用して投与する群(併用投与群)、の4つの群において各6匹ずつ用いた。それぞれの群に、各治療剤を7週間継続して投与した。
【0164】
ゴボウシエキスは、実施例1のゴボウシエキスの250mg/kg(アルクチゲニンとして25mg/kg)を週5回、経口投与した。ゲムシタビンは、点滴用ゲムシタビン製剤(イーライリリー社)を使用して、100mg/kgを週1回、腹腔内投与した。
【0165】
約7週間の投与期間中、5日毎に、体重測定、皮膚および口腔状態の観察、並びに便の観察を行った。その結果、いずれの投与群においても、皮膚および粘膜の炎症、脱毛または下痢など、副作用を想起させる症状は認められなかった。また、吐気、食欲減退および消化器系の副作用などの指標となる体重についても、全体として有意差は認められなかった。
【0166】
投与終了後、深麻酔後、開胸し、心臓より全血採血を行った。また、腎臓、肝臓、脾臓および肺を回収し、重量測定を行った。
【0167】
各群における腎臓、肝臓、脾臓および肺の重量測定結果および重量/体重比(%)を
図7に示す。
図7に示すように、ゲムシタビン投与群において、肝臓および脾臓の重量/体重比(%)が、未治療群と比較して20%程度の低下が認められた。一方、併用群においては、この低下が回復する傾向が認められた。
【0168】
また、採血した血液を用いて、血球および生化学検査を行った。その結果を
図8に示す。
【0169】
白血球数は、ゲムシタビン投与群において、SLC-ICRマウスの10週齢雌の標準範囲を若干下回っており、また未治療群に比べ、約50%程度に低下が認められた。一方、ゴボウシエキスおよびゲムシタビンを併用投与した場合は、未治療群に比べ、75%程度に低下に抑えられており、標準範囲内に概ね収まっていた。
【0170】
赤血球数もまた、ゲムシタビン投与群において、標準範囲を若干下回っており、また未治療群に比べ、約87%程度に低下が認められた。一方、ゴボウシエキスおよびゲムシタビンを併用投与した場合は、未治療群と同程度の値にまで回復したことが認められた。
【0171】
ヘモグロビンおよびヘマクリット値についても、白血球数および赤血球数と同様に、併用投与した場合には、ゲムシタビン単独投与によってみられる低下が回復する傾向を示した。
【0172】
血小板数は、ゴボウシエキス投与群において、未治療群に比べて110%程度に上昇が認められた。一方、ゲムシタビン投与群において、未治療群に比べ、約70%程度に低下が認められた。ゴボウシエキスおよびゲムシタビンを併用投与した場合は、未治療群の92%程度にまで回復したことが認められた。
【0173】
したがって、実施例1の手順で製造されたゴボウシエキスをゲムシタビンと併用投与することにより、血球減少を有意に抑制できることが示された。
【0174】
また、肝臓の傷害マーカーであるASTおよびALTは、ゲムシタビン投与群において、未治療群に比べ、それぞれ46%および102%の上昇が認められ、特にASTは標準範囲からの逸脱を示した。一方、ゴボウシエキスおよびゲムシタビンを併用投与した場合は、未治療群に比べ、それぞれ18%および38%程度の上昇に抑えられており、標準範囲内に概ね収まっていた。
【0175】
したがって、ゴボウシエキスおよびゲムシタビンの併用投与による新たな副作用の出現および増強は認められなかった。むしろ、併用投与することにより、ゲムシタビン単独投与による骨髄抑制および肝障害などの副作用を軽減させる効果が得られることが示唆された。
【0176】
なお、本出願は、2014年4月10日付けで出願された日本出願(特願2014-080895)に基づいており、その全体が引用により援用される。